果実収穫装置
【課題】作業効率が高く且つ果実を傷めずに収穫可能な果実収穫装置を提供する。
【解決手段】栽培空間に複数の対象果実が吊下している果実の収穫装置1において、収穫装置は、鉛直方向に延設された支柱3にアーム機構が取り付けられ、アーム機構の先端に設けられた把持ハンド10で果実を把持して収穫するマニピュレータ2を備えており、アーム機構は、支柱3に第1の軸4を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第1のアーム部5と、第1のアーム部5に第2の軸6を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第2のアーム部7と、第2のアーム部7に第3の軸8を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第3のアーム部9とを有する3軸のアーム機構であり、第3のアーム部9の先端に取り付けられた把持ハンド10が水平に維持されるように該第3のアーム部が駆動されるとともに、把持ハンド10と果実111との高さ方向及び奥行き方向の位置を合わせるように第1のアーム5部及び第2のアーム部7が駆動される構成とする。
【解決手段】栽培空間に複数の対象果実が吊下している果実の収穫装置1において、収穫装置は、鉛直方向に延設された支柱3にアーム機構が取り付けられ、アーム機構の先端に設けられた把持ハンド10で果実を把持して収穫するマニピュレータ2を備えており、アーム機構は、支柱3に第1の軸4を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第1のアーム部5と、第1のアーム部5に第2の軸6を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第2のアーム部7と、第2のアーム部7に第3の軸8を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第3のアーム部9とを有する3軸のアーム機構であり、第3のアーム部9の先端に取り付けられた把持ハンド10が水平に維持されるように該第3のアーム部が駆動されるとともに、把持ハンド10と果実111との高さ方向及び奥行き方向の位置を合わせるように第1のアーム5部及び第2のアーム部7が駆動される構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーム機構の先端に設けられた把持ハンドで果実を把持して収穫する果実収穫装置に関し、特に、イチゴ、トマト、ぶどう又はさくらんぼ等の果実の収穫に用いられる果実収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イチゴ、トマト、ぶどう又はさくらんぼ等の果実の収穫においては、果実を傷めないために人手による収穫が主であった。しかし近年、農業における労働力不足に加えて、果実の収穫は過酷な作業環境下で長時間労働を強いられることから、作業効率の向上、労働負荷の軽減を目的として収穫作業の機械化に対する要望が高まってきている。
【0003】
このような要望を受けて、画像処理技術やマニピュレーション制御技術などといったロボット技術を活用して、果実収穫装置が開発、実用化されている。特に、高設栽培施設での運用を想定した収穫装置が多く開発されている。これは、高設栽培は果実の自重で栽培ベンチ下に果実が自然と垂れ下がり、密生する葉から果実が露出する確率が高くなって、画像処理技術で果実とその他の物体とが識別しやすくなるためである。具体的に果実収穫装置は、主に、果実の位置を検出する画像処理部と、画像処理部で検出された位置に合わせてアームにより把持ハンドを接近させ、把持ハンドで果実を把持、収穫して搬送トレイへ置くマニピュレータとで構成されていることが多い。
【0004】
このような果実収穫装置として、例えば特許文献1(特開2008−206438号公報)には、果実群の下方と正面から果実をそれぞれ撮像する撮像装置を備え、これらの撮像装置で撮像した画像から果実の三次元位置を特定し、この位置に合わせてマニピュレータを作動させて果実を収穫する構成が開示されている。さらにこのマニピュレータは、果実群に向かって左右に並列配置されており、果実との距離に合わせて水平旋回して果実を把持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−206438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、果実収穫装置で果実を収穫する場合、果実に直接触れると果実が傷んで品質が低下してしまうため、従来の果実収穫装置では品質を低下させずに効率よく果実を収穫することが課題とされていた。
特許文献1に開示される装置は、果実群の下方と正面から果実をそれぞれ撮像することで果実の位置検出精度を向上させているが、位置を正確に把握できても、把持ハンドを接近させる際にアームや把持ハンドが他の果実に触れてしまう可能性があるため、確実に高品質の果実を収穫することは困難であった。
【0007】
また、高設栽培施設においては、収穫時期の色づいた果実は通路側から見て全体又は一部が白い未熟果の下に隠れていることが多いが、従来の果実収穫装置は通路を移動する構成であったため、収穫適期果を見逃したり、未熟果を巻き込んで収穫を失敗したり、さらにマニピュレータの姿勢によっては収穫適期果の近隣に干渉して未収穫の果実を傷つけることがあった。特許文献1においても、通路に装置を設置し、通路裏側へ横方向からアームを旋回させて果実を収穫する構成が記載されており、この構成ではアームの構造上、近隣の未収穫の果実に衝突する危険性が非常に高い。
【0008】
さらにまた、アームを水平方向に旋回駆動させて果実に接近するマニピュレータは、旋回に時間がかかり作業効率が低下してしまうという問題も有していた。
したがって、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、作業効率が高く且つ果実を傷めずに収穫可能な果実収穫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る果実収穫装置は、栽培空間に複数の対象果実が吊下している果実の収穫装置において、前記収穫装置は、鉛直方向に延設された支柱にアーム機構が取り付けられ、前記アーム機構の先端に設けられた把持ハンドで果実を把持して収穫するマニピュレータを備えており、前記アーム機構は、前記支柱に第1の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第1のアーム部と、前記第1のアーム部に第2の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第2のアーム部と、前記第2のアーム部に第3の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第3のアーム部とを有する3軸のアーム機構であり、前記第3のアーム部の先端に取り付けられた前記把持ハンドが果実収穫に適した角度となるように該第3のアーム部が駆動されるとともに、前記把持ハンドと前記果実との高さ方向及び奥行き方向の位置を合わせるように前記第1のアーム部及び前記第2のアーム部が駆動されることを特徴とする。なお、果実収穫に適した角度とは、把持ハンドで果実を把持するのに最適な第3のアーム部の角度をいい、好適には水平とする。
【0010】
本発明によれば、アーム機構の軸構成を鉛直方向のみに3自由度で屈曲する構成とし、アーム部が水平方向に屈曲しないようにしたため、近隣の果実にアーム部や把持ハンドが接触することなく把持ハンドを収穫対象である果実に接近させることができる。これにより果実を傷めずに高品質な状態で収穫することが可能となる。これは、栽培空間に吊下する果実は、鉛直方向に重なり合うことは少なく、横方向に果実が並ぶ状態であることが多い。したがって、鉛直方向からマニピュレータを対象果実に接近させることで、他の果実への接触を防ぐことが可能となる。
さらに、アーム機構の鉛直方向の屈曲動作は水平方向の屈曲動作よりも時間が短いため、収穫時間を短縮化でき、作業効率の向上が可能となる。
【0011】
また、前記支柱が載置されるとともに、該支柱を前記アーム機構の屈曲方向と直交する方向へスライド移動させる架台レールが設けられた架台を備えることが好ましい。
このように、架台レールによりマニピュレータをアームの屈曲方向と直交する方向へスライド移動させることで、マニピュレータと対象果実との横方向の位置合わせを可能とし、精度良く把持ハンドを対象果実に接近させることが可能となる。
【0012】
さらに、高設栽培の栽培ベンチ上に前記果実の株が載置された果実栽培施設に用いられる果実収穫装置であって、前記栽培ベンチの下方に、該栽培ベンチの延設方向に沿って敷設された下部レールを有し、該下部レール上を前記架台が走行するように構成されたプラットフォームを備えることが好ましい。
このように、栽培ベンチの下方に果実収穫装置を設置することにより、通路裏側に多く存在する色づいた果実に接近しやすくなり作業効率が向上し、且つ対象果実とマニピュレータとの距離が近づくことから、把持ハンドを接近させる際に他の果実に触れることを防止できる。
【0013】
また、前記プラットフォームは、前記栽培ベンチの下方に敷設された下部レールが複数並列配置されているとともに、複数の前記下部レール間を連結する架橋レールが設けられていることが好ましい。
このように、下部レールと架橋レールとにより果実収穫装置が果実栽培施設をXY方向に移動可能とすることで、遠隔操作等で人手を介さずに施設内の果実を収穫することが可能となり、作業効率の向上が図れる。
【0014】
さらに、前記把持ハンドは、前記アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることが好ましく、これによりアームを左右に駆動させることで栽培ベンチの左右両側の果実を収穫することが可能となり、より一層作業効率を向上させることができる。
【0015】
さらにまた、前記支柱に設けられ前記果実との距離を検出するステレオカメラと、前記把持ハンドに設けられ前記果実の垂直方向及び水平方向の位置を検出するカメラとを備えることが好ましい。
本構成では、最初にステレオカメラで把持ハンドと果実との距離を含む大まかな果実の位置を検出しておき、この検出位置に基づきマニピュレータを接近させ、把持ハンドに設けられたカメラで垂直方向及び水平方向の正確な位置を検出することで、果実の位置を効率的に且つ精度良く検出することができ、これにより他の果実を傷つけることなく把持ハンドを果実に接近させることが可能となる。
また、前記ステレオカメラ及び前記位置検出カメラは、前記アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることが好ましく、これにより、アーム機構が、屈曲方向のいずれの側の果実を収穫する場合においても果実の位置を正確に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のように本発明によれば、アーム機構の軸構成を鉛直方向のみに3自由度で屈曲する構成とし、アーム部が水平方向に屈曲しないようにしたため、近隣の果実にアーム部や把持ハンドが接触することなく把持ハンドを収穫対象である果実に接近させることができる。これにより果実を傷めずに高品質な状態で収穫することが可能となる。
さらに、アーム機構の鉛直方向の屈曲動作は水平方向の屈曲動作よりも時間が短いため、収穫時間を短縮化でき、作業効率の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の実施形態に係る果実収穫装置の全体構成を示す斜視図で、(B)はマニピュレータの拡大図である。
【図2】栽培ベンチの左右両側の果実を収穫する場合のマニピュレータの動作を説明する図である。
【図3】把持ハンドの具体的構成を示す図であり、(A)は把持ハンドの斜視図で、(B)は(A)をC方向から見た把持ハンドの平面図である。
【図4】把持ハンドの動作を説明する模式図である。
【図5】架台の斜視図である。
【図6】プラットフォームの平面図である。
【図7】図6のD部分の拡大斜視図である。
【図8】果実収穫装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図9】果実収穫装置による収穫作業を説明するフローチャートである。
【図10】果実収穫装置の具体的な動作を説明する図(前半)である。
【図11】果実収穫装置の具体的な動作を説明する図(後半)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
本発明の実施形態に係る果実収穫装置は、栽培空間に複数の対象果実が吊下している果実の収穫を行なう装置であり、収穫対象果実としては、例えば、イチゴ、トマト、ぶどう、さくらんぼ等が挙げられる。さらに、本発明の実施形態に係る果実収穫装置は、高設栽培される果実の収穫に特に適している。
以下に示す実施形態では、果実収穫装置をイチゴの高設栽培に適用した場合を例に挙げて説明しているが、対象果実及び栽培方式はこれに限定されるものではない。
【0020】
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る果実収穫装置の全体構成を説明する。図1(A)は本発明の実施形態に係る果実収穫装置の全体構成を示す斜視図で、(B)はマニピュレータの拡大図である。
同図には、果実収穫装置1が設置されたイチゴの高設栽培施設100の一部が示されている。この高設栽培施設100には、土耕栽培又は水耕栽培によるイチゴの結実時に、イチゴ111が垂れ下がるように栽培するための栽培ベッド101と、栽培ベッド101を所定高さで支持する複数の脚(図示略)とが設けられている。この栽培ベッド101は上部から吊下してもよい。なお、本実施形態では、栽培ベッド101の長手方向をY軸方向、短手方向をX軸方向、これらX軸及びY軸に垂直な方向をZ軸方向として説明する。
【0021】
本発明の実施形態に係る果実収穫装置1は、栽培ベンチ101の下方空間に設置される。果実収穫装置1は、地面上にY軸方向に延設された架台30と、架台30上に設置されたマニピュレータ2と、ステレオカメラ21及びカメラ22とを備える。架台30の構成については後述する。
前記マニピュレータ2は、支柱基部3aから鉛直方向(Z軸方向)に延設された支柱3と、支柱3上部に取り付けられたアーム機構と、アーム機構の先端に取り付けられた把持ハンド10とを有する。
【0022】
前記アーム機構は、第1のアーム部5と第2のアーム部7と第3のアーム部9とを有し、鉛直面内で駆動する3軸(3自由度)のアーム機構となっている。
前記第1のアーム部5は、直線状に形成され、第1の軸4を介して支柱3に取り付けられている。該第1のアーム部5は、第1の軸4を中心に鉛直面内で屈曲動作するように構成されている。好適には、第1のアーム部5は、支柱3の頂部に取り付けられ、支柱3を中心に最大屈曲角が±100°旋回するように構成されているとよい。
【0023】
前記第2のアーム部7は、直線状に形成され、第2の軸6を介して第1のアーム部5に取り付けられている。該第2のアーム部7は、第2の軸6を中心に鉛直面内で屈曲動作するように構成されている。なお、第1の軸4と第2の軸6とは、第1のアーム部5の両端部にそれぞれ設けられていることが好ましい。
前記第3のアーム部9は、直線状に形成され、第3の軸8を介して第2のアーム部7に取り付けられている。該第3のアーム部9は、第3の軸8を中心に鉛直面内で屈曲動作するように構成されている。なお、第2の軸6と第3の軸8とは、第2のアーム部7の両端部にそれぞれ設けられていることが好ましい。また、第3のアーム部9の先端には、把持ハンド10が設けられている。把持ハンド10については後述する。
【0024】
上記した各アーム部を有するアーム機構では、第3のアーム部9の先端に取り付けられた把持ハンド10がイチゴ111収穫に適した角度となるように該第3のアーム部9が駆動されるとともに、把持ハンド10と収穫対象イチゴ111との高さ方向及び奥行き方向の位置を合わせるように第1のアーム部5及び第2のアーム部7が駆動されるようになっている。なお、第3のアーム部9の果実収穫に適した角度とは、把持ハンド10でイチゴ111を把持するのに最適な第3のアーム部9の角度をいい、好適には水平とする。また、前記奥行き方向とは、アーム機構が駆動する鉛直面内における水平方向であり、すなわちX方向をいう。
【0025】
このように、アーム機構の軸構成を鉛直方向のみに3自由度で屈曲する構成とし、アーム部5、7、9が水平方向に屈曲しないようにしたため、近隣のイチゴにアーム部5、7、9や把持ハンド10が接触することなく把持ハンド10を収穫対象であるイチゴ111に接近させることができる。これによりイチゴ111を傷めずに高品質な状態で収穫することが可能となる。
さらに、アーム機構の鉛直方向の屈曲動作は水平方向の屈曲動作よりも時間が短いため、収穫時間を短縮化でき、作業効率の向上が可能となる。
【0026】
前記ステレオカメラ21は、支柱3の上部に設置され、主に収穫対象イチゴ111までの距離(X軸方向)を検出する。もちろん、ステレオカメラ21は、垂直方向(Z軸方向)及び水平方向(Y軸方向)における収穫対象イチゴ111の大まかな位置も検出できる。また、ステレオカメラ21は、アーム屈曲方向の両側の栽培ベッド101に向けて一対ずつ配置することが好ましい。
前記カメラ22は、把持ハンド10に取り付けられ、該把持ハンド10がイチゴ111に近接した時に、垂直方向(Z軸方向)及び水平方向(Y軸方向)における収穫対象イチゴ111の正確な位置を検出する。また、カメラ22も前記ステレオカメラ21と同様に、アーム屈曲方向の両側の栽培ベッド101に向けて一対ずつ配置することが好ましい。
このようなカメラ構成により、最初にステレオカメラ21で把持ハンド10とイチゴ111との距離を含む大まかなイチゴ111の位置を検出しておき、この検出位置に基づきマニピュレータ2を接近させ、把持ハンド10に設けられたカメラ22で垂直方向及び水平方向の正確な位置を検出することで、イチゴ111の位置を効率的に且つ精度良く検出することができ、これにより他のイチゴを傷つけることなく把持ハンド10をイチゴ111に接近させることが可能となる。
また、ステレオカメラ21及びカメラ22が、アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることにより、アーム機構が、屈曲方向のいずれの側のイチゴ111を収穫する場合においてもイチゴ111の位置を正確に検出することが可能となる。
【0027】
次に、図2乃至図4を参照して、マニピュレータ10の動作を説明する。
図2は、栽培ベンチの左右両側に吊下する果実を収穫する場合のマニピュレータの動作を説明する図である。
図2(A)に示すように、果実収穫装置1は、先に栽培ベンチ101の一側(図面では左側)のイチゴ111aに対して把持ハンド10Aを接近させるために、第1の軸4を介して第1のアーム部5を鉛直面内で屈曲させるとともに、第2の軸6を介して第2のアーム部7を鉛直面内で屈曲させて、把持ハンド10Aを図中矢印の方向に鉛直方向に旋回させる。このとき、第3の軸8を介して第3のアーム部9を屈曲させ、把持ハンド10Aを水平に維持する。
把持ハンド10Aが収穫対象イチゴ111aに接近したら、該把持ハンド10Aによりイチゴ上方の茎(果柄)を掴み、その上部を切断してイチゴ111aを把持する。再度各アーム部5、7、9を駆動させて、把持したイチゴ111aをマニピュレータ2の左右に配置されたトレイ50に置く。
【0028】
次いで、栽培ベンチ101の他側(図面では右側)の収穫対象イチゴ111bに対して、先ほどと反対側の把持ハンド10Bを接近させるために、上記と同様に第1のアーム部5、第2のアーム部7、第3のアーム部9を駆動させ、把持ハンド10Bを図中矢印の方向に鉛直方向に旋回させる。
把持ハンド10Bが収穫対象イチゴ111bに接近したら、該把持ハンド10Bによりイチゴ上方の茎(果柄)を掴み、その上部を切断してイチゴ111bを把持する。再度各アーム部5、7、9を駆動させて、把持したイチゴ111bをマニピュレータ2の左右に配置されたトレイ50に置く。
【0029】
上記したように、果実収穫装置1は、栽培ベンチ11の左右両側に延出する一対の把持ハンド10A、10Bを備えていることが好ましく、これによりマニピュレータ2自体の向きを変えることなく、アーム機構を左右に駆動させるのみで栽培ベンチ101の左右両側のイチゴ111a、111bを収穫することが可能となり、より一層作業効率を向上させることができる。
【0030】
ここで、把持ハンド10の詳細な構成を説明する。図3は把持ハンドの具体的構成を示す図であり、(A)は把持ハンドの斜視図で、(B)は(A)をC方向から見た把持ハンドの平面図である。なお、図3に示す把持ハンドの構成は一例であり、この構成に限定されるものではない。
把持ハンド10は、連結部11と、モータ12と、第1爪部14と、第2爪部15と、平行リンク機構16とを有している。なお、本実施形態では、把持ハンド10はイチゴの茎の切断と把持の両方の機能を有する。
【0031】
前記連結部11は、把持ハンド10を第3のアーム部9に連結するための部位であり、さらに該連結部11は、第3のアーム部9に対して把持ハンド10を着脱自在に連結する構成であることが好ましい。
前記モータ12は、平行リンク機構16を駆動させて、第1爪部14及び第2爪部15の少なくとも一方を移動させ、第1爪部14と第2爪部を開閉する。
【0032】
前記第1の爪部14と前記第2爪部15は平行に配置され、平行リンク機構16により互いに平行な状態を維持したまま開閉するようになっている。
前記第1爪部14は、内側(第2の爪部側)にカミソリ片刃等の刃17が取り付けられており、さらに刃17の裏側にゴム状体18が貼着されている。なお、刃17及びゴム状体18はいずれも交換可能であることが好ましい。また、刃17の裏側にゴム状体18を貼着しているため、果柄切断時に可動側爪部をさらに押し込むことで果柄を確実に切断できるとともに、第2の爪部15で果柄をゴム状体18に押圧した状態で該果柄を把持することができ、イチゴ111をトレイ50に移動させるようになっている。
【0033】
また、第1爪部14の先端は、内側に向けて傾斜したテーパ部19が形成されている。さらに好適には、第2爪部15の先端は、外側に向けて傾斜したテーパ状とする。このようにテーパ部19を設けることで、画像処理により算出した把持位置が、実際の収穫対象イチゴ111の位置から横方向に多少外れてしまっても、イチゴ111を確実に刃17へ誘導することが可能で、さらに第1爪部14の先端(及び第2爪部15の先端)を細くできることから、群生しているイチゴ111の隙間を縫って目標果柄に接近することが可能となる。
さらにまた、第1爪部14は、刃17より基部側にストッパ20が設けられている。このようにストッパ20を設けることにより、把持ハンド10が目標位置より多少突っ込んでしまっても果柄を刃17の位置にとどめることができる。
【0034】
図4は把持ハンドの動作を説明する模式図である。
上記した構成を備える把持ハンド10では、図4(A)に示すように、まず第2のアーム部7を駆動して片側の把持ハンド10Aをイチゴ111に接近させる。このとき、第3のアーム部9を、把持ハンド10Aによるイチゴ収穫に最適な角度となるように、好適には水平に維持する。このとき第1爪部14と第2爪部15とを開いた状態としておく。そして、図4(B)に示すように、イチゴ111の果柄が把持ハンド10Aの第1爪部14と第2爪部15の間にきたら第1、第2アーム部の駆動を停止する。このとき、図3に示すように、第1アーム部14のテーパ部19に収穫対象イチゴ111の茎を押し当てることによってテーパ部19を滑らせて第1爪部14と第2爪部15の間にイチゴ111の果柄を入り込ませ、ストッパ20で果柄を刃17の位置に固定することが好ましい。次いで、図4(C)に示すように、平行リンク機構16(図3参照)を駆動させて第2爪部15を閉じる側へ動かし、刃17で果柄を切断する。このようにして果柄を切断したイチゴ111を、図4(D)に示すように、第1の爪部14のゴム状体18(図3参照)と第2の爪部15とで把持し、トレイ50まで移送する。
【0035】
図5は架台の斜視図である。
果実収穫装置1は、支柱3をアーム機構の屈曲方向に直交する方向へスライド移動させる架台レール32が設けられた架台30を備えている。
架台30は、栽培ベンチ101の長手方向(Y軸方向)に平行に設置される。架台30上には、Y軸方向に所定長さの架台レール32が設けられており、移動テーブル25は架台30上を架台レール32に沿って移動可能となっている。
【0036】
このように、架台30によりマニピュレータ2をアーム機構の屈曲方向と直交する方向へスライド移動させることで、マニピュレータ2とイチゴ111との横方向の位置合わせをすることができ、精度良く把持ハンド10を収穫対象イチゴ111に接近させることが可能となる。
【0037】
図6はプラットフォームの一例を示す平面図で、図7は図6のD部分の拡大斜視図である。
上記した架台30は、高設栽培施設100内をXY方向に移動可能なプラットフォーム40上を移動する構成となっている。
プラットフォーム40は、主として栽培ベンチ101の下方に設置された下部レール41と、栽培ベンチ101間を連結する架橋レール42とを有している。
【0038】
ここでは一例として、架橋レール42が、複数の下部レール41に架け渡されたメインフレーム43上に形成された構成を示している。メインフレーム42は、栽培ベンチ101の延設方向に直交する方向(X方向)に配置され、駆動制御部45により栽培ベンチ101の延設方向(Y方向)に下部レール41上をスライド移動するようになっている。
【0039】
架台30は、メインフレーム42上をX方向に移動して、対象とする果実列の栽培ベンチ101の下で停止し、イチゴ111の収穫作業を行なう。架台30上で収穫適期果を収穫し終えたらメインフレーム42をY方向に所定距離移動させて、再度イチゴ11の収穫作業を行なう。対象とする果実列において全ての収穫適期果を収穫し終えたら、架台30をメインフレーム42上でX方向に移動させて隣の果実列の収穫作業を行なう。
【0040】
このように、栽培ベンチ101の下方に果実収穫装置1を設置することにより、通路裏側に多く存在する色づいたイチゴ111に接近しやすくなり作業効率が向上し、且つ対象イチゴ111とマニピュレータ2との距離が近づくことから、把持ハンド10を接近させる際に他のイチゴに触れることを防止できる。
さらにまた、下部レール41と架橋レール42とにより果実収穫装置1が果実栽培施設100をXY方向に移動可能とすることで、遠隔操作等で人手を介さずに施設内のイチゴを収穫することが可能となり、作業効率の向上が図れる。
【0041】
図8は本実施形態に係る果実収穫装置のシステム構成を示すブロック図である。
果実収穫装置1は、架台30上に設置されたマニピュレータ用制御手段51と、第1の軸4を駆動するためのモータドライバ52と、第2の軸6を駆動するためのモータドライバ53と、第3の軸8を駆動するためのモータドライバ54と、把持ハンド10を開閉駆動するためのモータドライバ55とを有している。
【0042】
マニピュレータ用制御手段51は、遠隔に設置された遠隔制御手段60からの制御信号を、無線LAN手段61を介して受信し、これに応じて各駆動機構を制御する。この制御信号を受けて、イチゴ111の収穫を実施する場合には、最初に支柱3に設けられたステレオカメラ21からの信号が制御手段51に入力されてイチゴ111の大まかな位置を検出し、これに基づきモータドライバ51〜53により第1のアーム部5、第2のアーム部7、第3のアーム部9を駆動させる。次いで、把持ハンド10に設けられたカメラ(ハンドアイカメラ)22からの信号が制御手段51に入力され、イチゴ111の正確な位置が検出され、これに基づいて第3のアーム部9をイチゴ111に接近させ、モータドライバ55により把持ハンド10を閉じてイチゴ111の果柄を切断、把持する。
【0043】
また、把持ハンド10には、光ファイバセンサ23等の物体検出センサが設けられていることが好ましく、イチゴ111の果柄を切断した後に、確実にイチゴ111が把持されているか否かを光センサ23で判断し、把持されている場合にのみトレイ50にイチゴを移送するとよい。これにより、イチゴが把持されていない場合に、トレイ50までアーム機構を駆動する時間が短縮でき、作業効率の向上が図れる。
さらに、移動制御手段64からの信号に基づいて、モーション制御手段63により架台30上でのマニピュレータ2の移動を制御するようにしてもよい。さらにまた、XY移動プラットフォーム制御ユニット62からの信号に基づいて、モーション制御手段63により架台30のプラットフォーム40上での移動を制御するようにしてもよい。
【0044】
図9乃至図11を参照して、本発明の実施形態に係る果実収穫装置の処理フローを説明する。図9は果実収穫装置による収穫作業を説明するフローチャートで、図10及び図11は果実収穫装置の具体的な動作を説明する図である。
収穫作業が開始されたら、まずマニピュレータ2が架台30上を架台レール31に沿ってホームポジションに移動する。ホームポジションは予め設定されているもので、例えば架台レール31の端部である。
【0045】
次に、栽培ベンチ101の片列側のステレオカメラ21により収穫時期のイチゴ111を検出する。さらに反対列側のステレオカメラ21により収穫時期のイチゴ111を検出する。マニピュレータ用制御手段51により収穫時期のイチゴ111があるか否かを判断する。これは、例えば、ステレオカメラ21の撮像画像を画像処理し、画像中のイチゴが赤く色づいた面積の割合等により収穫時期を判断してもよい。
【0046】
収穫時期のイチゴが画像中に存在しない場合には、プラットフォーム40上で下部レール41に沿って架台30を移動させる。このとき、収穫列の終点まで到達したか否かを判断し、到達していない場合には、マニピュレータ2がホームポジションまで移動して先ほどと同様に収穫時期のイチゴを探す。収穫列の終点まで到達した場合には、収穫作業を終了する。
一方、ステレオカメラ21の撮像画像に基づいて収穫時期のイチゴ111があると判断された場合には、画像から検出したイチゴの収穫順番を決定する。これは、予め設定された規則に基づいて決定することが好ましく、この規則は、例えばイチゴの位置から順番を算出する。
【0047】
ここで算出された順番に基づいて、図10(A)のように、最も順番が早い収穫対象イチゴ111の前方まで架台30上でマニピュレータ2を移動する。
そして、図10(B)のように、把持ハンド10に内蔵されたカメラ22で、収穫対象イチゴ111の切断・把持位置を検出し、把持動作に入る。図10(C)のように、把持ハンド10を開き、第1爪部14先端のテーパ部19をイチゴの果柄に接近させ、テーパ部19に果柄を押し付けて第1爪部14と第2爪部15の間に茎を滑り込ませる。ストッパ20に果柄が当接した状態で、刃14により茎を切断し、把持機構で果柄を把持する。
【0048】
把持ハンド10が果実列から離れたら、把持ハンド10内に内蔵された光ファイバセンサ23がイチゴ111に反応したか否かを判断し、反応している場合には確実にイチゴ111が把持されていることが確認できるため、図10(D)のように収穫したイチゴ111をトレイ50に置く。光ファイバセンサ23が反応していない場合には、果柄を切断できなかったか又はイチゴが落下してしまったため、イチゴを把持していないことが確認できるため、次の未収穫イチゴを探索する。
同様に、図11(E)のように反対列の収穫対象イチゴ111もステレオカメラ21により検出し、図11(F)のように検出したイチゴ111の果柄を把持ハンド10で切断し、把持機構で把持し、図11(G)のように収穫したイチゴ111をトレイ50に置く。
【0049】
未収穫イチゴがあるか否かを判断し、未収穫イチゴがある場合には、上記したようにマニピュレータ2を未収穫イチゴの前方に移動させる。未収穫イチゴがない場合には、図11(H)のようにプラットフォーム40上で架台30を移動させて次のイチゴの収穫を行なう。そして、収穫列の終点まで到達したら収穫作業を終了する。
【符号の説明】
【0050】
1 果実収穫装置
2 マニピュレータ
3 支柱
4 第1の軸
5 第1のアーム部
6 第2の軸
7 第2のアーム部
8 第3の軸
9 第3のアーム部
10 把持ハンド
21 ステレオカメラ
22 CCDカメラ
30 架台
31 レール
40 プラットフォーム
41、42 レール
100 高設栽培施設
101 栽培ベンチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーム機構の先端に設けられた把持ハンドで果実を把持して収穫する果実収穫装置に関し、特に、イチゴ、トマト、ぶどう又はさくらんぼ等の果実の収穫に用いられる果実収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イチゴ、トマト、ぶどう又はさくらんぼ等の果実の収穫においては、果実を傷めないために人手による収穫が主であった。しかし近年、農業における労働力不足に加えて、果実の収穫は過酷な作業環境下で長時間労働を強いられることから、作業効率の向上、労働負荷の軽減を目的として収穫作業の機械化に対する要望が高まってきている。
【0003】
このような要望を受けて、画像処理技術やマニピュレーション制御技術などといったロボット技術を活用して、果実収穫装置が開発、実用化されている。特に、高設栽培施設での運用を想定した収穫装置が多く開発されている。これは、高設栽培は果実の自重で栽培ベンチ下に果実が自然と垂れ下がり、密生する葉から果実が露出する確率が高くなって、画像処理技術で果実とその他の物体とが識別しやすくなるためである。具体的に果実収穫装置は、主に、果実の位置を検出する画像処理部と、画像処理部で検出された位置に合わせてアームにより把持ハンドを接近させ、把持ハンドで果実を把持、収穫して搬送トレイへ置くマニピュレータとで構成されていることが多い。
【0004】
このような果実収穫装置として、例えば特許文献1(特開2008−206438号公報)には、果実群の下方と正面から果実をそれぞれ撮像する撮像装置を備え、これらの撮像装置で撮像した画像から果実の三次元位置を特定し、この位置に合わせてマニピュレータを作動させて果実を収穫する構成が開示されている。さらにこのマニピュレータは、果実群に向かって左右に並列配置されており、果実との距離に合わせて水平旋回して果実を把持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−206438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、果実収穫装置で果実を収穫する場合、果実に直接触れると果実が傷んで品質が低下してしまうため、従来の果実収穫装置では品質を低下させずに効率よく果実を収穫することが課題とされていた。
特許文献1に開示される装置は、果実群の下方と正面から果実をそれぞれ撮像することで果実の位置検出精度を向上させているが、位置を正確に把握できても、把持ハンドを接近させる際にアームや把持ハンドが他の果実に触れてしまう可能性があるため、確実に高品質の果実を収穫することは困難であった。
【0007】
また、高設栽培施設においては、収穫時期の色づいた果実は通路側から見て全体又は一部が白い未熟果の下に隠れていることが多いが、従来の果実収穫装置は通路を移動する構成であったため、収穫適期果を見逃したり、未熟果を巻き込んで収穫を失敗したり、さらにマニピュレータの姿勢によっては収穫適期果の近隣に干渉して未収穫の果実を傷つけることがあった。特許文献1においても、通路に装置を設置し、通路裏側へ横方向からアームを旋回させて果実を収穫する構成が記載されており、この構成ではアームの構造上、近隣の未収穫の果実に衝突する危険性が非常に高い。
【0008】
さらにまた、アームを水平方向に旋回駆動させて果実に接近するマニピュレータは、旋回に時間がかかり作業効率が低下してしまうという問題も有していた。
したがって、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、作業効率が高く且つ果実を傷めずに収穫可能な果実収穫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る果実収穫装置は、栽培空間に複数の対象果実が吊下している果実の収穫装置において、前記収穫装置は、鉛直方向に延設された支柱にアーム機構が取り付けられ、前記アーム機構の先端に設けられた把持ハンドで果実を把持して収穫するマニピュレータを備えており、前記アーム機構は、前記支柱に第1の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第1のアーム部と、前記第1のアーム部に第2の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第2のアーム部と、前記第2のアーム部に第3の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第3のアーム部とを有する3軸のアーム機構であり、前記第3のアーム部の先端に取り付けられた前記把持ハンドが果実収穫に適した角度となるように該第3のアーム部が駆動されるとともに、前記把持ハンドと前記果実との高さ方向及び奥行き方向の位置を合わせるように前記第1のアーム部及び前記第2のアーム部が駆動されることを特徴とする。なお、果実収穫に適した角度とは、把持ハンドで果実を把持するのに最適な第3のアーム部の角度をいい、好適には水平とする。
【0010】
本発明によれば、アーム機構の軸構成を鉛直方向のみに3自由度で屈曲する構成とし、アーム部が水平方向に屈曲しないようにしたため、近隣の果実にアーム部や把持ハンドが接触することなく把持ハンドを収穫対象である果実に接近させることができる。これにより果実を傷めずに高品質な状態で収穫することが可能となる。これは、栽培空間に吊下する果実は、鉛直方向に重なり合うことは少なく、横方向に果実が並ぶ状態であることが多い。したがって、鉛直方向からマニピュレータを対象果実に接近させることで、他の果実への接触を防ぐことが可能となる。
さらに、アーム機構の鉛直方向の屈曲動作は水平方向の屈曲動作よりも時間が短いため、収穫時間を短縮化でき、作業効率の向上が可能となる。
【0011】
また、前記支柱が載置されるとともに、該支柱を前記アーム機構の屈曲方向と直交する方向へスライド移動させる架台レールが設けられた架台を備えることが好ましい。
このように、架台レールによりマニピュレータをアームの屈曲方向と直交する方向へスライド移動させることで、マニピュレータと対象果実との横方向の位置合わせを可能とし、精度良く把持ハンドを対象果実に接近させることが可能となる。
【0012】
さらに、高設栽培の栽培ベンチ上に前記果実の株が載置された果実栽培施設に用いられる果実収穫装置であって、前記栽培ベンチの下方に、該栽培ベンチの延設方向に沿って敷設された下部レールを有し、該下部レール上を前記架台が走行するように構成されたプラットフォームを備えることが好ましい。
このように、栽培ベンチの下方に果実収穫装置を設置することにより、通路裏側に多く存在する色づいた果実に接近しやすくなり作業効率が向上し、且つ対象果実とマニピュレータとの距離が近づくことから、把持ハンドを接近させる際に他の果実に触れることを防止できる。
【0013】
また、前記プラットフォームは、前記栽培ベンチの下方に敷設された下部レールが複数並列配置されているとともに、複数の前記下部レール間を連結する架橋レールが設けられていることが好ましい。
このように、下部レールと架橋レールとにより果実収穫装置が果実栽培施設をXY方向に移動可能とすることで、遠隔操作等で人手を介さずに施設内の果実を収穫することが可能となり、作業効率の向上が図れる。
【0014】
さらに、前記把持ハンドは、前記アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることが好ましく、これによりアームを左右に駆動させることで栽培ベンチの左右両側の果実を収穫することが可能となり、より一層作業効率を向上させることができる。
【0015】
さらにまた、前記支柱に設けられ前記果実との距離を検出するステレオカメラと、前記把持ハンドに設けられ前記果実の垂直方向及び水平方向の位置を検出するカメラとを備えることが好ましい。
本構成では、最初にステレオカメラで把持ハンドと果実との距離を含む大まかな果実の位置を検出しておき、この検出位置に基づきマニピュレータを接近させ、把持ハンドに設けられたカメラで垂直方向及び水平方向の正確な位置を検出することで、果実の位置を効率的に且つ精度良く検出することができ、これにより他の果実を傷つけることなく把持ハンドを果実に接近させることが可能となる。
また、前記ステレオカメラ及び前記位置検出カメラは、前記アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることが好ましく、これにより、アーム機構が、屈曲方向のいずれの側の果実を収穫する場合においても果実の位置を正確に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のように本発明によれば、アーム機構の軸構成を鉛直方向のみに3自由度で屈曲する構成とし、アーム部が水平方向に屈曲しないようにしたため、近隣の果実にアーム部や把持ハンドが接触することなく把持ハンドを収穫対象である果実に接近させることができる。これにより果実を傷めずに高品質な状態で収穫することが可能となる。
さらに、アーム機構の鉛直方向の屈曲動作は水平方向の屈曲動作よりも時間が短いため、収穫時間を短縮化でき、作業効率の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の実施形態に係る果実収穫装置の全体構成を示す斜視図で、(B)はマニピュレータの拡大図である。
【図2】栽培ベンチの左右両側の果実を収穫する場合のマニピュレータの動作を説明する図である。
【図3】把持ハンドの具体的構成を示す図であり、(A)は把持ハンドの斜視図で、(B)は(A)をC方向から見た把持ハンドの平面図である。
【図4】把持ハンドの動作を説明する模式図である。
【図5】架台の斜視図である。
【図6】プラットフォームの平面図である。
【図7】図6のD部分の拡大斜視図である。
【図8】果実収穫装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図9】果実収穫装置による収穫作業を説明するフローチャートである。
【図10】果実収穫装置の具体的な動作を説明する図(前半)である。
【図11】果実収穫装置の具体的な動作を説明する図(後半)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
本発明の実施形態に係る果実収穫装置は、栽培空間に複数の対象果実が吊下している果実の収穫を行なう装置であり、収穫対象果実としては、例えば、イチゴ、トマト、ぶどう、さくらんぼ等が挙げられる。さらに、本発明の実施形態に係る果実収穫装置は、高設栽培される果実の収穫に特に適している。
以下に示す実施形態では、果実収穫装置をイチゴの高設栽培に適用した場合を例に挙げて説明しているが、対象果実及び栽培方式はこれに限定されるものではない。
【0020】
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る果実収穫装置の全体構成を説明する。図1(A)は本発明の実施形態に係る果実収穫装置の全体構成を示す斜視図で、(B)はマニピュレータの拡大図である。
同図には、果実収穫装置1が設置されたイチゴの高設栽培施設100の一部が示されている。この高設栽培施設100には、土耕栽培又は水耕栽培によるイチゴの結実時に、イチゴ111が垂れ下がるように栽培するための栽培ベッド101と、栽培ベッド101を所定高さで支持する複数の脚(図示略)とが設けられている。この栽培ベッド101は上部から吊下してもよい。なお、本実施形態では、栽培ベッド101の長手方向をY軸方向、短手方向をX軸方向、これらX軸及びY軸に垂直な方向をZ軸方向として説明する。
【0021】
本発明の実施形態に係る果実収穫装置1は、栽培ベンチ101の下方空間に設置される。果実収穫装置1は、地面上にY軸方向に延設された架台30と、架台30上に設置されたマニピュレータ2と、ステレオカメラ21及びカメラ22とを備える。架台30の構成については後述する。
前記マニピュレータ2は、支柱基部3aから鉛直方向(Z軸方向)に延設された支柱3と、支柱3上部に取り付けられたアーム機構と、アーム機構の先端に取り付けられた把持ハンド10とを有する。
【0022】
前記アーム機構は、第1のアーム部5と第2のアーム部7と第3のアーム部9とを有し、鉛直面内で駆動する3軸(3自由度)のアーム機構となっている。
前記第1のアーム部5は、直線状に形成され、第1の軸4を介して支柱3に取り付けられている。該第1のアーム部5は、第1の軸4を中心に鉛直面内で屈曲動作するように構成されている。好適には、第1のアーム部5は、支柱3の頂部に取り付けられ、支柱3を中心に最大屈曲角が±100°旋回するように構成されているとよい。
【0023】
前記第2のアーム部7は、直線状に形成され、第2の軸6を介して第1のアーム部5に取り付けられている。該第2のアーム部7は、第2の軸6を中心に鉛直面内で屈曲動作するように構成されている。なお、第1の軸4と第2の軸6とは、第1のアーム部5の両端部にそれぞれ設けられていることが好ましい。
前記第3のアーム部9は、直線状に形成され、第3の軸8を介して第2のアーム部7に取り付けられている。該第3のアーム部9は、第3の軸8を中心に鉛直面内で屈曲動作するように構成されている。なお、第2の軸6と第3の軸8とは、第2のアーム部7の両端部にそれぞれ設けられていることが好ましい。また、第3のアーム部9の先端には、把持ハンド10が設けられている。把持ハンド10については後述する。
【0024】
上記した各アーム部を有するアーム機構では、第3のアーム部9の先端に取り付けられた把持ハンド10がイチゴ111収穫に適した角度となるように該第3のアーム部9が駆動されるとともに、把持ハンド10と収穫対象イチゴ111との高さ方向及び奥行き方向の位置を合わせるように第1のアーム部5及び第2のアーム部7が駆動されるようになっている。なお、第3のアーム部9の果実収穫に適した角度とは、把持ハンド10でイチゴ111を把持するのに最適な第3のアーム部9の角度をいい、好適には水平とする。また、前記奥行き方向とは、アーム機構が駆動する鉛直面内における水平方向であり、すなわちX方向をいう。
【0025】
このように、アーム機構の軸構成を鉛直方向のみに3自由度で屈曲する構成とし、アーム部5、7、9が水平方向に屈曲しないようにしたため、近隣のイチゴにアーム部5、7、9や把持ハンド10が接触することなく把持ハンド10を収穫対象であるイチゴ111に接近させることができる。これによりイチゴ111を傷めずに高品質な状態で収穫することが可能となる。
さらに、アーム機構の鉛直方向の屈曲動作は水平方向の屈曲動作よりも時間が短いため、収穫時間を短縮化でき、作業効率の向上が可能となる。
【0026】
前記ステレオカメラ21は、支柱3の上部に設置され、主に収穫対象イチゴ111までの距離(X軸方向)を検出する。もちろん、ステレオカメラ21は、垂直方向(Z軸方向)及び水平方向(Y軸方向)における収穫対象イチゴ111の大まかな位置も検出できる。また、ステレオカメラ21は、アーム屈曲方向の両側の栽培ベッド101に向けて一対ずつ配置することが好ましい。
前記カメラ22は、把持ハンド10に取り付けられ、該把持ハンド10がイチゴ111に近接した時に、垂直方向(Z軸方向)及び水平方向(Y軸方向)における収穫対象イチゴ111の正確な位置を検出する。また、カメラ22も前記ステレオカメラ21と同様に、アーム屈曲方向の両側の栽培ベッド101に向けて一対ずつ配置することが好ましい。
このようなカメラ構成により、最初にステレオカメラ21で把持ハンド10とイチゴ111との距離を含む大まかなイチゴ111の位置を検出しておき、この検出位置に基づきマニピュレータ2を接近させ、把持ハンド10に設けられたカメラ22で垂直方向及び水平方向の正確な位置を検出することで、イチゴ111の位置を効率的に且つ精度良く検出することができ、これにより他のイチゴを傷つけることなく把持ハンド10をイチゴ111に接近させることが可能となる。
また、ステレオカメラ21及びカメラ22が、アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることにより、アーム機構が、屈曲方向のいずれの側のイチゴ111を収穫する場合においてもイチゴ111の位置を正確に検出することが可能となる。
【0027】
次に、図2乃至図4を参照して、マニピュレータ10の動作を説明する。
図2は、栽培ベンチの左右両側に吊下する果実を収穫する場合のマニピュレータの動作を説明する図である。
図2(A)に示すように、果実収穫装置1は、先に栽培ベンチ101の一側(図面では左側)のイチゴ111aに対して把持ハンド10Aを接近させるために、第1の軸4を介して第1のアーム部5を鉛直面内で屈曲させるとともに、第2の軸6を介して第2のアーム部7を鉛直面内で屈曲させて、把持ハンド10Aを図中矢印の方向に鉛直方向に旋回させる。このとき、第3の軸8を介して第3のアーム部9を屈曲させ、把持ハンド10Aを水平に維持する。
把持ハンド10Aが収穫対象イチゴ111aに接近したら、該把持ハンド10Aによりイチゴ上方の茎(果柄)を掴み、その上部を切断してイチゴ111aを把持する。再度各アーム部5、7、9を駆動させて、把持したイチゴ111aをマニピュレータ2の左右に配置されたトレイ50に置く。
【0028】
次いで、栽培ベンチ101の他側(図面では右側)の収穫対象イチゴ111bに対して、先ほどと反対側の把持ハンド10Bを接近させるために、上記と同様に第1のアーム部5、第2のアーム部7、第3のアーム部9を駆動させ、把持ハンド10Bを図中矢印の方向に鉛直方向に旋回させる。
把持ハンド10Bが収穫対象イチゴ111bに接近したら、該把持ハンド10Bによりイチゴ上方の茎(果柄)を掴み、その上部を切断してイチゴ111bを把持する。再度各アーム部5、7、9を駆動させて、把持したイチゴ111bをマニピュレータ2の左右に配置されたトレイ50に置く。
【0029】
上記したように、果実収穫装置1は、栽培ベンチ11の左右両側に延出する一対の把持ハンド10A、10Bを備えていることが好ましく、これによりマニピュレータ2自体の向きを変えることなく、アーム機構を左右に駆動させるのみで栽培ベンチ101の左右両側のイチゴ111a、111bを収穫することが可能となり、より一層作業効率を向上させることができる。
【0030】
ここで、把持ハンド10の詳細な構成を説明する。図3は把持ハンドの具体的構成を示す図であり、(A)は把持ハンドの斜視図で、(B)は(A)をC方向から見た把持ハンドの平面図である。なお、図3に示す把持ハンドの構成は一例であり、この構成に限定されるものではない。
把持ハンド10は、連結部11と、モータ12と、第1爪部14と、第2爪部15と、平行リンク機構16とを有している。なお、本実施形態では、把持ハンド10はイチゴの茎の切断と把持の両方の機能を有する。
【0031】
前記連結部11は、把持ハンド10を第3のアーム部9に連結するための部位であり、さらに該連結部11は、第3のアーム部9に対して把持ハンド10を着脱自在に連結する構成であることが好ましい。
前記モータ12は、平行リンク機構16を駆動させて、第1爪部14及び第2爪部15の少なくとも一方を移動させ、第1爪部14と第2爪部を開閉する。
【0032】
前記第1の爪部14と前記第2爪部15は平行に配置され、平行リンク機構16により互いに平行な状態を維持したまま開閉するようになっている。
前記第1爪部14は、内側(第2の爪部側)にカミソリ片刃等の刃17が取り付けられており、さらに刃17の裏側にゴム状体18が貼着されている。なお、刃17及びゴム状体18はいずれも交換可能であることが好ましい。また、刃17の裏側にゴム状体18を貼着しているため、果柄切断時に可動側爪部をさらに押し込むことで果柄を確実に切断できるとともに、第2の爪部15で果柄をゴム状体18に押圧した状態で該果柄を把持することができ、イチゴ111をトレイ50に移動させるようになっている。
【0033】
また、第1爪部14の先端は、内側に向けて傾斜したテーパ部19が形成されている。さらに好適には、第2爪部15の先端は、外側に向けて傾斜したテーパ状とする。このようにテーパ部19を設けることで、画像処理により算出した把持位置が、実際の収穫対象イチゴ111の位置から横方向に多少外れてしまっても、イチゴ111を確実に刃17へ誘導することが可能で、さらに第1爪部14の先端(及び第2爪部15の先端)を細くできることから、群生しているイチゴ111の隙間を縫って目標果柄に接近することが可能となる。
さらにまた、第1爪部14は、刃17より基部側にストッパ20が設けられている。このようにストッパ20を設けることにより、把持ハンド10が目標位置より多少突っ込んでしまっても果柄を刃17の位置にとどめることができる。
【0034】
図4は把持ハンドの動作を説明する模式図である。
上記した構成を備える把持ハンド10では、図4(A)に示すように、まず第2のアーム部7を駆動して片側の把持ハンド10Aをイチゴ111に接近させる。このとき、第3のアーム部9を、把持ハンド10Aによるイチゴ収穫に最適な角度となるように、好適には水平に維持する。このとき第1爪部14と第2爪部15とを開いた状態としておく。そして、図4(B)に示すように、イチゴ111の果柄が把持ハンド10Aの第1爪部14と第2爪部15の間にきたら第1、第2アーム部の駆動を停止する。このとき、図3に示すように、第1アーム部14のテーパ部19に収穫対象イチゴ111の茎を押し当てることによってテーパ部19を滑らせて第1爪部14と第2爪部15の間にイチゴ111の果柄を入り込ませ、ストッパ20で果柄を刃17の位置に固定することが好ましい。次いで、図4(C)に示すように、平行リンク機構16(図3参照)を駆動させて第2爪部15を閉じる側へ動かし、刃17で果柄を切断する。このようにして果柄を切断したイチゴ111を、図4(D)に示すように、第1の爪部14のゴム状体18(図3参照)と第2の爪部15とで把持し、トレイ50まで移送する。
【0035】
図5は架台の斜視図である。
果実収穫装置1は、支柱3をアーム機構の屈曲方向に直交する方向へスライド移動させる架台レール32が設けられた架台30を備えている。
架台30は、栽培ベンチ101の長手方向(Y軸方向)に平行に設置される。架台30上には、Y軸方向に所定長さの架台レール32が設けられており、移動テーブル25は架台30上を架台レール32に沿って移動可能となっている。
【0036】
このように、架台30によりマニピュレータ2をアーム機構の屈曲方向と直交する方向へスライド移動させることで、マニピュレータ2とイチゴ111との横方向の位置合わせをすることができ、精度良く把持ハンド10を収穫対象イチゴ111に接近させることが可能となる。
【0037】
図6はプラットフォームの一例を示す平面図で、図7は図6のD部分の拡大斜視図である。
上記した架台30は、高設栽培施設100内をXY方向に移動可能なプラットフォーム40上を移動する構成となっている。
プラットフォーム40は、主として栽培ベンチ101の下方に設置された下部レール41と、栽培ベンチ101間を連結する架橋レール42とを有している。
【0038】
ここでは一例として、架橋レール42が、複数の下部レール41に架け渡されたメインフレーム43上に形成された構成を示している。メインフレーム42は、栽培ベンチ101の延設方向に直交する方向(X方向)に配置され、駆動制御部45により栽培ベンチ101の延設方向(Y方向)に下部レール41上をスライド移動するようになっている。
【0039】
架台30は、メインフレーム42上をX方向に移動して、対象とする果実列の栽培ベンチ101の下で停止し、イチゴ111の収穫作業を行なう。架台30上で収穫適期果を収穫し終えたらメインフレーム42をY方向に所定距離移動させて、再度イチゴ11の収穫作業を行なう。対象とする果実列において全ての収穫適期果を収穫し終えたら、架台30をメインフレーム42上でX方向に移動させて隣の果実列の収穫作業を行なう。
【0040】
このように、栽培ベンチ101の下方に果実収穫装置1を設置することにより、通路裏側に多く存在する色づいたイチゴ111に接近しやすくなり作業効率が向上し、且つ対象イチゴ111とマニピュレータ2との距離が近づくことから、把持ハンド10を接近させる際に他のイチゴに触れることを防止できる。
さらにまた、下部レール41と架橋レール42とにより果実収穫装置1が果実栽培施設100をXY方向に移動可能とすることで、遠隔操作等で人手を介さずに施設内のイチゴを収穫することが可能となり、作業効率の向上が図れる。
【0041】
図8は本実施形態に係る果実収穫装置のシステム構成を示すブロック図である。
果実収穫装置1は、架台30上に設置されたマニピュレータ用制御手段51と、第1の軸4を駆動するためのモータドライバ52と、第2の軸6を駆動するためのモータドライバ53と、第3の軸8を駆動するためのモータドライバ54と、把持ハンド10を開閉駆動するためのモータドライバ55とを有している。
【0042】
マニピュレータ用制御手段51は、遠隔に設置された遠隔制御手段60からの制御信号を、無線LAN手段61を介して受信し、これに応じて各駆動機構を制御する。この制御信号を受けて、イチゴ111の収穫を実施する場合には、最初に支柱3に設けられたステレオカメラ21からの信号が制御手段51に入力されてイチゴ111の大まかな位置を検出し、これに基づきモータドライバ51〜53により第1のアーム部5、第2のアーム部7、第3のアーム部9を駆動させる。次いで、把持ハンド10に設けられたカメラ(ハンドアイカメラ)22からの信号が制御手段51に入力され、イチゴ111の正確な位置が検出され、これに基づいて第3のアーム部9をイチゴ111に接近させ、モータドライバ55により把持ハンド10を閉じてイチゴ111の果柄を切断、把持する。
【0043】
また、把持ハンド10には、光ファイバセンサ23等の物体検出センサが設けられていることが好ましく、イチゴ111の果柄を切断した後に、確実にイチゴ111が把持されているか否かを光センサ23で判断し、把持されている場合にのみトレイ50にイチゴを移送するとよい。これにより、イチゴが把持されていない場合に、トレイ50までアーム機構を駆動する時間が短縮でき、作業効率の向上が図れる。
さらに、移動制御手段64からの信号に基づいて、モーション制御手段63により架台30上でのマニピュレータ2の移動を制御するようにしてもよい。さらにまた、XY移動プラットフォーム制御ユニット62からの信号に基づいて、モーション制御手段63により架台30のプラットフォーム40上での移動を制御するようにしてもよい。
【0044】
図9乃至図11を参照して、本発明の実施形態に係る果実収穫装置の処理フローを説明する。図9は果実収穫装置による収穫作業を説明するフローチャートで、図10及び図11は果実収穫装置の具体的な動作を説明する図である。
収穫作業が開始されたら、まずマニピュレータ2が架台30上を架台レール31に沿ってホームポジションに移動する。ホームポジションは予め設定されているもので、例えば架台レール31の端部である。
【0045】
次に、栽培ベンチ101の片列側のステレオカメラ21により収穫時期のイチゴ111を検出する。さらに反対列側のステレオカメラ21により収穫時期のイチゴ111を検出する。マニピュレータ用制御手段51により収穫時期のイチゴ111があるか否かを判断する。これは、例えば、ステレオカメラ21の撮像画像を画像処理し、画像中のイチゴが赤く色づいた面積の割合等により収穫時期を判断してもよい。
【0046】
収穫時期のイチゴが画像中に存在しない場合には、プラットフォーム40上で下部レール41に沿って架台30を移動させる。このとき、収穫列の終点まで到達したか否かを判断し、到達していない場合には、マニピュレータ2がホームポジションまで移動して先ほどと同様に収穫時期のイチゴを探す。収穫列の終点まで到達した場合には、収穫作業を終了する。
一方、ステレオカメラ21の撮像画像に基づいて収穫時期のイチゴ111があると判断された場合には、画像から検出したイチゴの収穫順番を決定する。これは、予め設定された規則に基づいて決定することが好ましく、この規則は、例えばイチゴの位置から順番を算出する。
【0047】
ここで算出された順番に基づいて、図10(A)のように、最も順番が早い収穫対象イチゴ111の前方まで架台30上でマニピュレータ2を移動する。
そして、図10(B)のように、把持ハンド10に内蔵されたカメラ22で、収穫対象イチゴ111の切断・把持位置を検出し、把持動作に入る。図10(C)のように、把持ハンド10を開き、第1爪部14先端のテーパ部19をイチゴの果柄に接近させ、テーパ部19に果柄を押し付けて第1爪部14と第2爪部15の間に茎を滑り込ませる。ストッパ20に果柄が当接した状態で、刃14により茎を切断し、把持機構で果柄を把持する。
【0048】
把持ハンド10が果実列から離れたら、把持ハンド10内に内蔵された光ファイバセンサ23がイチゴ111に反応したか否かを判断し、反応している場合には確実にイチゴ111が把持されていることが確認できるため、図10(D)のように収穫したイチゴ111をトレイ50に置く。光ファイバセンサ23が反応していない場合には、果柄を切断できなかったか又はイチゴが落下してしまったため、イチゴを把持していないことが確認できるため、次の未収穫イチゴを探索する。
同様に、図11(E)のように反対列の収穫対象イチゴ111もステレオカメラ21により検出し、図11(F)のように検出したイチゴ111の果柄を把持ハンド10で切断し、把持機構で把持し、図11(G)のように収穫したイチゴ111をトレイ50に置く。
【0049】
未収穫イチゴがあるか否かを判断し、未収穫イチゴがある場合には、上記したようにマニピュレータ2を未収穫イチゴの前方に移動させる。未収穫イチゴがない場合には、図11(H)のようにプラットフォーム40上で架台30を移動させて次のイチゴの収穫を行なう。そして、収穫列の終点まで到達したら収穫作業を終了する。
【符号の説明】
【0050】
1 果実収穫装置
2 マニピュレータ
3 支柱
4 第1の軸
5 第1のアーム部
6 第2の軸
7 第2のアーム部
8 第3の軸
9 第3のアーム部
10 把持ハンド
21 ステレオカメラ
22 CCDカメラ
30 架台
31 レール
40 プラットフォーム
41、42 レール
100 高設栽培施設
101 栽培ベンチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培空間に複数の対象果実が吊下している果実の収穫装置において、
前記収穫装置は、鉛直方向に延設された支柱にアーム機構が取り付けられ、前記アーム機構の先端に設けられた把持ハンドで果実を把持して収穫するマニピュレータを備えており、
前記アーム機構は、前記支柱に第1の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第1のアーム部と、前記第1のアーム部に第2の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第2のアーム部と、前記第2のアーム部に第3の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第3のアーム部とを有する3軸のアーム機構であり、
前記第3のアーム部の先端に取り付けられた前記把持ハンドが果実収穫に適した角度となるように該第3のアーム部が駆動されるとともに、前記把持ハンドと前記果実との高さ方向及び奥行き方向の位置を合わせるように前記第1のアーム部及び前記第2のアーム部が駆動されることを特徴とする果実収穫装置。
【請求項2】
前記支柱が載置されるとともに、該支柱を前記アーム機構の屈曲方向と直交する方向へスライド移動させる架台レールが設けられた架台を備えることを特徴とする請求項1に記載の果実収穫装置。
【請求項3】
高設栽培の栽培ベンチ上に前記果実の株が載置された果実栽培施設に用いられる果実収穫装置であって、
前記栽培ベンチの下方に、該栽培ベンチの延設方向に沿って敷設された下部レールを有し、該下部レール上を前記架台が走行するように構成されたプラットフォームを備えることを特徴とする請求項2に記載の果実収穫装置。
【請求項4】
前記プラットフォームは、前記栽培ベンチの下方に敷設された下部レールが複数並列配置されているとともに、複数の前記下部レール間を連結する架橋レールが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の果実収穫装置。
【請求項5】
前記把持ハンドは、前記アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の果実収穫装置。
【請求項6】
前記支柱に設けられ前記果実との距離を検出するステレオカメラと、前記把持ハンドに設けられ前記果実の垂直方向及び水平方向の位置を検出するカメラとを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の果実収穫装置。
【請求項7】
前記ステレオカメラ及び前記位置検出カメラは、前記アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることを特徴とする請求項6に記載の果実収穫装置。
【請求項1】
栽培空間に複数の対象果実が吊下している果実の収穫装置において、
前記収穫装置は、鉛直方向に延設された支柱にアーム機構が取り付けられ、前記アーム機構の先端に設けられた把持ハンドで果実を把持して収穫するマニピュレータを備えており、
前記アーム機構は、前記支柱に第1の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第1のアーム部と、前記第1のアーム部に第2の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第2のアーム部と、前記第2のアーム部に第3の軸を介して取り付けられ鉛直面内で屈曲する第3のアーム部とを有する3軸のアーム機構であり、
前記第3のアーム部の先端に取り付けられた前記把持ハンドが果実収穫に適した角度となるように該第3のアーム部が駆動されるとともに、前記把持ハンドと前記果実との高さ方向及び奥行き方向の位置を合わせるように前記第1のアーム部及び前記第2のアーム部が駆動されることを特徴とする果実収穫装置。
【請求項2】
前記支柱が載置されるとともに、該支柱を前記アーム機構の屈曲方向と直交する方向へスライド移動させる架台レールが設けられた架台を備えることを特徴とする請求項1に記載の果実収穫装置。
【請求項3】
高設栽培の栽培ベンチ上に前記果実の株が載置された果実栽培施設に用いられる果実収穫装置であって、
前記栽培ベンチの下方に、該栽培ベンチの延設方向に沿って敷設された下部レールを有し、該下部レール上を前記架台が走行するように構成されたプラットフォームを備えることを特徴とする請求項2に記載の果実収穫装置。
【請求項4】
前記プラットフォームは、前記栽培ベンチの下方に敷設された下部レールが複数並列配置されているとともに、複数の前記下部レール間を連結する架橋レールが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の果実収穫装置。
【請求項5】
前記把持ハンドは、前記アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の果実収穫装置。
【請求項6】
前記支柱に設けられ前記果実との距離を検出するステレオカメラと、前記把持ハンドに設けられ前記果実の垂直方向及び水平方向の位置を検出するカメラとを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の果実収穫装置。
【請求項7】
前記ステレオカメラ及び前記位置検出カメラは、前記アーム機構の屈曲方向の両側にそれぞれ一対設けられていることを特徴とする請求項6に記載の果実収穫装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−206014(P2011−206014A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79392(P2010−79392)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
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