説明

樹脂化粧板

【課題】繊細な凹凸形状を有し、高級感のある樹脂化粧板を提供すること。
【解決手段】基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成した樹脂化粧板であって、該賦型シートが基材上に少なくとも、部分的に又は全面にわたって設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである樹脂化粧板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の消費者の高級品指向により、家具や机、各種カウンターやドアーなどの住宅機器、あるいは内装材などに対しても高級感が求められるようになり、これらに用いられる化粧板においても、高級感を与える外観を有するものが望まれている。化粧板としては、一般に合成樹脂系材料を賦型した樹脂化粧板、例えばポリエステル化粧板などが幅広く用いられている。
このような樹脂化粧板は、基板上に不飽和ポリエステル樹脂等の樹脂組成物を塗布した後に、凹凸模様を有する賦型シートを重ね合わせて、樹脂組成物を硬化させて、前記凹凸模様を有する賦型シートを剥離することにより、凹凸表面を有する化粧板を製造する方法が知られている。そして、このような方法で凹凸表面を有する樹脂化粧板を製造するのに用いられる賦型シートとしては、表面に木目調の凹凸の柄を有し、表面の全面をシリコーン樹脂で硬化させて得られるものが提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、化粧板に十分付与する凹凸形状が十分に繊細ではない、また、表面の強度が十分ではないため、繰返し使用をすることが困難であるといった問題があった。
【0003】
また、高意匠を有するポリエステル化粧板として、木目模様の色彩模様と凹凸模様が良く合致したものが提案されている(例えば、特許文献2)。しかし、常温硬化剤の樹脂を使用しているため、シートの収縮により絵柄寸法が変わるため、印刷原版の補正作業が必要であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−144398号公報
【特許文献2】特開平8−267687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、繊細な凹凸形状を有し、高級感のある樹脂化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、樹脂化粧板の製造において、特定の賦型シートを用いることで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成した樹脂化粧板の製造方法であって、前記賦型シートが、基材上に、全面にわたって(イ)それ自体撥液性を有するバインダーを含有する撥液性インキ、(ロ)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性を有する物質を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性を有するバインダーにさらに撥液性を有する添加剤を添加した撥液性インキからなる群から選ばれたインキによってインキ層を形成し、前記インキ層上に、離型剤を含有する硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成し、前記インキ層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記塗工層は前記インキ層の上部に凸部を形成し、さらにこのようにして形成された凸部を形成する塗工層を硬化させたものである樹脂化粧板の製造方法、
(2)基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成した樹脂化粧板の製造方法であって、前記賦型シートが、基材、及び電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層を有し、前記基材と前記表面賦型層の間に、基材側から、少なくともインキ層と、相互作用防止層とをこの順序で積層され、前記インキ層は相互作用領域を発現させる部分又は基材の全面にわたって形成され、前記相互作用防止層が相互作用領域を発現させる部分を切抜いた形状を有して形成されたものである樹脂化粧板の製造方法、
(3)前記賦型シートが、基材がポリエステル系フィルムからなり、基材がキシレン中に140℃で24時間浸漬後の重量減少が1.0質量%以下である上記(1)又は(2)に記載の樹脂化粧板の製造方法、及び
(4)前記樹脂組成物中の樹脂が不飽和ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂化粧板の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、繊細な凹凸形状を有し、高級感のある樹脂化粧板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の樹脂化粧板の断面を示す模式図である。
【図2】本発明で用いられる賦型シートの剥離過程を示す模式図である。
【図3】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図4】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図5】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図6】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図7】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図8】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図9】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図10】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図11】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図12】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図13】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図14】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図15】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【図16】本発明で用いられる賦型シートの断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂化粧板は、基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成したものである。
本発明の樹脂化粧板について、図1を用いて説明する。
【0011】
本発明の樹脂化粧板の基板2は、特に限定されず、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧材との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基板の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0012】
プラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0013】
金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等が例示される。
これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基板として使用できる。
【0014】
接着層3は、基板2と化粧シート層4とを接着するために設けられる層である。
接着剤層3に用いられる接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布する。この接着剤は、尿素系、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を用いることができ、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
【0015】
化粧シート層4の基板2上への貼着は、通常、本発明の化粧シート層4の裏面に接着剤層3を形成し、基板2を貼着するか基板2の上に接着剤を塗布し、化粧シート層4を貼着する等の方法による。貼着には、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いることができる。
【0016】
化粧シート層4は、本発明の樹脂化粧板に装飾性を与えるものであり、シート層41上に必要に応じて設けられるベタ印刷層42と絵柄層43が順に設けられたものである。
シート層41としては、通常化粧シートの基材として用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシート等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
これらの基材、特にプラスチックフィルムやプラスチックシートを基材として用いる場合には、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
【0017】
シート層41として用いられる各種の紙類としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙などが使用できる。これらの紙基材は、紙基材の繊維間ないしは他層と紙基材との層間強度を強化したり、ケバ立ち防止のため、これら紙基材に、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙等である。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等を用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成樹脂繊維が挙げられる。
【0018】
プラスチックフィルム又はプラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0019】
シート層41の厚さについては特に制限はないが、プラスチックを素材とするシートを用いる場合には、厚さは、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲であり、紙基材を用いる場合には、坪量は、通常20〜150g/m2程度、好ましくは30〜100g/m2の範囲である。
【0020】
シート層41上に設けられるベタ印刷層42は、本発明の樹脂化粧版の意匠性を高めるために所望により設けられる、隠蔽層とも称されるものである。ベタ印刷層42は、シート層41上の表面の色を整えることで、シート層41自身が着色していたり、色ムラがあるときに形成して、シート層41の表面に意図した色彩を与えるものである。通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。シート層41が白色であることを活かす場合や、シート層41自身が適切に着色されている場合にはベタ印刷層42の形成を行う必要はない。
ベタ印刷層42の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
この着色層6は厚さ1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
【0021】
絵柄層43は、シート層41に装飾性を与えるものであり、シート層41上に、又はベタ印刷層42上に、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層43に用いる絵柄インキとしては、ベタ印刷層42に用いるインキと同様のものを用いることができる。
【0022】
樹脂層5は、化粧シート層4の上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して形成される層であり、樹脂層5の厚さは、100〜500g/m2が好ましく、100〜350g/m2がより好ましく、150〜250g/m2がさらに好ましい。
樹脂組成物は、樹脂、ならびに必要に応じて添加される重合開始剤、重合促進剤、重合禁止剤及びその他の添加物からなる組成物である。
本発明に用いられる樹脂組成物中の樹脂としては、常温又は加熱することにより硬化するものであれば、特に制限はなく、例えば、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、炭化水素樹脂(芳香族系及び脂肪族系)、ゴム系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。中でも、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
【0023】
重合開始剤、重合促進剤、及び重合禁止剤は、樹脂組成物の硬化速度を調整するために添加されるものである。
重合開始剤としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル開始剤から適宜に選択して用いられる。重合開始剤の樹脂組成物中の添加量は0.5〜3質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。重合促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト等のコバルト化合物、バナジウム化合物、マンガン化合物等の金属化合物、ジメチルニトリル等のアミン系化合物等が樹脂組成物に対して好ましくは0.1〜2.0質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%の割合で用いられる。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、トリハイドロキノン、ベンゾキノン、トリハイドロベンゼン等を用いることができる。その他の添加物としては、例えば塗工粘度の調整及び樹脂を架橋させるために、スチレンモノマー等のビニル基を有する化合物を好ましく挙げることができ、その樹脂組成物中の添加量は10〜40質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましい。
これらの硬化速度調整剤、及びその他の添加物は、単独で用いることもできるし、併用することもできる。
【0024】
本発明で用いられる賦型シート71は、該賦型シートが基材上に少なくとも、全面にわたって又は部分的に設けられたインキ層と、該インキ層上に存在してこれと接触すると共に、全面にわたって被覆する表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、表面賦型層の表面が凹凸形状を有するものである。
【0025】
本発明で用いられる賦型シート71の構造について、図3、図4を用いて説明する。図3、図4は本発明の賦型シート71の断面を示す模式図である。図3に示す例では、基材72上に全面を被覆する一様均一な浸透防止層76、インキ層73、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層75がこの順に積層されたものである。インキ層73は部分的に存在し、その直上部及びその近傍における表面賦型層に相互作用領域74が形成される。相互作用領域74は図中で点の集合により表現されている。
表面賦型層75の最表面における、相互作用領域74の上部は、インキ層73の形成に伴って隆起し、凸形状77を有している。表面賦型層75の表面がこのように凸形状を有することによって、全体として凹凸形状を有する賦型シートを形成する。なお、該凸形状の高さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、通常1〜3μmの範囲である。
【0026】
表面賦型層75中に形成される相互作用領域74の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図3に示すようにインキ層73の表面から表面賦型層75の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また図4に示すように表面賦型層75の最表面に達するものであってもよい。
【0027】
また、インキ層は全面にわたって存在していてもよい。インキ層が全面にわたって存在する場合の賦型シートを図9〜11を用いて説明する。
図9に示す例は、基材82上に全面を被覆する一様均一な浸透防止層86、インキ層83、硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層85がこの順に積層されたものであり、表面賦型層85の表面には微細凹凸面813を有するものである。インキ層83は全面にわたって存在し、その直上部における表面賦型層に相互作用領域84が形成される。相互作用領域84は図中で点の集合により表現されている。
表面賦型層85の最表面における、相互作用領域84の上部は、インキ層83の形成に伴って微細凹凸面813を有している。表面賦型層85の表面がこのように微細凹凸面を有することによって、繊細な凹凸形状を有する賦型シートを得ることができる。
さらに図11の例では、インキ層83の厚みを変えることにより、インキ層83の厚みに応じて表面賦型層85の表面に隆起形状87を発現させることによっても、凹凸形状を有することを示すものである。
【0028】
表面賦型層85中に形成される相互作用領域84の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図9〜11に示すようにインキ層83の表面から表面賦型層85の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また表面賦型層85の最表面に達するものであってもよい。
また、微粒子、焼成カオリン粒子に起因する微細隆起形状812は、表面賦型層85の表面の全体にわたって発現する隆起形状87及び微細凹凸面813に、部分的に微細な隆起形状を与えるものである。
この表面賦型層85中の相互作用領域84による微細凹凸面の効果、表面賦型層85との表面における微粒子の頭出しによる効果、及びインキ層83の厚みに応じて形成される隆起形状の効果により、繊細な凹凸形状を有し、高級感のある緻密な賦型が可能となる賦型シートを得ることができる。
【0029】
本発明で用いられる賦型シート71及び81の基材72及び82は、通常賦型シートの基材として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、上記のシート層41で用いられる各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシートの他、金属箔、金属シート、金属板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
【0030】
金属箔、金属シート、又は金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル等が例示される。これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
これらのうち、基材としては、耐熱性と寸法安定性に優れた材質が好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0031】
基材の厚さについては特に制限はないが、プラスチックを素材とするシートを用いる場合には、厚さは、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲であり、紙基材を用いる場合には、坪量は、通常20〜150g/m2程度、好ましくは30〜100g/m2の範囲である。
【0032】
賦型シート71及び81の浸透防止層76及び86は、所望により設けられる層であって、後述するインキ層を構成するインキ組成物及び表面賦型層を構成する電離放射線硬化性樹脂が、基材中に浸透することを抑制する機能を持つものであり、基材が紙や不織布などの浸透性基材である場合に特に効果を発揮する。従って、浸透防止層は基材とインキ層の間に位置すればよい。通常は、表面賦型層を構成する電離放射線硬化性樹脂と密着性がある硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な層を、図3及び9に示すように基材とインキ層の間に設ける。このことにより、基材とインキ層及び表面賦型層との接着性を高める機能をも併せて果たすものである。
【0033】
賦型シート71及び81のインキ層73及び83は、図3及び9に示すように必要に応じて設けられた浸透防止層等の上に部分的に又は全面にわたって設けられるもので、表面賦型層の表面の凹凸形状を生じさせる層である。
賦型シート71及び81における凹凸形状発生の機構については、十分解明されるには至っていないが、各種実験と観察、測定の結果から、インキ層の表面に表面賦型層を形成するための電離放射線硬化性樹脂の未硬化物を塗工した際に、各材料の組合せ、塗工条件の適当な選択によって、インキ層の樹脂成分と表面賦型層が、一部溶出、分散、混合等の相互作用を発現することによるものと推測される。この際、インキ層のインキ組成物と電離放射線硬化性樹脂の未硬化物におけるそれぞれの樹脂成分は、短時間には完全相溶状態にならずに懸濁状態となって、インキ層の直上部及びその近傍に存在し、該懸濁状態となった部分が相互作用領域をなして、凸形状を発現させるものと考えられる。この懸濁状態を有したまま、表面賦型層を架橋硬化せしめることにより、かかる状態が固定されると、図3及び図4に示すように、表面賦型層中に相互作用領域が部分的に形成され、凸形状7をなすものと推測される。また、インキ層が全面にわたって設けられる場合には、図9〜11に示すように、表面賦型層中に相互作用領域84が全面にわたって形成され、微細凹凸面813をなすものと推測される。
【0034】
賦型シート71及び81のインキ層を形成するインキ組成物は表面賦型層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物との間で溶出、分散、混合等の相互作用を発現し得る性質を有するものであり、該電離放射線硬化性樹脂組成物(未硬化物)との関連で適宜選定されるものである。具体的には、バインダー樹脂として非架橋性樹脂を有するインキ組成物であることが好ましく、例えば熱可塑性(非架橋型)ウレタン樹脂などが好適である。ここで、表面賦型層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用をより強いものとし、さらなる模様の凹凸感を得るとの観点から、ウレタン樹脂の含有量は50質量%以上であることがさらに好ましい。
上記ウレタン樹脂としては、非架橋型のもの、すなわち、3次元架橋して網目状の立体的分子構造を持ったものではなく、線状の分子構造を持った熱可塑性樹脂となったものを選択することが好ましい。このような非架橋型のウレタン樹脂としては、ポリオール成分として、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールとイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂肪族ないしは脂環式イソシアネート等のイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂が挙げられる。通常ポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基はそれぞれ平均2である。またウレタン樹脂の平均分子量は10,000〜50,000程度であり、ガラス転移温度(Tg)は−70〜−40℃程度のものが相互作用領域発現のために好ましい。
【0035】
また、インキ組成物は、必要に応じて、相互作用領域の発現の程度を調整するため、飽和又は不飽和のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを含有することができる。これらのうち、ポリエステル樹脂が好ましく、特に不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。不飽和ポリエステル樹脂の添加量は、インキ組成物中のバインダー樹脂全量に対して、10〜50質量%の範囲であることが好ましい。この範囲内であると相互作用領域発現の十分な増強効果が得られる。不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和ジカルボン酸とグリコールとの反応物であれば特に限定されず、不飽和ジカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。
【0036】
インキ層を形成するインキ組成物中に体質顔料を含有することが好ましい。体質顔料を含有することによって、インキ組成物にチキソ性を付与することができ、版を用いてインキ層を印刷する際に、インキ組成物の形状が維持される。このことにより、凸部から凹部に移行する端部における凹凸形状の鮮映性(シャープネス)を強調することができ、メリハリのある意匠表現が可能となる。
体質顔料としては特に限定されず、例えばシリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。これらのうち吸油度、粒径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ、インキ組成物としての塗工安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。シリカの粒径としては、0.1〜5μmの範囲が好ましい。0.1μm以上であるとインキ組成物に添加した際にインキのチキソ性が極端に高くならず、またインキの粘性が上がりすぎず印刷のコントロールがしやすい。いいかえると、凹凸形状のコントロールがしやすくなる。また、木目模様の作製において、導管模様部分を表現しようとした場合、導管模様部分のインキの塗布厚みが通常5μm以下であり、シリカの粒径が塗布厚みよりも小さければ粒子の頭だしが比較的押えられ目立たないことから、相互作用領域発現の状態が自然となることで、凹凸形状の違和感は生じにくく、自然な仕上がりとなる。
これらの体質顔料のインキ組成物における含有量は、5〜15質量%の範囲であることが好ましい。5質量%以上であるとインキ組成物に十分なチキソ性を付与することができ、15質量%以下であると凸形状の発現を付与する効果の低下が全く見られず好ましい。
【0037】
インキ層を形成するインキ組成物の塗布量については、1〜50g/m2の範囲であることが好ましい。1g/m2以上であると、上述したインキ組成物と電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用が起こり、相互作用領域が十分得られるため、賦型シート表面に十分な凹凸形状が得られる。一方50g/m2以下であると、インキ組成物の印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利である。以上の観点から、インキ組成物の塗布量はさらに1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、特に1〜7g/m2の範囲であることが好ましい。
【0038】
また、インキ組成物の塗布量を変化させることにより、インキ層を構成するインキ組成物の厚みを均一でないものとすることができ、これによって発現する凸部の高低差の程度が、段階的あるいは連続的に変化し、結果として賦型シートの模様を段階的に凹凸形状が変化する階調模様または連続的に凹凸が変化する連続模様とすることができる。
これは、インキ層の塗布量が相対的に、より多くなるにしたがって、インキ層と表面賦型層との間の相互作用が相対的に増加して、懸濁状態の程度がより高く、凸形状の起伏がより大きくなるためと考えられる。
【0039】
インキ層が部分的に設けられる賦型シート71について、図5〜7を用いて以下詳細に説明する。図5においては、インキ層73を構成するインキ組成物73−a、73−b及び73−cの厚みを異なるようにしている。すなわち、膜厚は相対的に73−a、73−b、73−cの順に段階的に薄くなる。こうすることによって、相互作用領域74−a、74−b及び74−cを、段階的に変化させることができ、得られる凹凸形状の隆起形状77−c、77−b、77−aの順に段階的に隆起部分はより隆起する。これは、インキ層73を構成するインキ組成物の厚みが均一ではなく、73−a、73−b、73−cの順に、該インキ組成物の厚みが減少するように塗布されているため、インキ組成物の厚みの大きい部分はより隆起形状の起伏が著しくなり、73−a、73−b、73−cの順に階調的に隆起形状の起伏が小さくなるように変化すると考えられる。こうしたインキ組成物の厚みを、さらに細かく変化させることによって、凹凸形状を連続的に変化させることもできる。
こうした構造を有する賦型シートにより一層多彩で繊細な質感を付与することが可能となる。インキ層73を構成するインキ組成物の厚みを変化させる方法は、通常、インキ組成物の塗工量を変化させることで容易に行うことができ、インキ組成物の塗工量を連続的に変化させることによって、上記段階的な変化を連続的に無段階で変化させることもできる。
【0040】
次に、図6に示す例では、基材72上にインキ層73が、基材表面と平行な面内において、連続的に厚みが変化するように(中央部が厚く、側部に向かうほど薄くなるように)積層され、その上に電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層75が積層されたものである。図5で示したのと同様に、インキ層の直上部及びその近傍における表面賦型層は相互作用領域を形成する。図6の例においては、インキ層の膜厚が、73−c、73−b、73−aの順に厚くなるのに対応して、相互作用領域74−c、74−b、74−aの順に凸形状の起伏が連続的に増加する。その結果、表面賦型層75はこの順番に、凸形状の起伏が連続的に増加する。
表面賦型層75中に形成される相互作用領域74の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図5に示すように、インキ層73の表面から表面賦型層75の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また図6及び図7に示すように表面賦型層75の最表面に達するものであってもよいし、さらには表面賦型層75の最表面に凸形状を形成していてもよい。
【0041】
インキ層が全面にわたって設けられる賦型シート81について、図11を用いて以下詳細に説明する。図11においては、インキ層83を構成するインキ組成物83−a、83−b及び83−cの厚みを異なるようにしている。すなわち、膜厚は相対的に83−a、83−b、83−cの順に段階的に薄くなる。こうすることによって、相互作用領域84−a、84−b及び84−cを、段階的に変化させることができ、得られる凹凸形状の凸形状87−c、87−b、87−aの順に段階的に凸部はより隆起する。これは、インキ層83を構成するインキ組成物の厚みが均一ではなく、83−a、83−b、83−cの順に、該インキ組成物の厚みが減少するように塗布されているため、インキ組成物の厚みの大きい部分はより凸形状の起伏が著しくなり、83−a、83−b、83−cの順に階調的に凸形状の起伏が小さくなるように変化すると考えられる。こうしたインキ組成物の厚みを、さらに細かく変化させることによって、凹凸形状を連続的に変化させることもできる。
こうした構造を有する賦型シートにより一層多彩で繊細な質感を付与することが可能となる。インキ層83を構成するインキ組成物の厚みを変化させる方法は、通常、インキ組成物の塗工量を変化させることで容易に行うことができ、インキ組成物の塗工量を連続的に変化させることによって、上記段階的な変化を連続的に無段階で変化させることもできる。
【0042】
表面賦型層85中に形成される相互作用領域84の広がりの程度については、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に限定されず、図9に示すように、インキ層83の表面から表面賦型層85の厚み方向の途中で留まっていてもよく、また図10に示すように表面賦型層85の最表面に達するものであってもよいし、さらには表面賦型層85の最表面に微細隆起形状を形成していてもよい。
【0043】
賦型シート71及び81の表面賦型層は上述のように電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、(メタ)アクリレート単量体を含むことによって、上述のインキとの相互作用が生じ、凹凸形状の差を好適に形成するものである。インキとの相互作用をより強いものとし、さらなる凹凸形状を得るとの観点から、(メタ)アクリレート単量体の含有量は50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0044】
(メタ)アクリレート単量体としては、多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0047】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
本発明で用いられる賦型シート71及び81においては、上述のようにインキ層を構成するインキと表面賦型層を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物の相互作用が重要であり、この観点から適当なインキと電離放射線硬化性樹脂組成物が選定されるが、電離放射線硬化性樹脂組成物としては、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましい。
【0048】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明で用いられる賦型シート71及び81においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0049】
また、賦型シート71及び81の表面賦型層は、その他の成分として焼成カオリン粒子を含有することが好ましい。この表面賦型層中に焼成カオリン粒子を含有させることで、賦型シート表面の凹凸形状がより繊細となるほか、耐マーリング(marring)性が向上する。ここでマーリングとは、シート表面が擦られた場合に、小さい擦り傷が発生することをいい、耐マーリング性が優れているとは、擦り傷ができにくいことをいう。賦型シートにこのような性能を付与することで、表面賦型層を強化し、より長期間の使用に耐えうる賦型シートを得ることができ、化粧板の製造コストを下げることが可能となる。
【0050】
賦型シート71及び81の表面に、より繊細な凹凸形状及び耐マーリング性を付与するために使用する焼成カオリン粒子は、一般的な(含水)カオリン粒子を焼成して得られるカオリン粒子であるが、充填剤として焼成カオリン粒子を添加することで、シリカ粒子や焼成前の含水カオリン粒子では実現できなかった耐マーリング性の改善が実現する。なお、焼成カオリン粒子の粒径は、用途、要求物性等に応じて適宜選択すればよいが、例えば平均粒径で0.5〜2μm程度のものを使用する。また、焼成カオリン粒子の添加量も、用途、要求物性等に応じて適宜選択すれば良いが、例えば、電離放射線硬化性樹脂(ただし、表面賦型層が、他の樹脂を含む場合には、電離放射線硬化性樹脂とその他の樹脂との合計)100質量部に対して5〜50質量部程度である。
なお、焼成カオリン粒子は含水カオリン粒子よりも塗料安定性にも優れている。
【0051】
焼成カオリン粒子としては、さらにその表面を処理したものを用いても良い。この表面処理された焼成カオリン粒子を用いることで、耐マーリング性向上効果をさらに増すことができる。表面処理としては、シランカップリング剤による表面処理がある。該シランカップリング剤としては、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等を有する公知のシランカップリング剤が挙げられる。例えば、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシランなどである。
【0052】
賦型シート71及び81の表面賦型層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物は、その他の成分として反応性シリコーンを含有することが好ましい。表面賦型層に反応性シリコーンを含有させることで、離型性が向上し、反復継続的使用に対する耐性が向上するからである。
ここで反応性シリコーンとは、側鎖、末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルのうち、導入する有機基の性質によって反応性を有するものをいう。反応性シリコーンは、具体的には、変性シリコーンオイル側鎖型、変性シリコーンオイル両末端型、変性シリコーンオイル片末端型、変性シリコーンオイル側鎖両末端型等において、導入する有機基がアミノ変性、エポキシ変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、フェノール変性、メタクリル変性、異種官能基変性等であるものが挙げられる。
上記反応性シリコーンは、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化する。したがって、本発明の化粧板を熱圧成型によって成型する際に、化粧板の表面にブリードアウトしない(滲み出ない)ので、本発明の賦型シートと化粧板との密着性を著しく向上させて、微細な凹凸形状を有する繊細な意匠を化粧材に賦型することが可能となる。
上記反応性シリコーンの使用量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部あたり約0.1〜50質量部の範囲、好ましくは約0.5〜10質量部の範囲である。反応性シリコーンの使用量が0.1質量部以上の場合、化粧板と賦型シートの表面との剥離が十分となり、賦型シートの表面の凹凸形状が維持され、より長期間の使用に耐えうる。一方、反応性シリコーンの使用量が50質量部以下であれば、電離放射線硬化性樹脂組成物を基材に塗工する際にはじきが発生しないので塗膜面の面が荒れず、塗料安定性が向上する。
【0053】
また、賦型シート71及び81の表面賦型層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物は、その他の成分として、さらに微粒子を含有することが好ましい。この微粒子は、平均粒径が、前記インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さのプラス側近傍値であるものが用いられる。微粒子が配合された本発明で用いられる賦型シート71及び81について、図8及び11を用いて詳細に説明する。図8及び11に示す賦型シートは、表面賦型層に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は微粒子を含有したものである。
表面賦型層に配合された微粒子78(78−a,78−b)、88は、その平均粒径dAが、インキ層73、83の直上部に位置する表面賦型層75、85の最大厚さtMのプラス側近傍値、すなわちdAがtMよりも若干大きく、インキ層73、83の直上部に位置する表面賦型層75、85の表面から、該微粒子78−a、88の頭出しが起こる。この頭出しが起こった部分は凸形状を形成するために、微細な凹凸感を形成することができる。これと同時に、表面賦型層75の内部では、インキ層73、83におけるインキと、表面賦型層75及び85を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用によって、インキ層73、83の直上部及びその近傍部に凸形状を発現させる相互作用領域74、84が形成される。
一方、インキ層73の直上部ではない部分に位置する微粒子78−bは、頭出しをすることがなく、凸形状の発現には寄与しないが、このように表面賦型層内における微粒子の位置による凸形状の発現に対する効果は様々である。
従って、この表面賦型層75、85中の相互作用領域74、84と、該表面賦型層75、85の表面における微粒子の頭出しによる効果と、前記したインキ層73、83の形成に伴い形成される凸形状の効果により、凹凸形状は微細であり、かつさらに強調されたものになる。
なお、インキ層73、83の直上部に位置する表面賦型層75、85の最大厚さtMとは、上記インキ層73、83の形成に伴う凸形状が形成されない場合には、表面賦型層75、85の厚さであり、該凸形状が形成される場合には、その部分を含んだ厚さである。
【0054】
前記微粒子は、粒度分布が単分散に近いほど、その使用量の設定が容易であると共に、少ない使用量で前記効果が良好に発揮されるので好ましい。
本発明で用いられる賦型シート71及び81においては、当該微粒子の粒度分布の変動係数CV値[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]は、30%以下であることが好ましい。前記CV値が30%以下であれば、当該微粒子は、実用的な粒度分布を有し、かつ適度の使用量で前記効果を十分に発揮することができる。このCV値は、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。
【0055】
さらに、当該微粒子の平均粒径をdA、インキ層の直上部に位置する表面賦型層の最大厚さをtM、インキ層が存在しない領域の表面賦型層の厚さをtGとした場合、式(I)
1.05×tM≦dA≦tG ・・・(I)
の関係を満たすことが好ましい。当該微粒子の平均粒径dAが、1.05×tM以上であれば、インキ層に当該微粒子の沈み込みが生じたとしても、該インキ層の直上部に位置する表面賦型層の表面に当該微粒子の頭出しが生じ、前記効果が十分に発揮される。また、該dAがtG以下であれば、インキ層が存在しない領域における表面賦型層において、当該微粒子の頭出しが抑制される。
当該微粒子の形状については特に制限はなく、球状、楕円体状、多面体状などの微粒子を用いることができるが、球状微粒子が好ましい。なお、本発明においては、球状以外の形状の微粒子の粒径は、外接球の直径で示される値とする。
【0056】
表面賦型層中の当該微粒子の含有量は、当該微粒子の平均粒径や粒度分布の変動係数CV値などにもよるが、通常2〜20質量%の範囲で選定される。この含有量が2質量%以上であれば、当該微粒子を含有させた効果が発揮され、また20質量%以下であれば、賦型シート表面に形成された凹凸形状の凹凸感は良好である。当該微粒子の好ましい含有量は4〜16質量%であり、さらに好ましくは4〜13質量%である。
【0057】
当該微粒子は、無機微粒子及び有機微粒子のいずれであってもよい。当該微粒子の例としては、無機粒子として、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスなどの粒子を挙げることができ、有機微粒子として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物などの粒子を挙げることができる。
これらの微粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明の効果の点から、シリカ粒子が好適である。
また該微粒子は、同様の効果を有する上記焼成カオリン粒子とあわせて用いてもよい。
【0058】
また、電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。賦型シートの長期使用を図るために添加するものである。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0059】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0060】
賦型シート71及び81の表面賦型層は、例えば以下のように形成することができる。まず、前記の電離放射線硬化樹脂、必要に応じて配合されるその他の成分及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
【0061】
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させると、硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面賦型層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0062】
本発明で用いられる賦型シート91は、基材上に少なくとも、全面に設けられた離型剤を含有する透明又は半透明の艶消し下塗層と、該下塗層上に部分的に設けられた表面賦型層を有する賦型シートであって、該表面賦型層が離型剤を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである。
賦型シート91の構造について、図12を用いて説明する。図12は本発明の賦型シート91の断面を示す模式図である。図12に示す例では、基材92上に全面を被覆する一様均一な浸透防止層95、艶消し下塗層93、及び電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層94がこの順に積層されたものである。
表面賦型層94は部分的に設けられ、全体として凹凸形状を有する賦型シートを形成する。なお、該凸形状の高さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、通常1〜5μmの範囲である。
【0063】
賦型シート91は、全面に設けられた離型剤を含有する透明又は半透明の艶消し下塗層93を有することを特徴とする。
艶消し下塗層93は、艶消剤を含有する無色あるいは着色透明インキにより構成される。具体的には、ベヒクル成分として、アクリル系、ポリエステル系、アクリルウレタン系、ウレタン系の樹脂で水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基を有する樹脂に、硬化剤としてポリイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂が望ましい。
艶消剤としてはシリカが好ましく、その粒径は、1〜10μmの範囲が好ましく、さらには2〜5μmの範囲が好ましい。艶消し下塗り層の艶は、表面賦型層の積層された部分より、艶が低くなるように、艶消剤の粒径、添加量を設定し、意匠性を高める。
【0064】
艶消し下塗り層93は離型剤を含有することが好ましい。艶消し下塗り層93は、直上部に表面賦型層が無い部分において、直接賦型部分となって基板と接するため、離型性を付与する必要がある。艶消し下塗り層93中に含有する離型剤としては、反応性シリコーンが好ましく、中でもシリコーン(メタ)アクリレートが好適に使用される。塗工層5に離型剤を含有させることで、離型性が向上し、反復継続的使用に対する耐性が向上するからである。
ここで反応性シリコーンとは、側鎖、末端に有機基を導入した変性シリコーンオイルのうち、導入する有機基の性質によって反応性を有するものをいう。反応性シリコーンは、具体的には、変性シリコーンオイル側鎖型、変性シリコーンオイル両末端型、変性シリコーンオイル片末端型、変性シリコーンオイル側鎖両末端型等において、導入する有機基がアミノ変性、エポキシ変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、フェノール変性、メタクリル変性、異種官能基変性等であるものが挙げられる。
上記反応性シリコーンは、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化する。したがって、本発明の化粧板を熱圧成型によって成型する際に、化粧板の表面にブリードアウトしない(滲み出ない)ので、本発明の賦型シートと化粧板との密着性を著しく向上させて、微細な凹凸形状を有する繊細な意匠を化粧材に賦型することが可能となる。
添加量としては、使用するシリコーンの種類等に応じて適宜選定されるが、通常、インキ固形分100質量部あたり、0.1〜10質量部の範囲が好ましい。この範囲であると表面賦型層4のグラビア印刷時にシリコーンが表面賦型層4に転移することがなく、また、架橋後の密着を阻害しない。
また、上記のように反応性シリコーンの中でも、シリコーン(メタ)アクリレートが好適に使用される。シリコーン(メタ)アクリレートとは、シリコーンの側鎖、末端にエチレン性不飽和2重結合を有する(メタ)アクリレートを導入し、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化させて得られるものである。なお、該シリコーン(メタ)アクリレートの使用量は、上記反応性シリコーンと同様である。
【0065】
艶消し下塗り層93に電離放射線硬化樹脂である重合モノマーや重合性オリゴマーを添加することが好ましい。電離放射線硬化性樹脂としては、賦型シート71の表面賦型層74で用いられる電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。艶消し下塗り層3の耐熱性を向上させることができ、また、表面賦型層94との密着性を向上できる。
このほか、艶消し下塗り層93には、体質顔料やレベリング剤、消泡剤等の各種添加剤を適宜使用することが出来る。
【0066】
賦型シート91の表面賦型層94に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂は、賦型シート71に使用されるものと同様であり、さらに離型剤が含まれることを要する。該離型剤としては、艶消し下塗り層93においても好ましく用いられるシリコーン(メタ)アクリレートが好ましい。表面賦型層94にシリコーン(メタ)アクリレートを含有させることで、離型性が向上し、反復継続的使用に対する耐性が向上する。
上記シリコーン(メタ)アクリレートの使用量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜5質量部の範囲である。シリコーン(メタ)アクリレートの使用量が0.1質量部以上であると、化粧板と賦型シートの表面との剥離が十分となり、賦型シートの表面の凹凸形状が維持され、より長期間の使用に耐えうる。一方、シリコーン(メタ)アクリレートの使用量が10質量部以下であると、電離放射線硬化性樹脂組成物を基材に塗工する際に、はじきが発生せず、塗膜面が荒れず、塗料安定性が向上する。
【0067】
また、表面賦型層94に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物には、さらに艶消剤を配合することが好ましい。艶消剤は、賦型したときの意匠性を考慮し、粒径や、添加量を適宜調整する。
当該艶消剤は、無機微粒子及び有機微粒子のいずれであってもよい。当該微粒子の例としては、無機粒子として、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスなどの粒子を挙げることができ、有機微粒子として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物などの粒子を挙げることができる。これらのうち、本発明の効果の点から、シリカ粒子が好適である。
また、これらの微粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
賦型シート91に用いられる基材92は、上記の賦型シート71で用いられるものと同様である。浸透防止層95は、上記の賦型シート71の浸透防止層76と同様である。また、表面賦型層94に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物の組成は賦型シート71の表面賦型層74で用いられるものと比べて、上記のように離型剤、必要に応じて艶消剤を含有する点で異なるが、それ以外の点、例えば用いられる電離放射線硬化性樹脂、各種添加剤、表面賦型層の形成等は、賦型シート71と同様である。
【0069】
本発明で用いられる賦型シート101は、基材上に、(イ)それ自体撥液性を有するバインダーを含有する撥液性インキ、(ロ)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性を有する物質を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性を有するバインダーにさらに撥液性を有する添加剤を添加した撥液性インキからなる群から選ばれたインキによって模様層を形成し、前記模様層上に、離型剤を含有する電離放射線硬化型樹脂組成物を塗工して塗工層を形成し、このようにして形成された前記撥液性模様層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記模様層の上部に形成された塗工層に凹部を形成し、さらにこのようにして形成された塗工層に対して電離放射線を照射して、前記模様層に同調した凹凸が形成された塗工層を硬化させたものである。
本発明で用いられる賦型シート101の構造について、図13を用いて説明する。図13は賦型シート101の断面を示す模式図である。図13に示す例では、基材102上に全面を被覆する浸透防止層104、撥液性を有する模様層103、電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した塗工層105が存在するものである。撥液性を有する模様層103は部分的に存在し、模様層103上に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工し、このようにして形成された撥液性を有する模様層103と電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工層105との間の撥液作用によって、該模様層103の上部に形成された塗工層105に凹形状106を形成し、さらにこのようにして形成された塗工層に対して電離放射線を照射して、模様層103に同調した凹凸形状が形成された塗工層を架橋硬化させることによって、賦型シート101を得ることができる。
【0070】
本発明で用いられる賦型シート101の模様層103は、図13に示すように必要に応じて設けられた浸透防止層104等の上に積層されるもので、塗工層105の表面に凹形状を生じさせる撥液性を有する層であり、各種の模様を構成したグラビア版を作成し、グラビア印刷で印刷を行なうことで形成される。また、良好な撥液性を得るために、撥液性インキの塗付量は、版深の深さ(塗布厚み)を30〜60μmに設定することが好ましい。
本発明における賦型シートの凹凸形状は、撥液性を有する模様層103と電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工層105との間の撥液作用によって、該模様層103の上部の塗工層105に凹形状106を形成させることにより得られる。
【0071】
模様層103を形成する撥液性を有するインキは上述の通り、イ)それ自体撥液性を有するバインダーを含有する撥液性インキ、(ロ)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性を有する物質を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性を有するバインダーにさらに撥液性を有する添加剤を添加した撥液性インキからなる群から選ばれたインキである。
【0072】
[撥液性インキ イ)]
イ)の撥液性インキのバインダーに用いる樹脂としては、[結合剤の臨界表面張力<電離放射線硬化性樹脂組成物(液体状態)の表面張力]を満足する樹脂であれば特に制限されることはないが、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂、ポリシロキサン、シリコーン(メタ)アクリレート等のシリコーン樹脂、フッ素及びシリコ−ン樹脂とアクリル樹脂の共重合体樹脂等が挙げられる。
【0073】
イ)の撥液性インキは、インキの転移性を良好にするため体質顔料を含有することが好ましい。体質顔料を含有することによって、インキにチキソ性を付与することができ、版を用いて模様層103を印刷する際に、模様層103の形状が維持される。このことにより、凸部から凹部に移行する端部における凹凸形状の鮮映性(シャープネス)を強調することができ、メリハリのある意匠表現が可能となる。
上記体質顔料としては特に限定されず、例えばシリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等から適宜選択される。
また、繊細な意匠性を得るために、該撥液性インキには、艶消剤を添加することができる。艶消剤としては、材料設計の自由度が高く、塗工安定性に優れる点で、シリカが好ましい。粒径としては、2〜5μmの範囲が好ましく、添加量としては、1〜5質量%の範囲が好ましい。
本発明の賦型シートは着色されていても、されていなくても良いが、凹凸形状の状況確認のため、着色してあることが好ましい。賦型シートの着色を目的としてイ)の撥液性インキに添加される顔料としては、例えばキナクリドンレッド、磯インドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック等の公知の着色用顔料が用いられる。
【0074】
[撥液性インキ ロ)]
ロ)の撥液性を有する物質としては、上記イ)のバインダーに用いる樹脂であるシリコーン樹脂、フッ化樹脂の他、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ワックス類等が挙げられる。また、それ自体撥液性のないバインダーとしては、メラミンアルキド樹脂、ユリアアルキド樹脂等として一般に市販されるアミノアルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等が好適に用いられる。
なお、ロ)の撥液性インキには、上記イ)の撥液性インキと同様に、体質顔料及び艶消剤を添加することができる。具体的には、上記イ)の撥液性インキにおいて挙げられるものが用いられる。
【0075】
[撥液性インキ ハ)]
ハ)の撥液性を有するバインダーとしては、上記イ)に挙げられる樹脂が好適に用いられるが、電離放射線硬化性樹脂も好ましく用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、賦型シート71の表面賦型層74で用いられる電離放射線硬化性樹脂と同様である。また、体質顔料及び艶消剤も上記イ)の撥液性インキにおいて挙げられるものが用いられる。
なお、撥液性を有する添加剤は、ハ)の撥液性インキの十分な撥液性と、賦型シートの十分な離型性を得るために添加されるものであり、例えば、シリコ−ン系、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0076】
本発明に用いられる賦型シート101の塗工層105に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、賦型シート71に使用されるものと同様であるが、さらに離型剤が含まれることを要し、艶消剤が含まれることが好ましい。
離型剤としては、反応性シリコーンが好ましく、中でもシリコーン(メタ)アクリレートが好適に使用される。塗工層5に離型剤を含有させることで、離型性が向上し、反復継続的使用に対する耐性が向上するからである。当該離型剤は、賦型シート91の艶消し下塗り層93で用いられる離型剤と同様である。離型剤の使用量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲、好ましくは0.5〜10質量部の範囲である。反応性シリコーンの使用量が0.1質量部以上の場合、化粧板と賦型シートの表面との剥離が十分となり、賦型シートの表面の凹凸形状が維持され、より長期間の使用に耐えうる。一方、反応性シリコーンの使用量が50質量部以下であれば、電離放射線硬化性樹脂組成物を基材に塗工する際にはじきが発生しないので塗膜面の面が荒れず、塗料安定性が向上する。
また、艶消剤は、賦型シート91の表面賦型層94に用いられるものと同様である。
【0077】
基材102は、賦型シート71で用いられるものと同様である。浸透防止層104は、賦型シート71の浸透防止層76と同様である。また、塗工層105に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物の組成は、賦型シート71の表面賦型層74で用いられるものと比べて、離型剤及び艶消剤を含有する点で異なるが、それ以外の点、例えば用いられる電離放射線硬化性樹脂、各種添加剤、表面賦型層の形成の方法等は、賦型シート71と同様である。
【0078】
本発明で用いられる賦型シート111は、基材上に、全面にわたって(イ)それ自体撥液性を有するバインダーを含有する撥液性インキ、(ロ)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性を有する物質を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性を有するバインダーにさらに撥液性を有する添加剤を添加した撥液性インキからなる群から選ばれたインキによってインキ層を形成し、前記インキ層上に、離型剤を含有する硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成し、このようにして形成された前記インキ層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記塗工層は前記インキ層の上部に凸部を形成し、さらにこのようにして形成された凸部を形成する塗工層を硬化させたものである。
本発明の賦型シート111の構造について、図14を用いて説明する。図14は本発明の賦型シート111の断面を示す模式図である。図14に示す例では、基材112上に全面を被覆する浸透防止層114、撥液性を有するインキ層113、硬化性樹脂組成物が架橋硬化した塗工層115が存在するものである。撥液性を有するインキ層113は全面にわたって存在し、インキ層113上に硬化性樹脂組成物を塗工し、このようにして形成された撥液性を有するインキ層113と硬化性樹脂組成物からなる塗工層115との間の撥液作用によって、該塗工層115は該インキ層113の上部に形成された硬化性樹脂組成物からなる凸形状117を形成し、さらにこのようにして形成された凸形状を形成する塗工層を架橋硬化させることによって、結果として凹凸形状を有する賦型シート111を得ることができる。
【0079】
基材112、浸透防止層114、塗工層115は、各々賦型シート101で用いられる機材102、浸透防止層104、塗工層105と同様である。また、インキ層113は、基材上に全面にわたって設けられる一方、模様層103は部分的に設けられる点で異なるが、その他の点、例えば用いるインキ、塗布厚み等は模様層103と同様である。
【0080】
本発明で用いられる賦型シート121は、基材、及び電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層を有し、前記基材と前記表面賦型層の間に、基材側から、少なくともインキ層と、相互作用防止層とをこの順序で積層した化粧材であって、前記インキ層は相互作用領域を発現させる部分又は基材の全面にわたって形成され、前記相作用防止層が相互作用領域を発現させる部分を切抜いた形状を有して形成されたものである。
本発明で用いられる賦型シート121の構造について、図15及び図16を用いて説明する。賦型シート121は、大略すると、基材122、インキ層125、相互作用防止層126、表面賦型層127、及び浸透防止層129などにより構成されている。
【0081】
表面賦型層127は、電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、化粧材121の最表面に被覆されている。インキ層125は、表面賦型層127を形成する未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物に対して浸透性を有する材料からなり、所望の凹凸形状となるように形成されている。一方、相互作用防止層126は前記表面賦型層127を形成する未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物に対して浸透性を有しない材料からなり、機材122又は必要に応じて設けられる浸透防止層129上に、表面賦型層127と接して積層されている。また、この相互作用領域防止層126の形状は、相互作用領域を発現させる部分を切抜いた、切抜き部分126aを有する形状を有している。そのため、切抜き部分126a内にインキ層125が存在する状態であり、表面賦型層127を形成する未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物が、切抜き部分126a内でインキ層125と接触した状態で積層されている。
また、相互作用防止層126はインキ層125より厚く積層されている。従って、切抜き部分126aを含む相互作用防止層126の上に積層された表面賦型層127の原料である未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物は、切抜き部分126a内でインキ層125と接触した状態で積層されている。
【0082】
インキ層125は、基材122に直接積層されるか、または、必要に応じて設けられた浸透防止層129の上に積層されるもので、図15のように部分的に設けられていても、又は図16のように全面にわたって設けられていてもよい。
インキ層125は、表面賦型層の表面の凸形状を生じさせる層である。このインキ層125の積層範囲については、凹凸形状を形成したい領域のみを選択して形成する必要はなく、基材122の全面に積層(いわゆるベタ印刷)してもよい。従って、凸形状を形成したい部分が100μm幅程度の繊細な模様であっても、容易に製造することが可能である。
インキ層125を形成するインキ組成物は、表面賦型層127を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物との間で溶出、分散、混合等の相互作用を発現し得る性質を有するものであり、該電離放射線硬化性樹脂組成物(未硬化物)との関連で適宜選定されるものである。
賦型シート121の表面賦型層127上における凹凸形状発生の機構は、相互作用防止層126が、相互作用領域を発現させる部分を切抜いた形状を有して、前記インキ層125の上に積層されており、さらに表面賦型層127を形成するために電離放射線硬化性樹脂の未硬化物を塗工した際に、相互作用防止層126の切抜き部分126a内又はその近傍で、インキ層125の樹脂成分が一部表面保護層中に溶出、分散、混合、又は浸透などすることによるものと推測される。この際、インキ層125のインキ組成物と電離放射線硬化性樹脂の未硬化物におけるそれぞれの樹脂成分は、短時間には完全相溶状態にならずに懸濁状態となって、インキ層125の直上部及びその近傍、すなわち、相互作用防止層126の切抜いた部分内に存在し、該懸濁状態となった部分が相互作用領域128をなすものと考えられる。この懸濁状態を有したまま、表面賦型層を架橋硬化させることにより、かかる状態が固定されると、表面賦型層中に相互作用領域128が形成され、その部分が凸形状を発現するものと推測される。
また、該相互作用領域128の形状は、それが主として相互作用防止層126の切抜き部分126a内に形成されることから、この切抜き部分126aの幅を超えて存在することはなく、絵柄に基づいた精密(シャープ)な模様の凸形状が形成される。
一方、相互作用防止層126の上部では、上記のように相互作用領域128は発現しないため、凸形状をなすことがなく、結果として相互作用防止層126の有無によって賦型シート121の表面上には凹凸形状が発現する。
【0083】
インキ層125を形成するインキ組成物は、具体的には、バインダー樹脂として非架橋性樹脂を有することが好ましく、例えば熱可塑性(非架橋型)ウレタン樹脂などが好適である。また、必要に応じて、相互作用領域128の発現の程度を調整するため、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを混合することができる。
【0084】
インキ層125を形成するインキ組成物の塗布量については、1〜30g/m2の範囲であることが好ましい。1g/m2以上であると、上述したインキ組成物の電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用が十分であり、化粧材表面の十分な凹凸形状が得られる。一方30g/m2以下であると、インキ組成物の印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利である。以上の観点から、インキ組成物の塗布量はさらに2〜10g/m2の範囲であることが好ましい。
【0085】
相互作用防止層126は、インキ層125の上に積層されるものであり、さらにその上に積層される表面賦型層127とインキ層125とに挟まれて積層されている。この相互作用防止層126の形状は、上述のように相互作用領域を発現させる部分を切抜いた、切抜き部分126aを有する形状をなしている。例えば、木目模様を表現する場合にあっては、木目の導管部分を切抜いた形状であり、タイル貼模様を表現しようとする場合には、タイル貼の目地溝部分を切抜いた形状である。相互作用防止層126がこのような形状であることによって、切抜き部分126aに侵入している表面賦型層127の原料である電離放射線硬化性樹脂組成物とインキ層125とは、接触し、その他の部分は、相互作用防止層126によって遮断された状態にある。従って、相互作用防止層126は、切抜いた部分で相互作用領域128を形成するとともに、それ以外の部分に相互作用領域が発現するのを防止する層である。
【0086】
相互作用防止層126を形成する相互作用防止インキ組成物は、後述する表面賦型層127を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物との間で溶出、分散、混合等の相互作用を発現しない性質を有するものであり、該電離放射線硬化性樹脂組成物(未硬化物)との関連で適宜選定されるものである。具体的には、バインダー樹脂として遮蔽性のある架橋性樹脂組成を有するインキ組成物であることが好ましく、例えばポリエステルポリオールやアクリルポリオール,ポリビニルブチラールなどが好適である。
【0087】
相互作用防止層126を形成する相互作用防止インキ組成物の塗布量については、1〜30g/m2の範囲であることが好ましい。1g/m2以上であると、インキ層126を形成するインキ組成物と電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用を遮蔽することが可能であり、化粧材表面に十分な凹凸形状を与えることができる。一方30g/m2以下であると、相互作用防止インキ組成物の印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利である。以上の観点から、相互作用防止インキ組成物の塗布量はさらに2〜10g/m2の範囲であることが好ましい。
ただし、図15及び図16に示される化粧材121のように、相互作用防止層126をインキ層125より厚くする場合には、相互作用防止インキ組成物の塗布量については、1〜30g/m2、さらには2〜10g/m2範囲とするとともに、インキ層125を形成するインキ組成物の塗布量は1〜20g/m2、さらには2〜5g/m2の範囲であることが好ましい。また、この場合の塗布膜の厚さについては、相互作用防止インキ組成物が1〜30μm、さらには2〜10μm、インキ層125を形成するインキ組成物が1〜20μm、さらには2〜5μmであることが好ましい。
【0088】
賦型シート121に用いられる基材122は、賦型シート71に用いられる基材72と同様であり、賦型シート121を構成する浸透防止層129は、賦型シート71を構成する浸透防止層76と同様である。
また、賦型シート121に用いられる表面賦型層127を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂は、賦型シート71の表面賦型層75で用いられる電離放射線硬化性樹脂と同様であり、その他の、各種添加剤、表面賦型層の形成の方法等は、賦型シート71の表面賦型層75と同様である。
【0089】
また、上記の賦型シート71、81、91、101、111、及び121に用いる基材として、ポリエステル系フィルムを好ましく使用することができる。ポリエステル系フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と表現する。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどの樹脂をフィルム化したものを挙げることができる。これらのうち、特にポリエチレンテレフタレートは安価であるため好適である。また、これらの樹脂は単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。さらには、これらの樹脂を混合したものであってもよい。
基材の厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲である。
【0090】
また、基材にポリエステル系フィルムを用いる場合、該基材をキシレン中に140℃で24時間浸漬させ、その後乾燥して測定した重量減少が1.0質量%以下であることを要する。こうした基材を用いることにより、賦型シートを繰り返し使用した際でも、基材からの不純物の析出が少なく、賦型シートの表面を汚すことがないために、該汚れが原因となって微細な凹凸模様を形成することができないという不具合が起きない。
以上の点から、基材は上記キシレンへの浸漬による重量減少が0.65質量%以下であることが好ましい。該重量減少の下限値については特に制限はなく、賦型シートの表面の汚染に関しては、該重量減少が低いほど好ましい。しかしながら、過度に該重量減少を抑制することは、以下に詳述するような該重量減少を抑制する手法において、過度の処理を行うことになり、基材の他の物性を低下させることがある。このような観点から、該重量減少は、0.30〜0.65質量%の範囲であることが特に好ましい。
なお、ここでいう不純物は、例えばPETの場合は、エチレンテレフタレート環状三量体などのオリゴマー成分と考えられる。
【0091】
前記キシレンへの浸漬による重量減少量の低減化を図る方法として、洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理などの表面処理が挙げられる。
洗浄処理は、通常、ポリエステルフィルムを、溶媒を張った洗浄槽を通すことで行われる。ここで用いられる溶媒としては、水、アルコールなどが好適に挙げられ、特にエタノールが好ましい。また、洗浄処理中に超音波振動を連続的に付与することが好ましい。超音波振動により、ポリエステルフィルム表面上のオリゴマーを、より完全に洗い流すことができる。洗浄処理後は、再付着したオリゴマーをシャワー状の洗浄液(溶媒)でさらに洗浄し、乾燥することが好ましい。
【0092】
コロナ放電処理とは、大気圧下、一対の電極間に被処理材を挟み込み、両電極間に交流の高電圧を印加してコロナ放電を励起し、被処理材の表面をコロナ放電に曝す処理である。コロナの発生ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素などが挙げられ、またこれらの混合気体を使用することもできる。
コロナ放電処理は基材とその上の層との層間密着性を向上させる効果もある。従って、コロナ放電処理の条件は、基材中の不純物の揮散の抑制とともに、層間密着強度の制御を考慮して決定する必要がある。具体的には放電時間をコントロールすることで、表面張力及び層間密着強度を制御することが好ましい。
【0093】
また、プラズマ処理では、グロー放電によって、0.001〜0.01Torr程度の低圧力下、コロナ放電よりも高い活性種を生じさせることができ、基材2の表面処理が効率的に可能である。ただし、プラズマ処理は、真空系で処理を行うために、連続処理が困難であり、生産性が劣る場合があり、また設備自体も大がかりになる。
コロナ放電処理及びプラズマ処理は、ポリエステル基材の表面のオリゴマーのみを分解・除去し、有害物は残留せず、また温度上昇も極めて低いという利点がある。
【0094】
フレーム処理(火炎処理)においても、前記表面処理と同様にポリエステルフィルム表面上の付着物のみを取り除くことができる。フレーム処理方法としては、クリーンバーナーを用いて表面処理する方法が好ましく使用される。
【0095】
これらの基材はその他、層間密着性の向上などを目的に、所望により、クロム酸化処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理などを施すこともできる。さらに、層間密着性の強化等のために、プライマー層を形成する等の処理を施してもよい。
【実施例】
【0096】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例で得られた樹脂化粧板及び用いた賦型シートについて、以下の方法で評価した。
(1)表面粗さの測定
評価対象サンプルを縦400mmx横400mmのサイズとし、3次元非接触表面形状計測システム((株)菱化システム製 Micromap)を用いて、表面形状、表面粗さ(算術平均表面粗さ)、賦型性の効果及び繰返し使用した際の成型再現性を確認した。
(2)剥離性
引張圧縮試験機(オリエンテック(株)製 RTC−1250A)を用いて、賦型シートの剥離強度を測定した。評価対象サンプルは幅25mmx長50mmとし、剥離スピード300mm/min、剥離方向180°(垂直方向)、ロードセル荷重10N、測定環境温度23℃(室温)にて試験を行った。
(3)連続成型適性
同一の賦型シートにて10回成型を行い、各成型毎の剥離強度を測定し、賦型シートを繰返し使用した際の剥離安定性を測定した。
【0097】
実施例1:賦型シートの製造
既に易接着処理されたポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製「A4100(50μm)」)の易接着処理面上全面にプライマーインキ((株)昭和インク工業所製アクリル系インキ「EBF同調プライマー」)をグラビア印刷して浸透防止層(プライマー層)を形成した。
次に、柄版によりインキ(ザ・インクテック(株)製ウレタン系導管インキ「導管MINI(A)」)を木目模様の導管部分に印刷して、インキ層を形成した。さらにこれらインキ層の上に電子線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製「REB−GE」)に焼成カオリン粒子5質量%、反応性シリコーンメタクリレート2質量%を添加した電子線硬化性樹脂組成物を塗工量4g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量30kGy(3Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面賦型層5とし、賦型シートを得た。当該賦型シートは、インキ層の直上部及びその近傍の上に位置する表面賦型層の表面が1〜3μm隆起した凸形状を有し、また高級感があり繊細な木目表現を有したフィルムであった。
【0098】
実施例2
基材として、米秤量30g/m2の建材用紙間強化紙を用い、その片面にアクリル樹脂と硝化綿をバインダーとし、チタン白、弁柄、黄鉛を着色剤とするインキを用いて、塗工量5g/m2のベタ印刷層をグラビア印刷にて施した。その上に硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含有するインキを用いて、木目模様の絵柄層をグラビア印刷にて形成して、化粧シート層を得た。次いで、基板のMFDに尿素−酢酸ビニル系接着剤をロールコートした後、得られた化粧シート層を貼り合わせた。その後、化粧シート層の上面全面に、不飽和ポリエステルと過酸化物とを混合して得られたポリエステル樹脂組成物を200g/m2の塗布量で塗布し、この上に実施例1で得られた賦型シートを見当合せマークで位置合わせをしながら被覆し当接させて、ゴムロールを用いて、10kgf/930m/mで5回、圧延、脱泡し、その位置がずれないようにして、40℃で2時間加熱してポリエステル樹脂を室温で硬化させた。硬化させた後、賦型シートを剥離することにより、表面が繊細な凹凸形状を有したポリエステル化粧板を得た。
【0099】
実施例2で得られたポリエステル化粧板は、成型再現性に優れ、表面粗さは1回目の4.5μmに対して、10回目の賦型後は4.2μmとほぼ同じであった。また、1回目の賦型時の剥離強度は100gr/inch以下と良好であり、10回目の賦型時の剥離強度は100gr/inch以下と、1回目の剥離強度とほぼ同じであり、良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、繊細な凹凸形状を有し、高級感のある樹脂化粧板を得ることができる。
【符号の説明】
【0101】
1.樹脂化粧板
2.基板
3.接着剤層
4.化粧シート層
41.シート層
42.ベタ印刷層
43.絵柄層
5.樹脂層
6.賦型シート
71.賦型シート
72.基材
73.インキ層
73−a.インキ組成物
73−b.インキ組成物
73−c.インキ組成物
74.相互作用領域
74−a.相互作用領域
74−b.相互作用領域
74−c.相互作用領域
75.表面賦型層
76.浸透防止層
77.凸形状
77−a.凸形状
77−b.凸形状
77−c.凸形状
78.微粒子または焼成カオリン粒子
78−a.微粒子または焼成カオリン粒子
78−b.微粒子または焼成カオリン粒子
81.賦型シート
82.基材
83.インキ層
83−a.インキ組成物
83−b.インキ組成物
83−c.インキ組成物
84.相互作用領域
84−a.相互作用領域
84−b.相互作用領域
84−c.相互作用領域
85.表面賦型層
86.浸透防止層
87.隆起形状
87−a.隆起形状
87−b.隆起形状
87−c.隆起形状
88.微粒子または焼成カオリン粒子
812.微細隆起形状
813.微細凹凸面
814.凹形状
814−a.凹形状
814−b.凹形状
814−c.凹形状
91.賦型シート
92.基材
93.艶消し下塗層
94.表面賦型層
95.浸透防止層
96.凸形状
101.賦型シート
102.基材
103.模様層
104.浸透防止層
105.塗工層
106.凹形状
107.凸形状
111.賦型シート
112.基材
113.インキ層
114.浸透防止層
115.塗工層
116.凹形状
117.凸形状
121.賦型シート
122.基材
125.インキ層
126.艶消防止層
127.表面賦型層
128.相互作用領域
129.浸透防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成した樹脂化粧板の製造方法であって、前記賦型シートが、基材上に、全面にわたって(イ)それ自体撥液性を有するバインダーを含有する撥液性インキ、(ロ)それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性を有する物質を添加した撥液性インキ、および(ハ)それ自体撥液性を有するバインダーにさらに撥液性を有する添加剤を添加した撥液性インキからなる群から選ばれたインキによってインキ層を形成し、前記インキ層上に、離型剤を含有する硬化性樹脂組成物を塗工して塗工層を形成し、前記インキ層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記塗工層は前記インキ層の上部に凸部を形成し、さらにこのようにして形成された凸部を形成する塗工層を硬化させたものである樹脂化粧板の製造方法。
【請求項2】
基板の上面に、接着剤層、化粧シート層を順に積層し、該化粧シート層上に樹脂組成物を塗布し、次いで賦型シートを当接して一体的に硬化させた後に、該賦型シートを剥離して樹脂層を形成した樹脂化粧板の製造方法であって、前記賦型シートが、基材、及び電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面賦型層を有し、前記基材と前記表面賦型層の間に、基材側から、少なくともインキ層と、相互作用防止層とをこの順序で積層され、前記インキ層は相互作用領域を発現させる部分又は基材の全面にわたって形成され、前記相互作用防止層が相互作用領域を発現させる部分を切抜いた形状を有して形成されたものである樹脂化粧板の製造方法。
【請求項3】
前記賦型シートが、基材がポリエステル系フィルムからなり、基材がキシレン中に140℃で24時間浸漬後の重量減少が1.0質量%以下である請求項1又は2に記載の樹脂化粧板の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物中の樹脂が不飽和ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−56553(P2013−56553A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248400(P2012−248400)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2011−131254(P2011−131254)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】