説明

板材の面取り装置及びその面取り方法

【課題】 バラつきのない安定した面取りを行うことが可能な板材の面取り装置及びその面取り方法を提供する。
【解決手段】 砥石2と、砥石2を回転させる回転駆動手段3と、砥石2で面取する板材4を保持する保持手段5と、板材4を砥石2に向けて移動する移動手段7と、を備えた板材の面取り装置1において、保持手段5を移動可能に保持するベース部材6と、保持手段5を砥石2側に付勢する弾性手段8と、移動手段7によって板材4を基準位置に移動させて板材4を砥石2に接触させたことによって変位した保持手段5の変位量を検出する検出手段9と、保持手段5の変位を防止する固定手段10と、を設け、変位量を考慮して板材4を砥石2に向けて移動させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材の面取り装置及びその面取り方法に関し、特に、有機EL素子や液晶表示素子などに用いるガラス板などの板材の面取り装置及びその面取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の板材の面取り装置は、板材である液晶パネルをテーブル上に位置決め固定し、回転する砥石の砥石面に対して一定角度でその稜角部が当たるようにして、前記パネルを送り、前記パネルの面を加工するものであった。また、前記回転する砥石は、スプリングによって一定の力で前記パネル側に向かって弾性的に付勢されており、微細加工が可能で、かつ、前記パネルの外形誤差に対応するものであった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−323597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の板材の面取り装置は、前記スプリングを採用したことによって、前記回転する砥石が、揺れ動き、面取りが一定せずに、バラつくという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は前述した問題点に着目し、バラつきのない安定した面取りを行うことが可能な板材の面取り装置及びその面取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の板材の面取り装置は、砥石と、前記砥石で面取する板材を保持する保持手段と、前記板材を前記砥石に向けて移動する移動手段と、を備えた板材の面取り装置において、前記保持手段を移動可能に保持するベース部材と、前記保持手段を前記砥石側に付勢する弾性手段と、前記移動手段によって前記板材を基準位置に移動させて前記板材を前記砥石に接触させたことによって変位した前記保持手段の変位量を検出する検出手段と、前記保持手段の変位を防止する固定手段と、を設け、前記変位量を考慮して前記板材を前記砥石に向けて移動させたものである。
【0007】
また、本発明の板材の面取り方法は、砥石と、前記砥石を回転させる回転駆動手段と、前記砥石で面取する板材を保持する保持手段と、前記板材を前記砥石に向けて移動する移動手段と、を備え、回転する前記砥石に前記板材を接触させて面取りする板材の面取り方法において、前記保持手段を移動可能に保持するベース部材と、前記保持手段を前記砥石側に付勢する弾性手段と、前記移動手段によって前記板材を基準位置に移動させて前記板材を前記砥石に接触させたことによって変位した前記保持手段の変位量を検出する検出手段と、前記保持手段の変位を防止する固定手段と、を設け、停止した前記砥石に前記移動手段によって前記板材を基準位置に移動させて前記板材を前記砥石に接触させたことによって変位した前記保持手段の変位量を前記検出手段にて検出する工程と、前記移動手段によって前記ベース部材を基準位置から前記砥石から離す方向に移動させる工程と、前記保持手段を前記ベース部材に前記固定手段にて固定し、前記変位量を考慮して前記保持手段を前記砥石に向けて移動させ、前記板材を前記砥石に接触させて面取りする工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、バラつきのない安定した面取りを行うことが可能な板材の面取り装置及びその面取り方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の板材の面取り装置の構成図。
【図2】同実施形態の板材の面取り装置の構成図。
【図3】同実施形態の構成を示すブロック図。
【図4】同実施形態の面取り方法を示す図。
【図5】同実施形態の面取り方法を示す図。
【図6】同実施形態の面取り方法を示す図。
【図7】同実施形態の面取り方法を示す図。
【図8】同実施形態の面取り方法を示す図。
【図9】同実施形態の面取り方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。
【0011】
本発明の板材の面取り装置1は、砥石2と、砥石2を回転させる回転駆動手段3と、砥石2で面取する板材4を保持する保持手段5と、保持手段5を移動可能に保持するベース部材6と、板材4と保持手段5とベース部材6とを砥石2に向けて移動する移動手段7と、ベース部材6に設けられるとともに保持手段5を砥石1側に付勢する弾性手段8と、移動手段7によって板材4を基準位置に移動させて板材4を砥石2に接触させたことによって、ベース部材6に対して変位した保持手段5の変位量を検出する検出手段9と、保持手段5の変位を防止する固定手段10と、を備えている。
【0012】
また、回転駆動手段3、移動手段7、検出手段9、固定手段10は、制御手段11に接続されており、回転駆動手段3、移動手段7、固定手段10は、制御手段11によって、制御されている。
【0013】
砥石2は、板材4の端面を面取するもので、回転軸2aを中心として、回転駆動手段3によって、回転するものである。
【0014】
回転駆動手段3は、電気モータであり、砥石2を回転させるものであり、制御手段11によって、作動を制御されている。
【0015】
板材4は、有機EL素子や液晶表示素子に用いられるガラス基板などである。
【0016】
保持手段5は、金属あるいは樹脂などからなり、板材4の固定位置を定めて固定する図示しない位置決め固定手段によって保持するものである。
【0017】
ベース部材6は、金属あるいは樹脂などからなり、保持手段5を砥石2方向(図1、2中A方向)に前後に移動可能に保持するものである。
【0018】
弾性手段8は、コイルばねなどの弾性部材からなり、一端が、ベース部材6に設けられ他端が、保持手段5に設けられており、保持手段5を砥石2側に付勢するものである。
【0019】
検出手段9は、保持手段5に設けた被検出部9aと、ベース部材6に設けた検出部9bとで構成されている。被検出部9aは、光を遮る遮断部材であり、検出部9bは、フォトセンサで構成されている。なお、この検出手段9は、本実施形態では、4つ設けられている。本実施形態では、4つ設けた検出手段9は、取り付け位置が異なっており、板材4を移動手段7によって、基準位置に移動させた場合に、保持手段5が、ベース部材6に対して、変位した変位量を検出するものであり、例えば、−0.2mm、−0.1mm、+0.1mm、+0.2mmの変位量を検出するものである。
【0020】
固定手段10は、一端が、ベース部材6に設けられ、他端が、保持手段5に設けられたシリンダーなどからなり、保持手段5がベース部材6に対して変位(移動)することを防止するものである。
【0021】
移動手段7は、X軸ロボット7aとY軸ロボット7bとからなり、X軸ロボット7aは、ベース部材6を砥石1の回転軸2aに対して、垂直方向(図1、2中の矢印A方向)に近づいたり離れたりするものであり、Y軸ロボット7bは、ベース部材6を磁石1の回転軸2aに対して、平行な方向(図1中の矢印B方向)に移動するものである。
【0022】
制御手段11は、マイクロコンピュータなどからなり、検出手段9にて検出した変位量を考慮して、移動部材7を駆動し、ベース部材6を砥石1に向けて移動させるものである。
【0023】
次に、本発明の板材の面取り装置1の面取り工程を説明する。
【0024】
ステップ1として、保持手段5に板材4を固定する。そして、回転していない状態の砥石2に、板材4が接触するように、ベース部材6を基準位置にX、Y軸ロボット7a、7bにて移動させる。例えば、図4中の矢印C方向に、X軸ロボット7aによって、ベース部材6を移動させる。なお、Y軸ロボット7bの図示は、省略してある(図4参照)。
【0025】
ステップ2として、板材4と砥石2が接触し、ベース部材6に移動可能に設けた保持部材5が、弾性手段8を圧縮し、ベース部材6に対して、図5中、矢印D方向に保持手段5が移動する。その際、複数の検出手段9の検出状況によって、保持手段5の変位量(押し込み量)を検出する。なお、この変位量は、予め設定してある基準の板材4の大きさに対して、板材4の公差による差異を検出するものである。例えば、板材4が、基準の大きさに対して、0.1mm大きい場合、保持手段5が、ベース部材6に対して、0.1mm押し込まれた状態となり、複数の検出手段9のうち、−0.2mm、−0.1mm及び+0.1mmの変位量を検出する検出手段9が検出し、+0.2mmの変位量を検出する検出手段9が、検出していないことを、制御手段11に伝達する(図5参照)。
【0026】
ステップ3として、X軸ロボット7aによって、板材4が、砥石2から離れるように、ベース部材6を図6中矢印E方向に移動する。そして、砥石2を回転させ、保持手段5が、ベース部材6に対して移動しないように、固定手段10によって保持手段5をベース部材6に固定する(図6参照)。
【0027】
ステップ4として、ステップ2で検出した変位量(押し込み量)を、基準位置に対して、X軸ロボット7aの移動量に反映させた位置へ、ベース部材6をX、Y軸ロボット7a、7bにて移動させる。ステップ2の例の場合、保持手段5が、ベース部材6に対して0.1mm奥側に押し込まれているので、基準位置に対して、砥石から0.1mm離れた位置まで、ベース部材6を図7中の矢印F方向に移動させている(図7参照)。
【0028】
ステップ5として、Y軸ロボット7bを、面取り終了位置まで、図8中、矢印G方向へ移動させる。(図8参照)。
【0029】
ステップ6として、X軸ロボット7aにて、板材4が砥石2から離れるように、ベース部材6を図9中矢印H方向に移動する。移動完了後、砥石2の回転を停止し、X、Y軸ロボット7a、7bを待機位置に移動し、保持手段5の固定手段10の固定を解除し、面取り工程が終了する(図9参照)。
【0030】
以上のように構成したことによって、微細加工が可能で、かつ、板材4の外形誤差に対応することができる。また、板材4の外径誤差に対応するばねなどの弾性手段8を採用しても、面取り工程において、弾性手段8を固定手段10によって固定し、弾性部材8の変位を防止したことによって、板材4が、揺れ動くことなく、面取りが安定し、バラつきを抑えた面取りを行うことが可能な板材の面取り装置及びその面取り方法を提供することができる。
【0031】
なお、検出手段9は、本実施形態のように、被検出部9aを遮断部材9aとし、検出部9bをフォトセンサとしたことによって、検出手段9によるコストの上昇を抑えることができるが、本実施形態に限定されるものではなく、他の検出手段を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、有機EL素子や液晶表示素子などに用いるガラス板などの板材の面取り装置及びその面取り方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 板材の面取り装置
2 砥石
2a 回転軸
3 回転駆動手段
4 板材
5 保持手段
6 ベース部材
7 移動手段
7a X軸ロボット
7b Y軸ロボット
8 弾性手段
9 検出手段
9a 被検出部
9b 検出部
10 固定手段
11 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石と、前記砥石で面取する板材を保持する保持手段と、前記板材を前記砥石に向けて移動する移動手段と、を備えた板材の面取り装置において、前記保持手段を移動可能に保持するベース部材と、前記保持手段を前記砥石側に付勢する弾性手段と、前記移動手段によって前記板材を基準位置に移動させて前記板材を前記砥石に接触させたことによって変位した前記保持手段の変位量を検出する検出手段と、前記保持手段の変位を防止する固定手段と、を設け、前記変位量を考慮して前記板材を前記砥石に向けて移動させたことを特徴とする板材の面取り装置。
【請求項2】
砥石と、前記砥石を回転させる回転駆動手段と、前記砥石で面取する板材を保持する保持手段と、前記板材を前記砥石に向けて移動する移動手段と、を備え、回転する前記砥石に前記板材を接触させて面取りする板材の面取り方法において、前記保持手段を移動可能に保持するベース部材と、前記保持手段を前記砥石側に付勢する弾性手段と、前記移動手段によって前記板材を基準位置に移動させて前記板材を前記砥石に接触させたことによって変位した前記保持手段の変位量を検出する検出手段と、前記保持手段の変位を防止する固定手段と、を設け、停止した前記砥石に前記移動手段によって前記板材を基準位置に移動させて前記板材を前記砥石に接触させたことによって変位した前記保持手段の変位量を前記検出手段にて検出する工程と、前記移動手段によって前記ベース部材を基準位置から前記砥石から離す方向に移動させる工程と、前記保持手段を前記ベース部材に前記固定手段にて固定し、前記変位量を考慮して前記保持手段を前記砥石に向けて移動させ、前記板材を前記砥石に接触させて面取りする工程と、を有することを特徴とする板材の面取り方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−212791(P2011−212791A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83317(P2010−83317)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】