説明

水田作業機

【課題】 水田作業機において、地面(耕盤)の比較的小さな凹凸をサスペンション機構による右及び左の車輪の昇降によって吸収する利点を残しながら、地面(耕盤)の比較的大きな凹凸も無理なく吸収することができるように構成する。
【解決手段】 機体の前後軸芯P8周りに上下に揺動自在で機体の前後軸芯P8から右及び左に延出された支持アーム48を備える。支持アーム48の右側部にサスペンション機構49を介して右の車輪2を支持させ、支持アーム48の左側部にサスペンション機構49を介して左の車輪2を支持させて、右及び左の車輪2を昇降自在に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機では、例えば、特許文献1に開示されているように、右及び左の後輪(特許文献3の図4中の6)を独立に昇降自在に支持し、右及び左の後輪を支持するサスペンション機構(特許文献3の図3及び図4中の9)を備えたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−2078号公報(図3及び図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造によると、右及び左の後輪がサスペンション機構を介して独立に昇降自在に支持されているので、水田の作業走行や路上走行等において、地面(耕盤)の比較的小さな凹凸がサスペンション機構による右及び左の後輪の昇降によって吸収されることになり、右及び左の後輪の駆動力が地面(耕盤)に適切に伝達されるようにすることができる。
本発明は水田作業機において、地面(耕盤)の比較的小さな凹凸をサスペンション機構による右及び左の車輪の昇降によって吸収する利点を残しながら、地面(耕盤)の比較的大きな凹凸も無理なく吸収することができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業機において次のように構成することにある。
機体の前後軸芯周りに上下に揺動自在で機体の前後軸芯から右及び左に延出された支持アームを備える。支持アームの右側部にサスペンション機構を介して右の車輪を支持させて、支持アームの左側部にサスペンション機構を介して左の車輪を支持させて、右及び左の車輪を昇降自在に構成してある。
【0006】
(作用)
請求項1の特徴によると、水田の作業走行や路上走行等において、地面(耕盤)の比較的小さな凹凸がサスペンション機構による右及び左の車輪の昇降によって吸収されるようにすることができて、右及び左の車輪の駆動力が地面(耕盤)に適切に伝達されるようにすることができる。
【0007】
地面(耕盤)の比較的大きな凹凸においては、サスペンション機構による右及び左の車輪の昇降によって吸収することは困難なことが多い(例えば地面(耕盤)の大きな凸部に右の車輪が乗り上げると、左の車輪が地面から浮いてしまうような状態の生じることがある)。
請求項1の特徴によれば、地面に比較的大きな凹凸があると、支持アームが揺動するようにして、支持アームの揺動により右の車輪を大きく上昇させ、左の車輪を大きく下降させることにより(支持アームの揺動により左の車輪を大きく上昇させ、右の車輪を大きく下降させることにより)、地面(耕盤)の比較的大きな凹凸を吸収して、右及び左の車輪の駆動力が地面(耕盤)に適切に伝達されるようにすることができる。
【0008】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、水田の作業走行や路上走行等において、地面(耕盤)の比較的小さな凹凸がサスペンション機構による右及び左の車輪の昇降によって吸収され、地面(耕盤)の比較的大きな凹凸が支持アームの揺動による右及び左の車輪の昇降によって吸収されるようになり、右及び左の車輪の駆動力が地面(耕盤)に適切に伝達されるようにすることができて、水田作業機の走行性能を向上させることができた。
【0009】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
サスペンション機構よりも弱いバネにより、支持アームを機体と平行な姿勢に付勢するように構成する。
【0010】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
支持アームとサスペンション機構との接続部分において、支持アームに対するサスペンション機構の傾斜が吸収されるように構成する。
【0011】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1〜第3特徴の水田作業機のうちのいずれか一つにおいて次のように構成することにある。
右及び左の車輪を独立に昇降自在に構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[1]
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に1本のトップリンク3及び2本のロアリンク4が上下に揺動自在に支持され、トップリンク3及びロアリンク4を昇降駆動する油圧シリンダ5が備えられており、トップリンク3及びロアリンク4の後部に苗植付装置6が支持されて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0013】
図1及び図2に示すように、苗植付装置6は4条植型式に構成されており、2個の伝動ケース9、伝動ケース9の後部の右及び左の横側部に回転駆動自在に支持された植付ケース10、植付ケース10の両端に備えられた一対の植付アーム11、接地フロート12及び苗のせ台13等を備えて構成されている。これにより、苗のせ台13が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース10が回転駆動され、苗のせ台13の下部から植付アーム11が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。
【0014】
図1及び図2に示すように、機体に備えられた運転座席14の後側に、肥料を貯留するホッパー15、繰り出し部16及びブロア17が備えられている。接地フロート12に作溝器18が備えられて、繰り出し部16と作溝器18とに亘ってホース19が接続されている。これにより前述のような苗の植え付けに伴って、ホッパー15から肥料が所定量ずつ繰り出し部16によって繰り出され、ブロア17の送風により肥料がホース19を通って作溝器18に供給されるのであり、作溝器18を介して肥料が田面Gに供給される。
【0015】
図3及び図5に示すように、機体の後部に右及び左の支持フレーム20が上下向きに固定され、支持フレーム20に亘って横フレーム21が連結されており、支持フレーム20の下部の機体左右方向の横軸芯P2周りに、ロアリンク4が上下に揺動自在に支持されている。支持フレーム20に亘って支持軸22が架設され、油圧シリンダ5のシリンダ側のブラケット5aが支持軸22の機体左右方向の横軸芯P3周りに上下に揺動自在に支持されており、油圧シリンダ5のピストンロッドがロアリンク4の先端に接続されている。油圧シリンダ5のシリンダ側のブラケット5aの外側において、トップリンク3が支持軸22の機体左右方向の横軸芯P3周りに上下に揺動自在に支持されている。これにより、油圧シリンダ5が収縮作動すると、トップリンク3及びロアリンク4が上方に揺動駆動されて、苗植付装置6が上昇駆動される。油圧シリンダ5が伸長作動すると、トップリンク3及びロアリンク4が下方に揺動駆動されて、苗植付装置6が下降駆動される。
【0016】
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1を操向操作するステアリングハンドル38が運転座席14の前方に備えられており、ステアリングハンドル38の右の横側部に昇降レバー39が備えられている。昇降レバー39は上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作自在であり、後側から前側に向けて上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置が、この順序で配置されている。昇降レバー39を上昇位置に操作すると、苗植付装置6に動力を伝達する植付クラッチ(図示せず)が遮断状態に操作されて、油圧シリンダ5により苗植付装置6が上昇駆動される。昇降レバー39を中立位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作されて、油圧シリンダ5が停止する。昇降レバー39を下降位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作されて、油圧シリンダ5により苗植付装置6が下降駆動される。昇降レバー39を植付位置に操作すると、植付クラッチが伝動状態に操作されて、苗植付装置6が田面Gから設定高さに維持されるように油圧シリンダ5により自動的に昇降駆動される。
【0017】
[2]
次に、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2の支持構造について説明する。
図1に示すように、機体の前部に前車軸ケース7が固定され、前車軸ケース7の右及び左の端部に右及び左の前輪1が操向自在に支持されている。機体の後部の機体左右方向の横軸芯P1周りに、右及び左の支持ケース8が独立に上下に揺動自在に支持され、右及び左の支持ケース8が後方に延出されて、右及び左の支持ケース8の後部に右及び左の後輪2が支持されている。エンジン(図示せず)の動力が、静油圧式無段変速装置(図示せず)及びギヤ変速式の副変速装置(図示せず)を介して、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に伝達されている。
【0018】
図3及び図5に示すように、支持ケース20に支持軸23が固定されて、支持軸23の機体前後方向の横軸芯P4周りに、天秤状の右及び左の操作アーム24が上下に揺動自在に支持されている。操作アーム24の一方の端部にピン24aが機体前後方向に固定されて、横フレーム21に備えられた円弧状の長孔21aに操作アーム24のピン24aが挿入されており、横フレーム21の長孔21aによって、操作アーム24の揺動範囲が規制されている。
【0019】
図1,3,5に示すように、右及び左の操作アーム24の他方の端部と右及び左の支持ケース8とに亘って、右及び左のサスペンション機構25が接続されている。図5に示すように、右及び左の支持ケース8に固定されたブラケット8aの機体左右方向の横軸芯P5周りに、ブラケット26が前後に揺動自在に支持され、ブラケット26にパイプ27が固定されており、8個の軟質のゴムブロック28がパイプ27に外嵌されている。硬質の樹脂製の受け部材29が上端のゴムブロック28及びパイプ27に外嵌され、ブラケット26と受け部材29とに亘って軟質のゴム製のカバー30が取り付けられており、パイプ27及び受け部材29の内部にロッド31が上下方向にスライド自在に備えられている。以上のようにして、サスペンション機構25が構成されており、ゴムブロック28によりサスペンション機能が得られている。
【0020】
図5に示すように、サスペンション機構25において、受け部材29の上部が凸状の球面部29aに構成されており、ロッド31が受け部材29の球面部29aから上方に突出している。操作アーム24の他方の端部に、下側から見て凹状の球面部24bが備えられて、球面部24bに開口部24c(機体左右方向に沿う長孔状で、機体前後方向の幅はロッド31の外径よりも少し大きい)が備えられている。受け部材29の球面部29aが操作アーム24の球面部24bに下側から当て付けられ、ロッド31が操作アーム24の開口部24cを通って上方に出ており、ロッド31の上部にナット31aが取り付けられている。
【0021】
図1,3,5に示す状態は、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)の通常状態であり、水田での作業走行や路上走行等において、凹凸に応じて右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が独立に上下に揺動し、サスペンション機構25によりショックが吸収される(操作アーム24のピン24aが横フレーム21の長孔21aの下端に接当して、操作アーム24は図5に示す状態で停止している)。
【0022】
この場合に、図5に示すように、操作アーム24の他方の端部に対してサスペンション機構25が傾斜しても、受け部材29の球面部29a及び操作アーム24の球面部24bにより、操作アーム24の他方の端部に対するサスペンション機構25の傾斜が吸収される。操作アーム24の開口部24cにロッド31が挿入されていることにより、受け部材29の球面部29aが操作アーム24の球面部24bから外れるようなことがない。
【0023】
[3]
次に、油圧シリンダ5により苗植付装置6が田面Gから所定高さを越えて上昇駆動されると、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が下降駆動される構造について説明する。
図3及び図5に示すように、トップリンク3の機体左右方向の横軸芯P6周りに、正面視でH字状の切換部材32が前後に揺動自在に支持され、切換部材32の上部にローラー33が回転自在に支持されている。トップリンク3の機体左右方向の横軸芯P6周りに、正面視でU字状の操作部材34が前後に揺動自在に支持され、トッグル機能を備えたバネ35が切換部材32と操作部材34とに亘って接続されている。トップリンク3の機体左右方向の横軸芯P7周りに、操作レバー36が前後に揺動自在に支持され、操作部材34と操作レバー36とに亘って連係ロッド37が接続されている。
【0024】
図1,3,5に示す状態は、油圧シリンダ5により苗植付装置6を田面Gに下降駆動している状態で、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)の通常状態である。図1,3,5に示す状態で操作レバー36を作動位置に操作すると、図3に示すように操作部材34が前方に揺動操作されて、バネ35により切換部材32が前方に揺動操作され、ローラー33が操作アーム24のピン24aの下側に入り込む。
【0025】
これにより図1,3,5に示す状態で、昇降レバ−39を上昇位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が田面Gから所定高さを越えて上昇駆動されると、図4及び図6に示すように、ローラー33が操作アーム24のピン24aに接当して、操作アーム24のピン24aが上方に持ち上げられるように操作アーム24が揺動し、操作アーム24によりサスペンション機構25が押し下げられて、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が下降駆動され、機体の後部が持ち上げられて機体が前下がり気味になる。
【0026】
次に昇降レバー39を下降位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が下降駆動されると、ローラー33が下方に移動して、機体の後部が下がりながら右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が上昇駆動され、操作アーム24のピン24aが下方に移動するように操作アーム24が揺動して、図1,3,5に示す右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)の通常状態に戻る。
【0027】
図1,3,5に示すように、油圧シリンダ5により苗植付装置6を田面Gに下降駆動している状態で、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)の通常状態において、図7に示すように操作レバー36を解除位置に操作すると、操作部材34が後方に揺動操作されて、バネ35により切換部材32が後方に揺動操作され、ローラー33が操作アーム24のピン24aの下側から後方に離れる。これにより、昇降レバ−39を上昇位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が田面Gから所定高さを越えて上昇駆動されても、ローラー33が操作アーム24のピン24aに接当することはなく(図7の二点鎖線参照)、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)は下降駆動されない。
【0028】
[4]
図8(イ)に示すように、操作レバー36を作動位置に操作した状態で、昇降レバ−39を上昇位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が田面Gから所定高さを越えて上昇駆動され、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が下降駆動された状態において、図8(ロ)に示すように、操作レバー36を解除位置に操作すると、操作部材34が後方に揺動操作されて、バネ35が機体左右方向の横軸芯P6を越えて後方に移動するが、ロ−ラー33が操作アーム24のピン24aに押圧されているので、切換部材32は後方に揺動操作されない。
【0029】
次に図8(ロ)に示す状態から昇降レバー39を下降位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が下降駆動されて、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)の通常状態に戻ると、図8(ハ)に示すように、ロ−ラー33が操作アーム24のピン24aから下方に離れるので、バネ35により切換部材32が後方に揺動操作されて、ローラー33が操作アーム24のピン24aの下側から後方に離れる。従って、この後に昇降レバ−39を上昇位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が田面Gから所定高さを越えて上昇駆動されても、ローラー33が操作アーム24のピン24aに接当することはなく、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)は下降駆動されない(図9(イ)の状態参照)。
【0030】
図9(イ)に示すように、操作レバー36を解除位置に操作した状態で、昇降レバ−39を上昇位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が田面Gから所定高さを越えて上昇駆動されているが、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が下降駆動されていない状態において、図9(ロ)に示すように、操作レバー36を作動位置に操作した場合に、操作部材34が前方に揺動操作されて、バネ35が機体左右方向の横軸芯P6を越えて前方に移動するが、ロ−ラー33が操作アーム24に接当するので、切換部材32は前方に揺動操作されない。
【0031】
次に図9(ロ)に示す状態から昇降レバー39を下降位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が下降駆動されて、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が通常状態に戻ると、図9(ハ)に示すように、ロ−ラー33が操作アーム24から下方に離れるので、バネ35により切換部材32が前方に揺動操作されて、ローラー33が操作アーム24のピン24aの下側に入り込む。従って、この後に昇降レバ−39を上昇位置に操作して、油圧シリンダ5により苗植付装置6が田面Gから所定高さを越えて上昇駆動されると、ローラー33が操作アーム24のピン24aに接当して、右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が下降駆動される(図8(イ)の状態参照)。
【0032】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明の実施の形態]に代えて図10に示すように構成してもよい。
図10に示すように、操作アーム24及びサスペンション機構25(図3及び図5参照)が廃止されており、単動型の右及び左の油圧シリンダ40のシリンダ部が機体の固定部に接続され、右及び左の油圧シリンダ40のピストン部にサスペンション機構41(ゴム又は金属バネ)の上部が接続されて、サスペンション機構41の下部が右及び左の支持ケース8のブラケット8aに接続されている。右及び左の油圧シリンダ40に作動油を給排操作する制御弁42が備えられ、制御弁42を操作する制御装置43が備えられている。これによって、右及び左の油圧シリンダ40により、サスペンション機構41を介して右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)を独立に昇降駆動することができる。
【0033】
図10に示すように、水平面に対する機体の左右方向の傾斜を検出する傾斜センサー44が備えられ、機体に対するトップリンク3の角度を検出する高さセンサー45が備えられており、傾斜センサー44及び高さセンサー45の検出値が制御装置43に入力されている。
【0034】
前述の[発明の実施の形態]に記載のように、エンジンの動力が静油圧式無段変速装置及びギヤ変速式の副変速装置を介して、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に伝達されるように構成されている。副変速装置は低速の植付走行位置及び高速の路上走行位置の高低2段に変速可能に構成されており、図10に示すように副変速装置を低速の植付走行位置及び高速の路上走行位置に操作する副変速レバー46が備えられている。
【0035】
図10に示すように、副変速レバー46に対して電動シリンダ47が配置されており、副変速レバー46が高速の路上走行位置に操作されている状態で、電動シリンダ47を作動させると、電動シリンダ47により副変速レバー46が低速の植付走行位置に操作される。副変速レバー46が低速の植付走行位置に操作されている状態で、電動シリンダ47を作動させると、電動シリンダ47により副変速レバー46を低速の植付走行位置から高速の路上走行位置に操作することができない。
【0036】
以上の構造により、図10に示すように、高さセンサー45の検出値が設定値以下であると、機体に対するトップリンク3の角度が設定角度以下であると判断され、苗植付装置6が田面Gから所定高さ以下に位置していると判断される。従って、傾斜センサー44の検出値に基づいて機体が所定姿勢(例えば水平姿勢)に維持されるように、制御装置43及び制御弁42により右及び左の油圧シリンダ40が独立に伸縮作動されて、サスペンション機構41を介して右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が独立に昇降駆動される。この状態において、電動シリンダ47は作動しておらず、副変速レバー46を低速の植付走行位置及び高速の路上走行位置に操作することができる。
【0037】
図2に示す昇降レバー39が上昇位置に操作されて、油圧シリンダ5により苗植付装置6が上昇駆動された場合、高さセンサー45の検出値が設定値を越えると、機体に対するトップリンク3の角度が設定角度を越えたと判断され、苗植付装置6が田面Gから所定高さを越えて上昇駆動されたと判断される。従って、制御装置43及び制御弁42により右及び左の油圧シリンダ40が伸長限度まで伸長作動されて、サスペンション機構41を介して右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が下降駆動される。この状態において電動シリンダ47が作動して、副変速レバー46が高速の路上走行位置から低速の植付走行位置に操作されるのであり、副変速レバー46を低速の植付走行位置から高速の路上走行位置に操作することができない。
【0038】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明の実施の形態]及び[発明の実施の第1別形態]に代えて図11及び図12に示すように構成してもよい。
図11及び図12に示すように、操作アーム24及びサスペンション機構25(図3及び図5参照)、右及び左の油圧シリンダ40、サスペンション機構41(図10参照)が廃止されている。機体の前後軸芯P8周りに揺動自在に支持アーム48が支持され、支持アーム48が機体の前後軸芯P8から右及び左に延出されている。支持アーム48の右側部と右の支持ケース8のブラケット8aとに亘って、サスペンション機構49(ゴム又は金属バネ)が接続され、支持アーム48の左側部と左の支持ケース8のブラケット8aとに亘って、サスペンション機構49(ゴム又は金属バネ)が接続されている。
【0039】
この場合、サスペンション機構49よりも強いバネ(又は弱いバネ)(図示せず)により、支持アーム48を機体に平行な姿勢(機体に対して右及び左の支持ケース8(右及び左の後輪2)が同じ高さに位置する姿勢)に付勢するように構成してもよい。
本発明は乗用型田植機ばかりではなく、機体の後部に直播装置を上下動自在に支持した乗用型直播機や、機体の後部に代掻きロータリを上下動自在に支持した乗用型作業機にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】操作レバーを作動位置に操作した状態で、油圧シリンダにより苗植付装置が田面に下降駆動されて、右及び左の支持ケース(右及び左の後輪)が通常状態となっている状態を示す側面図
【図4】操作レバーを作動位置に操作した状態で、油圧シリンダにより苗植付装置が田面から所定高さを越えて上昇駆動されて、右及び左の支持ケース(右及び左の後輪)が下降駆動された状態を示す側面図
【図5】操作レバーを作動位置に操作した状態で、油圧シリンダにより苗植付装置が田面に下降駆動された状態での操作アームの付近の背面図
【図6】操作レバーを作動位置に操作した状態で、油圧シリンダにより苗植付装置が田面から所定高さを越えて上昇駆動された状態での操作アームの付近の背面図
【図7】操作レバーを解除位置に操作した状態で、油圧シリンダにより苗植付装置が田面に下降駆動されて、右及び左の支持ケース(右及び左の後輪)が通常状態となっている状態を示す側面図
【図8】操作レバーを作動位置に操作した状態で、油圧シリンダにより苗植付装置が田面から所定高さを越えて上昇駆動され、右及び左の支持ケース(右及び左の後輪)が下降駆動された状態において、操作レバーを解除位置に操作した状態を示す概略側面図
【図9】操作レバーを解除位置に操作した状態で、油圧シリンダにより苗植付装置が田面から所定高さを越えて上昇駆動され、右及び左の支持ケース(右及び左の後輪)が通常状態となっている状態において、操作レバーを作動位置に操作した状態を示す概略側面図
【図10】発明の実施の第1別形態における右及び左の支持ケース(右及び左の後輪)の昇降構造を示す概略図
【図11】発明の実施の第2別形態における支持アーム、右及び左の支持ケース(右及び左の後輪)の付近の側面図
【図12】発明の実施の第2別形態における支持アーム、右及び左の支持ケース(右及び左の後輪)の付近の正面図
【符号の説明】
【0041】
2 車輪
48 支持アーム
49 サスペンション機構
P8 機体の前後軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前後軸芯周りに上下に揺動自在で機体の前後軸芯から右及び左に延出された支持アームを備えて、
前記支持アームの右側部にサスペンション機構を介して右の車輪を支持させ、前記支持アームの左側部にサスペンション機構を介して左の車輪を支持させて、右及び左の車輪を昇降自在に構成してある水田作業機。
【請求項2】
前記サスペンション機構よりも弱いバネにより、前記支持アームを機体と平行な姿勢に付勢するように構成してある請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記支持アームとサスペンション機構との接続部分において、前記支持アームに対するサスペンション機構の傾斜が吸収されるように構成してある請求項1又は2に記載の水田作業機。
【請求項4】
前記右及び左の車輪を独立に昇降自在に構成してある請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−261579(P2007−261579A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131713(P2007−131713)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【分割の表示】特願2003−70287(P2003−70287)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】