説明

浮上ユニット及びそれを備えた非接触支持装置

【課題】揺動自在とされた本体がその自重によって不用意に傾倒してワークを傷つけるおそれを大幅に低減すること。
【解決手段】支持体30の球体部35は本体20の球面軸受け部28aに収容され、これにより本体20は揺動自在となって支持体30に支持されている。本体20内には球体部35と当接するOリング29と、そのOリング29によってシールされる閉空間K1とが設けられている。そして、その閉空間K1に加圧ポート41及び内圧調節用通路42を通じて加圧エアが供給されるようにした。支持体30が固定された状態であれば、加圧エアの供給によって閉空間K1の圧力を高めるとその内圧の高まりによって本体20が支持体30に対して押し上げられる。これにより、A部分での摩擦抵抗が高まって本体20の自重による傾倒が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの傾斜に追従可能な浮上ユニット及びそれを備えた非接触支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浮上ユニットを多数備え、各浮上ユニットの噴出面から噴出する加圧気体によって平板状ワーク(例えば、液晶パネル用ガラスや基板等の平板状物、移動テーブル等)を非接触支持する支持装置が知られている。このような非接触支持装置の用途例としては、ワークの位置決め装置等がある。非接触状態でワークの位置ズレを修正すれば、修正時にワークが装置側の支持面と擦れて傷つくおそれを低減できるからである。
【0003】
ところで、生産効率の向上等の観点から、近年では非接触支持されるワークは大型化している。このように大型化したワークではその一部又は全体でうねり等が生じ易くなる。一方、浮上ユニットの上面(噴出面)がユニット設置面から突出した状態で設置された非接触支持装置の場合、浮上ユニットの上面は常に水平状態で維持されている。そのため、前述したようにワークにうねり等が生じて傾斜すると、その傾斜した部分の下方に配置された浮上ユニットの角にワークが衝突して傷いてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、当出願人は、かかる問題に対処すべく、噴出面を備えた本体が揺動自在に支持された浮上ユニットを以前に提案している(特許文献1参照)。かかる浮上ユニットによれば、ワークの傾斜に浮上ユニットの上面が追従してその上面がワークと平行な状態となるため、浮上ユニットの角とワークとの衝突を回避することが可能となる。
【特許文献1】特開2006−319309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術では次に説明するような新たな別の問題が生じることを当発明者等は突き止めた。上記従来技術では噴出面を備えた本体を揺動自在としているため、ワークが不存在の場合に浮上ユニットの本体が傾倒した状態となってしまうのである。その傾倒の原因には主として本体の自重によることが考えられるが、その他にも本体の揺動中心と本体の重心とが一致しないことなども考えられる。そうすると、次のような問題が生じる。
【0006】
図15に示すように、非接触支持装置91によってワークとしての移動テーブル(ステージ)S1を非接触支持する前、浮上ユニット92の上面93にステージS1が載置される。その際、本体94の角がステージS1の被支持面に衝突してステージS1を傷つけてしまうおそれがある。それに加え、ステージS1の一部がうねりによって本体94の傾倒と逆に傾斜している場合、図16に示すように衝突角が大きくなって衝突による傷つきの程度はより大きなものとなってしまう。
【0007】
また、非接触支持装置91でのステージSの想定浮上量は、通常、数μm〜数十μm程度というように極めて微小なものである。このため、非接触支持装置91によるステージSの非接触支持に際し、図17に示すように被支持面の面精度が悪いステージS2であると、被支持面との隙間が想定浮上量よりも大きくなる浮上ユニット92がある(図における中央の浮上ユニット)。当該浮上ユニット92では広がった隙間から加圧気体が放出されて浮上力が弱くなり、同時にステージS2からの反作用も弱くなることから、図示のように本体94が傾倒してその角がステージS2の被支持面に当たる。その状態で位置ズレを修正する場合には、ステージS2が擦れて傷ついてしまう。なお、図17では、理解を容易にするため、ステージS2の面精度の悪さが誇張されている。
【0008】
そこで、本発明は、本体の揺動自在と傾倒抑制という一見矛盾するかのような二つの機能を備えることにより、揺動自在とされた本体が不用意に傾倒してワークが傷つくおそれを大幅に低減できる浮上ユニット、及びそれを備えた非接触支持装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0010】
手段1.加圧気体を噴出する噴出面を有する本体が支持体によって支持されており、前記噴出面から噴出される加圧気体によりワークを非接触支持する浮上ユニットであって、前記噴出面がワークの傾きに追従するように本体を揺動自在とする揺動機構と、前記本体がその自重によって傾倒することを抑制する傾倒抑制機構と、を備えている。
【0011】
この手段1によれば、本体は揺動機構によってワークの傾斜に追従可能であるとともに、傾倒抑制機構によって自重による傾倒が抑制される。このため、ワークに対する作業(ワークの載置や非接触支持等)により自重を上回る力をワークから受けない限り、本体はその自重による傾倒が抑制される。それにより、本体がその自重によって不用意に傾倒してワークが傷つくおそれを大幅に低減できる。例えば、噴出面へのワーク載置時に本体が水平状態で維持されるため、本体上部の角がワークの被支持面に衝突してワークを傷つけるおそれを大幅に低減できる。また、ワークの被支持面の面精度が悪く被支持面との間の隙間が想定浮上量よりも大きくなった場合でも、本体上部の角がワークの被支持面に当たりワークが擦れて傷ついてしまうおそれも大幅に低減できる。
【0012】
なお、ワークとしては、噴出面と対峙する面(被支持面)が平坦な平板状ワーク、より具体的にはガラスや基板等の平板状物、移動テーブル等が想定される。
【0013】
手段2.前記揺動機構は、前記本体又は前記支持体のいずれか一方に設けられた球体部と、他方に設けられ、前記球体部を収容するとともに、収容された球体部の球面上部と円環状に当接する上側当接部及び球面下部と円環状に当接する下側当接部とを少なくとも備えた収容部と、を有し、前記傾倒抑制機構は、前記収容部に収容された前記球体部の球面と当接する弾性環状部材と、前記弾性環状部材の配置によって前記他方の内部に設けられ、前記弾性環状部材によってシールされた閉空間と、前記閉空間に連通し、当該閉空間の内圧を調節可能とする内圧調節用通路と、を有し、前記閉空間は同閉空間の圧力の高まりによって前記本体を押し上げる位置に配置されているとした。
【0014】
この手段2によれば、収容部内において球体部が任意の方向に回転することにより、支持体に対する本体の傾斜が任意に調整される。これにより、本体がどの方向にも揺動自在となる動作を実現できる。そして、球面を用いて揺動機構が構成されるため、滑らかな揺動動作が実現できる。また、非接触支持装置等への設置により支持体が固定された状態では、内圧調節用通路を通じて本体又は支持体内の閉空間の内圧が大気圧より高められると、その内圧によって本体が支持体に対して押し上げられる。これにより、上側当接部又は下側当接部で球体部との当接力が高まり、それとともに摩擦抵抗が高められるため、本体の自重による傾倒の抑制を実現できる。
【0015】
手段3.前記上側当接部及び前記下側当接部の少なくとも一方は球面軸受け部であるとした。
【0016】
この手段3によれば、収容部が備える当接部の少なくとも一方が球面軸受け部であるため、本体は球面軸受けを利用して揺動自在とされる。これにより、本体のより一層滑らかな揺動動作を実現することができる。
【0017】
手段4.前記内圧調節用通路は、前記噴出面に加圧気体を供給すべく前記本体に設けられた気体通路とは別に設けられているとした。
【0018】
この手段4によれば、内圧調節用通路が気体通路とは別に設けられているため、噴出面に供給される加圧気体の影響を受けることなく、閉空間の内圧が調節される。これにより、閉空間の内圧調節を容易に行うことができる。
【0019】
手段5.前記弾性環状部材は前記球体部の球面上部に設けられているとした。
【0020】
この手段5によれば、弾性環状部材が球体部の球面上部に設けられているため、閉空間の内圧が高められて本体が押し上げられてもその弾性環状部材がより一層つぶされることを避けられる。これにより、閉空間の圧力調節に伴って弾性環状部材が更なるつぶしと元の状態への復帰が繰り返されて弾性部材としての性能が低下することを抑制できる。
【0021】
手段6.前記弾性環状部材は前記球体部の球面下部に設けられ、当該弾性環状部材の球面当接部分が前記下側当接部であるとした。
【0022】
この手段6によれば、弾性環状部材の球面当接部分が下側当接部であるため、閉空間の内圧が高められて本体が押し上げられると、弾性環状部材はより一層つぶされることになる。弾性環状部材と球面との当接は線接触であり、高められたつぶし力はその接触部分に集中するため、面接触の場合よりも摩擦抵抗が高まる。このため、摩擦抵抗の高まりによる傾倒抑制効果を向上させることができる。
【0023】
手段7.加圧気体を噴出する噴出面を有する本体が支持体によって支持されており、前記噴出面から噴出される加圧気体によりワークを非接触支持する浮上ユニットであって、前記噴出面がワークの傾きに追従するように本体を揺動自在とする揺動機構と、前記本体の自重による傾倒を抑制しつつ、ワークへの追従力に対しては弾性変形可能な弾性力を有し、自重によって傾倒しようとする前記本体と当接可能に設けられた傾倒抑制部材と、を備えている。
【0024】
この手段7によれば、本体は揺動機構によってワークの傾斜に追従可能とされる。また、傾倒抑制部材が、自重によって本体が傾倒しないように、又は本体が傾倒したとしても一定以上傾倒しないように本体と当接することで、本体の自重による傾倒が抑制される。そしてこの場合、傾倒抑制部材は、本体の自重による傾倒に対してはその傾倒を抑制しつつ、ワークの傾斜に追従する力に対しては変形することのできる弾性力を有している。このため、本体の自重よりも大きなワークへの追従力に対しては傾倒抑制部材が弾性変形し、本体の追従傾斜は傾倒抑制部材によって阻害されない。このように、手段7によっても本体がその自重によって不用意に傾倒してワークが傷つくおそれを大幅に低減できる。
【0025】
手段8.前記揺動機構は、前記本体又は前記支持体のいずれか一方に設けられた球体部と、他方に設けられ、前記球体部の球面と当接した状態で当該球体部を収容する収容部と、を有し、前記傾倒抑制部材は、前記球体部から延設された軸部に設けられ、自重によって傾倒しようとする前記本体の下面と当接可能な筒状部材であるとした。
【0026】
この手段8によれば、収容部内において球体部が任意の方向に回転することにより、支持体に対する本体の傾斜が任意に調整される。これにより、本体がどの方向にも揺動自在となる動作を実現できる。また、傾倒抑制部材は支持体の軸部に設けられる筒状部材であるため、傾倒抑制効果を得るべく本体に対して新たな細工をする必要がない。このため、系統抑制機能を有する浮上ユニットの製造コストを低減できる。
【0027】
手段9.ベース上に手段1乃至8のいずれかに記載の浮上ユニットが複数設置された非接触支持装置。
【0028】
この手段9によれば、傾倒抑制可能な浮上ユニットを複数備えていることにより、ワークが傷つくおそれを大幅に低減できる非接触支持装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、発明を具体化した第1乃至第3の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
最初に、多数の浮上ユニットを備えた非接触支持装置の概要を、図3を参照しながら説明する。なお、本実施形態では非接触支持装置をステージの位置決め装置に用いた場合を想定しており、図3は非接触支持装置を示す平面図である。以下の記載における上下とは鉛直方向を基準とした上下をいうものとする。
【0031】
図3に示すように、非接触支持装置11は基体12を備えている。基体12の上面は浮上ユニット設置面とされ、その設置面に多数の浮上ユニット13が設置されている。各浮上ユニット13は平面視において全体として格子状をなすように、前後左右に等間隔で配置されている。浮上ユニット13の設置数は、非接触支持されるステージの平面積や撓み・うねり易さなどを考慮して適宜増減される。
【0032】
ここで、ステージとはガラスや基板製造等に用いられる移動テーブルのことであり、これが「ワーク」に相当する。なお、「ワーク」としては移動テーブルに限定されるものではなく、例えば、液晶パネル用ガラスや基板等の平板状物であってもよい。
【0033】
各浮上ユニット13の上面の一部は加圧気体(ここでは、加圧エアが用いられるものとする。)が噴出する噴出面14となっている。各浮上ユニット13は同一のものであるから、その上面によって同一平面が形成されている。各浮上ユニット13の上面にステージを載置後に噴出面14から加圧エアを噴出させると、載置されたステージは微小な間隔をおいて非接触支持される。このため、かかる状態でステージの位置ズレを修正すれば、浮上ユニット13の上面と擦れることなくステージの位置ズレが修正される。
【0034】
次に、前記浮上ユニット13の詳細を、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は浮上ユニットの一部断面図であり、この図1を参照して浮上ユニットの構成を説明する。なお、図2も図1と同じく浮上ユニットの一部断面図であるが、この図2は後述する傾倒抑制機構の説明において参照する。
【0035】
図1に示されているように、浮上ユニット13は本体20と、本体20を揺動自在に支持する支持体30とを備えている。まず、本体20の詳しい構成は次の通りである。本体20の主ボディ21は円柱形状をなし、その側面にはベアリングポート22が形成されている。ベアリングポート22は、主ボディ21の内部に形成された気体通路23の一端に連通している。また、主ボディ21の上面は平坦に形成され、その上面には平面視において円形状をなす収容溝24が形成されている。収容溝24の底面には流通溝25が形成されている。前記気体通路23の他端はこの流通溝25に連通している。このため、流通溝25は気体通路23を介して前記ベアリングポート22と連通している。そして、前記収容溝24にはその収容溝24に合わせて円板状に形成された多孔質体26が密に収容されている。その収容状態において、多孔質体26の上面は主ボディ21の上面とともに同一平面をなし、両者によって浮上ユニット13の本体20上面が形成されている。
【0036】
なお、前記多孔質体26は、焼結三フッ化樹脂、焼結四フッ化樹脂といったフッ素樹脂によって形成されている。ただし、フッ素樹脂以外でも、焼結ナイロン樹脂、焼結ポリアセタール樹脂等の合成樹脂材料や、焼結アルミニウム、焼結銅、焼結ステンレス等の金属材料、焼結カーボン、焼結セラミックスなどの素材を用いてもよい。
【0037】
かかる構成を有する本体20では、ベアリングポート22に加圧エアが供給されるとその加圧エアは気体通路23を通じて流通溝25、さらには多孔質体26の底面に至る。そして、加圧エアは多孔質体26の微細孔を通過し、その多孔質体26の上面から噴出する。したがって、多孔質体26の上面は浮上ユニット13の噴出面14である。
【0038】
次に、上記浮上ユニット13は揺動機構を備えていることにより、前記本体20が揺動自在となって支持体30に支持されている。まず支持体30側の構成として、支持体30は主軸部31を有し、その基端部には取付軸部32が設けられている。取付軸部32の外面にはねじ部33が形成されており、このねじ部33を利用して前述した非接触支持装置11の基体12に取り付けられる。主軸部31の先端側には、横断面が徐々に小さくなる首部34を介して球体部35が設けられている。なお、主軸部31の中心軸線は取付軸部32、首部34及び球体部35の中心を通る上下方向の中心線と一致し、それは浮上ユニット13全体の中心線とされている。浮上ユニット13を構成する各部及び各部材はこの中心線を基準として設けられている。
【0039】
一方、本体20側の構成として、主ボディ21の下面の中央部には円形状をなす開口を備えた取付凹部27が設けられている。取付凹部27の内面にはねじ部が形成されている。取付凹部27には球面軸受け部材28が設けられている。球面軸受け部材28は外形が前記取付凹部27に合致する円柱形状をなし、その外側面にはねじ部が形成されている。このねじ部を取付凹部27のねじ部にねじ込むことにより、球面軸受け部材28が取付凹部27に収まった状態で主ボディ21に取り付けられている。球面軸受け部材28の内面には、前記球体部35の球面と当接可能な球面軸受け部28aが形成されている。球体部35はその略全体が球面軸受け部材28によって包み込まれている。ただ、球面軸受け部材28の上面に形成された孔28bを通じ、球体部35の頭頂部が球面軸受け部材28の外へ露出した状態となっている。この孔28bと球体部35の頭頂部とにより形成された凹状空間に弾性環状部材としてのOリング29が収容されている。孔28bの内面は、上面開口から内側へ傾斜するテーパ状に形成されている。Oリング29は、球面軸受け部材28が主ボディ21に取り付けられることで押しつぶされ、取付凹部27の底面、球体部35の頭頂部球面及び孔28bの内面と密接した状態で本体20内に配置されている。
【0040】
なお、この実施形態では、球面軸受け部材28の球面軸受け部28aが球体部35の収容部となっている。また、球面軸受け部28aの上半分(球体部35の上半球と当接する部分)が上側当接部にあたり、下半分(球体部35の下半球と当接する部分)が下側当接部にあたる。
【0041】
以上より、球面軸受け部材28を有する本体20は、球体部35の球面軸受けによって揺動自在とされた状態で支持体30に支持されている。これにより、本体20はステージの傾斜に追従して傾斜することが可能となっている。そして、Oリング29が球体部35の球面と密接している部分では摩擦抵抗が生じる。また、Oリング29のつぶし力W(図1における矢印)により本体20が押し上げられるため、球面軸受け部28aの下部(図1において一点鎖線で囲まれたA部分)でも摩擦抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗により、本体20の傾倒(自重による傾斜)がある程度抑制される。
【0042】
とはいえ、この程度の摩擦抵抗だけでは本体20の傾倒を抑制する効果が十分に得られないため、本体20は傾倒してしまう。そのため、この第1の実施形態における浮上ユニット13では、その本体20の傾倒を抑制する傾倒抑制機構を備えている。この傾倒抑制機構により、本体20の内圧を調節して前記A部分の摩擦抵抗を増加させることが可能となり、それによって本体20の傾倒が十分に抑制される。
【0043】
そこで、次にこの傾倒抑制機構について詳しく説明する。ここでは、図1の他、傾倒抑制を説明するための説明図である図2を適宜参照する。まず、傾倒抑制機構は次のような構成からなる。主ボディ21の側面には、前記ベアリングポート22とは別の箇所に、加圧ポート41が設けられている。加圧ポート41は主ボディ21内に前記気体通路23とは別に形成された内圧調節用通路42の一端と連通している。内圧調節用通路42の他端は取付凹部27の底面で開口し、Oリング29の内側に形成される閉空間K1に連通している。図2に示すように、加圧ポート41に加圧気体(ここでも、加圧エアが用いられるものとする。)が供給されると、内圧調節用通路42を通じてこの閉空間K1の圧力が大気圧よりも高められる。この加圧状態では、Oリング29によって閉空間K1がシールされる。したがって、加圧ポート41を大気開放とするか又は加圧ポート41に加圧エアを供給するかにより、閉空間K1の圧力(本体20の内圧)を調節することが可能となっている。
【0044】
そして、かかる構成において、加圧ポート41に加圧エアを供給して閉空間K1が加圧されると、図2において矢印で示されているように、本体20には上方への力が作用して押し上げられる。そうすると、A部分における摩擦抵抗が加圧前に比べて高まり、本体20の傾倒抑制効果も加圧前に比べて大きくなる。これにより、本体20の傾倒を抑制することが十分に可能となる。
【0045】
ここで、前述したように、本体20はステージの傾斜に追従させるべく揺動自在に支持されている。このため、閉空間K1を加圧する程度は本体20の傾倒を抑制することが可能な程度となっている。ステージの載置や非接触支持等によって一個の浮上ユニット13にかかる荷重(10〜100kg程度)は本体20の重量(1kg程度)と大きく異なるため、その程度の加圧度であれば本体20の揺動機能は阻害されない。つまり、ステージが載置されたり、ステージを非接触支持したりすればそのステージによって本体20が下方向へ押し付けられるため、前述した加圧による本体20の押し上げが揺動機能に及ぼす影響は小さい。
【0046】
次に、以上詳述した浮上ユニット13が設置された非接触支持装置11において、浮上ユニット13がなす動作を図面を適宜参照しながら説明する。
【0047】
まず、ステージを浮上ユニット13の上面に載置する動作について、その動作説明図である図4を参照しながら説明する。図4に示されているように、ステージSを浮上ユニット13の本体上面(主ボディ21の上面及び多孔質体26の上面)に載置する場合、加圧ポート41に加圧エアを供給しておく。そうすると、本体20は前述したように傾倒することが抑制され、浮上ユニット13の本体上面は水平状態で維持される。これにより、ステージSの載置時に本体上部の角がステージSの被支持面(噴出面14と対峙する面)に衝突して当該ステージSが傷つくおそれを大幅に低減できる。
【0048】
また、ステージSの一部がうねり等によって傾斜していたとすると、その傾斜した部分の被支持面は水平に維持された浮上ユニット13の本体上面と非平行状態となる。この場合、閉空間K1は本体20の傾倒を抑制することが可能な程度に加圧されているだけであるから、ステージSの載置によって本体20の自重を大きく超える荷重を受けるため本体20はステージSの傾斜に追従して傾斜する。この点、水平な本体上面と傾斜したステージSの被支持面とが非平行状態にあるためステージSが本体上部の角に当たり得るが、本体20が傾倒してしまう従来技術と比較すればステージSを傷つけるおそれの大幅な低減が期待できる。
【0049】
次に、非接触支持中に傾斜したステージSに本体20が追従傾斜する動作について、その動作説明図である図5を参照しながら説明する。なお、図5では理解し易くするためにステージの傾斜及び浮上量が誇張して図示されている。ステージSの非接触支持中では、ベアリングポート22及び加圧ポート41に加圧エアが供給されている。これにより、多孔質体26の上面から加圧エアが噴出してステージSが非接触支持され、本体20は自重によって傾倒することが抑制されている。かかる非接触支持中に、うねり等が生じてステージSの一部分が図5(a)に示す如く傾斜することがある。この場合、その傾斜した部分の下方に配置された浮上ユニット13では、傾斜によってステージSとの間で広がった隙間から加圧エアが外に放出されることになる。そして、その隙間が広がった部分ではステージSに対する浮上力が十分に作用せず、ステージSから本体20が受ける反作用も小さくなる。そうすると、Oリング29のつぶし力W及び閉空間K1の内圧によって本体20が押し上げられ、本体20はステージSの傾斜に追従して傾斜する。その結果、図5(b)に示されているように、ステージSの被支持面と浮上ユニット13の本体上面とが平行状態となり、ステージSが本体上部の角に衝突して傷つくおそれを低減させることができる。
【0050】
また、図示を省略するが、ステージSの被支持面の面精度が悪く、一部の浮上ユニット13でその上面とステージSとの隙間が想定浮上量よりも大きくなった場合であっても、当該浮上ユニット13の本体20は傾倒することが抑制される。これにより、位置決め装置としての利用において、本体上部の角がステージSに当たりその状態で位置ズレが修正されてしまいステージSが擦れて傷つくおそれも大幅に低減できる。
【0051】
以上の説明から、この第1の実施形態によれば以下の優れた効果を有する。
【0052】
上記浮上ユニット13では、本体20は揺動機構によって揺動自在とされ、ステージSの傾斜に追従可能となっている。併せて、閉空間K1の圧力を高めて球面軸受け部分(A部分)での摩擦抵抗を増加させることにより、本体20の自重による傾倒が抑制される。このため、ステージSの載置や非接触支持によって本体20がその自重を上回る力を受けない限り、浮上ユニット13の本体上面は水平状態で維持される。その結果、本体20がその自重によって不用意に傾倒してステージSが傷つくおそれを大幅に低減できる。例えば、ステージSを載置する場合や、ステージSの面精度が悪いために一部の浮上ユニット13でステージSとの隙間が大きくなった場合に、本体上部の角との衝突によってステージSが傷つくおそれを大幅に低減できる。
【0053】
上記浮上ユニット13では、本体20は球面軸受けによって揺動自在とされているため、本体20を任意の方向に傾斜させることできるし、滑らかな揺動動作を実現できる。
【0054】
上記浮上ユニットでは、閉空間K1を加圧する加圧エアの通路となる内圧調節用通路42が気体通路23とは別に設けられているため、非接触支持用に供給される加圧エアの影響を受けることなく内圧を調節することができる。これにより、内圧の調節を容易に行うことができる。
【0055】
上記浮上ユニット13では、Oリング29が球体部35の球面上部と当接する位置に配置されているため、傾倒抑制のために本体20を押し上げた場合でもそれによってOリング29がより一層つぶされることを回避できる。これにより、閉空間K1の圧力調節に伴って更なるつぶしと元の状態への復帰が繰り返されてOリング29の性能が低下することを抑制できる。
【0056】
なお、この第1の実施形態は上記した内容に限定されない。他の実施形態として考えられるものを以下に列挙する。
【0057】
上記実施の形態では、閉空間K1の加圧度を傾倒抑制が可能な程度としたが、加圧度をより高めれば傾倒抑制の確実性が高まるため、本体20の揺動機能が阻害される程度まで加圧度を高めることも可能である。このような場合、本体20の揺動機能が要求される時点で閉空間K1の圧力を適宜調節(例えば、加圧停止や加圧度を弱めるなど)すれば、揺動機能が阻害された状況を解消できる。
【0058】
上記実施の形態では、閉空間K1の加圧を常時行っているが、ステージSの載置後に加圧ポート41への加圧エアの供給を遮断し、閉空間K1の加圧を停止させて大気開放状態に調節してもよい。
【0059】
上記実施の形態では、加圧ポート41が主ボディ21の側面に設けられているが、それが主ボディ21の下面に設けられた構成としてもよい。また、加圧ポート41や内圧調節用通路42が支持体30に設けられた構成としてもよく、その場合、内圧調節用通路42の一端は球体部35の頭頂部で開口することになる。
【0060】
上記実施の形態では、ベアリングポート22と加圧ポート41とが別々に設けられているが、図6に示されているように、両ポート22,41を共通化した共通ポート51が設けれた構成としてもよい。この場合、主ボディ21には気体通路23及び内圧調節用通路42につながる共通路52が設けられる。こうすることにより、製造工程の削減が可能となる。
【0061】
本体20が揺動自在となって支持体30に支持される揺動機構の構成としては、図7(a)に示されているように、主ボディ21の下面に半球凹状をなす球面軸受け部53が形成された構成としてもよい。この場合、球面軸受け部53に形成された溝にOリング29が収容される。また、主ボディ21の下部には揺動自在となった主ボディ21の支持を補助する補助部材54が一体的に設けられている。補助部材54は球体部35の球面下部を収容する収容凹部55と、当該球体部35と円周方向全体に当接する球面当接部56を有している。その球面当接部56の当接により主ボディ21が球体部35から外れ落ちることを防いでいる。かかる構成において、本体20の内圧が高められると、球面当接部56と球体部35の球面との摩擦抵抗が高くなり、本体20の傾倒が抑制される。なお、この別例では補助部材54も本体20の一部であり、球面軸受け部53と補助部材54の収容凹部55とで球体部35の収容部が構成されている。また、球面当接部56が下側当接部にあたる。
【0062】
その他、前述した半球状の球面軸受け部53に代えて、図7(b)に示されているように、テーパ面を有する凹部57とし、その凹部57に球体部35の上部が収容された構成としてもよい。この場合、凹部57のテーパ面に球体部35の球面上部が当接することにより、主ボディ21が揺動自在となる。
【0063】
上記実施の形態では、揺動機構の構成として、本体20側に球面軸受け部28aが設けられ、支持体30側に球体部35が設けられているが、それを逆にした構成としてもよい。つまり、本体20側に球体部が設けられ、支持体30側に球面軸受け部が設けられた構成であってもよい。この場合、図示を省略するが、主ボディ21の下面に下方へ延びる軸部が設けられ、その軸部の先に球体部が設けられる。かかる構成では、本体20の傾倒を抑制するOリング29、内圧調節用通路42及び閉空間K等は支持体30側に設けられることになる。そして、支持体30内の閉空間Kの内圧が高められると、その内圧によって本体20が支持体30に対して押し上げられる。これにより、球面軸受け部の上部側で球体部との当接力が高まり、それとともに摩擦抵抗が高められるため、本体20の傾倒抑制を実現できる。
【0064】
上記実施の形態では、多孔質体26の上面と主ボディ21の上面とが面一とされているが、多孔質体26をその上面が主ボディ21の上面から突出した状態で設けられた構成であってもよい。
【0065】
上記実施の形態では、非接触支持装置11をステージSの位置決め装置に用いた場合を想定して説明しているが、ワーク(ステージSや平板状物等)の移載装置等、他の用途に非接触支持装置11が用いられるようにしてもよい。
【0066】
[第2の実施形態]
この第2の実施形態は、上記第1の実施形態と浮上ユニットの構成が一部異なったものである。このため、以下ではその浮上ユニットについて構成上の相違点、及びそれによって生じる浮上ユニットの動作の相違点を中心に説明し、共通部分については同一の符号を付して説明を省略する。また、効果や別例についても共通するものは説明を省略する。
【0067】
最初に、この第2の実施形態における浮上ユニットの構成上の相違を、図8を参照しながら説明する。図8は浮上ユニットの一部断面図である。図8に示されているように、浮上ユニット60は揺動機構の構成、特に本体20側の構成が異なっている。まず、主ボディ21の下面中央部に半球凹状をなす球面軸受け部61が設けられている。この球面軸受け部61によって支持体30の球体部35の上部が軸受けされる。また、主ボディ21の下面には、揺動自在となった主ボディ21の支持を補助する補助部材62が一体的に設けられている。補助部材62には球面軸受け部61の開口よりも若干大き目の収容孔63が形成され、その収容孔63には球体部35の下部が収容されている。収容孔63の下側開口は環状突部64によって上側開口よりも絞られており、その環状突部64に形成された溝にOリング65が球体部35の球面下部と密接した状態で配設されている。このOリング65が球体部35の球面下部に当接することにより、主ボディ21が球体部35から外れ落ちることを防いでいる。
【0068】
なお、この実施形態では、補助部材62も本体20の一部であり、球面軸受け部61と補助部材62の収容孔63とで球体部35の収容部が構成されている。また、球面軸受け部61が上側当接部にあたり、Oリング65の球面当接部分が下側当接部にあたる。
【0069】
以上より、浮上ユニット60では、球面軸受け部61及び補助部材62が設けられることで本体20が揺動自在となって支持体30に支持されている。そして、Oリング65の球面当接部分(図8において一点鎖線で囲まれたB部分)では摩擦抵抗が生じる。また、図8に示すように、Oリング65のつぶし力Wにより球面軸受け部61が球体部35の球面に押し付けられるため、球面軸受け部61でも摩擦抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗により、本体20の傾倒がある程度抑制される。
【0070】
次に、傾倒抑制機構について説明する。ここでは、図8の他、図8と同じく浮上ユニットの一部断面図であって、傾倒抑制を説明するための説明図である図9を適宜参照する。
【0071】
この浮上ユニット60では、内圧調節用通路42は、加圧ポート41の反対端が球面軸受け部61の球体部35の頭頂部にあたる部分で開口するように形成されている。そして、球面軸受け部61と球体部35の球面上部との間、及び補助部材62の収容孔63内に形成される空間が閉空間K2とされ、この閉空間K2に内圧調節用通路42は連通している。図9に示すように、加圧ポート41に加圧エアが供給されると、内圧調節用通路42を通じてこの閉空間K2の圧力が高まる。この加圧状態では、Oリング65によって閉空間K2がシールされる。したがって、加圧ポート41を大気開放とするか又は加圧ポート41に加圧エアを供給するかにより、閉空間K2の圧力を調節することが可能となっている。
【0072】
閉空間K2の圧力が高まると、図9において矢印で示されているように、本体20には上方への力が作用して押し上げられる。そうすると、B部分における摩擦抵抗が加圧前に比べて高まり、本体20の傾倒抑制効果も加圧前に比べて大きくなる。これにより、本体20の傾倒を抑制することが十分に可能となる。
【0073】
以上説明した第2の実施形態の浮上ユニット60によっても、閉空間K2の圧力を高めることにより本体20の傾倒が抑制される。そして、かかる浮上ユニット60が非接触支持装置11に設置されれば、浮上ユニット60の本体上面が水平状態に維持されるため、第1の実施形態の浮上ユニット13と同様の動作が可能となる。したがって、前述した第1の実施形態と同じ効果も得られる。
【0074】
もっとも、次の点では第2の実施形態に特有の優れた効果を有する。
【0075】
上記浮上ユニット60では、Oリング65が球体部35の球面下部と当接しているため、傾倒抑制のため本体20が押し上げられると、Oリング65はより一層つぶされることになる。B部分でのOリング65と球面との接触は線接触であり、高められたつぶし力はその接触部分に集中する。このため、面接触の場合よりも少ない加圧で傾倒抑制効果を高めることができる。
【0076】
なお、この第2の実施形態は上記した内容に限定されない。他の実施形態として考えられるものを以下に列挙する。
【0077】
上記実施の形態では、加圧ポート41及び内圧調節用通路42が主ボディ21に設けられているが、図10に示されているように、補助部材62に設けられた構成としてもよい。また、図示を省略するが、加圧ポート41が補助部材62に設けられるとともに、内圧調節用通路42が補助部材62及び主ボディ21の両者をまたいで設けられ、球面軸受け部61に開口するようにしてもよい。
【0078】
本体20が揺動自在となって支持体30に支持される構成としては、半球状の球面軸受け部61に代えて、図11(a)に示されているように、テーパ面を有する凹部71とし、その凹部71に球体部35の上部が収容された構成としてもよい。この場合、凹部71のテーパ面に球体部35の球面上部が当接することにより、本体20が揺動自在となって支持体30に支持される。
【0079】
その他、主ボディ21と球体部35とを直接当接させるのではなく、図11(b)に示されているように、第1の実施形態における球面軸受け部材28と同様の球面軸受け部材72が設けられた構成としてもよい。この場合、球体部35の球面下部に密接するOリング65を保持するためのOリング保持部材73が主ボディ21の下面に設けられる。
【0080】
[第3の実施形態]
この第3の実施形態も、上記第1の実施形態と浮上ユニットの構成が一部異なったものである。このため、以下ではその浮上ユニットについて構成上の相違点、及びそれによって生じる浮上ユニットの動作の相違点を中心に説明し、共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。また、効果や別例についても共通するものは適宜説明を省略する。
【0081】
最初に、この第3の実施形態における浮上ユニットの構成上の相違を、図12を参照しながら説明する。図12は浮上ユニットの一部断面図である。図12に示されているように、浮上ユニット80では、主ボディ21の取付凹部27が第1の実施形態の場合に比べて浅く形成され、それにより球面軸受け部材28の下部が主ボディ21の下面から突出した状態で主ボディ21に取り付けられている。
【0082】
さらに、この浮上ユニット80では、特に傾倒抑制に関する構成が異なっている。すなわち、Oリング29、加圧ポート41及び内圧調節用通路42の代わりに、傾倒抑制部材及び筒状部材としての筒状カラー81が支持体30の主軸部31及び首部34の周囲に取り付けられている。支持体30においては取付軸部32の横断面が主軸部31の横断面よりも大きくされ、それにより形成された環状の段差面82によって筒状カラー81の下面が支持されている。この筒状カラー81は、ウレタン樹脂等の軟質樹脂又はゴム等の弾性材料によって形成されている。そして、支持体30への非取付状態における筒状カラー81の高さH2は、球面軸受け部材28の下面と段差面82との間の高さH1よりも高く形成されている。このため、筒状カラー81は上下方向に圧縮された状態で支持体30に取り付けられており、筒状カラー81には上下方向への圧力が付与されている。この与圧により筒状カラー81は上下方向への復元力(図の矢印参照)が蓄積され、その上下面がそれぞれ球面軸受け部材28の下面及び段差面82と密接した状態で取り付けられている。
【0083】
ここで、弾性材料により形成された前記筒状カラー81は、本体20の自重による傾倒を抑制しつつ、ステージへの追従力に対しては弾性変形可能な弾性力を有している。第1の実施形態で説明したように、ステージから受ける荷重は本体20の重量を大きく上回るため、前述のような弾性力を有するという性質を筒状カラー81に付与することが可能となっている。
【0084】
以上のように、浮上ユニット80には本体20側の下面と密接した状態で筒状カラー81が設けられ、その筒状カラー81は本体20の傾倒を抑制しつつ、ステージへの追従力に対しては弾性変形可能な弾性力を有している。そのため、かかる浮上ユニット80が非接触支持装置11に設置されれば、本体20の自重による傾倒を抑制可能でありながら、ステージの傾斜に本体20が追従傾斜する機能を維持できる。
【0085】
詳しくは、ステージを浮上ユニット80の本体上面に載置する場合、筒状カラー81によって本体上面が水平状態に維持されるため、かかる動作によってステージが傷つくおそれを大幅に低減できる。載置されるステージが傾斜していたとすれば、ステージの載置によって本体20の自重を上回る荷重を受けて筒状カラー81は弾性変形し、本体20はステージSの傾斜に追従して傾斜する。なお、第1の実施形態と同様、この場合にはステージが水平な本体上部の角に当たり得るが、従来技術と比較すればステージを傷つけるおそれの大幅な低減が期待できる。
【0086】
次に、非接触支持中での本体20の追従動作について、動作説明図である図13を参照しながら説明する。なお、図13ではステージの傾斜及び浮上量が誇張して図示されている。図13に示されているように、ステージSの非接触支持中にステージSの一部が傾斜すると、その傾斜部分の下方に配置された浮上ユニット80ではステージSとの隙間が広がった部分で浮上力が十分に作用せず、ステージSから本体20が受ける反作用も小さくなる(図5(a)を参照した第1の実施形態の説明を参照)。そうすると、筒状カラー81の傾斜山側では与圧が軽減され、筒状カラー81の復元力により本体20が押し上げられる。その一方で、筒状カラー81の傾斜谷側では山側での押し上げに伴って本体20(詳しくは、球面軸受け部28の下面)が上から押し付けられ、筒状カラー81は弾性変形する。このようにして、本体20はステージSの傾斜に追従して傾斜する。その結果、図13に示されているように、ステージSの被支持面と浮上ユニット80の本体上面とが平行状態となり、ステージSが本体上部の角に衝突して傷つくおそれを低減できる。
【0087】
また、図示を省略するが、ステージの被支持面の面精度が悪く、一部の浮上ユニット80でその上面とステージとの隙間が想定浮上量よりも大きくなった場合、当該浮上ユニット80の本体20は筒状カラー81との当接により傾倒することが抑制される。これにより、本体上部の角がステージに当たりその状態で位置ズレが修正されてしまいステージが擦れて傷つくおそれも大幅に低減できる。
【0088】
以上より、この第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の効果が得られる。ただ、閉空間K等を有する傾倒抑制機構ではなく筒状カラー81が設けられている点で、この第3の実施形態にはその特有の優れた効果を有している。すなわち、上記浮上ユニット80では、支持体30の主軸部31に設けられる筒状カラー81によって本体20の傾倒が抑制されるため、上述した第1及び第2の実施形態と異なり、本体20に新たな細工をする必要がない。このため、傾倒抑制機能を有する浮上ユニットの製造コストを低減できる。
【0089】
なお、この第3の実施形態は上記した内容に限定されない。他の実施形態として考えられるものを以下に列挙する。
【0090】
上記実施の形態では、傾倒抑制部材として筒状カラー81が設けられているが、それに代えてOリングが用いられてもよい。この場合、図14に示されているように、支持体30における球体部35の付け根部分にOリング86が設けられた構成が例として考えられる。このOリング86の剛性により本体20の傾倒が抑制されるとともに、弾性力によりステージに対する本体20の追従機能が得られる。その他、傾倒抑制部材としては、コイルバネ等であってもよい。
【0091】
上記実施の形態では、被取付側の高さH1よりも高さH2が高い筒状カラー81を用いてそれが圧縮された状態で設けられているが、高さH1と同じかそれより若干低い高さH2の筒状カラー81が設けられた構成であってもよい。これにより、筒状カラー81の取り付けが容易となる。ただ、高さH2の低い筒状カラー81が取り付けられた構成では、球面軸受け部材28の下面が筒状カラー81の上面に当接するまで本体20が一定程度傾倒する。しかし、その場合でも本体20が一定以上傾倒しないようにする傾倒抑制効果は得られるし、若干高さが低い程度であるならば本体20を水平に近い状態で維持できる。このため、筒状カラー81が設けられていない構成に比べれば有効な手段となり得る。
【0092】
上記実施の形態では、球面軸受け部材28の下部を主ボディ21の下面から突出させているが、第1の実施形態と同様、球面軸受け部材28全体を取付凹部27に収めて主ボディ21の下面と球面軸受け部材28の下面とを面一とした構成としてもよい。
【0093】
上記実施の形態では、支持体30に筒状カラー81の下面を支持する段差面82が形成されているが、段差面82に代えて、非接触支持装置11が有する基体12の上面(ユニット設置面)によって筒状カラー81の下面が支持されるようにしてもよい。こうすることで、支持体30にも新たな細工は不要となり、筒状カラー81が設けられるだけで浮上ユニットに対して容易に傾倒抑制機能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1の実施形態における浮上ユニットの一部断面図。
【図2】浮上ユニットの傾倒抑制機能を説明するための説明図。
【図3】非接触支持装置を示す平面図。
【図4】ステージ載置動作を説明する動作説明図。
【図5】本体のステージ追従動作を説明する動作説明図。
【図6】第1の実施形態の別例(通路構成の相違)である浮上ユニットの一部断面図。
【図7】第1の実施形態の別例(揺動機構の相違)である浮上ユニットの一部断面図。
【図8】第2の実施形態における浮上ユニットの一部断面図。
【図9】浮上ユニットの傾倒抑制機能を説明するための説明図。
【図10】第2の実施形態の別例(通路構成の相違)である浮上ユニットの一部断面図。
【図11】第2の実施形態の別例(揺動機構の相違)である浮上ユニットの一部断面図。
【図12】第3の実施形態における浮上ユニットの一部断面図。
【図13】本体のステージ追従動作を説明する動作説明図。
【図14】第3の実施形態の別例(傾倒抑制部材の相違)である浮上ユニットの一部断面図。
【図15】従来の浮上ユニットを用いた場合の一問題点を説明する説明図。
【図16】従来の浮上ユニットを用いた場合の一問題点を説明する説明図。
【図17】従来の浮上ユニットを用いた場合の一問題点を説明する説明図。
【符号の説明】
【0095】
11…非接触支持装置、12…基体(ベース)13…浮上ユニット、14…噴出面、20…本体、23…気体通路、28a…球面軸受け部(収容部、上側当接部、下側当接部)、29…Oリング(弾性環状部材)、30…支持体、31…主軸部(軸部)、35…球体部、42…内圧調節用通路、60…浮上ユニット、61…球面軸受け部(収容部、上側当接部)、63…収容孔(収容部)、65…Oリング(弾性環状部材、下側当接部)、80…浮上ユニット、81…筒状カラー(傾倒抑制部材、筒状部材)、K…閉空間、S…ステージ(ワーク)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧気体を噴出する噴出面を有する本体が支持体によって支持されており、前記噴出面から噴出される加圧気体によりワークを非接触支持する浮上ユニットであって、
前記噴出面がワークの傾きに追従するように本体を揺動自在とする揺動機構と、
前記本体がその自重によって傾倒することを抑制する傾倒抑制機構と、
を備えていることを特徴とする浮上ユニット。
【請求項2】
前記揺動機構は、
前記本体又は前記支持体のいずれか一方に設けられた球体部と、
他方に設けられ、前記球体部を収容するとともに、収容された球体部の球面上部と円環状に当接する上側当接部及び球面下部と円環状に当接する下側当接部を少なくとも備えた収容部と、
を有し、
前記傾倒抑制機構は、
前記収容部に収容された前記球体部の球面と当接する弾性環状部材と、
前記弾性環状部材の配置によって前記他方の内部に設けられ、前記弾性環状部材によってシールされた閉空間と、
前記閉空間に連通し、当該閉空間の内圧を調節可能とする内圧調節用通路と、
を有し、
前記閉空間は同閉空間の圧力の高まりによって前記本体を押し上げる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の浮上ユニット。
【請求項3】
前記上側当接部及び前記下側当接部の少なくとも一方は球面軸受け部であることを特徴とする請求項2に記載の浮上ユニット。
【請求項4】
前記内圧調節用通路は、前記噴出面に加圧気体を供給すべく前記本体に設けられた気体通路とは別に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の浮上ユニット。
【請求項5】
前記弾性環状部材は前記球体部の球面上部に設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の浮上ユニット。
【請求項6】
前記弾性環状部材は前記球体部の球面下部に設けられ、当該弾性環状部材の球面当接部分が前記下側当接部であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の浮上ユニット。
【請求項7】
加圧気体を噴出する噴出面を有する本体が支持体によって支持されており、前記噴出面から噴出される加圧気体によりワークを非接触支持する浮上ユニットであって、
前記噴出面がワークの傾きに追従するように本体を揺動自在とする揺動機構と、
前記本体の自重による傾倒を抑制しつつ、ワークへの追従力に対しては弾性変形可能な弾性力を有し、自重によって傾倒しようとする前記本体と当接可能に設けられた傾倒抑制部材と、
を備えていることを特徴とする浮上ユニット。
【請求項8】
前記揺動機構は、
前記本体又は前記支持体のいずれか一方に設けられた球体部と、
他方に設けられ、前記球体部の球面と当接した状態で当該球体部を収容する収容部と、
を有し、
前記傾倒抑制部材は、前記球体部から延設された軸部に設けられ、自重によって傾倒しようとする前記本体の下面と当接可能な筒状部材であることを特徴とする請求項7に記載の浮上ユニット。
【請求項9】
ベース上に請求項1乃至8のいずれか1項に記載の浮上ユニットが複数設置された非接触支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−60013(P2010−60013A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224745(P2008−224745)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】