説明

油圧制御装置

【課題】油圧ポンプにおける斜板に設けられたカム球面上に、凸形状が形成されることを防ぐことにより、球面と球頭部との間のリーク量を低減し、最大斜板傾転時に斜板始動する際に摺動抵抗が増大することを予め防ぐことのできる油圧ポンプを提供する。
【解決手段】ケーシングと、同ケーシング内に回転可能に支持された駆動軸と、同駆動軸と一体的に回転する回転部材の円周方向に複数形成されたシリンダ内に摺動可能に配置されその先端部に球状頭部を有する第1のピストンとを備えた油圧駆動装置であって、前記斜板追従側ロッド先端に設けられる追従側球状頭部と、前記追従側球状頭部と係合するよう前記斜板の端部に半球状に刻設される球面孔と、前記球面の最底部に前記中央部が最も深くなるように形成して中央部から両端に向けてテーパ状に刻設されるポケット部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等に使用される可変容量型の油圧ポンプに係るもので、特に油圧ポンプの耐久性の向上を図るものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可変容量型の油圧ポンプについて図1を用いて説明する。図1に示すように参照符号2は可変容量ポンプ全体を示す。同ポンプ2において、ケーシング4の中央部には左端側をテーパころ軸受8で回転可能に支持され図示しない原動機からの回転動力により駆動される駆動軸6が配置されており、同駆動軸6の右端側は、ケーシング4の右端部に取付けたカバー12の内周に配置されたニードル軸受10によって支持されている。
【0003】
前記カバー12内には、ピストン14を収納保持するシリンダ穴16を円周状に複数配置してなるシリンダ18が配置され、同シリンダ18の内周面にはスプライン20が形成され、前記駆動軸6の外周とスプライン結合されている。カバー12とケーシング4との間には斜板22に一端部を係合したロッド24を左右に移動させる移動部材26が配置されている。
【0004】
この移動部材26は、前記ロッド24の球状右端部を記載されないバネによる付勢力で押圧されており、同部材26はさらにピン27を下部で挟むレバー28と連結されている。このレバー28は、カバー12を通って、カバー12に搭載されたサーボユニット32の上部まで伸びておりその上端部でプラグ34によってサーボユニットに回動可能に支持されている。参照符号36はサーボユニット32内に配置されたピストンロッドであって、同ロッド中間部にピン38が設けられ、同ピン38はスリーブ37と前記レバー28とを係合している。ピストンロッド36は、サーボユニット32内に設置されており、前記ピストンロッド36はスリーブ37に挿入されており、図面1のスリーブ37の右端部の設けられた楕円状の穴に、前記レバー37に係合されたピン38が挿入される。
【0005】
なお、前記ロッド24、移動部材26、レバー28、サーボユニット32および図示されない制御部等は斜板22の駆動部を構成している。
【0006】
一方、カバー12の下部にはピストンRE室40が形成されており、同シリンダ室40にはバネ42により左方に付勢されたピストン44が収納されている。前記ピストン44の左端側凹部には球状端部を有するロッド46が当接し、その他端部の球状頭部は斜板22の下部に取付けられている係合部材48と係合している。
【0007】
前記回転部材18内の各シリンダ16に摺動可能に保持されているピストン14左端部の球状頭部は、リタンプレート50により半径方向の移動を規制された係合部材52と係合しており、同係合部材52は斜板22と当接しかつ斜板22面上で摺動可能に配置されている。
【0008】
前述した可変容量ポンプ2は、サーボユニット32によってピストンロッド36が左右方向に移動すると、ピン38を介してレバー28の下部の移動を拡大させピン27を介して部材26に駆動伝達し、それによりロッド24が移動して斜板22の傾斜角度を調整するようになっている。この駆動側のロッド24に対し、斜板22の下部に結合したロッド46は追従側のロッドを構成している。なお、参照符号54は、斜板22を支持している球状支持部の球中心を示す。
【0009】
移動部材26に対してロッド24と反対側に自己吐出圧力伝達室55が設けられる。自己吐出圧力伝達室55は、カバー12内の通路を介してサーボユニット32のピストンロッド36に油路が連通する。
【0010】
斜板22において、前記駆動軸6に対する傾斜角αは、自己吐出圧力伝達室55から連通する自己吐出圧力とピストンロッド36と連結するバネ58,59によって制御される。自己吐出圧力伝達室55に自己吐出圧力が導かれない場合は、傾斜角αは、最大斜板傾転の位置となる。ピストンロッド36は図1上右方に移動することで、ピストンロッド36上のピン38にレバー28が摺動可能に取り付けられ、レバー28はプラグ34を中心に回動するため、レバー28はその先端でピン27に摺動可能に取り付けられ、ピン27は移動部材26上に設けられるため、ピストンロッド36が図面に対して右方に移動すると、移動部材26もまた図面に対して右方に移動する。このため、斜板22は傾斜角が最大斜板傾転の位置となる。
【0011】
他方、自己吐出圧力伝達室55に自己吐出圧力が導かれた場合、ピストンロッド36は図1上左方に移動することで、移動部材26もまた図面に対して左方に移動する。このため、斜板22は傾斜角が最小斜板傾転の位置となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−298011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献1のように構成した場合の従来の可変容量型の油圧ポンプにおける斜板22とロッド24の結合部を図2に示す。ここで、斜板22には、半球状に窪んだ球面孔68が刻設される。一方、ロッド24の先端には球状に加工された球状頭部64が設けられる。この球状頭部64は、その最端部が軸方向に垂直に切断されている。切断面の円形の外周がエッジ部62である。エッジ部62の中央に切断面の直径mより短い直径のテーパ状開口部66が刻設される。この為、エッジ部62からテーパ状開口部66までは平坦な面63が形成される。このテーパ状開口部66は、さらに短い直径の内孔67に連結される。ここで、斜板22の球面孔68が、球面状であるのに対して、球状頭部64は、最端部が軸方向に垂直に切断されているため、切断面の外形であるエッジ部62から軸側の球状頭部64は、球面孔68に接する。しかし、エッジ部62より斜板22側は、角度βに渡って、球状頭部64と球面孔68とは乖離している。
【0014】
このため、前記の通り、自己吐出圧力伝達室55に自己吐出圧力の導入と非導入を繰り返すことで、斜板22が最大斜板傾転の位置と最小斜板傾転の位置を繰り返すと、球面孔68とロッド24のエッジ部62の接触を繰り返すこととなり、球面孔68とロッド24のエッジ部62の接触面が摩耗し、球面孔68の面上であって、エッジ部62と接触しない部分に凸形状が形成されるという事象が発生する。
【0015】
一度この凸形状が形成されると、ロッド24が球面孔68に沿って回動する際に球状頭部64が凸形状に乗り上げることとなる。この球状頭部64の凸形状への乗り上げにより、先ず球面孔68上のリーク量が増加するという課題が生じる。さらに、この球状頭部64の凸形状への乗り上げにより、斜板22が最大斜板傾転時から最小斜板傾転時へ制御される際に、摺動抵抗が増大するという課題もまた生じる。これらの事象により、油圧ポンプの効率が低下しオーバートルクによって油圧ポンプを駆動する図示しないエンジンの強制停止を誘発する可能性がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、前記課題を解決するためになされたものであり、油圧ポンプにおける斜板に設けられたカム球面上に、凸形状が形成されることを防ぐことにより、球面と球頭部との間のリーク量を低減し、最大斜板傾転時に斜板始動する際に摺動抵抗が増大することを予め防ぐことのできる油圧ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するための本発明による油圧駆動装置は、ケーシングと、同ケーシング内に回転可能に支持された駆動軸と、同駆動軸と一体的に回転する回転部材の円周方向に複数形成されたシリンダ内に摺動可能に配置されその先端部に球状頭部を有する第1のピストンと、斜板と、同斜板側面に当接しかつ斜板側面上で摺動可能に配置され前記各第1のピストンの球状頭部に係合する係合部材と、前記ケーシングに取付けられ前記回転部材内のシリンダと連通し圧油の給排路を形成した圧油供給プレートと、前記斜板に対し傾動を与える斜板駆動部と、一端側頭部が前記斜板の一端部側に係合されており他端側頭部は前記斜板駆動部に設けられ前記駆動軸の軸方向に移動可能な移動部材に当接されてなる斜板駆動側のロッド、および、一端側頭部が前記斜板の他端部側に係合され他端側頭部は前記駆動軸の軸方向に移動可能に配置形成された第2のピストンに当接する斜板追従側ロッドを備えた油圧駆動装置であって、前記斜板追従側ロッド先端に設けられる追従側球状頭部と、前記追従側球状頭部と係合するよう前記斜板の端部に半球状に刻設される球面孔と、前記球面の最底部に前記中央部が最も深くなるように形成して中央部から両端に向けてテーパ状に刻設されるポケット部とを備える。
【0018】
前記追従側球状頭部は、その最端部が軸方向に垂直に切断されており切断面の円形の外周にエッジ部が設けられ、前記エッジ部から中心軸向けにテーパ状の穴部が開口される。
【0019】
前記エッジ部の直径は、前記斜板追従側ロッド内の内孔の口径にほぼ等しい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、油圧ポンプにおける斜板に設けられたカム球面上に、凸形状が形成されることを防ぐことにより、球面と球頭部との間のリーク量を低減し、最大斜板傾転時に斜板始動する際に摺動抵抗が増大することを予め防ぐことができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の可変容量型の油圧ポンプの構成図である。
【図2】従来の可変容量型の油圧ポンプにおける斜板とロッドの結合部の構成図である。
【図3】本発明に係る可変容量型の油圧ポンプの構成図である。
【図4】本発明に係る可変容量型の油圧ポンプにおける斜板とロッドの結合部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図3を用いて、本発明に係る可変容量型の油圧ポンプの構成について説明する。
【実施例】
【0023】
本発明は、可変容量型の油圧ポンプに適用される発明であり、図1と同様の構成については特に言及せず、図1と異なる構成について、図3,4を用いて以下に説明する。
【0024】
図3は、本発明に係る可変容量型の油圧ポンプの構成図である。従来例と異なる部分については、図4を用いて詳細に説明する。
【0025】
図4は、本発明に係る可変容量型の油圧ポンプにおける斜板22とロッド24の結合部を示す。
【0026】
先ず、斜板22に半球状に窪んで刻設された球面孔74の最奥部に中央部が最も深く、両端が中央にかけてテーパ状に刻設されるポケット部72が設けられる。ポケット部72の幅は、ロッド24のテーパ状開口部76の移動距離とテーパ状開口部76の直径を加えたものと略同程度に構成される。テーパ状開口部76の端部であるエッジ部70が球面孔74と接触及び摩耗させないためである。
【0027】
一方、ロッド24の先端である球状頭部78は、従来の球状頭部64よりもより先端で最端部が軸方向に垂直に切断する。このため、切断面の直径は、従来の球状頭部64より短くnとなる。このnは内孔67の径にほぼ等しく、例えば従来のmを7.2mmとした場合、nを4.7mmとすることもできる。このため、円形のエッジ部70の直径も短くなり、平坦な面は形成されない。このため、このポケット部72を有する球面孔74とテーパ状開口部76による凸形状の形成を防ぐことができる。さらに、ロッド24が凸形状に乗り上げることも防ぐことができ、そのため、球面孔74と球状頭部78の間のリーク量が増加するのを防ぐことができる。さらに、ロッド24における球状頭部78の切断面積を小さくし、エッジ部70をロッド24先端寄りに移動させると、球面孔74と球状頭部78の接触面積を増加させ、耐摩耗性を向上させることができる。従って、本発明に係る油圧ポンプの耐久性の向上を図ることもできる。
【0028】
球頭頂部の切断面と、エッジ部70とのなす角δは、従来では例えば、31度であったのに対して19度と小さな値となるよう構成される。このように構成することで、凸形状の形成を防ぐこととなる。
【0029】
本発明では、斜板22の球面孔74に対してポケット部を設けることで、ロッド24のエッジ部70をロッド24先端寄りに移行させると接触面が増加し、耐摩耗性が向上し、複雑な構造変更・工程変更の必要はなく、耐久性向上によるメリットと量産を含めて実用性が高い。
【0030】
以上本発明の好適な実施例について図面により説明したが、当業者であれば、上記の図面および説明に基づいて種々の変形をすることが可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0031】
2 可変容量ポンプ
4 ケーシング
6 駆動軸
8 テーパころ軸受
10 ニードル軸受
12 カバー
14 ピストン
16 シリンダ穴
18 シリンダ
20 スプライン
22 斜板
24 ロッド
26 移動部材
27 ピン
28 レバー
32 サーボユニット
34 プラグ
36 ピストンロッド
38 ピン
40 シリンダ室
42 バネ
44 ピストン
46 ロッド
48 係合部材
50 リタンプレート
52 係合部材
54 球中心
55 自己吐出圧力伝達室
58,59 バネ
62 エッジ部
64 球状頭部
66 テーパ状開口部
67 内孔
68 球面孔
70 エッジ部
72 ポケット部
74 球面孔
76 テーパ状開口部
78 球状頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、同ケーシング内に回転可能に支持された駆動軸と、同駆動軸と一体的に回転する回転部材の円周方向に複数形成されたシリンダ内に摺動可能に配置されその先端部に球状頭部を有する第1のピストンと、斜板と、同斜板側面に当接しかつ斜板側面上で摺動可能に配置され前記各第1のピストンの球状頭部に係合する係合部材と、前記ケーシングに取付けられ前記回転部材内のシリンダと連通し圧油の給排路を形成した圧油供給プレートと、前記斜板に対し傾動を与える斜板駆動部と、一端側頭部が前記斜板の一端部側に係合されており他端側頭部は前記斜板駆動部に設けられ前記駆動軸の軸方向に移動可能な移動部材に当接されてなる斜板駆動側のロッド、および、一端側頭部が前記斜板の他端部側に係合され他端側頭部は前記駆動軸の軸方向に移動可能に配置形成された第2のピストンに当接する斜板追従側ロッドを備えた油圧駆動装置であって、
前記斜板追従側ロッド先端に設けられる追従側球状頭部と、前記追従側球状頭部と係合するよう前記斜板の端部に半球状に刻設される球面孔と、前記球面の最底部に前記中央部が最も深くなるように形成して中央部から両端に向けてテーパ状に刻設されるポケット部とを備える油圧駆動装置。
【請求項2】
前記追従側球状頭部は、その最端部が軸方向に垂直に切断されており切断面の円形の外周にエッジ部が設けられ、前記エッジ部から中心軸向けにテーパ状の穴部が開口される請求項1記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記エッジ部の直径は、前記斜板追従側ロッド内の内孔の口径にほぼ等しい請求項2記載の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233432(P2012−233432A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102220(P2011−102220)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】