説明

格納式アウターミラー

【課題】ストッパ機構のコストダウンを達成できるとともに大型化および重量化を防止しつつ、高い剛性を備える格納式アウターミラーを提供する。
【解決手段】車体の側面からその側方に向かって張り出すミラーベース10と、このミラーベース10に回動可能に取り付けられるミラーアッセンブリ30と、所定位置にミラーアッセンブリ30を停止させるためのストッパ機構2とを備えた格納式アウターミラー1において、ストッパ機構2は、ミラーベース10に形成されたベース側係合面51a,51bと、ミラーアッセンブリ30に形成され所定位置においてベース側係合面51a,51bと面的に当接するボデー側係合面53a,53bとを備えて構成され、ベース側係合面51a,51bとボデー側係合面53a,53bは、ミラーアッセンブリ30の回動方向Dに対する起立角度θが鋭角になるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側面に取り付けられ、回動可能なミラーアッセンブリを備えた格納式アウターミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車体の側面に取り付けられるアウターミラーは、ミラーの鏡面が車体の側面に対して略直角となる通常位置と、車体側に折り畳まれる格納位置とでミラーアッセンブリが回動する格納式アウターミラーが一般的に採用されている。格納位置は、ミラーアッセンブリが車体の方向に回動して鏡面が車体の側面に対向する後方の位置となるのが一般的である。また、格納式アウターミラーは、自動車後方からの予期せぬ接触等の外力に備えて、ミラーアッセンブリが前方に回動して退避できるように、前方の退避位置が構成されている。
【0003】
格納式アウターミラーは、車体の側面からその側方に向かって張り出すミラーベースと、このミラーベースに回動可能に取り付けられるミラーアッセンブリとを備えている。格納式アウターミラーには、ミラーアッセンブリを通常位置に停止させるための位置決め機構と、ミラーアッセンブリが通常位置から、後方の格納位置または前方の退避位置に回動する際に、これら格納位置または退避位置にミラーアッセンブリを停止させるためのストッパ機構とが設けられている。
【0004】
ストッパ機構は、例えば、ミラーベースに形成された円弧状溝部と、ミラーアッセンブリに設けられた凸部とで構成されており、凸部が円弧状溝部に沿って移動するようになっている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。このような構成のストッパ機構によれば、ミラーアッセンブリが格納位置に格納されるときに、凸部の一側端面(係合面)が円弧状溝部の周方向一端部(係合面)に当接して係合し、ミラーアッセンブリの回動が規制される。また、ミラーアッセンブリが退避位置に回動するときには、凸部の他側端面(係合面)が円弧状溝部の他端部(係合面)に当接して、ミラーアッセンブリの回動が規制される。以上のように、格納式アウターミラーは、ミラーアッセンブリが通常位置から後方または前方に回動すると、凸部の各側端面が円弧状溝部の一端部または他端部に当接することで、格納位置または退避位置に停止される。なお、互いに当接して係合する係合面は、ミラーアッセンブリの回動方向に対して直交する平面上に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−9806号公報
【特許文献2】特開2006−282088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ミラーアッセンブリが退避位置に回動するときは、後方からの予期せぬ接触等による大きな衝突力が、ミラーベースに形成された円弧状溝部とミラーアッセンブリに設けられた凸部に掛かる場合が多い。したがって、円弧状溝部と凸部には高い剛性が要求される。従来の格納式アウターミラーでは、要求される剛性を得るために、金属やガラス繊維入樹脂等の高強度材料を使用して円弧状溝部や凸部を形成していた。そのため、従来の格納式アウターミラーでは、コストアップを招いてしまう問題があった。ここで、高強度材料を使用せずに、要求される剛性を得るためには、凸部を大きくして円弧状溝部との当接面積を大きくすることが考えられるが、この場合では、ストッパ機構が大きくなり格納式アウターミラーの大型化や重量化を招いてしまう問題が発生する。
【0007】
そこで、本発明は、ストッパ機構のコストダウンを達成できるとともに大型化および重量化を防止しつつ、高い剛性を備える格納式アウターミラーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために創案された請求項1に係る発明は、車体の側面からその側方に向かって張り出すミラーベースと、このミラーベースに回動可能に取り付けられるミラーアッセンブリと、所定位置に前記ミラーアッセンブリを停止させるためのストッパ機構とを備えた格納式アウターミラーにおいて、前記ストッパ機構は、前記ミラーベースに形成されたベース側係合面と、前記ミラーアッセンブリに形成され前記所定位置において前記ベース側係合面と面的に当接するボデー側係合面とを備えて構成され、前記ベース側係合面と前記ボデー側係合面は、前記ミラーアッセンブリの回動方向に対する起立角度が鋭角になるように形成されていることを特徴とする格納式アウターミラーである。
【0009】
本発明において、「ミラーアッセンブリの回動方向」とは、回動円周方向の任意の点における接線方向をいう。「起立角度」とは、回動方向を基準として、ミラーベースおよびミラーアッセンブリの一方側から他方側に向かって係合面が起立する角度であって、回動方向と係合面の中実側の角度をいう。
【0010】
前記のような構成によれば、係合面に直交する面直力は、回動方向に掛かる外力よりも小さくなるとともに、係合面同士の当接面積は、係合面が回動方向に対して直角のときよりも大きくなる。つまり、当接面の面圧が小さくなるので、ミラーベースおよびミラーアッセンブリの剛性を高めたのと同等の効果が得られる。さらに、係合面の回動方向からの起立角度を鋭角としたことによって、係合面を構成する部材と回動方向との角度が鈍角になるので、応力集中係数が大幅に改善され、応力の集中を防止できる。したがって、高強度材料を用いなくても、高い剛性のストッパ機構を得ることができ、コストダウンを達成できる。また、係合面自体は大きくしなくてもよいので、ストッパ機構の大型化を防止でき、それに伴って重量化も防止できる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記所定位置は、前記ミラーアッセンブリの格納位置と退避位置の二箇所であって、前記ベース側係合面と前記ボデー側係合面は、それぞれ二面ずつ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の格納式アウターミラーである。
【0012】
このような構成によれば、予期せぬ接触等の外力によって比較的大きな応力が掛かる格納位置と退避位置において、ミラーベースとミラーアッセンブリの剛性を高めることができるので、有効である。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記ミラーベースに前記ミラーアッセンブリの回動中心と同芯のベース側円弧状溝部が形成されるとともに、前記ミラーアッセンブリに前記ベース側円弧状溝部内に挿入されるボデー側凸部が設けられ、前記ベース側係合面は、前記ベース側円弧状溝部の周方向端面にて構成され、前記ボデー側係合面は、前記ボデー側凸部の回動方向端面にて構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の格納式アウターミラーである。
【0014】
このような構成によれば、ミラーベースにベース側円弧状溝部を形成したことによって、ベース側係合面の背後の肉厚を厚くできるので、剛性をさらに高めることができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記ボデー側凸部に、円周方向に延在する補強リブが一体成形されていることを特徴とする請求項3に記載の格納式アウターミラーである。
【0016】
このような構成によれば、ボデー側凸部単体での剛性が高くなるので、さらなる高い剛性のストッパ機構を得ることができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記ミラーベースに前記ベース側凸部が設けられるとともに、前記ミラーアッセンブリに前記ベース側凸部に係合されるボデー側凸部が設けられ、前記ベース側係合面は、前記ベース側凸部の前記ミラーアッセンブリの回動方向端面にて構成され、前記ボデー側係合面は、前記ボデー側凸部の回動方向端面にて構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の格納式アウターミラー。
【0018】
このような構成によれば、比較的簡単な構成で、ストッパ機構の高い剛性を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ストッパ機構のコストダウンを達成できるとともにストッパ機構の大型化および重量化を防止しつつ、高い剛性を備える格納式アウターミラーを提供することができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態に係る格納式アウターミラーを示した分解斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る格納式アウターミラーのミラーアッセンブリが通常位置にあるときの各凸部と各円弧状溝部との位置関係を示した図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のii−ii線断面展開図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る格納式アウターミラーを示した図であって、(a)はミラーアッセンブリが格納位置にあるときの各凸部と各円弧状溝部との位置関係を示した平面図、(b)はミラーアッセンブリが退避位置にあるときの各凸部と各円弧状溝部との位置関係を示した平面図である。
【図4】本発明に係る格納式アウターミラーのボデー側凸部とベース側円弧状溝部との当接状態を示した断面図である。
【図5】本発明に係る格納式アウターミラーのボデー側凸部とベース側円弧状溝部との当接状態の比較例を示した図であって、(a)は起立角度が直角の形態を示した断面図、(a)は起立角度が鈍角の形態を示した断面図である。
【図6】ボデー側凸部の他の形状を示した斜視図である。
【図7】FEM解析モデルを示した斜視図である。
【図8】起立角度と最大主応力の関係を示したグラフである。
【図9】補強リブの有無による起立角度と最大主応力の関係の影響を示したグラフであって、(a)は係合面の内側の状態を示したグラフ、(b)は係合面の外側の状態を示したグラフ、(c)は係合面の奥の状態を示したグラフである。
【図10】起立角度とボデー上昇力の関係を示したグラフであって、(a)は可倒トルクが60N・mの場合を示したグラフ、(b)は可倒トルクが30N・mの場合を示したグラフである。
【図11】本発明の第二実施形態に係る格納式アウターミラーを示した分解斜視図である。
【図12】(a)は本発明の第二実施形態に係る格納式アウターミラーのボデー側係合面とベース側係合面を示した側面図、(b)は要部拡大側面図である。
【図13】本発明の第三実施形態に係る格納式アウターミラーを示した分解斜視図である。
【図14】(a)は本発明の第三実施形態に係る格納式アウターミラーのボデー側係合面とベース側係合面を示した断面図、(b)は要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る格納式アウターミラーの第一実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、電動でミラーアッセンブリが回動する電動格納式アウターミラーを例に挙げて説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る格納式アウターミラー1は、車体(図示せず)の側面からその側方に向かって張り出すミラーベース10と、このミラーベース10に回動可能に取り付けられるミラーアッセンブリ30とを備えている。ミラーアッセンブリ30は、図示しないミラーと、ミラーを保持するホルダ(図示せず)と、このホルダを傾動可能に保持するフレーム(図示せず)と、ミラーアッセンブリ30を回動させる電動格納ユニット(図示せず)とを、ミラーハウジング31内に収容して構成されている。
【0023】
電動格納ユニットは、略垂直な上下方向に延在するシャフト(図示せず)と、このシャフト回りにミラーアッセンブリ30を回動させるモータ(図示せず)とを備えている。シャフトは、その下端部がミラーベース10の取付座11に固定される。ミラーアッセンブリ30は、各種ギヤ(図示せず)を介してシャフト回りに回動することで、外側に展開された通常位置P1(図2参照)と、内側に折り畳まれた格納位置P2(図3の(a)参照)との間で回動する。なお、格納式アウターミラー1は、車体後方からの予期せぬ接触等の外力に備えて、ミラーアッセンブリ30が前方に回動して退避できるように、前方の退避位置P3(図3の(b)参照)が構成されている。
【0024】
ミラーベース10は、例えば、車体のサイドドアの前端部のピラー部分等に形成された取付座(図示せず)に固定される取付板12と、この取付板12の下部から側方に向かって張り出すベース本体13とを備えている。取付板12とベース本体13とは、合成樹脂等により一体で形成されている。ベース本体13の上面には、電動格納ユニットのシャフトの取付座11が形成されている。取付座11には、ボルト用穴11aが複数形成されており、ベース本体13の下部からボルト用穴11aを通してシャフトのボス部にボルト(図示せず)を螺合させて、シャフトが固定される。
【0025】
シャフトとフレームとの間には、クラッチ機構(図示せず)が設けられており、通常位置P1(図2参照)と格納位置P2(図3の(a)参照)で、ミラーアッセンブリ30の回動を規制して位置決めするとともに、車体後方から予期せぬ接触等の外力が加わった際には、ミラーアッセンブリ30の退避位置P3(図3の(b)参照)への回動を許容するようになっている。
【0026】
格納式アウターミラー1は、ミラーアッセンブリ30が通常位置P1から、後方の格納位置P2または前方の退避位置P3に回動する際に、これら格納位置P2または退避位置P3にミラーアッセンブリ30を停止させるためのストッパ機構2を備えている。
【0027】
ストッパ機構2は、ミラーベース10に形成されたベース側係合面51a,51bと、ミラーアッセンブリ30に形成され所定位置(格納位置P2または退避位置P3)においてベース側係合面51a,51bと面的に当接するボデー側係合面53a,53bとを備えて構成されている。格納位置P2では、ベース側係合面51aとボデー側係合面53a同士が当接し、退避位置P3では、ベース側係合面51bとボデー側係合面53b同士が当接する。ベース側係合面51a,51bとボデー側係合面53a,53bは、ともにミラーアッセンブリ30の回動方向Dに対する起立角度θ(図4参照)が鋭角になるように構成されている。ここで、ミラーアッセンブリの回動方向Dとは、回動円周方向の任意の点における接線方向をいう。また、起立角度θとは、回動方向Dを基準として、ミラーベース10側またはミラーアッセンブリ30側から他方側に向かって係合面が起立する角度であって、回動方向Dと係合面の中実側の角度をいう。
【0028】
本実施形態では、ストッパ機構2の具体的な構成として、ミラーベース10にミラーアッセンブリ30の回動中心と同芯のベース側円弧状溝部14が形成されるとともに、ミラーアッセンブリ30にベース側円弧状溝部14内に挿入されるボデー側凸部33が設けられ、さらに、ミラーアッセンブリ30にミラーアッセンブリ30の回動中心と同芯のボデー側円弧状溝部35が形成されるとともに、ミラーベース10にボデー側円弧状溝部35内に挿入されるベース側凸部16が設けられている。そして、ミラーアッセンブリ30が後方の格納位置P2または前方の退避位置P3にあるときに、ボデー側凸部33がベース側円弧状溝部14の周方向端部14R(格納位置P2時)または14L(退避位置P3時)に当接するとともに、ベース側凸部16がボデー側円弧状溝部35の周方向端部35aL(35bL)(格納位置P2時)または35aR(35bR)(退避位置P3時)に当接する。後に詳述するが、本実施形態では、ボデー側凸部33の周方向両端面となる右端面33Rおよび左端面33Lが、その起立角度θが鋭角となるように傾斜して形成され、このボデー側凸部33の周方向端面33R,33Lが当接するベース側円弧状溝部14の周方向端部14Rまたは14Lが、その起立角度θが鋭角となるように傾斜して形成されている。そして、ボデー側凸部33の左端面33Lがボデー側係合面53bを構成し、ベース側円弧状溝部14の周方向端部14Lがベース側係合面51bを構成する。また、ボデー側凸部33の右端面33Rがボデー側係合面53aを構成し、ベース側円弧状溝部14の周方向端部14Rがベース側係合面51aを構成する。
【0029】
以下、ストッパ機構2の構成について詳細に説明する。図1および図2に示すように、ミラーベース10のベース本体13上面の取付座11の周囲には、ベース側円弧状溝部14が形成されている。ベース側円弧状溝部14は、シャフトの中心、すなわちミラーアッセンブリ30の回動中心と同芯状に形成されている。ベース側円弧状溝部14は、同心円上に二箇所形成されている。各ベース側円弧状溝部14,14は、その間に所定の狭い中心角で形成された中間部15を挟むように配置され、互いに干渉しないように形成されている。図2に示すように、ベース側円弧状溝部14は、通常位置P1から格納位置P2(図3の(a)参照)までの回動角度A(後方可倒角度)と、通常位置P1から退避位置P3(図3の(b)参照)までの回動角度B(前方可倒角度)と、後記するボデー側凸部33の周方向長さ(ミラーアッセンブリ30の回動方向の長さ)に相当する回動角度Cとを合わせた中心角を備えて構成されている。本実施形態では、ベース側円弧状溝部14の中心角は、120度より若干小さい値となっている。
【0030】
図1に示すように、ミラーアッセンブリ30のミラーハウジング31の、取付座11に対向する下面32には、シャフトが挿通される挿通孔34が形成されている。挿通孔34は、取付座11と同等の円形状を呈している。挿通孔34の周囲には、ベース側円弧状溝部14内に挿入されるボデー側凸部33が設けられている。ボデー側凸部33は、ミラーハウジング31の下面32から下方に突出して形成されている。ボデー側凸部33は、同心円上に二つ設けられており、各ボデー側凸部33は、二つのベース側円弧状溝部14,14にそれぞれ挿入される。ボデー側凸部33は、ミラーハウジング31と同等の材質(例えば、合成樹脂など)にて構成されており、ミラーハウジング31と一体成形されている。
【0031】
図2の(a)に示すように、ミラーアッセンブリ30が通常位置P1にあるときは、ボデー側凸部33の回動中心から見た右端面33R(以下、明細書中に示す左右(LR)方向は、ミラーアッセンブリ30とミラーベース10を組み付けた状態で、回動中心から見た方向を基準とする)(図2の(b)参照)が、ベース側円弧状溝部14の右端面14Rから、通常位置P1と格納位置P2間の回動角度Aだけ離間した場所に位置するようになっている。このとき、ボデー側凸部33の左端面33L(図2の(b)参照)が、ベース側円弧状溝部14の左端面14Lから、通常位置P1と退避位置P3間の回動角度Bだけ離間した場所に位置する。
【0032】
図1、図2の(b)および図4に示すように、ボデー側凸部33は、その周方向両端面となる右端面33Rおよび左端面33Lが、下方の先端側が互いに近接するようにそれぞれ傾斜して形成されている。ここで、ボデー側凸部33の周方向端面となる右端面33Rがボデー側係合面53bを構成し、左端面33Lがボデー側係合面53aを構成している。各端面33R,33Lの傾斜角度(回動方向Dに対する起立角度θ)は等しく、右端面33Rと左端面33Lは互いに面対称形状に構成されており、各端面33R,33Lの下端(先端)同士を結ぶ直線が短辺となる等脚台形の断面形状を有している(図4参照)。本実施形態では、ボデー側凸部33は、中実状に形成されているが、これに限定されるものではなく、内部を肉抜きして中空状に形成してもよい。このようにすれば、ミラーアッセンブリ30の軽量化および材料軽減を図ることができる。なお、図2および図3において、ハッチングにて示すボデー側凸部33の断面は、基端部分を示し、台形の長辺部分での水平断面を示している。
【0033】
ベース側円弧状溝部14の右端面14R(図2の(b)参照)は、ボデー側凸部33の右端面33Rと同等の傾斜角度(回動方向Dに対する起立角度θ)で傾斜しており、図3の(a)に示すように、ミラーアッセンブリ30が格納位置P2にあるときに、ベース側円弧状溝部14の右端面14Rと、ボデー側凸部33の右端面33Rとが面接触するようになっている。また、ベース側円弧状溝部14の左端面14L(図2の(b)参照)は、ボデー側凸部33の左端面33Lと同等の傾斜角度で傾斜しており、図3の(b)に示すように、ミラーアッセンブリ30が退避位置P3にあるときに、ベース側円弧状溝部14の左端面14Lと、ボデー側凸部33の左端面33Lとが面接触するようになっている。
【0034】
前記のボデー側凸部33とベース側円弧状溝部14とで、一つの組合せ(ストッパ組)が構成されており、本実施形態では、前記ストッパ組が二組形成されている。
【0035】
図1および図2の(a),(b)に示すように、ベース側円弧状溝部14の円周方向両端部の、ベース本体13の上面には、ミラーアッセンブリ30側に突出する一対のベース側凸部16,16が形成されている。このベース側凸部16は、後記するボデー側円弧状溝部35に挿入される。ベース側凸部16は、ミラーベース10と同等の材質(例えば、合成樹脂など)にて構成されており、ミラーベース10と一体成形されている。なお、隣り合うベース側円弧状溝部14,14間に挟まれた中間部15に形成されたベース側凸部16(以下「ベース側凸部16a」と記載する場合がある)は、一方のベース側円弧状溝部14の左端部と、他方のベース側円弧状溝部14の右端部に位置するベース側凸部16aとして兼用される。つまり、ベース側凸部16は、一方のベース側円弧状溝部14の右端部と、その左端部(他方のベース側円弧状溝部14の右端部と兼用)と、他方のベース側円弧状溝部14の左端部の、三箇所に形成されている。これら三つのベース側凸部16,16a,16は、回動中心から120度の中心角で等ピッチで形成されている。そして、兼用のベース側凸部16aは、その周方向両端が、一対のベース側円弧状溝部14,14に対向し、他のベース側凸部16,16は、その周方向一端のみが、ベース側円弧状溝部14,14にそれぞれ対向している。
【0036】
隣り合うベース側円弧状溝部14,14間に挟まれた中間部15に形成されたベース側凸部16aは、周方向両端面16R,16Lが、それぞれベース側円弧状溝部14の左端面14L,右端面14Rと同等の傾斜角度で傾斜しており、ベース側凸部16aの周方向端面16Rとベース側円弧状溝部14の左端面14Lとが面一になるとともに、ベース側凸部16aの周方向端面16Lとベース側円弧状溝部14の右端面14Rとが面一になっている。一方のベース側円弧状溝部14の端部で、中間部15とは反対側の端部に位置するベース側凸部16(図2の(b)中、左側に図示)は、ベース側円弧状溝部14側に位置する周方向端面16Rは、ベース側円弧状溝部14の左端面14Lと同等の傾斜角度で傾斜しており,ベース側円弧状溝部14の周方向端面16Rとベース側円弧状溝部14の左端面14Lとが面一になっている。前記周方向端面16Rとは逆側の周方向端面は、ベース本体13の上面と直交して形成されており、垂直方向に延在している。他方のベース側円弧状溝部14の端部で、中間部15とは反対側の端部に位置するベース側凸部16(図2の(b)中、右側に図示)は、ベース側円弧状溝部14側に位置する周方向端面16Lは、ベース側円弧状溝部14の左端面14Rと同等の傾斜角度で傾斜しており,ベース側円弧状溝部14の周方向端面16Lとベース側円弧状溝部14の右端面14Rとが面一になっている。前記周方向端面16Lとは逆側の周方向端面は、ベース本体13の上面と直交して形成されており、垂直方向に延在している。
【0037】
ミラーアッセンブリ30のミラーハウジング31の、挿通孔34の周囲には、ベース側凸部16が挿入するボデー側円弧状溝部35が形成されている。ボデー側円弧状溝部35は、二つのボデー側凸部33,33間を、中心角が狭い側と広い側の両側で、円弧状に架け渡されて形成されている。つまり、ボデー側円弧状溝部35は、円弧が長いボデー側円弧状溝部35aと、円弧が短いボデー側円弧状溝部35bとで構成されることとなり、ボデー側円弧状溝部35a,35bとボデー側凸部33,33で、ミラーアッセンブリ30の回動中心を中心とする円周を形成するようになっている。円弧が短いボデー側円弧状溝部35bには、中間部15に形成された兼用のベース側凸部16a(周方向両端がベース側円弧状溝部14,14に対向するベース側凸部16a)が挿入され、円弧が長いボデー側円弧状溝部35aには、周方向一端のみがベース側円弧状溝部14に対向するベース側凸部16が二つ挿入されている。つまり、ベース側円弧状溝部14の両端部に位置する一対のベース側凸部16,16は、円弧が長いボデー側円弧状溝部35aと円弧が短いボデー側円弧状溝部35bとにそれぞれ挿入されることとなる。一対のベース側凸部16,16と、一対のボデー側円弧状溝部35a,35bとで、一つの組合せ(ストッパ組)が構成されており、本実施形態では、前記ストッパ組が二組形成されていることとなる。
【0038】
図2の(b)に示すように、各ボデー側円弧状溝部35a,35bの周方向端面35aL,35bLは、各ボデー側凸部33の右端面33Rと同等の傾斜角度でそれぞれ傾斜しており,各ボデー側円弧状溝部35a,35bの周方向端面35aL,35bLと、各ボデー側凸部33の右端面33R,33Rとがそれぞれ面一になっている。また、各ボデー側円弧状溝部35a,35bの周方向端面35aR,35bRは、各ボデー側凸部33の左端面33Lと同等の傾斜角度でそれぞれ傾斜しており,各ボデー側円弧状溝部35a,35bの周方向端面35aR,35bRと、各ボデー側凸部33の左端面33L,33Lとがそれぞれ面一になっている。
【0039】
図2の(a)に示すように、ミラーアッセンブリ30が通常位置P1にあるときは、円弧の長いボデー側円弧状溝部35aの左端面35aL(図2の(b)参照)が、周方向一端のみがベース側円弧状溝部14に対向する一方のベース側凸部16の左端面16L(図2の(b)参照)から、通常位置P1と格納位置P2間の回動角度Aだけ離間した場所に位置するようになっている。このとき、円弧の長いボデー側円弧状溝部35aの右端面35aR(図2の(b)参照)が、周方向一端のみがベース側円弧状溝部14に対向する他方のベース側凸部16の右端面16R(図2の(b)参照)から、通常位置P1と退避位置P3間の回動角度Bだけ離間した場所に位置する。
【0040】
また、ミラーアッセンブリ30が通常位置P1にあるときは、円弧の短いボデー側円弧状溝部35bの左端面35bLが、周方向両端がベース側円弧状溝部14に対向する兼用のベース側凸部16の左端面16Lから、通常位置P1と格納位置P2間の回動角度Aだけ離間した場所に位置するようになっている。このとき、円弧の短いボデー側円弧状溝部35bの右端面35bRが、兼用のベース側凸部16の右端面16Rから、通常位置P1と退避位置P3間の回動角度Bだけ離間した場所に位置する。
【0041】
以上のような構成の本実施形態によれば、ボデー側凸部33とベース側円弧状溝部14との組合せ、およびベース側凸部16とボデー側円弧状溝部35との組合せの両方が二組ずつ設けられて、ストッパ機構2が形成されていることとなる。
【0042】
次に、前記構成の格納式アウターミラー1が、格納位置P2に回動したときの各部の動きを説明する。図3の(a)に示すように、ミラーアッセンブリ30が格納位置P2に回動すると、ボデー側凸部33の右端面33R(ボデー側係合面53a)が、ベース側円弧状溝部14の右端面14R(ベース側係合面51a)に当接するとともに、円弧の長いボデー側円弧状溝部35bの左端面35bLが、周方向一端のみがベース側円弧状溝部14に対向する一方のベース側凸部16の左端面16Lに当接する。さらに、本実施形態では、ボデー側凸部33とベース側円弧状溝部14との組合せ、およびベース側凸部16とボデー側円弧状溝部35との組合せの両方が二組ずつ設けられているので、もう一対のボデー側凸部33の右端面33R(ボデー側係合面53a)が、ベース側円弧状溝部14の右端面14R(ベース側係合面51a)に当接するとともに、円弧の短いボデー側円弧状溝部35aの左端面35aLが、兼用のベース側凸部16の左端面16Lに当接する。
【0043】
次に、前記構成の格納式アウターミラー1が、退避位置P3に回動したときの各部の動きを説明する。図3の(b)に示すように、ミラーアッセンブリ30が退避位置P3に回動すると、ボデー側凸部33の左端面33L(ボデー側係合面53b)が、ベース側円弧状溝部14の左端面14L(ベース側係合面51b)に当接するとともに、円弧の長いボデー側円弧状溝部35bの右端面35bRが、周方向一端のみがベース側円弧状溝部14に対向する他方のベース側凸部16の右端面16Rに当接する。さらに、本実施形態では、ボデー側凸部33とベース側円弧状溝部14との組合せ、およびベース側凸部16とボデー側円弧状溝部35との組合せの両方が二組ずつ設けられているので、もう一対のボデー側凸部33の左端面33L(ボデー側係合面53b)が、ベース側円弧状溝部14の左端面14L(ベース側係合面51b)に当接するとともに、円弧の短いボデー側円弧状溝部35aの右端面35aRが、兼用のベース側凸部16の右端面16Rに当接する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、ボデー側凸部33の周方向端部33R,33L(ボデー側係合面53a,53b)を、ミラーアッセンブリ30の回動方向Dに対する起立角度θが鋭角になるように傾斜させて形成するとともに、ベース側円弧状溝部14の周方向端部14R,14L(ベース側係合面51a,51b)を、ボデー側凸部33の周方向端部33R,33Lの傾斜に応じて、ミラーアッセンブリ30の回動方向Dに対する起立角度θが鋭角になるように傾斜させて形成したことによって、ストッパ機構2の剛性をさらに高めることができる。これは以下の理由による。
【0045】
図4に示すように、ボデー側凸部33の右端面33Rがベース側円弧状溝部14の右端面14Rに当接すると、ボデー側凸部33に掛かる外力Fは、ボデー側凸部33の右端面33Rに垂直な面直力F=F・sinθと、滑り方向分力F=F・cosθとに分割される。ここで、ボデー側凸部33の右端面33Rに掛かる面直力Fは外力Fよりも小さくなるとともに、当接面積は端面が直角のときよりも大きくなる。したがって、当接面の面圧は小さくなり、ボデー側凸部33の剛性に対して有利な方向に作用する。また、ボデー側凸部33のせん断長さLは端面が直角のときよりも長くなるので、ボデー側凸部33のせん断強度が強くなる。さらに、ボデー側凸部33の基端部分の角度が鈍角になるので、応力集中係数が大幅に改善され、応力の集中を防止できる。また、基端部が肉厚になることによっても、応力集中係数が改善される。
【0046】
ここで、本実施形態と、ベース側係合面およびボデー側係合面の起立角度が直角の場合および鈍角の場合と比較する。
【0047】
図5の(a)に示すように、ベース側係合面51cおよびボデー側係合面53cの、回動方向Dに対する起立角度θ1が直角の場合には、ボデー側凸部33のボデー側係合面53cには、外力Fがそのまま掛かることとなり、本実施形態の場合より大きい。さらに、当接面積は本実施形態よりも小さくなる。したがって、当接面の面圧は、本実施形態よりも大きくなる。また、ボデー側凸部33のせん断長さL1は本実施形態よりも短くなるので、ボデー側凸部33のせん断強度が強くなる。以上より、本実施形態は、各係合面51c,53cの起立角度θ1が直角の場合よりも剛性が高くなることが分かる。
【0048】
図5の(b)に示すように、ベース側係合面51dおよびボデー側係合面53dの、回動方向Dに対する起立角度θ2が鈍角の場合には、ボデー側凸部33のボデー側係合面53dに掛かる外力Fは、ボデー側係合面53dに垂直な面直力F=F・sinθ2と、滑り方向分力F=F・cosθ2とに分割される。ここで、ボデー側凸部33のボデー側係合面53dに掛かる面直力Fは外力Fよりも小さくなるとともに、当接面積は端面が直角のときよりも大きくなる。したがって、当接面の面圧は小さくなり、ボデー側凸部33の剛性に対して有利な方向に作用する。さらに、ボデー側凸部33のせん断長さLは端面が直角のときよりも長くなるので、ボデー側凸部33のせん断強度が強くなる。ここまでは、起立角度θ2が鈍角の場合でも、ボデー側凸部33の剛性に対して有利な方向に作用する。しかしながら、ボデー側凸部33の基端部分の角度が鋭角になるので、応力の集中を招き、また、基端部が薄くなることによっても、応力集中係数が悪化してしまう。以上より、本実施形態は、各係合面51c,53cの起立角度θ2が鈍角の場合よりも剛性が高くなることが分かる。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、従来のストッパ機構では、凸部と円弧状溝部との当接部分が一箇所だけであったのと比較して、当接部分を大幅に多くでき、当接面積を大きくできる。具体的には、ボデー側凸部33とベース側円弧状溝部14との組合せの他に、ベース側凸部16とボデー側円弧状溝部35との組合せを形成したことによって、ストッパ機構2の全体の平面積を変えることなく、当接部分を多くできる。さらに、本実施形態では、前記各組合せの両方を二組ずつ設けているので、当接部分をさらに倍増することができる。
【0050】
これによって、ミラーアッセンブリ30に掛かる外力(回動力)を、ボデー側凸部33、ベース側円弧状溝部14、ベース側凸部16およびボデー側円弧状溝部35で分散して受けることができるので、各部に掛かる単位面積当たりの応力を小さくすることができる。したがって、高強度材料を用いなくてもストッパ機構2の高い剛性を得ることができ、コストダウンを達成できる。また、ボデー側凸部33やベース側凸部16単体は大きくしなくてもよいので、ストッパ機構2ひいては格納式アウターミラー1の大型化を防止できる。これに伴ってストッパ機構2および格納式アウターミラー1の重量化も防止できる。
【0051】
なお、図6に示すように、ボデー側凸部33の外周側に円周方向両側に延びる補強リブ37を形成するようにしてもよい。補強リブ37は、ミラーハウジング31の下面32のボデー側円弧状溝部35の外周側に位置する部分に立設され、ミラーハウジング31およびボデー側凸部33と一体成形された、三角形状のプレートにて構成されている。このような構成によれば、ボデー側凸部33の剛性をより高くすることができる。
【0052】
次に、本発明に係るベース側係合面51a,51bおよびボデー側係合面53a,53bについて、FEM(有限要素法)によって解析を行った結果を説明する。
【0053】
図7に示すように、FEM解析モデル100は、ベース部材110とボデー部材130とで構成されている。ベース部材110には、ベース側円弧状溝部114とその周方向両端部にそれぞれ形成されたベース側凸部116,116が形成されている。ベース側円弧状溝部114の右側の周方向端部114Rと右側のベース側凸部116の左端面116Lは、ボデー部材130の回動方向に対して鋭角の同じ起立角度にて傾斜して、面一に形成されており、この面がベース側係合面51aを構成している。ベース側円弧状溝部114の左側の周方向端部114Lと左側のベース側凸部116の右端面116Rは、ベース側係合面51aに対向して面対称形状に面一に形成されており、この面がベース側係合面51bを構成している。ベース側円弧状溝部114およびベース側凸部116,116は、ボデー部材130の回動中心を挟んで対称形状でさらに一組形成されている。
【0054】
ボデー部材130には、ボデー側凸部133とその左右両側に形成されたボデー側円弧状溝部135,135が形成されている。ボデー側凸部133の右端部133Rとボデー側円弧状溝部135の左側(ボデー側凸部133側)の周方向端部135Lは、ボデー部材130の回動方向に対して鋭角の同じ起立角度にて傾斜して、面一に形成されており、この面がボデー側係合面53aを構成している。ボデー側凸部133の左端部133Lとボデー側円弧状溝部135の右側(ボデー側凸部133側)の周方向端部135Rは、ボデー側凸部133を挟んで面対称形状に面一に形成されており、この面がボデー側係合面53bを構成している。ボデー側凸部133とボデー側円弧状溝部135,135は、ボデー部材130の回動中心を挟んで対称形状でさらに一組形成されている。
【0055】
このような構成のFEM解析モデル100を用いて、ボデー側凸部133の内側101、外側102および奥103について各種条件でFEM解析を行った。
【0056】
まず、係合面の起立角度を50度〜110度の範囲で適宜設定して、ボデー側凸部133の内側101、外側102および奥103に掛かる最大主応力を解析したところ、図8に示すような結果となった。内側では、起立角度が小さいほど、最大主応力が小さくなっている。外側では、最大主応力は、起立角度が90度のときを頂点として、起立角度が小さいほど小さくなっている。奥では、最大主応力は、起立角度が90度のときを頂点として、80度で下がって70度で一旦上がり、50度で下がっている。なお、奥での最大主応力は、110度のときが最小値となっている。
【0057】
以上のことより、起立角度が90度より小さい範囲内では、起立角度が小さいほど、ボデー側凸部133の各部に掛かる最大主応力が概ね小さくなることが判明した。
【0058】
次に、係合面の起立角度を50度〜90度の範囲で適宜設定して、補強リブ137がある場合と無い場合について、ボデー側凸部133の内側101、外側102および奥103に掛かる最大主応力を解析したところ、図9に示すような結果となった。図9の(a)に示すように、内側においては、補強リブが有る場合に最大主応力が若干小さくなっているものの、補強リブの有無による影響は小さい。なお、起立角度が65度以下では、補強リブが無い場合の方が、最大主応力が小さくなっている。図9の(b)に示すように、外側においては、補強リブが有る場合に最大主応力が小さくなっており、補強リブの有無による影響は大きい。なお、起立角度が60度以下では、補強リブが無い場合の方が、最大主応力が小さくなっている。図9の(c)に示すように、奥においては、補強リブが有る場合に最大主応力が若干小さくなっており、補強リブの有無による影響は小さい。なお、起立角度が60度以下では、補強リブが無い場合の方が、最大主応力が小さくなっている。
【0059】
以上のことより、補強リブ137が設けられたボデー側凸部133の外側において、補強リブが無い場合と比較して最大主応力が小さくなっており、大きな効果が得られることが判明した。
【0060】
次に、ボデー部材130に掛かる可倒トルクFが「60N・m」,「30N・m」として、係合面の摩擦力μを、「0.1」,「0,2」,「0.3」と設定するとともに、係合面の起立角度を60度〜90度の範囲で適宜設定して、ボデー部材130に掛かる上昇力を解析したところ、図10に示すような結果となった。
【0061】
ここで、ミラーアッセンブリは、通常、回動軸周りをコイルスプリングで圧縮してミラーベースにセットされているので、コイルスプリングのセット荷重をFs(通常は、250Nに設定)とし、係合面に掛かるボデー部材130(ミラーアッセンブリ)を上昇させようとする応力Fvとすると、ボデー部材130に掛かる上昇力Fuは、下記の式(1)で表される。
Fu=Fs−Fv・・・式(1)
ここで、
Fv=F・(cosθ−μ・sinθ)・・・式(2)
(F:可倒トルク、θ:係合面の起立角度、μ:係合面の摩擦力)
そして、
Fu≦0・・・式(3)
が、ミラーアッセンブリが上昇しない条件(実用範囲)となる。
【0062】
図10の(a)に示すように、可倒トルクFが60N・mの場合は、係合面の摩擦力μ=0.1の場合は、起立角度が78度以下でボデー部材130が乗り上げ、摩擦力μ=0.2の場合は、起立角度が73度以下でボデー部材130が乗り上げ、摩擦力μ=0.3の場合は、起立角度が67度以下でボデー部材130が乗り上げることが分かった。
【0063】
図10の(b)に示すように、可倒トルクFが30N・mの場合は、係合面の摩擦力μ=0.1の場合は、起立角度が73度以下でボデー部材130が乗り上げ、摩擦力μ=0.2の場合は、起立角度が66度以下でボデー部材130が乗り上げ、摩擦力μ=0.3の場合は、起立角度が60度以下でボデー部材130が乗り上げることが判明した。
【0064】
以上のことより、第一実施形態の形状において、係合面の摩擦係数μ=0.3のときは、起立角度θが67度≦θ<90度であることが好ましい。この範囲であれば、前記式(3)の条件が満たされ、ミラーベースおよびミラーハウジングの剛性を高めることができるとともに、ミラーアッセンブリの乗り上げを防止してミラーアッセンブリを所定の位置で確実に停止できる。そして、ミラーアッセンブリとミラーベースとの上下方向の相対位置関係を一定に保持することができる。
【0065】
次に、本発明に係る格納式アウターミラーの第二実施形態について、図11および図12を参照しながら説明する。本実施形態の格納式アウターミラーは、手動格納式アウターミラーである。
【0066】
図11に示すように、第二実施形態に係る格納式アウターミラー201は、ミラーベース210と、このミラーベース210に立設されたシャフト220と、このシャフト220を回動軸として回動する回動フレーム230を備えたミラーアッセンブリとを有している。
【0067】
回動フレーム230の、シャフト220を囲繞する円筒部231の下端部には、切欠き部232が形成されている。切欠き部232は、ミラーアッセンブリの回動方向の一端側(図11中、左側)が緩やかに傾斜しており、他端側(図11中、右側)が直角に近い角度で傾斜して段部233を形成している。一方、ミラーベース210の上面には、シャフト220の周縁部近傍で上方に突出するベース側凸部211が形成されている。そして、所定の位置、例えば格納位置において、ベース側凸部211の一端面212が、回動フレーム230の切欠き部232の段部233の端面233aに当接して係止されることで、ミラーアッセンブリの回動が規制され、所定の位置に停止される。本実施形態では、回動フレーム230の切欠き部232と、ミラーベース210のベース側凸部211とで、ストッパ機構202が構成されている。そして、切欠き部232の段部233の端面233aがボデー側係合面253を構成し、ベース側凸部211の一端面212がベース側係合面251を構成している。
【0068】
図12に示すように、切欠き部232の段部233の端面233a(ボデー側係合面253)は、ミラーアッセンブリの回動方向Dに対する起立角度θが鋭角となるように傾斜して形成されている。また、ベース側凸部211の一端面212(ベース側係合面251)は、ミラーアッセンブリの回動方向Dに対する起立角度θが鋭角(ボデー側係合面253の起立角度と同じ)となるように傾斜して形成されている。
【0069】
このような構成によれば、図12の(b)に示すように、切欠き部232の段部233の端面233aが、ベース側凸部211の一端面212に当接すると、段部233に掛かる外力Fは、端面233aに垂直な面直力F=F・sinθと、滑り方向分力F=F・cosθとに分割される。ここで、端面233aに掛かる面直力Fは外力Fよりも小さくなるとともに、当接面積は端面が直角のときよりも大きくなる。したがって、当接面の面圧は小さくなり、段部233の剛性に対して有利な方向に作用する。したがって、ストッパ機構202の剛性が高くなる。
【0070】
次に、本発明に係る格納式アウターミラーの第三実施形態について、図13および図14を参照しながら説明する。本実施形態の格納式アウターミラーは、電動格納式アウターミラーである。
【0071】
図13に示すように、第三実施形態に係る格納式アウターミラー301は、ミラーベース310と、このミラーベース310に立設されたシャフト320と、このシャフト320を回動軸として回動する電動格納ユニット330を備えたミラーアッセンブリとを有している。ところで、本実施形態の特徴とするところは、第一および第二実施形態におけるベース側係合面およびボデー側係合面の起立方向が上下方向であるのに対して、本実施形態の格納式アウターミラーは、ベース側係合面およびボデー側係合面の起立方向が、ミラーアッセンブリの回動の径方向となっている点である。
【0072】
電動格納ユニット330の、シャフト320を囲繞する円筒部331の下端部には、円筒部331の外周面から径方向外側に突出するボデー側凸部332が形成されている。図14の(a)に示すように、ボデー側凸部332は、所定角度で開く断面円弧状に形成されており、その断面円弧は、ミラーアッセンブリの回動中心を中心としている。ボデー側凸部332の周方向両端面332R,332Lは、ミラーアッセンブリの回動方向Dに対して外側へ起立する起立角度θが鋭角となるようにそれぞれ傾斜して形成されている。つまり、ボデー側凸部332は、外側の周方向長さが内側よりも短くなるように構成されている。ボデー側凸部332の周方向両端面332R,332Lがボデー側係合面353を構成している。
【0073】
一方、ミラーベース310の上面には、シャフト320の周縁部近傍で上方に突出するベース側凸部311が形成されている。ベース側凸部311は、電動格納ユニット330の円筒部331を囲繞するように断面円弧状に形成されており、その断面円弧は、ミラーアッセンブリの回動中心を中心としている。ベース側凸部311の周方向両端面311R,311Lは、ミラーアッセンブリの回動方向Dに対して内側へ起立する起立角度θが鋭角(ボデー側係合面353の起立角度と同じ)となるようにそれぞれ傾斜して形成されている。つまり、ベース側凸部311は、内側の周方向長さが外側よりも短くなるように構成されている。ベース側凸部311の周方向両端面311R,311Lがベース側係合面351を構成している。
【0074】
このような構成によれば、図14の(b)に示すように、ボデー側凸部332の周方向端面332L(ボデー側係合面353)が、ベース側凸部311の周方向端面311R(ベース側係合面351)に当接すると、ボデー側凸部332に掛かる外力Fは、端面332Lに垂直な面直力F=F・sinθと、滑り方向分力F=F・cosθとに分割される。ここで、端面332Lに掛かる面直力Fは外力Fよりも小さくなるとともに、当接面積は端面が直角のときよりも大きくなる。したがって、当接面の面圧は小さくなり、段部233の剛性に対して有利な方向に作用する。したがって、ストッパ機構302の剛性が高くなる。
【0075】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記第一実施形態では、格納位置P2と退避位置P3との開き角度は、120度より若干小さい値となっているが、これに限定されるものではなく、180度に近い値としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 格納式アウターミラー
10 ミラーベース
14 ベース側円弧状溝部
16 ベース側凸部
30 ミラーアッセンブリ
33 ボデー側凸部
35 ボデー側円弧状溝部
37 補強リブ
51a ベース側係合面
51b ベース側係合面
53a ボデー側係合面
53b ボデー側係合面
P1 通常位置
P2 格納位置
P3 退避位置
D ミラーアッセンブリの回動方向
θ 起立角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面からその側方に向かって張り出すミラーベースと、このミラーベースに回動可能に取り付けられるミラーアッセンブリと、所定位置に前記ミラーアッセンブリを停止させるためのストッパ機構とを備えた格納式アウターミラーにおいて、
前記ストッパ機構は、前記ミラーベースに形成されたベース側係合面と、前記ミラーアッセンブリに形成され前記所定位置において前記ベース側係合面と面的に当接するボデー側係合面とを備えて構成され、
前記ベース側係合面と前記ボデー側係合面は、前記ミラーアッセンブリの回動方向に対する起立角度が鋭角になるように形成されている
ことを特徴とする格納式アウターミラー。
【請求項2】
前記所定位置は、前記ミラーアッセンブリの格納位置と退避位置の二箇所であって、
前記ベース側係合面と前記ボデー側係合面は、それぞれ二面ずつ形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の格納式アウターミラー。
【請求項3】
前記ミラーベースに前記ミラーアッセンブリの回動中心と同芯のベース側円弧状溝部が形成されるとともに、前記ミラーアッセンブリに前記ベース側円弧状溝部内に挿入されるボデー側凸部が設けられ、
前記ベース側係合面は、前記ベース側円弧状溝部の周方向端面にて構成され、
前記ボデー側係合面は、前記ボデー側凸部の回動方向端面にて構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の格納式アウターミラー。
【請求項4】
前記ボデー側凸部に、円周方向に延在する補強リブが一体成形されている
ことを特徴とする請求項3に記載の格納式アウターミラー。
【請求項5】
前記ミラーベースに前記ベース側凸部が設けられるとともに、前記ミラーアッセンブリに前記ベース側凸部に係合されるボデー側凸部が設けられ、
前記ベース側係合面は、前記ベース側凸部の前記ミラーアッセンブリの回動方向端面にて構成され、
前記ボデー側係合面は、前記ボデー側凸部の回動方向端面にて構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の格納式アウターミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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