説明

歩行型農作業機

【課題】培土装置を備えたものでありながら、後部作業機の跳ね上げ機構を不要とすることにより、コストダウンを図ることが可能な歩行型農作業機を提供する。
【解決手段】機体2を支持する車輪7,7の前部にロータリ装置9を備えた作業機1は、該車輪7,7とロータリ装置9との間に培土装置28を備えている。該培土装置28は、ロータリ装置9の上部から後部を覆うロータリカバー25に対して取り付けられている。これにより、培土装置28を備えたものでありながら、該培土装置28を装着するための後部作業機や該後部作業機の跳ね上げ機構を備えることを不要とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体を支持する車輪の前部にロータリ装置を備えた歩行型農作業機に係り、詳しくは、作業機として培土装置が備えられた歩行型農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行型の農作業機には、ロータリ耕耘装置等の作業機が駆動車輪よりも前方に配置された、フロントロータリ型のものがある。また、このような歩行型農作業機には、駆動車輪の前方に配置された前部作業機に加え、該駆動車輪よりも後方に、例えば培土装置等からなる後部作業機が配置されているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記歩行型農作業機では、後部作業機を作業姿勢と跳ね上げ姿勢とに変更し得る跳ね上げ機構が備えられている。これは、圃場端での機体の旋回や圃場外での移動の場合に、後部作業機を跳ね上げ姿勢とし、ハンドルを下げ操作することにより前部作業機を上昇させて移動する際に、後部作業機が走行の妨げとなることを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−333809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、歩行型農作業機は、比較的小さい面積の圃場で使用することに適しており、例えば趣味等で農作業を行うユーザーに適していると考えられる。このため、歩行型農作業機は、このようなユーザーにも利用しやすいように、安価で提供されることが望まれている。
【0006】
しかし、上述のようにフロントロータリ型の歩行型農作業機において、培土装置からなる後部作業機に跳ね上げ機構を備えることは、コストアップの要因となり、歩行型農作業機を安価で提供するための妨げになるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、培土装置を備えたものでありながら、後部作業機の跳ね上げ機構を不要とすることにより、コストダウンを図ることが可能な歩行型農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図3参照)、エンジン(3)を有する機体(2)と、該機体を支持する左右一対の車輪(7,7)と、該車輪の前部に配置されたロータリ装置(9)と、を備える歩行型農作業機(1)において、
前記車輪(7,7)と前記ロータリ装置(9)との間に培土装置(28)を備えてなる、
ことを特徴とする歩行型農作業機(1)にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は(例えば図1乃至図3参照)、前記ロータリ装置(9)の上部から後部を覆うロータリカバー(25)を備え、
前記培土装置(28)は、前記ロータリカバー(25)に取り付けられてなる、
請求項1記載の歩行型農作業機(1)にある。
【0010】
請求項3に係る本発明は(例えば図3参照)、前記培土装置(28)の幅方向の長さ(h)は、前記車輪(7,7)間の距離(H)よりも小さくされてなる、
請求項1または2記載の歩行型農作業機(1)にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、培土装置が車輪とロータリ装置との間に備えられているので、培土装置を備えたものでありながら、該培土装置を装着するための後部作業機や該後部作業機の跳ね上げ機構を備えることを不要とすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、培土装置がロータリ装置を覆うロータリカバーに取り付けられているので、簡単な構成によって培土装置を取り付けることができ、培土装置を備えたものでありながら、製造工程を簡略化することができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によると、培土装置の幅方向の長さは、車輪間の距離よりも小さくされているので、車輪が培土装置の後方に配置されているものであっても、該培土装置によって成形された溝に車輪が落ち込み、うねを崩してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る歩行型農作業機を示す側面図。
【図2】図1の拡大図。
【図3】歩行型農作業機を示す正面部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図3に沿って説明する。
【0016】
歩行型農作業機としての作業機1は、図1及び図2に示すように、左右一対の車輪7,7に支持された機体2と、該車輪7,7の前部に配置されたロータリ装置9等を備えて構成されている。
【0017】
上記機体2は、中央上部に配置されたエンジン3と、該エンジン3の下方で前後方向に延びて配置され、エンジン3の動力を駆動車軸5及び耕耘軸6に伝達し得るトランスミッションを収納するミッションケース4とを備えている。該エンジン3の上部前方には、燃料タンク21が配置され、また右側方にはリコイルスタータ22が配置されている。
【0018】
上記ミッションケース4は、上記エンジン3の下方部分において、車輪7,7を回転駆動可能に支持する駆動車軸5を左右に軸支しており、また該駆動車軸5よりも前方側に延設された部分では、複数の耕耘爪8が装着された回転体を回転駆動可能に支持する耕耘軸6を左右に軸支している。また、該耕耘軸6に対して複数の耕耘爪8を装着することにより、上記ロータリ装置9を構成しており、耕耘軸6を回転駆動することで圃場等での耕耘作業を行うことができるように構成されている。
【0019】
また、ミッションケース4の前部には、ゲージ輪10が前方に向けて配置されている。さらに、ミッションケース4の前部には、扇状に形成され、複数の係合部を有するガイド溝が設けられたプレート11が配置されており、上記ゲージ輪10は、該ゲージ輪10と一体的に移動し得るように構成されたレバー12によって上下方向に調節可能に構成されている。これにより、作業機1は、ゲージ輪10によって耕深調節等を行うことができるように構成されている。
【0020】
また、ミッションケース4の後部には、上記機体2から後部上方へ延びるようにハンドルフレーム15が固着されており、該ハンドルフレーム15の上端部に配置された回動部20を介してハンドル16が、さらに後部上方側へ延びるように配置されている。該ハンドル16は、上端部分を操作者が握持することで作業機1の走行方向を操作し得るように構成されており、さらに上端部付近には、クラッチレバー17が配置され、操作者が上端部分を握持する際に一緒に握持することでクラッチの入り操作となるように構成されている。なお、上記回動部20には、角度調節機構が設けられており、操作者の体格に応じてハンドル16の高さを調整することが可能となっており、また回動部20でハンドル16を回動させ、折り畳むことにより作業機1をコンパクトにして運搬等が容易に行えるように構成されている。
【0021】
また、ミッションケース4には、変速レバー18が、上記ハンドルフレーム15及びハンドル16に沿うように後部上方に延びて配置されている。該変速レバー18には、上記回動部20と略々同一の高さに脱着部18aが設けられており、上記のように運搬等によりハンドル16を折り畳む際には、邪魔にならないように該脱着部18aにおいて先端側部分を取り外すことができるように構成されている。
【0022】
さらに、ミッションケース4には、メインカバー26とリヤカバー27とからなるロータリカバー25が固定され、上記ロータリ装置9の上部から後部を覆うように配置されており、該ロータリ装置9により跳ね上げられた泥土がエンジン3や操作者にかからないように構成されている。また、リヤカバー27には、後述する培土装置28が取り付けられている。
【0023】
次に、本発明の要部である培土装置28について、図3に沿って説明する。
【0024】
培土装置28は、図3に示すように、大まかに中央部分の平面部28aと左右両側方部分の曲面部28bとを有する金属製の部材によって構成されている。該曲面部28bは、長方形からなる板状の部材の下方側の両端部となる角部が後方側となるように曲げ加工することにより形成される。また、培土装置28は、上方側中央部分にミッションケース4の突出部分の形状に合わせた切り欠き部28cが形成されており、該切り欠き部28cの両側方部分において、上記ロータリカバー25のリヤカバー27にボルト29によって取り付けられている。
【0025】
さらに、培土装置28は、図1及び図2に示すように、平面部28aがリヤカバー27を延長するように取り付けられており、下方になるにつれて後方側となる傾斜状に配置されている。これにより、作業機1が耕耘作業を行う場合には、ロータリ装置9によって耕耘された泥土は、該培土装置28によって左右側方又は下方に寄せられ、作業機1の走行に大きな抵抗となることなく、うね立てを行うことができる。
【0026】
またこの際、図3に示すように、培土装置28の幅方向の長さhは、車輪7,7間の距離Hよりも小さくなるように構成されており、該培土装置28によって成形された溝に車輪7,7が落ち込んで、うねを崩してしまうことを防止している。
【0027】
なお、培土装置28は、板状部材を曲げ加工して形成するように説明したが、これに限らず、例えば正面図が図3に示すように下方になるにつれて幅方向の長さが小さくなるように形成された板状部材であっても本発明を適用することができる。また、培土装置28は、金属製の部材によって形成されるように説明したが、例えば硬質ゴム等によって形成されたものであっても本発明を適用することができる。
【0028】
以上のように本発明に係る作業機1は、培土装置28が車輪7,7とロータリ装置9との間に備えられているので、培土装置28を備えたものでありながら、該培土装置28を装着するための後部作業機や該後部作業機の跳ね上げ機構を備えることを不要とすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0029】
また、培土装置28がロータリ装置9を覆うロータリカバー25に取り付けられているので、簡単な構成によって培土装置28を取り付けることができ、培土装置28を備えたものでありながら、製造工程を簡略化することができる。
【0030】
また、培土装置28の幅方向の長さhは、車輪7,7間の距離Hよりも小さくされているので、車輪7,7が培土装置28の後方に配置されているものであっても、該培土装置28によって成形された溝に車輪7,7が落ち込み、うねを崩してしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 歩行型農作業機(作業機)
2 機体
3 エンジン
7 車輪
9 ロータリ装置
25 ロータリカバー
28 培土装置
h 幅方向長さ
H 車輪間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する機体と、該機体を支持する左右一対の車輪と、該車輪の前部に配置されたロータリ装置と、を備える歩行型農作業機において、
前記車輪と前記ロータリ装置との間に培土装置を備えてなる、
ことを特徴とする歩行型農作業機。
【請求項2】
前記ロータリ装置の上部から後部を覆うロータリカバーを備え、
前記培土装置は、前記ロータリカバーに取り付けられてなる、
請求項1記載の歩行型農作業機。
【請求項3】
前記培土装置の幅方向の長さは、前記車輪間の距離よりも小さくされてなる、
請求項1または2記載の歩行型農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−166849(P2010−166849A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11969(P2009−11969)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】