説明

汎用型コンバイン

【課題】本発明では、機体の一部に簡単なステップを設けることで機体の上側に搭乗できるようにして、コンバインの製造コストを低減することを課題とする。
【解決手段】機体の前方に刈取穀稈集送装置を内装した刈取装置(11)を設け、該刈取装置(11)の後方に脱穀装置(4)と操縦席を内装するキャビン(5)を設け、前記刈取装置(11)と脱穀装置(4)との間に搬送装置を内装した搬送ケース(9)を設け、刈取装置(11)上への乗り降り用のステップ(10)を、刈取装置(11)の後面の搬送ケース(9)よりも外側の部位に設けたことを特徴とする汎用型コンバインとした。また、刈取装置(11)を機体から離脱した状態において、ステップ(10)が刈取装置(11)の支持脚となる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、穀粒や大豆等を収穫する汎用型コンバインで、操縦席以外の機体上に搭乗するための昇降用ステップ取り付け構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汎用型コンバインは、非常に大型であって機体の上側からの保守点検や修理のためには機体上に作業者が搭乗して作業を行う必要があり、機体の上側へ搭乗のための梯子が設けられている。
【0003】
例えば、特開2006−25696号公報には、機体前方の刈取掻込装置から脱穀装置へ収穫物を搬送するフィーダハウスの外側面に梯子を設けたり、収穫物を貯留するグレンタンクの外側面に梯子を設けて、機体の上側に作業者が登れるようにした構造が記載されている。
【特許文献1】特開2006−25696号公報(7頁第7行から同頁第12行、7頁第32行から9頁第13行、図1、図2、図25、図26、図27参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のコンバインの機体上に搭乗するための構成は、左右一対の支柱片と両支柱片間に上下方向に間隔を開けて横架した複数のステップ片からなる梯子を固定或いは使用時に引き出すように設けている。このために、普段は使用することの無い単なるメンテナスのための構造でありながら製造コストがかかっている。
【0005】
そこで、本発明では、機体の一部に簡単なステップを設けることで機体の上側に搭乗できるようにして、コンバインの製造コストを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明では、機体の前方に刈取穀稈集送装置を内装した刈取装置(11)を設け、該刈取装置(11)の後方に脱穀装置(4)と操縦席を内装するキャビン(5)を設け、前記刈取装置(11)と脱穀装置(4)との間に搬送装置を内装した搬送ケース(9)を設け、刈取装置(11)上への乗り降り用のステップ(10)を、刈取装置(11)の後面の搬送ケース(9)よりも外側の部位に設けたことを特徴とする汎用型コンバインとした。
【0007】
この構成で、作業者がステップ10と刈取装置11及び搬送ケース9を使って機体上に搭乗することが可能になる。
請求項2記載の発明では、刈取装置(11)を機体から離脱した状態において、前記ステップ(10)が刈取装置(11)の支持脚となる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の汎用型コンバインとした。
【0008】
この構成で、刈取装置11を取り外す際に新たな支脚を用意する必要が無い。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、刈取装置11に簡単なステップ10を設ける構成で、作業者が容易に機体上に搭乗出来て、構成が簡単で製造コストが低減する。
請求項2記載の発明によると、刈取装置11の取り外し作業が新たに支脚を用意しなくて良く、簡単に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
本明細書では、左側及び右側とはコンバイン1が前進する方向に向いたときの方向を言う。
【0011】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、汎用型コンバイン1は、図2に示すように、クローラ2を装備した車台3上に、茎稈供給口を前側にした脱穀装置4と操縦席を内装するキャビン5を左右に搭載し、キャビン5の後側に収穫物を溜めるグレンタンク6を搭載している。
【0012】
車台3の前側には、脱穀装置4とキャビン5を合わせた横幅を持つ刈取掻込ケース(刈取装置)11を設け、この刈取掻込ケース11の茎稈排出口と脱穀装置4の茎稈供給口をベルトコンベアを内装した搬送ケース9で連結している。
【0013】
脱穀装置4は、上部に螺旋式扱胴を前後方向に軸架して下側に選別網を張設した扱室を配置し、その下側には、揺動選別棚を設け、更に、その下方に、選別方向の上手側から順番に、圧風唐箕、一番移送螺旋、二番移送螺旋を軸装し、後部下方に排塵口を開口した選別室を設けて構成し、螺旋式扱胴の前下方に設ける茎稈供給口に供給される収穫物を脱穀しその穀粒を選別しグレンタンク6に溜める。
【0014】
キャビン5内には、オペレータが搭乗して座る座席とクローラ2の操縦を行う操縦装置と脱穀装置4の駆動断続を行う脱穀制御装置を設けている。
グレンタンク6は、脱穀装置4で選別した穀粒を一時的に溜める中空ケースで、溜めた穀粒を排出オーガ7でトラックの穀粒タンクへ移送するようにしている。なお、このグレンタンク6の内部構造は後で詳しく説明する。
【0015】
刈取掻込ケース11は、前記の如く機体横幅と略同じ横長で前上方に供給口を形成したケースで、図2に示すように、前下部に刈刃12を設け、刈取掻込ケース11の中央後寄りに掻込オーガ(刈取穀稈集送装置)17を横架して設けている。この掻込オーガ17は、刈刃12で刈り取った茎稈付の収穫物を集めて中央よりやや左後側に設ける茎稈排出口に送る。刈取掻込ケース11内の刈刃12前方には収穫物を引起すデバイダ13を突設し、このデバイダ13と刈刃12の上方に掻込リール14を設けている。
【0016】
掻込リール14は、側枠20の周囲六角位置に横架した横杆21に所定間隔でタイン22を吊り下げ、側枠20の支軸23を回転してタイン22で収穫物の茎稈を掻込オーガ17へ送り込む作用をする。この掻込リール14は、刈取掻込ケース11の後上端から前方へ延ばすガイドフレーム18上にスライド可能に設け、ガイドフレーム18の後部に前後揺動可能に設けるリール前後アーム19に連結ロッド15で連結し、リール前後アーム19の上端に設ける横杆16を作業者が持って前後に揺動して固定することでこの掻込リール14が前後に位置を変えることが出来る。
【0017】
タイン22は、図4に示す如く、下端の幅Bが狭く上端の幅Aが広く下方から上に向かってテーパ状に広げている。各タイン22の上端での間隔Cはタイン22の上端幅Aよりも狭い関係の横間隔で横杆21に配置している。このようなタイン22の形状と配置関係で大豆等の茎稈が良く掻きこまれ、掻込オーガ17で跳ねる大豆粒がタイン22の幅広部分で跳ね返して外部へ飛散することを防がれる。
【0018】
横杆21には板状の取付板27を溶接し、この取付板27にナット24をスポット溶接し、タイン22の取付孔を該ナット24に外嵌して座金26でタイン22の取付孔の周囲を押えてボルト25をナットに締め込んで固定している。このようなタイン22の取付構造で、樹脂製のタイン22を無理に締め込んで破損することなく、ボルトが緩むことも無く、取付板27の取付反対側に突起が少なくなって茎稈の引掛りが無くなる。
【0019】
掻込オーガ17を横架する刈取掻込ケース11は、後面の茎稈排出口を除く部分と底面部を板面で覆い、掻込リール14で掻込オーガ17上に押し込まれる収穫物の茎稈が茎稈排出口へ向かって送られる。
【0020】
搬送ケース9の外側で掻込リール14の後面の上下中間位置に後方へ向けてステップ10を突設している。このステップ10は、上下逆に取り付けると刈取掻込ケース11を取り外した際に後側支脚として利用出来る。また、刈取掻込ケース11の後低部に第二刈刃を下側の刈作用位置と上側の収納位置に移動固定可能に設けることがあるが、その時もステップ10が邪魔になることがない。
【0021】
このステップ10は作業者がコンバインの機体上に登る際にはステップ10に片足をかけてリール前後アーム19の横杆16を握って身体を引き上げる。作業者は刈取掻込ケース11の上に上がってから搬送ケース9の上面を歩いて脱穀装置4の上に登って点検修理等の作業を行う。
【0022】
図5と図6は、脱穀装置4で脱穀された収穫物(穀粒)を溜めるグレンタンク6の構造を示している。このグレンタンク6は、上面を上板30で覆い、左右側面を左側板31と左傾斜板33及び右側板32と右傾斜板34で覆い、前後側面を前側板36と前傾斜板38及び後側板35と後傾斜板37で覆い、右側板32の上部に設けるシュート41の供給口47を開口し、底部に設けた取出口39のシャッタ46を開閉可能に設けている。
左傾斜板33と右傾斜板34と前傾斜板38及び後傾斜板37は、取出口39に向けて収穫物が滑り落ちる安息角以上の傾斜面として収穫物が残らないようにしている。
【0023】
供給口47の下側に下方へ向かって下り傾斜させて収穫物をタンク中央側へ案内するガイド板43を設け、その下側に満杯センサ45を下側に取り付けたセンサ取付板44を右側板32の内面に取り付けている。このような満杯センサ45の取付構造で収穫物供給時の誤作動を防止している。
【0024】
シュート41には、脱穀装置4の揚穀筒42から収穫物が供給され、取出口39のシャッタ46を開くと、収穫物がグレンブロア40で排出オーガ7へ送られ、外部へ取出される。
【0025】
図7と図8は、前記グレンタンク6の別実施例構成で、容量を増やすために、後傾斜板37を無くし後側板35を底部まで延長させた構成で、従来の後傾斜板37の下方に残留する収穫物を残さず取出口39へ送るために底部に送り螺旋48を設けている。この送り螺旋48は、残留センサ50が収穫物の溜まりがなくなったことを感知すると駆動される。また、送り螺旋48の底部を覆う螺旋底49は開閉可能にして、内部の掃除や点検を行えるようにしている。
【0026】
図9は、送り螺旋48の近くと取出口39の近くで左傾斜板33に開閉可能に補助取出口51,52を設けて、内部点検と送り螺旋48の故障時に収穫物を取出せるようにしている。
【0027】
図10は、左傾斜板33の下り傾斜角を緩くして容量増加を図った構成で、左傾斜板33の外側へ偏心回転して振動を発生する加振装置53を取り付け、残留センサ50が上の収穫物がなくなったことを感知すると駆動される。なお、加振装置53の代わりにグレンブロア40の吸気パイプを左傾斜板33に接近させて設けて吸気時の脈動で左傾斜板33を振動させる構成でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】汎用型コンバインの全体平面図
【図2】コンバインの一部側面図
【図3】一部の拡大側面図
【図4】一部の拡大正面図
【図5】一部の拡大側面図
【図6】一部の拡大正面図
【図7】別実施例の一部拡大側面図
【図8】別実施例の一部拡大背面図
【図9】別実施例の一部拡大側面図
【図10】別実施例の一部拡大背面図
【符号の説明】
【0029】
4 脱穀装置
5 キャビン
9 搬送ケース
10 ステップ
11 刈取掻込ケース(刈取装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前方に刈取穀稈集送装置を内装した刈取装置(11)を設け、該刈取装置(11)の後方に脱穀装置(4)と操縦席を内装するキャビン(5)を設け、前記刈取装置(11)と脱穀装置(4)との間に搬送装置を内装した搬送ケース(9)を設け、刈取装置(11)上への乗り降り用のステップ(10)を、刈取装置(11)の後面の搬送ケース(9)よりも外側の部位に設けたことを特徴とする汎用型コンバイン。
【請求項2】
刈取装置(11)を機体から離脱した状態において、前記ステップ(10)が刈取装置(11)の支持脚となる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の汎用型コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−33976(P2009−33976A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198348(P2007−198348)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】