説明

減衰力調整式油圧緩衝器

【課題】より安定した減衰力特性が得られる減衰力調整式油圧緩衝器を提供する。
【解決手段】パイロット流路74の開口形状を略三角形にした。これにより、コイル59への通電電流値(制御電流値)と発生する減衰力との関係が略直線となり、均等な減衰力マップを得ることができる。これにより、より安定した減衰力特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰力調整式油圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソレノイドの推力によってディスクバルブの開弁圧力を調整してパイロット型減衰弁の開弁前の減衰力を調整するとともに、圧力制御弁による制御圧力によってパイロット圧力を変化させてパイロット型減衰弁の開弁圧力を調整する減衰力調整式油圧緩衝器が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような減衰力調整式油圧緩衝器は、減衰力特性の調整範囲が広く、ピストン速度にかかわらず減衰力を直接制御することができるので、温度変化による減衰力特性への影響が小さく、且つ、急激な入力を適宜吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−287281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の減衰力調整式油圧緩衝器は、ソレノイドによって推力が調整されるプランジャの一端の受圧面積が他端の受圧面積よりも大きいため、プランジャにパイロット圧を作用させると、プランジャには、前述したソレノイドの推力によって調整される推力と、両端面の面積の差分に応じた力とが作用することになる。そして、パイロット圧はピストン速度の変化の影響を受けることから、結局、減衰力特性は、ピストン速度の影響を受けることになる。
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、より安定した減衰力特性を得ることが可能な減衰力調整式油圧緩衝器を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の減衰力調整式油圧緩衝器は、流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、前記ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる前記流体の流れを制御して減衰力を発生させるメインバルブと、前記メインバルブに対して閉弁方向へ内圧を作用させるパイロット室と、前記パイロット室に前記流体を導入する導入通路と、前記パイロット室と前記メインバルブの下流側とを連通するパイロット通路と、前記パイロット通路に設けられて前記パイロット通路を流れる前記流体の流れを制御する制御弁と、を備える減衰力調整式油圧緩衝器であって、前記制御弁は、前記パイロット通路の周囲に設けられた環形の弁座と、前記弁座に軸方向に離着座されて内周側に連通孔を有する筒形状の弁体と、先端部が前記弁体の前記連通孔に軸方向へ摺動可能に挿入されてばねを介して前記弁体を軸方向へ付勢する作動ロッドと、前記作動ロッドを軸方向へ貫通して前記作動ロッドの両端に前記パイロット通路の圧力を作用させる軸通路と、ソレノイドが発生する推力によって前記作動ロッドを軸方向へ付勢するアクチュエータと、前記弁体と前記作動ロッドとの軸方向の相対位置を調節することにより前記パイロット通路と前記メインバルブの下流側とを連通遮断するサブバルブ機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、より安定した減衰力特性を得ることが可能な減衰力調整式油圧緩衝器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の減衰力調整式油圧緩衝器の軸平面による断面図である。
【図2】第1実施形態における減衰力発生機構の軸平面による断面図である。
【図3】図2におけるパイロットバルブの拡大図である。
【図4】第2実施形態の説明図であって、図3に対応する図である。
【図5】第2実施形態に用いられるパイロットバルブの弁体の説明図であって、(A)は第1部材の軸平面による断面図、(B)は第2部材の軸平面による断面図、(C)は第2部材の平面図である。
【図6】第3実施形態の説明図であって、図3及び図4に対応する図である。
【図7】第3実施形態の説明図であって、作動ロッドの一端部の斜視図である。
【図8】第3実施形態の説明図であって、(H)はハード側の減衰力の時のパイロット流路の開口形状(流路面積)を示し、(S)はソフト側の減衰力の時のパイロット流路の開口形状(流路面積)を示す。
【図9】第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態における、サブバルブ機構(流量制御弁)のストローク量とパイロット流路の流路面積との関係を示す図である。
【図10】第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態における、制御電流値(ソレノイドへの通電電流値)と流量制御弁が発生する減衰力との関係を示す図である。
【図11】第4実施形態の説明図であって、図3、図4、図6に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1に示されるように、減衰力調整式緩衝器1は、シリンダ2の外側に外筒3を設けた複筒構造に構成され、シリンダ2と外筒3との間には、リザーバ4が形成されている。シリンダ2内には、ピストン5が摺動可能に嵌装され、このピストン5によってシリンダ2内がシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に画成される。ピストン5には、ピストンロッド6の一端がナット7によって連結され、ピストンロッド6の他端側は、シリンダ上室2Aを通って、シリンダ2及び外筒3の上端部に装着されたロッドガイド8とオイルシール9とに挿通され、シリンダ2の外部へ延出される。シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを区画するベースバルブ10が設けられる。
【0009】
ピストン5には、シリンダ上室2A、シリンダ下室2B間を連通する通路11、12が設けられる。通路12には、シリンダ下室2B側からシリンダ上室2A側への流体の流通のみを許容する逆止弁13が設けられる。通路11には、シリンダ上室2A側の流体の圧力が所定圧力に到達した時に開弁し、この圧力をシリンダ下室2B側へ逃がすためのディスクバルブ14が設けられる。ベースバルブ10には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを連通する通路15、16が設けられる。通路15には、リザーバ4側からシリンダ下室2B側への流体の流通のみを許容する逆止弁17が設けられる。通路16には、シリンダ下室2B側の流体の圧力が所定圧力に到達した時に開弁し、この圧力をリザーバ4側へリリーフするディスクバルブ18が設けられる。なお、シリンダ2内には、作動流体としての流体が封入され、リザーバ4内には、流体及びガスが封入されている。
【0010】
シリンダ2の上下両端部には、シール部材19を介してセパレータチューブ20が外嵌される。また、シリンダ2とセパレータチューブ20との間には、環形通路21が形成される。環形通路21は、シリンダ2の上端部側壁に設けられた通路22によってシリンダ上室2Aに連通される。セパレータチューブ20の側壁の下部には、小径の開口23が突出される。外筒3の側壁には、開口23と略同心の大径の開口24が設けられ、この開口24には、減衰力発生機構25が設けられる。
【0011】
図2に示されるように、減衰力発生機構25は、外筒3の側壁の開口24に取り付けられた円筒状のケース26を有する。このケース26内には、環形の通路プレート30、フランジ形のメインバルブ部材32、軸線方向中央に大外径部を有するオリフィス通路部材33、及び図2における左側の端面に凹部34Aが形成されるとともの図2における右側の端面に凹部34Bが形成された略円柱形のパイロットバルブ部材34が収容される。また、ケース26には、略円筒形のソレノイドケース36がナット37によって結合されている。通路プレート30は、ケース26の端部に形成された内側フランジ26Aに当接されて固定される。通路プレート30には、軸方向(図2における左右方向)に延びてリザーバ4とケース26内の室26Bとを連通させる複数個の通路38が設けられる。
【0012】
メインバルブ部材32は、一端が通路40に開口するとともに他端が環形凹部32Aに開口する複数個の通路44を有する。メインバルブ部材32は、環形凹部32Aの外周側に環形のシート部45が突出し、環形凹部32Aの内周側には、環形のクランプ部46が突出する。メインバルブ部材32のシート部45には、メインバルブ27を構成するディスクバルブ47の外周部が着座される。ディスクバルブ47の内周部は、メインバルブ部材32のクランプ部46とオリフィス通路部材33の大外径部とによってクランプされる。ディスクバルブ47の背面側外周部には、環形の摺動シール部材48が固着される。オリフィス通路部材33は、一端部がメインバルブ部材32の中央の開口部に挿入され、他端部がパイロットバルブ部材34の中央の開口部に挿入されて固定される。オリフィス通路部材33には、通路49が軸方向へ貫通する。通路49は、一端部の先端部に形成された固定オリフィス50を介してメインバルブ部材32の通路41に連通される。そして、通路53、通路49、固定オリフィス50及び通路41によって、パイロット室51へ流体を導入する導入通路が構成される。
【0013】
パイロットバルブ部材34の凹部34Aの内周面には、ディスクバルブ47の摺動シール部材48が摺動可能且つ液密に嵌合され、ディスクバルブ47の背部にパイロット室51を形成する。ディスクバルブ47は、通路44側の圧力を受けて開弁され、これにより、通路44が、通路42を介して下流側のケース26内の室26Bに連通される。パイロット室51の内圧は、ディスクバルブ47に対して閉弁方向に作用する。パイロット室51は、オリフィス通路部材33の通路53を介して通路49に連通される。パイロットバルブ部材34の凹部34Bの内側には、メインバルブ27に対して閉弁方向へ内圧を作用させる弁室55が設けられる。また、パイロットバルブ部材34には、凹部34Aと凹部34Bとを連通して弁室55へ流体を導入するパイロット通路43が設けられる。このパイロット通路43は、オリフィス通路部材33の通路49に連通される。
【0014】
ソレノイドケース36には、コイル59と、コイル59内に挿入されたコア60、61と、コア60の外周面に嵌合されるリング部材54と、コア60、61に案内されるプランジャ62と、プランジャ62に連結された作動ロッド63とが組み込まれる。これらは、ソレノイドアクチュエータ35(アクチュエータ)を構成する。そして、リード線64を介してコイル59に通電されることにより、通電電流(制御電流)に応じた軸方向への推力がプランジャ62に作用するように構成されている。
【0015】
弁室55は、コア60の通路56及びソレノイドケース36に設けられた固定オリフィス57を介してケース26内の室26Bに連通される。そして、通路53、通路49、パイロット通路43、弁室55、通路56及び固定オリフィス57によって、パイロット室51がディスクバルブ47(メインバルブ27)の下流側の室26Bに連通される。パイロットバルブ28(制御弁)の弁室55には、パイロットバルブ部材34の凹部34Bの中央に配置されてパイロット通路43の周囲に形成された環形の弁座52と、この弁座52に着座される弁体58が設けられる。なお、図2に示される符号31は、弁室55内の圧力が上昇して設定圧力に到達した時点で開弁し、弁室55内の流体をケース26内の室26Bへ逃がすリリーフバルブである。
【0016】
図3に示されるように、弁体58は、筒形に形成されており、内周側には連通孔68が設けられている。弁体58の連通孔68には、作動ロッド63の一端部が摺動可能に嵌合されている。この作動ロッド63の一端部の大外径部69には、フランジ70によって作動ロッド63に対する軸方向(図3における右方向)への相対移動が阻止されたリング形のばね71が装着されている。ばね71の外周部は、弁体58の外周部に形成された環形の凸部72に当接される。また、弁体58のテーパ状の先端部には、環形のシート部65が形成されている。
【0017】
弁体58には、コイル59への通電によるプランジャ62の推力がばね71を介して入力され、これにより、弁体58は、弁体58とパイロットバルブ部材34の凹部34Bとの間に介装されたバルブスプリング67(圧縮コイルばね)のばね力に抗して前進し、シート部65が弁座52のシート面に着座してポート66が閉じられる。弁体58は、閉弁時、すなわち、シート部65がシート面に着座した時、作動ロッド63の軸通路73がポート66内に開口し、軸通路73を介してポート66とコア61内の作動ロッド63の背部の室61Aとが連通される。これにより、作動ロッド63の両端部に、パイロット通路43の圧力が作用される。なお、第1実施形態では、作動ロッド63の一端部端面(図2における左側端面)の受圧面積Aと室61Aに臨む他端部端面の受圧面積B(図2における右側端面)とが等しくなるように構成されている(A=B)。
【0018】
パイロットバルブ28(制御弁)は、弁体58と作動ロッド63との軸方向(図3における左右方向)の相対位置を調節することにより、パイロット通路43と弁室55(メインバルブ28の下流側、延いては、室26B)とを連通するパイロット流路74の流路面積を調節するサブバルブ機構75を有する。パイロット流路74は、弁体58の軸部を半径方向へ貫通する複数本(第1実施形態では4本)の断面が円形の通路であり、弁体58の同一軸直角面上に軸線回りに等間隔(第1実施形態では90°間隔)で配置される。なお、パイロット流路74の流路面積とは、パイロット流路74の、弁体58の内周面(連通孔68)に開口する面積、言い換えると、パイロット通路74の断面(円形)の面積から、作動ロッド63の先端部によって遮られた部分の面積を差し引いた面積である。
【0019】
通常の作動状態では、コイル59に通電されて弁体58のシート部65が弁座52のシート面に着座され、これにより、パイロットバルブ28による圧力制御が実行される。
ピストンロッド6の伸び行程時には、シリンダ2内のピストン5の移動によって、ピストン5の逆止弁13が閉じられ、ディスクバルブ14の開弁前には、シリンダ上室2A側の流体が加圧されて通路22及び環形通路21を通り、セパレータチューブ20の開口23から減衰力発生機構25のメインバルブ部材32に形成された通路40へ流入する。この時、ピストン5の移動量に応じた流体が、リザーバ4からベースバルブ10の逆止弁17を開いてシリンダ下室2Bへ流入する。なお、シリンダ上室2Aの圧力がピストン5のディスクバルブ14の開弁圧力に到達すると、ディスクバルブ14が開いてシリンダ上室2Aの圧力がシリンダ下室2Bへリリーフされることで、シリンダ上室2Aの過度の圧力上昇を防止する。
【0020】
減衰力発生機構25では、メインバルブ部材32の通路40から流入した流体は、メインバルブ27のディスクバルブ47の開弁前(ピストン速度低速域)において、オリフィス通路部材33の固定オリフィス50、通路49、パイロットバルブ部材34のパイロット通路43を通り、パイロットバルブ28の弁体58を押し開いて弁室55内へ流入する。さらに、流体は、コア60の通路56、ソレノイドケース36の固定オリフィス57、ケース26内の室26B及び通路プレート30の通路38を通ってリザーバ4へ流れる。そして、ピストン速度が上昇してシリンダ上室2A側の圧力がディスクバルブ47の開弁圧力に到達すると、通路40に流入した流体は、通路44を通ってディスクバルブ47を押し開き、ケース26内の室26Bへ直接流れる。
【0021】
他方、ピストンロッド6の縮み行程時には、シリンダ2内のピストン5の移動によって、ピストン5の逆止弁13が開いてベースバルブ10の通路15の逆止弁17が閉じ、ディスクバルブ18の開弁前に、ピストン下室2Bの流体がシリンダ上室2Aへ流入し、ピストンロッド6がシリンダ2内に侵入した分の流体が、シリンダ上室2Aから、伸び行程時と同様の経路を通ってリザーバ4へ流れる。なお、シリンダ下室2B内の圧力がベースバルブ10のディスクバルブ18の開弁圧力に到達すると、ディスクバルブ18が開かれてシリンダ下室2Bの圧力がリザーバ4へリリーフされることで、シリンダ下室2Bの過度の圧力上昇を防止する。
【0022】
上述したように、減衰力発生機構25では、メインバルブ27のディスクバルブ47の開弁前(ピストン速度低速域)において、固定オリフィス50及びパイロットバルブ28の弁体58の開弁圧力によって減衰力が発生し、ディスクバルブ47の開弁後(ピストン速度高速域)においては、その開度に応じて減衰力が発生し、コイル59への通電電流(制御電流)によってパイロットバルブ28の開弁圧力を調整することにより、ピストン速度に係わらず、減衰力を直接制御することができる。ここで、パイロットバルブ28の開弁圧力によって、その上流側の通路43に連通する弁室55の内圧が変化し、この弁室55の内圧は、ディスクバルブ47の閉弁方向に作用するので、パイロットバルブ28の開弁圧力を制御することにより、ディスクバルブ47の開弁圧力を同時に調整することができ、これにより、減衰力特性の調整範囲を広くすることができる。
【0023】
また、図3に示されるように、第1実施形態では、コイル59への通電電流(制御電流)を制御してばね71のばね力に抗して作動ロッド63を推進させ、弁体58と作動ロッド63との軸方向(図3における左右方向)の相対位置を調節する、言い換えると、弁体58の連通孔68に開口したパイロット流路74の開口を作動ロッド63の一端部によって遮る度合いを調節することにより、パイロット流路74の流路面積が調節される。このように、コイル59への通電電流を制御してパイロット流路74の流路面積を調節することにより、メインバルブ27の開弁前のピストン速度の低速域において、パイロットバルブ28によるバルブ特性(圧力制御)とサブバルブ機構75によるオリフィス特性(流量制御)との両方を調整することが可能になり、減衰力特性の設定の自由度を拡大することができる。
【0024】
また、第1実施形態によれば、作動ロッド63の一端部端面の受圧面積Aと他端部端面の受圧面積Bとが同一に設定されているので(A=B)、作動ロッド63には、ソレノイドアクチュエータ35が発生する推力(以下、ソレノイド推力という)が作用するのみで、ピストン速度によって変化するパイロット圧力による力は作用しない(相殺される)。したがって、コイル59への通電電流が一定である場合、ピストン速度の変化によって弁体58と作動ロッド63とが軸方向へ相対移動することがないので、パイロット流路74の流路面積を一定に保つことができ、狙った(正規の)オリフィス特性を得ることが可能であり、特に、ソフト側の減衰力の低減に有効である。さらに、ピストン速度の変化によって弁体58と作動ロッド63とが軸方向へ相対移動することがないので、減衰力の応答性(立ち上がり性)を向上させることができる。
【0025】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を添付した図に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と同一又は相当の構成には同一の名称および符号を付与し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
前述した第1実施形態では、弁体58に設けられたパイロット流路74の流路形状(断面形状)が円形に形成されているのに対して、第2実施形態では、パイロット流路74の流路形状を長方形(四角形)に形成した。また、図5に示されるように、弁体58は、環形の凸部72を有するフランジ形の第1部材76(図5の(A)参照)と、環形のシート部65を有する略円筒形の第2部材77(図5の(B)参照)とに分割して構成される。
【0026】
第2部材77は、第1部材76の軸部76Aが嵌合される大内径部77Aと、第1部材76の軸部76Aと同一の内径を有する小内径部77Bとを有する。第2部材77の大内径部77Aには、大内径部77Aと同一の高さH1で所定幅W1を有する複数個(第2実施形態では4個)の切欠き78が、周方向に等間隔(第2実施形態では軸線回りに90°間隔)で設けられている。第1部材の軸部76Aの高さH2(軸方向長さ)は、切欠き78の高さH1よりも、パイロット流路74の断面形状(長方形)の軸方向寸法(サブバルブ機構75のストローク、すなわち、流量制御弁のストローク)分だけ短く設定されており、これにより、第1部材76の軸部76Aを第2部材77の大内径部77Aに嵌合させることにより、断面が長方形で、入口側(内周側)に対して出口側(外周側)の断面積が大きい各パイロット流路74を有する弁体58が形成される。
【0027】
前述した第1実施形態では、弁体58の内周面(連通孔68)に開口したパイロット流路74の流路形状(開口形状)が円形であるため、パイロット流路74の流路面積は、サブバルブ機構75のストローク、すなわち、流量制御弁のストロークによって決定されるが、第2実施形態によれば、パイロット流路74の流路形状を長方形にしたことにより、長方形のパイロット流路74の軸方向長さが短くても、パイロット流路74の幅W1を大きく設定することで、パイロット流路74の流路面積を確保することができる。これにより、第1実施形態と比較した場合、流量制御弁のストロークを大幅に短縮することができる。
【0028】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を添付した図に基づき説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一又は相当の構成には同一の名称および符号を付与し、第1及び第2実施形態と重複する説明を省略する。
前述した第2実施形態では、パイロット流路74の断面を長方形とすることで、パイロット流路74の流路形状を長方形に設定して、流量制御弁(サブバルブ機構75)のストロークを短縮させた。第3実施形態では、第2実施形態の、パイロット流路74の断面形状を長方形とする構成はそのままに、図6及び図7に示されるように、作動ロッド63の一端部端面に2つの曲面79A、79Bを形成することにより、パイロット流路74の流路形状を略三角形に形成した。
【0029】
図8に示されるのは、第3実施形態におけるソフト側(S)の減衰力の時の流路面積とハード側(H)の減衰力の時の流路面積とを比較したものである。ソフト側(S)の減衰力の時には、パイロット流路74の流路面積(斜線部分)が最大である。このソフト側(S)の状態で、コイル59への通電電流を制御して流量制御弁(サブバルブ機構75)をストロークさせる、典型的には、ばね71のばね力に抗して作動ロッド63をストロークさせると、パイロット流路74の流路面積(斜線部分)が最小になり、流量制御弁はハード側(H)へ移行される。
【0030】
そして、図9は、パイロット流路74の流路形状が円形である第1実施形態、パイロット流路74の流路形状が長方形である第2実施形態、及びパイロット流路74の流路形状が略三角形である第3実施形態の、流量制御弁のストローク量とパイロット流路74の流路面積との関係を示す。また、図10は、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態の、コイル59への通電電流値(制御電流値)と減衰力との関係を示す。これらの図に示されるように、第3実施形態では、パイロット流路74の流路形状を略三角形に設定したことにより、流量制御弁(サブバルブ機構)のストローク量の増加に伴い、パイロット流路74の流路面積が二次曲線状に増加して、これにより、コイル59への通電電流値(制御電流値)と発生する減衰力との関係が略直線となり、均等な減衰力マップを得ることができる。これにより、減衰力特性を安定化(均等化)することができる。
【0031】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態を添付した図に基づき説明する。なお、前述した第1乃至第3実施形態と同一又は相当の構成には同一の名称および符号を付与し、第1乃至第3実施形態と重複する説明を省略する。
前述した第2実施形態では、パイロット流路74の断面形状を長方形とすることで、パイロット流路74の流路形状を長方形に設定して、流量制御弁(サブバルブ機構75)のストロークを短縮させた。第4実施形態では、第2実施形態の、パイロット流路74の断面形状を長方形とする構成はそのままに、図11に示されるように、作動ロッド63の一端部、すなわち、弁体58の連通孔68に嵌合される部分の外径をその他の部分の外径よりも大きく形成することで、作動ロッド63の一端部端面の受圧面積Aを他端部端面の受圧面積Bよりも大きく設定した(A>B)。
【0032】
第4実施形態によれば、作動ロッド63の一端部端面の受圧面積Aを他端部端面の受圧面積Bよりも大きく設定したので、作動ロッド63の両端部端面にパイロット圧力が作用された場合に、作動ロッド63には、パイロット圧力による図11における右方向への推力が作用する。これにより、流体力によって作動ロッド63が引き込まれる(図11における左方向へ移動する)ことを防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 減衰力調整式緩衝器、2 シリンダ、6 ピストンロッド、25 減衰力発生機構、27 メインバルブ、28 パイロットバルブ(制御弁)、43 パイロット通路、51 パイロット室、52 弁座、58 弁体、63 作動ロッド、68 連通孔、74 パイロット流路、75 サブバルブ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、
前記ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、
前記ピストンの摺動によって生じる前記流体の流れを制御して減衰力を発生させるメインバルブと、
前記メインバルブに対して閉弁方向へ内圧を作用させるパイロット室と、
前記パイロット室に前記流体を導入する導入通路と、
前記パイロット室と前記メインバルブの下流側とを連通するパイロット通路と、
前記パイロット通路に設けられて前記パイロット通路を流れる前記流体の流れを制御する制御弁と、
を備える減衰力調整式油圧緩衝器であって、
前記制御弁は、
前記パイロット通路の周囲に設けられた環形の弁座と、
前記弁座に軸方向に離着座されて内周側に連通孔を有する筒形状の弁体と、
先端部が前記弁体の前記連通孔に軸方向へ摺動可能に挿入されてばねを介して前記弁体を軸方向へ付勢する作動ロッドと、
前記作動ロッドを軸方向へ貫通して前記作動ロッドの両端に前記パイロット通路の圧力を作用させる軸通路と、
ソレノイドが発生する推力によって前記作動ロッドを軸方向へ付勢するアクチュエータと、
前記弁体と前記作動ロッドとの軸方向の相対位置を調節することにより前記パイロット通路と前記メインバルブの下流側とを連通遮断するサブバルブ機構と、
を備えることを特徴とする減衰力調整式油圧緩衝器。
【請求項2】
前記作動ロッドの一端の受圧面積と他端の受圧面積とが等しいことを特徴とする請求項1に記載の減衰力調整式油圧緩衝器。
【請求項3】
前記サブバルブ機構は、前記パイロット通路と前記メインバルブの下流側とを連通するパイロット流路の流路面積を調節する流量制御弁であって、前記パイロット流路の流路形状が四角形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の減衰力調整式油圧緩衝器。
【請求項4】
前記パイロット流路の流路形状が三角形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の減衰力調整式油圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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