説明

機能性パン粉

【課題】食材に対して付着性の良好な機能性パン粉を提供すること。
【解決手段】生パン粉又は乾燥パン粉の表面に、発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか1種以上が付着していることを特徴とする機能性パン粉;生パン粉又は乾燥パン粉に、発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか1種以上を付着させることを特徴とする機能性パン粉の製造方法;当該機能性パン粉を用いることを特徴とする調理品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性パン粉及びその製造方法、並びに当該機能性パン粉を用いる調理品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パン粉は、フライやコロッケ、カレーパン等の揚げ物類の衣付け材料等として用いられている。例えば、パン粉を用いて調理品を得るには、食材(種)の表面に予め溶き卵や水等の液体を付着させた後に、その食材にパン粉を付着させ、次いで加熱調理するのが一般的である。しかし、パン粉を食材にむらなく付着させるのは難しく、また付着後にパン粉が食材から剥がれ落ちやすいと云う問題があった(後述の比較例1参照)。
このパン粉の食材に対する付着性を改善するため、パン粉と、冷水膨潤性又は冷水溶解性の高いキサンタンガム等の糊料類等を含むパン粉揚げ用衣ミックス(特許文献1参照)が提案されている。
しかしながら、このパン粉揚げ用衣ミックスを用いても、パン粉が食材から剥がれやすく、未だ食材に対して付着性のよい機能性パン粉を提供するには至っていないのが実状であった(後述の比較例2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−150870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、斯かる従来の問題と実状に鑑み、食材に対して付着性の良好な機能性パン粉を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、パン粉の表面に、発酵調味料や果実系調味料が付着している機能性パン粉を用いれば、従来のパン粉を用いる場合に比し、食材に対して多くの量のパン粉を簡単に付着させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、生パン粉又は乾燥パン粉の表面に、発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか1種以上が付着していることを特徴とする機能性パン粉;生パン粉又は乾燥パン粉に、発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか1種以上を付着させることを特徴とする機能性パン粉の製造方法;当該機能性パン粉を用いることを特徴とする調理品の製造方法により、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、食材に対して多くの量のパン粉を簡単に付着させることができる。そして、当該機能性パン粉を付着させた食材を加熱調理すれば、喫食時にパン粉が多く付着し、外観が良好な調理品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の機能性パン粉は、生パン粉又は乾燥パン粉の表面に、発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか1種以上(以下、「付着物」とも云う)が付着しているものである。更に、上記生パン粉又は乾燥パン粉の表面に、色素が付着しているのが、優れた色調の焦げ目を得る上で有利である。
【0009】
ここに、上記生パン粉とは、後述の乾燥パン粉製造の最終工程である乾燥を行う前の状態のものを云い、当該生パン粉の水分含量は、21〜60質量%程度、特に25〜55質量%程度とするのが、保存性、食感の点で、好ましい。
このときの、生パン粉の大きさは、細目、荒目、中目等の何れでもよいが、具体的には、平均粒径が100μm〜20mm、特に200μm〜5mmであることが好ましい。当該「平均粒径」とは、マイクロトラックFSA測定による中央累積値を云う。
【0010】
また、乾燥パン粉は、後述のパン粉用原料に、適宜仕込み水を添加しながら混練して生地を得、当該混練生地にイーストが配合されている場合には、直捏法や中種法にて製パンした後、粉砕し、乾燥処理することにより得られる。また、当該混練生地にイーストが配合されていない場合には、押出膨化又は焼成した後、得られた膨化物又は焼成物を粉砕し、乾燥処理することにより得られる。
上記得られた乾燥パン粉の大きさは、細目、荒目、中目等の何れでもよいが、具体的には、平均粒径が100μm〜20mm、特に200μm〜5mmであることが好ましい。当該「平均粒径」とは、マイクロトラックFSA測定による中央累積値を云う。
また、上記乾燥パン粉の水分含量は、2〜20質量%、特に3〜10質量%とするのが、保存性、食感の点で好ましい。
【0011】
上記パン粉用原料としては、主成分としての小麦粉(以下、「原料小麦粉」と云う);小麦粉以外の穀粉;食塩;動植物性油脂;乳化剤;生澱粉類や化工澱粉;食物繊維;卵・乳製品;蛋白強化剤;増粘剤多糖類;酸味料;栄養強化剤;保存剤;酵素剤;pH調整剤;糖類:色素等を用いることができる。これら成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0012】
上記原料小麦粉としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム小麦粉(セモリナ、ファリナ)等の小麦粉が挙げられ、このうち、イーストを用いてパン粉を製造する場合には、中力粉や強力粉が好ましく、またイーストを用いずに適宜膨張剤等を用いてパン粉を製造する場合には、薄力粉や中力粉が好ましい。これら小麦粉は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
パン粉用原料中の原料小麦粉の量は、80〜99質量%、就中85〜99質量%、特に91〜98質量%とするのが、コストの点で、好ましい。
【0013】
また、上記パン粉が、色素を含有し、かつ通常のパン粉とは異なり糖類が配合されていないか或いは配合されているとしても微量のものが、喫食時の調理品、特にノンフライ調理品の色調が良好となるので、有利である。
斯かる色素含有のパン粉は、例えば、色素を配合すると共に加熱により糖類を配合しないか或いは微量配合した後、適宜仕込み水を添加しながら混練して得られた生地を用いて製造することができる。
【0014】
上記色素としては、例えば、アナトー色素やパプリカ等が挙げられ、このうち、アナトー色素が、喫食時の調理品、特にノンフライ調理品の色調が良好となる点で、好ましい。
上記アナトー色素は、ベニノキ科ベニノキ(Bixa orellana LINNE)の種子の被覆物から抽出にて得られた、ビキシン及びノルビキシンを主成分とするものを云い、また当該アナトー色素は黄〜橙色を呈するものである〔平成8年5月23日 衛化第56号 厚生省生活衛生局長通知「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」/別添1:既存添加物名簿収載品目リスト参照〕。
上記抽出手段としては、例えば、熱時油脂若しくはプロピレングリコールにて抽出する方法;室温時ヘキサン若しくはアセトンにて抽出後、溶媒を除去する方法;熱時アルカリ性水溶液(例えば、カリウムやナトリウム等のアルカリ金属水溶液)で抽出し、加水分解し、中和する方法等が挙げられる〔食品添加物便覧,岸直邦,食品と科学社,2005年,101頁 参照〕。
斯かるアナトー色素は、市販品として入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「粉末サンオレンジ(登録商標)シリーズ」、例えば、粉末サンオレンジ(登録商標)No.1等が挙げられる。
前記アナトー色素の状態としては、特に限定されず、例えば、液体に溶解、懸濁又は乳化させた状態や粉末状等が挙げられ、このうち、液体に溶解、懸濁又は乳化させた状態が、分散性の点で、好ましい。
【0015】
上記色素は、乾燥物換算で、パン粉用原料小麦粉に対し、0.001質量%〜1質量%配合されているのが、喫食時の調理品の色調が良好となるので、好ましい。
前記アナトー色素を用いる場合、この配合量(乾燥物換算)は、原料小麦粉に対し、ノルビキシン換算で、好ましくは0.001質量%〜0.3質量%であり、より好ましくは0.002質量%〜0.1質量%、特に好ましくは0.003〜0.05質量%とするのが、喫食時の調理品、特にノンフライ調理品の色調が良好となるので、有利である。
ここで、アナトー色素の配合量は、アナトー色素をアルカリ水溶液で溶解した後、ノルビキシンを標品として、検量線にて、求めたものである。具体的には、例えば、公知の定量法(「食品中の食品添加物測定法 解説書」,1993年5月20日発行 第2刷,講談社サイエンティフィク,308−311頁)を用いて行うことができる。
【0016】
上記糖類としては、例えば、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、トレハロース、糖アルコール、DE値10以下のデキストリン及びイヌリンが挙げられるが、このうち麦芽糖、トレハロース、糖アルコール、DE値10以下のデキストリン及びイヌリンから選ばれる1種以上のものが、通常のパン粉に一般的に使用されているショ糖やブドウ糖よりも、喫食時の調理品、特にノンフライ調理品の色調が良好となるので、有利である。
上記糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール及びキシロースが挙げられるが、このうち、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール及びマンニトールから選ばれる1種以上のものが、好ましい。
また、上記DE値10以下のデキストリンとしては、DE値1〜10のデキストリンが好ましい。ここで、デキストリンのDE値(デキストロースエキュイバレント)とは、一般に「DE=還元糖%/固形分%×100」の計算式で求められるデキストロース当量を示しており、一般にDE値が小さい程高分子多糖類とされている。
前記糖類の状態としては、特に限定されず、例えば、液体に溶解、懸濁又は乳化させた状態や粉末状等が挙げられ、このうち、粉末が、作業性の点で、好ましい。
また、上記糖類の配合量は、乾燥物換算で、パン粉用原料小麦粉に対し、0〜0.5質量%、就中0〜0.3質量%、特に0質量%とする、すなわち糖類を実質的に配合しないのが、喫食時の調理品、特にノンフライ調理品の色調が良好となるので、有利である。
【0017】
更に、上記色素含有のパン粉は、食塩及び動植物性油脂の配合量を調整するのが、喫食時の調理品の色調が良好となるので、好ましい。
上記食塩の配合量は、乾燥物換算で、原料小麦粉に対し、2.5〜6質量%、就中2.5〜5質量%、特に2.5〜4質量%とするのが、喫食に際し、調理品、特にノンフライ調理品の色調が良好となるので、好ましい。
また、動植物性油脂の配合量は、原料小麦粉に対し、0〜2質量%、特に0〜0.5質量%とするのが、喫食に際し、調理品の色調が良好となるので、好ましい。
【0018】
上記添加する仕込み水の量は、パン粉用原料100質量部に対して、30〜100質量部、特に40〜80質量部とするのが、喫食時の食感が良好となる点で、好ましい。
【0019】
以下に、本発明に用いる付着物について説明する。
【0020】
本発明に用いる発酵調味料とは、微生物の発酵作用を利用して製造された調味料を指す。当該発酵調味料としては、例えば、小麦、大豆及び米の何れか1種以上を原料とした味噌、醤油、みりん、食酢、核酸系調味料等の醸造調味料;乳を原料としたビフィズス菌を含む乳酸菌の発酵代謝物等の乳発酵調味料等が挙げられ、このうち、小麦及び/又は大豆を原料とした醸造調味料が付着性を良好にする点で、好ましい。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記醸造調味料は、市販品としても入手可能である。また、上記発酵調味料は、市販品としても入手可能であり、例えば、「CBW―30」(森永乳業株式会社製)「味しるべMP」(宝酒造株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
上記醸造調味料の製造方法としては、例えば、特許第3412929号公報に記載されているような、乾燥グルテン25〜100質量%及び小麦75〜0質量%とから成る原料に、蒸気を直接添加して含水率を12〜18%の範囲内に調整して得た成型物90〜70質量%と、大豆類10〜30質量%とを配合した混合原料を用いて製麹・醸造して淡色調味液を得る方法等が挙げられる。
また、上記乳発酵調味料の製造方法としては、例えば、乳を原料としてビフィズス菌を培養した際の、ビフィズス菌の代謝産物を濃縮して乳発酵調味料を得る方法が挙げられる。
【0022】
上記発酵調味料(乾燥物換算)の付着量は、生パン粉に対して、0.05〜5.0質量%、就中0.1〜3.0質量%、特に0.3〜2.0質量%とするのが、付着性を良好にすると共に色調、食感の点で、好ましい。
上記発酵調味料(乾燥物換算)の付着量は、乾燥パン粉に対して、乾燥物換算で、0.1〜7.0質量%、就中0.3〜5.0質量%、特に0.5〜3.0質量%とするのが、付着性を良好にすると共に色調、食感の点で、好ましい。
【0023】
また、本発明に用いる果実系調味料とは、微生物の発酵作用を利用せず、果実加工品と塩基性物質とを配合して製造された調味料を指す。
当該果実系調味料としては、例えば、ウメ、ブドウ、リンゴ、柑橘類(例えば、ミカン、オレンジ、レモン、ライム、シークヮーサー等)、イチゴ、プルーン、スモモ、アンズ、イチジク、ザクロ、キウイフルーツ、ブルーベリー、ラズベリー、パイナップル、ビワ、サクランボ、カキ、カリン及びナシ等の果実を原料としたものが挙げられ、このうち、ウメ調味料及びブドウ調味料が好ましい。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記果実系調味料は、市販品としても入手可能であり、例えば、「コクぶどうT」(キティー株式会社社製)及び「粉末梅ソフト」(キティー株式会社社製)等が挙げられる。
【0024】
上記果実系調味料の製造方法としては、果実加工品に適宜水を添加し、これに、塩基性物質を添加してpHを調整する。このときのpHは、弱酸性以上、具体的には5以上とするのが好ましく、更に中性〜アルカリ領域、具体的には7〜10とするのが好ましい。また、pH調整後、必要に応じて、フリーズドライやスプレイドライヤー等の乾燥にて粉末化してもよい。
【0025】
果実加工品としては、上記原料の果実に摩砕、細断、搾汁や乾燥等の物理的処理を施した、果汁、果肉スライス、果実ペースト、果実粉末;上記原料の果実を溶媒にて抽出した、果実抽出物等が挙げられ、このうち果汁や果実抽出物が好ましい。当該果実加工品は、液状、粉末状やペースト状の何れでもよいが、液状の果実加工品が、果実系調味料を製造する際に塩基性物質と混合しやすいので、好ましい。
上記抽出に用いられる溶媒としては、食品抽出に使用される溶媒であればよく、例えば、水、エタノール、超臨界二酸化炭素等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、当該溶媒には、必要に応じて、塩酸等の無機酸類;水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類;酢酸、シュウ酸等の有機酸;酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の有機塩類等から選ばれる1種以上を含ませてもよい。
上記抽出手段としては、例えば、浸漬、浸出、還流抽出、加熱抽出、超臨界抽出、マイクロ波抽出等が挙げられる。このときの抽出温度は、5〜40℃程度の常温や41〜100℃程度での加温であればよく、また抽出期間は、常温の場合には1日間〜6月間程度、加温の場合には10分間〜24時間程度であればよい。
【0026】
上記塩基性物質としては、アルカリ性を呈する塩類であればよく、アルカリ金属塩及びカルシウム塩等から選ばれる1種以上が挙げられる。
具体的には、アルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、DLリンゴ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム等が挙げられる。
また、上記カルシウム塩としては、クエン酸カルシウム、酢酸カルシウム、焼成カルシウム等が挙げられる。当該焼成カルシウムとしては、貝殻、卵殻、獣骨、魚骨、ウニ殻、造礁サンゴ、乳清から得たものが挙げられ、これらは市販品を使用すればよい。
上記アルカリ金属塩及びカルシウム塩は、それぞれ単独で又は組み合わせて使用してもよい。
【0027】
上記果実系調味料(乾燥物換算)の付着量は、生パン粉に対して、0.05〜5.0質量%、就中0.1〜3.0質量%、特に0.3〜2.0質量%とするのが、付着性を良好にすると共に色調、食感の点で、好ましい。
上記果実系調味料(乾燥物換算)の付着量は、乾燥パン粉に対して、0.1〜7.0質量%、就中0.3〜5.0質量%、特に0.5〜3.0質量%とするのが、付着性を良好にすると共に色調、食感の点で、好ましい。
【0028】
尚、上記付着物は、発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか2種以上のものでもよいが、このときの配合質量割合は、乾燥物換算で、果実系調味料 0.5〜2に対して、発酵調味料 1〜2とするのが、食感の点で、有利である。
【0029】
また、生パン粉又は乾燥パン粉の表面に付着している色素としては、例えば、アナトー色素やパプリカ等が挙げられ、このうち、上述のアナトー色素が、色調、食味の点で、好ましい。
上記色素(乾燥物換算)の付着量は、生パン粉に対して、0.05〜3質量%、就中0.1〜2質量%、特に0.3〜1質量%とするのが、食材に対するパン粉の付着性を良好にすると共に喫食時の調理品の色調を良好にする上で、好ましい。
【0030】
上記付着物の状態としては、特に限定されず、例えば、液体に溶解、懸濁又は乳化させた状態の液状や粉末状等が挙げられる。
また、上記付着物(乾燥物換算)の合計の付着量は、生パン粉に対して、0.1〜50質量%、就中0.3〜40質量%、特に0.5〜30質量%とするのが、食感の点で、好ましい。
【0031】
本発明の機能性パン粉は、上記生パン粉又は乾燥パン粉に、上述の発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか1種以上を付着させて製造される。尚、当該パン粉に、更に、上述の色素を付着させてもよい。
上述の付着物を上記パン粉に付着させる手段としては、特に限定されないが、例えば、生パン粉又は乾燥パン粉に、上記付着物の液状又は粉末状を混合する方法;生パン粉又は乾燥パン粉に、上記付着物の液状を噴霧する方法;生パン粉又は乾燥パン粉に、水等の液体を噴霧し、次いで上記付着物の粉末状又は液状を添加混合する方法が挙げられる。尚、必要に応じて、撹拌してもよい。
上記付着物を上記パン粉に付着させた後に、必要に応じて乾燥してもよく、当該乾燥手段としては、熱風、調湿乾燥等が挙げられる。
得られた機能性パン粉は、機能性生パン粉又は機能性乾燥パン粉の何れでもよく、このときの水分含量は3〜50質量%程度である。このうち、機能性乾燥パン粉が好ましく、このときの水分含量は、2〜20質量%、特に5〜15質量%とするのが、食材に対し十分な量のパン粉を付着できるので、好ましい。
【0032】
本発明の機能性パン粉を用いて調理品を製造するには、上記機能性パン粉を付着させた食材を、加熱調理して、そのまま食してもよく、冷蔵・冷凍品等の保存品にして保存し、喫食時に再加熱処理して食してもよい。また、加熱調理前に冷蔵・冷凍処理して冷蔵・冷凍品とし、これを喫食時に加熱調理して食してもよい。
【0033】
上記食材としては、特に限定されず、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、ラム肉等の肉類;イカ、タコ、エビ、シャケ、サバ、カレイ等の魚介類;大豆、米、ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、サツマイモ等の穀類、野菜類、根菜類等又はこれらの加工品等が挙げられる。
【0034】
上記機能性パン粉を食材に付着させることは、通常の手法を用いればよい。例えば、食材に、上記機能性パン粉は付着性が高いため、食材に直接まぶしてもよく、必要に応じて予め下味付けや打ち粉、溶き卵、バッターミックス等を付着させた後、上記機能性パン粉をまぶすようにすればよい。
【0035】
上記加熱調理としては、例えば、油ちょう、オーブン、グリル、フライパン焼き、鉄板焼き、電子レンジ加熱(マイクロ波照射)、過熱蒸気、蒸し焼き(スチームオーブン)等が挙げられる。尚、パン粉を用いた食品の加熱調理として、油ちょうがよく用いられるが、ノンフライ調理としてもよい。ここで、ノンフライ調理とは、油ちょう以外の調理を云う。
【0036】
得られた調理品は、喫食時にパン粉が多く付着した、良好な外観を有するものであり、そのまま食してもよく、冷蔵・冷凍品等の保存品にして保存し、喫食時に再加熱調理して食してもよい。
【実施例】
【0037】
次に本発明を更に具体的に説明するために、実施例を掲げるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
製造例1:アナトー含有かつ糖類未配合の生パン粉
表1に示すように、小麦粉(強力粉:日清製粉社製、商品名:ミリオン)100質量部、液状アナトー色素(三栄源エフ・エフ・アイ社製、商品名サンアナトN)1質量部(ノルビキシン換算で0.02質量部(乾燥物換算))、ショートニング(日清オイリオ社製、商品名:日清ピュアショート20)1質量部、食塩4質量部、イースト2質量部、イーストフード0.1質量部(パン粉用原料107.12質量部)及び水60重量部を、低速で2分間、高速で10分間混捏した(生地温度28℃)。尚、このときパン粉用原料に、糖類を添加しなかった。
得られた生地を、温度28℃及び湿度75%の条件下で70分間発酵させる(一次発酵)。この生地を1個40gに分割した後15分間ベンチタイムをとる。次に生地のガス抜きをした後、丸めて型に入れ、温度38℃および湿度85%の条件下で40分間ホイロをとった後、210℃の焼成窯で11分間焼成し、イースト発酵焼成物を得た。焼成後、一晩室温下で放置した。
得られた焼成物を、6mmの網目を通過する程度に粉砕し、イースト発酵の生パン粉1(大きさ3mm:水分含量40%)を得た。
【0039】
尚、アナトー色素の配合量は、液状アナトー色素1gを0.01N水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ水溶液)で処理して、1mg/アルカリ水溶液100mLの標品とした。そして、この標品から検量線を作成し、試料中のアナトー色素の配合量を計算した(「食品中の食品添加物測定法 解説書」,1993年5月20日発行 第2刷,講談社サイエンティフィク,308−311頁)。
この結果から、今回使用したアナトー色素の配合量(乾燥物換算)は、ノルビキシン換算で、0.02質量部であった。
【0040】
尚、試料(各パン粉)の大きさの測定は、マイクロトラックFSA測定で行った。
【0041】
また、試料(各パン粉)の水分含量は、常圧加熱乾燥法(五訂 日本食品標準成分表分析マニュアル)に従って測定した。
【0042】
製造例2:アナトー含有かつ糖類未配合の乾燥パン粉
製造例1で得られた焼成物を、6mmの網目を通過する程度に粉砕し、90℃、20分間乾燥した以外は、製造例1と同様にして、イースト発酵の乾燥パン粉2(大きさ3mm:水分含量10%)を得た。
【0043】
製造例3:アナトー含有かつ糖類未配合の非イーストの乾燥パン粉
上記製造例2のパン粉用原料を「イースト2質量部、イーストフード0.1質量部」から、「膨張剤3質量部」に代えて、イーストを含まないパン粉用原料を調製した。この膨張剤の組成は、炭酸水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、ミョウバンであった。
パン粉用原料及び水を配合し、均一に混合して小麦粉生地を調製し、当該生地を、オーブンを用い、180℃で10分間焼成し、アナトー色素含有の非イースト発酵焼成物を得た。焼成後、一晩室温下で放置した。
得られた焼成物を、6mmの網目を通過する程度に粉砕し、90℃、20分間乾燥して、非イースト発酵の乾燥パン粉3(大きさ1mm:水分含量10%)を得た。
【0044】
製造例4:アナトーなしの通常の生パン粉
「アナトー色素 液状1質量部」(パン粉用原料100質量部)から「アナトー色素 0質量部、ショ糖6質量部」に代えた以外は、上記製造例1と同様にして、通常の生パン粉4(大きさ3mm:水分含量40%)を得た。
【0045】
実施例1:アナトー含有かつ糖類未配合の生パン粉/発酵調味料
製造例1で得られた色素含有の生パン粉1の100質量部と、粉末状発酵調味料(味しるべMP)の2質量部とを混合し、均一に撹拌して機能性生パン粉1(水分含量40%)を得た。付着物のほぼ全量が、パン粉に付着していた。
【0046】
実施例2:アナトー含有かつ糖類未配合の生パン粉/果実系調味料
「粉末状発酵調味料(味しるべMP)2質量部」から「粉末状果実系調味料(粉末梅ソフト)2質量部」に代えた以外は、上記実施例1と同様にして機能性生パン粉2(水分含量40%)を得た。付着物のほぼ全量が、パン粉に付着していた。
【0047】
実施例3:アナトー含有かつ糖類未配合の乾燥パン粉/果実系調味料
製造例2で得られた色素含有の乾燥パン粉2の100質量部と、粉末状果実系調味料(粉末梅ソフト)2質量部とを混合し、均一に撹拌して機能性パン粉3(水分含量10%)を得た。付着物のほぼ全量が、パン粉に付着していた。
【0048】
実施例4:アナトー含有かつ糖類未配合の生パン粉(非イースト)/果実系調味料
「製造例1で得られたイースト発酵の生パン粉1」を「製造例3で得られた非イースト発酵の生パン粉3」に代えた以外は、上記実施例2と同様にして機能性パン粉4(水分含量40%)を得た。付着物のほぼ全量が、パン粉に付着していた。
【0049】
実施例5:アナトーなし、かつ糖類配合の通常の生パン粉/発酵調味料
「製造例1で得られた糖類未配合の生パン粉1」を「製造例4で得られた糖類配合、かつアナトーを含有しない通常の生パン粉4」に代えた以外は、上記実施例1と同様にして機能性パン粉5(水分含量40%)を得た。付着物のほぼ全量が、パン粉に付着していた。
【0050】
比較例1
上記製造例4で得られた通常の生パン粉4に何ら付着させることなくそのままパン粉とした。
【0051】
比較例2
上記製造例4で得られた通常の生パン粉4に、粉末状キサンタンガム0.5質量部を混合し、均一に撹拌して糊料付着生パン粉(水分含量40%)を得た後、流動層乾燥装置を用いて水分含量が10質量%となるまで乾燥して、糊料付着乾燥パン粉(水分含量10%)を得た。付着物のほぼ全量が、パン粉に付着していた。
【0052】
試験例1
鶏肉(25g)に、実施例1〜5及び比較例1,2で得られた各パン粉を直接まぶし、その付着量を測定した。次いで、これらを170℃の油で3分間油ちょうし、パン粉付着具合及び食感を下記評価基準に従い10名のパネラーで評価した。その評価結果の平均値は表1のとおりであった。
【0053】
◎調理後のパン粉の付着具合の評価基準
1点:通常のパン粉を用いての調理品と比較した場合、パン粉の付着量が非常に少ない。
2点:通常のパン粉を用いての調理品と比較した場合、パン粉の付着量がやや少ない。
3点:通常のパン粉を用いての調理品と比較した場合、パン粉の付着量がほぼ同じである。
4点:通常のパン粉を用いての調理品と比較した場合、パン粉の付着量が多い。
5点:通常のパン粉を用いての調理品と比較した場合、パン粉の付着量が非常に多い。
【0054】
◎喫食時のサクサク感の評価基準
1点:サクサクした食感を感じない。
2点:サクサクした食感を少し感じる。
3点:サクサクした食感を感じる。
4点:ややサクサクした食感を強く感じる。
5点:非常にサクサクした食感が強い。
【0055】
【表1】

【0056】
試験例2:発酵調味料の量
発酵調味料の配合割合を表2記載の量に代えた以外は、上記実施例1と同様にして、各機能性パン粉(水分含量40%)を得た。付着物のほぼ全量が、パン粉に付着していた。得られた各機能性パン粉を用い、試験例1と同様にしてパン粉付着具合及び食感を評価した。その評価結果の平均値は表2のとおりであった。
【0057】
【表2】

【0058】
試験例3:果実系調味料の量
果実系調味料の配合量を表3記載の量に代えた以外は、上記実施例1と同様にして、各機能性パン粉(水分含量40%)を得た。得られた各機能性パン粉を用い、試験例1と同様にしてパン粉付着具合及び食感を評価した。その評価結果の平均値は表3のとおりであった。
【0059】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生パン粉又は乾燥パン粉の表面に、発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか1種以上が付着していることを特徴とする機能性パン粉。
【請求項2】
前記生パン粉又は乾燥パン粉が、アナトー色素を含有し、かつ糖類がパン粉用原料小麦粉に対し、0〜0.5質量%を配合されているものであることを特徴とする請求項1記載の機能性パン粉。
【請求項3】
生パン粉又は乾燥パン粉に、発酵調味料及び果実系調味料のうちから選択される何れか1種以上を付着させることを特徴とする機能性パン粉の製造方法。
【請求項4】
アナトー色素を含有し、かつ糖類がパン粉用原料小麦粉に対し、0〜0.5質量%配合されている生パン粉又は乾燥を用いることを特徴とする請求項3記載の機能性パン粉の製造方法。
【請求項5】
請求項1及び2記載の機能性パン粉を用いるか、又は請求項3及び4記載の機能性パン粉の製造方法にて得られた機能性パン粉を用いることを特徴とする調理品の製造方法。