説明

湿気硬化型樹脂組成物

【課題】透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性に優れる湿気硬化型樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンと加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体との混合物100質量部、(B)疎水性シリカ1〜100質量部、(C)アミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物とのマイケル付加反応物1〜15質量部、および(D)硬化触媒0.1〜10質量部を含む湿気硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿気硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来変成シリコーン系樹脂を含む湿気硬化型接着剤組成物について錫触媒およびアミノシランを含むものが提案されている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−277751号公報
【特許文献2】特開2000−38560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら本願発明者らはアミノシランを含有する変成シリコーン系樹脂組成物を湿気硬化させて得られる硬化物は透明性に劣ることを見出した。
そこで本発明は透明性に優れる湿気硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アミノシランの代わりにアミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物とのマイケル付加反応物を使用する場合、得られる硬化物が、アミノシランを使用する場合より透明性に優れることを見出した。
そして、さらに本願発明者らは検討を進め、(A)加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンと加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体との混合物100質量部、(B)疎水性シリカ1〜100質量部、(C)アミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物とのマイケル付加反応物1〜15質量部、および(D)硬化触媒0.1〜10質量部を含む組成物が透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性に優れる湿気硬化型樹脂組成物となることを見出し、本願発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜8を提供する。
1.(A)加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンと加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体との混合物100質量部、
(B)疎水性シリカ1〜100質量部、
(C)アミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物とのマイケル付加反応物1〜15質量部、および
(D)硬化触媒0.1〜10質量部を含む湿気硬化型樹脂組成物。
2. 前記加水分解性シリル基が、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む上記1に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
3. 前記マイケル付加反応物が、1分子中にアミノ基、イミノ基および第3級アミノ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の基を少なくとも2つ有する上記1または2に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
4. 前記硬化触媒が下記式(I)で表されるものを含む上記1〜3のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1、R2、R3およびR4は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R1〜R4が同一であっても異なっていてもよい。)
5. さらに下記式(II)で表されるヒンダードアミン系光安定剤を0.1〜5質量部含む上記1〜4のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【化2】

(式中、R1は水素原子またはアルキル基であり、R2は無置換のもしくは置換基を有することができる、ピペリジル基またはアルキル基であり、nは4〜8の整数である。)
6. 前記疎水性シリカの平均粒径が0.01〜300μmである上記1〜5のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
7. さらにアミノ基含有アルコキシシラン化合物を含む上記1〜6のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
8. さらに脱水剤を含む上記1〜7のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は透明性に優れる。また本発明の湿気硬化型樹脂組成物は速硬化性、接着性、貯蔵安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の湿気硬化型樹脂組成物は
(A)加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンと加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体との混合物100質量部、
(B)疎水性シリカ1〜100質量部、
(C)アミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物とのマイケル付加反応物1〜15質量部、および
(D)硬化触媒0.1〜10質量部を含む組成物である。
以下本発明の湿気硬化型樹脂組成物を本発明の組成物ということがある。
【0009】
混合物(A)について以下に説明する。本発明の組成物に含有される混合物(A)は加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンと加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体とを含有する。
混合物(A)に含有される加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンは特に制限されない。
ポリオキシアルキレンの主鎖は例えば[−CH(CH3)CH2−O−]を繰り返し単位として有するものが挙げられる。主鎖のポリオキシアルキレンはホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。
加水分解性シリル基としては例えば下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【化3】

式中、Xはヒドロキシ基または加水分解性基であり、Rは炭素数1〜20の、置換または非置換の有機基であり、nは1、2または3である。複数のXは同じでも異なってもよい。複数のRは同じでも異なってもよい。有機基は、脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素基は鎖状、分岐状、環状、これらの組み合わせであってもよい。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。有機基は具体的には例えばメチル基、エチル基のようなアルキル基が挙げられる。
ポリオキシアルキレンが有する加水分解性シリル基は、透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性により優れるという観点から、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンの数平均分子量は透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性により優れるという観点から、5,000〜50,000であるのが好ましく、13,000〜35,000であるのがより好ましい。
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0010】
混合物(A)に含有される加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体は特に制限されない。本発明において(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルのうちの片方または両方をいう。
(メタ)アクリル重合体の主鎖はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。(メタ)アクリル重合体を製造する際に使用されるモノマーは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル[例えば(メタ)アクリル酸エステル]を含有することができる。また(メタ)アクリル重合体を製造する際に使用されるモノマーは重合性不飽和結合(例えばビニル基)を有する化合物を含有することができる。
加水分解性シリル基は加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンが有する加水分解性シリル基と同様である。(メタ)アクリル重合体が有する加水分解性シリル基は、透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性により優れるという観点から、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体の数平均分子量は透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性により優れるという観点から、1,000〜50,000であるのが好ましく、1,000〜10,000であるのがより好ましい。
加水分解性シリル基を有する重合体はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0011】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンと加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体との量比[質量比で、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン:加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体]は、透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性により優れるという観点から、2:8〜8:2であるのが好ましい。
混合物はその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
混合物として使用することができる市販品としては例えば、MA−451(カネカ社製)が挙げられる。
【0012】
疎水性シリカについて以下に説明する。本発明の組成物に含まれる疎水性シリカは疎水性のシリカであれば特に制限されない。本発明の組成物は疎水性シリカを含有することによって接着性に優れる。疎水性シリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ(煙霧質シリカ)やシリカエアロゲル等の微粉末シリカを有機珪素化合物、例えばジメチルジクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルシロキサン、トリメトキシオクチルシラン、メタクリルシラン、アクリルシラン等で処理し、疎水性としたものが挙げられる。なかでも、接着性により優れるという観点から、メタクリルシラン、アクリルシランが好ましい。
疎水性シリカの平均粒径は接着性、透明性により優れるという観点から、0.01〜300μmであるのが好ましく、0.01〜100μmであるのがより好ましい。
疎水性シリカはその製造について特に制限されない。疎水性シリカはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、疎水性シリカの量は接着性に優れるという観点から、混合物(A)100質量部に対して1〜100質量部であり、接着性により優れるという観点から、混合物(A)100質量部に対して2〜70質量部であるのが好ましく、3〜50質量部であるのがより好ましい。
【0013】
マイケル付加反応物(C)について以下に説明する。本発明の組成物に含まれるマイケル付加反応物(C)はアミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物とのマイケル付加反応による反応生成物である。本発明の組成物はマイケル付加反応物(C)を含むことによって、透明性、接着性に優れる。
マイケル付加反応物(C)を製造する際に使用されるアミノ基含有アルコキシシラン化合物は、−NH2(アミノ基)および/または−NH−(イミノ基)とアルコキシシリル基とを有する化合物であれば特に制限されない。−NH−(イミノ基)には2つの有機基が結合する。
−NH2(アミノ基)および/または−NH−(イミノ基)とアルコキシシリル基とは有機基を介して結合することができる。有機基としては、脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素基は鎖状、分岐状、環状、これらの組み合わせであってもよい。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。有機基は例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
アルコキシシリル基が有するアルコキシ基はその炭素原子数が1〜2であり、具体的には例えばメトキシ基、エトキシ基が挙げられる。1つの、アルコキシシリル基はアルコキシ基を1〜3個有することができる。アルコキシシリル基はアルコキシ基以外に有機基を有することができる。このような有機基としては例えばメチル基、エチル基のような炭素原子数1〜2のアルキル基が挙げられる。
アミノ基含有アルコキシシラン化合物は、接着性および速硬化性に優れるという観点から、−NH2(アミノ基)および/または−NH−(イミノ基)を2個有するのが好ましい。
【0014】
アミノ基含有アルコキシシラン化合物としては例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル−メチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピル−メチルジメトキシシランのような−NH2を1個有する化合物;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランのような−NH2を1個と−NH−を1個とを有する化合物が挙げられる。
【0015】
マイケル付加反応物(C)を製造する際に使用される(メタ)アクリル基含有化合物について以下に説明する。(メタ)アクリル基含有化合物は(メタ)アクリル基を有する化合物あれば特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルシランが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有するアルキル基は透明性に優れるという観点から、炭素原子数が2〜7であるのが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有するアルキル基(鎖状、分岐状のいずれであってもよい。)は透明性に優れるという観点から、ブチル基、イソブチル基が好ましい。
【0016】
(メタ)アクリルシランは(メタ)アクリル基[(メタ)アクリロキシ基および/または(メタ)アクリロイルオキシ基]と加水分解性シリル基とを有する化合物であれば特に制限されない。
(メタ)アクリル基と加水分解性シリル基とは有機基を介して結合することができる。(メタ)アクリル基は酸素原子を介して有機基と結合することができる。この場合(メタ)アクリル基は(メタ)アクリロイル基となる。有機基としては、脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素基は鎖状、分岐状、環状、これらの組み合わせであってもよい。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。有機基は例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
加水分解性シリル基は混合物(A)における加水分解性シリル基と同様である。
【0017】
(メタ)アクリルシランとしては例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシランが好ましい。
【0018】
アミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物との量比[化合物のモル比で、アミノ基含有アルコキシシラン化合物:(メタ)アクリル基含有化合物]は、透明性により優れ、接着性および速硬化性に優れるという観点から、1:1〜1:6であるのが好ましく、1:2〜1:4であるのがより好ましい。
マイケル付加反応物中に未反応の(メタ)アクリル基含有化合物が残留してもよい。
アミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物との反応は40〜100℃の条件下において行うことができる。
アミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物とはモル比でほぼ1:1で反応することができる。
【0019】
マイケル付加反応物は、透明性、速硬化性により優れるという観点から、1分子中にアミノ基、イミノ基および第3級アミノ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の基を少なくとも2つ有する化合物であるのが好ましく、1分子中にアミノ基、イミノ基および第3級アミノ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の基を少なくとも2つと加水分解性シリル基を1つまたは2つ以上とを有する化合物であるのがより好ましい。またマイケル付加反応物はさらに、(メタ)アクリル基含有化合物が有する(メタ)アクリル基[(メタ)アクリロキシ基および/または(メタ)アクリロイルオキシ基]に由来する残基を有することができる。
マイケル付加反応物は、透明性により優れるという観点から、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランのようなアミノ基含有アルコキシシラン化合物と、アクリル酸ブチル、(メタ)アクリロキシシランのような(メタ)アクリル基含有化合物との反応生成物であるのが好ましい。
マイケル付加反応物は、速硬化性により優れるという観点から、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランのようなアミノ基および/またはイミノ基を2個以上有するアミノ基含有アルコキシシラン化合物と、アクリル酸ブチル、(メタ)アクリロキシシランのような(メタ)アクリル基含有化合物との反応生成物であるのが好ましい。
マイケル付加反応物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明においてマイケル付加反応物の量は透明性に優れるという観点から、混合物(A)100質量部に対して1〜15質量部であり、透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性により優れるという観点から、混合物(A)100質量部に対して、1.5〜13質量部であるのが好ましく、2〜10質量部であるのがより好ましい。
【0021】
硬化触媒(D)について以下に説明する。本発明の組成物に含まれる硬化触媒(D)は特に制限されない。例えば4価のスズ化合物(例えば、アシレート型、シリケート型)が挙げられる。なかでも、硬化性、貯蔵安定性により優れるという観点から、シリケート型が好ましく、下記式(I)で表されるものがより好ましい。
【化4】

式中、R1、R2、R3およびR4は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R1〜R4が同一であっても異なっていてもよい。
炭素原子数1〜10の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素基は鎖状、分岐状、環状、これらの組み合わせであってもよい。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は具体的には例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基のようなアルキル基が挙げられる。
【0022】
硬化触媒(D)は、接着性、貯蔵安定性により優れるという観点から、下記化合物、ジオクチルスズ塩と正珪酸エチルの反応物が好ましい。
【化5】

硬化触媒(D)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
硬化触媒(D)の量は透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性に優れるという観点から、混合物(A)100質量部に対して0.1〜10質量部であり、透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性により優れるという観点から、混合物(A)100質量部に対して、0.2〜8質量部であるのが好ましく、0.3〜5質量部であるのがより好ましい。
【0024】
本発明の組成物はさらにヒンダードアミン系光安定剤(E)を含有することができる。ヒンダードアミン系光安定剤(E)は特に制限されない。ヒンダードアミン系光安定剤(E)は耐熱性、耐候性に優れるという観点から、下記式(II)で表されるものが好ましい。
【化6】

(式中、R1は水素原子またはアルキル基であり、R2は無置換のもしくは置換基を有することができる、ピペリジル基またはアルキル基であり、nは4〜8の整数である。)
アルキル基はその炭素原子数が1〜2であるのが好ましく、具体的には例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。アルキル基は無置換とすることができる。
無置換のもしくは置換基を有することができるピペリジル基としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。
【化7】

式中、R3〜R7はそれぞれ水素原子またはアルキル基である。
【0025】
ヒンダードアミン系光安定剤(E)は、優れた、透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性を維持しつつ、耐熱性、耐候性に優れるという観点から、下記式で表される化合物であるのが好ましい。
【化8】

【化9】

ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート
【化10】

メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート
ヒンダードアミン系光安定剤(E)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ヒンダードアミン系光安定剤(E)を併用する場合、優れた、透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性を維持しつつ、耐熱性、耐候性に優れるという観点から、式(II)においてR2が無置換もしくは置換基を有することができるピペリジル基である化合物と式(II)においてR2がアルキル基である化合物とを組み合わせるのが好ましい。
【0026】
ヒンダードアミン系光安定剤(E)の量は、優れた、透明性、速硬化性、接着性、貯蔵安定性を維持しつつ、耐熱性、耐候性に優れるという観点から、混合物(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのが好ましく、0.5〜3質量部であるのがより好ましい。
【0027】
本発明の組成物は、速硬化性、接着性により優れるという観点から、さらにアミノ基含有アルコキシシラン化合物を含むのが好ましい。
本発明の組成物がさらに含むことができるアミノ基含有アルコキシシラン化合物は、マイケル付加反応物を製造する際に使用されるアミノ基含有アルコキシシラン化合物と同様である。
なかでも、接着性により優れるという観点から、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランであるのが好ましい。
アミノ基含有アルコキシシラン化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
アミノ基含有アルコキシシラン化合物の量は、混合物(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0028】
本発明の組成物はさらに脱水剤を含むことができる。本発明の組成物はさらに脱水剤を含む場合、貯蔵安定性に優れる。脱水剤としては、例えば、ビニルシランが挙げられる。ビニルシシランはビニル基と加水分解性シリル基とを有する化合物であれば特に制限されない。加水分解性シリル基は混合物(A)におけるものと同様のものが挙げられる。ビニルシランとしては例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが挙げられる。脱水剤は、貯蔵安定性に優れるという観点から、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましい。
脱水剤の量は、貯蔵安定性に優れるという観点から、混合物(A)100質量部に対して、0.5〜10質量部であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0029】
本発明の組成物は上記の成分のほかに添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、例えば、疎水性シリカ以外の充填剤、ヒンダードアミン系光安定剤(E)以外の安定剤、可塑剤、溶剤、脱水剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、タッキファイアーが挙げられる。
本発明の組成物は上記成分を例えば混合することによって製造することができる。
本発明の組成物の用途としては、例えば、接着剤、シーリング剤が挙げられる。
本発明の組成物を適用することができる基材としては、例えば、金属、ガラス、プラスチック、ゴム、セラミック、モルタルが挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<マイケル付加反応物1〜4の製造>
下記第1表に示す成分を同表に示す量で使用し、これらを60℃の条件下で8時間反応させてマイケル付加反応物を製造した。得られた、マイケル付加反応物と未反応のアミノ基含有アルコキシシラン化合物との混合物をマイケル付加反応物1〜4とする。
【0031】
【表1】

(メタ)アクリル基含有化合物2は詳細には3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
(メタ)アクリル基含有化合物1は詳細にはアクリル酸イソブチルエステルである。
なお上記のようにして得られた、マイケル付加反応物と未反応のアミノ基含有アルコキシシラン化合物との混合物は、理論上、未反応のアミノ基含有アルコキシシラン化合物を50質量部含有する。
【0032】
<評価>
下記のようにして得られた湿気硬化型樹脂組成物を用いて、透明性、硬化性、接着性(陽極酸化アルミ接着性)、増粘率(貯蔵安定性)、耐熱性、耐候性を、以下の評価方法、評価基準で評価した。結果を第2表、第3表に示す。
[透明性]下記のようにして得られた湿気硬化型樹脂組成物を2mmの厚さのシート状(縦15cm、横15cm)として23℃、50%RHの条件下で7日間養生して硬化物を得た。評価方法としては、文字[文字は「A」、文字の大きさは縦1cm、横1cm、文字の色は黒]が書かれた紙の上に、文字Aが硬化物のほぼ中央となるように、上記のようにして得られた硬化物を置き、文字が透き通って見えるかどうかで判断した。評価基準としては硬化物が透き通っていて文字がはっきり読める場合を「○」、硬化物がわずかに白濁している場合を「微白濁」、硬化物が白濁して文字がはっきり読めない場合を「白濁」とした。
【0033】
[硬化性]下記のようにして得られた湿気硬化型樹脂組成物を23℃、50%RHの条件下において、P.E.フィルム(ポリエチレンフィルム)が付着しなくなるまでの時間を測定し、タックフリータイムとした。
[接着性(陽極酸化アルミ接着性)]下記のようにして得られた湿気硬化型樹脂組成物を陽極酸化アルミニウム板に塗布し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生して積層体を得た。評価方法としては得られた積層体から湿気硬化型樹脂組成物の硬化物を90℃方向へ剥離し、破断状況を確認した。破断状況が凝集破壊の場合「CF」と界面剥離の場合「AF」とする。
[増粘率(貯蔵安定性)]
・初期粘度:TV20型粘度計(コーン型ローター:1°34′×R24、1rpm)を使用し、23℃の条件下で下記のようにして得られた接着剤組成物の初期粘度(単位:Pa・s)を測定した。
・貯蔵促進後の粘度:下記のようにして得られた接着剤組成物を70℃の条件下に72時間置き、接着剤組成物の貯蔵促進後の粘度(単位:Pa・s)を初期粘度と同様にして測定した。
増粘率は上記のようにして得られた初期粘度および貯蔵促進後の粘度の値を以下の式に当てはめて求めた。
増粘率(%)=(貯蔵促進後の粘度/初期粘度)×100
【0034】
[耐熱性]
下記のようにして得られた湿気硬化型樹脂組成物を2mmの厚さのシート状とし、23℃、50%RHの条件下において7日間養生した後に、80℃オーブンで1,000時間熱をかけ耐熱性評価用サンプルを得た。
・ダンベル引張:23℃、50%RHの条件下において7日間養生した後の硬化物(1)、および得られた耐熱性評価用サンプルを用いて、JISK7161、JISK7162に従い、引張強度、引張伸びを求めた。得られた引張強度、引張伸びから引張強度保持率、引張伸び保持率を算出した。
引張強度保持率(%)=[耐熱性評価用サンプルの引張強度/硬化物(1)の引張強度]×100
引張伸び保持率(%)=[耐熱性評価用サンプルの引張伸び/硬化物(1)の引張伸び]×100
[耐候性]
下記のようにして得られた湿気硬化型樹脂組成物を2mmの厚さのシート状とし、23℃、50%RHの条件下において7日間養生した後に、スーパーUV[岩崎電気社製]にて、50時間紫外線を照射し、耐候性評価用サンプルを得た。
・変色:上記のようにして得られた耐候性評価用サンプルを上記透明性と同様の方法で評価した。評価基準としては硬化物が透き通っていて文字がはっきり読める場合を「○」、硬化物が黄変している、および、濁りがある場合を「黄変・濁り」とした。
・クラック:上記のようにして得られた耐候性評価用サンプルをルーペで観察し、クラックの有無を確認した。
【0035】
<湿気硬化型樹脂組成物の製造>
下記第2表、第3表に示す成分を同表に示す量で使用し、これらを均一に混合して湿気硬化型樹脂組成物を製造した。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
第2表、第3表に示されている成分について以下に説明する。
実施例で使用される(A)混合物1に含有される加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンはその数平均分子量が29000であり、その主鎖は[−CH(CH3)CH2−O−]を繰り返し単位として少なくとも有する。加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンおよび加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体が有する加水分解性シリル基はトリメトキシシリル基である。加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン:加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体(量比)は2:8〜8:2である。
(B)疎水性シリカはシリカをアクリルシランで処理して疎水性としたものである。
また第2表、第3表に示されている、(D)硬化触媒、(E)ヒンダードアミン系光安定剤の詳細は以下のとおりである。
(D)硬化触媒1
【化11】

上記式において−OCO−Sn−OCO−は−(O=)C−O−Sn−O−C(=O)−である。
(D)硬化触媒2
【化12】

【0039】
(E)ヒンダードアミン系光安定剤1
【化13】

(E)ヒンダードアミン系光安定剤2
【化14】

(E)ヒンダードアミン系光安定剤3
【化15】

ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート:70−80質量%
【化16】

メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート:20−30質量%
【0040】
第2表、第3表に示す結果から明らかなように、疎水性シリカおよびマイケル付加反応物を含まない比較例1、2、疎水性シリカを含まない比較例4、5は接着性が低かった。マイケル付加反応物を含まない比較例3、6は透明性が低かった。
これに対して実施例1〜10は透明性に優れる。また実施例1〜10は速硬化性、接着性、貯蔵安定性に優れる。またさらに式(II)で表されるヒンダードアミン系光安定剤を含む実施例7〜10は耐熱性、耐候性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンと加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル重合体との混合物100質量部、
(B)疎水性シリカ1〜100質量部、
(C)アミノ基含有アルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基含有化合物とのマイケル付加反応物1〜15質量部、および
(D)硬化触媒0.1〜10質量部を含む湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記加水分解性シリル基が、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記マイケル付加反応物が、1分子中にアミノ基、イミノ基および第3級アミノ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の基を少なくとも2つ有する請求項1または2に記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化触媒が下記式(I)で表されるものを含む請求項1〜3のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1、R2、R3およびR4は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R1〜R4が同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
さらに下記式(II)で表されるヒンダードアミン系光安定剤を0.1〜5質量部含む請求項1〜4のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【化2】


(式中、R1は水素原子またはアルキル基であり、R2は無置換のもしくは置換基を有することができる、ピペリジル基またはアルキル基であり、nは4〜8の整数である。)
【請求項6】
前記疎水性シリカの平均粒径が0.01〜300μmである請求項1〜5のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
さらにアミノ基含有アルコキシシラン化合物を含む請求項1〜6のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
さらに脱水剤を含む請求項1〜7のいずれかに記載の湿気硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−167210(P2012−167210A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29909(P2011−29909)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】