説明

無線装置

【課題】測定対象の周波数帯域の中心周波数の受信信号強度が低下する特性を有している測定回路を用いる場合であっても、各単位チャンネルにおける受信信号強度の測定精度を向上させることが可能になる、無線装置を提供すること。
【解決手段】中継器30であって、無線送受信部31は、所定帯域に含まれる一定幅の複数の単位チャンネルの各々の受信信号強度を測定し、当該測定した受信信号強度に基づいて、当該複数の単位チャンネルの中で空いている単位チャンネルである空きチャンネルを特定する第2信号処理部38を備える。この第2信号処理部38は、受信信号強度の測定対象となる単位チャンネルの中心周波数である測定対象周波数に対して、所定周波数だけ異なる測定実行周波数の受信信号強度を測定し、この受信信号強度に基づいて測定対象周波数の受信信号強度を算定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を受信等するための無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭等において、侵入者の存在や火災の発生等の異常を監視し、異常を検知した際に異常報知等を行う防犯システムが普及している。特に、近年では、検知センサから無線で信号を送信し、当該送信された信号を受信装置で受信して異常報知等を行う無線式の防犯システムが実用化されている。
【0003】
図11は、従来の無線式の防犯システムの構成を説明するための説明図である。この図11に示すように、無線式の防犯システム100は、扉や窓の開閉状態を検知する無線式の開閉センサ101、火災を検知する無線式の火災センサ102、人体を検知する無線式の人感センサ103、異常を戸外に報知するための無線式の異常報知灯104、これら各センサ101〜103から送信された信号を無線中継する中継器105、及び受信装置106を備えて構成されている。受信装置106は、各センサ101〜103から送信された信号を、中継器105を介して受信し、あるいは直接受信することにより、異常の有無を監視し、異常を検知した際には、異常報知灯104に移報信号を無線で送信して異常報知を行わせると共に、必要に応じて、警備会社へ異常発生を有線又は無線で移報する(例えば、特許文献1には、異常検出手段を備えた家屋用防犯システムが開示されている)。
【0004】
このような無線式の防犯システム100において、無線送信は数mから数十m程度の近距離で行われることから、無線送信の周波数帯域としては、特定小電力セキュリティ無線の帯域である426MHz帯が使用されていた。ここで、この特定小電力セキュリティ無線に関する標準規格であるARIB STD−30では、426.250MHz以上で426.8375MHz以下の周波数の電波を使用する場合には、キャリアセンスが義務付けられていない。キャリアセンスとは、無線送信を行う際に、当該無線送信における搬送波周波数と同一の周波数の他の電波の受信電力の受信信号強度を感知し、この受信信号強度が所定閾値以上である場合には、無線送信を行わないことを意味する。このようなキャリアセンスが必要ない旨が規定されていたので、従来の無線式の防犯システムにおいては、各センサ101〜103がキャリアセンスを行うことなく無線送信を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−115085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の無線式の防犯システム100においては、無線送信の周波数帯域としては426MHz帯等の一つの周波数帯のみを使用していたので、通信速度が例えば1,200bpsと遅く、各センサ101〜103から送信された無線信号が受信装置106に到達するまでに時間がかかり、特に中継器105を介して受信装置106に到達するまでには時間を要していた。
【0007】
また、各センサ101〜103がキャリアセンスを行うことなく無線送信を行っていたので、センサ101〜103の設置数が多くなると、無線送信が同一のタイミングで行われることで信号が衝突する確率が高くなり、電波強度が弱い信号が中継器105や受信装置106に到達しなくなる可能性があった。
【0008】
このような問題を解決するためには、1)各センサ101〜103にキャリアセンスの機能を付けたり、2)各センサの無線送信の周波数帯域を、426MHz帯よりも通信速度が速く、かつ、キャリアセンスが義務付けられている周波数帯域(例えば、950MHz帯)に変更すればよいとも考えられる。しかしながら、このように各センサ101〜103の機能や周波数帯域を変更するためには、設置数が膨大な既設のセンサ101〜103を交換したり、種類の多い新設のセンサ101〜103についても設計変更する必要があり、現実的とは言えない。
【0009】
そこで、本願発明者は、各センサ101〜103からの無線送信においては、従来と同じく426MHz帯でキャリアセンスを行わないこととし、その一方、中継器105から受信装置106への無線送信の周波数帯域を950MHz帯とすることで、上記の問題を解決することに着目した。すなわち、このように950MHz帯を用いた場合には、中継器105から受信装置106への通信速度を例えば9,600bpsに向上させることができ、また、中継器105や受信装置106からの無線送信時にはキャリアセンスを行うことで、無線信号を受信装置106に確実に到達させることができ、通信の信頼性を向上させることが可能となる。特に、この場合には、中継器105や受信装置106の機能のみを変更すればよく、これら中継器105や受信装置106の設置数や種類は各センサ101〜103に比べて少数であるため、現実に適用することが容易である。
【0010】
しかしながら、950MHz帯を使用する無線通信においては、キャリアセンスを行う上で、別の問題が生じ得る。すなわち、950MHz帯の小電力無線システムにおいては、950.8MHzから955.8MHzまでの5MHzの帯域を200kHz幅の24のチャンネル(単位チャンネル)に分けて、最大3つの単位チャンネル分の帯域を同時に使用して送信を行うことが可能であるため、アンテナからの出力電圧を測定することにより、各チャンネルにおける受信信号強度を測定し、空いているチャンネルを特定して、実際に使用するチャンネルを選択している。しかし、従来、アンテナからの出力電圧の測定回路は、チャンネル選択のために内部に設けた帯域通過フィルタの特性として、測定対象の周波数帯域の中央値(中心周波数)における受信信号強度が低下する特性を有しているために、各単位チャンネルにおける受信信号強度の真値を正確に検知することができず、空いている単位チャンネルを正確に特定することができない可能性があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、測定対象の周波数帯域の中心周波数の受信信号強度が低下する特性を有している測定回路を用いる場合であっても、各単位チャンネルにおける受信信号強度の測定精度を向上させることが可能になる、無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の無線装置は、端末機器からの信号を受信する無線装置であって、アンテナを備える無線送受信部と、前記無線送受信部にて受信された信号の内容に基づく制御を行う制御部とを備え、前記無線送受信部は、所定帯域に含まれる一定幅の複数の単位チャンネルの各々の受信信号強度を測定し、当該測定した受信信号強度に基づいて、当該複数の単位チャンネルの中で空いている単位チャンネルである空きチャンネルを特定するキャリアセンス部を備え、前記キャリアセンス部は、前記複数の単位チャンネルの中で、受信信号強度の測定対象となる単位チャンネルの中心周波数である測定対象周波数に対して、所定周波数だけ異なる測定実行周波数の受信信号強度を測定し、当該測定した測定実行周波数の受信信号強度に基づいて前記測定対象周波数の受信信号強度を算定し、当該算定した受信信号強度に基づいて空きチャンネルを特定する。
【0013】
また、請求項2に記載の無線装置は、請求項1に記載の無線装置において、前記キャリアセンス部は、前記測定実行周波数の受信信号強度として、前記測定対象周波数よりも前記所定周波数だけ低域側の第1測定実行周波数の受信信号強度と、前記測定対象周波数よりも前記所定周波数だけ高域側の第2測定実行周波数の受信信号強度を測定し、前記測定した第1測定実行周波数の受信信号強度と第2測定実行周波数の受信信号強度とに基づいて前記測定対象周波数の受信信号強度を算定する。
【0014】
また、請求項3に記載の無線装置は、請求項1又は2に記載の無線装置において、前記キャリアセンス部は、前記測定実行周波数の受信信号強度を複数回測定し、当該複数回測定された受信信号強度の最大値に基づいて前記測定対象周波数の受信信号強度を算定する。
【0015】
また、請求項4に記載の無線装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線装置において、前記制御部を第1筐体に収容し、前記無線送受信部を前記第1筐体に対して着脱自在に構成された第2筐体に設けた。
【0016】
また、請求項5に記載の無線装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載の無線装置において、前記無線装置は、防犯センサからの信号を、直接的に又は防災用の中継器を介して受信する、受信装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の無線装置によれば、測定実行周波数の受信信号強度に基づいて測定対象周波数の受信信号強度を算定し、当該算定した受信信号強度に基づいて空きチャンネルを特定するので、測定対象の周波数帯域の中心周波数の受信信号強度が低下する特性を有している測定回路を用いる場合であっても、各単位チャンネルにおける受信信号強度の真値の測定精度を向上させることが可能になる。
【0018】
また、請求項2に記載の無線装置によれば、測定対象周波数よりも低域側の第1測定実行周波数の受信信号強度と、測定対象周波数よりも高域側の第2測定実行周波数の受信信号強度とに基づいて、測定対象周波数の受信信号強度を算定するので、例えば、第1測定実行周波数の受信信号強度と第2測定実行周波数の受信信号強度との平均値を測定対象周波数にする等、測定対象周波数の受信信号強度を、比較的簡易に算定することが可能になる。
【0019】
また、請求項3に記載の無線装置によれば、複数回測定された受信信号強度の最大値に基づいて測定対象周波数の受信信号強度を算定するので、測定実行周波数の受信信号強度に測定誤差がある場合であっても、実際には所定受信信号強度を超える受信信号強度の信号が出ているにも関わらず、このような信号が出ていないと判定して信号を送信してしまう事態を防止することが可能になる。
【0020】
また、請求項4に記載の無線装置によれば、無線送受信部をユニット化することで、950MHz帯の無線信号を送受信するために必要な特定小電力セキュリティ無線規格については、無線送受信部のみを対象としてを取得すればよく、無線装置全体で無線規格を取得する必要がなくなるため、無線規格の取得を容易に行うことが可能となる。また、無線送受信部をユニット化することで汎用性を持たせることができ、無線装置とは異なる構成の無線装置や中継器に対しても無線送受信部を容易に取り付けて使用することが可能となる。さらに、無線送受信部を除く無線装置の各部については、従来と同様に426MHz帯の信号の制御等のみを扱うように構成すればよいので、950MHz帯の信号を扱うことに伴う改良等が不要となる。
【0021】
また、請求項5に記載の無線装置によれば、防犯センサからの信号を受信する受信装置において、各周波数帯毎の制御部を設ける必要がないので、受信装置を簡易かつ安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線式の防犯システムの構成を説明するための説明図である。
【図2】携帯型設定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】中継器の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】第2信号処理部による検知特性を示すグラフである。
【図5】第2信号処理部の測定状況を示す図であり、第1測定実行周波数fsの第1受信信号強度Lsの測定状況を示す図である。
【図6】第2信号処理部の測定状況を示す図であり、第2測定実行周波数fsの第2受信信号強度Lsの測定状況を示す図である。
【図7】第2信号処理部の測定状況を示す図であり、受信信号強度ピーク重合点を示す図である。
【図8】受信装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】受信装置に対する無線送受信部の着脱構造を説明するための分解斜視図である。
【図10】防犯システムにおける信号の送受信を説明するための説明図である。
【図11】従来の無線式の防犯システムの構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(概要)
最初に、無線式の防犯システムの概要について説明する。図1は本実施の形態に係る無線式の防犯システムの構成を説明するための説明図である。この図1に示すように、無線式の防犯システム1は、開閉センサ10、火災センサ11、人感センサ12、異常報知灯(戸外表示灯)13、中継器30、及び受信装置(防犯受信器、センター装置)40を備えて構成されている。このうち、異常報知灯13を除く各機器は、住宅の屋内に配置されており、異常報知灯13は、住宅の屋外(例えば玄関近傍)に設置されている。なお、以下では、開閉センサ10、火災センサ11、及び人感センサ12を、必要に応じて「防犯センサ2」と総称し、さらに、防犯センサ2と異常報知灯13を、必要に応じて「防犯端末3」と総称する。なお、ここでは、開閉センサ10、火災センサ11、人感センサ12、異常報知灯13、及び中継器30をそれぞれ1台ずつ設けているが、任意の複数台を設けてもよい。
【0025】
また、本実施の形態の防犯システム1は、図11に示した従来の防犯システムとは異なり、携帯型設定装置20を備えて構成されている。この携帯型設定装置20は、受信装置40の防犯警戒状態を無線で遠隔的に設定するための設定手段である。例えば、携帯型設定装置20は、屋内における中継器30又は受信装置40に電波が届く範囲内において、ユーザによって携帯され、あるいは、任意の場所に置かれた状態で使用される。特に、受信装置40がリビングに設置されており、リビングが玄関から離れた場所にある場合には、ユーザが帰宅してからリビングの受信装置40における防犯モードを解除するまでに時間がかかり、所定時間内に防犯モードを解除できなくなる可能性があるため、携帯型設定装置20を玄関の近傍に配置することでユーザの利便性を向上させることができる。
【0026】
この防犯システム1では、信号を送受信する周波数帯として、2つの周波数帯を併用する。具体的には、防犯端末3と、中継器30又は受信装置40との相互間では、426MHz帯を使用する。また、携帯型設定装置20、中継器30、受信装置40の相互間では、950MHz帯を使用する。すなわち、中継器30と受信装置40は、426MHz帯(第1周波数帯)と950MHz帯(第2周波数帯)の2つの周波数帯の信号の送受信を行う。このように、従来の426MHz帯に加えて、950MHz帯を使用することで、通信速度の向上による設定情報等の高速処理化を図ると共に、通信の信頼性を向上させる。特に、防犯端末3は、従来の426MHz帯のみで通信を行うため、既存のものを交換したり設計変更する必要がない。その一方、中継器30と受信装置40では、2つの周波数帯の信号の送受信を行う必要があるが、信号処理を行うための後述する制御部44は1つのみ設けることで、簡易かつ安価な構造で2つの周波数帯を併用可能とする。このための具体的な構造については後述する。
【0027】
(構成−防犯端末)
次に、無線式の防犯システム1の構成について説明する。最初に、防犯端末3の構成について説明する。ただし、開閉センサ10、火災センサ11、人感センサ12、及び異常報知灯13については、従来と同様に構成することができるので、ここでは、その概要のみを説明する。開閉センサ10は、扉や窓の開閉状態を磁気等にて検知する無線式の開閉検知手段であり、扉や窓が開状態となったことを検知した場合には、その旨の信号を無線にて送信する。火災センサ11は、煙や熱を検知することにより火災発生を検知する火災検知手段であり、火災発生を検知した場合には、その旨の信号を無線にて送信する。人感センサ12は、赤外線を検知することにより人体を検知する人体検知手段であり、人体を検知した場合には、その旨の信号を無線にて送信する。異常報知灯13は、受信装置40から移報信号を受信した場合に点灯又は点滅することで、火災等の異常発生を屋外に報知する異常発生報知手段である。ただし、これら防犯端末3における検知原理は任意であり、公知の他の原理を用いることができる。
【0028】
(構成−携帯型設定装置)
携帯型設定装置20は、受信装置40に無線信号を送信することにより、受信装置40における防犯警戒状態を設定するための無線装置である。図2は、携帯型設定装置20の電気的構成を示すブロック図である。この図2に示すように、携帯型設定装置20は、筐体の正面に、各種のボタン群22及び表示灯群23を備え、筐体の内部に、無線送受信部24、スピーカ25、記憶部26、電源部27、及び制御部28を収容して構成されている。
【0029】
ボタン群22は、非常ボタン22a、開始ボタン22b、警備ボタン22c、及び解除ボタン22dを含んで構成されている。表示灯群23は、非常灯23a、警報灯23b、OK灯23c、NG灯23d、警備灯23e、及び解除灯23fを含んで構成されている。
【0030】
無線送受信部24は、950MHz帯で無線信号を送受信するもので、950MHz帯に専用のアンテナ24aを備える。スピーカ25は、警報音を出力する。記憶部26は、例えばフラッシュメモリにより構成されており(後述する記憶部32、42も同様)、携帯型設定装置20の制御に必要なプログラム及びパラメータを記憶する。電源部27は、図示しない電池を備えて構成されており、この電池から供給される電力を携帯型設定装置20の各部に供給する。制御部28は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)と当該CPU上で実行されるプログラムにより構成されている。特に、制御部28は、信号処理部28aを備える。この信号処理部28aは、無線信号を送信する際には、キャリアセンスを公知の方法で行い、同一周波数帯の無線が検知されない場合にのみ、無線信号を送信する。
【0031】
このように構成された携帯型設定装置20において、非常ボタン22aが押下された場合には、無線送受信部24を介して非常信号が受信装置40に送信され、非常灯23aが点灯又は点滅(以下、点灯又は点滅を、単に点灯として説明する)される。この非常信号が受信装置40で受信された場合、受信装置40から警備会社に非常信号が移報され、警備員が住宅に急行する。
【0032】
警備ボタン22cが押下された場合には、警備灯23eが点灯され、この状態で開始ボタン22bが押下された場合に、無線送受信部24を介して警備要求信号が送信される。この警備要求信号が受信装置40で受信された場合、受信装置40の防犯モードが外出警備モードに設定される。ここで、外出警備モードとは、ユーザの外出時に警備会社が監視を行うモードであり、異常発生時には受信装置40から警備会社に異常信号が移報され、警備員が住宅に急行するモードである。また、このように受信装置40の防犯モードが外出警備モードに設定された場合、受信装置40から警備確認信号が送信され、この警備確認信号が携帯型設定装置20の無線送受信部24を介して受信された場合、OK灯23cが点灯される。一方、開始ボタン22bが押下されてから所定時間以内に警備確認信号が携帯型設定装置20で受信されない場合には、NG灯23dが点灯される。
【0033】
また、解除ボタン22dが押下された場合には、解除灯23fが点灯され、この状態で開始ボタン22bが押下された場合に、解除要求信号が無線送受信部24を介して送信される。この解除要求信号が受信装置40で受信された場合、受信装置40の防犯モードが解除される。また、このように防犯モードが解除された場合、受信装置40から解除確認信号が送信され、この解除確認信号が携帯型設定装置20の無線送受信部24を介して受信された場合、OK灯23cが点灯される。一方、開始ボタン22bが押下されてから所定時間以内に解除確認信号が携帯型設定装置20で受信されない場合には、NG灯23dが点灯される。
【0034】
(構成−中継器)
図1の中継器30は、防犯センサ2から無線送信された信号を受信し、当該受信した信号を携帯型設定装置20又は受信装置40に送信する中継手段であり、防犯センサ2からの信号を受信する防犯システム用の無線装置である。また、中継器30は受信装置40から無線送信された信号を受信し、携帯型設定装置20又は異常報知灯13に送信する中継手段でもある。この中継器30は、防犯センサ2と受信装置40との間に配置され、あるいは、受信装置40と異常報知灯13との間に配置される。
【0035】
図3は、中継器30の電気的構成を示すブロック図である。この図3に示すように、中継器30は、無線送受信部31、記憶部32、電源部33、及び制御部34を備えて構成されている。無線送受信部31は、426MHz帯及び950MHz帯の信号の送受信を行う。この無線送受信部31の詳細については後述する。記憶部32は、中継器30の制御に必要なプログラム及びパラメータを記憶する。電源部33は、図示しない電池を備えて構成されており、この電池から供給される電力を中継器30の各部に供給する。制御部34は、中継器30の各部を制御する制御手段である。
【0036】
ここで、無線送受信部31の詳細について説明する。この無線送受信部31は、アンテナ35、アンテナ側接続部36、第1信号処理部37、第2信号処理部38、及び制御部側接続部39を備えて構成されている。アンテナ35は、1本のみ設けられており、このアンテナ35を426MHz帯と950MHz帯の2つの周波数帯の信号の送受信に併用する。例えば、アンテナ35の全長Lは、426MHz帯と950MHz帯を併用可能なように、426MHzの1/4波長で、かつ、950MHzの5/8波長となるように決定されている。アンテナ側接続部36は、アンテナ35に接続される接続端子である。
【0037】
第1信号処理部37は、426MHz帯の信号を処理するもので、LPF(ローパスフィルタ)37aと第1基本処理部37bを備える。LPF37aは、426MHz帯近傍以下の信号のみを通過させる第1周波数帯域通過手段である。LPF37aは、426MHz帯近傍のみを通過させるBPF(バンドパスフィルタ)でも良い。第1基本処理部37bは、アンテナ35にて受信されアンテナ側接続部36を介して入力された第1周波数帯の信号を所定の第1方式の信号に変換して制御部側接続部39を介して制御部34に出力すると共に、制御部34から制御部側接続部39を介して入力された第1方式の信号を第1周波数帯でアンテナ側接続部36を介してアンテナ35に出力する。
【0038】
また、第2信号処理部38は、950MHz帯の信号を処理するもので、HPF(ハイパスフィルタ)38a、第2基本処理部38b、及び互換処理部38cを備える。HPF38aは、950MHz帯近傍以上の信号のみを通過させる第1周波数帯域通過手段である。HPF38aは、950MHz帯近傍のみを通過させるBPF(バンドパスフィルタ)でも良い。第2基本処理部38bは、アンテナ35にて受信されアンテナ側接続部36を介して入力された第2周波数帯の信号を所定の第2方式の信号に変換して出力すると共に、第2方式の信号を第2周波数帯でアンテナ側接続部36を介してアンテナ35に出力する。互換処理部38cは、第2基本処理部38bにて第2方式の信号に変換して出力された信号を第1方式の信号に変換して制御部側接続部39を介して制御部34に出力すると共に、制御部34から制御部側接続部39を介して入力された第1方式の信号を第2方式の信号に変換して第2基本処理部38bに出力する。
【0039】
特に、第1信号処理部37は、無線信号を426MHz帯でキャリアセンスを行うことなく送信し、第2信号処理部38は、無線信号を950MHz帯で送信する際に、キャリアセンスを公知の方法で行い、同一周波数帯の無線が検知されない場合にのみ、無線信号を送信する。
【0040】
このように構成された無線送受信部31の各部のうち、アンテナ35を除く各部は、同一の基盤の両面に実装されてモジュール化されている。より具体的には、例えば、第1基本処理部37bや第2基本処理部38bは、それぞれ無線用ICにより構成され、互換処理部38cはマイコンにより構成され、これら無線用ICやマイコンが同一の基盤の両面に実装されている。この実装レイアウトの設計に際しては、426MHz帯の信号と950MHz帯の信号との相互干渉を防止するための構成(例えば、電源ノイズ低減用のインピーダーの設置、426MHz系統と950MHz系統との離隔配置、ノイズシールドの設置等)を採用することが好ましい。
【0041】
ここで、第2信号処理部38による950MHz帯送信時のキャリアセンスについて説明する。上述のように、950MHz帯の小電力無線システムにおいては、950.8MHzから955.8MHzまでの5MHzの帯域を200kHz幅の24のチャンネル(単位チャンネル)に分けて、最大3つの単位チャンネル分の帯域を同時に使用して送信を行うことが可能である。このため、第2信号処理部38は、アンテナ35からの出力電圧を測定することにより、各単位チャンネルにおける受信信号強度を測定し、空いている単位チャンネル(受信信号強度が−75dBを超えていないチャンネル。以下、空きチャンネル)を特定して、実際に使用する単位チャンネルを選択する(すなわち、第2信号処理部38は、特許請求の範囲におけるキャリアセンス部に対応する)。
【0042】
図4は、第2信号処理部38による検知特性を示すグラフである。この図4において、横軸は周波数ズレ(周波数帯域の中心周波数fcに対する測定周波数のズレ。単位=kHz)、縦軸は受信信号強度(RSSI値。ここでは、−75dBm入力の信号のRSSIを、最大値100〜最小値0までの範囲として示す)である(後述する図5、6において同じ)。この図4に示すように、第2信号処理部38による検知特性は、測定対象となるチャンネルの周波数帯域(ここでは、200KHz幅の単位チャンネル)の中心周波数(以下、測定対象周波数)fcにおける受信信号強度が、実際にはその前後の周波数の受信信号強度と同程度のピークレベルであるにも関わらず、検知された受信信号強度は、図4に示した受信信号強度となり、中心周波数fcにおける受信信号強度が低下する(谷=ディップができる)特性を有しているために、単位チャンネルにおける受信信号強度の真値を正確に検知することが困難である。特に、検知すべき単位チャンネルの周波数帯域(バンド)が広い場合には、一つの帯域通過フィルタで全帯域をカバーできないので、検知の正確性を向上させるため、周波数を振る(帯域を複数に分割して見る)。このように、中心周波数fcの受信信号強度が低下するのは、第2信号処理部38において受信信号強度の測定対象になるFSK信号が、A/D変換後のデジタル2値のHigh/Lowの中で、Highに割り当てられた周波数とLowに割り当てられた周波数との狭間にあり、エネルギー的に低下するためである。
【0043】
そこで、第2信号処理部38は、複数の単位チャンネルの中で、受信信号強度の測定対象となる単位チャンネルの中心周波数である測定対象周波数fcに対して、所定周波数(以下、調整周波数)fdだけ異なる周波数(以下、測定実行周波数)fsの受信信号強度Lsを測定し、当該測定した測定実行周波数fsの受信信号強度Lsに基づいて測定対象周波数fcの受信信号強度Lcを算定し、当該算定した受信信号強度Lcに基づいて空きチャンネルを特定する。
【0044】
図5、6は、第2信号処理部38の測定状況を示す図である。まず、第2信号処理部38は、図5に示すように、測定対象周波数fcよりも調整周波数fdだけ低域側の測定実行周波数fs(以下、第1測定実行周波数fs)の受信信号強度Ls(以下、第1受信信号強度Ls)を、公知の方法により測定する。次いで、第2信号処理部38は、図6に示すように、測定対象周波数fcよりも調整周波数fdだけ高域側の測定実行周波数fs(以下、第2測定実行周波数fs)の受信信号強度Ls(以下、第2受信信号強度Ls)を、公知の方法により測定する。
【0045】
ここで、調整周波数fdの決定方法は、少なくとも、1)第1測定実行周波数fs及び第2測定実行周波数fsが、測定対象の単位チャンネルの周波数帯域(ここでは、200kHz)の範囲内に収まり、かつ、第2信号処理部38の測定可能範囲内に収まるように、かつ、2)第1測定実行周波数fs及び第2測定実行周波数fsが、第2信号処理部38による検知特性から見て、真値又は真値に非常に近い値を求めることが可能である周波数になるように、決定する。ここでは、図4に示した第2信号処理部38による検知特性において、測定対象周波数fcと、この測定対象周波数fcにおいて受信信号強度が低下する部分に対して低域側及び高域側にある2つの頂点との相互間の周波数を、調整周波数fd(例えば、25kHz)に設定している。すなわち、図7に「受信信号強度ピーク重合点」として示すように、測定対象周波数fc(周波数ズレ=0kHz)の部分で、第1測定実行周波数fs(周波数ズレ=−25kHz)の受信信号強度の波形のピークと、第1測定実行周波数fs(周波数ズレ=25kHz)の受信信号強度の波形のピークとが、相互に重合するように、調整周波数fdを設定している。特に、図5、6に示すように、受信信号強度の分布特性が、測定対象周波数fcを中心としてブロードのピークを有しており、前後に調整周波数fdだけズレた範囲内においてはピーク値がほぼ一定であるため、このように測定対象周波数fcから調整周波数fdだけズレた周波数のピークを使用しても、正確なピークを得ることができる。
【0046】
そして、第2信号処理部38は、測定した第1受信信号強度Lsと第2測定実行周波数fsの第2受信信号強度Lsとに基づいて、測定対象周波数fcの受信信号強度Lcを算定する。例えば、第1受信信号強度Lsの最大値と第2受信信号強度Lsの最大値とをそれぞれ算定し、当該算定した最大値の中で大きい方の値を、測定対象周波数fcの受信信号強度Lcとする。このような測定を行うことで、測定対象周波数fcの受信信号強度Lcの真値の測定精度を向上させることができる。ただし、第1受信信号強度Lsと第2受信信号強度Lsとに基づいて受信信号強度Lcを算定する具体的な方法としては、他の方法を採用してもよく、例えば、第1受信信号強度Lsと第2受信信号強度Lsの平均値を算定し、当該算定した平均値を受信信号強度Lcとしてもよい。
【0047】
また、第2信号処理部38は、この測定の際、第1受信信号強度Lsと第2受信信号強度Lsとをそれぞれ所定の複数回(例えば、数10回)測定し、当該複数回測定された第1受信信号強度Lsと第2受信信号強度Lsの中から、第1受信信号強度Lsの最大値と第2受信信号強度Lsの最大値をそれぞれ選定し、当該選択した第1受信信号強度Lsの最大値と第2受信信号強度Lsの最大値に基づいて、上記方法により受信信号強度Lcを算定する。このような測定を行うことで、第1受信信号強度Lsや第2受信信号強度Lsに測定誤差がある場合であっても、実際には−75dBを超える受信信号強度の信号が出ているにも関わらず、このような信号が出ていないと判定して信号を送信してしまう事態を防止することが可能になる。
【0048】
第2信号処理部38は、このような測定を、24の単位チャンネルの各々に対して測定対象周波数fcをずらしながら順次行い、上記の方法で算定した受信信号強度Lcが−75dBを超えているか否かを判定し、−75dBを超えていない場合には、当該単位チャンネルを空きチャンネルとして特定する。そして、このように特定した空きチャンネルの中から、最大3つの空きチャンネルを所定方法で選択し、当該選択した空きチャンネルの帯域を同時に使用して、送信を行う。
【0049】
(構成−受信装置)
次に、図1の受信装置40について説明する。この受信装置40は、防犯センサ2から送信された信号を、中継器30を介して受信し、あるいは直接受信することにより、異常の有無を監視する制御装置であって、防犯センサ2からの信号を受信する防犯システム用の無線受信機である。この受信装置40は、異常を検知した際には、異常報知灯13に移報信号を無線で送信して異常報知を行わせると共に、必要に応じて、警備会社へ異常発生を有線又は無線で移報する無線中継器でもある。この受信装置40は、例えば、屋内においてユーザが視認し易い場所(代表的には、玄関やリビング)に設置される。
【0050】
図8は、受信装置40の電気的構成を示すブロック図である。この図8に示すように、受信装置40は、無線送受信部41、記憶部42、電源部43、及び制御部44を収容して構成されている。記憶部42は、受信装置40の制御に必要なプログラム及びパラメータを記憶する。電源部43は、商用電源から供給される電力を受信装置40の各部に供給する。制御部44は、受信装置40の各部を制御する。
【0051】
無線送受信部41は、426MHz帯及び950MHz帯の信号の送受信を行う無線送受信部であり、アンテナ45、アンテナ側接続部46、第1信号処理部47、第2信号処理部48、及び制御部側接続部49を備えて構成されている。また、第1信号処理部47は、LPF47aと第1基本処理部47bを備え、第2信号処理部48は、HPF48a、第2基本処理部48b、及び互換処理部48cを備える。これら無線送受信部41の各部は、特記する構成を除き、中継器30の無線送受信部31における同一名称の各部と同様に構成することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0052】
特に、第2信号処理部48は、950MHz帯の信号を送信するためにキャリアセンスを行う際、第2信号処理部38と同様に、複数の単位チャンネルの中で、受信信号強度の測定対象となる単位チャンネルの測定対象周波数fcに対して、調整周波数fdだけ異なる測定実行周波数fsの受信信号強度Lsを測定し、当該測定した測定実行周波数fsの受信信号強度Lsに基づいて測定対象周波数fcの受信信号強度Lcを算定し、当該算定した受信信号強度Lcに基づいて空きチャンネルを特定する。
【0053】
ここで、受信装置40に対する無線送受信部41の着脱構造について説明する。図9は、受信装置40に対する無線送受信部41の着脱構造を説明するための分解斜視図である。この図9に示すように、受信装置40の筐体(第1筐体)40aには、無線送受信部41を着脱自在に収容するための凹部である収容部40bが形成されており、この収容部40bには、無線送受信部41の制御部側接続部49と接続するための接続端子40c(図8においては図示を省略)が設けられている。一方、無線送受信部41は、受信装置40の筐体41aとは別の筐体であって、収容部40bに対応する外形の筐体(第2筐体)41aに設けられている。具体的には、無線送受信部41のアンテナ側接続部46、第1信号処理部47、及び第2信号処理部48は、筐体41aの内部に収容されており、この筺体41aの外部にアンテナ45及び制御部側接続部49が配置されている。そして、無線送受信部41を収容部40bに収容した状態では、制御部側接続部49が接続端子40cに接続されることで、無線送受信部41が制御部44に接続される。
【0054】
このように、無線送受信部41をユニット化する効果は以下の通りである。すなわち、上述のように、受信装置40の制御部44は、従来と同様に426MHz帯の信号の制御のみを行えばよく、950MHz帯の信号の制御は行う必要がないのであって、950MHz帯の信号については、無線送受信部41のみで処理や制御を行えばよい。従って、無線送受信部41をユニット化することで、950MHz帯の無線信号を送受信するために必要な特定小電力セキュリティ無線規格については、無線送受信部41のみを対象として取得すればよく、受信装置40全体で無線規格を取得する必要がなくなるため、無線規格の取得を容易に行うことが可能となる。また、無線送受信部41をユニット化することで汎用性を持たせることができ、受信装置40とは異なる構成の受信装置や中継器に対しても無線送受信部41を容易に取り付けて使用することが可能となる。また従来の426MHz帯のみの受信装置106の無線送受信部のユニットと同一形状とすることで、使用する信号の周波数帯として950MHz帯が追加された場合でも送受信ユニットを本願の950MHz帯対応のユニットに差し替えることで、簡単に複数の帯域で送受信することができる防犯システムを構築することができる。さらに、無線送受信部41を除く受信装置40の各部については、従来と同様に426MHz帯の信号の制御等のみを扱うように構成すればよいので、950MHz帯の信号を扱うことに伴う改良等が不要となる。
【0055】
(処理)
次に、上述のように構成された防犯システム1が実行する処理について説明する。図10は、防犯システム1における信号の送受信を説明するための説明図である。なお、以下では、「ステップ」を「S」と略記する。
【0056】
この図10に示すように、防犯センサ2からは426MHz帯でキャリアセンスを行うことなく異常検知信号が送信される(SA1)。この異常検知信号が中継器30で受信された場合、中継器30の第1信号処理部37の第1基本処理部37bは、この異常検知信号を第1コマンド体系のコマンドに変換して制御部34に送信し、制御部34はこのコマンドに基づいて異常検知信号の中継要否の判定等を行う。中継を行う場合、制御部34は、第1コマンド体系のコマンドによる中継指示を第1基本処理部37bに送信し、この中継指示を受けた第1基本処理部37bが当該異常検知信号をキャリアセンスを行うことなくアンテナ35を介して受信した信号と同じ周波数帯である426MHz帯で受信装置40に向けて送信する(SA2)。
【0057】
そして、防犯センサ2からの異常検知信号が受信装置40で直接受信された場合、あるいは、中継器30を介して受信された場合、受信装置40の無線送受信部41においては、第1信号処理部47の第1基本処理部47bが当該異常検知信号を第1コマンド体系のコマンドに変換して制御部44に送信し、制御部44はこのコマンドに基づいて異常検知信号の内容に応じた所定の処理を行う。また、防犯センサ2からの異常検知信号が中継器30を介して受信された場合、受信装置40の無線送受信部41においては、第2信号処理部48の第1基本処理部48bが当該異常検知信号を第2コマンド体系を第1コマンド体系のコマンドに変換して制御部44に送信し、制御部44はこのコマンドに基づいて異常検知信号の内容に応じた所定の処理を行う。このような処理の一部として、受信装置40の制御部44は、必要に応じて、異常報知灯13の点灯指示を第1コマンド体系のコマンドで第1基本処理部47bに送信し、この中継指示を受けた第1基本処理部47bが移報信号をキャリアセンスを行うことなくアンテナ45を介して426MHz帯で送信し、この移報信号を受信した異常報知灯13が異常報知の表示を行う(SA3)。
【0058】
また、携帯型設定装置20からは、426MHz帯よりも伝送速度を早く設定した950MHz帯でキャリアセンスを行った上で要求信号が送信される(SA4)。この要求信号が中継器30で受信された場合、中継器30の第2信号処理部38の第2基本処理部38bは、この要求信号を第2コマンド体系のコマンドに変換して互換処理部38cに出力し、互換処理部38cはこの第2コマンド体系のコマンドを第1コマンド体系のコマンドに変換して制御部34に送信し、制御部34はこのコマンドに基づいて要求信号の中継要否の判定等を行う。中継を行う場合、制御部34は、第1コマンド体系のコマンドによる中継指示を互換処理部38cに送信し、互換処理部38cがこの第1コマンド体系のコマンドを第2コマンド体系のコマンドに変換して第2基本処理部38bに出力し、第2基本処理部38bが当該要求信号をキャリアセンスを行った上でアンテナ35を介して受信した信号と同じ周波数帯である950MHz帯で受信装置40に向けて送信する(SA5)。
【0059】
そして、携帯型設定装置20からの要求信号が受信装置40で直接受信された場合、あるいは、中継器30を介して受信された場合、受信装置40の無線送受信部41においては、第2信号処理部48の第2基本処理部48bが当該要求信号を第2コマンド体系のコマンドに変換して互換処理部48cに出力し、互換処理部48cはこの第2コマンド体系のコマンドを第1コマンド体系のコマンドに変換して制御部44に送信し、制御部44はこのコマンドに基づいて要求信号の内容に応じた所定の処理を行う。このような処理の一部として、受信装置40の制御部44は、必要に応じて、第1コマンド体系のコマンドによる確認信号の送信指示を互換処理部48cに送信し、互換処理部48cがこの第1コマンド体系のコマンドを第2コマンド体系のコマンドに変換して第2基本処理部48bに出力し、第2基本処理部48bが確認信号をキャリアセンスを行った上でアンテナ45を介して受信した信号と同じ周波数帯である950MHz帯で送信する(SA6)。
【0060】
この確認信号が中継器30で受信された場合、中継器30の第2信号処理部38の第2基本処理部38bは、この確認信号を第2コマンド体系のコマンドに変換して互換処理部38cに出力し、互換処理部38cはこの第2コマンド体系のコマンドを第1コマンド体系のコマンドに変換して制御部34に送信し、制御部34はこのコマンドに基づいて確認信号の中継要否の判定等を行う。中継を行う場合、制御部34は、第1コマンド体系のコマンドによる中継指示を互換処理部38cに送信し、互換処理部38cがこの第1コマンド体系のコマンドを第2コマンド体系のコマンドに変換して第2基本処理部38bに出力し、第2基本処理部38bが当該確認信号をキャリアセンスを行った上でアンテナ35を介して950MHz帯で送信する(SA7)。
【0061】
受信装置40からの確認信号が、携帯型設定装置20で直接受信された場合、あるいは、中継器30を介して携帯型設定装置20で受信された場合、携帯型設定装置20は、当該確認信号を制御部28で処理し、当該確認信号の内容に応じた所定の処理を行う。
【0062】
(効果)
このように本実施の形態によれば、測定実行周波数fsの受信信号強度Lsに基づいて測定対象周波数fcの受信信号強度Lcを算定し、当該算定した受信信号強度Lcに基づいて空きチャンネルを特定するので、測定対象の周波数帯域の中心周波数の受信信号強度が低下する特性を有している測定回路を用いる場合であっても、各単位チャンネルにおける受信信号強度の真値の測定精度を向上させることが可能になる。
【0063】
また、測定対象周波数fcよりも低域側の第1測定実行周波数fsの受信信号強度Lsと、測定対象周波数fcよりも高域側の第2測定実行周波数fsの受信信号強度Lsとに基づいて、測定対象周波数fcの受信信号強度Lcを算定するので、例えば、第1測定実行周波数fsの受信信号強度Lsと第2測定実行周波数fsの受信信号強度Lsとの平均値を測定対象周波数fcにする等、測定対象周波数fcの受信信号強度Lcを、比較的簡易に算定することが可能になる。
【0064】
また、複数回測定された受信信号強度の最大値に基づいて測定対象周波数fcの受信信号強度Lcを算定するので、測定実行周波数fsの受信信号強度Lsに測定誤差がある場合であっても、実際には所定受信信号強度を超える受信信号強度の信号が出ているにも関わらず、このような信号が出ていないと判定して信号を送信してしまう事態を防止することが可能になる。
【0065】
また、無線送受信部41をユニット化することで、950MHz帯の無線信号を送受信するために必要な特定小電力セキュリティ無線規格については、無線送受信部41のみを対象としてを取得すればよく、受信装置40全体で無線規格を取得する必要がなくなるため、無線規格の取得を容易に行うことが可能となる。また、無線送受信部41をユニット化することで汎用性を持たせることができ、受信装置40とは異なる構成の無線装置や中継器に対しても無線送受信部41を容易に取り付けて使用することが可能となる。さらに、無線送受信部41を除く受信装置40の各部については、従来と同様に426MHz帯の信号の制御等のみを扱うように構成すればよいので、950MHz帯の信号を扱うことに伴う改良等が不要となる。
【0066】
また、防犯センサからの信号を受信する受信装置40において、各周波数帯毎の制御部を設ける必要がないので、受信装置40を簡易かつ安価に構成することができる。
【0067】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0068】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0069】
(通信システムの目的や種類について)
上記実施の形態では、防犯システムについて説明したが、この他にも任意の目的や種類の通信システムに本発明を適用することができ、例えば、防災システムにおいて、端末機器としての無線式住宅用火災警報器やその他の電池式小型無線機器から、受信装置としての受信機に通信を行ったり、自動車制御システムにおいて、端末機器としての携帯型設定装置から、受信装置としての例えばエンジンスタータに通信を行う場合にも、本発明を適用することができる。あるいは、携帯型設定装置20に中継器30の機能を内蔵させても良い。
【0070】
(信号の送受信について)
上記実施の形態では、中継器30と受信装置40の各々において、2つの周波数帯で信号の受信と送信の両方を行うが、少なくとも2つの周波数帯で信号の受信のみを行うことができればよい。例えば、中継器30は、防犯センサ2から426MHz帯で送信された信号を受信すると共に、受信装置40又は携帯型設定装置20から950MHz帯で送信された信号を受信する一方、送信に関しては、受信装置40又は携帯型設定装置20に対して950MHz帯のみで行うようにしてもよい。また、受信装置40は、防犯センサ2から426MHz帯で送信された信号を受信すると共に、中継器30又は携帯型設定装置20から950MHz帯で送信された信号を受信する一方、無線による信号送信は行わず、必要により有線によって警備会社等への信号送信を行うようにしてもよい。
【0071】
(信号の周波数帯について)
上記実施の形態では、426MHz帯と950MHz帯を併用しているが、他の2つの周波数帯を併用するようにしてもよい。また、キャリアセンスの対象になる送信周波数帯域も、この併用周波数に応じて変更することができる。上記の実施形態では、第2周波数帯は第1周波数帯よりも高い周波数帯域を使用しているが、第1周波数帯よりも通信速度の高い帯域であれば良く、必ずしも周波数として高い帯域とは限らない。あるいは第1周波数帯の信号授受よりも信頼性のあるキャリアセンスを行う周波数帯を第2周波数帯と設定するようにしても良い。
【0072】
(測定実行周波数について)
上記実施の形態では、測定実行周波数fsとして、測定対象周波数fcよりも調整周波数fdだけ低域側の第1測定実行周波数fsと、測定対象周波数fcよりも調整周波数fdだけ高域側の第2測定実行周波数fsを使用する場合について説明したが、この他にも、測定対象周波数fcに対する測定実行周波数fsの関係は変更することが可能である。例えば、第1測定実行周波数fsと第2測定実行周波数fsのいずれか一方のみを用いてもよい。あるいは、3つ以上の測定実行周波数を用いてもよく、例えば、調整周波数fdとして、第1調整周波数fdと第2調整周波数fdとを設定し、測定対象周波数fcよりも第1調整周波数fdだけ低域側の第1測定実行周波数fs1−1と、測定対象周波数fcよりも第2調整周波数fdだけ低域側の第1測定実行周波数fs1−2と、測定対象周波数fcよりも第1調整周波数fdだけ高域側の第2測定実行周波数fs2−1と、測定対象周波数fcよりも第2調整周波数fdだけ高域側の第2測定実行周波数fs2−2を用いてもよい。あるいは、キャリアセンスを行う周波数帯が2つ以上あり、このいずれかに切り替えて送信を行うような場合において、各周波数に適した調整周波数fdを予め設定しておき、送信に使用する周波数に適した調整周波数fdを選択して、測定実行周波数fsを決定するようにしてもよい。
【0073】
(測定実行周波数の選定について)
上記実施の形態では、複数回測定された第1受信信号強度Lsと第2受信信号強度Lsの中から、第1受信信号強度Lsの最大値と第2受信信号強度Lsの最大値をそれぞれ選定して、受信信号強度Lcを算定しているが、最大値以外を選定してもよく、例えば、複数回測定された第1受信信号強度Lsと第2受信信号強度Lsの各々の平均値を選定して、受信信号強度Lcを算定してもよい。
【0074】
(モジュール化について)
上記実施の形態では、受信装置40の無線送受信部41のみをユニット化しているが、中継器30の無線送受信部31についても、無線送受信部41と同様の構造により、ユニット化してもよい。あるいは、無線送受信部41については、無線送受信部31と同様に、ユニット化することなく受信装置40の内部に組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0075】
1、100 防犯システム
2 防犯センサ
3 防犯端末
10、101 開閉センサ
11、102 火災センサ
12、103 人感センサ
13、104 異常報知灯
20 携帯型設定装置
40a、41a 筐体
22 ボタン群
22a 非常ボタン
22b 開始ボタン
22c 警備ボタン
22d 解除ボタン
23 表示灯群
23a 非常灯
23b 警報灯
23c OK灯
23d NG灯
23e 警備灯
23f 解除灯
24、31、41 無線送受信部
24a、35、45 アンテナ
25 スピーカ
26、32、42 記憶部
27、33、43 電源部
28、34、44 制御部
28a 信号処理部
30、105 中継器
36、46 アンテナ側接続部
37、47 第1信号処理部
37a、47a LPF
37b、47b 第1基本処理部
38、48 第2信号処理部
38a、48a HPF
38b、48b 第2基本処理部
38c、48c 互換処理部
39、49 制御部側接続部
40、106 受信装置
40b 収容部
40c 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末機器からの信号を受信する無線装置であって、
アンテナを備える無線送受信部と、
前記無線送受信部にて受信された信号の内容に基づく制御を行う制御部とを備え、
前記無線送受信部は、
所定帯域に含まれる一定幅の複数の単位チャンネルの各々の受信信号強度を測定し、当該測定した受信信号強度に基づいて、当該複数の単位チャンネルの中で空いている単位チャンネルである空きチャンネルを特定するキャリアセンス部を備え、
前記キャリアセンス部は、
前記複数の単位チャンネルの中で、受信信号強度の測定対象となる単位チャンネルの中心周波数である測定対象周波数に対して、所定周波数だけ異なる測定実行周波数の受信信号強度を測定し、当該測定した測定実行周波数の受信信号強度に基づいて前記測定対象周波数の受信信号強度を算定し、当該算定した受信信号強度に基づいて空きチャンネルを特定する、
無線装置。
【請求項2】
前記キャリアセンス部は、
前記測定実行周波数の受信信号強度として、前記測定対象周波数よりも前記所定周波数だけ低域側の第1測定実行周波数の受信信号強度と、前記測定対象周波数よりも前記所定周波数だけ高域側の第2測定実行周波数の受信信号強度を測定し、
前記測定した第1測定実行周波数の受信信号強度と第2測定実行周波数の受信信号強度とに基づいて前記測定対象周波数の受信信号強度を算定する、
請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記キャリアセンス部は、
前記測定実行周波数の受信信号強度を複数回測定し、当該複数回測定された受信信号強度の最大値に基づいて前記測定対象周波数の受信信号強度を算定する、
請求項1又は2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記制御部を第1筐体に収容し、
前記無線送受信部を前記第1筐体に対して着脱自在に構成された第2筐体に設けた、
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線装置。
【請求項5】
前記無線装置は、防犯センサからの信号を、直接的に又は防災用の中継器を介して受信する、受信装置である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−114661(P2012−114661A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261690(P2010−261690)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)
【Fターム(参考)】