説明

水田作業機

【課題】貯留タンクに補給容器から肥料を補給する際の手間を軽減する。
【解決手段】貯留タンク35にタンク外壁に支持される保持フレームFを備えた。この保持フレームFは貯留タンク35の補給口35Cの内部に、補給容器60の排出口61を嵌め込む形態で、補給容器60を支持する構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留タンクに貯留されている液状の肥料又は薬剤を、走行機体の走行に伴い繰出機構で繰り出し、圃場に送り出す供給装置を備えている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された水田作業機として特許文献1には、走行機体の前部位置の左右の予備苗載収容装置(本発明の予備苗載台)の下側に肥料タンク(本発明の貯留タンク)を備え、この肥料タンクに貯留されているペースト肥料を送り出す側条施肥ポンプを走行機体の後部に備え、この側条施肥ポンプから送られる肥料を圃場の泥土内に供給する側条施肥ノズルを整地フロートに備えた構成が示されている。
【0003】
この特許文献1では、肥料タンクが前後方向に移動自在に支持され、肥料タンクに肥料を補給する場合には、肥料タンクを前方に引き出すことで予備苗収容装置と干渉することなく肥料の補給を行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐298121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貯留タンクに対して肥料又は薬剤を補給容器から補給する際には、貯留タンクの上部の供給部の蓋を開放した状態で補給容器に収容された肥料又は薬剤を供給部に対して流し込む作業形態となる。
【0006】
具体的な作業形態として、排出用の排出口が上部に形成された補給容器を用いる場合には、この補給容器の上下を逆にして(上下を反転させて)、この排出口を、貯留タンクの供給口の上方に配置する位置関係で補給が行われる。しかしながら、ペースト肥料のように粘性の高い肥料を補給する場合には、補給容器から肥料を流し出すために長時間を必要とするため、補給容器を長時間に亘って支持する必要があった。
【0007】
このような補充形態において補給容器を人為的に支持する場合には、作業者が長時間に亘って補給容器を持ち続ける必要があるため、作業者を疲労させることに繋がることになり改善の余地があった。
【0008】
本発明の目的は、貯留タンクに補給容器から肥料又は薬剤を補給する際の手間を軽減する水田作業機を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、貯留タンクに貯留されている液状の肥料又は薬剤を、走行機体の走行に伴い繰出機構で繰り出し、圃場に送り出す供給装置を備えている水田作業機であって、
前記貯留タンクにおいて上方に開放する補給口に対し、補給容器の排出口から自重により排出される前記肥料又は薬剤を導入する際に、前記補給口と前記排出口との相対的な位置関係を維持した状態で前記補給容器を保持する保持フレームを備えている点にある。
【0010】
この構成によると、貯留タンクに補給容器の肥料又は薬剤を補給する場合には、補給容器を保持フレームに保持することにより、補給容器の排出口から自重によって排出される肥料又は薬剤を貯留タンクの補給口に送り込む状態を維持できることになり、作業者が補給容器を人為的に保持する必要がない。
従って、貯留タンクに補給容器から肥料又は薬剤を補給する際の手間を軽減する水田作業機が構成された。
【0011】
本発明は、前記補給口の内部に前記排出口が嵌り込む位置関係を維持するように前記保持フレームによる前記補給容器の保持位置が設定され、前記保持フレームが、前記貯留タンクの前記補給口の近傍に位置するタンク外壁に支持されても良い。
【0012】
これによると、この保持フレームに補給容器を支持することで、補給口の内部に補給容器の排出口を嵌り込む位置に維持し、排出口の外部に肥料がこぼれ出る不都合を招くことなく補給できる。また、貯留タンクのタンク外壁に対して保持フレームが支持されているので、補給口と排出口との相対的な位置関係を変化させることなく補給容器の位置を維持できる。
【0013】
本発明は、前記保持フレームが、棒状材で構成されても良い。
【0014】
これによると、保持フレームを軽量化し、雨水の排出を良くし、塵埃が保持フレームの表面に付着する現象も抑制できる。
【0015】
本発明は、圃場面に苗を移植する苗植付装置が前記走行機体に備えられ、前記苗植付装置に使用する苗を載置する予備苗載台を支持するように前記走行機体の前部位置に縦向き姿勢の支柱状フレームが備えられ、この支柱状フレームに前記貯留タンクが支持されても良い。
【0016】
これによると、予備苗載台を支持する支柱状フレームに貯留タンクを支持することにより、この貯留タンクを支持するための専用のフレームを備えずに済み、貯留タンクの支持構成の小型化、軽量化が実現する。
【0017】
本発明は、前記保持フレームと、前記支柱状フレームとを連結する補強フレームを備えても良い。
【0018】
これによると、保持フレームを支柱状フレームに対して補強フレームにより連結することにより、保持フレームを貯留タンクのみに支持する構成と比較して、保持フレームの姿勢を安定させ、補給容器の保持姿勢を安定させ、安定的な補給を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の全体平面図である。
【図3】田植機の前部の正面図である。
【図4】田植機の前部の側面図である。
【図5】展開姿勢に設定された予備苗載置ユニットの側面図である。
【図6】補給容器を保持した状態の保持フレームと貯留タンクとの断面図である。
【図7】保持フレームと貯留タンクとを示す斜視図である。
【図8】図6のVIII−VIII線の断面図である。
【図9】増量タンクの配置を示す正面図である。
【図10】増量タンクの支持構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを有した走行機体Aの中央に運転座席3を配置し、走行機体Aの後端にリンク機構Lを介して苗植付装置Bを昇降自在に連結し、走行機体Aの前部位置の両側部に予備苗載置ユニットCを備え、この予備苗載置ユニットCの下側に配置され貯留タンク35に貯留されたペースト肥料(以下、肥料と略称する)を圃場面に供給する施肥装置D(供給装置の一例)を備えて水田作業機の一例としての乗用型田植機が構成されている。
【0021】
この乗用型田植機は、走行機体Aの前部のボンネット4の内部にエンジンEが配置され、このエンジンEの下方にエンジンEからの動力が伝えられるミッションケース5を備え、このミッションケース5から左右の前車輪1と左右の後車輪2とに伝える走行駆動系を備え、走行機体Aの走行速度と同期した駆動力を外部出力軸6を介して苗植付装置Bに伝える作業伝動系を備えている。
【0022】
運転座席3の前方位置には、左右の前車輪1を操向操作(操舵)するステアリングホイール7が配置され、このステアリングホイール7の左側部には、主変速レバー8が配置され、運転座席3の近傍には、苗植付装置Bの昇降とミッションケース5に内蔵した植付クラッチ(図示せず)の断続を行う昇降レバー9が配置されている。
【0023】
リンク機構Lは、複数のリンク部材11を有すると共に、油圧式の昇降シリンダ12を有しており、昇降シリンダ12の伸縮作動により苗植付装置Bの姿勢を維持したまま昇降を行う。
【0024】
苗植付装置Bは、複数の整地フロート14と、マット状苗Wを載置する苗載台15と、苗載台15に載置されたマット状苗Wから苗を切り出して圃場面に植え付けるロータリ式の複数の植付機構16とを備えている。この構成から苗植付け作業時には、走行機体Aの走行に伴い複数の整地フロート14が苗植え付け箇所の泥面を整地する一方で、外部出力軸6から伝えられる駆動力により、苗載台15を左右方向に一定ストロークで往復作動させ、この往復作動時に苗載台15のマット状苗Wの下端から植付機構16が苗を所定量ずつ切り出して圃場に植え付ける植え付け作動が行われる。
【0025】
運転座席3の下方位置にステップ21が形成されると共に、ボンネット4の左右の両側部にはステップ21に連なり走行機体Aの前端位置に達する搭乗フロア22が形成されている。また、ステップ21と搭乗フロア22との外側には、これらと同じレベルとなる拡張ステップ23が備えられている。
【0026】
〔予備苗載置ユニット〕
ボンネット4の外側の搭乗フロア22の両外側位置に縦向き姿勢となる一対の支柱状フレーム25が備えられ、この支柱状フレーム25に対して等しい構造の4つの予備苗載台Caを備えて予備苗載置ユニットCが構成されている。左右位置に一対ずつ配置される支柱状フレーム25は、その基端部が走行機体Aの前部位置の機体フレーム20に強固に連結固定され、4つの予備苗載台Caは、図1、図3に示す如く、平面視で夫々が上下に重なり合う重複姿勢と、図5に示す如く、下段の3つの予備苗載台Caが平面視で夫々が前後向きに直線状で前後に隣接する展開姿勢とに切換自在に構成されている。
【0027】
重複姿勢において、上下に並ぶ予備苗載台Caの上端のものを1段目と称し、これより下側のものを順次、2段目、3段目、4段目と称すると、展開姿勢では1段目と3段目との予備苗載台Caが支柱状フレーム25に対し固定ブラケット26により固定状態で支持され、2段目と4段目との予備苗載台Caが着脱ブラケット27を介して支柱状フレーム25に対し着脱自在に備えられている。また、3段目の予備苗載台Caの前部位置に前部連結片28を備え、後部位置に後部連結片29を備えると共に、2段目の予備苗載台Caの後端位置に後部連結片29を備え、4断面の予備苗載台Caの前端位置に前部連結片28を備えている。
【0028】
前部連結片28と後部連結片29とは、前部連結片28に備えられた横向き姿勢のピン30を介し連結及び分離自在に構成され、予備苗載置ユニットCを展開姿勢に切り換える場合には、2段目の予備苗載台Caを支柱状フレーム25から取り外し、その後部連結片29を3段目の予備苗載台Caの前部連結片28のピン30に係合させる形態で連結し、4段目の予備苗載台Caを支柱状フレーム25から取り外し、前部連結片28のピン30を3段目の予備苗載台Caの後部連結片29に係合させる形態で連結する操作を行うことになる。
【0029】
4つの予備苗載台Caには、マット状苗Wを収容した1つの育苗箱(図示せず)や苗すくい板(図示せず)を載置可能し得る幅及び長さとなるサイズに形成され、育苗箱に収容された状態、あるいは、苗すくい板に載せ付けられたマット状苗を載置することにより、作業時に苗載台15に対してマット状苗Wの補給を容易に行えるようにする。
【0030】
〔施肥装置〕
図1に示す如く、供給装置としての施肥装置Dは、予備苗載台Caの下側に備えられる左右の貯留タンク35と、この前方位置に備えられる左右の増量タンク36と、左右の貯留タンク35の下側に配置したポンプユニット37(繰出機構の一例)と、このポンプユニット37から送り出される肥料を送るホース38と、このホースで送られる肥料を圃場の泥面下に供給するように整地フロート14に支持される施肥ノズル39とを備えて構成されている。
【0031】
この田植機は8条植用に構成され、8条に植付られる苗の近傍の泥土中に施肥を行うように施肥ノズル39は8つ備えられ、左側のポンプユニット37から左側の4つの施肥ノズル39に対してホース38により肥料を送り出し、これと同様に、右側のポンプユニット37から右側の4つの施肥ノズル39に対してホース38により肥料を送り出すように施肥形態が設定されている。
【0032】
この施肥装置Dは、走行機体Aの走行時にポンプユニット37を駆動する駆動系を備えており、苗植付装置Bが圃場面に対して苗を植え付ける作業時に施肥ノズル39から圃場面下の泥土中に肥料を送り出す形態で施肥を行う。
【0033】
貯留タンク35は樹脂で形成されるものであり、図6、図7に示すように、下面に縦姿勢の連結リブ35Aを形成し、前部には上方に開放する筒状となる補給口35Cを形成している。一対の支柱状フレーム25の下部位置には、水平姿勢で外方に突出する一対の連結ブラケット41が平行姿勢で備えられ、この一対の連結ブラケット41に載せ付ける位置に貯留タンク35が配置され、この貯留タンク35の連結リブ35Aと連結ブラケット41とに挿通する連結ボルト42によって連結ブラケット41に貯留タンク35を締結する形態で、貯留タンク35が支持されている。また、補給口35Cを開閉する蓋体33が、補給口35Cの後部位置のヒンジ33Aにより開閉自在に支持され、この蓋体33を閉じ姿勢の維持するバックル33Bが補給口35Cの前部位置に備えられている。
【0034】
貯留タンク35の下面には貯留タンク35の底壁の排出開口35Dに接続する状態で下方に突出する供給管34が備えられている。また、貯留タンク35の底壁の内面は、図8に示すように、幅方向の中央位置に前後方向に溝状部35Bが形成され、底壁の内面を自重によって流れる肥料を余すことなく排出開口35Dに送り、供給管34から送り出せるように構成されている。図4、図7に示すように、供給管34の中間から横方向に伸びる分岐管34Aが形成され、貯留タンク35からの肥料は分岐管34Aからポンプユニット37に供給される。この供給管34の下端には着脱自在にキャップ34Bが取付られ、作業の終了時のように貯留タンク35の肥料を排出する場合には供給管34の下端のキャップ34Bを取り外して、タンク内の肥料の全てを排出できるように構成されている。
【0035】
増量タンク36は樹脂で形成されるものであり、図4、図9、図10に示すように、下面に縦向き姿勢の保持リブ36Aが形成され、後面位置には後方に突出する縦向き姿勢の保持リブ36Aが形成され、上部には上方に開放する供給口36Cが形成されている。また、増量タンク36の上部には供給口36Cを開閉する着脱型の蓋部材51を備え、この増量タンク36の下部の側面には側方に突出する排出筒52が形成され、この排出筒52には、増量タンク36の肥料を供給管34の中間位置に供給する供給ホース53が連通する状態で接続している。
【0036】
このように、増量タンク36の供給ホース53が供給管34の中間位置に接続しているため、貯留タンク35に貯留される肥料の液面レベルと、増量タンク36に貯留される肥料の液面レベルとは等しくなる。そして、貯留タンク35の肥料と増量タンク36の肥料とをポンプユニット37に供給して施肥を行うことが可能となり、作業の終了時のように肥料を排出する場合には供給管34の下端のキャップ34Bを取り外すことにより、貯留タンク35に残存する肥料と、増量タンク36に残存する肥料とを供給管34の下端から排出できるように構成されている。
【0037】
図9、図10に示すように、走行機体Aの前端位置に左右の増量タンク36を支持するステー45が備えられている。このステー45はパイプ材が用いられ、中央に水平姿勢となる固定部45Aを形成し、この固定部45Aの左右両端側に斜め上方に持ち上がる傾斜姿勢のアーム部45Bを形成し、このアーム部45Bの外端位置に水平姿勢の支持部45Cを形成している。このステー45の固定部45Aが機体フレーム20に連結され、ステー45の左右のアーム部45Bを繋ぐ位置に補強ステー46を備えている。ステー45の左右の支持部45Cには横長姿勢の保持ブラケット47と、縦長姿勢の保持アーム48とが備えられている。また、前部位置の支柱状フレーム25に備えられる連結ブラケット41と保持ブラケット47とが連結体49によって連結されている。
【0038】
増量タンク36は、保持ブラケット47に底部が受け止められる姿勢で支持され、下面の保持リブ36Aを保持ブラケット47に対して保持ボルト54で締結し、上部の保持リブ36Aを保持アーム48の上端に対して保持ボルト54で締結することで保持姿勢を安定させている。
【0039】
〔保持フレーム〕
図4、図6、図7に示すように、貯留タンク35に対して補給容器60から肥料を補給する際に補給容器60の排出口61を貯留タンク35の補給口35Cに上方から嵌め込んだ姿勢を維持するように、貯留タンク35と補給容器60との相対的な位置関係を維持して保持する保持フレームFが貯留タンク35に備えられている。補給容器60は箱状であり、保持フレームFは、貯留タンク35のタンク外壁に支持される複数の棒状材を用いて箱状の補給容器60を受け止めるように構成されている。
【0040】
つまり、保持フレームFは、補給容器60に接触する状態で受け止める前後向き姿勢の左右一対の接触ロッド73を、補給口35Cの両側位置で開口縁と略等しいレベルで備え、補給容器60の側壁に接触する位置に配置される横向き姿勢の規制ロッド72を接触ロッド73の前端位置より高い位置に備え、この接触ロッド73と規制ロッド72とを接続する支持ロッド71を備えて構成されている。
【0041】
左右一対の接触ロッド73の前端部分は接続部73Aによって一体化するように接続しており、この接続部73Aはバックル33Bの上部位置で貯留タンク35の外壁面に接触状態で支持されている。また、左右一対の接触ロッド73の後端部分はヒンジ33Aに嵌め込む状態で支持されている。支持ロッド71は、その前端部に縦向き姿勢となる縦ロッド部71Aを形成し、この縦ロッド部71Aの上端を規制ロッド72に連結し、その後端部が接触ロッド73に連結している。特に、左右の支持ロッド71のうち機体外方に位置するものの中間位置が貯留タンク35の前部の上面に接触している。
【0042】
規制ロッド72の両端部分を、補給容器60が収容される幅の位置で後方に向けて折り曲げて横規制部72Aが形成され、この横規制部72Aの後端部を下方に折り曲げ、更に、接触ロッド73に向かう方向に折り曲げて形成される屈折部72Bを接触ロッド73と同じレベルで接触ロッド73に連結している。更に、前後の支柱状フレーム25を連結する連結フレーム31と、接触ロッド73とを補強フレーム74で連結することで保持フレームFを強固に支持して姿勢を安定させている。
【0043】
貯留タンク35の補給口35Cは、機体前方側が低いレベルとなる傾斜姿勢で形成され、この傾斜姿勢と平行するように保持フレームFも全体的に傾斜しており、補給容器60は排出口61を下側にして傾斜姿勢で保持フレームFに保持した保持状態では、貯留タンク35の補給口35Cの内部に補給容器60の排出口61が嵌め込まれる相対的な位置関係となるように補給容器60の保持位置が設定されている。
【0044】
従って、補給容器60に貯留されている肥料を貯留タンク35に補給する場合には、排出口61を下側に向けて保持フレームFに支持することで、この補給容器60のうち排出口61が形成された外壁(保持状態で底部となる外壁)が接触ロッド73と補給口35Cの開口縁に接触すると共に、補給容器60の側壁のうち前側のものが規制ロッド72に接触し、この側壁に連なる左右の側壁が横規制部72Aで挟み込む形態で接触する状態となり、補給容器60は安定的に支持される。また、保持フレームFは、左右の接触ロッド73の後端がヒンジ33Aに支持され、この接触ロッド73の接続部73Aが貯留タンク35の外壁の上面に接触し、一方の支持ロッド71が貯留タンク35の外壁の上面に接触しているため、補給容器60の重量が作用する場合にも、その重量を貯留タンク35で受け止めさせ、この保持フレームFの姿勢を安定的に保持する。
【0045】
尚、補給容器60は、柔軟に変形し得る素材を用いた袋状に形成されたものでも良い。また、保持フレームFは、補給容器60の排出口61を基準にして、この鉛直下方の位置に貯留タンク35の補給口35Cが配置される位置関係に保持する構成でも良い。このように保持フレームFを構成したものでも、排出口61から排出された肥料が貯留タンク35の補給口35Cに対して直接的に供給できることになる。
【0046】
〔実施形態の作用・効果〕
このような構成から、貯留タンク35に対して補給容器60からペースト状の肥料を補給する場合には、貯留タンク35の蓋部材51を開放しておき、排出口61を下向きにして補給容器60を保持フレームFに支持することで、貯留タンク35の補給口35Cの内部に補給容器60の排出口61を嵌め込むように保持位置が設定される。このような位置関係に維持されることから、肥料が排出口61の外部にこぼれ出ることがなく、粘性の高い肥料のように補給容器60の排出口61から排出されるに時間を要する場合でも、作業者が補給容器60を長時間支持する等の手間を掛けずに済み、楽な作業を実現する。
【0047】
また、保持フレームFが、貯留タンク35に支持され、この保持フレームFで補給容器60を嵌め込む状態で支持するため、補給容器60の重量を貯留タンク35に受け止めて安定的な支持が実現する。また、保持フレームFが複数の棒状材で構成されているので、保持フレームFの軽量化を実現し、雨水や塵埃が保持フレームFに付着する不都合も抑制される。
【0048】
走行機体Aの前部位置の左右の予備苗載置ユニットCの予備苗載台Caの下側の空間を有効に利用して貯留タンク35を配置しており、予備苗載台Caを支持する支柱状フレーム25に貯留タンク35を支持することで、貯留タンク35を支持するための専用の大型のフレームを用いずに済む。また、保持フレームFが補強フレーム74により支柱状フレーム25に連結する構造を有しているので、保持フレームFの支持強度を高めることになり、貯留タンク35を一層安定的に支持できる。
【0049】
貯留タンク35からポンプユニット37に肥料を供給する供給管34に対して、増量タンク36の内部空間に連通する供給ホース53が接続しており、貯留タンク35と増量タンク36との底壁のレベルが略等しく設定されているので、貯留タンク35に肥料を補給した場合には、肥料が貯留タンク35に貯留されると同時に供給ホース53を介して増量タンク36にも供給され、この増量タンク36に対して肥料の補給を行わずに済む構成となっている。また、作業を終了した場合には供給管34のキャップ34Bを取り外すことで、貯留タンク35に貯留されている肥料と増量タンク36に貯留されている肥料とを同時に排出することも可能となる。
【0050】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
(a)貯留タンク35を走行機体Aの後部に配置する。このように配置した場合にも、保持フレームFを備えることで肥料の補給を容易にする。
【0051】
(b)走行機体Aに薬剤散布装置を備えた水田作業機の貯留タンク35に保持フレームFを備える。このように構成することにより、保持フレームFに補給容器60を保持することで、薬剤の粘性が高くとも、補給時の手間を軽減できる。尚、供給装置として薬剤散布装置を走行機体Aに備えた水田作業機において、別実施形態(a)で説明したように貯留タンク35を走行機体Aの後部に配置し、貯留タンク35に保持フレームFを備えることで薬剤の補給を容易にする。
【0052】
(c)肥料又は薬剤として、粘性が低い液状の肥料又は薬剤を用いる。粘性に拘わらず貯留タンク35に肥料又は薬剤を補給する作業は重労働であり、貯留タンク35に保持フレームFを備えることで作業者の作業を軽減する。
【0053】
(d)増量タンク36を備えずに施肥装置D又は薬剤散布装置を構成する。増量タンク36を備えないことにより増量タンク36を支持するためのフレーム類を必要とせず、走行機体Aの軽量化、小型化が実現する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、貯留タンクに貯留されている肥料又は薬剤を圃場に供給する供給装置を備えている作業機全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
25 支柱状フレーム
35 貯留タンク
35C 補給口
37 繰出機構(ポンプユニット)
60 補給容器
61 排出口
74 補強フレーム
A 走行機体
B 苗植付装置
Ca 予備苗載台
D 供給装置(施肥装置)
F 保持フレーム
W 苗(マット状苗)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留タンクに貯留されている液状の肥料又は薬剤を、走行機体の走行に伴い繰出機構で繰り出し、圃場に送り出す供給装置を備えている水田作業機であって、
前記貯留タンクにおいて上方に開放する補給口に対し、補給容器の排出口から自重により排出される前記肥料又は薬剤を導入する際に、前記補給口と前記排出口との相対的な位置関係を維持した状態で前記補給容器を保持する保持フレームを備えている水田作業機。
【請求項2】
前記補給口の内部に前記排出口が嵌り込む位置関係を維持するように前記保持フレームによる前記補給容器の保持位置が設定され、前記保持フレームが、前記貯留タンクの前記補給口の近傍に位置するタンク外壁に支持されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記保持フレームが、棒状材で構成されている請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】
圃場面に苗を移植する苗植付装置が前記走行機体に備えられ、前記苗植付装置に使用する苗を載置する予備苗載台を支持するように前記走行機体の前部位置に縦向き姿勢の支柱状フレームが備えられ、この支柱状フレームに前記貯留タンクが支持されている請求項1から3のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項5】
前記保持フレームと、前記支柱状フレームとを連結する補強フレームを備えている請求項4記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−55909(P2013−55909A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196251(P2011−196251)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】