説明

格納式アウターミラーのシャフト構造

【課題】曲げ剛性の向上と軽量化の両立を図るとともに、組み付け性に優れた格納式ミラーのシャフト構造を提供することを課題とする。
【解決手段】自動車の車体に設けられたミラーベース2に固定されるとともに、ミラーアッセンブリを回動自在に支持する格納式アウターミラーのシャフト構造であって、ミラーベース2に接合される取付ボス部26とクラッチ機構用の凸部27とを備えた基部21と、基部21から上方に向けて延設され筒状を呈する筒状部22と、を有し、凸部27の内部が中空に形成されているとともに、基部21の外周に、ミラーベース2の座面に当接するフランジ27b,26cが形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサイドドア付近に取り付けられる格納式アウターミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の側面に取り付けられるアウターミラーは、ミラーの鏡面が自動車の側面に対して略直角となる使用位置と、ミラーの鏡面が自動車の側面に対して略平行となる格納位置とでミラーアッセンブリが回動する格納式アウターミラーが一般的に採用されている。
【0003】
従来のアウターミラーは、特許文献1に示すように、自動車の車体の側面からその側方に向けて張り出されるミラーベースと、ミラーベースに立設されたシャフトと、シャフトを軸としてミラーベースに対して回動自在に取り付けられたミラーアッセンブリとを有する。
【0004】
また、特許文献1に係るアウターミラーは、ミラーベースに形成された凹状のリセス部と、ミラーアッセンブリに内装されるフレームに突設された突起部とからなるクラッチ機構を有している。クラッチ機構によれば、ミラーアッセンブリに車両前方側又は車両後方側から外力が加わった時に、ミラーアッセンブリが車両後方側又は車両前方側に倒れることでその外力を逃がし、アウターミラーの破損等を回避することができる。
【0005】
前記したシャフトは、ミラーアッセンブリの回転軸としての機能を備えるとともに、ミラーベースとミラーアッセンブリを連結する機能を備えるため、曲げ剛性を高くしなければならない。シャフトの肉厚を厚くすることにより、曲げ剛性を高めることができるが、軽量化やコストダウンを図れないという問題があった。つまり、シャフトの曲げ剛性の向上と、軽量化の両立を図ることは困難であった。そこで、特許文献1には、鋼板に深絞り加工を施してシャフトを成形する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−125810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る発明では、深絞り加工によりシャフトを成形することで、シャフトの形状を単純なストレート形状とし、軽量化及びコストダウンを狙っているが、シャフトにクラッチ機構やボス等の締結部が形成されていない。したがって、アウターミラーを組み付ける際には、ミラーベースとフレームの回動中心の位置合わせを行いつつ、前記したクラッチ機構(リセス部及び突起部)の係合作業を行わなければならず作業が煩雑になる。このようにアウターミラーの組み付け性が低いと、アウターミラーの回動の際にガタが発生しやすくなるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、曲げ剛性の向上と軽量化の両立を図るとともに、組み付け性に優れた格納式ミラーのシャフト構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために本発明は、自動車の車体に設けられたミラーベースに固定されるとともに、ミラーアッセンブリを回動自在に支持する格納式アウターミラーのシャフト構造であって、前記ミラーベースに接合される取付ボス部とクラッチ機構用の凸部とを備えた基部と、前記基部から上方に向けて延設され筒状を呈する筒状部と、を有し、前記凸部の内部が中空に形成されているとともに、前記基部の外周に、前記ミラーベースの座面に当接するフランジが形成されていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、シャフトの基部にミラーベースに取り付けられる取付ボスと、クラッチ機構用の凸部を備えているため、ミラーベース及びミラーアッセンブリとの組み付け性に優れる。これにより、回動の際のガタの発生を防止することができるとともに、自動車用ドアミラー製造における歩留まりを向上させることができる。また、凸部の内部が中空に形成されているため、シャフトの軽量化を図ることができる。また、基部の外周に、ミラーベースの座面に当接するフランジを備えることで、シャフトを座面に組み付けた際の曲げ剛性を高めることができる。
【0011】
また、前記基部と前記筒状部は、鋼板に深絞り加工を施して一体成形されていることが好ましい。かかる構成によれば、シャフトを容易に成形することができる。また、深絞り加工によって加工硬化が発生するため、シャフトの剛性を高めることができる。また、基部及び筒状部の内部が中空に形成されるため、より軽量化を図ることができる。
【0012】
また、複数の前記凸部及び前記取付ボス部が前記筒状部の周囲に放射状に形成されているとともに、前記凸部と前記取付ボス部とが交互に形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、ミラーベースにシャフトをバランスよく組み付けることができる。
【0013】
また、前記基部は、少なくとも前記取付ボス部を備えた第一部材と、少なくとも前記凸部とを備えた第二部材とを組み合わせて構成されていることが好ましい。かかる構成によれば、各部材を容易に成形することができる。また、シャフトの基部が二つの部材から構成されるため、形状の変更やメンテナンスに柔軟に対応することができる。
【0014】
また、前記第一部材及び前記第二部材は、鋼板に深絞り加工を施してそれぞれ成形されていることが好ましい。かかる構成によれば、各部材をより容易に成形することができる。また、深絞り加工によって加工硬化が発生するため、各部材の剛性を高めることができる。また、各部材の内部が中空に形成されるため軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る格納式アウターミラーのシャフト構造によれば、耐久性の向上やコストダウンが図れるとともに、組み付け性の向上により自動車用ドアミラー製造における歩留まりを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一実施形態に係るアウターミラーの分解斜視図である。
【図2】第一実施形態に係るシャフトを示した斜視図である。
【図3】第一実施形態に係るシャフトを示した図であって、(a)は、平面図、(b)は、底面図である。
【図4】第一実施形態に係るシャフトの成形方法を段階的に示した斜視図である。
【図5】第一実施形態に係るシャフトの組み付け状態を示した図であって、(a)は、図2のX−X線における側断面図、(b)は、(a)のI部分の拡大図である。
【図6】第二実施形態に係るシャフトの斜視図である。
【図7】第二実施形態に係るシャフトの第一部材を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、平面図である。
【図8】第二実施形態に係るシャフトの第二部材を示した斜視図であって、(a)は、正面から見た図、(b)は背面側から見た図である。
【図9】第二実施形態に係るシャフトの側面図であって、(a)は、正面から見た図、(b)は、背面から見た図である。
【図10】第二実施形態に係るシャフトの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
以下、本発明の実施の形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。なお、説明中の上下方向は、車体Sの上下を基準とする。
第一実施形態に係る格納式アウターミラー1(以下、単にアウターミラーという)は、図1に示すように、自動車の車体Sのサイドドア付近に付設されるいわゆるドアミラーであり、車体Sの側面からその側方に向かって張り出すミラーベース2と、ミラーベース2に固定されるシャフト3と、シャフト3を回動軸として、ミラーベース2に略水平方向に回動可能に設けられたミラーアッセンブリ4とを備えている。
【0018】
ミラーベース2は、樹脂からなりシャフト3を介してミラーアッセンブリ4を支持する部材である。ミラーベース2は、図1に示すように、車体Sに取り付けられるベース取付部11と、ベース取付部11から側方に張り出した支持部12とを主に有している。
【0019】
ベース取付部11は、車体Sの内側からビス等の固定部材で取り付けられる。支持部12は、シャフト3が当接する座面13と、座面13の中央に形成された貫通孔14と、座面13の周囲に形成された規制溝15,15と、座面13を貫通するビス孔16,16,16と、座面13の上面に形成された位置決め穴17と、座面13の上面に形成された位置決め突部18a,18bとを有する。
【0020】
座面13は、支持部12の上面12aよりも一段下がった位置に形成されている。座面13は、シャフト3の底部の形状に合わせて平面視略円形に形成されている。座面13の中央に形成された貫通孔14には、ミラーアッセンブリ4側に電気を供給するための電気コード等が挿通される。
【0021】
規制溝15,15は、座面13の周囲に沿ってそれぞれ平面視円弧状に形成されている。規制溝15の底面は、座面13よりも一段下がった位置に形成されている。規制溝15は、後記するピボット部42のストッパー46(図5参照)と係合することで、ミラーアッセンブリ4の回動を規制する。
【0022】
ビス孔16は、シャフト3を固定するための孔であって、シャフト3の取付ボス部(第一取付ボス部24,第二取付ボス部25,第三取付ボス部26:図2参照)に対応する位置にそれぞれ形成されている。位置決め穴17は、座面13の上面に平面視円環状に突設されている。位置決め穴17には、後記するシャフト3の位置決め部31(図3の(b)参照)が嵌め合わされる。
【0023】
位置決め突部18a,18bは、座面13の上面に突設されている。位置決め突部18a,18bには、後記するシャフト3の嵌合部30a,30bにそれぞれ嵌め合わされる。つまり、位置決め穴17は、位置決め部31に、位置決め突部18a,18bは、嵌合部30a,30bにそれぞれ嵌め合わされるため、シャフト3の位置決めを容易に行うことができる。
【0024】
シャフト3は、図2に示すように、支持部12に当接する基部21と、基部21から上方に向けて延設された筒状部22とを有する。本実実施形態に係るシャフト3は、深絞り加工によって一体成形されているため、内部は上下方向に連通して中空に形成されるとともに、基部21の底部は面一に形成されている。
【0025】
基部21は、筒状部22の下側の周囲に放射状に形成された3つの取付ボス部(第一取付ボス部24、第二取付ボス部25、第三取付ボス部26)と、隣り合う取付ボス部の間に形成された3つの凸部(第一凸部27、第二凸部28、第三凸部29)と、を主に有する。
【0026】
第一取付ボス部24、第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26は、略同等の構成からなり、ビスB(図1参照)を介してミラーベース2の座面13に接合される。第一取付ボス部24、第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26の各下面は、同一平面上に形成されている。
【0027】
第一取付ボス部24は、ボス底部24aと、ボス底部24aに突設された取付ボス24bと、ボス底部24aの外側に延設されたフランジ24cとを有する。ボス底部24aの下面は、ミラーベース2の座面13に当接する。ボス底部24aの上面には、円筒状を呈し、内部に雌ネジが刻設された取付ボス24bが形成されている。フランジ24cは、ボス底部24aの外側に張り出すように平面視円弧状に形成されている。フランジ24cの外周縁の曲率半径は、ミラーベース2の座面13の外周縁の曲率半径と同等に形成されている。ボス底部24a及びフランジ24cは、同一平面上に形成されており、ミラーベース2の座面13に当接する。
【0028】
第二取付ボス部25は、図2及び図3に示すように、ボス底部25aと、ボス底部25aに突設された取付ボス25bと、ボス底部25aの外側に延設されたフランジ25cとを有する。また、第三取付ボス部26は、ボス底部26aと、ボス底部26aに突設された取付ボス26bと、ボス底部26aの外側に延設されたフランジ26cとを有する。第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26の構成は、第一取付ボス部24と配設位置を除いては略同等であるため、詳細な説明は省略する。
【0029】
第一凸部27、第二凸部28及び第三凸部29は、図2及び図3に示すように、筒状部22の周囲において、第一取付ボス部24、第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26と交互に形成されている。第一凸部27、第二凸部28及び第三凸部29は、後記するミラーアッセンブリ4のフレーム41と係合することでクラッチ機構を構成する。
【0030】
第一凸部27は、図2に示すように、筒状部22の下部に連続して形成されている。第一凸部27は、外側に膨出する膨出部27aと、膨出部27aの下端において外側に延設されたフランジ27bと、嵌合部30aとを有する。膨出部27aの内部は、中空に形成されている。膨出部27aの形状は、ミラーアッセンブリ4のフレーム41の係合部(図示省略)の形状に合わせて適宜設定される。
【0031】
フランジ27bは、図3の(a)に示すように、膨出部27aの下端から外側に張り出すように形成されており、ミラーベース2の座面13に当接する。フランジ27bは、第二取付ボス部25のフランジ25cに連続するとともにフランジ25cから第一取付ボス部24側に向けて平面視円弧状に形成されている。また、フランジ27bの下面は、第二取付ボス部25のフランジ25cの下面と面一に形成されている。フランジ27bの外周縁の曲率半径は、ミラーベース2の座面13の外周縁の曲率半径と同等に形成されている。
【0032】
嵌合部30aは、ミラーベース2の位置決め突部18a(図1参照)に嵌め合わされる部分である。嵌合部30aは、膨出部27aの下端において、上方に盛り上がることにより開口している。
【0033】
第二凸部28は、図2及び図3に示すように、筒状部22の下部に連続して形成されている。第二凸部28は、外側に膨出する膨出部28aと、膨出部28aの下端において外側に延設されたフランジ28b(28b,28b)と、膨出部28aの内部に形成された位置決め部31とを有する。膨出部28aの内部は、中空に形成されている。膨出部28aの形状は、ミラーアッセンブリ4のフレーム41の係合部(図示省略)の形状に合わせて適宜設定される。
【0034】
フランジ28bは、膨出部28aの下端から外側に張り出すように形成されており、ミラーベース2の座面13に当接する。フランジ28b(フランジ28bの左側部分)は、図3に示すように、第二取付ボス部25のフランジ25cに連続するとともに、フランジ25cから第三取付ボス部26側に向けて平面視円弧状に形成されている。また、フランジ28bの下面は、第二取付ボス部25のフランジ25cの下面と面一に形成されている。
【0035】
フランジ28b(フランジ28bの右側部分)は、第三取付ボス部26のフランジ26cに連続するとともに、フランジ26cから第二取付ボス部25側に向けて平面視円弧状に形成されている。また、フランジ28bの下面は、第三取付ボス部26のフランジ26cの下面と面一に形成されている。フランジ28b及びフランジ28bの外周縁の曲率半径は、ミラーベース2の座面13の外周縁の曲率半径と同等に形成されている。
【0036】
位置決め部31は、図3の(b)に示すように、膨出部28aの下端に連続し板状を呈する連結部31aと、連結部31aの下面に形成されたピン31bとを有する。連結部31aは、膨出部28aの外側から内側に向けて延設されている。ピン31bは、連結部31aの下面から下方に突出して形成されている。ピン31bは、ミラーベース2の位置決め穴17(図1参照)に嵌め合わされる。
【0037】
第三凸部29は、図2及び図3に示すように、筒状部22の下部に連続して形成されている。第三凸部29は、外側に膨出する膨出部29aと、膨出部29aの下端において外側に延設されたフランジ29bと、嵌合部30bとを有する。膨出部29aの内部は、中空に形成されている。膨出部29aの形状は、ミラーアッセンブリ4のフレーム41の係合部(図示省略)の形状に合わせて適宜設定される。
【0038】
フランジ29bは、膨出部29aの下端から外側に張り出すように形成されており、ミラーベース2の座面13に当接する。フランジ29bは、第三取付ボス部26のフランジ26cに連続するとともに、フランジ26cから第一取付ボス部24側に向けて平面視円弧状に形成されている。また、フランジ29bの下面は、第三取付ボス部26のフランジ26cの下面と面一に形成されている。フランジ29bの外周縁の曲率半径は、ミラーベース2の座面13の外周縁の曲率半径と同等に形成されている。
【0039】
嵌合部30bは、図2に示すように、ミラーベース2の位置決め突部18b(図1参照)に嵌め合わされる部分である。嵌合部30bは、膨出部29aの下端において、上方に盛り上がることにより開口している。
【0040】
筒状部22は、図2に示すように、基部21に連続して上方に延設されている。筒状部22の先端側には、スリット32が三ヶ所に形成されている。筒状部22は、後記するミラーアッセンブリ4のフレーム41に挿通される部分である。
【0041】
シャフト3は、本実施形態では図4に示すように、深絞り加工によって成形されている。シャフト3は、図4の(a)及び(b)に示すように、薄い鋼板Kに対して、一方の面側からシャフト3の外形の形状と近似した押し込み具を押圧して、深絞り加工を行う。さらに、図4の(b)及び(c)に示すように、表面から突出した部分の周囲に形成される余剰部分Kaをトリム加工により切除するととともに、取付ボス部等が形成される部分に穴加工を行ってシャフト3を形成する。なお、本実施形態では、シャフト3を深絞り加工により成形したが、これに限定されるものではなく他の加工方法で成形してもよい。
【0042】
ここで、図2及び図5を用いて基部21とミラーベース2の座面13との組み付け構造について説明する。
前記したように、第一凸部27、第二凸部28及び第三凸部29の各フランジ(27b,28b,29b)の下面と、第一取付ボス部24、第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26の各ボス底部(24a,25a,26a)の下面及び各フランジ(24c、25c,26c)の下面は同一平面上に形成されている。これにより、図5に示すように、基部21の底部とミラーベース2の座面13とが同一平面上で当接するため、安定して配置することができる。
【0043】
また、図4の(b)に示すように、第一凸部27のフランジ27bの端部には、成形過程において不可避的に発生するバリRが形成されるが、当該バリRがフランジ27bの上面に形成されることが好ましい。これにより、基部21において、フランジ27bの下面(ミラーベース2の座面13に当接する部分)を平坦に形成することができるため、より安定してシャフト3を配置することができる。なお、フランジ27bの厚み方向につぶし加工を施すことにより、より平坦性を高めることができる。
なお、同様に、第二凸部28及び第三凸部29の各フランジ(28b,29b)、第一取付ボス部24、第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26の各フランジ(24c、25c,26c)においても、各フランジの上面にバリが形成されるように成形することが好ましい。
【0044】
ミラーアッセンブリ4は、図1に示すように、シャフト3に挿通されるフレーム41と、フレーム41に取り付けられるアクチュエーター41aと、アクチュエーター41aに取り付けられるミラー41bと、フレーム41、アクチュエーター41a及びミラー41bを包囲する図示しないハウジングとを有する。
【0045】
フレーム41は、シャフト3が挿通されるピボット部42と、ピボット部42から側方に張り出した保持部43とを有する。ピボット部42は、図5の(a)に示すように、中央に円筒状の中空部を備えており、当該中空部にシャフト3が挿通される。ピボット部42は、シャフト3と係合するピボット下部44と、コイルバネ48等が収容されるピボット上部45とを有する。
【0046】
ピボット下部44の内側には、シャフト3の第一凸部27、第二凸部28及び第三凸部29と係合する係合部(図示省略)が形成されている。クラッチ機構は、シャフト3の各凸部と、ピボット下部44の係合部とが係合又は解除されることにより機能する。
【0047】
また、ピボット下部44の外側には、規制溝15内を移動するストッパー46,46が形成されている。ストッパー46は、ミラーアッセンブリ4の回動に伴って、規制溝15内を移動するように形成されている。ストッパー46が、規制溝15の端面に当接することでミラーアッセンブリ4の移動が規制される。
【0048】
ピボット上部45には、シャフト3を囲むように環状の凹部47が形成されている。凹部47には、コイルバネ48が配置される。コイルバネ48の上端は、ワッシャ49を介してプレート50で留め付けられている。プレート50は、図1に示すように、平面視U字状に形成されており、シャフト3の先端に形成されたスリット32に係止される。つまり、フレーム41は、コイルバネ48の付勢によってシャフト3に対して常に下方に押し付けられている。
【0049】
フレーム41(ミラーアッセンブリ4)は、回動する際に、クラッチ機構である第一凸部27、第二凸部28及び第三凸部29とフレーム41の係合部(図示省略)とが係合することにより、一旦上方に押し上げられるが、コイルバネ48の付勢によって元の状態に復元する。
【0050】
保持部43は、図1に示すように、アクチュエーター41aを保持する部材である。保持部43は、ポビット部42から側方に張り出しており、アクチュエーター41aを保持するためのボス孔が形成されている。アクチュエーター41aは、ミラー41bを傾倒可能に保持する部材である。
【0051】
以上説明した本実施形態に係るシャフト3の構造によれば、第一取付ボス部24〜第三取付ボス部26及び第一凸部27〜第三凸部29を備えているため、アウターミラー1の組み付けを容易に行うことができる。また、シャフト3の内部(第一凸部27〜第三凸部29および筒状部22)が中空に形成されているため、シャフト3の軽量化を図ることができる。
【0052】
また、ミラーベース2の座面13に当接する各フランジが、基部21の底部の外周に沿って線状に形成されているため、高い曲げ剛性を得ることができる。図3の(b)に示すハッチング部分は、基部21のうちミラーベース2の座面13に当接する部分を示す。即ち、第一凸部27、第二凸部28及び第三凸部29の各フランジ(27b,28b,29b)と、第一取付ボス部24、第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26の各フランジ(24c、25c,26c)は、同心円となるように円弧状かつ線状に形成されているため、曲げ剛性を高めることができる。つまり、シャフト3の軽量化と曲げ剛性の向上の両立を図ることができる。
【0053】
また、フランジ27b及びフランジ28bは、第二取付ボス部25に連続して形成されている。また、フランジ28b及びフランジ29bは、第三取付ボス部26に連続して形成されている。これにより、より曲げ剛性を高めることができる。
【0054】
また、シャフト3を、鋼板Kから深絞り加工によって一体成形するため、容易に製造することができる。また、深絞り加工によって加工硬化が発生するため、シャフト3の剛性を高めることができる。また、内部が中空に形成されるため、シャフト3の軽量化を図ることができる。
【0055】
また、取付ボス部(第一取付ボス部24〜第三取付ボス部26)と凸部(第一凸部27〜第三凸部29)を筒状部22の周囲に交互に配設することによりシャフト3をバランスよく組み付けることができる。
【0056】
[第二実施形態]
次に、図6〜図10を用いて本発明の第二実施形態について説明する。前記したシャフト3は一体成形されていたが、図6に示す第二実施形態に係るシャフト60は、二つの部材を組み合わせて構成している点で第一実施形態と相違する。シャフト60は、第一実施形態と同様に、ミラーベース2の座面13(図1参照)に固定されるとともに、ミラーアッセンブリ4を回動可能に支持する。
なお、第二実施形態の説明において、第一実施形態と重複する部分については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
シャフト60は、図6に示すように、下側に形成された基部51と、基部51から上方に延設された筒状部52とを有する。基部51は、第一取付ボス部24〜第三取付ボス部26及び第一凸部67〜第三凸部69を主に備えており、底部が同一平面上に形成されている。基部51は、後記する第一部材Pと第二部材Qとを嵌め合わせることにより構成されている。まず、第一部材Pと第二部材Qについて詳細に説明する。
【0058】
第一部材Pは、図7の(a)及び(b)に示すように、筒部63と、筒部63の下部の周囲に形成された第一取付ボス部24、第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26と、位置決め部31とを有する。
【0059】
筒部63は、筒状部52となる部位であり、略筒状を呈し上下方向に延設されている。筒部63の一部には、上下方向の全長に亘って平坦面である係合面63aが形成されている。筒部63の先端側にはスリット32が形成されている。
【0060】
第一取付ボス部24、第二取付ボス部25及び第三取付ボス部26は、筒部63の下部の周囲に形成されている。第一取付ボス部24は、ボス底部24aと、ボス底部24aに突設された取付ボス24bと、ボス底部24aの外側に延設されたフランジ24cと、ボス底部24aから一段上がった位置に形成されたリップ部24d,24dとを有する。リップ部24dは、ボス底部24aの両側に形成されており、後記する側方開口部に当接する部分である。リップ部24dは、筒部63から外側に連続して延設されている。
【0061】
第二取付ボス部25は、図7の(a)及び(b)に示すように、ボス底部25aと、ボス底部25aに突設された取付ボス25bと、ボス底部25aの外側に延設されたフランジ25cと、ボス底部25aから一段上がった位置に形成されたリップ部25d,25dとを有する。リップ部25dは、ボス底部25aの両側に形成されており、後記する側方開口部に当接する部分である。リップ部25dは、筒部63から外側に連続して延設されている。
【0062】
第三取付ボス部26は、図7の(a)及び(b)に示すように、ボス底部26aと、ボス底部26aに突設された取付ボス26bと、ボス底部26aの外側に延設されたフランジ26cと、ボス底部26aから一段上がった位置に形成されたリップ部26dと、を有する。リップ部26dは、後記する側方開口部に当接する部分である。リップ部26dは、筒部63から外側に連続して延設されている。
【0063】
位置決め部31は、図7の(a)及び(b)に示すように、連結部31aと、連結部31aの下面から突設されたピン31bとを有する。連結部31aは、筒部63から外側に連続して形成されている。ピン31bは、図1に示す位置決め穴17に嵌め合わされる。
【0064】
なお、図7の(b) に示すように、第一部材Pの外周のうち、第一取付ボス部24と第二取付ボス部25の間には、第一領域T1が形成されている。第一領域T1には、後記する第二部材Qのフランジ73aが配置される。同様に、第二取付ボス部25と位置決め部31の間には第二領域T2が形成されている。第二領域T2には、後記する第二部材Qのフランジ73bが配置される。同様に、位置決め部31と第三取付ボス部26の間には、第三領域T3が形成されている。第三領域T3には、後記する第二部材Qのフランジ73cが配置される。同様に、第三取付ボス部26と第一取付ボス部24の間には、第四領域T4が形成されている。第四領域T4には、後記する第二部材Qのフランジ73dが配置される。
【0065】
第一部材Pは、鋼板に深絞り加工を行うことにより一体成形される。また、第一部材Pは、所定の箇所にトリム加工及び穴あけ加工を行って成形される。
【0066】
第二部材Qは、図8の(a)及び(b)に示すように、ミラーベース2の座面13に当接する脚部65と、脚部65の上部に形成された第一凸部67、第二凸部68及び第三凸部69と、上部の中央に開口する挿通部70とを有する。
【0067】
脚部65は、略円環状に形成された側壁71と、側壁71の下端に形成されたフランジ73a〜73dと、各フランジの間に開口する側方開口部74a〜74dとを有する。
【0068】
フランジ73a〜73dは、図8の(a)及び(b)に示すように、同一平面上に形成されており、ミラーベース2の座面13(図1参照)に当接する。フランジ73a〜73dは、所定の間隔をあけて側壁71の外周に沿って外側に張り出して形成されている。フランジ73a〜73dは、それぞれ円弧状かつ線状に形成されている。フランジ73a〜73dの外周縁の曲率半径は、ミラーベース2の座面13の外周縁の曲率半径と同等に形成されている。
【0069】
側方開口部74a〜74dは、図8の(a)及び(b)に示すように、側壁71の下端において側面視略矩形に開口している。
側方開口部74aは、図8の(a)に示すように、側壁71のフランジ73aとフランジ73dの間において、側面視略矩形に開口している。側方開口部74aは、第一取付ボス部24(図7の(a)参照)が収容される部分である。側方開口部74aの幅は、第一取付ボス部24の幅よりも大きく形成されている。側方開口部74aの高さは、ボス底部24aの下面からリップ部24dの上面までの高さと同等に形成されている。
【0070】
側方開口部74bは、図8の(b)に示すように、側壁71のフランジ73aとフランジ73bの間において、側面視略矩形に開口している。側方開口部74bは、第二取付ボス部25(図7の(a)参照)が収容される部分である。側方開口部74bの幅は、第二取付ボス部25の幅よりも大きく形成されている。側方開口部74bの高さは、ボス底部25aの下面からリップ部25dの上面までの高さと同等に形成されている。
【0071】
側方開口部74cは、図8の(b)に示すように、側壁71のフランジ73bとフランジ73cの間において、側面視略矩形に開口している。側方開口部74cは、位置決め部31(図7の(a)参照)が収容される部分である。側方開口部74cの幅は、位置決め部31の幅よりも大きく形成されている。側方開口部74cの高さは、位置決め部31の高さよりも大きく形成されている。
【0072】
側方開口部74dは、図8の(a)及び(b)に示すように、側壁71のフランジ73cとフランジ73dの間において、側面視略矩形に開口している。側方開口部74dは、第三取付ボス部26(図7の(a)参照)が収容される部分である。側方開口部74dの幅は、第三取付ボス部26の幅よりも大きく形成されている。側方開口部74dの高さは、ボス底部26aの下面からリップ部26dの上面までの高さと同等に形成されている。
【0073】
第二部材Qは、鋼板に深絞り加工を行うことにより一体成形される。これにより、第二部材Qの内部は、中空に形成される。また、所定の箇所にトリム加工及び穴あけ加工を行って成形される。
【0074】
シャフト60を形成する場合には、第一部材Pの筒部63を、第二部材Qの挿通部70に挿通する。筒部63の係合面63aと、挿通部70の係合面70aを重ね合わせることで、円周方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0075】
筒部63に沿って第二部材Qを押し下げると、図9の(a)に示すように、第一取付ボス部24のリップ部24d,24dが、側方開口部74aに入り込み、側方開口部74aの上縁に当接する。同様に、第三取付ボス部26のリップ部26dが、側方開口部74dに入り込み、側方開口部74dの上縁に当接する。また、図9の(b)に示すように、第二取付ボス部25のリップ部25dが、側方開口部74bに入り込み、側方開口部74bの上縁に当接する。また、位置決め部31が、側方開口部74cに収容される。
【0076】
前記したように、各ボス底部24a,25a,26aの下面から各リップ部24d,25d,26dの上面までの高さは、各側方開口部74a,74b,74dの高さと同等に形成されている。これにより、図9に示すように、側壁71の外周に形成される各フランジ(73a,73b,73c,73d)は、第一取付ボス部24〜第三取付ボス部26の各フランジ(24c,25c,26c)と面一に形成される。また、図10に示すように、側壁71の外周に形成される各フランジ(73a,73b,73c,73d)と、第一取付ボス部24〜第三取付ボス部26の各フランジ(24c,25c,26c)は、脚部65の外周の形状に沿って同心円となるように、円弧状かつ線状に形成される。
【0077】
以上説明した第二実施形態に係るシャフト60によれば、第一取付ボス部24〜第三取付ボス部26及び第一凸部67〜第三凸部69を備えているため、アウターミラー1の組み付けを容易に行うことができる。また、第一凸部67〜第三凸部69の内部は中空に形成されているため、シャフト60の軽量化を図ることができる。
【0078】
また、ミラーベース2の座面13に当接する各フランジが、基部52の底部の外周に沿って線状に形成されていえるため、高い曲げ剛性を得ることができる。図10のハッチング部分は、基部51のうち、ミラーベース2の座面13に当接する部分を示す。即ち、側壁71の外周に形成された各フランジ(73a,73b,73c,73d)と、第一取付ボス部24〜第三取付ボス部26の各フランジ(24c,25c,26c)は、同心円となるように円弧状かつ線状に形成されているため、曲げ剛性を高めることができる。つまり、シャフト60の軽量化と曲げ剛性の向上の両立を図ることができる。
【0079】
また、第一部材P及び第二部材Qは、鋼板から深絞り加工によって一体成形するため、容易に製造することができる。また、深絞り加工によって加工硬化が発生するため、各部材の剛性を高めることができる。また、内部が中空に形成されているため、シャフト60の軽量化を図ることができる。また、シャフト60を二つの部材から構成することにより、形状の変更やメンテナンスに柔軟に対応することができる。
【0080】
また第一取付ボス部24〜第三取付ボス部26にそれぞれリップ部24d,25d,26dを有することで、第一部材Pと第二部材Qの高さ方向の位置決めを容易に行うことができる。また、図8に示すように、本実施形態では、側壁71において、貫通する円形の孔(本実施形態では三ヶ所)を形成した。これにより、シャフト60の軽量化を図ることができる。
【0081】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨を変更しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、取付ボス部及び凸部の個数や形状は、前記した構成に限定されるものではなく適宜設定すればよい。また、本実施形態では、シャフトの基部の外周は、円形状を呈するが他の形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0082】
1 アウターミラー
2 ミラーベース
3 シャフト
4 ミラーアッセンブリ
13 ミラーベースの座面
21 基部
22 筒状部
24 第一取付ボス部
24c フランジ
25 第二取付ボス部
25c フランジ
26 第三取付ボス部
26c フランジ
27 第一凸部
27b フランジ
28 第二凸部
28b フランジ
29 第三凸部
29b フランジ
51 基部
52 筒状部
60 シャフト
K 鋼板
P 第一部材
Q 第二部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に設けられたミラーベースに固定されるとともに、ミラーアッセンブリを回動自在に支持する格納式アウターミラーのシャフト構造であって、
前記ミラーベースに接合される取付ボス部とクラッチ機構用の凸部とを備えた基部と、
前記基部から上方に向けて延設され筒状を呈する筒状部と、を有し、
前記凸部の内部が中空に形成されているとともに、前記基部の外周に、前記ミラーベースの座面に当接するフランジが形成されていることを特徴とする格納式アウターミラーのシャフト構造。
【請求項2】
前記基部と前記筒状部は、鋼板に深絞り加工を施して一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の格納式アウターミラーのシャフト構造。
【請求項3】
複数の前記凸部及び前記取付ボス部が前記筒状部の周囲に放射状に形成されているとともに、前記凸部と前記取付ボス部とが交互に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の格納式アウターミラーのシャフト構造。
【請求項4】
前記基部は、
少なくとも前記取付ボス部を備えた第一部材と、少なくとも前記凸部とを備えた第二部材とを組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の格納式アウターミラーのシャフト構造。
【請求項5】
前記第一部材及び前記第二部材は、鋼板に深絞り加工を施してそれぞれ成形されていることを特徴とする請求項4に記載の格納式アウターミラーのシャフト構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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