説明

炭水化物と酸化ケイ素とからか焼により高純度の炭化ケイ素を製造する方法

本発明は、酸化ケイ素と、炭水化物を有する炭素源との高めた温度での反応による炭化ケイ素の製造方法、特に炭化ケイ素の製造のため又は炭化ケイ素を含有する組成物の製造のための工業的方法に関する。更に、本発明は、高純度の炭化ケイ素、これを含有する組成物、触媒としての使用並びに電極及び他の物品の製造の際の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ケイ素と、炭水化物を有する炭素源、特に炭水化物とを、高めた温度で反応させることにより、炭化ケイ素及び/又は炭化ケイ素−黒鉛−粒子の製造方法、特に炭化ケイ素を製造するための又は炭化ケイ素を含有する組成物を製造するための工業的方法並びにこの反応生成物の単離に関する。更に、本発明は、高純度の炭化ケイ素、これを含有する組成物、触媒としての使用並びに電極及び他の物品の製造の際の使用に関する。
【0002】
炭化ケイ素、又は他の記載方法ではシリコンカーバイドは、カーボランダムの慣用名を有する。炭化ケイ素は、炭化物のグループに属する、化学式SiCを有するケイ素と炭素とからなる化合物である。この炭化ケイ素は、その硬度及び高い融点に基づいて、研磨剤(カーボランダム)及び耐火材料用の成分として使用される。あまり純粋でない大量のSiCは、冶金学的SiCとして、ケイ素及び炭素を有する鋳鉄の合金のために使用される。これは、高温原子炉中での燃料要素の絶縁材料として又は宇宙技術における耐熱タイルにおいても使用される。同様に、これは、工場床部を耐摩耗性にするために、他の材料と混合した形で、硬質コンクリート骨材として利用される。高価な釣り竿のリングも同様にSiCから作成される。工業セラミックにおいて、SiCはその多様な特性に基づいて、特にその硬度に基づいて、最も頻繁に使用される材料である。
【0003】
一般に、純粋な炭化ケイ素の製造方法も公知である。工業的に、純粋な炭化ケイ素は、今までは、例えばUS 2004/0231583 A1による改良Lely法によって製造されていた(J. A. LeIy著; Darstellung von Einkristallen von Siliciumcarbid und Beherrschung von Art and Menge der eingebauten Verunreinigungen(シリコンカーバイドの単結晶の製造及び組み込まれる不純物の種類及び量のコントロール); Berichte der Deutschen Keramischen Gesellschaft e.V.; Aug. 1955; pp. 229-231)。この場合、原料としてHPガスのモノシラン(SiH4)及びプロパン(C38)が提案されている。これらの原料は高価であり、かつ取り扱いのために手間がかかる。
【0004】
他の方法に応じて、炭化ケイ素粉末は、キャリアガスとしてアルゴンを用いて1000〜1800℃でのメチルシランの気相析出によりベータ−炭化ケイ素粉末として得られる。冶金学的不純物に関する純度は、他の不純物の他に1000ppm未満であるべきである(Verfahren zur Herstellung von Siliciumcarbidpulvern aus der Gasphase(気相からの炭化ケイ素粉末の製造方法)、W. Boecker et al.著, Ber. Dt., Keram., ges., 55 (1978), No. 4, 233-237)。
【0005】
DE 25 18 950は、プラズマジェット反応区域中でのハロゲン化ケイ素、ハロゲン化ホウ素、及び炭化水素、例えばトルエンからなる混合物の蒸気相反応による炭化ケイ素の製造を教示している。この得られたβ−炭化ケイ素は、ホウ素0.2〜1質量%の含有量を有する。
【0006】
この先行技術の方法の欠点は、純粋な炭化ケイ素の製造のための、高い原料コスト及び/又は加水分解に敏感な及び/又は自然発火性の原料の手間のかかる取り扱いである。
【0007】
炭化ケイ素の今日の多くの工業的適用は、一般に極めて高い純度の要求が共通している。従って、反応させるべきシラン又はハロゲンシランの不純物は、高くても数mg/kgの領域(ppm領域)であり、半導体工業での後の適用のためには数μg/kg領域(ppb領域)である。
【0008】
本発明の課題は、明らかに有利な原料から高純度の炭化ケイ素を製造すること及び上記のプロセスに関する欠点を克服することであった。
【0009】
意外にも、混合比に依存して引き続く熱分解及び高温か焼を用いた二酸化ケイ素と糖との混合物の反応により、炭素マトリックス中の高純度炭化ケイ素及び/又は二酸化ケイ素マトリックス中の炭化ケイ素及び/又は、炭素及び/又は二酸化ケイ素を有する炭化ケイ素を組成物の形で低コストで製造できることが見出された。有利に、炭素マトリックス中の炭化ケイ素が製造される。特に、外側の炭素マトリックスを有する炭化ケイ素粒子を、有利に粒子の内側及び/又は外側の表面上に黒鉛マトリックスを有する炭化ケイ素粒子を得ることができる。その後で、この炭素を酸化により除去することにより、これは空気を用いた受動酸化によって簡単に純粋な形で得ることができる。これとは別に、この炭化ケイ素は高温で及び場合により高真空での昇華によって、更に精製及び/又は析出させることができる。炭化ケイ素は、ほぼ2800℃の温度で昇華することができる。
【0010】
上記課題は、請求項1による本発明による方法により、並びに請求項11及び12による組成物により、並びに請求項13による炭化ケイ素により解決される。有利な実施態様は、従属形式請求項及び明細書中に説明されている。
【0011】
本発明の場合に、上記の課題は、酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素及び/又は酸化ケイ素、及び炭水化物を有する炭素源を、高めた温度で、特に熱分解及びか焼により反応させることによる炭化ケイ素の製造方法によって解決される。
【0012】
本発明の場合に、炭化ケイ素の技術的及び工業的方法が提供される。この反応は、150℃より高い温度で、有利に400〜3000℃の温度で行うことができ、その際、最初の熱分解段階(低温運転法)では比較的低い温度で、特に400〜1400℃で反応を行うことができ、引き続くか焼は比較的高い温度(高温運転法)で、特に1400〜3000℃、有利に1400〜1800℃で行うことができる。この熱分解及びか焼は、この場合、直接連続して1つの方法で行うか又は2つの別個の段階で行うこともできる。
【0013】
例えば、熱分解の方法生成物を組成物として小分け包装し、後で炭化ケイ素又はケイ素を製造する継続加工において使用することができる。
【0014】
これとは別に、酸化ケイ素と、炭水化物を有する炭素源との反応を、低い温度領域で、例えば150℃から、有利に400℃で開始させ、連続的又は段階的に、例えば1800℃又はそれ以上に、特に約1900℃に高めることができる。この手順は、形成されたプロセスガスの排出のために有利であることができる。
【0015】
他の別の方法実施によると、この反応を直接高温で、特に1400℃を超えて3000℃までの温度で、有利に1400℃〜1800℃の間で、特に有利に1450〜約1600℃未満の温度で行うことができる。形成された炭化ケイ素の分解を妨げるために、酸素貧有の雰囲気で、有利にこの分解温度を下回る温度で、特に1800℃未満、殊に1600℃未満で、この反応を実施する。本発明により単離された方法生成物は、次の定義に従った高純度の炭化ケイ素である。
【0016】
純粋な形の炭化ケイ素の獲得は、炭素マトリックス中の炭化ケイ素を、例えば約800℃の温度での酸素、空気及び/又はNOx・H2Oを用いた受動酸化により後処理することによって行うことができる。この酸化プロセスの場合に、炭素又は炭素含有マトリックスを酸化することができ、プロセスガスとして、例えば一酸化炭素としてこの系から除去される。この精製された炭化ケイ素を、次いで場合により1種又は数種の酸化ケイ素−マトリックス又は場合により少量のケイ素を有する。
【0017】
この炭化ケイ素自体は800℃を超える温度で酸素に対して比較的酸化安定性である。酸素との直接的な接触により、二酸化ケイ素からなる不動態化層(SiO2、「受動酸化」)が形成される。約1600℃を越える温度でかつ同時に酸素不足量(約50mbarを下回る分圧)で、ガラス状のSiO2は形成されず、ガス状のSiOが形成され、もはや保護効果は提供されず、SiCは急速に燃焼される(「能動酸化」)。この能動酸化は、系中の遊離酸素を使い果たした場合に行われる。
【0018】
本発明により得られたCに基づく反応生成物又は炭素マトリックスを有する反応生成物、特に熱分解生成物は、特に炭及び/又はカーボンブラックの形の炭素、及びケイ酸並びに場合による他の炭素形態、例えば黒鉛の割合を含有し、特に不純物、例えばホウ素、リン、ヒ素、鉄及びアルミニウムの元素並びにこれらの化合物が僅かである。
【0019】
本発明による熱分解生成物及び/又はか焼生成物は、有利に還元剤として、高温での砂糖炭及びケイ酸からの炭化ケイ素の製造の場合に使用することができる。特に、本発明による炭素含有又は黒鉛含有の熱分解生成物及び/又はか焼生成物は、その導電特性に基づいて電極の製造のために、例えばアーク反応器中で、又は触媒として及びシリコン製造用の原料として、特に太陽電池シリコン製造のために使用することができる。同様に、この高純度の炭化ケイ素は、エネルギー源として及び/又は高純度鋼の製造のための添加物として使用することができる。
【0020】
従って、本発明の主題は、高めた温度での酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素と少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源との反応、及び特にこの炭化ケイ素の単離による炭化ケイ素の製造方法である。本発明の主題は、上記方法により得られる炭化ケイ素又は炭化ケイ素を有する組成物、並びに本発明による方法、並びに特にその単離により得られる熱分解生成物及び/又はか焼生成物でもある。本発明の場合に、高めた温度で酸化ケイ素及びその材料変態の添加下での炭水化物又は炭水化物混合物の工業的反応のための又は工業的熱分解及び/又はか焼のための工業的な方法、有利に大規模工業的な方法である。特に有利な方法バリエーションによると、この高純度の炭化ケイ素の工業的製造方法は、高めた温度で、特に400〜3000℃、有利に1400〜1800℃、特に有利に約1450〜約1600℃未満の間で、炭水化物、場合により炭水化物混合物と、酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素、及びin-situで生成された酸化ケイ素との反応からなる。
【0021】
本発明による、場合により炭素マトリックス及び/又は酸化ケイ素マトリックス又は炭素及び/又は酸化ケイ素を有するマトリックスを有する炭化ケイ素を単離し、特にこれを、場合によりケイ素の含有量を有する生成物として単離する。この単離された炭化ケイ素は、この場合、各結晶相、例えばα−又はβ−炭化ケイ素相又はこれらの又は他の炭化ケイ素相の混合物を有することができる。一般に、炭化ケイ素から、全体として150種を超える多型の相が公知である。有利に、本発明による方法によって得られた炭化ケイ素は、ケイ素を有していないか極めて少量のケイ素を有するか又は僅かな割合のケイ素で溶浸されていて、特に炭化ケイ素に対して0.001〜60質量%、有利に0.01〜50質量%、特に有利に0.1〜20質量%の範囲内で、上述のマトリックス及び場合によりケイ素を含有する。本発明の場合には、一般に、か焼又は高温反応の場合にケイ素は生成されない、それというのも粒子の凝集は生じず及び一般に融液の形成が行われないためである。ケイ素は、融液の形成によって初めて生じることになる。ケイ素の更なる含有量は、ケイ素を用いた溶浸によって制御することができる。
【0022】
高純度の炭化ケイ素とは、炭化ケイ素は、炭化ケイ素の他に場合により炭素、特にCマトリックス及び/又は炭化ケイ素、例えばSiyz(式中、y=1.0〜20及びz=0.1〜2.0)、特にSiyzマトリックスとして(式中、y=1.0〜20及びz=0.1〜2.0)、特に有利にSiO2マトリックスとして、並びに場合により少量のケイ素を有することができると解釈される。高純度の炭化ケイ素とは、有利に二酸化ケイ素を有する不動態化層を備える相応する炭化ケイ素であると解釈される。同様に、高純度の炭化ケイ素とは、炭化ケイ素、炭素、二酸化ケイ素並びに場合により少量のケイ素を含有するか又はこれらからなる高純度組成物とみなされ、その際、この高純度の炭化ケイ素又は高純度の組成物は、特に、ホウ素100ppm未満、特に10ppm〜0.001ppt、及びリン200ppm未満、特にリン20ppm〜0.001pptを有するホウ素及びリンの不純物プロフィールを有し、特に全体として、高純度の全体の組成物又は高純度の炭化ケイ素に対して100質量ppm未満の、有利に10質量ppm未満の、特に有利に5質量ppm未満のホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロムの不純物プロフィールを有する。
【0023】
高純度の炭化ケイ素のホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロムによるこの不純物プロフィールは、各元素について、有利に5ppm未満〜0.01ppt(質量)、特に2.5ppm未満〜0.1pptである。特に有利に、本発明による方法により得られた、場合により、炭素及び/又はSiyzマトリックスを有する炭化ケイ素は、次の含有量を有する:ホウ素100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又はリン200ppm未満、有利に20ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又はナトリウム100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は1ppm未満〜0.001ppt及び/又はアルミニウム100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は1ppm未満〜0.001ppt及び/又は鉄100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又はクロム100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又はニッケル100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又はカリウム100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又は硫黄100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は2ppm未満〜0.001ppt及び/又はバリウム100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は3ppm未満〜0.001ppt及び/又は亜鉛100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又はジルコニウム100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又はチタン100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び/又はカルシウム100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt又は0.5ppm未満〜0.001ppt及び特にマグネシウム100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に11ppm〜0.001ppt及び/又は銅100ppm未満、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に2ppm〜0.001ppt、及び/又はコバルト100ppm未満、特に10ppm〜0.001ppt、特に有利に2ppm〜0.001ppt、及び/又はバナジウム100ppm未満、特に10ppm〜0.001ppt、有利に2ppm0.001ppt、及び/又はマンガン100ppm未満、特に10ppm〜0.001ppt、有利に2ppm〜0.001ppt、及び/又は鉛100ppm未満、特に20ppm〜0.001ppt、有利に10ppm〜0.001ppt、特に有利に5ppm〜0.001ppt。
【0024】
特に有利な高純度の炭化ケイ素又は高純度の組成物は、炭化ケイ素、炭素、酸化ケイ素並びに場合により少量のケイ素を含有するか又はこれらからなり、その際、この高純度の炭化ケイ素又は高純度の組成物は、特に、高純度の全体の組成物又は高純度の炭化ケイ素に対して、100ppm未満の、有利に20ppm未満〜0.001ppt、特に有利に10ppm〜0.001pptのホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロム、硫黄、バリウム、ジルコニウム、亜鉛、チタン、カルシウム、マグネシウム、銅、クロム、コバルト、亜鉛、バナジウム、マンガン及び/又は鉛の不純物プロフィールを有する。
【0025】
この高純度の炭化ケイ素又は高純度の組成物は、本発明による方法においてこのために必要な純度を有する反応体、炭水化物を有する炭素源及び使用した酸化ケイ素を、並びに反応器、反応器構成成分、導管、反応体の保存容器、反応器内装材、ジャケット、並びに場合により添加された反応ガス又は不活性ガスを使用することにより得ることができる。
【0026】
上述の定義による、特に例えば炭、カーボンブラック、黒鉛の形で炭素の含有量を有する及び/又は特にSiO2の形で酸化ケイ素を有する高純度の炭化ケイ素又は高純度の組成物は、有利に元素のホウ素について100ppm未満、特に10ppm〜0.001pptであり、及びリンについて200ppm未満、特に20ppm〜0.001pptを有する、ホウ素及び/又はリンを有する不純物プロフィールもしくはホウ素及び/又はリンを含有する化合物を有する。有利に、炭化ケイ素中のホウ素の含有量は、7ppm〜1ppt、有利に6ppm〜1ppt、特に有利に5ppm〜1ppt又はそれ未満であり、又は例えば0.001ppm〜0.001ppt、有利に分析による検出限度の範囲内である。炭化ケイ素のリンの含有量は、有利に、18ppm〜1ppt、有利に15ppm〜1ppt、特に有利に10ppm〜1ppt又はそれ未満である。有利に、リンの含有量は分析による検出限度の範囲内である。ppm、ppb及び/又はpptのデータは、全体にわたって、質量の割合として、特にmg/kg、μg/kg、ng/kgで、又はmg/g、μg/g又はng/g等であると解釈される。
【0027】
本来の熱分解(低温段階)は、一般に約800℃を下回る温度で行われる。この場合、この熱分解は、所望の生成物に依存して、常圧で、真空中で又は高めた圧力下で実施することができる。真空又は低圧中で作業する場合、プロセスガスを良好に排出することができ、通常ではこの熱分解により高多孔性の粒子状の構造が得られる。常圧の範囲内での条件下で、多孔性の、粒子状の構造は通常では著しく凝集されている。高めた圧力下での熱分解の場合には、揮発性の反応生成物は二酸化ケイ素粒子上に凝結し、場合によりそれ自体又は二酸化ケイ素の反応基と反応することができる。例えば炭水化物、例えばケトン、アルデヒド又はアルコールの生成される分解生成物は二酸化ケイ素粒子の遊離ヒドロキシ基と反応することができる。これは、プロセスガスによる環境の負荷を明らかに低減する。この得られた多孔性の熱分解生成物は、この場合にほぼ著しく凝集している。所望の熱分解生成物に応じて広い限界値で自由に選択可能でありかつ相互の正確な調整はそれ自体当業者に公知である圧力及び温度の他に、更に、少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源の水分の存在での、特に出発材料の残留水分の存在での又は凝結した水、水蒸気又は水和物含有成分、例えばSiO2・nH2O、又は当業者に周知の水和物の形での水分の添加による熱分解を行うことができる。水分の存在は、特に、炭水化物を容易に熱分解でき、かつ出発材料の高価な予備乾燥を行わなくてもよいという効果を有する。特に有利に、炭化ケイ素の製造方法は、特に熱分解の開始時に水分の存在で、場合により水分を熱分解の間で添加又は供給して、高めた温度での二酸化ケイ素及び少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源の反応により実施される。
【0028】
か焼段階(高温段階)は、一般に、この熱分解に直接引き続いて行われるが、しかしながら、例えばこの熱分解生成物を更に販売する場合には後の時点で実施することもできる。熱分解段階及びか焼段階の温度範囲は、場合によりいくらか重複していてもよい。通常では、このか焼は1400〜2000℃、有利に1400〜1800℃で実施される。熱分解を800℃未満の温度で行う場合に、か焼段階は800〜約1800℃の温度範囲にも及ぶことができる。改善された熱伝達のために、この方法において、高純度の酸化ケイ素球を、特に石英ガラス球及び/又は炭化ケイ素球又は一般に石英ガラス粒子及び/又は炭化ケイ素粒子を使用することができる。有利に、この伝熱媒体はロータリーキルンで使用されるか又はマイクロ波炉中でも使用される。マイクロ波炉中では、このマイクロ波は石英ガラス球及び/又は炭化ケイ素球内へ入力結合されるため、この粒子は加熱される。有利に、この球及び/又は粒子は反応系中で良好に分配され、均質な熱伝達を可能にする。
【0029】
それぞれの出発材料及び方法生成物中の不純物は、当業者に公知の試料分解法又はICP−MS(微量不純物の決定のための分析)での検出により決定される。
【0030】
少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源として、本発明による炭水化物又は糖類;又は炭水化物の混合物又は炭水化物の適切な誘導体が、本発明による方法に使用される。この場合、天然由来の炭水化物、これらのアノマー、転化糖並びに合成炭化水素を使用することもできる。同様に、バイオテクノロジーによる、例えば発酵により得られた炭水化物を使用することができる。単糖、二糖、オリゴ糖又は多糖又は少なくとも2種の上述の糖類の混合物から選択される炭水化物又は誘導体が有利である。特に有利に次の炭水化物がこの方法に使用され、これは、単糖、つまりアルドース又はケトース、例えばトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、特にグルコース並びにフルクトース、また相応する上述のモノマーをベースとするオリゴ糖及び多糖類、いくつを挙げると、ラクトース、マルトース、サッカロース、ラフィノースであり、同様に上記の炭水化物の誘導体も、これらが上述の純度の要求を有する限り、いくつかの多糖類を挙げると、セルロース、セルロース誘導体、アミロース及びアミロペクチンを含めたデンプン、グリコーゲン、グリコサン及びフルクトサンまで使用できる。しかしながら、少なくとも2種の上述の炭水化物の混合物も、炭水化物として又は炭水化物成分として本発明による方法において使用することができる。一般に、全ての炭水化物、炭水化物誘導体及び炭水化物混合物が本発明による方法において使用することができ、その際、これは有利に、特にホウ素、リン及び/又はアルミニウムの元素に関して十分な純度を有する。全体として、炭水化物又はこの混合物中に、不純物として挙げられた元素は、合計で100μg/g未満、特に100μg/g未満〜0.0001μg/g、有利に10μg/g〜0.001μg/g、特に有利に5μg/g未満〜0.01μg/gで存在するのが好ましい。本発明により使用される炭水化物は、炭素、水素、酸素の元素からなり、かつ場合により上述の不純物プロフィールを有する。
【0031】
有利に、炭素、水素、酸素及び窒素の元素からなり、場合により上述の不純物プロフィールを有する炭水化物も、ドープされた炭化ケイ素又は窒化ケイ素の割合を有する炭化ケイ素を製造する限り、この方法において使用することもできる。窒化ケイ素の割合を有する炭化ケイ素を製造するために(窒化ケイ素はこの場合不純物とはみなされない)、有利にキチンをこの方法で使用することもできる。
【0032】
更に、工業的規模で得られる炭水化物は、ラクトース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)並びに、場合により通常の結晶性の糖を有する酸化ケイ素の調製物のために利用することができる他の通常の錠剤化助剤である。
【0033】
本発明による方法の場合に、経済的な量で提供可能な結晶性の糖、例えば溶液の晶析又はサトウキビ又はテンサイからの汁から公知の方法で得ることができるような糖、つまり市販の結晶性の糖、特に食品品質の結晶性の糖が特に有利である。糖又は炭水化物は、不純物プロフィールがこの方法にとって適している限り、もちろん一般に液状の、シロップとして、固相で、並びに非晶質で、この方法に使用することもできる。場合により、予め、調製段階及び乾燥段階が行われる。
【0034】
この糖は、場合により晶析によってあまり良好には分離できない特別な不純物を分離するために、液相中で、場合により脱塩水中で、又は他の適切な溶剤又は溶剤混合物中で、イオン交換体によって予め精製されていてもよい。イオン交換体として、強酸性、弱酸性、両性、中性又は塩基性のイオン交換体が挙げられる。適切なイオン交換体の選択は、分離されるべき不純物に依存して、それ自体当業者に周知である。引き続き、この糖は晶析、遠心分離、及び/又は乾燥又は酸化ケイ素と混合及び乾燥することができる。この晶析は、冷却によるか又は抗−溶剤の添加又は当業者に周知の他の方法により行うことができる。結晶化成分の分離は、濾過及び/又は遠心分離により行うことができる。
【0035】
本発明の場合には、少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源又は炭水化物混合物は次の不純物プロフィールを有する:ホウ素2[μg/g]未満、リン0.5[μg/g]未満及びアルミニウム2[μg/g]未満、有利に1[μg/g]以下、特に鉄60[μg/g]未満、有利に鉄の含有量は10[μg/g]未満、特に有利に5[μg/g]未満である。全体として、本発明の場合には、不純物、例えばホウ素、リン、アルミニウム及び/又はヒ素等の含有量が、それぞれ技術的に可能な検出限度を下回る炭水化物を使用するように努められる。
【0036】
有利に、少なくとも1種の炭水化物を有する炭水化物源、本発明による炭水化物又は炭水化物混合物は、ホウ素、リン又はアルミニウム、並びに場合により鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル及び/又はクロムの次の不純物プロフィールを有する。ホウ素(B)の不純物は、特に5〜0.000001μg/g、有利に3〜0.00001μg/g、特に有利に2〜0.00001μg/g、本発明により、2未満〜0.00001μg/gである。リン(P)の不純物は、特に5〜0.000001μg/g、有利に3〜0.00001μg/g、特に有利に1未満〜0.00001μg/g、本発明により、0.5未満〜0.00001μg/gである。鉄(Fe)の不純物は、100〜0.000001μg/g、特に55〜0.00001μg/g、有利に2〜0.00001μg/g、特に有利に1未満〜0.00001μg/g、本発明により0.5未満〜0.00001μg/gである。ナトリウム(Na)の不純物は、特に20〜0.000001μg/g、有利に15〜0.00001μg/g、特に有利に12未満〜0.00001μg/g、本発明により10未満〜0.00001μg/gである。カリウム(K)の不純物は、特に30〜0.000001μg/g、有利に25〜0.00001μg/g、特に有利に20未満〜0.00001μg/g、本発明により16未満〜0.00001μg/gである。アルミニウム(Al)の不純物は、特に4〜0.000001μg/g、有利に3〜0.00001μg/g、特に有利に2未満〜0.00001μg/g、本発明により1.5未満〜0.00001μg/gである。ニッケル(Ni)の不純物は、特に4〜0.000001μg/g、有利に3〜0.00001μg/g、特に有利に2未満〜0.00001μg/g、本発明により1.5未満〜0.00001μg/gである。クロム(Cr)の不純物は、特に4〜0.000001μg/g、有利に3〜0.00001μg/g、特に有利に2未満〜0.00001μg/g、本発明により1.5未満〜0.00001μg/gである。
【0037】
本発明の場合に、結晶性の糖、例えば精糖が使用されるか、又は結晶性の糖を水含有二酸化ケイ素又はケイ酸−ゾルと混合し、乾燥し、粒子の形でこの方法に使用される。これとは別に、全ての任意の炭水化物、特に糖、転化糖又はシロップは、乾燥した、含水の又は水性の酸化ケイ素、二酸化ケイ素、水含有量を有するケイ酸又はケイ酸−ゾル又は下記する二酸化ケイ素−成分と混合し、場合により乾燥に供給されかつ有利に1nm〜10mmの粒径を有する粒子として、この方法に使用することができる。
【0038】
通常では、1nm〜10cm、特に10μm〜1cm、有利に100μm〜0.5cmの平均粒子径を有する糖が使用される。これとは別に、マイクロメートル範囲〜ミリメートル範囲の、有利に1マイクロメートル〜1mmの、特に有利に10マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する糖を使用することができる。この粒径の決定は、特に篩分析、TEM(透過型電子顕微鏡)、REM(原子間力顕微鏡)又は光学顕微鏡を用いて行うことができる。溶解した炭水化物も液体、シロップ、ぺーストとして使用することができ、その際、高純度の溶剤を熱分解の前に蒸発させる。これとは別に溶剤の回収のための乾燥段階をその前に行うこともできる。
【0039】
炭素源としての有利な原料は、更に、純度の要求を満たす少なくとも1種の炭水化物を有する当業者に公知の全ての有機化合物、例えば炭化水素の溶液である。炭水化物溶液として、水性−アルコール性溶液又はテトラエトキシシラン(Dynasylan (登録商標) TEOS)又はテトラアルコキシシランを有する溶液も使用することができ、その際、この溶液は本来の熱分解の前に蒸発及び/又は熱分解される。
【0040】
酸化ケイ素もしくは酸化ケイ素成分として、有利に、SiO、特に有利にSiOx(式中、x=0.5〜1.5)、SiO、SiO2、酸化ケイ素(水和物)、水性又は水含有SiO2、熱分解又は沈降ケイ酸の形の酸化ケイ素、湿った、乾燥した又はか焼した、例えばアエロジル(登録商標)又はジペルナート(登録商標)、又はケイ酸−ゾル又はケイ酸−ゲル、多孔性又は緻密なケイ酸ガラス、石英砂、石英ガラス繊維、例えば光ファイバー、石英ガラスビーズ、又は少なくとも2種の上述の二酸化ケイ素の形の混合物が使用される。当業者に公知の種類及び方法で、この場合に相互に個々の成分の粒径が調節される。
【0041】
本発明の範囲内で、ゾルとは、固体又は液体の材料が、固体、液体又は気体の媒体中に最も微細に分配されて分散されたコロイド状の溶液であると解釈される(Roempp Chemie Lexikonも参照)。
【0042】
炭水化物を有する炭素源の粒径並びに酸化ケイ素の粒径は、特にこれらの成分の良好な均質化を可能にし、かつこの方法の前及びこの方法の間に凝離を抑制するために特に相互に調節される。
【0043】
有利に、特に0.1〜800m2/g、有利に10〜500m2/g又は100〜200m2/gの内部表面積、1nm以上、又は10nm〜10mmの平均粒径を有する多孔性ケイ酸、特に高い(99.9%)〜最も高い(99.9999%)の純度を有するケイ酸が使用され、その際、不純物、例えばB−、P−、As−及びAl化合物の含有量は合計で、全体の組成に対して有利に10質量ppm未満である。この純度は、当業者に公知の試料分解、例えばICP−MS(微量不純物を測定するための分析)での検出により決定される。特に敏感な検出は、電子スピン分光法により可能である。この内部表面積は、例えばBET法を用いて行うことができる(DIN ISO 9277、1995)。
【0044】
酸化ケイ素の有利な平均粒径は、10nm〜1mm、特に1〜500μmである。この粒径の決定は、特にTEM(透過型電子顕微鏡)、REM(原子間力顕微鏡)又は光学顕微鏡を用いて行うことができる。
【0045】
適切な酸化ケイ素として、一般に、この方法のためひいてはこの方法生成物のために適した純度を有しかつ有害な元素及び/又は化合物をこの方法に持ち込まないか又は残留せずに燃焼しない限り、酸化ケイ素を含有する全ての化合物及び/又は鉱物が挙げられる。上述のように、純粋又は高純粋な酸化ケイ素を有する化合物又は材料がこの方法で使用される。
【0046】
多様な酸化ケイ素、特に多様なシリカ、ケイ酸などの使用の際に、粒子表面のpH値に依存して、熱分解の間に凝集が多様に生じることがある。一般に、むしろ酸性の酸化ケイ素の場合に、熱分解により粒子の著しい凝集が観察される。従って、あまり凝集しない熱分解物及び/又はか焼生成物を製造するために、中性〜塩基性の表面を有する、例えば7〜14のpH値を有する酸化ケイ素をこの方法で使用するのが有利である。
【0047】
本発明の場合に、酸化ケイ素は、二酸化ケイ素、特に熱分解又は沈降ケイ酸、有利に高純度又は最高純度の熱分解又は沈降ケイ酸を有する。最高純度とは、酸化ケイ素のホウ素及び/又はリン又はホウ素及び/又はリンを含有する化合物による汚染が、ホウ素について10ppm未満であり、特に10ppm〜0.001pptであり、リンについて20ppm未満であり、特に20ppm〜0.001pptである酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素であると解釈される。有利に、ホウ素の含有量は、7ppm〜1ppt、有利に6ppm〜1ppt、特に有利に5ppm〜1ppt又はそれ未満であり、又は例えば0.001ppm〜0.001ppt、有利に分析による検出限度の範囲内である。酸化ケイ素のリンの含有量は、有利に、18ppm〜1ppt、有利に15ppm〜1ppt、特に有利に10ppm〜1ppt又はそれ未満である。有利に、リンの含有量は分析による検出限度の範囲内である。
【0048】
酸化ケイ素、例えば石英、ケイ岩及び/又は通常の方法で製造された二酸化ケイ素も有利である。これは、結晶変態の形で生じる二酸化ケイ素、例えばモガナイト(カルセドン)、α−石英(Tiefquarz)、β−石英(Hochquarz)、トリデマイト、クリストバライト、コーサイト、スティショバイト又は無定形SiO2であることができ、特に前記の純度要求を満たす場合が有利である。更に、有利なケイ酸、特に沈降ケイ酸又はシリカゲル、熱分解SiO2、熱分解ケイ酸又はシリカはこの方法において及び/又は組成物において使用することができる。通常の熱分解ケイ酸は、平均で5〜50nmの直径及び50〜600m2/gの比表面積を有する非晶質SiO2粉末である。上述の列挙は完結したものではないと解釈され、当業者には、この方法のために適した他の酸化ケイ素源も、この酸化ケイ素源が相応する純度を有するか又は精製後の相応する純度を有する場合には、この方法で使用できることは明らかである。
【0049】
酸化ケイ素、特にSiO2は、粉末状で、粒状で、多孔性で、発泡させて、押出物として、プレス成形物として、及び/又は多孔性ガラス体として、場合により他の添加物と一緒に、特に少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源並びに場合により結合剤及び/又は付形助剤と一緒に存在及び/又は使用することができる。
【0050】
有利に、粉末状の、多孔性の二酸化ケイ素は、成形体として、特に押出物又はプレス成形物として、特に有利に、押出物又はプレス成形物の形の、例えばペレット又はブリケットの形の炭水化物を有する炭素源と一緒に使用される。一般に、全ての固体の反応体、例えば二酸化ケイ素及び場合により少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源は、反応の進行のためにできる限り大きな表面積を提供する形で、この方法に使用するか又は組成物中に存在させることが好ましい。更に、プロセスガスの迅速な排出のために高い多孔性が望ましい。本発明により、従って、炭水化物からなる皮膜/被覆を備えた二酸化ケイ素粒子からなる粒子状の混合物を使用することができる。この粒子状の混合物は、特に有利な実施態様の場合に、組成物として又はキットとして存在し、特に有利に小分け包装されている。
【0051】
使用材料の量並びに酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素及び少なくとも1種の炭化水素を有する炭素源のそれぞれの割合は、例えばシリコン製造のための後続プロセスにおいて、焼結法において、電極材料又は電極の製造方法において当業者に公知の所与性又は要求に依存する。
【0052】
本発明による方法の場合に、この炭水化物は、炭水化物対酸化ケイ素の、特に二酸化ケイ素の質量比で、全体の質量に対して1000対0.1〜1対1000の質量比で使用することができる。有利に、炭水化物又は炭水化物混合物は、酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素に対する質量比で、100:1〜1:100、特に有利に50:1〜1:5、更に特に有利に20:1〜1:2、有利な範囲で2:1〜1:1で使用される。有利な実施態様の場合には、この方法において、炭素は、炭水化物を介して、酸化ケイ素中の反応されるべきケイ素に対して過剰量で使用される。酸化ケイ素が有利な実施態様の場合に過剰量で使用される場合には、この比率の選択において、炭化ケイ素の生成が抑制されないことに留意しなければならない。
【0053】
同様に、本発明の場合には、炭水化物を有する炭素源の炭素の含有量対酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素のケイ素含有量は、全体の組成に対して、1000対0.1〜0.1対1000のモル比にある。通常の結晶性の糖を使用する場合に、炭水化物を有する炭素源を介して導入される炭素のモル対酸化ケイ素化合物を介して導入されるケイ素のモルの有利な範囲は、100Mol対1Mol〜1Mol対100Mol(出発材料中のC対Si)の範囲内にあり、特に有利にC対Siは、50:1〜1:50、更に特に有利に20:1〜1:20の比率にあり、本発明の場合に3:1〜2:1又は〜1:1の範囲内にある。炭素源を介した炭素が、酸化ケイ素中のケイ素に対してほぼ等モルで又は過剰量で使用されるモル比が有利である。
【0054】
この方法は通常では多段階で構成される。最初の方法段階において、少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源の熱分解が、黒鉛化を有する酸化ケイ素の存在で行われ、特に、酸化ケイ素成分、例えばSiOx(式中、x=0.5〜1.5)、SiO、SiO2、二酸化ケイ素(水和物)上及び/又はその中に、炭素含有加水分解生成物、例えば黒鉛及び/又はカーボンブラックの割合を有する被覆が形成される。この熱分解に引き続き、か焼が行われる。この熱分解及び/又はか焼は、1つの反応器中で互いに連続して又は異なる反応器中で互いに別個に行うことができる。例えば、この熱分解を第1の反応器中で行い、引き続くか焼を、例えば流動層を有するマイクロ波中で行う。当業者には、反応器構成、容器、供給導管及び/又は排出導管、炉構成はそれ自体が、方法生成物の汚染に寄与してはならないことは周知である。
【0055】
この方法は、一般に、酸化ケイ素と少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源とが完全に混合されるか、分散されるか、均質化されるか又は調製物の形で熱分解のための第1の反応器に供給されるように実施される。この方法は、連続的又は不連続的に行うことができる。場合により、この使用材料は、本来の反応器中に供給する前に乾燥され、有利に付着水又は残留水分はこの系中に残ることができる。この全体の方法は、熱分解が行われる最初の段階と、か焼が行われる次の段階において行われる。
【0056】
この熱分解は、一般に、特に少なくとも1つの第1の反応器中で、低温運転法で約700℃で、通常では200℃〜1600℃で、特に有利に300℃〜1500℃で、特に400〜1400℃で行われ、その際、有利に黒鉛を含有する熱分解生成物が得られる。熱分解温度とは、有利に反応体の内部温度であるとみなされる。この熱分解生成物は、有利に約1300〜1500℃の温度で得られる。
【0057】
この方法は、一般に、低圧領域で及び/又は不活性ガス雰囲気中で運転される。不活性ガスとして、アルゴン又はヘリウムが有利である。窒素も同様に有利であり、あるいはか焼段階において場合により窒化ケイ素が炭化ケイ素の他に又はn−ドープされた炭化ケイ素を生成させる場合には、方法の実施に応じて有利であることができる。n−ドープされた炭化ケイ素をか焼段階で製造するために、熱分解段階及び/又はか焼段階で窒素を、場合により炭水化物、例えばキチンを介してもこの方法に添加することができる。同様に、特別なp−ドープされた炭化ケイ素の製造も有利であり、この特例の場合には例えばアルミニウム含有量が高められる。このドーピングは、アルミニウムを含有する物質、例えばトリメチルアルミニウムガスを用いて行うことができる。
【0058】
反応器中の圧力に依存して、多様な程度で凝集された並びに多様な程度の多孔性の熱分解生成物又は組成物をこの方法段階で製造することができる。真空下では一般に、低圧下又は高めた圧力下の場合よりもあまり凝集されていない高められた多孔性を有する熱分解生成物が得られる。
【0059】
この熱分解時間は、上述の熱分解温度で、1分〜通常では48時間、特に15分〜18時間、有利に30分〜約12時間であることができる。熱分解温度までの加熱期間は、ここでは一般に加算することができる。
【0060】
この圧力範囲は、通常では1mbar〜50bar、特に1mbar〜10bar、有利に1mbar〜5barである。所望の熱分解生成物に応じて、炭素を含有するプロセスガスの形成を最小化するために、この方法においてこの熱分解段階は1〜50bar、有利に2〜50bar、特に有利に5〜50barの圧力範囲で行うこともできる。この場合、当業者は、この選択すべき圧力は、ガス排出、凝集及び炭素を含有するプロセスガスの還元の間での妥協であることを知っている。
【0061】
反応体、例えば酸化ケイ素及び炭水化物の熱分解の後に引き続き、か焼の段階が行われる。この段階の場合には、さらに熱分解生成物を炭化ケイ素に変換させ、並びに場合により結晶水を気化させ、方法生成物を焼結させることが行われる。このか焼又はこの方法の高温領域は、通常では、1mbar〜50bar、特に1mbar〜1bar(大気圧)、特に1〜250mbar、有利に1〜10mbarの圧力範囲で行われる。不活性雰囲気として、上述の雰囲気も挙げられる。このか焼時間は、温度及び使用される反応体に依存する。一般に、このか焼時間は、上述のか焼温度で、1分〜通常では48時間、特に15分〜18時間、有利に30分〜約12時間であることができる。か焼温度までの加熱期間は、ここでは一般に加算することができる。
【0062】
特にか焼段階の、高めた温度での炭化ケイ素への反応は、有利に400〜3000℃の温度で行われ、有利にこのか焼は1400〜3000℃、有利に1400℃〜1800℃、特に有利に1450〜1500及び1700℃の高温領域で行われる。この場合、この温度領域はこの開示に限定されるべきではなく、この達成される温度は使用された反応器にも直接依存する。この温度の表示は、標準高温温度センサ、例えばカプセル化(PtRhPt素子)を用いた測定に基づくか又はこれとは別にグローコイルの視覚的比較による色温度による測定に基づく。
【0063】
従って、か焼(高温領域)とは、反応体を、場合により炭素マトリックス及び/又は酸化ケイ素マトリックス及び/又はこれらの混合物を有する、主に高純度の炭化ケイ素に反応させる方法段階であると解釈される。
【0064】
酸化ケイ素と炭水化物を含有する炭素源との反応を高温領域で直接行うこともでき、この場合、ガス状で生じる反応体又はプロセスガスは良好にこの反応区域から排出できなければならない。これは、緩い粉粒体により又は酸化ケイ素及び/又は炭素源からなる成形体を有する粉粒体又は有利に二酸化ケイ素と炭素源(炭水化物)とを有する成形体を有する粉粒体により保証することができる。ガス状の反応生成物又はプロセスガスとして、特に水蒸気、一酸化炭素及び二次生成物であると解釈される。高温で、特に高温領域で、主に一酸化炭素が生成される。
【0065】
本発明による方法で使用される反応器として、当業者に公知の熱分解及び/又はか焼用の全ての反応器が挙げられる。従って、SiC生成及び場合による黒鉛化のためのこの熱分解及び引き続くか焼のために、当業者に公知の全ての実験室用反応器、工業専門学校用の反応器又は大規模工業の反応器、例えばロータリーキルン又はセラミックの焼結のために公知のようなマイクロ波反応器を利用することができる。
【0066】
このマイクロ波反応器は、高周波領域(HF領域)で運転することができ、この場合本発明の範囲内で高周波領域とは100MHz〜100GHz、特に100MHz〜50GHz、又は100MHz〜40GHzであると解釈される。有利な周波数領域は、例えば1MHz〜100GHzであり、その際、10MHz〜50GHzが特に有利である。これらの反応器を並行して運転することができる。特に有利にこの方法のために、2.4MHzを有するマグネトロンが使用される。
【0067】
この高温反応は、鋼又はシリコン、例えば冶金学的シリコンの製造のための通常の溶解炉中で、又は他の適当な溶解炉、例えば誘導炉中で行うこともできる。このような溶融炉、特に有利なエネルギー源として電気アークを使用する電気炉の構造は、当業者に十分に公知であり、この出願の一部ではない。直流式炉の場合に、この炉は溶融電極と底部電極を有し、交流式炉としては通常では3つの溶融電極を有する。このアーク長は電極調節装置を用いて調節される。このアーク炉は、一般に耐火材料からなる反応室を基礎としている。この原料は、特にケイ酸/SiO2上の熱分解された炭水化物は、アークの作成のために黒鉛電極も配置されている上方領域に添加される。この炉は大抵は約1800℃の範囲内の温度で運転される。更に、炉の構造自体が製造される炭化ケイ素の汚染に寄与してはならないことが当業者には公知である。
【0068】
本発明の主題は、本発明による方法により、特にか焼段階により得られ、かつ特に単離された、場合により炭素マトリックス及び/又は酸化ケイ素マトリックス又は炭化ケイ素、炭素及び/又は酸化ケイ素並びに場合によりケイ素を有するマトリックスを備えた炭化ケイ素を有する組成物でもある。単離とは、この方法の実施の後に組成物及び/又は高純度の炭化ケイ素を得て、かつ特に生成物として単離することを意味する。この場合、炭化ケイ素は、例えばSiO2を有する不動態化層を備えていてもよい。
【0069】
この生成物は、反応体、触媒、物品の製造のための材料、例えばフィルタ、成形体又は未焼結体の製造のための材料として利用することができ、並びに更に当業者に周知の適用において利用することができる。他の重要な適用は、反応出発物及び/又は反応体としての及び/又は電極材料の製造の際の又は砂糖炭及びケイ酸を有する炭化ケイ素の製造の際の、炭化ケイ素を有する組成物の利用である。
【0070】
本発明の主題は、400対0.1〜0.4対1000の炭素対酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素の含有量を有する、熱分解生成物及び場合によりか焼生成物、特に本発明の方法により得られる組成物並びに特にこの方法から単離された熱分解生成物及び/又はか焼生成物でもある。
【0071】
有利に、この方法生成物の導電性、特に高密度にプレス成形した粉末状の方法生成物の導電性は、2つの尖った電極の間で測定して、κ[m/Ω・m2]=1・10-1〜1・10-6である。それぞれの炭化ケイ素方法生成物について、この方法生成物の純度と直接相関する低い導電性が目指される。
【0072】
有利に、この組成物又は熱分解生成物及び/又はか焼生成物は、全体の組成物に対して0〜50質量%、有利に25〜50質量%の黒鉛割合を有する。本発明の場合には、この組成物又は熱分解生成物及び/又はか焼生成物は、全体の組成物に対して25〜100質量%、有利に30〜50質量%の炭化ケイ素の割合を有する。
【0073】
本発明の主題は、本発明による方法、特に請求項1〜10による方法により得られた、炭及び/又はカーボンブラック及び/又は黒鉛又はこれらの混合物を有する炭素マトリックスを有し、及び/又は二酸化ケイ素、ケイ酸及び/又はこれらの混合物を有する酸化ケイ素マトリックスを有するか、又は上述の成分の混合物を有する炭化ケイ素でもある。特に、SiCは単離され、次に示すように更に使用される。
【0074】
本発明の定義による炭化ケイ素中のホウ素、リン、ヒ素及び/又はアルミニウムの元素の含有量は、全体として有利に10質量ppm未満である。
【0075】
本発明の主題は、炭化ケイ素中で全体として100質量ppm未満のホウ素、リン、ヒ素及び/又はアルミニウムの元素の含有量を有する、場合により炭素割合及び/又は酸化ケイ素割合を有する炭化ケイ素、又は炭化ケイ素、炭素及び/又は酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素を有する混合物でもある。高純度の炭化ケイ素のホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロムによるこの不純物プロフィールは、有利に5ppm未満〜0.01ppt(質量)、特に2.5ppm未満〜0.1pptである。特に有利に、本発明による方法により得られた、場合により炭素及び/又はSiyzマトリックスを有する炭化ケイ素は、B、P、Na、S、Ba、Zr、Zn、Al、Fe、Ti、Ca、K、Mg、Cu、Cr、Co、Zn、Ni、V、Mn及び/又はPbの元素並びにこれらの元素の混合物による上述の定義による不純物プロフィールを有する。
【0076】
特に、得られた炭化ケイ素は全体として、400対0.1〜0.4対1000の炭素対酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素の含有量を有し、有利に、特にこの組成物は0〜50質量%、特に有利に25〜50質量%の黒鉛含有量を有する。炭化ケイ素の割合は、上述の定義による炭化ケイ素(全体)中で、特に25〜100質量%、有利に30〜50質量%である。
【0077】
1実施態様によると、本発明の主題は、シリコンの製造の際の、特に太陽電池シリコンの製造の際の、本発明の方法、特に請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法による炭化ケイ素又は組成物又は熱分解生成物及び/又はか焼生成物の使用である。本発明の主題は、特に、高温での二酸化ケイ素の還元による太陽電池シリコンの製造の際の又は炭、特に砂糖炭、及び二酸化ケイ素、特にケイ酸、有利に熱分解、沈降又はイオン交換体により精製されたケイ酸又はSiO2の高温での反応による炭化ケイ素の製造の際の、研磨剤としての、絶縁体としての、耐火材としての、例えば耐火タイルとしての、又は物品の製造の際の、又は電極の製造の際の使用である。
【0078】
本発明の主題は、触媒としての、特シリコンの製造の際の、特に太陽電池シリコンの製造の際の、特に高温での二酸化ケイ素の還元による太陽電池シリコンの製造の際の、本発明による方法、特に請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法により得られた炭化ケイ素又は組成物又は熱分解生成物及び/又はか焼生成物の使用でもある。並びに場合により、半導体適用のための炭化ケイ素の製造の際の、又は例えば昇華による最高純度の炭化ケイ素の製造の際の触媒としての使用のための、又は高温でのシリコンの製造の際の又は特に炭、有利に砂糖炭から、及び二酸化ケイ素、有利にケイ酸からの炭化ケイ素の製造の際の反応体としての、又は物品の材料として又は電極材料として、特にアーク炉の電極用の使用のためである。物品、特に電極の材料としての使用は、物品用の材料としてのこの材料の使用、又は物品、例えば焼結された材料又は研磨剤の製造のための更に加工された材料の使用も有する。
【0079】
本発明の更なる主題は、炭化ケイ素の製造の際の、特に生成物として単離可能な炭化ケイ素の製造の際の、又は炭化ケイ素を有する組成物もしくは炭化ケイ素を有する熱分解生成物及び/又はか焼生成物の製造の際の、特に酸化ケイ素の存在での、有利に酸化ケイ素及び/又は二酸化ケイ素の存在での少なくとも1種の炭水化物の使用である。
【0080】
本発明の場合に、炭化ケイ素の製造のために、少なくとも1種の炭水化物と、酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素からの、特に他の成分なしの選択が使用され、その際、この炭化ケイ素、炭化ケイ素を有する組成物、又は熱分解生成物及び/又はか焼生成物は反応生成物として単離される。
【0081】
本発明の主題は、特に本発明による方法に適用するための、又は特に請求項1から10までのいずれか1項記載の本発明による使用のための、又は請求項16に記載の使用のための、少なくとも1種の炭水化物及び酸化ケイ素を有する組成物、特に調製物又はキットでもある。従って、本発明の主題は、特に上述の説明による使用のための、酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素の、場合によりSiO2上の炭水化物の熱分解生成物と一緒の、及び/又は少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源の、特に押出物及び/又は粉末の形での、別個のコンテナ、例えば容器、袋及び/又は缶中での、個別の調製物を有するキットでもある。この場合、酸化ケイ素を、炭水化物を有する炭素源で直接、例えば含浸させるか又はSiO2等上に含浸させた炭水化物を、タブレットの形、顆粒として、押出物として、特にペレットとして、キット中の1つのコンテナ中に存在させ、かつ場合により他の炭水化物及び/又は酸化ケイ素を粉末として第2のコンテナ中に存在させる場合が有利である。
【0082】
本発明の他の主題は、特に請求項1から13までのいずれか1項記載の、本発明による炭化ケイ素又は炭化ケイ素を有する本発明による組成物、並びに他の通常の添加物、添加剤、助剤、顔料又は結合剤を有する、物品、特に未焼結体、成形体、焼結体、電極、耐熱性部材である。本発明の主題は、従って、特に請求項1から13までのいずれか1項記載の、本発明による炭化ケイ素を含有するか、又は本発明による炭化ケイ素の使用下で製造された物品である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】a)熱分解生成物が反応容器壁部に付着したことを示し、b)熱分解生成物が反応容器壁部に付着していないことを示す。
【図2】実施例1aからの熱分解生成物の顕微鏡写真。
【図3】か焼生成物の試料の顕微鏡写真。
【図4】か焼生成物の試料の顕微鏡写真。
【0084】
以下の実施例は、本発明による方法をより詳細に説明するものであるが、本発明はこの実施例によって制限されることはない。
【0085】
比較例1:
市販の精糖を石英ガラス中で溶融物にし、引き続き約1600℃に加熱した。この反応混合物は、加熱の際に著しく発泡し、部分的にこの石英ガラスから流出した。同時に、カラメル形成が観察された形成された熱分解生成物は、反応容器の壁部に付着した(図1a)。
【0086】
実施例1a:
市販の精糖を、SiO2(Sipernat (登録商標) 100)と一緒に1.25対1の質量比で混合し、溶融させ、約800℃に加熱した。カラメル形成を観察することができ、発泡形成は生じなかった。黒鉛を含有する粒子状の熱分解生成物が得られ、これは特に反応容器の壁部に付着していない(図1b)。図2は、(実施例1aからの熱分解生成物の顕微鏡写真)である。この熱分解生成物は、SiO2粒子上に及び恐らくSiO2粒子の細孔中にも分配されている。この粒子状の構造が維持される。
【0087】
実施例1b:
市販の精糖を、SiO2(Sipernat (登録商標) 100)と一緒に5対1の質量比で混合し、溶融させ、まず約800℃に加熱し、引き続き約1800℃に更に加熱した。カラメル形成を観察することができ、発泡形成は生じなかった。黒鉛割合を有する炭化ケイ素が得られた。図3及び4は、か焼生成物の2つの試料の顕微鏡写真である。XPSスペクトル及び結合エネルギーの調査により、炭化ケイ素の生成を確認することができた。更に、Si−O構造を検出することができた。黒鉛の生成に関して、光学顕微鏡のもとでの金属性の閃光により推論された。
【0088】
実施例2:
熱分配のためにSiO2球を有するロータリーキルン中で、SiO2粒子上に付着された糖の微細粒の調製物を、高めた温度で反応させる。例えば、ケイ酸水溶液中に糖を溶解させ、引き続き乾燥及び必要な場合に均質化することにより製造する。残留水分は、この系中になお含まれていた。調製物約1kgが使用された。
【0089】
ロータリーキルン中での滞留時間は、微細粒の調製物の含水量に依存する。ロータリーキルンは、調製物の乾燥のための予熱区域を備えていて、引き続きこの調製物は400℃〜1800℃の温度を有する熱分解区域及びか焼区域を通過した。乾燥段階、熱分解段階及びか焼段階を有するこの滞留時間は、約17時間であった。この全体のプロセスの間に、生成されるプロセスガス、例えば水蒸気及びCOは、簡単な方法でこのロータリーキルンから除去することができた。
【0090】
使用したSiO2は、0.1ppm未満のホウ素含有量、0.1ppm未満のリン含有量、及び約0.2ppm未満の鉄含有量を有していた。糖の鉄含有量は、調製の前に0.5ppm未満と測定されていた。
【0091】
熱分解及びか焼の後で、この含有量を新たに測定し、その際、0.1ppm未満のホウ素及びリンの含有量が決定され、鉄の含有量は1ppmに高まった。この高められた鉄含有量は、従って、上記生成物が、鉄で汚染されている炉の部分と接触することにより接触することで説明することができるだけである。
【0092】
実施例3:
実施例2を繰り返すが、実験室ロータリーキルンは予め高純度の炭化ケイ素で被覆されていた。上記ロータリーキルンは熱分配のためにSiO2球を有し、SiO2粒子上に付着された糖を含む微細粒の調製物を、高めた温度で反応させた。例えば、ケイ酸水溶液中に糖を溶解させ、引き続き乾燥及び必要な場合に均質化することにより製造する。残留水分は、この系中になお含まれていた。調製物約10gが使用された。ロータリーキルン中での滞留時間は、微細粒の調製物の含水量に依存する。ロータリーキルンは、調製物の乾燥のための予熱区域を備えていて、引き続きこの調製物は400℃〜1800℃の温度を有する熱分解区域及びか焼区域を通過した。乾燥段階、熱分解段階及びか焼段階を有するこの滞留時間は、約17時間であった。この全体のプロセスの間に、生成されるプロセスガス、例えば水蒸気及びCOは、簡単な方法でこのロータリーキルンから除去することができた。
【0093】
使用したSiO2は、0.1ppm未満のホウ素含有量、0.1ppm未満のリン含有量、及び約0.2ppm未満の鉄含有量を有していた。糖の鉄含有量は、調製の前に0.5ppm未満と測定されていた。
【0094】
熱分解及びか焼の後で、この含有量を新たに測定し、その際、0.1ppm未満のホウ素及びリンの含有量が決定され、鉄の含有量は相変わらず0.5ppm未満であった。
【0095】
実施例4:
アーク炉中で、SiO2粒子上の熱分解された糖の微細粒の調製物を高温で反応させた。この熱分解された糖の調製物は、予め約800℃でのロータリーキルン中での熱分解により製造した。微細粒の熱分解された調製物約1kgが使用された。
【0096】
アーク炉中での反応の間に、生成されたプロセスガスCOは、SiO2粒子の粒子状の構造により形成される隙間を介して容易に漏出し、反応室から取り出すことができる。電極として高純度の黒鉛電極が利用され及び反応器底部の内張りのために同様に高純度の黒鉛が利用された。このアーク炉は、1〜12kWで運転した。この反応の後に、黒鉛の割合を有する高純度の炭化ケイ素は、つまり炭素マトリクス中の高純度の炭化ケイ素が得られた。
【0097】
使用したSiO2は、0.17ppm未満のホウ素含有量、0.15ppm未満のリン含有量、及び約0.2ppm未満の鉄含有量を有していた。糖の鉄含有量は、調製の前に0.7ppm未満で測定されていた。
【0098】
熱分解及びか焼の後で、炭化ケイ素中のこれらの含有量を新たに測定し、その際、0.17ppm未満のホウ素及び0.15ppm未満のリンの含有量が決定され、鉄の含有量は相変わらず0.7ppm未満であった。
【0099】
実施例5:
実施例3による熱分解された調製物の相応する反応をマイクロ波反応器中で行った。このために、SiO2粒子上の熱分解された糖の乾燥した微細粒の調製物約0.1kgを、1ギガワットを越える周波数で、炭素マトリックス中の炭化ケイ素に反応させた。この反応時間は、使用された出力及び反応体に直接依存する。
【0100】
炭水化物とSiO2粒子とから出発する反応を行う場合には、反応時間は相応してより長くなる。
【図1a)−1b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高めた温度で、酸化ケイ素と、少なくとも1種の炭水化物を有する炭素源との反応による、炭化ケイ素の製造方法。
【請求項2】
炭素マトリックス及び/又は酸化ケイ素マトリックス又は炭素及び/又は酸化ケイ素を有するマトリックスを有する炭化ケイ素を単離することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記炭化ケイ素は高純度であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
前記炭素源は、炭水化物又は炭水化物混合物を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記炭素源は、結晶性の糖を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
酸化ケイ素は二酸化ケイ素、特に、熱分解ケイ酸又は沈降ケイ酸、又はシリカゲル、有利に高純度又は最高純度の熱分解ケイ酸又は沈降ケイ酸又はシリカゲルを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記炭素源の炭素の含有量対前記酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素のケイ素の含有量は、全体の組成物に対して1000対0.1〜0.1対1000のモル比で存在することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記反応を、150℃〜3000℃の間の温度範囲で行うことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
第1段階において主に熱分解を行い、第2段階において主にか焼を行うことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記方法を1mbar〜50barで実施し、特に前記熱分解を1mbar〜50barで実施し及び/又は前記か焼を1mbar〜1barで実施することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により得られ、特に炭化ケイ素を有する組成物が単離される、場合により、炭素マトリックス及び/又は酸化ケイ素マトリックス又は炭化ケイ素、炭素及び/又は酸化ケイ素を有するマトリックスを有する炭化ケイ素を有する組成物。
【請求項12】
400対0.1〜0.4対1000の炭素対酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素の含有量を有する、特に請求項1から10までのいずれか1項記載の、熱分解生成物及び場合によりか焼生成物。
【請求項13】
炭化ケイ素中で全体として10質量ppm未満のホウ素、リン、ヒ素及び/又はアルミニウムの元素の含有量を有する、場合により炭素割合及び/又は酸化ケイ素割合を有する炭化ケイ素、又は炭化ケイ素、炭素及び/又は酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素を有する混合物。
【請求項14】
シリコンの製造の際の、特に太陽電池シリコンの製造の際の、又は高温での炭及び二酸化ケイ素からの炭化ケイ素の製造の際の、物品の製造の際の、研磨剤としての、耐火材料としての、絶縁体としての又は電極の製造の際の、請求項1から13までのいずれか1項記載の炭化ケイ素、生成物又は組成物の使用。
【請求項15】
触媒としての、シリコン又は炭化ケイ素の製造の際の反応体としての、物品の材料としての、又は電極材料としての、請求項1から13までのいずれか1項記載の炭化ケイ素、生成物又は組成物の使用。
【請求項16】
炭化ケイ素又は炭化ケイ素を有する組成物の製造の際の少なくとも1種の炭水化物の使用。
【請求項17】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法のための又は請求項16記載の使用のための、少なくとも1種の炭水化物及び酸化ケイ素を有する組成物又はキット。
【請求項18】
請求項1から13までのいずれか1項記載の炭化ケイ素、熱分解生成物及び/又はか焼生成物又は組成物並びに場合により他の添加物、添加剤、助剤、顔料又は結合剤を有する、物品、特に未焼結体、成形体、焼結体、電極、耐熱性部材。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−504099(P2012−504099A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529512(P2011−529512)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062482
【国際公開番号】WO2010/037692
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】