説明

炭化硼素・炭化珪素・シリコン複合材料の製造方法

【課題】 炭化硼素の持つ高い比剛性を利用した高比剛性複合材料でありながら研削性が優れた複合材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】 炭化硼素・炭化珪素・炭素源を主成分とする原料を成形して充填率が60−80%の成形体を製造する成形工程と、該成形体に熔融シリコンを含浸させることにより炭素を炭化珪素に転換させる反応焼結工程を備えたことを特徴とする、炭化硼素・炭化珪素・シリコンを主成分とする複合材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、炭化硼素・炭化珪素・シリコンを主成分とする複合材料の製造方法に係り、特に高比剛性で低コストで製造可能な複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比剛性とはヤング率を比重(水に対する重量比)で除したパラメーターであり、各種の機械部品にはこの値が高い材料が求められる場合がある。
その例としては高精度の位置決め機能が必要な移動体装置である3次元測定器、直線度測定器、平面状物体のパターンを形成するための露光機などがあげられる。特に露光機においては半導体ウェハーや液晶パネルなどを製造するにあたり、近年のパターンの微細化の要求に対応したさらに高精度の位置決め機能が求められていると共に、経済的にパターンを形成するために高速で被露光ワークやレチクルなどが搭載された静水圧流体軸受け装置などの移動体を高速で動かして、装置のスループットを向上させることが求められている。
【0003】
しかしながらこのような移動体を高速度で動かすことは必然的に振動が発生することであり、これは位置決め精度に関してはマイナスの要因である。この振動を早く減衰させるためには高比剛性の材料が求められており、また一定の駆動力の元で移動体を高速で動かすためには可動部分の軽量化が必要であり、また装置の撓みは位置決め精度の低下につながるため、そのためにもヤング率が大きく比重が小さい材料が求められている。
【0004】
このような高比剛性が要求される機械部品としては、従来は鉄鋼等の金属系素材が用いられてきたが、最近ではさらに高比剛性のセラミック系のアルミナが用いられるようになってきている。しかしながらさらに高比剛性が要求される場合においてはセラミック系でもアルミナのような酸化物セラミックスではなく非酸化物セラミックスを用いる必要があるが、その中でも工業材料としては最高の比剛性率を持つ炭化硼素系の材料が期待されている。
【0005】
炭化硼素系素材として最も高比剛性が期待されるのは、ほぼ純粋な炭化硼素焼結体であるが、炭化硼素は難焼結体として知られている。そこで従来の炭化硼素焼結体はホットプレスにより製造されていた。しかしながらホットプレス焼結法においては、大型複雑形状品は製造することが困難であり、また高温・高圧を付与するためのホットプレス装置や金型のコストが大きいために現実的に構造部材を製造する方法とは云えない。
【0006】
この問題を解決するために炭化硼素の鋳込成形・常圧焼結の手法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照。)。しかしながらこの方法においては、焼成体が難研削性であるため、半導体・液晶製造装置のような高寸法精度が要求される用途においては研削コストが大きくなることと、常圧焼結温度が2200℃以上とかなり高いため焼成コストが大きくなるという問題点がある。
【0007】
そこで炭化硼素を焼結させるのではなく、金属マトリックス相内に炭化硼素粉をフィラーとして分散させた材料も開示されている(例えば、特許文献7参照。)。この材料はアルミニウム中に炭化硼素を分散させたものであるが、炭化硼素とアルミニウムの濡れ性が悪いため炭化硼素とアルミニウムの混合物をホットプレスして製造しており、ホットプレスでは大型複雑形状品はできないし製造コストも大きいために、現実的に構造部材を製造する方法とはいえない。
【0008】
そこで炭化硼素との濡れ性が比較的優れているシリコンを金属として用い、炭化硼素成形体に溶融したシリコンを含浸させた複合材料も開示されており(例えば、特許文献8、特許文献9、特許文献10参照。)、その中には原材料として少量の炭素源となりうる素材を含む例もある。しかしながらこの方法においては、シリコンが含浸されているとはいうものの炭化硼素が高充填されている複合材料となるので、炭化硼素単独のものよりやや研削性は改良されて入るものの、難研削性であることは変わらない。また炭化硼素を主成分とする成形体の隙間にシリコンが充填されるため、できあがった複合材料は大量のシリコンを含むことになり、このような材料は比剛性率が低く炭化硼素の持つ高い比剛性率を生かすことができない。
【0009】
また成形体の原料として炭化硼素に加えて炭化珪素をも含む材料を用い、この成形体に溶融したシリコンを含浸させた複合材料も開示されており(例えば特許文献11参照。)、その中には原材料として少量の炭素源となりうる素材を含む例もある。しかしながらこの方法においてもやはり炭化硼素・炭化珪素が高充填された複合材料となるので、炭化硼素単独で充填されているものよりやや研削性は改良されているものの、やはり難研削性であることには変わらない。また炭化硼素・炭化珪素を主成分とする成形体の隙間にシリコンが充填されるため、できあがった複合材料は大量のシリコンを含むことになり、このような材料は比剛性率が低く炭化硼素の持つ高い比剛性率を生かすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO01/72659A1号公報(第15−16頁)
【特許文献2】特開2001−342069(第3−4頁)
【特許文献3】特開2002−160975(第4−6頁)
【特許文献4】特開2002−167278(第4−6頁)
【特許文献5】特開2003−109892(第3−5頁)
【特許文献6】特開2003−201178(第4−9頁)
【特許文献7】United States Patent 4104062号公報(col2−5)
【特許文献8】United States Patent 3725015号公報(col2−6)
【特許文献9】United States Patent 3796564号公報(col2−13)
【特許文献10】United States Patent 3857744号公報(col1−3)
【特許文献11】特表2007−51384号公報(第20−22頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の態様は、上記問題を解決するためになされたもので、炭化硼素の持つ高い比剛性を利用した高比剛性複合材料でありながら研削性が優れた複合材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の一実施形態によれば、炭化硼素・炭化珪素・炭素源を主成分とする原料を成形して充填率が60−80%の成形体を製造する成形工程と、該成形体に熔融シリコンを含浸させることにより炭素を炭化珪素に転換させる反応焼結工程を備えたことを特徴とする、炭化硼素・炭化珪素・シリコンを主成分とする複合材料の製造方法により、高比剛性でありながら研削性が優れた複合材料の製造を可能とした。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、炭化硼素・炭化珪素・炭素源を主成分とする原料を成形して充填率を60−80%とした成形体に熔融シリコンを含浸させることにより炭素を炭化珪素に転換させる反応焼結工程を備えたことを特徴とする、炭化硼素・炭化珪素・シリコンを主成分とする複合材料の製造方法とした。これにより、高比剛性でありながら研削性が優れた複合材料の製造を可能とした。
【0014】
また本発明の好ましい態様によれば、前記複合材料の比剛性率が130GPa以上であることとして、高比剛性でありながら研削性が優れた複合材料の製造を可能とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、炭化硼素の持つ高い比剛性を利用した高比剛性複合材料でありながら研削性が優れた複合材料の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例で用いられた原料の粒度分布を示す図である。
【図2】本発明の一実施例で用いられた焼成工程ノヒートカーブを示す図である。
【図3】本発明の一実施例の反応焼結体の微構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明における主要な用語について説明する。
【0018】
(比剛性率)
比剛性とはヤング率を比重で割った値であり、比重は水に対する密度比で単位はないので、比剛性率の単位はヤング率の単位と同じである。ヤング率は共振法にて測定し、比重はアルキメデス法により測定する。
【0019】
(粒径)
複合材料中の粒子の粒径とは複合材料の切断面をラップし、光学顕微鏡で観察したときの粒子のさしわたし最大径をさすものとする。
【0020】
(粗粒)
上記粒径が10μm以上の粒子をさすものとする。
【0021】
(微粒)
上記粒径が10μm未満の粒子をさすものとする。
【0022】
(F1)
本発明における複合材料の製造工程において鋳込成形を採用するとき、スラリー中の固形分の体積分率をさすものとする。
【0023】
(F3)
本発明における複合材料の製造工程における成形体の固形分の充填率をさすものでアルキメデス法により測定する
【0024】
(F3‘)
本発明における複合材料の製造工程における成形体の固形分の充填率から揮散分を除いたものであり、揮散分は調合比から計算する。
【0025】
本発明の一実施形態における複合材料は炭化硼素・炭化珪素を主成分とする粉体の隙間にシリコンが充填された構造をとる。本複合材料を形成する炭化硼素は成形工程から炭化硼素粉体として原材料の主成分として加えられる。また炭化珪素は成形工程から炭化珪素粉体として原材料の主成分として加えられるもの(以後初期投入炭化珪素と呼ぶ)と、成形体中の炭素源とシリコンが反応して生成した炭化珪素(以後、反応生成炭化珪素と呼ぶ)の両方からなる。
【0026】
本発明の一実施形態における複合材料の製造方法は、炭化硼素、初期投入炭化珪素、及び炭素源を主成分とする成形体に熔融シリコンを含浸させ、炭素源とシリコンを反応させて反応生成炭化珪素を生成させ、また炭化硼素、初期投入炭化珪素、反応生成炭化珪素の隙間にシリコンを含浸させる反応焼結工程をとる。また本発明における複合材料は、炭化硼素と初期投入炭化珪素の10μm以上の粒子の体積分率が10〜50体積部であることを特徴としており、このような構造をとることにより、高比剛性率と優れた研削性を両立させることができる。
【0027】
したがって本発明の一実施形態における複合材料は、高比剛性率が必要で、また精密な研削が必要とされる製品に好適に応用される。
【0028】
以下に本発明における、材料及び工程の詳細について説明する。
【0029】
本発明の一実施形態における好ましい複合材料は、複合材料全体を100体積部として、炭化硼素X体積部、炭化珪素Y体積部、シリコンZ体積部を主成分とし、10<X<60、20<Y<70、5<Z<30である。炭化硼素の量が10体積部以下になると複合材料は充分な比剛性率を得られなくなり、60体積部以上になると複合材料の研削性が低下する。また研削性を重視すれば10<X<50である方がさらに好ましい。また炭化珪素の量が20体積部以下になると、複合材料は充分な比剛性率を得られなくなり、また70体積部以上になると複合材料の研削性が低下する。また比剛性率を重視すれば30<Y<70である方がさらに好ましく、研削性を重視すれば20<Y<65である方がさらに好ましい。またシリコンの量が5体積部以下の複合材料は反応焼結工程においてクラックが発生したりシリコンが未含浸のポアが発生する欠点が生じやすくなり、また30体積部以上になると複合材料の比剛性率が低下する。また厚肉大型製品などクラック発生に特に注意しなければならない製品では10<Z<30である方がさらに好ましい。
【0030】
本発明の一実施形態における複合材料の、好ましい炭化硼素と炭化珪素の10μm以上の粒子の体積分率は10〜50体積部であり、10体積部より小さくなると複合材料は充分な比剛性率を得られなくなり、50体積部を超えると複合材料の研削性が低下する。なおここでいう10μm以上の粒子とは、好ましくは原料として加えられる炭化硼素粉末の全部、または原料として加えられる炭化硼素粉体の全部と原料として加えられる初期投入炭化珪素粉体の一部である。
【0031】
本発明の一実施形態における複合材料を製造するための原料である炭化硼素粉体の平均粒径は10μmから200μmが好ましく、さらに好ましくは20μmから100μmである。炭化硼素粉体の平均粒径が10μm以下になると反応焼結時の焼結体にクラックが入りやすくなり、このクラック防止の意味では平均粒径が20μm以上であることが好ましい。また炭化硼素の平均粒径が200μm以上になると複合材料の研削性が悪くなり、この研削性悪化防止の意味では平均粒径100μm以下であることが望ましい。
【0032】
なお原料として用いられる炭化硼素粉体の粒径と、複合材料中の炭化硼素粉体の粒径については、ほぼ一致している。ただし炭化硼素は含浸されたシリコンと表面が反応して表面にはその反応生成物で覆われていると思われ、SEMで観察した炭化硼素粉体の表面はややコントラストが異なる層で覆われている。本発明における複合材料の炭化硼素粒子やその粒径に関してはこの反応性生物からなる表面層も含めて定義するものとする。なお、前述の微粒の炭化硼素粉体を用いると反応焼結時にクラックが発生するという理由はこの表面の反応生成物からなる層の割合が炭化硼素粉体全体に対して無視できないほど大きくなったためであろうと推定される。
【0033】
本発明の一実施形態における複合材料を製造するための原料である初期投入炭化珪素の好ましい粒径は、炭化硼素の量によって異なる。即ち複合材料中の初期投入炭化珪素の粒径は原料として用いられる炭化珪素粉体の粒径と変わらず、これは初期投入炭化珪素粉体はシリコンと反応しないためであると思われる。
【0034】
したがって好ましい10μm以上の粒子の体積分率である10〜50体積部をすべて炭化硼素からとるならば初期投入炭化珪素は10μm未満の微粒分だけでよく、またその一部を炭化珪素からとるならば、初期投入炭化珪素は10μm以上の粗粒分と10μm未満の微粒分が必要となる。
【0035】
粗粒分として好ましい炭化珪素の平均粒径は20μmから100μmであり、100μmを超えると複合材料の研削性が悪化する。また微粒分として好ましい初期投入炭化珪素の平均粒径は0.1μmから5μmであり、0.1μmより小さくなると成形時に高充填の成形体を作ることが困難になり、5μmを超えると複合材料の研削性が低下する。
【0036】
本発明の一実施形態における複合材料を製造するための原料である炭素源として好ましいのはカーボン粉末であり、そのカーボンとシリコンが反応してできた反応成形炭化珪素の粒径は実質的に全部が10μm未満であることが好ましい。
【0037】
カーボン粉末としては結晶度が非常に低いものから結晶度が非常に高い黒鉛まで何でも用いることができるが、一般にカーボンブラックと呼ばれる結晶度がそれほど高くないものが入手しやすい。カーボン粉末の好ましい平均粒径は10nmから1μmである。
【0038】
なおこのようなカーボン粉末は反応焼結工程において実質的にその全量がシリコンとの反応により反応生成SiCに転換したものと推定され、複合材料の観察の結果では未反応と思われるカーボン粉末は観察されなかった。
【0039】
また炭素源としてカーボン粉末に加えて有機物を用いることも可能である。カーボン源として有機物を用いる場合には非酸化性雰囲気における焼結工程において残炭率が高い有機物を選定する必要があり、特に好適な有機物としてはフェノール樹脂やフラン樹脂をあげることができる。なおこのような有機物を炭素源として用いる場合においては成形工程におけるバインダーとしての役割や可塑性付与剤としての役割や粉体を分散させるための溶媒としての役割を期待することもできる。
【0040】
本発明の一実施形態における複合材料を製造するための原料であるシリコンは、熔融含浸されるものであるため、粉体状、顆粒状、板状など特に形状は問わず、成形体に含浸しやすいように配置できるような形状のものを使用すればよい。
【0041】
またシリコンは不純物としてシリコン以外の物質を含む場合もあるが、その不純物も含んだシリコンマトリックス層として本発明における複合材料中のシリコンの量は定義される。
【0042】
なおシリコン中の不純物としてはシリコンの製造工程上不可避的に含まれるもの以外にも、シリコンの融点を下げて反応焼結工程の温度を下げるため、炭化硼素表面における炭化硼素との反応を防止するため、反応焼結後の温度下げ時にシリコンの反応焼結体からの吹き出しを防止するため、またシリコンの熱膨張係数をコントロールするため、複合材料に導電性を付与するためなどに意図的にB、C、Al、Ca、Mg、Cu、Ba、Sr、Sn、Ge、Pb、Ni、Co、Zn、Ag、Au、Ti、Y、Zr、V、Cr、Mn、Moなどの不純物を加えることもできる。
【0043】
本発明の一実施形態における複合材料の製造方法は、炭化硼素、初期投入炭化珪素、炭素源を主成分とする原料を成形して成形体を製造する成形工程と、その成形体にシリコンを含浸させることにより炭素を炭化珪素に転換させて空隙にシリコンを埋めていく反応焼結工程を備えている。
【0044】
本発明の一実施形態における成形方法としては特に制限はなく、乾式プレス成形、湿式プレス成形、CIP成形、鋳込成形、射出成形、押し出し成形、可塑性成形、振動成形などを目標とするワークの形状や生産量により選定することができる。
【0045】
その中でも特に大型複雑形状品の製造に適しているのは鋳込成形である。
【0046】
本発明の一実施形態における成形方法として鋳込成形を採用する場合、溶媒としては有機溶媒を用いても水を用いてもよいが、工程の簡略化や地球環境への影響を考えると水を溶媒とするのが好ましい。
【0047】
水を溶媒とした鋳込成形の場合には、原料である炭化硼素粉体、初期投入炭化珪素粉体、炭素源と水を混合したスラリーをまず製造するが、その際に高濃度のスラリーを製造するための分散剤・解膠剤、バインダー、可塑性付与剤などの添加剤を加えることもできる。
【0048】
好適な添加剤としてはポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸トリエタノールアミン、スチレン・マレイン酸共重合体、ジブタルフタール、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボキシルメチルセルロースアンモニウム、メチルセルロース、メチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム塩、アクリル酸またはそのアンモニウム塩のオリゴマー、モノエチルアミンなどの各種アミン、ピリジン、ピペリジン、水酸化テトラメチルアンモニウム、デキストリン、ペプトン、水溶性デンプン、アクリルエマルジョンなどの各種樹脂エマルジョン、レゾルシン型フェノール樹脂などの各種水溶性樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などの各種非水溶性樹脂、水ガラスなどをあげることができる。
【0049】
なお非水溶性の添加物を加える場合にはエマルジョンにしたり、また粉体表面にコーティングしたりするのが好適であり、またスラリー製造工程として粉砕工程を含む場合には粉砕により分解する添加剤は粉砕工程後に加えるのが好適である。
【0050】
また鋳込成形は石膏型の毛管吸引力を利用した石膏鋳込成形と、スラリーに直接圧力をかける加圧鋳込成形のどちらも利用可能である。加圧鋳込成形の場合は適切な加圧力は0.1MPaから5MPaである。
【0051】
成形工程においては高い充填率の成形体を製造することが重要である。これは成形体の空隙から炭素がシリコンと化合して炭化珪素に転換することによる体積膨張分を除いた部分にシリコンが埋められていくためである。即ち高充填の成形体から製造される反応焼結体はシリコンの含有量が小さいことになり、シリコンの含有量が小さい反応焼結体は高い比剛性率を期待することができる。
【0052】
本発明の一実施形態における成形体の充填率は60〜80%であり、さらに好ましくは65〜75%である。
【0053】
なお充填率に下限があるのは前述のように反応焼結体のシリコン含有量を小さくするためであるが、好ましい充填率に上限があるのはあまりにも高充填率の成形体はシリコンの含浸が難しいためである。ただし実際的にはそのような高充填率の成形体を工業的に製造することは難しいので下限のみを考慮すればよい。
【0054】
なお上記の成形体の充填率とは、炭化硼素・炭化珪素・カーボンの各粉体の充填率であり、焼成工程により揮散する添加剤などの成分は除くものとする。したがってフェノール樹脂などの残炭分がある添加剤を用いる場合においてはその残炭分を充填率として加えることになる。具体的な測定・表示方法については、アルキメデス法により測定した成形体の充填率をF3とし、これから揮散分を除いた充填率をF3’として表示するものとし、好ましい成形体の充填率とはこのF3’の値を指すものとする。
【0055】
なお鋳込成形においてはスラリー中の粉体の体積充填率であるF1が小さいスラリーは型に吸い込まれる溶媒分が大きくなって工業的な生産が難しいため、F1は40%以上であることが好ましい。また通常の鋳込成形においては石膏鋳込成形よりも加圧鋳込成形の方がF3やF3‘は大きいが、本発明においては加圧鋳込成形と石膏鋳込成形でF3,F3’に大きな差はなく、多品種少量生産に適した石膏成形を好適に採用することができる

【0056】
なお本発明の一実施形態における複合材料の成形工程と反応焼結工程の間に、仮焼工程を設けることも可能である。
【0057】
成形体が小型・単純形状である場合にはこの仮焼工程は必要ではない場合もあるが、成形体が大型複雑形状になると成形体のハンドリング時の破損や反応焼結時のクラックの発生を防止するため、仮焼工程を設けることが好ましい。
【0058】
仮焼温度として好ましい温度は1000〜2000℃であり、1000℃より低温だと仮焼の効果が期待できず、2000℃より高温にすると焼結がはじまることによりワークが収縮し、本複合材料の製造工程の特徴である焼成収縮がほぼ0であるニアネットシェイプ製造プロセスとしての利点が損なわれる恐れがある。また仮焼工程における好ましい焼成雰囲気は非酸化性雰囲気である。
【0059】
なおこの仮焼工程は通常は成形体の脱脂工程を兼ねて行われるが、炉の汚染が懸念される場合においては仮焼工程の前に脱脂工程を別に設けてもよい。
【0060】
また仮焼工程なしで脱脂工程のみを設けてもよい。その場合にはバインダー分が分解・除去されるのに必要な脱脂温度を採用すればよい。
【0061】
続いてのシリコン含浸反応焼結工程での好ましい反応焼結温度はシリコンの融点から1800℃である。ワークが大きく複雑形状になるほどシリコンの含浸が難しくなるため反応焼結温度は高く、また最高温度にキープする時間は長くする必要があるが、炭素が炭化珪素に転換する反応焼結が完全に進行しシリコンが完全に含浸してポアがなくなる範囲内で、なるべく反応焼結温度は低く、最高温度キープ時間も短いことが好ましい。
【0062】
なお、シリコンの融点は1414℃であるので1430℃以上の反応焼結温度が通常は必要であるが、シリコンに不純物を加えて融点を下げれば、1350℃程度までは反応焼結温度を低下させることも可能である。
【0063】
以上述べたように、本発明の一実施形態における複合材料は、成形体中の炭素分がシリコンと反応して炭化珪素となって膨張し、またその空隙をシリコンが埋めていくため、成形体の原料の調合比と成形体の充填率F3’の測定により、反応焼結体の組成比は明らかになる。
【0064】
また後述する実施例で示す反応焼結体の微構造観察において、反応焼結体を構成する要素である粗粒炭化硼素と粗粒炭化珪素と微粒炭化珪素とそれら粒子の隙間を埋めていくシリコンを識別し、その面積比を10画面以上で平均して体積比を求めたところ、それぞれの成分の体積比は調合比から計算される値と一致していた。
【0065】
なお、後述する微構造の写真である図3の黒い部分が炭化硼素または炭化珪素の粒子、白い部分がシリコンであるため、粒子とシリコンの識別、粗粒と微粒の識別は容易である。また粗粒炭化珪素と粗粒炭化硼素の識別においてはSEM・EPMA分析により容易に識別することが可能である。
【0066】
以上のように、本発明の一実施形態における複合材料の構成比を実現するための原料の構成比については目的とする複合材料の構成比と成形体の充填率から自明に計算可能であるが、好ましい各原料の調合比は炭化硼素10〜90重量部、初期投入炭化珪素90〜10重量部の計100重量部に対して炭素源を0〜45重量部である。
【0067】
なお、ここでいう炭素源は炭素に換算しての重量部であり、カーボン粉末を用いる場合は調合重量そのものであり、残炭分がある添加剤を利用する場合には調合重量にその残炭率を乗じた値である。
【0068】
炭化硼素・炭化珪素の各成分が、好ましい組成範囲から外れた場合に生じる不具合については、前述の複合材料の構成成分である炭化硼素・炭化珪素の各成分が好ましい範囲から外れた場合に生じる不具合と同様である。
【0069】
炭素は0重量部でもかまわないが、その場合には炭素がシリコンと反応して膨張する反応を利用できなくなるため、成形体の空隙を完全にシリコンで埋めることが困難になり、ポアが残存する危険性がある。また炭素分があまりにも多すぎるとその膨張反応によって反応焼結体にクラックが発生する危険性がある。
【0070】
そのため、さらに好ましい炭素源の調合割合は、炭化硼素と初期投入炭化珪素の合計100重量部に対して10〜40重量部である。また反応焼結に必要な好ましいシリコン量は炭素分を炭化珪素に転換させさらに空隙を埋め尽くすのに必要なシリコン量の105〜200%、さらに好ましくは110〜150%であり、成形体の大きさ形状により適宜調整する。
【0071】
本発明の一実施形態における複合材料の好ましい比剛性率は130GPa以上であり、さらに好ましくは140GPa以上である。
【0072】
本発明の目的のひとつは高比剛性の複合材料を提供することであるから、比剛性率の好ましい上限はないが、現実的には200GPa以上の比剛性率を持つ複合材料を作ることは困難であり、また優れた研削性を維持しながら高比剛性を達成するためには170GPa程度がその上限となる。
【0073】
本発明の一実施形態における複合材料は高比剛性が要求され、また精密な研削が必要とされる製品や大型複雑形状のため研削コストが大きい製品に好適に応用される。特に好適な製品への応用例は半導体・液晶製造装置部材である。その中でも特に好適な製品への応用例は露光装置用部材であり、サセプタ・ステージなどのウェハー支持部材、レチクルステージなどの光学系支持部材として用いることにより、露光装置の位置決め精度を向上させまた、位置決め時間を短縮することにより装置のスループットを向上させることができる。
(実施例)
【0074】
以下、本発明の一実施の形態について表、図を参照して説明する。
【0075】
表1に、以下に示す実施例及び比較例の一覧を示す。
【0076】
なお、それぞれの調合例におけるスラリー濃度は表1のF1により表示されている。またそれぞれの調合例におけるバインダーの添加量は表1のF3’とF3の差により表示されている。またそれぞれの反応焼結体は、表面の余剰シリコンを除去した後にテストピースを切り出し、表面を研磨した後に、アルキメデス法により比重、共振法によりヤング率を測定し比剛性を算出した。
【0077】
また、表面加工を施したものを動力計(キスラー社製 型番9256C2)の上に設置しφ10mmのコアドリル(♯60、旭ダイヤモンド工業製)にて回転数100m/min(3200rpm)、送り速度2mm/min、ステップ量0.2mmにて深さ4mmの孔加工を行い、加工抵抗力の測定、孔周りのチッピングの状態を確認した。被削性の評価は、加工抵抗の最大値が2000N以上の場合を×、1500−2000Nの場合を△、1500N未満のものを○として評価した。
【0078】
ただし最大抵抗値が△または×であっても、加工抵抗が短時間で低下し、その低い値で安定したものはその低い値で評価した。また、加工抵抗が○または△であっても、加工時に加工が原因であると推測されるクラックが発生するものと、工具破損が発生するものは×とした。
【0079】
またチッピングの状態の評価は孔の外周の欠けが0.3mm未満で○、0.3mm以上〜0.5mm未満で△、0.5mm以上で×とした。また微構造の観察は、焼成体を適当な大きさに切り出し表面を1μmの砥粒にてラップ加工を行い、光学顕微鏡にて2800倍に設定し観察した。
【0080】
図1に本発明実施にあたり使用した平均粒径50μmの粗粒炭化硼素、平均粒径65μmの粗粒炭化珪素、平均粒径0.6μm微粒炭化珪素の粒度分布測定結果を示す。粒度分布測定は、レーザー粒度分析器(日機装製MT3000)にて行い、上記の平均粒径は体積平均径を指している。
【0081】
図1に見られるように粗粒分は実質的にほとんど10μm以下の粒子を含んでおらず、微粒分は実質的にほとんど10μm以上の粗粒分を含んでいない。
【0082】
図2に仮焼、反応焼結のヒートカーブを示したグラフを示す。
【0083】
図3に実施例2の反応焼結体の微構造の光学顕微鏡像を示す。前述のように10μm以上の粗粒と10μm以下の微粒の識別は容易であった。
【0084】
(実施例1〜3)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末30重量部と平均粒径が50μmの炭化硼素粉末70重量部、平均粒径が55nmのカーボンブラック粉末10〜30重量部を炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボンブラック粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500CP未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボン粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80mmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。なお、実施例1〜3はカーボン粉末の添加量がそれぞれ10、20、30重量部である。
【0085】
(実施例4)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末20重量部、平均粒径が65μmの炭化珪素粉末30重量部と平均粒径が50μmの炭化硼素粉末50重量部、平均粒径が55nmのカーボンブラック粉末30重量部を炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボンブラック粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500CP未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボン粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80mmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。
【0086】
(実施例5)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末25重量部、平均粒径が65μmの炭化珪素粉末25重量部と平均粒径が50μmの炭化硼素粉末50重量部、平均粒径が55nmのカーボンブラック粉末10重量部を炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボンブラック粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500cp未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボン粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80mmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。
【0087】
(実施例6)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末25重量部、平均粒径が65μmの炭化珪素粉末25重量部と平均粒径が50μmの炭化硼素粉末50重量部、平均粒径が55nmのカーボンブラック粉末20重量部を炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボンブラック粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500cp未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボン粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80mmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。
【0088】
(実施例7)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末50重量部と平均粒径が50μmの炭化硼素粉末50重量部を炭化珪素、炭化硼素粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500cp未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボン粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80mmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。
【0089】
(実施例8)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末80重量部と平均粒径が50μmの炭化硼素粉末20重量部と平均粒径が55nmのカーボンブラック粉末10重量部を炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボンブラック粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500cp未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボン粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80mmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。
【0090】
(比較例1)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末30重量部と平均粒径が50μmの炭化硼素粉末70重量部を炭化珪素粉末、炭化硼素粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500cp未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80mmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。
【0091】
(比較例2)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末50重量部と平均粒径が50μmの炭化硼素粉末50重量部、平均粒径55nmのカーボン粉末50重量部を炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボンブラック粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500cp未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボン粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80nmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。
【0092】
(比較例3)
平均粒径が0.6μmの炭化珪素粉末80重量部と平均粒径が4μmの炭化硼素粉末20重量部、平均粒径が55nmのカーボン粉末50重量部を炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボンブラック粉末に対して0.1〜1重量部の分散剤を添加した純水中に入れ分散させ、アンモニア水等でpHを8〜9.5に調整して500cp未満の低粘度のスラリーを作製した。このスラリーをポットミル等で数時間混合した後バインダーを炭化珪素粉末、炭化硼素粉末、カーボン粉末に対して1〜2重量部添加し混合、その後脱泡し石膏板の上に内径80mmのアクリルパイプを置きスラリーを鋳込み、厚み10mm程度の成形体を作製した。成形体は自然乾燥、100〜150℃の乾燥の後、1×10−4〜1×10−3torrの減圧下において温度600℃で2h保持し脱脂を行い、温度1700℃で1h保持することで仮焼を行う。仮焼を行った後、温度1470℃に加熱し30min保持し、成形体中に溶融したシリコンを含浸させることにより反応焼結体を製造した。
【0093】
実施例1〜8においては比剛性率が130GPa以上でかつ研削抵抗が小さくチッピングも生じにくいために研削加工性に優れた複合材料を製造することができた。
【0094】
比較例1においては研削抵抗が大きくチッピングも生じやすいため研削加工性が劣っていた。
【0095】
比較例2においては複合材料に細かなクラックが発生し比剛性が低下すると共に研削時にチッピングが発生しやすかった。
【0096】
比較例3においては、複合材料の比剛性率は小さく、また研削時にチッピングで欠けやすかった。
【0097】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の一実施形態によれば、高比剛性にして研削性の優れた複合材料の製造方法を提供することにより、半導体・液晶製造装置などに求められる高比剛性で、高寸法精度が要求され、また大型複雑形状である部材に応用することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化硼素・炭化珪素・炭素源を主成分とする原料を成形して充填率が60−80%の成形体を製造する成形工程と、該成形体に熔融シリコンを含浸させることにより炭素を炭化珪素に転換させる反応焼結工程を備えたことを特徴とする、炭化硼素・炭化珪素・シリコンを主成分とする複合材料の製造方法。
【請求項2】
炭化硼素・炭化珪素・炭素源を主成分とする原料を成形して充填率を60−80%とした成形体に熔融シリコンを含浸させることにより炭素を炭化珪素に転換させる反応焼結工程を備えたことを特徴とする、炭化硼素・炭化珪素・シリコンを主成分とする複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記複合材料の比剛性率が130GPa以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−263205(P2009−263205A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22432(P2009−22432)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】