説明

構真柱の垂直精度管理方法

【課題】建築のいわゆる逆打ち工法の実施において、建物の地下鉄骨柱等として使用する構真柱の建て込みや埋め戻しの工程、および地下鉄骨梁の建て方工程等々の各作業プロセスで実施する、構真柱の垂直精度の計測、修正等の管理方法を提供する。
【解決手段】構真柱の建て込み精度の管理方法において、下端開口を密閉した管内の下端部ないし柱脚近傍位置にターゲット5Dを表示した鋼管柱5Bで成る構真柱5を、地盤に掘削した杭孔1中へ建て込み、構真柱5の上端は地上へ設置した構真柱架台3で支持させ、構真柱5の直上位置に設置した支持台6の計測基準位置に鉛直器7を垂直下向きに設置し、鉛直器7により構真柱5内のターゲット5Dを視準して、当該構真柱5の垂直精度を計測し、同構真柱5の位置の修正その他の精度管理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築のいわゆる逆打ち工法の実施において、建物の地下鉄骨柱等として使用する構真柱の建て込みや埋め戻しの工程、および地下鉄骨梁の建て方工程等々の各作業プロセスで実施する、構真柱の垂直精度の計測、修正等の管理方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、市街地における大型の建築工事に関しては、工期の短縮、或いは周辺地盤の沈下を防止し又は沈下量を低減して工事の安全性を図る等々の配慮から、逆打ち工法が多く採用され通常工法の一つとして実施されている。
逆打ち工法を実施する場合には、先ず地盤中に基礎杭と構真柱を構築し、その後地上1階床部分の構築を開始し、以下地盤の掘削と、構真柱を地下鉄骨柱に利用した地下階床部分の構築を順次下向きに繰り返し施工する。その一方では地上階の建築工事も並行して進める。したがって、構真柱の建て方精度の如何が、地下階鉄骨の取り合いおよび免震装置(アイソレータ)の取り合い部の施工精度に直接影響を及ぼすので、構真柱の建て方精度を確保し管理することの重要性と精度向上の要求は重大なテーマである。構真柱の垂直施工精度の如何が、以降の建築精度と品質の良否を左右する大きな要因となるからである。
【0003】
従来、構真柱の構築時における垂直精度管理の方法ないし管理手段として、例えば下記の特許文献1に開示された発明「構真柱の建て入れ方法とその装置」では、構真柱に直接又は構真柱に沿って設置した位置決め管内に線材の下端を固定し、同線材の上端に浮きを取り付けて水面上に浮かべ、前記浮きの水平面位置を超音波センサーで検出し、その検出結果に基づいて、浮きの水平面内位置を表示パネルに表示して構真柱の鉛直方向精度を計測すると説明されている。
しかし、浮きを、構真柱に直接設置するか又は構真柱に沿って設置した位置決め管内に設置するかの如何に拘わらず、特許文献1に開示された「構真柱の建て入れ方法とその装置」の有効な使用時期は、通例コンクリート杭を打設する段階まで、又は精一杯長くても杭孔の埋め戻し段階まで使用できるに止まる。その以後は、作業工程の実施に支障を来したり有効な使用を妨げられるので撤去され、後続の各作業プロセスには使用できない。
当然、計測装置を撤去した後の作業段階では、構真柱の鉛直方向精度や建て入れ精度の推移、変化を確認したり把握し管理する手段がない。そのため地盤の掘削後に判明する実際の垂直精度が大きく異なっていたとしても、その実際の精度を受容してそれなりの対処法で以後の工事を続行するほかない。その対処事例として、今までは地下階用の鉄骨梁を設計図よりもやや長めに(例えば100mm位長く)発注し製作しておき、地盤の掘削後に判明した実際の精度を確認した後に、実寸に合うように切断・加工して現状に整合させる態勢で臨んでいる。
【0004】
次に、下記の特許文献2に開示された発明「構真柱の建て込み位置の傾斜測定装置」の場合は、構真柱の外面に構真柱と平行に管体を取り付け、前記管体内にワイヤー等を吊り下げる。前記ワイヤーの下端に重錘を取り付け、同重錘の下端に下向きの発光源を取り付ける。更に前記発光源の下方にターゲットを設置し、前記ターゲットよりも下方側の位置に、ターゲットを上向きに視準して撮影するテレビカメラを設置し、発光源に照射されたターゲット上の光点位置を、前記テレビカメラにより撮影して構真柱の傾斜度を測定すると説明されている。
また、下記の特許文献3に開示された発明「傾斜計測器による構真柱の鉛直調整装置とその方法」は、構真柱の上部の外面部に水管を平行に取り付け、水管の管底に止着した細線の上端に浮きを取り付けて水面上に浮かべる。水管の上面部に標識を取り付けて、地上から、水管上面部に透視される浮きの位置が標識の中心と一致するか否かを目視で確認して構真柱が精度良く建て込まれたか否かを確認し、或いは鉛直精度を調整すると説明されている。
【0005】
上記特許文献2、3に開示された測定装置も、上記特許文献1の発明について説明したと同様に、構真柱のコンクリート杭を打設する段階まで、又は精一杯長くしても杭孔の埋め戻し段階まで有効に使用できるに止まり、その以後は撤去するほかなく、後続の各作業段階の実施にまで使用することはできない。
したがって、計測装置を撤去した後の作業段階では、構真柱の鉛直方向精度や建て入れ精度の推移、変化を確認したり把握・管理することはできないから、地盤の掘削後に判明する実際の垂直精度に委せるほかない。そして、実際の垂直精度にが大きく異なっていたとしても、実際の精度を受容してそれなりの対応策で以後の工事を続行するほかない。よって、やはり地下階の鉄骨梁を設計図よりもやや長めに発注し、地盤の掘削後に判明した実際の寸垂直精度に整合させる二次加工を行う態勢で臨むしかない。
また、上記特許文献1〜3のように構真柱に沿って水管を取り付けたり、或いは傾斜計(歪みゲージ)を設置して管理する場合には、当然、それらを取り付ける柱面の変形や製作精度の如何に計測精度が影響を受ける。
しかも、従来技術はいずれも、構真柱の全長に比して一部分の僅かな長さ範囲に取り付けた計測器による計測に基づいて、長大な鋼管柱の全体(全長)にわたる垂直精度を推定する方法であるから、どうしても計測誤差が増幅されやすい。
その上、特許文献1、3のように浮きを水面上に浮かべて計測する構成、そして、特許文献2のように水中に吊り下げた重錘を利用する構成では、地盤や構真柱が振動する度に、浮きや重錘がフラフラと変位するので、不安定であり、高い計測精度を期待することはできない。
また、特許文献3のように、浮きの位置が標識の中心と一致するか否かを目視で確認して計測する方法では、担当者による目測の誤認ないし計測誤差(個人差、ヒューマンエラー)を生じやすいし、計測結果を施工記録として残すことも難しいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−128977号公報
【特許文献2】特開平7−3825号公報
【特許文献3】特開平7−301527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、構真柱の建て込み精度管理の重要性と垂直精度(又は鉛直精度と同義。以下同じ。)向上の要請に鑑みて、構真柱を構成する鋼管柱の下端部ないし柱脚部近傍位置に設置したターゲットを、鉛直器により随時必要に応じて視準することを可能にして、構真柱の建て込み作業の段階から、コンクリート打設ないし埋め戻しの作業段階はもとより、必要に応じて、その後の地下階構造の鉄骨建て方段階や免震装置(アイソレータ)の取り付け段階等々の各作業段階においても、プロセス管理を行うことが可能な構真柱の垂直精度の管理方法を提供することである。
本発明の次の目的は、構真柱を構成する鋼管柱の下端部ないし柱脚部近傍位置に設置したターゲットを、地上の柱頭直上に設置した支持台等の計測基準位置へ設置した、少なくともカメラ部と望遠鏡部とを垂直方向に組み合わせた構成の鉛直器により、随時必要に応じて直接視準して計測可能であると共に、カメラ部で撮影したターゲットの画像は地上のパーソナルコンピューターのモニター画面に拡大表示して、個人差(ヒューマンエラー)が入り難い状態で正確な計測が可能であり、更に前記の計測画像は施工データとして保存することが容易である構真柱の垂直精度管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る構真柱の垂直精度管理方法は、構真柱の建て込み精度の管理方法において、
下端開口を密閉した管内の下端部ないし柱脚近傍位置にターゲット5Dを表示した鋼管柱5Bで成る構真柱5を、地盤に掘削した杭孔1中へ建て込み、
前記構真柱5の上端は地上へ設置した構真柱架台3で支持させ、前記構真柱5の直上位置に設置した支持台6の計測基準位置に鉛直器7を垂直下向きに設置し、
前記鉛直器7により構真柱5内の前記ターゲット5Dを視準して、当該構真柱5の垂直精度を計測し、同構真柱5の位置の修正その他の精度管理を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構真柱の垂直精度管理方法において、
鉛直器7は、少なくともカメラ部78と望遠鏡部76とを垂直方向に組み合わせた構成とし、鋼管柱5Bの下端を密閉したベースプレート5Cに表示されたターゲット5Dを上方から照らす照明器具10を鋼管柱5Bの内部に設置し、前記カメラ部78をパーソナルコンピュータ13と接続し、カメラ部78で視準して撮影したターゲット5Dの画像信号をパーソナルコンピュータ13のモニター画面に表示させて計測と精度管理を行い、同画像データはパーソナルコンピュータ13に保存することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した構真柱の垂直精度管理方法において、
構真柱5は、ターゲット5Dを表示したベースプレート5Cで下端開口を密閉された鋼管柱5Bと、上端を前記鋼管柱5Bの下端部へ一連に接合された仮設構真柱5Aとで構成され、前記仮設構真柱5Aはコンクリート杭8中へ埋め込まれることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載した構真柱の垂直精度管理方法において、
鉛直器7による構真柱5の鉛直精度の計測と管理は、構真柱5の建て込み作業段階から、その後のコンクリート打設段階と、構真柱頭部の位置固定段階、杭孔1の埋め戻し段階、および地盤の掘削段階など、定期的に計測を必要とする各作業段階で行い、プロセス管理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による構真柱の垂直精度管理方法は、構真柱5を構成する鋼管柱5Bは柱頭から柱脚まで見通せる開口(中空部)を有するから、同鋼管柱5Bの下端部ないし柱脚近傍設置に表示したターゲット5Dを、地上の前記構真柱5の直上である計測基準位置に設置した鉛直器7により、随時に視準して計測でき、いわば構真柱5のほぼ全長に及ぶ垂直精度を計測できるから、計測誤差の増幅が少なく、構真柱5の製作精度、例えば鋼管柱面の変形や製作誤差に悪影響を受けることが少なく、高い計測精度の建て方精度管理ができる。
また、地上の鉛直器7は、作業の遂行に邪魔になる場合に一旦撤去することが可能であるし、また、各作業段階において必要の都度、計測基準位置へ鉛直器7を設置して計測することが可能である。つまり、構真柱5の建て込み作業の段階から、コンクリート打設、埋め戻し作業の段階はもとより、その後の各作業段階の全般にわたり、定期計測を含めて必要の都度プロセス管理を行うことができ、構真柱5の垂直精度を地盤の掘削後の状態まで十分に確認、把握しつつ施工することができる。したがって、各作業段階の施工を効率的、高精度に行うことが出来るから、従前のように地下階鉄骨梁等の施工、および免震装置32の取り付けに際し、地盤の掘削後に確認した構真柱5の垂直精度と実寸の差異を発見して慌てることもない。したがって、従前のように地盤の掘削後に確認した構真柱5の垂直精度と実寸の差異を予測して地下階鉄骨梁等を予め設計図よりも若干長く加工しておいて、実際の精度確認後に切断等して実寸に合わせる再加工の必要がない。当初より設計図通りの長さに加工しておくことができるので、手数が掛からず、加工コストの低減化を図ることが可能であり、ひいては高品質な建築物の施工に寄与する。
更に、請求項1、2の発明による構真柱の垂直精度管理方法は、構真柱5を構成する鋼管柱5Bに設置したターゲット5Dを、地上の計測基準位置に設置した、少なくともカメラ部78と望遠鏡部76とを垂直方向に組み合わせて成る鉛直器7により、鋼管内を通じて随時必要に応じて直接視準するのであり、同カメラ部78で撮影したターゲット5Dの画像は、地上のパーソナルコンピューター13のモニター画面に拡大表示して計測できる。よって、計測にいわゆる個人差(ヒューマンエラー)が入り込む余地がなく、正確な計測を可能にする。そして、前記の計測画像は施工データとしてパーソナルコンピューター13にそのまま保存して残すことができる。よって、後々のデータ整理が容易で、且つ再現性と客観性の保持に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図Aは地盤中に杭孔を掘削し、地上に構真柱架台を設置して杭孔を掘削した施工段階を示す断面図、図Bは構真柱の建て込み段階を示す断面図、図Cはトレミー管で杭用コンクリートを打設する施工段階を示す断面図である。
【図2】図Dは杭用コンクリートの養生段階を示す断面図、図Eは構真柱頭部の固定処理段階を示す断面図、図Fは杭孔の埋め戻し段階を示した断面図、図Gは杭孔の埋め戻し完了段階を示す断面図である。
【図3】構真柱を利用して地下階床構造等を施工し、免震装置を取り付けると共に、地上では鉄骨建て方が進行している施工状態を主要部分について示した断面図である。
【図4】本発明による構真柱の垂直精度管理方法の全体概要を示した説明図であり、図Bはベースプレートの斜視図、図Cはターゲットの拡大平面図である。
【図5】鉛直器の一例を示した斜視図である。
【図6】記鉛直器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
構真柱5の建て込み精度の管理方法を実施するために、先ず下端開口を密閉した鋼管内の下端部ないし柱脚近傍位置にターゲット5Dを表示した鋼管柱5Bによる構真柱5を、地盤に掘削した杭孔1の中へ建て込む。
前記構真柱5の上端を、地上へ設置した構真柱架台3で支持させ、前記構真柱5の直上位置に設置した支持台6の計測基準位置(地上レベルの杭芯位置)に鉛直器7を垂直下向きに設置する。
前記鉛直器7により構真柱5の前記ターゲット5Dを視準して当該構真柱5の垂直精度を計測し、当該構真柱5の位置の修正その他の精度管理を行う。
上記の鉛直器7としては、既往の鉛直器を使用してターゲット5Dを視準してもよいが、好ましくはカメラ部78と望遠鏡部76とを垂直方向に組み合わせた構成として、鋼管柱5Bを密閉したベースプレート5Cの上面に表示したターゲット5Dを前記カメラ部78で上方から諮詢する。この場合、ターゲット5Dを照らす照明器具10を鋼管柱5Bの管内部に設置する。前記カメラ部78はパーソナルコンピュータ13と接続し、カメラ部78で視準して撮影したターゲット5Dの画像信号をパーソナルコンピュータ13のモニター画面に表示させて計測と精度管理を行い、同画像データはパーソナルコンピュータ13に保存する。
構真柱5は、柱頭から柱脚まで見通せる中空構造の管体(鋼管柱)であればよく、角形鋼管であるか丸形鋼管であるかの別を問わずに本発明の計測、管理方法を実施できる。なお、管体(構真柱5)を補強するため管内部に内ダイアフラムを設置する場合には、鋼管コンクリートの構築に使用する場合と同様、内ダイアフラムにコンクリート打設用孔(口径は例えば350mm程度)を設けた構成で実施する。
鋼管柱5Bは、ターゲット5Dを表示したベースプレート5Cで下端開口を密閉した構成とする。更に鋼管柱5Bは、、上端を前記鋼管柱5Bの下端部(ベースプレート5Cの下面等)へ一連に接合した仮設構真柱5Aと組み合わせた構成とし、前記仮設構真柱5Aがコンクリート杭8中へ埋め込む。
鉛直器7による構真柱5の鉛直精度の計測と管理は、構真柱5の建て込み作業段階から、その後のコンクリート打設段階、構真柱頭部の位置固定段階、杭孔の埋め戻し段階、および地盤の掘削段階など、定期的に計測・管理を必要とする各作業段階で行い、プロセス管理を行う。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
先ず図1A〜Cおよび図2D〜Gは、構真柱5Bの建て込み施工の枢要な工程図を概念的に示している。
図1Aは、地盤中に杭用孔1(以下、単に杭孔という。)を支持層2に到達する深さまで、図示を省略した掘削機で掘削した後、地上の前記杭孔上端の開口部上であって、構真柱の直上となる位置に、構真柱の建て込み用架台3(以下、単に構真柱架台という。)をクレーン4により吊り込んで設置した段階を示している。図中の符号17は杭孔1の上端部近傍の孔壁崩壊を防止するため杭孔1中へ設置した表層ケーシングである。
上記の構真柱架台3は、後述する構真柱5Bの建て込み作業の作業台およびガイドとして使用されるほか、同構真柱5Bの頭部を計測基準位置(地上レベルの杭芯位置)へ位置決め固定したり、或いは同構真柱頭部の位置の修正を行うジャッキを水平2次元方向に備えており、この構真柱架台3にも基準墨が写される。そして、位置決めした構真柱の頭部を固定して支持する機能その他の用途を有する作業用架台として、構真柱の施工分野では既に周知、公知であり慣用されているので、その構成の詳細を図示して説明することは省略する。
【0015】
図1Bは、構真柱5を一本物として上記の構真柱架台3に案内させつつ杭孔1中への挿入を完了し、地上には前記構真柱架台3よりも一段と高い位置に支持台6を別異に用意し、この支持台6上に墨出しした計測基準位置へ、鉛直器7を下向きに設置した段階を示している。
構真柱5としては、上記したとおり、地上の柱頭開口から柱脚部のターゲットまでを鉛直器7で視準できる中空構造の管状体であれば良い。丸鋼管であるか又は角鋼管であるかの別を問わない。極端な実施例として、構真柱5が非管材の十字鉄骨である場合には、同十字鉄骨へ垂直精度計測用の管材を同じ長さに付設し、且つ同計測用管材の下端部へターゲットを設置し、このターゲットを鉛直器7で視準する構成とすることによって全く同様に実施することが出来る。
図4に示した実施例の場合は、地中のコンクリート杭8の中心部へ埋め込む比較的短く外径断面も小さい仮設構真柱5Aの上端が、構真柱5の下端へ中心線を共有する配置で一連に接合されており、同仮設構真柱5Aとの組み合わせで地上へ届く長さを有する鋼管柱5Bが構成されている。もっとも構真柱5Bは、前記の仮設構真柱5Aを併用した構成であるべき理由はない。仮設構真柱5Aを無くして、全体を一本の鋼管柱として製作し実施することも良い。前記の仮設構真柱5Aには、管状の鋼材又は中実の鋼材が使用されている。前記鋼管柱5Bは、鉛直器7によるターゲットの視準に支障のない貫通孔を有する複数のダイヤフラムで補強した構成とし、その下端開口はベースプレート5Cで水密的に密閉され、このベースプレートの下面に、前記仮設構真柱5Aの上端が溶接等で一体的に接合されている。
図4に示した実施例の場合は、前記ベースプレート5Cの上面に、ターゲット5Dが表示され、同ベースプレート5Cを管軸と垂直な配置とし鋼管柱5Aの下端部へ接合している。ターゲット5Dの種類や表示内容は、上記の鉛直器7で精度良く明確に計測できる構成であれば良く、特に限定されない。図4に示した実施例では、鉛直器7の後述するカメラ部で視準して撮影することを前提に、ターゲットの中心O点から水平二次元方向に標識線が表示され、且つ各方向の標示線に目盛り線と目盛り数字が併記されている。更に方位が解るように、北の方向を示す「N」の表記も行われ、画像の読み違いや誤認、誤解を防ぐ構成とされている。前記ターゲット5Dの中心O点が、構真柱5の中心(管軸)と一致するようにて、ベースプレート5Cが鋼管柱5Bの下端部へ接合されている。一方、地上の支持台6に墨出しした計測基準位置へ、鉛直器7の中心を据え付けて座標原点とし、この座標原点から鋼管柱5Bの下端部に在るターゲット5Dを視準して、同ターゲット5Dの中心O点を一致させる修正作業が、構真柱5の建て込み精度(垂直精度)の管理目標とされる。
ただし、ターゲット5Dの設置は、上記ベースプレート5Cの上面に表示する場合に限らない。ベースプレート5Cとは別異にターゲット板を用意してターゲットを表示し、このターゲット板を鋼管柱5Bの管内の下端近傍位置(柱脚部)へ適宜の手段で管軸と直角な配置に設置して用意して実施することもできる。
【0016】
なお、図4に示した実施例の構真柱5には、補助的に垂直精度確認を行う手段として、上下方向の数カ所にわたる構真柱外面に傾斜計9(歪みゲージなど)が複数個設置され、その計測線も地上の管理室に導く構成とされている。これは既往技術として実績のある傾斜計9の計測値により、念のため本発明の鉛直器7による垂直精度管理の信頼度を確認するための手段であり、経験と実績を積めば無用のものとなる。また、鋼管柱5Bの管内の下端近傍の位置には、上記ターゲット5Dを照らして、カメラ部による視準と撮影を容易にする照明器具10が設置され、その電源線は地上の管理室の電源に導かれている。更に、建て入れた構真柱5の垂直精度を計測に従い修正する手段として、構真柱5の下方部位の外面には、その管中心から水平方向の放射状配置に、例えば直角4方向に水中ジャッキ11が設置され、構真柱5の垂直精度修正時の反力は孔壁にとる構成とされている。前記水中ジャッキ11の油圧管は、やはり地上の管理室に設置された油圧制御装置と接続され、管理室で後述のパーソナルコンピュータを見ながら油圧制御により垂直精度の修正が行われる。このとき構真柱5の上端部には、公知のヤットコ12を接続して建て入れ作業と頭部固定が行われている。
図4によれば、支持台6上に据え付けた鉛直器7のカメラ部と、地上の管理室等に設置されたパーソナルコンピュータ13(以下、単にパソコン13と略す場合がある。)とがUSBコード14で接続され、カメラ部により撮影したターゲット5Dの計測画像を、管理室内において、パソコン13のモニター画面に拡大して確認し、計測と垂直精度修正の管理作業を一箇所で行う構成を示している。
【0017】
因みに、上記鉛直器7の具体的構成を図5と図6に例示したので、これを説明する。
上記支持台6に良磁性の鋼構造で構成した取り付け座6aへ据え付けるベース盤70の下面に、ON、Offスイッチ71で磁気の励磁吸着と消磁解放とを切り換え制御される磁気吸着ブロック72が、水平面上に120度間隔で3個設けられている。つまり、支持台6の水平な取り付け座6a上へ墨出しされた計測基準位置へ、当該鉛直器7の中心を一致させてスイッチ71をON操作すると、ベース盤70は磁力により取り付け座6aへ強固に固定される。しかし、スイッチ71をOff操作すると、ベース盤70は即座に簡単に撤去できるのである。
前記ベース盤70の上には、垂直な高さ調整ボルト73を水平方向に120度間隔で3個配置した水平レベル出し板74が設置され、この水平レベル出し板74から立ち上がる筒形フレーム75の上部に望遠鏡部76が垂直に設けられている。更にリレーレンズ部77とカメラ部78が、カメラの回転および焦点(ピント)調整用ネジ部79を介して、それぞれ垂直方向に中心線(光軸)を共通とした一連の配置で設けられている。
上記筒形フレーム75の上部に設けられた水平板80の上面には、上記リレーレンズ部77及びカメラ部78の垂直な中心線を中心とする直角二方向の配置に2個の気泡管部81が設けられている。また、上記ベース盤70の周縁部には、前記水平板80上で直角二方向の配置とされた2個の気泡管部81、81と同一方向の配置で、直角4方向に4個の指標線82が細い線状の切り込み溝として形成されている。
【0018】
つまり、この鉛直器7の使用法としては、先ず支持台6の取り付け座6aへ取り付けるベース盤70の方向性を、ベース盤70の上記4個の指標線82が、図4に示したターゲット5Dを構成する直角4方向の標識線と一致する配置とし、支持台6の水平な取り付け座6a上へ予め墨出しした計測基準位置の上に、鉛直器7の中心(望遠鏡部76とリレーレンズ部77及びカメラ部78の光軸)を一致させ、磁気吸着ブロック72を励磁操作した磁力により強固に固定させる。
その上で、水平板80上の直角二方向に配置された2個の気泡管部81、81を眺めて確認しつつ、3個の調整ボルト73を適度に回す調整により、水平板80の水平度、ひいては望遠鏡部76、リレーレンズ部77及びカメラ部78の光軸の垂直度を出す。かくすると、この鉛直器7の望遠鏡部76とリレーレンズ部77およびカメラ部78の光軸を、支持台6上に墨出しした計測基準位置に一致させて垂直な配置に設置したことになる。そして、前記光軸が構真柱5のターゲット5Dの中心O点と一致した場合、当該構真柱5の垂直度が得られたことを意味する。
ただし、本発明の垂直精度管理方法に使用する鉛直器7は、上記した望遠鏡部76とリレーレンズ部77およびカメラ部78を備えた構成のものに限らない。既往のレーザービーム放射器その他の鉛直器を使用して同様に実施することもできる。
【0019】
以上に説明した構成を前提にして、再び図1C以下の工程図にしたがい、構真柱5の垂直精度管理方法の説明に戻る。
図1Cでは、上記図1Bのようにして構真柱5を杭孔1の中へ所定の深さまで挿入した後、構真柱架台3が備える水平ジャッキ等を操作して、当該構真柱5の頭部(又はヤットコ12)の中心を上記した支持台6の基準位置へ一致させる位置修正と、同基準位置へ固定する処置を行っている。その後、支持台6上に墨出しした基準位置へ、鉛直器7を、上記した操作と条件にて垂直下向きに設置している。そして、前記鉛直器7のカメラ部78により構真柱5の下端部の上記ターゲット5Dを視準して、構真柱5の垂直精度を計測し確認する。その結果、垂直誤差を発見した場合には、図4Aに示すようにパソコン13の画面により目視確認しつつ、一方では油圧制御装置の操作を通じて、水中ジャッキ11を適宜に制御して垂直精度の修正処理を行う。
上記のようにして構真柱5の垂直精度をカメラ部78で視認し、パソコン13の画面により目視確認して、必要な垂直度修正を水中ジャッキ11で行った後に、図1Cでは更に、地上から杭孔1中へ構真柱5を避けた位置へトレミー管15を挿入している。該トレミー管15も、その頭部を構真柱架台3へ位置決めした後、コンクリートミキサー車16をサイトへ導き入れ、前記トレミー管15を通じて杭用コンクリート8aの打設を行う作業段階を示している。
勿論、上記コンクリート打設の作業中においても、鉛直器5のカメラ部78を定期的に又は必要の都度視準して、コンクリート打設の勢いで構真柱5の垂直精度に変化を生じないかを随時確認する。そして、垂直精度に変化を生じた場合には直ちに、水中ジャッキ11の制御を通じて構真柱5の垂直精度修正を行うことを繰り返す。こうして構真柱5の下端、即ち本実施例の場合で云えば仮設構真柱5Aがコンクリート杭8の中心部へ埋設されて垂直に建つよう操作する。
【0020】
続いて図2Dは、コンクリート杭8のコンクリート打設が所定レベルまで完了し、仮設構真柱5Aがコンクリート杭8の中心部へ埋設された状態を確認した後、その垂直精度の管理状態を保持したまま、打設したコンクリート8aの養生を、例えば翌日まで約12時間行う段階を示している。こうして前記コンクリート杭8の養生が終了した後には、修正用の水中ジャッキ11を撤去して地上へ回収する。こうした水中ジャッキ11を撤去する作業工程は既往技術と何ら変わりがない。また、水中ジャッキ11を撤去して地上へ回収することを可能にする機構と設置構造については、既に公知、周知の慣用技術なので、ここで改めて詳しく具体的に説明することは割愛する。
【0021】
次に、図2Eは、構真柱5の頭部(又はヤットコ12)の位置を図2Dの鉛直器7で確認し、変化を確認した場合には、構真柱架台3の位置修正用ジャッキを利用して、先に墨出しした基準位置へ一致させる修正を行った上で、鉛直器7と支持台6を一旦撤去し、構真柱架台3とは別異の独立した鋼材18を使用して、構真柱5の頭部位置を固定する処理を行い、その後、無用となった構真柱架台3の撤去作業を行って、次の杭孔埋め戻し工程の準備に移る段階を示している。
つまり、構真柱5の柱脚部(仮設構真柱5A)は、上記のようにしてコンクリート杭8に埋め込まれた後に十分な養生期間で固定され、同構真柱の頭部(又はヤットコ12)の位置も固定されたので、構真柱5は埋め戻し材の衝突等に耐える状態になっている。
そこで図2Fでは、バックホウ20等を使用し、杭孔1の掘削時に排出した残土21その他の埋め戻し材を、杭孔1中へ投入して埋め戻し作業を行った後に、無用となった表層ケーシング17をクレーン4で引き抜いて撤去する作業段階を示している。
そして、図2Gは、上記杭孔1の埋め戻し完了後に、地盤の掘削と床版構造の構築を伴う逆打ち工法の実施を待つばかりになった状態を示している。
なお、必要が有れば、図2Gの段階においても、再び支持台6をD図のように設置し、基準位置へ鉛直器7を据え付けて、この段階における構真柱5の垂直精度の推移なり現状を計測し確認して、次なる地盤の掘削および地下階床構造の構築を伴う逆打ち工法の実施に備えることができる。構真柱5の下端部分のターゲット5Dは、依然として鉛直器7で視準可能な状態に保たれているからである。
【0022】
次に図3では、いよいよ地盤の掘削と地下階床構造の構築を伴う逆打ち工法の実施がかなり進んだ段階を示している。即ち、地下階部分では、地上1階の床版構造30を施工した後、順次地下3階まで床版構造30の構築が下向きに進んで、最下部の地下構造31が完成している。そして、構真柱5の下端部とコンクリート杭8の上端部との間に、仮設構真柱5Aの上部を切除して免震装置32が組み込まれている。一方、地上部分では、逆打ち工法の特徴として、構真柱5の上端に柱40を継ぎ足して建て、地上階構造41の建て方が進んだ状態を示している。
【0023】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、もとより本発明は図示した実施例に限定されない。いわゆる当業者が必要に応じて通常行う設計変更その他の応用、利用の実施態様も包含することを、念のため申し添える。
【符号の説明】
【0024】
5 構真柱
5A 仮設構真柱
5D ターゲット
5B 鋼管柱
5C ベースプレート
1 杭孔
3 構真柱架台
6 支持台
7 鉛直器
78 カメラ部
76 望遠鏡部
13 パーソナルコンピュータ(パソコン)
32 免震装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構真柱の建て込み精度の管理方法において、
下端開口を密閉した管内の下端部ないし柱脚近傍位置にターゲットを表示して成る構真柱を、地盤に掘削した杭孔中へ建て込み、
前記構真柱の上端を地上へ設置した構真柱架台で支持させ、前記構真柱の直上位置に設置した支持台の計測基準位置に鉛直器を垂直下向きに設置し、
前記鉛直器により構真柱の前記ターゲットを視準して当該構真柱の垂直精度を計測し、同構真柱の位置の修正その他の精度管理を行うことを特徴とする、構真柱の垂直精度管理方法。
【請求項2】
鉛直器は、少なくともカメラ部と望遠鏡部とを垂直方向に組み合わせた構成とし、構真柱にターゲットを照らす照明器具を設置し、前記カメラ部をパーソナルコンピュータと接続し、カメラ部で撮影したターゲットの画像信号をパーソナルコンピュータのモニター画面に表示させて計測と精度管理を行い、同画像データはパーソナルコンピュータに保存することを特徴とする、請求項1に記載した構真柱の垂直精度管理方法。
【請求項3】
構真柱は、上面にターゲットを表示したベースプレートで下端開口を密閉された鋼管柱と、上端を前記構真柱のベースプレートの下端部へ一連に接合された仮設構真柱とで構成され、前記仮設構真柱がコンクリート杭に埋め込まれることを特徴とする、請求項1に記載した構真柱の垂直精度管理方法。
【請求項4】
鉛直器による構真柱の鉛直精度の計測と管理は、構真柱の建て込み作業段階から、その後のコンクリートの打設段階、構真柱頭部の位置固定段階、杭孔の埋め戻し段階、および地盤の掘削段階など、定期的に計測を必要とする各作業段階で行い、プロセス管理を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載した構真柱の垂直精度管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−21392(P2011−21392A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167502(P2009−167502)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】