説明

機械式駐車装置の扉装置

【課題】機械式駐車装置の車両の入出庫口に備える扉において、扉の下部を誘導するガイドレールに凸形状のガイドレールを採用した場合に、車両の通過時の騒音や振動を無くすことを課題とする。
【解決手段】機械式駐車装置の入出庫口に設けられ中央から左右に開閉する扉装置において、下部に凹状の溝を形成した扉と、該扉の溝に係合するようにフロアから上方に突出した突出部を有したガイドレールとを備え、このガイドレールを車両のタイヤが入出庫時に通過する位置を避けて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の車両出入口に設けられる扉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置は、地上に建設した建屋内部や地下に形成した空間に機械装置を配設し、多数の車両を立体的に格納する設備であり、エレベータ式、垂直循環式、水平循環式、平面往復式等種々の方式が用いられている。これらいずれの方式の機械式駐車装置においても、車両が機械装置に乗り込むための入出庫部を備えており、この入出庫部には扉が設けられ車両の出入庫時以外は機械装置が配設された内部と外部とが遮断されるようにしている。
【0003】
この扉の方式は大別して、扉が上下方向に開閉する方式と、引き戸式に扉が左右に開閉する方式とがあり、電動機等により駆動されて開閉動作を行う。このうち、左右方向に開閉する扉においては、扉本体の下部をガイドするために凸形状や凹形状のガイドレールをフロア上に敷設し、扉本体の一部がこれらのガイドレールに係合して誘導されるようにしている。例えば、特許文献1には凹形状のガイドレールを用いた扉の構成が記載されており、特許文献2には凸形状のガイドレールを用いた扉の構成が記載されている。
【特許文献1】特開昭63−138076号公報(第7図)
【特許文献2】特開平7−259422号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような下部のガイドレールを用いる扉には以下のような問題点がある。まず、凹形状のガイドレールの場合には、溝にゴミなどの異物が入り易く常に溝を点検し異物の除去を行わなければならない。また、石等の固形物が車両に踏みつけられて強固に溝に挟まってしまった場合などは、これを除去するために労力を要する。
【0005】
一方、凸状のガイドレールの場合には、溝がないので上記のような問題点はないものの、ガイドレールの高さがフロアの高さより20mm程度は突出するので、車両が通過する際に騒音が発生するとともに車両にも振動が発生し、車両の運転者に不快感あるいは不安感を与えるという問題がある。また、長期の使用により車両から受けた荷重によりガイドレールが変形するという問題もある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、機械式駐車装置の入出庫部に備える扉装置の下部に敷設されるガイドレールとして凸形状のガイドレールを採用した場合において、車両の通過時に騒音や振動を発することがなく、また、ガイドレールの変形が発生することのない機械式駐車装置の扉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明の構成は、機械式駐車装置の入出庫口に設けられ中央から左右に開閉する扉装置であって、該扉装置には、移動方向に沿って下部に溝を形成した扉と、フロアに敷設して該扉の溝に係合する突出部を有するガイドレールとを備え、該ガイドレールは、車両の左右のタイヤが通過する範囲の両外側と、車両の左右のタイヤが通過する範囲の内側とに分割して配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、入出庫の際に車両のタイヤが通過する範囲には扉の下部ガイドレールが配置されていないので、車両の通過時にタイヤとガイドレールによる騒音が発生することがなく車両に振動を与えることもない。また、車両の荷重によるガイドレールの変形も起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の詳細を図を参照して説明する。機械式駐車装置の一例として、エレベータ式駐車装置の入出庫階における平面図を図3に、正面図を図4に示す。この機械式駐車装置10は、駐車塔11の中央部に昇降リフト12を配置し、この昇降リフト12上には車両を搭載するパレット13が載置される。昇降リフト12は四隅に接続されたワイヤロープにより吊り下げられており、このワイヤロープを駆動することにより駐車塔11内の昇降路を上下に移動する。昇降路の両側には多数段の駐車棚が配設されており、入出庫階で昇降リフト12上のパレット13に車両が乗り込んだ後、昇降リフト12が上昇して所定の棚まで移動し、各棚にパレット13と共に車両を移動させて格納するようになっている。また、出庫の際にはこれと逆の動作が行われ、所定の棚からパレット13及び車両が入出庫階に移送される。
【0010】
駐車塔11には、車両が機械式駐車装置10に進入するための開口部15が設けられており、この開口部15には両開き式の扉14,14が備えられている。ここで、図3及び図4は、扉14,14により開口部15が閉鎖された状態を示している。
【0011】
次いで、図1及び図2に扉14,14が開かれて開口部15が開放された状態を示す。なお、図2においては、構造を分かり易くするために右側の扉14を省略して表している。扉14は上部にローラ30を有しており、このローラ30を介して開口部15の上部に固設した上部ガイドレール31から吊り下げられ、機械的な機構により左右に移動するようにしている。一方、扉14の下部には凸形状の下部ガイドレール16がフロア17に敷設されており、扉14の下部を案内するようにしている。
【0012】
図5は、扉14と下部ガイドレール16の関係を示す一部断面視側面図である。下部ガイドレール16は、上部の突出部18を除く部分がフロア面17aより下方に埋設されて固定されている。一方、扉14の下部には、移動方向に沿って溝19が形成されており、この溝19にはコ字形状のガイドシュー20を嵌合し、このガイドシュー20の溝部と下部ガイドレール16の突出部18が若干の隙間を有して係合している。ここで、ガイドシュー20の材質は、摩擦係数の低い合成樹脂やナイロン等とするのがよい。このようにすることにより、扉14は下部ガイドレール16に案内されて、図における左右方向に振れることなく滑らかに移動することができる。
【0013】
上記下部ガイドレール16は、図1及び図2に示すように、車両のタイヤが走行する位置を避けて3箇所に分割して敷設されており、このように構成したときの下部ガイドレール16の詳細な配置及び形状を図6及び図7に示す。
【0014】
まず、車両が乗り込むパレット13の形状は正面から見た状態で、車両の幅方向の外側でタイヤの進入を規制するように上方に折り曲げられた外側立ち上げ部21と、車両のタイヤが乗り込む乗り込み部22と、小型の車両が乗り込むときにパレット13内側への進入を規制する中央隆起部23とからなっている。そして、車両は入出庫時には前記乗り込み部22の範囲にタイヤが収まるように移動を行う。
【0015】
このようなパレット13の形状との関係では、中央に位置する下部ガイドレール16aはパレット13の中央隆起部23とほぼ同一の範囲で同一の長さであり、その両端部においては上面が傾斜して下降するテーパ形状とするとともに、平面視においても先端部に向けて細くなるように面取りがなされている。次いで、両外側に位置する下部ガイドレール16bは、パレット13の外側立ち上げ部21の位置から外側に向けて配置され、タイヤの走行する側に面する端部は、上記と同様に先端に向けて上面が傾斜して下降するテーパ形状としている。
【0016】
このような構成において、扉14が開の状態から閉の状態に移動するときには、外側の下部ガイドレール16bに誘導されて扉14が移動を開始し、この後、扉14の一部は下部ガイドレール16が配置されていない部分を通過することになるが、上記したように扉14と下部ガイドレール16は凹凸状に係合しているので、外側の下部ガイドレール16bのみでも良好に扉14を誘導することができる。そして、両側から閉じてきた扉14,14は、中央部付近では中央の下部ガイドレール16aにより再び誘導されるので、両扉14,14を面一の状態で閉じ合わせることができ、また、閉まった状態で外力が作用しても揺れ動くことがない。
【0017】
このように本発明の構成によれば、車両のタイヤが通過する範囲には扉14の下部ガイドレール16が配置されていないので、車両の通過時にはタイヤと下部ガイドレール16による騒音が発生することがなく車両に振動を与えることもない。また、下部ガイドレール16のタイヤが通過する方向の端部は、先端に向けて上面が傾斜して下降するテーパ形状としているとしたことで、運転を誤ってタイヤが下部ガイドレール16に接触した場合でもタイヤが損傷することがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】扉が開いた状態を示す機械式駐車装置の正面図
【図2】扉が開いた状態を示す機械式駐車装置の平面図
【図3】扉が閉じた状態を示す機械式駐車装置の平面図
【図4】扉が閉じた状態を示す機械式駐車装置の正面図
【図5】扉と下部ガイドレールの関係を示す一部断面視側面図
【図6】下部ガイドレールとパレットの関係を示す正面図
【図7】下部ガイドレールの平面図
【符号の説明】
【0019】
10 機械式駐車装置
11 駐車塔
12 昇降リフト
13 パレット
14 扉
15 開口部
16、16a、16b 下部ガイドレール
17 フロア
17a フロア面
18 突出部
19 溝
20 ガイドシュー
21 外側立ち上げ部
22 乗り込み部
23 中央隆起部
30 ローラ
31 上部ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式駐車装置の入出庫口に設けられ中央から左右に開閉する扉装置であって、該扉装置には、移動方向に沿って下部に溝を形成した扉と、フロアに敷設して該扉の溝に係合する突出部を有するガイドレールとを備え、該ガイドレールは、車両の左右のタイヤが通過する範囲の両外側と、車両の左右のタイヤが通過する範囲の内側とに分割して配置したことを特徴とする機械式駐車装置の扉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−177429(P2007−177429A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374817(P2005−374817)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000228523)日本ケーブル株式会社 (96)
【Fターム(参考)】