説明

油圧作業機の制御装置

【課題】混入した異物による油圧信号の誤検出に基づいて電動アクチュエータが誤動作することを抑制できる油圧作業機の制御装置を提供する。
【解決手段】油圧シリンダ3c及び電動モータ16の双方の駆動を制御するために利用される油圧信号を出力する操作装置4Bを備える油圧作業機において、操作装置4Bからの油圧信号の圧力を検出してこれに対応する電気信号を出力する圧力センサ86d1,86d2と、圧力センサ86d1,86d2からの電気信号の入力を受けて電動モータ16の駆動を制御する電気制御部11Cと、圧力センサ86d1,86d2で検出されるΔt当たりの圧力変化量ΔPが設定値Aを超えたとき、圧力センサ86d1,86d2から電気制御手段11Cに出力される電気信号に対し、第2周波数fc2より高い周波数を減衰するローパスフィルタ処理を施すフィルタ部11Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置から出力される油圧信号に基づいて電動アクチュエータを制御する油圧作業機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧アクチュエータと電動アクチュエータを併有する油圧ショベル等の油圧作業機には、油圧アクチュエータと電動アクチュエータを共通の操作装置で制御可能にしたものがある。この種の油圧作業機としては、操作装置の操作に応じて出力される油圧信号(作動油)が通過する複数のパイロット管路(パイロットライン)のうち一部のものの終端に圧力センサを設置し、その圧力センサが検出した圧力に応じた電気信号(操作信号)を電動アクチュエータに出力することで電動アクチュエータを制御可能にしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−290674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術において操作装置と圧力センサを接続するパイロット管路には、空気等の異物が混入する場合がある。このようにパイロット管路に混入した異物は圧力センサと接触すると急激な圧力変化として検出され、実際のものとは異なる誤った操作信号が電動アクチュエータに出力される場合がある。すなわち、操作装置から出力される油圧信号が混入した異物に起因して誤検出されて、電動アクチュエータの誤動作が生じる場合がある。例えば、電動アクチュエータとして油圧ショベルの上部旋回体を旋回する電動モータ(旋回モータ)を制御している場合には、上部旋回体が急激に旋回してバケット内の積荷が落下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、混入した異物による油圧信号の誤検出に基づいて電動アクチュエータが誤動作することを抑制できる油圧作業機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、オペレータの操作に応じて圧力が付加された油圧信号であって油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータ双方の駆動を制御するために利用されるものを出力する操作装置を備える油圧作業機の制御装置において、前記操作装置からの油圧信号の圧力を検出して当該圧力に対応する電気信号を出力する圧力検出手段と、この圧力検出手段からの電気信号の入力を受けて前記電動アクチュエータの駆動を制御する電気制御部と、前記圧力検出手段で検出される所定時間当たりの圧力変化量が設定値を超えたとき、前記圧力検出手段から前記電気制御手段に出力される電気信号に対し、予め設定したカットオフ周波数より高い周波数を減衰するローパスフィルタ処理を施すフィルタ部とを備えるものとする。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記圧力検出手段で検出される所定時間当たりの圧力変化量の設定値は、当該所定時間当たりにオペレータが前記操作装置を操作することによって発生可能な最大変化量に設定されているものとする。
【0008】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記フィルタ部は、前記圧力検出手段で検出される所定時間当たりの圧力変化量が前記設定値を超えたときを除き、前記カットオフ周波数よりも高い値に設定された他のカットオフ周波数でローパスフィルタ処理を実行しているものとする。
【0009】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記圧力検出手段で検出される所定時間当たりの圧力変化量とは、油圧作業機の制御周期よりも短く設定された時間当たりの圧力変化量であるものとする。
【0010】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記電動アクチュエータには、油圧作業機の旋回体を旋回する電動モータが含まれるものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、混入した異物による油圧信号の誤検出に基づいて電動アクチュエータが誤動作することを抑制できるので、電動アクチュエータ制御の信頼性が向上できるとともに操作性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る制御装置を備える油圧ショベルの外観図。
【図2】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの制御装置の概略図。
【図3】操作装置4A,4Bに接続されるパイロット管路45及びその周辺設備の概略図。
【図4】所定時間Δtの間に操作装置4Bを操作して発生する油圧信号の圧力の挙動の一例を示す図。
【図5】本発明の実施の形態に係るコントローラユニット11において行われる制御のフローチャート。
【図6】第2周波数fc2を利用してローパスフィルタ処理を実行したときの効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る制御装置を備える油圧ショベルの外観図である。この図に示す油圧ショベルは、ブーム1a、アーム1b及びバケット1cを有する多関節型の作業装置1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eを有する車体1Bを備えている。ブーム1aは、上部旋回体1dに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(ブームシリンダ)3aにより駆動される。アーム1bは、ブーム1aに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(アームシリンダ)3bにより駆動される。バケット1cは、アーム1bに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(バケットシリンダ)3cにより駆動される。上部旋回体1dは電動モータ(旋回モータ)16(図2参照)により旋回駆動され、下部走行体1eは左右の油圧モータ(走行モータ)3e,3f(図2参照)により駆動される。油圧シリンダ3a、油圧シリンダ3b、油圧シリンダ3c及び電動モータ16の駆動は、上部旋回体1dの運転室(キャブ)内に設置され油圧信号を出力する操作装置4A,4B(図2参照)によって制御される。
【0015】
図2は本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの制御装置の概略図であり、図3は操作装置4A,4Bに接続されるパイロット管路45及びその周辺設備の概略図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。図2に示す制御装置は、操作装置4A,4Bと、コントロールバルブ5A,5B,5Cと、油圧信号を電気信号に変換する圧力センサ(圧力検出手段)86d1,86d2と、コントロールユニット11と、チョッパ14と、バッテリ15と、インバータ13を備えている。
【0016】
操作装置4A,4Bは、エンジン7に接続されたパイロットポンプ51から供給される作動油を減圧して油圧シリンダ3a、油圧シリンダ3b、油圧シリンダ3c及び電動モータ16を制御するための油圧信号を発生する。
【0017】
操作装置4Aには、運転室内の右側に設置される操作レバー40aと、オペレータによる操作レバー40aの操作に応じて圧力が付加された油圧信号が出力される4つの出力ポート42a1,42a2,42b1,42b2(以下、これらを「出力ポート42a,42b」と総称することがある)が設置されている(図3参照)。出力ポート42a,42bから出力される油圧信号の圧力は、操作レバー40aが中立位置にある場合は略ゼロを示し、操作レバー40aの傾倒量に応じてパイロットポンプ51の最大吐出圧を超えない範囲で増加する。本実施の形態では、操作レバー40aを前方向に傾倒させると出力ポート42a1から油圧信号が出力され、操作レバー40aを後方向に傾倒させると出力ポート42a2から油圧信号が出力され、操作レバー40aを右方向に傾倒させると出力ポート42b1から油圧信号が出力され、操作レバー40aを左方向に傾倒させると出力ポート42b2から油圧信号が出力されるものとする。図3に示すように、出力ポート42a1,42a2は、油圧シリンダ3aの駆動を制御するコントロールバルブ5Aの受圧部とパイロット管路45a1,45a2を介して接続されている。出力ポート42b1,42b2は、油圧シリンダ3bの駆動を制御するコントロールバルブ5Bの受圧部とパイロット管路45b1,45b2を介して接続されている。
【0018】
操作装置4Bは、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ3c)及び電動アクチュエータ(電動モータ16)双方の駆動を制御するために利用される操作装置である。操作装置4Bには、運転室内の左側に設置される操作レバー40bと、オペレータによる操作レバー40bの操作に応じて圧力が付加された油圧信号が出力される4つの出力ポート42c1,42c2,42d1,42d2(以下、これらを「出力ポート42c,42d」と総称することがある)が設置されている(図3参照)。出力ポート42c,42dから出力される油圧信号の圧力は、操作レバー40bが中立位置にある場合は略ゼロを示し、操作レバー40bの傾倒量に応じてパイロットポンプ51の最大吐出圧を超えない範囲で増加する。本実施の形態では、操作レバー40bを前方向に傾倒させると出力ポート42c1から油圧信号が出力され、操作レバー40bを後方向に傾倒させると出力ポート42c2から油圧信号が出力され、操作レバー40bを右方向に傾倒させると出力ポート42d1から油圧信号が出力され、操作レバー40bを左方向に傾倒させると出力ポート42d2から油圧信号が出力されるものとする。図3に示すように、出力ポート42c1,42c2は、油圧シリンダ3cの駆動を制御するコントロールバルブ5Cの受圧部とパイロット管路45c1,45c2を介して接続されている。出力ポート42d1,42d2は、電動モータ16の駆動を制御するための油圧信号が出力されるものであり、終端が遮断されたパイロット管路45d1,45d2と接続されている。
【0019】
電動モータ16の制御に利用される油圧信号が通過するパイロット管路45d1,45d2には、図3に示すように圧力センサ86d1,86d2が設置されている。圧力センサ86d1,86d2は、操作装置4Bから出力される油圧信号の圧力を検出してその圧力に対応する電気信号に変換する信号変換手段として機能するもので、変換した電気信号をコントロールユニット11に出力可能に構成されている。圧力センサ86d1,86d2からコントローラユニット11に出力された電気信号は、インバータ13を介して電動モータ16(電動アクチュエータ)の駆動を制御する操作信号として利用される。
【0020】
図2に戻り、エンジン7には、油圧アクチュエータ3a,3b,3c,3e,3fに圧油を供給するメインの油圧ポンプ6と、パイロットポンプ51と、動力変換機10が接続されている。油圧ポンプ6に接続される油圧管路には、その管路内の圧力が過度に上昇した場合にタンク9に圧油を逃がすリリーフ弁8が設置されている。動力変換機10は、インバータ12を介してインバータ13及びチョッパ14と接続されており、エンジン7の動力を電気エネルギーに変換してインバータ12,13に出力する発電機として機能し、さらに、バッテリ15に蓄えられた電気エネルギーの一部を利用して油圧ポンプ6をアシスト駆動する電動機として機能する。
【0021】
インバータ12は、動力変換機10の回転速度を制御するもので、バッテリ15からの電気エネルギーにより、動力変換機10に電力を供給して油圧ポンプ6をアシスト駆動する。インバータ13は、電動モータ16の回転速度を制御するもので、動力変換機10から出力される電力またはバッテリ15の電気エネルギーを電動モータ16に供給する。
【0022】
バッテリ15は、チョッパ14を介して電圧を調整し、インバータ12,13に電力を供給したり、動力変換機10が発生した電気エネルギーや電動モータ16からの電気エネルギーを蓄えたりする部分である。
【0023】
コントローラユニット11は、監視部11Aと、フィルタ部(フィルタ回路)11Bと、電動制御部11Cと、記憶部11Dを備えており、圧力センサ86d1,86d2から入力される電気信号に基づいてインバータ13を介して電動モータ16の駆動を制御する役割を有する。
【0024】
監視部11Aは、圧力センサ86d1及び圧力センサ86d2で検出される圧力の所定時間Δt当たりの変化量を算出し、当該変化量が設定値Aを超えるか否かを監視する部分であり、圧力センサ86d1及び圧力センサ86d2からの電気信号が入力されている。ここでは、圧力センサ86d1に係る圧力の変化量をΔP1、圧力センサ86d2に係る圧力の変化量をΔP2表記することがあり、さらに、両者をまとめてΔPと表記することがある。本実施の形態では、監視部11Aが利用する設定値Aとして、当該所定時間Δtの間にオペレータが操作装置4B(操作レバー40b)を操作することで発生可能な圧力の最大変化量a0が設定されている。このように設定した設定値Aを超える圧力変化量が監視部11Aで検出された場合には、当該圧力変化が検出された圧力センサ86d1,86d2に空気が接触する等して異常な圧力が検出されたと認定することができる。次にこの点について図4を用いて説明する。
【0025】
図4は所定時間Δtの間に操作装置4Bを操作して発生する油圧信号の圧力(パイロット圧)の挙動の一例を示す図であり、図4(a)は空気の混入が無い場合におけるパイロット圧の挙動を示す図であり、図4(b)は空気の混入が生じた場合におけるパイロット圧の挙動を示す図である。操作装置4Bの操作によって生じるパイロット圧の変化量は、オペレータの操作速度によって変わるものの上限が存在する。本実施の形態では、図4(a)に示すように、Δtの間に変化し得る最大変化量を既述のように「a0」としている。
【0026】
パイロット管路45d1又はパイロット管路45d2内に混入した空気が圧力センサ86d1又は圧力センサ86d2と接触すると、図4(b)に示すように、圧力センサ86d1又は圧力センサ86d2の検出値は急激に小さくなり、その後再び作動油に接触することで急激に正常な値に戻る。このときの変化量ΔPは、圧力センサ86d1,86d2と空気の接触具合で変わるものの、正常時の最大変化量a0を上回って変化し得る。このことから、本実施の形態では、監視部11Aにおいて所定時間Δtにおけるパイロット圧の変化量ΔPを監視し、その変化量ΔPが正常時の最大変化量a0を超える場合には、当該変化量ΔPが検出された圧力センサ86d1,86d2について空気等の異物が混入したことにより異常な圧力が検出されたと判定している。
【0027】
なお、上記において監視部11Aが変化量ΔPの算出及び設定値Aの設定に利用する時間Δtは、コントローラユニット11による油圧ショベルの制御周期Tcよりも短い時間に設定することが好ましい。ΔtをTc以上に設定すると、監視部11Aが圧力異常の発生を確認する前に電動モータ16に操作信号が出力されて誤作動する可能性があるが、上記のようにΔtをTc未満に設定すると、電動モータ16に操作信号が出力される前に圧力異常の発生を確認できるので誤作動の可能性を低減できるからである。
【0028】
フィルタ部11Bは、圧力センサ86d1,86d2から入力され電気制御部11Cに出力される電気信号に対して、予め設定したカットオフ周波数(遮断周波数)より高い周波数を減衰するローパスフィルタ処理を施す部分である。本実施の形態に係るフィルタ部11Bが利用するカットオフ周波数の設定値として記憶部11Dに記憶されているものには、(1)圧力センサ86d1,86d2からの電気信号に電気的な影響で含まれるノイズを低減するために利用される第1周波数fc1と、(2)圧力センサ86d1,86d2が空気等の異物と接触した際に発生する大きな圧力変化を低減するために利用される第2周波数fc2がある。第1周波数fc1は第2周波数fc2よりも高い値に設定されており、第2周波数fc2を利用してフィルタ処理を実行する方が電気信号を大きく減衰することができる。本実施の形態に係るフィルタ部11Bは、監視部11AにおいてΔt当たりの圧力変化量ΔPが設定値Aを超えたと判定されたときには、該当する圧力センサ86d1,86d2からの電気信号に対して第2周波数fc2を利用してローパスフィルタ処理を実行し、それ以外のときには、圧力センサ86d1,86d2からの電気信号に対して第1周波数fc1を利用してローパスフィルタ処理を実行する。詳細は後述するが、このようにローパスフィルタ処理を実行すると、図4(b)に示したような異物混入の影響による急激な電気信号の変動が発生した場合に、その変動を低減することができる。圧力センサ86d1,86d2からフィルタ部11Bに入力され適宜フィルタ処理された電気信号は電気制御部11Cに出力される。
【0029】
電気制御部11Cは、圧力センサ86d1,86d2からフィルタ部11Bを介して入力される電気信号を受けて電動モータ16の駆動を制御する部分である。電気制御部11Cから出力される電気信号(操作信号)はインバータ13に出力され、その電気信号に基づいてインバータ13は電動モータ16の駆動を制御する。なお、電気制御部11Cは、電動モータ16の制動時には、電動モータ16から電気エネルギーを回収する動力回生制御も行う。さらに、動力回生制御時や油圧負荷が軽くて余剰電力が発生するような場合には、その回収電力や余剰電力をバッテリ15に蓄える制御を行う。
【0030】
図5は本発明の実施の形態に係るコントローラユニット11において行われる制御のフローチャートである。ここでは、圧力センサ86d1からの電気信号を入力するときについて説明する。
【0031】
上部旋回体1dを右旋回させるためにオペレータが操作レバー40bを右方向に傾倒させると、出力ポート42d1から油圧信号が出力されてパイロット管路45d1内の圧力が上昇する。コントローラユニット11における監視部11Aは、圧力センサ86d1からの電気信号を入力し(S501)、その入力した電気信号に基づいてΔt当たりの圧力変化量ΔP1を算出し、その算出した圧力変化量ΔP1が設定値A(a0)を超えているか否かを判定する処理を実行する(S502)。
【0032】
S502においてΔP1が設定値Aを超えていると監視部11Aにより判定されたときには、圧力センサ86d1に空気等の異物が接触したものとして、フィルタ部11Bはフィルタ処理に利用するカットオフ周波数として第2周波数fc2を選択する(S503)。一方、S502においてΔP1が設定値A以下であると監視部11Aにより判定されたときには、圧力センサ86d1からの電気信号は正常なものであるものとして、フィルタ部11Bはフィルタ処理に利用するカットオフ周波数として第1周波数fc1を選択する(S504)。このようにΔP1の大きさに基づいてカットオフ周波数を選択したら、フィルタ部11Bは、その選択された周波数を利用して圧力センサ86d1からの電気信号に対してローパスフィルタ処理を実行する(S505)。ここで、S504で第1周波数fc1が選択されている場合には、ローパスフィルタ処理によってノイズを除去された電気信号が電気制御部11Cに入力される。
【0033】
図6は、S505において第2周波数fc2を利用してローパスフィルタ処理を実行したときの効果を示す図である。S502でΔP1が設定値Aを超えていると判定された場合には、本来であれば、図6中に点線で示したように、急激な圧力低下を示す電気信号が電気制御部11Cに入力されるはずである。しかし、S505において第2周波数fc2を利用してフィルタ部11Bでローパスフィルタ処理を実行して電気信号を比較的大きく減衰させると、図6中に破線で示したように、電気制御部11Cに入力される電気信号を異物混入のない正常な場合のものに近づけることができる。
【0034】
上記のようにS505でフィルタ処理された電気信号を入力した電気制御部11Cは、その電気信号に対応した操作信号をインバータ13を介して電動モータ16に出力する(S506)。これにより圧力センサ86d1からの電気信号に対応した回転速度で上部旋回体1dが右旋回するように電動モータ16が駆動する。そして、上記の制御を継続する場合にはS501に戻って上記各処理を繰り返す(S507)。
【0035】
なお、上記では、簡略化して、圧力センサ86d1からの電気信号を入力したときの制御のみについて説明したが、圧力センサ86d2からの電気信号を入力したときも上記と同様に制御すれば良い。また、2つの圧力センサ86d1,86d2からの電気信号のうち検出圧力が大きい方を選択して入力する等して、コントローラユニット11に入力する電気信号を選択的に決定すれば、上記のフローチャートと同様に制御することができる。
【0036】
上記のように構成した本実施の形態によれば、パイロット管路45d1,d2に混入した空気等の異物が圧力センサ86d1,86d2と接触して急激な圧力変化として検出されても、その検出された電気信号に対して第2周波数fc2を利用したローパスフィルタ処理を実施することで圧力変化の振幅を減衰させることができる。これにより電気制御部11Cに出力される電気信号(操作信号)を異物混入のないときの正常なものに近づけることができるので、電動モータ16の駆動がスムーズになる。したがって、本実施の形態によれば、異物による油圧信号の誤検出に基づいて電動アクチュエータが誤動作することを抑制できるので、電動アクチュエータ制御の信頼性が向上できるとともに操作性の低下を防止することができる。
【0037】
なお、上記では、圧力センサ86d1,86d2からの電気信号に電気的な影響で発生するノイズが含まれることを前提として、通常時も第1周波数fc1を利用したローパスフィルタ処理を実行してノイズを減衰する場合について説明した。しかし、このようなノイズが少なくその影響が無視できる環境であれば、第1周波数fc1を利用したフィルタ処理を実行することなく、第2周波数fc2を利用したフィルタ処理のみを実行するように制御しても良い。
【0038】
また、上記の例では、油圧作業機に設置される電動アクチュエータが1つ(電動モータ16)のみで、電動アクチュエータの駆動制御のための油圧信号が操作装置4A,4Bから2以上同時に出力されることは無かったが、同時制御可能な2以上の電動アクチュエータが油圧作業機に設置されている場合には、各アクチュエータを駆動する油圧信号のそれぞれについて上記と同様の制御を行えば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1d…上部旋回体、3a,3b,3c…油圧シリンダ、4A,4B…操作装置、5A,5B,5C…コントロールバルブ、11…コントロールユニット、11A…監視部、11B…フィルタ部、11C…電気制御部、13…インバータ、15…バッテリ、16…電動モータ、40a,40b…操作レバー、42a,42b,42c,42d…出力ポート、45a,45b,45c,45d…パイロット管路、86d1,86d2…圧力センサ、A…圧力変化量の設定値、a0…最大変化量、fc1…第1周波数、fc2…第2周波数、Tc…制御周期、ΔP…圧力変化量、Δt…所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータの操作に応じて圧力が付加された油圧信号であって油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータ双方の駆動を制御するために利用されるものを出力する操作装置を備える油圧作業機の制御装置において、
前記操作装置からの油圧信号の圧力を検出して当該圧力に対応する電気信号を出力する圧力検出手段と、
この圧力検出手段からの電気信号の入力を受けて前記電動アクチュエータの駆動を制御する電気制御部と、
前記圧力検出手段で検出される所定時間当たりの圧力変化量が設定値を超えたとき、前記圧力検出手段から前記電気制御手段に出力される電気信号に対し、予め設定したカットオフ周波数より高い周波数を減衰するローパスフィルタ処理を施すフィルタ部とを備えることを特徴とする油圧作業機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧作業機の制御装置において、
前記圧力検出手段で検出される所定時間当たりの圧力変化量の設定値は、当該所定時間当たりにオペレータが前記操作装置を操作することによって発生可能な最大変化量に設定されていることを特徴とする油圧作業機の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の油圧作業機の制御装置において、
前記フィルタ部は、前記圧力検出手段で検出される所定時間当たりの圧力変化量が前記設定値を超えたときを除き、前記カットオフ周波数よりも高い値に設定された他のカットオフ周波数でローパスフィルタ処理を実行していることを特徴とする油圧作業機の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の油圧作業機の制御装置において、
前記圧力検出手段で検出される所定時間当たりの圧力変化量とは、油圧作業機の制御周期よりも短く設定された時間当たりの圧力変化量であることを特徴とする油圧作業機の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の油圧作業機の制御装置において、
前記電動アクチュエータには、油圧作業機の旋回体を旋回する電動モータが含まれることを特徴とする油圧作業機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−231851(P2011−231851A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102507(P2010−102507)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】