水田作業機
【課題】田面に供給される苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを回避して、作業対象ライン上に適正に苗又は種籾を供給することが可能となる水田作業機を提供する。
【解決手段】走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインLに沿って田面に苗nを供給する供給装置32と、作業対象ラインLの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成する施肥用作溝器25と、施肥用溝に肥料を供給する施肥装置とが備えられ、作業対象ラインLの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝を田面に形成する他方側作溝器44が備えられている。
【解決手段】走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインLに沿って田面に苗nを供給する供給装置32と、作業対象ラインLの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成する施肥用作溝器25と、施肥用溝に肥料を供給する施肥装置とが備えられ、作業対象ラインLの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝を田面に形成する他方側作溝器44が備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインに沿って田面に苗又は種籾を供給する供給装置と、前記作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成する施肥用作溝器と、前記施肥用溝に肥料を供給する施肥装置とが備えられている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記水田作業機としての田植機は、従来では、次のように構成されていた。
すなわち、走行機体の後部に、苗載せ台に載置されるマット状の苗の一部を切り出して田面に供給して植え付ける回転式の植付爪を供えた苗植付機構(供給装置の一例)を備えて、走行機体の走行に伴って作業対象ラインに沿って1株ずつ苗を田面に供給して植え付けるように構成され、作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に施肥用溝を形成する施肥用作溝器が設けられ、この施肥用作溝器にて形成された溝内に施肥装置から肥料を供給するように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
水田作業機の他の例としての直播機においても、従来では、田植機と同様に、走行機体の走行に伴って作業対象ラインに沿って種籾を田面に供給する直播装置を備え、作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に施肥用溝を形成する施肥用作溝器が設けられる構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−37611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記水田作業機としての田植機における従来構成では、苗が植え付けられる作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に田面に施肥用溝を形成する施肥用作溝器が設けられる構成となっているから、特に水分の多い田面の場合に、植え付けられた苗が横倒れ状態になる等、植え付けられた苗の姿勢が乱れて適正な作業対象ラインから外れる虞があった。
【0006】
説明を加えると、泥土に含まれる水分が多い軟弱な圃場であれば、例えば、図15に示すように、作業対象ラインLにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に形成された施肥用溝M1の内部に、苗nが植え付けられている箇所の泥土が流れ込むことがあり、このように機体横幅方向の横一側箇所に形成された施肥用溝M1に泥土が流れ込むと、苗nが植え付けられている箇所の田面Gの表面が斜めになり、植え付けられている苗nが横向きに傾斜して苗nの姿勢が乱れることがある。
【0007】
又、水田作業機の他の例としての直播機の場合においても田植機の場合と同様に、作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に作溝器にて形成された溝の内部に、種籾が供給されている箇所の泥土が流れ込むと、その種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移してしまうおそれがある。
【0008】
つまり、上記従来構成では、田面に供給される苗や種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移して作業対象ラインから外れてしまうおそれがあり、この点で改善の余地があった。
【0009】
本発明の目的は、田面に供給される苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを回避して、作業対象ライン上に適正に苗又は種籾を供給することが可能となる水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水田作業機は、走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインに沿って田面に苗又は種籾を供給する供給装置と、前記作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成する施肥用作溝器と、前記施肥用溝に肥料を供給する施肥装置とが備えられているものであって、その第1特徴構成は、前記作業対象ラインの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝を田面に形成する他方側作溝器が備えられている点にある。
【0011】
第1特徴構成によれば、作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所においては、施肥用作溝器により施肥用溝が田面に形成される。一方、作業対象ラインの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所においては、他方側作溝器によって施肥用溝とは別に他方側の溝が田面に形成される。
【0012】
このように作業対象ラインの機体横幅方向他方側に施肥用溝とは別に他方側の溝が田面に形成されるから、例えば、水分が多く軟弱な圃場では、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土は施肥用溝だけでなく他方側の溝にも流れ込むことになる。つまり、泥土は片側だけに一方的に流れ出すのではなく左右両側に振り分けられた状態で流れ出すことになって、田面における苗又は種籾が供給されている箇所の表面が斜め姿勢になることを回避し易いものとなる。その結果、例えば田面上に供給されている苗が横向きに傾斜して苗の姿勢が乱れたり、田面上に供給されている種籾が適正な位置から横一側外方に位置ずれすることを防止することが可能となる。
【0013】
従って、田面に供給される苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを回避して、作業対象ライン上に適正に苗又は種籾を供給することが可能となる水田作業機を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記作業対象ラインと前記他方側の溝との間の間隔及び前記作業対象ラインと前記施肥用溝との間での間隔が略同じ間隔になる状態で、前記他方側作溝器が備えられている点にある。
【0015】
第2特徴構成によれば、作業対象ラインと他方側の溝との間での間隔と、作業対象ラインと施肥用溝との間での間隔が略同じであるから、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ込むときに、左右両側に流れ出す泥土を均等にさせ易いものになる。
【0016】
その結果、田面が軟弱であって苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ出すことがあっても、田面における苗又は種籾が供給されている箇所の表面が斜め姿勢になるおそれが少なく、苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを一層回避させ易いものとなる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記他方側作溝器が、前記施肥用溝の横幅と略同じ横幅になるように前記他方側の溝を田面に形成するように構成されている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、施肥用溝の横幅と他方側の溝の横幅とが略同じであるから、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ込むことがあっても、施肥用溝に向けて流れ出す泥土の量と他方側の溝に向けて流れ出す泥土の量とが略同じになり、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ込むときに、左右両側に流れ出す泥土を均等にさせ易いものになる。
【0019】
その結果、田面が軟弱であって苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ出すことがあっても、田面における苗又は種籾が供給されている箇所の表面が斜め姿勢になるおそれが少なく、苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを一層回避させ易いものとなる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記他方側作溝器の田面に対する高さを変更調整自在な高さ調節手段が備えられている点にある。
【0021】
第4特徴構成によれば、高さ調節手段によって、他方側作溝器の田面に対する高さを変更することができるから、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ込むときに、左右両側に流れ出す泥土を均等にさせるために、施肥用溝の深さに対する他方側の溝の深さを調節することができる。
【0022】
従って、他方側の溝の深さを適正な深さに調節することによって、左右両側に流れ出す泥土を均等にさせることを的確に行うことができ、苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することをより一層回避させ易いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の全体平面図である。
【図3】施肥装置の背面図である。
【図4】苗植付装置の植付け用伝動構造を示す平面図である。
【図5】苗植付装置の一部縦断側面図である。
【図6】苗植付装置の一部側面図である。
【図7】苗植付け状態を示す田面の縦断面図である。
【図8】別実施形態の苗植付装置の一部縦断側面図である。
【図9】別実施形態の施肥用作溝器の取り付け状態を示す図である。
【図10】別実施形態の他方側作溝器と接地フロートの平面図である。
【図11】別実施形態の施肥用作溝器の取り付け状態を示す平面図である。
【図12】別実施形態の施肥用作溝器の取り付け状態を示す側面図である。
【図13】別実施形態の接地フロートと泥除け板を示す図である。
【図14】別実施形態の接地フロートの平面図である。
【図15】従来の苗植付け状態を示す田面の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る水田作業機の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明に係る水田作業機としての田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5が備えられ、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とが備えられ、走行機体3の後部には施肥装置9が備えられている。そして、走行機体3の後方には、リフトシリンダ10を備えたリンク機構11を介して苗植付装置12が昇降自在に装着されている。
【0025】
施肥装置9は、図1に示すように、肥料を貯留する透明樹脂製の肥料ホッパー13と、その肥料ホッパー13の下側に配置された4個の肥料繰出し機構14とを備え、これらの肥料ホッパー13および肥料繰出し機構14は、走行機体3の後部で、運転座席8の後側近くにおいて車体フレーム15の上部に設けた支持枠16によって支持されている。
【0026】
前記肥料繰出し機構14は、図3に示すように、ミッションケース5から後輪2に動力を伝達するように後方へ延出される伝動軸17から、横向きに動力を取り出すクランク機構18のクランク軸18aの回転運動による連係ロッド19の往復運動が、ワンウェイクラッチ20により回転運動に変換されて駆動軸21に伝えられることにより、駆動されるように構成されている。
【0027】
そして、電動ブロア22からの高圧の風が、送風ダクト23を介して肥料繰り出し機構14に供給され、高圧の風により肥料が搬送ホース24を通って施肥用作溝器25に供給され、施肥用作溝器25により田面Gに形成された溝に肥料が送り込まれて施肥作業が行われるよう構成されている。
【0028】
リンク機構11は左右一対のトップリンク26、左右一対のロアーリンク27、及び、後端の縦リンク28を備えて平行四連リンクとして構成され、縦リンク28の下端部に対して苗植付装置12が前後向き軸芯周りでローリング自在に連結されている。
【0029】
図4に示すように、苗植付装置12は、前側下部にアルミ材を押し出して成型した左右に長い角筒状の植付けフレーム29が装備され、植付けフレーム29の左右中央付近に、走行機体3からの動力を伝達するフィードケース30が連結され、植付けフレーム29の後面の左右3箇所に植付け伝動ケース31が後向き片持ち状に連結されて、各植付け伝動ケース31の後端部の左右両側に植付け機構32が装着されている。すなわち、植付け機構32は6個備えられており、各植付け機構32は、横軸芯周りで回転するロータリーケース33と、このロータリーケース33に取り付けられた植付爪34とを備えて構成されている。
【0030】
又、苗植付装置12は、マット状苗を載置し且つ図示しない横送り移動機構により一定ストロークで往復横移動する状態で支持される苗載せ台35を備えており、植付け作動時には、苗載せ台35に載置したマット状苗の下端から植付け機構32における植付爪34により苗nを1株ずつ切り出して田面Gに植え付けるよう構成されている。つまり、図4に示すように、走行機体3の進行に伴って田面Gに1株ずつの苗nを機体進行方向に適宜間隔をあけながら田面Gに植え付けることができる。
従って、前記各植付け機構32が、走行機体3の進行方向に沿う作業対象ラインLに沿って田面Gに苗nを供給する供給装置として機能することになる。
【0031】
前記植付けフレーム29の後方に植付けフレーム29と平行姿勢の植付深さ調節軸36が軸芯周りで回動自在に備えられ、この植付深さ調節軸36から後方に延設した3組のアーム37の夫々の後端部に横向き姿勢の支持軸周りで揺動自在に3つの接地フロート38,39の後部側箇所が支持され、この植付深さ調節軸36に連結する植付深さ調節レバー40をレバーガイド41に係止保持することで、植付爪34の作動軌跡Tに対する接地フロート38,39の揺動支点位置を変更して田面Gに対する苗の植付深さを調節できるよう構成されている。尚、各接地フロート38,39の前端側は一定範囲で上下揺動可能なように図示しないリンク機構により吊り下げ支持される構成となっている。
【0032】
又、図示はしないが、左右中央の接地フロート38(以下、センターフロートという場合がある)の揺動支点周りでの上下揺動量を検出するセンサの検出値が予め設定される目標値になるようにリフトシリンダ10に対する制御弁(図示せず)を切り換え操作して苗植付装置12の高さを設定値に維持する昇降制御を実行する制御装置が備えられている。
【0033】
図4に示すように、3つの接地フロート38,39は夫々、平面視で概略T字形に形成されており、前部側広幅部と後部幅狭部との間の段差部の後方において苗nを植え付けるようになっているが、中央の接地フロート38(センターフレート)及び、センターフロート38の両側に位置する接地フロート39(以下、サイドフロートという場合がある)に夫々2個ずつ施肥用作溝器25が備えられている。
【0034】
又、図4及び図6に示すように、サイドフロート39の機体横幅方向外方側箇所に、植付けフレーム29から固定延設したブラケット53に支持される状態で、走行機体3の進行に伴って、サイドフロート39にて横側に押し流された泥土が隣接する植付条に流れ込むのを防止するための泥除け板54が設けられている。
【0035】
図4に示すように、施肥用作溝器25は、前記各植付け機構32により機体進行方向に沿って苗nが植え付けられる6本の作業対象ラインLの夫々について、各作業対象ラインLの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所に位置する状態で各別に配置されて接地フロート(センターフロート38及びサイドフロート39)に固定状態で取付けられている。
【0036】
そして、前記各植付け機構32により機体進行方向に沿って苗nが植え付けられる6本の作業対象ラインLの夫々について、各作業対象ラインLの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝を田面Gに形成するもので施肥用の機能を備えていない作溝専用(左右偏移防止専用)の他方側作溝器44が各別に備えられている。
【0037】
図4に示すように、他方側作溝器44は、植付けフレーム29及びブラケット53に取り付けられて後方下方側に片持ち状に延設されており、図5に示すように、他方側作溝器44は、角パイプ材を略L字状に湾曲形成され、施肥用溝M1と略同じ横幅の他方側の溝M2(図7参照)を田面Gに形成するように、横幅寸法が施肥用作溝器25と略同じになるように構成されている。
【0038】
他方側作溝器44の下面側には、後方側ほど徐々に高さが低くなる湾曲面44Aが形成されている。他方側作溝器44の前後向きの後端部44Bは、側面視で施肥用作溝器25の下部と重複する位置に施肥用作溝器25の下端よりも上側に位置する状態で配備されている。
【0039】
他方側作溝器44の植付けフレーム29に対する取り付け構成について説明を加えると、図5に示すように、植付けフレーム29の縦面部に他方側作溝器44を構成する角パイプ材の一端部を平坦状に潰した箇所をボルトで連結する構成となっている。
【0040】
又、図7(a)に示すように、作業対象ラインLと他方側の溝M2との間の間隔P1及び作業対象ラインLと施肥用溝M1との間での間隔P2が略同じ間隔になる状態で、他方側作溝器44が備えられている。
【0041】
このように、作業対象ラインLの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝M1が田面Gに形成され、且つ、作業対象ラインLの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝M2が田面Gに形成されるので、図7(b)に示すように、水分が多く軟弱な圃場では、苗nが植え付けられている箇所の泥土は施肥用溝M1だけでなく他方側の溝M2にも流れ込むことになるから、泥土は片側だけに一方的に流れ出すのではなく、左右両側に振り分けられた状態で流れ出すので、田面Gにおける苗nが植え付けられている箇所の表面が斜め姿勢になることがなく、植え付けられた苗nが横向きに倒れて横方向に偏移する等の不利を回避できるものとなる。
【0042】
〔別実施形態〕
(1)前記他方側作溝器44としては、中実の角材を湾曲させたもの、丸パイプ材を湾曲させたもの、中実の丸棒材を湾曲させたもの、帯板を湾曲させたもの等、種々の形態で実施することができる。又、他方側作溝器44の側面視での形状としては、略L字状に湾曲形成したものに限らず、側面視でL字状又は略L字状に屈曲したものや、側面視で植付けフレーム29への連結箇所から斜め下方に直線状に延出したもの等、種々の形態で実施することができる。
【0043】
(2)上記実施形態では、他方側作溝器44を植付けフレーム29に取り付けて他方側作溝器44の田面Gに対する高さを一定に維持する構成としたが、他方側作溝器44の田面Gに対する高さを変更調整自在な高さ調節手段THを備える構成としてもよい。
【0044】
つまり、図8に示すように、植付深さ調節軸36に固定したブラケット51に他方側作溝器44を一体的に回動自在に取り付ける構成としてもよい。このように構成すると、植付け深さ調節レバー40の操作により植付け深さが変更調整されると、それに伴って、他方側作溝器44の田面Gに対する高さが変更調整されることになる。この構成では、植付け深さ調節レバー40とその操作により回動操作される植付深さ調節軸36とにより高さ調節手段THを構成する。
【0045】
このように構成すると、植付け深さ調節レバー40の操作により植付け深さが変更調整され、植付けフレーム29に対する接地フロート38の揺動支点位置が上下に位置調節されると、それに伴って他方側作溝器44の田面Gに対する高さが変更調整されるから、施肥用作溝器25と他方側作溝器44との相対高さが一定に維持されることになり、施肥用溝M1の深さと他方側の溝M2とに差が生じないものとなる。
【0046】
高さ調節手段THとしては、このような構成に代えて、植付けフレーム29に対して独立で高さ調整可能なように他方側作溝器44を支持する支持機構(図示せず)により高さ調節手段THを構成してもよい。
【0047】
例えば、上記実施形態における図5に示すように、他方側作溝器44が断面角型の植付けフレーム29の縦面部にボルトで固定されるものであれば、植付けフレーム29の縦面部あるいは他方側作溝器44の平坦状に潰された取り付け箇所に、上下方向に沿う長孔を形成して、その長孔の形成範囲にわたり植付けフレーム29に対して高さ調整可能並びにボルトで固定自在に他方側作溝器44を支持する構成としてもよい。
【0048】
又、植付けフレーム29に対して前後位置を変更調整可能なように他方側作溝器44を支持する構成としてもよい。例えば、他方側作溝器44を断面角型の植付けフレーム29の下面部にボルトで固定する構成とし、植付けフレーム29の下面部あるいは他方側作溝器44の取り付け箇所に、前後方向に沿う長孔を形成して、その長孔の形成範囲にわたり植付けフレーム29に対して位置変更可能並びにボルトで固定自在に他方側作溝器44を支持する構成としてもよい。
【0049】
(3)上記実施形態では、施肥用作溝器25が接地フロート38,39に取り付けられる構成としたが、このような構成に代えて、例えば、図9に示すように、施肥用作溝器25を植付深さ調節軸36から固定延設したアーム45に取り付け、他方側作溝器44を接地フロート38,39の底面部に取り付ける構成としてもよい。
【0050】
(4)上記実施形態では、他方側作溝器44として、角パイプを用いて1つの溝を形成するようにしたが、図10に示すように、複数の溝形成部を備えたレーキ状の他方側作溝器44を用いるようにしてもよい。
この構成では、レーキ状の他方側作溝器44を用いることにより、接地フロート38の横外側から植付爪34による苗植え付け箇所に向けて泥土が流れ込むことを防止しながら、他方側の溝M2を形成して苗植え付け箇所からの横側への泥土の流出を均等にして苗nの倒れを防止することが可能となる。
【0051】
(5)上記実施形態では、6条植え形式の苗植付装置を備える構成としたが、種々の形式の苗植付装置を備えた田植機に適用できる。例えば、8条植え形式の田植機において、次のように構成してもよい。
【0052】
図11に示すように、接地フロート38,39には、夫々2個ずつ施肥用作溝器25が備えられ、左右両端側の植立条に対応する箇所に備えられる施肥用作溝器25は、それに対応する接地フロート40(図では仮想線で示す)を設けないで、接地フロート39から固定延設した支持フレーム61にて施肥用作溝器25が支持される構成としてもよい。
ちなみに、図11では図示はしていないが、植付爪34により苗の植え付けが行われる各作業対象ラインに対して施肥用作溝器25とは反対側の横側近傍箇所に他方側作溝器44が備えられることになる。
【0053】
又、左右両端側の植立条に対応する箇所に備えられる施肥用作溝器25を支持フレームに支持するものに代えて、図12に示すように、植付深さ調節軸36から固定延設したアーム45に取り付け、さらに、このアーム45に整地板62を取り付ける構成としてもよい。
【0054】
図13に示すように、左右両端側の植立条に対応する接地フロート40を備えて、その接地フロート40に、ブラケット63を介して、横側に押し流された泥土が隣接する植付条に流れ込むのを防止するための泥除け板64を設ける構成としてもよい。又、図14に示すように、接地フロート38の横外側から植付爪34による植付け箇所に泥土が流入するのを防止する案内部64を備える構成としてもよい。
【0055】
(6)上記実施形態では、水田作業機として田植機の場合を例に説明したが、本発明は、田植機に限らず、走行機体の走行に伴って作業対象ラインに沿って種籾を田面に供給する直播装置を備え、作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に施肥用溝を形成する施肥用作溝器が設けられる構成の直播機にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、田植機や直播機のように、走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインに沿って田面に苗又は種籾を供給するようになっており、作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成して、施肥用溝に肥料を供給するようにした水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
3 走行機体
9 施肥装置
25 施肥用作溝器
32 供給装置
44 他方側作溝器
G 田面
L 作業対象ライン
M1 施肥用溝
M2 他方側の溝
n 苗
P1,P2 間隔
TH 高さ調節手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインに沿って田面に苗又は種籾を供給する供給装置と、前記作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成する施肥用作溝器と、前記施肥用溝に肥料を供給する施肥装置とが備えられている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記水田作業機としての田植機は、従来では、次のように構成されていた。
すなわち、走行機体の後部に、苗載せ台に載置されるマット状の苗の一部を切り出して田面に供給して植え付ける回転式の植付爪を供えた苗植付機構(供給装置の一例)を備えて、走行機体の走行に伴って作業対象ラインに沿って1株ずつ苗を田面に供給して植え付けるように構成され、作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に施肥用溝を形成する施肥用作溝器が設けられ、この施肥用作溝器にて形成された溝内に施肥装置から肥料を供給するように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
水田作業機の他の例としての直播機においても、従来では、田植機と同様に、走行機体の走行に伴って作業対象ラインに沿って種籾を田面に供給する直播装置を備え、作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に施肥用溝を形成する施肥用作溝器が設けられる構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−37611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記水田作業機としての田植機における従来構成では、苗が植え付けられる作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に田面に施肥用溝を形成する施肥用作溝器が設けられる構成となっているから、特に水分の多い田面の場合に、植え付けられた苗が横倒れ状態になる等、植え付けられた苗の姿勢が乱れて適正な作業対象ラインから外れる虞があった。
【0006】
説明を加えると、泥土に含まれる水分が多い軟弱な圃場であれば、例えば、図15に示すように、作業対象ラインLにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に形成された施肥用溝M1の内部に、苗nが植え付けられている箇所の泥土が流れ込むことがあり、このように機体横幅方向の横一側箇所に形成された施肥用溝M1に泥土が流れ込むと、苗nが植え付けられている箇所の田面Gの表面が斜めになり、植え付けられている苗nが横向きに傾斜して苗nの姿勢が乱れることがある。
【0007】
又、水田作業機の他の例としての直播機の場合においても田植機の場合と同様に、作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に作溝器にて形成された溝の内部に、種籾が供給されている箇所の泥土が流れ込むと、その種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移してしまうおそれがある。
【0008】
つまり、上記従来構成では、田面に供給される苗や種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移して作業対象ラインから外れてしまうおそれがあり、この点で改善の余地があった。
【0009】
本発明の目的は、田面に供給される苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを回避して、作業対象ライン上に適正に苗又は種籾を供給することが可能となる水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水田作業機は、走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインに沿って田面に苗又は種籾を供給する供給装置と、前記作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成する施肥用作溝器と、前記施肥用溝に肥料を供給する施肥装置とが備えられているものであって、その第1特徴構成は、前記作業対象ラインの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝を田面に形成する他方側作溝器が備えられている点にある。
【0011】
第1特徴構成によれば、作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所においては、施肥用作溝器により施肥用溝が田面に形成される。一方、作業対象ラインの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所においては、他方側作溝器によって施肥用溝とは別に他方側の溝が田面に形成される。
【0012】
このように作業対象ラインの機体横幅方向他方側に施肥用溝とは別に他方側の溝が田面に形成されるから、例えば、水分が多く軟弱な圃場では、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土は施肥用溝だけでなく他方側の溝にも流れ込むことになる。つまり、泥土は片側だけに一方的に流れ出すのではなく左右両側に振り分けられた状態で流れ出すことになって、田面における苗又は種籾が供給されている箇所の表面が斜め姿勢になることを回避し易いものとなる。その結果、例えば田面上に供給されている苗が横向きに傾斜して苗の姿勢が乱れたり、田面上に供給されている種籾が適正な位置から横一側外方に位置ずれすることを防止することが可能となる。
【0013】
従って、田面に供給される苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを回避して、作業対象ライン上に適正に苗又は種籾を供給することが可能となる水田作業機を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記作業対象ラインと前記他方側の溝との間の間隔及び前記作業対象ラインと前記施肥用溝との間での間隔が略同じ間隔になる状態で、前記他方側作溝器が備えられている点にある。
【0015】
第2特徴構成によれば、作業対象ラインと他方側の溝との間での間隔と、作業対象ラインと施肥用溝との間での間隔が略同じであるから、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ込むときに、左右両側に流れ出す泥土を均等にさせ易いものになる。
【0016】
その結果、田面が軟弱であって苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ出すことがあっても、田面における苗又は種籾が供給されている箇所の表面が斜め姿勢になるおそれが少なく、苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを一層回避させ易いものとなる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記他方側作溝器が、前記施肥用溝の横幅と略同じ横幅になるように前記他方側の溝を田面に形成するように構成されている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、施肥用溝の横幅と他方側の溝の横幅とが略同じであるから、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ込むことがあっても、施肥用溝に向けて流れ出す泥土の量と他方側の溝に向けて流れ出す泥土の量とが略同じになり、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ込むときに、左右両側に流れ出す泥土を均等にさせ易いものになる。
【0019】
その結果、田面が軟弱であって苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ出すことがあっても、田面における苗又は種籾が供給されている箇所の表面が斜め姿勢になるおそれが少なく、苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することを一層回避させ易いものとなる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記他方側作溝器の田面に対する高さを変更調整自在な高さ調節手段が備えられている点にある。
【0021】
第4特徴構成によれば、高さ調節手段によって、他方側作溝器の田面に対する高さを変更することができるから、苗又は種籾が供給されている箇所の泥土が施肥用溝及び他方側の溝に流れ込むときに、左右両側に流れ出す泥土を均等にさせるために、施肥用溝の深さに対する他方側の溝の深さを調節することができる。
【0022】
従って、他方側の溝の深さを適正な深さに調節することによって、左右両側に流れ出す泥土を均等にさせることを的確に行うことができ、苗又は種籾が適正な位置から横一側に向けて偏移することをより一層回避させ易いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の全体平面図である。
【図3】施肥装置の背面図である。
【図4】苗植付装置の植付け用伝動構造を示す平面図である。
【図5】苗植付装置の一部縦断側面図である。
【図6】苗植付装置の一部側面図である。
【図7】苗植付け状態を示す田面の縦断面図である。
【図8】別実施形態の苗植付装置の一部縦断側面図である。
【図9】別実施形態の施肥用作溝器の取り付け状態を示す図である。
【図10】別実施形態の他方側作溝器と接地フロートの平面図である。
【図11】別実施形態の施肥用作溝器の取り付け状態を示す平面図である。
【図12】別実施形態の施肥用作溝器の取り付け状態を示す側面図である。
【図13】別実施形態の接地フロートと泥除け板を示す図である。
【図14】別実施形態の接地フロートの平面図である。
【図15】従来の苗植付け状態を示す田面の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る水田作業機の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明に係る水田作業機としての田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5が備えられ、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とが備えられ、走行機体3の後部には施肥装置9が備えられている。そして、走行機体3の後方には、リフトシリンダ10を備えたリンク機構11を介して苗植付装置12が昇降自在に装着されている。
【0025】
施肥装置9は、図1に示すように、肥料を貯留する透明樹脂製の肥料ホッパー13と、その肥料ホッパー13の下側に配置された4個の肥料繰出し機構14とを備え、これらの肥料ホッパー13および肥料繰出し機構14は、走行機体3の後部で、運転座席8の後側近くにおいて車体フレーム15の上部に設けた支持枠16によって支持されている。
【0026】
前記肥料繰出し機構14は、図3に示すように、ミッションケース5から後輪2に動力を伝達するように後方へ延出される伝動軸17から、横向きに動力を取り出すクランク機構18のクランク軸18aの回転運動による連係ロッド19の往復運動が、ワンウェイクラッチ20により回転運動に変換されて駆動軸21に伝えられることにより、駆動されるように構成されている。
【0027】
そして、電動ブロア22からの高圧の風が、送風ダクト23を介して肥料繰り出し機構14に供給され、高圧の風により肥料が搬送ホース24を通って施肥用作溝器25に供給され、施肥用作溝器25により田面Gに形成された溝に肥料が送り込まれて施肥作業が行われるよう構成されている。
【0028】
リンク機構11は左右一対のトップリンク26、左右一対のロアーリンク27、及び、後端の縦リンク28を備えて平行四連リンクとして構成され、縦リンク28の下端部に対して苗植付装置12が前後向き軸芯周りでローリング自在に連結されている。
【0029】
図4に示すように、苗植付装置12は、前側下部にアルミ材を押し出して成型した左右に長い角筒状の植付けフレーム29が装備され、植付けフレーム29の左右中央付近に、走行機体3からの動力を伝達するフィードケース30が連結され、植付けフレーム29の後面の左右3箇所に植付け伝動ケース31が後向き片持ち状に連結されて、各植付け伝動ケース31の後端部の左右両側に植付け機構32が装着されている。すなわち、植付け機構32は6個備えられており、各植付け機構32は、横軸芯周りで回転するロータリーケース33と、このロータリーケース33に取り付けられた植付爪34とを備えて構成されている。
【0030】
又、苗植付装置12は、マット状苗を載置し且つ図示しない横送り移動機構により一定ストロークで往復横移動する状態で支持される苗載せ台35を備えており、植付け作動時には、苗載せ台35に載置したマット状苗の下端から植付け機構32における植付爪34により苗nを1株ずつ切り出して田面Gに植え付けるよう構成されている。つまり、図4に示すように、走行機体3の進行に伴って田面Gに1株ずつの苗nを機体進行方向に適宜間隔をあけながら田面Gに植え付けることができる。
従って、前記各植付け機構32が、走行機体3の進行方向に沿う作業対象ラインLに沿って田面Gに苗nを供給する供給装置として機能することになる。
【0031】
前記植付けフレーム29の後方に植付けフレーム29と平行姿勢の植付深さ調節軸36が軸芯周りで回動自在に備えられ、この植付深さ調節軸36から後方に延設した3組のアーム37の夫々の後端部に横向き姿勢の支持軸周りで揺動自在に3つの接地フロート38,39の後部側箇所が支持され、この植付深さ調節軸36に連結する植付深さ調節レバー40をレバーガイド41に係止保持することで、植付爪34の作動軌跡Tに対する接地フロート38,39の揺動支点位置を変更して田面Gに対する苗の植付深さを調節できるよう構成されている。尚、各接地フロート38,39の前端側は一定範囲で上下揺動可能なように図示しないリンク機構により吊り下げ支持される構成となっている。
【0032】
又、図示はしないが、左右中央の接地フロート38(以下、センターフロートという場合がある)の揺動支点周りでの上下揺動量を検出するセンサの検出値が予め設定される目標値になるようにリフトシリンダ10に対する制御弁(図示せず)を切り換え操作して苗植付装置12の高さを設定値に維持する昇降制御を実行する制御装置が備えられている。
【0033】
図4に示すように、3つの接地フロート38,39は夫々、平面視で概略T字形に形成されており、前部側広幅部と後部幅狭部との間の段差部の後方において苗nを植え付けるようになっているが、中央の接地フロート38(センターフレート)及び、センターフロート38の両側に位置する接地フロート39(以下、サイドフロートという場合がある)に夫々2個ずつ施肥用作溝器25が備えられている。
【0034】
又、図4及び図6に示すように、サイドフロート39の機体横幅方向外方側箇所に、植付けフレーム29から固定延設したブラケット53に支持される状態で、走行機体3の進行に伴って、サイドフロート39にて横側に押し流された泥土が隣接する植付条に流れ込むのを防止するための泥除け板54が設けられている。
【0035】
図4に示すように、施肥用作溝器25は、前記各植付け機構32により機体進行方向に沿って苗nが植え付けられる6本の作業対象ラインLの夫々について、各作業対象ラインLの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所に位置する状態で各別に配置されて接地フロート(センターフロート38及びサイドフロート39)に固定状態で取付けられている。
【0036】
そして、前記各植付け機構32により機体進行方向に沿って苗nが植え付けられる6本の作業対象ラインLの夫々について、各作業対象ラインLの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝を田面Gに形成するもので施肥用の機能を備えていない作溝専用(左右偏移防止専用)の他方側作溝器44が各別に備えられている。
【0037】
図4に示すように、他方側作溝器44は、植付けフレーム29及びブラケット53に取り付けられて後方下方側に片持ち状に延設されており、図5に示すように、他方側作溝器44は、角パイプ材を略L字状に湾曲形成され、施肥用溝M1と略同じ横幅の他方側の溝M2(図7参照)を田面Gに形成するように、横幅寸法が施肥用作溝器25と略同じになるように構成されている。
【0038】
他方側作溝器44の下面側には、後方側ほど徐々に高さが低くなる湾曲面44Aが形成されている。他方側作溝器44の前後向きの後端部44Bは、側面視で施肥用作溝器25の下部と重複する位置に施肥用作溝器25の下端よりも上側に位置する状態で配備されている。
【0039】
他方側作溝器44の植付けフレーム29に対する取り付け構成について説明を加えると、図5に示すように、植付けフレーム29の縦面部に他方側作溝器44を構成する角パイプ材の一端部を平坦状に潰した箇所をボルトで連結する構成となっている。
【0040】
又、図7(a)に示すように、作業対象ラインLと他方側の溝M2との間の間隔P1及び作業対象ラインLと施肥用溝M1との間での間隔P2が略同じ間隔になる状態で、他方側作溝器44が備えられている。
【0041】
このように、作業対象ラインLの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝M1が田面Gに形成され、且つ、作業対象ラインLの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝M2が田面Gに形成されるので、図7(b)に示すように、水分が多く軟弱な圃場では、苗nが植え付けられている箇所の泥土は施肥用溝M1だけでなく他方側の溝M2にも流れ込むことになるから、泥土は片側だけに一方的に流れ出すのではなく、左右両側に振り分けられた状態で流れ出すので、田面Gにおける苗nが植え付けられている箇所の表面が斜め姿勢になることがなく、植え付けられた苗nが横向きに倒れて横方向に偏移する等の不利を回避できるものとなる。
【0042】
〔別実施形態〕
(1)前記他方側作溝器44としては、中実の角材を湾曲させたもの、丸パイプ材を湾曲させたもの、中実の丸棒材を湾曲させたもの、帯板を湾曲させたもの等、種々の形態で実施することができる。又、他方側作溝器44の側面視での形状としては、略L字状に湾曲形成したものに限らず、側面視でL字状又は略L字状に屈曲したものや、側面視で植付けフレーム29への連結箇所から斜め下方に直線状に延出したもの等、種々の形態で実施することができる。
【0043】
(2)上記実施形態では、他方側作溝器44を植付けフレーム29に取り付けて他方側作溝器44の田面Gに対する高さを一定に維持する構成としたが、他方側作溝器44の田面Gに対する高さを変更調整自在な高さ調節手段THを備える構成としてもよい。
【0044】
つまり、図8に示すように、植付深さ調節軸36に固定したブラケット51に他方側作溝器44を一体的に回動自在に取り付ける構成としてもよい。このように構成すると、植付け深さ調節レバー40の操作により植付け深さが変更調整されると、それに伴って、他方側作溝器44の田面Gに対する高さが変更調整されることになる。この構成では、植付け深さ調節レバー40とその操作により回動操作される植付深さ調節軸36とにより高さ調節手段THを構成する。
【0045】
このように構成すると、植付け深さ調節レバー40の操作により植付け深さが変更調整され、植付けフレーム29に対する接地フロート38の揺動支点位置が上下に位置調節されると、それに伴って他方側作溝器44の田面Gに対する高さが変更調整されるから、施肥用作溝器25と他方側作溝器44との相対高さが一定に維持されることになり、施肥用溝M1の深さと他方側の溝M2とに差が生じないものとなる。
【0046】
高さ調節手段THとしては、このような構成に代えて、植付けフレーム29に対して独立で高さ調整可能なように他方側作溝器44を支持する支持機構(図示せず)により高さ調節手段THを構成してもよい。
【0047】
例えば、上記実施形態における図5に示すように、他方側作溝器44が断面角型の植付けフレーム29の縦面部にボルトで固定されるものであれば、植付けフレーム29の縦面部あるいは他方側作溝器44の平坦状に潰された取り付け箇所に、上下方向に沿う長孔を形成して、その長孔の形成範囲にわたり植付けフレーム29に対して高さ調整可能並びにボルトで固定自在に他方側作溝器44を支持する構成としてもよい。
【0048】
又、植付けフレーム29に対して前後位置を変更調整可能なように他方側作溝器44を支持する構成としてもよい。例えば、他方側作溝器44を断面角型の植付けフレーム29の下面部にボルトで固定する構成とし、植付けフレーム29の下面部あるいは他方側作溝器44の取り付け箇所に、前後方向に沿う長孔を形成して、その長孔の形成範囲にわたり植付けフレーム29に対して位置変更可能並びにボルトで固定自在に他方側作溝器44を支持する構成としてもよい。
【0049】
(3)上記実施形態では、施肥用作溝器25が接地フロート38,39に取り付けられる構成としたが、このような構成に代えて、例えば、図9に示すように、施肥用作溝器25を植付深さ調節軸36から固定延設したアーム45に取り付け、他方側作溝器44を接地フロート38,39の底面部に取り付ける構成としてもよい。
【0050】
(4)上記実施形態では、他方側作溝器44として、角パイプを用いて1つの溝を形成するようにしたが、図10に示すように、複数の溝形成部を備えたレーキ状の他方側作溝器44を用いるようにしてもよい。
この構成では、レーキ状の他方側作溝器44を用いることにより、接地フロート38の横外側から植付爪34による苗植え付け箇所に向けて泥土が流れ込むことを防止しながら、他方側の溝M2を形成して苗植え付け箇所からの横側への泥土の流出を均等にして苗nの倒れを防止することが可能となる。
【0051】
(5)上記実施形態では、6条植え形式の苗植付装置を備える構成としたが、種々の形式の苗植付装置を備えた田植機に適用できる。例えば、8条植え形式の田植機において、次のように構成してもよい。
【0052】
図11に示すように、接地フロート38,39には、夫々2個ずつ施肥用作溝器25が備えられ、左右両端側の植立条に対応する箇所に備えられる施肥用作溝器25は、それに対応する接地フロート40(図では仮想線で示す)を設けないで、接地フロート39から固定延設した支持フレーム61にて施肥用作溝器25が支持される構成としてもよい。
ちなみに、図11では図示はしていないが、植付爪34により苗の植え付けが行われる各作業対象ラインに対して施肥用作溝器25とは反対側の横側近傍箇所に他方側作溝器44が備えられることになる。
【0053】
又、左右両端側の植立条に対応する箇所に備えられる施肥用作溝器25を支持フレームに支持するものに代えて、図12に示すように、植付深さ調節軸36から固定延設したアーム45に取り付け、さらに、このアーム45に整地板62を取り付ける構成としてもよい。
【0054】
図13に示すように、左右両端側の植立条に対応する接地フロート40を備えて、その接地フロート40に、ブラケット63を介して、横側に押し流された泥土が隣接する植付条に流れ込むのを防止するための泥除け板64を設ける構成としてもよい。又、図14に示すように、接地フロート38の横外側から植付爪34による植付け箇所に泥土が流入するのを防止する案内部64を備える構成としてもよい。
【0055】
(6)上記実施形態では、水田作業機として田植機の場合を例に説明したが、本発明は、田植機に限らず、走行機体の走行に伴って作業対象ラインに沿って種籾を田面に供給する直播装置を備え、作業対象ラインにおける機体横幅方向の横一側近傍箇所に施肥用溝を形成する施肥用作溝器が設けられる構成の直播機にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、田植機や直播機のように、走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインに沿って田面に苗又は種籾を供給するようになっており、作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成して、施肥用溝に肥料を供給するようにした水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
3 走行機体
9 施肥装置
25 施肥用作溝器
32 供給装置
44 他方側作溝器
G 田面
L 作業対象ライン
M1 施肥用溝
M2 他方側の溝
n 苗
P1,P2 間隔
TH 高さ調節手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインに沿って田面に苗又は種籾を供給する供給装置と、前記作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成する施肥用作溝器と、前記施肥用溝に肥料を供給する施肥装置とが備えられている水田作業機であって、
前記作業対象ラインの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝を田面に形成する他方側作溝器が備えられている水田作業機。
【請求項2】
前記作業対象ラインと前記他方側の溝との間の間隔及び前記作業対象ラインと前記施肥用溝との間での間隔が略同じ間隔になる状態で、前記他方側作溝器が備えられている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記他方側作溝器が、前記施肥用溝の横幅と略同じ横幅になるように前記他方側の溝を田面に形成するように構成されている請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記他方側作溝器の田面に対する高さを変更調整自在な高さ調節手段が備えられている請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の水田作業機。
【請求項1】
走行機体の進行方向に沿う作業対象ラインに沿って田面に苗又は種籾を供給する供給装置と、前記作業対象ラインの機体横幅方向一方側の横側近傍箇所において施肥用溝を田面に形成する施肥用作溝器と、前記施肥用溝に肥料を供給する施肥装置とが備えられている水田作業機であって、
前記作業対象ラインの機体横幅方向他方側の横側近傍箇所において他方側の溝を田面に形成する他方側作溝器が備えられている水田作業機。
【請求項2】
前記作業対象ラインと前記他方側の溝との間の間隔及び前記作業対象ラインと前記施肥用溝との間での間隔が略同じ間隔になる状態で、前記他方側作溝器が備えられている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記他方側作溝器が、前記施肥用溝の横幅と略同じ横幅になるように前記他方側の溝を田面に形成するように構成されている請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記他方側作溝器の田面に対する高さを変更調整自在な高さ調節手段が備えられている請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の水田作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−234674(P2011−234674A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109300(P2010−109300)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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