説明

無線通信システム、応答器

【課題】応答器内の電池の消費電力を抑制しつつ、該電池の消耗により応答器の動作に異常が発生するのを未然に防止する。
【解決手段】応答器32に電池56の電圧を検出する電圧検出部59を備え、制御部53に、電圧検出部59から受信した検出信号が示す電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する判断部531と、前記電圧が前記閾値以下であるとき表示部57に電池56の電圧低下を報知する指示を出力する報知指示部532とを備え、電圧検出部59は無線受信部52で起動信号が受信され応答器32が低消費電力モードから通常モードに移行すると電池58の電圧検出を開始して前記電圧が前記閾値以下であるとき報知指示部532が前記報知を行うというように、表示部57による前記報知が、無線受信部52の起動信号の受信による通常モードへの移行をトリガとして行われるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を用いて入退室の管理や物品管理を行うための無線通信システム及び応答器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面やゲート等に固定された質問器と、ユーザに携行されたり物品に装着されたりする応答器(ICタグ)とを有し、応答器が前記質問器に搭載される起動装置から非接触で起動されて情報を受け、前記質問器に搭載される認証装置へ情報を無線送信する非接触ICタグシステム又はICカードシステムなどの無線通信システムが広く知られている(例えば下記特許文献1)。図7は、無線通信システムの典型的な従来技術を示すブロック図であり、図8は、無線通信システムが部屋の入退室管理に使用される例の説明図である。
【0003】
図7に示す無線通信システムが例えば図8に示すように部屋3の入退室管理に使用される場合、質問器1は、制御部11で生成した起動信号を、LF帯送信部12において、誘導磁界の信号成分に重畳し、増幅してLFアンテナ13から第1の無線通信方式(LF)にて予め定められた周期で応答器2に向けて間欠的に送信する。これにより、応答器2の周囲には認証エリア5が形成され、その認証エリア5内に入ったユーザMが所持する応答器2では、質問器1からの起動信号をLFアンテナ21で受信した後に、LF帯受信部22が制御部23を起動し、該制御部23は自身に予め設定されている固有の識別情報(ID)を含む応答信号を生成し、RF送受信部24からRFアンテナ25を介して、第2の無線通信方式(UHF)にて、応答器2に対して返信するとともに、表示部27に返信完了を示す表示を行う。
【0004】
前記応答信号は、質問器1のRFアンテナ14からRF送受信部15で受信され、前記制御部11に入力されて、図略の上位装置に転送される。そして、該上位装置は、前記応答信号に基づき応答器を識別し、識別した応答器が予め登録された識別情報を有するものであるときには、制御部11は、前記RF送受信部15からRFアンテナ14を介して、前記第2の無線通信方式(UHF)にて、認証完了した応答器2の識別情報を起動信号として送信する。その起動信号をRFアンテナ25からRF送受信部24で受信すると、制御部23は応答信号の送信を終了する。制御部11は、また、認証を完了した際には、表示部16やブザー18によりその旨を示す表示や音出力を行うとともに、ドアDの解錠動作を行う。
【0005】
このようにLF帯(長波帯:30〜300kHz)の起動信号で応答器2を起動させて、制御部23が、RF送受信部24に、内蔵電池26を電源として、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の応答信号を返信させる従来技術として、例えば下記特許文献1がある。このような構成で、前記認証エリア5を、1.5〜2mの比較的狭い範囲に正確に規定することができるようになっている。また、UHF帯のRF送受信部24の消費電力が10〜20mAと大きいのに対して、LF帯のLF帯受信部22が数μAの微弱な電力で起動するので、待機状態でRF送受信部24を使用しないことで、前記内蔵電池2の電力消費を抑え、応答器2の長寿命化が図られている。
【特許文献1】特開2006−72706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1のように、内蔵電池26を電源として応答信号を返信する応答器を用いた無線通信システムにおいては、前記内蔵電池26の消耗により応答器2の動作に異常が発生すると、認証処理が適切に実行されずドア等の解錠が不可能となるなどの問題が発生するため、応答器2の動作に異常が発生する前に、電池交換を行うことが望ましい。しかしながら、従来の無線通信システムでは、ユーザは、電池交換の要否を判断する術が無く、電池交換のタイミングを見極めることが困難であった。
【0007】
そこで、前記内蔵電池26の電圧を常時監視し、該電圧に異常が発生した場合に、その旨を報知する機能を応答器2に搭載することが考えられる。
【0008】
しかしながら、この場合、前記内蔵電池26の電圧を常時監視するために要する消費電力が比較的大きく、内蔵電池26の消耗を早めるという懸念がある。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、応答器に内蔵される電池の消費電力を抑制しつつ、該電池の消耗により応答器の動作に異常が発生するのを未然に防止又は抑制することのできる無線通信システム及び応答器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、誘導磁界を利用した第1の無線通信方式により起動信号を出力する起動装置と、前記起動信号を受信する起動信号受信部、予め個別に設定された識別情報を含む応答信号を生成する応答信号生成部、前記応答信号生成部により生成された応答信号を第2の無線通信方式により送信する送信部を備える応答器と、前記応答信号を前記第2の無線通信方式により受信する応答信号受信器とを備えた無線通信システムであって、前記応答器は、前記起動信号受信部、応答信号生成部及び送信部のうち前記起動信号受信部にのみ予め定められた電力値以上の電力が供給される低消費電力モードと、前記起動信号受信部、応答信号生成部及び送信部に予め定められた電力値以上の電力が供給される通常モードとを有し、前記起動信号受信部により前記起動信号が受信されると、前記低消費電力モードから前記通常モードに移行し、前記応答器の動作に要する電力を供給する電池と、当該応答器のモードが前記低消費電力モードから前記通常モードに移行すると、前記電池の電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部により検出された電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する判断部と、前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されると、当該応答器と前記起動装置又は応答信号受信器との間で行われる通信のタイミングで、前記電池の電圧低下を報知する報知部とを有するものである。
【0011】
請求項9に記載の発明は、起動装置から誘導磁界を利用した第1の無線通信方式により出力された起動信号を受信する起動信号受信部と、予め個別に設定された識別情報を含む応答信号を生成する応答信号生成部と、前記応答信号生成部により生成された応答信号を第2の無線通信方式により応答信号受信器に送信する送信部とを備える応答器であって、前記起動信号受信部、応答信号生成部及び送信部のうち前記起動信号受信部にのみ予め定められた電力値以上の電力が供給される低消費電力モードと、前記起動信号受信部、応答信号生成部及び送信部に予め定められた電力値以上の電力が供給される通常モードとを有し、前記起動信号受信部により前記起動信号が受信されると、前記低消費電力モードから前記通常モードに移行し、前記応答器の動作に要する電力を供給する電池と、当該応答器のモードが前記低消費電力モードから前記通常モードに移行すると、前記電池の電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部により検出された電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する判断部と、前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されると、当該応答器と前記起動装置又は応答信号受信器との間で行われる通信のタイミングで、前記電池の電圧低下を報知する報知部とを有するものである。
【0012】
この発明によれば、応答器に、電池の電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部により検出された電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する判断部と、前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されると、当該応答器と前記起動装置又は応答信号受信器との間で行われる通信のタイミングで、前記電池の電圧低下を報知する報知部とを備えたので、電池交換の要否を判断する機会をユーザに提供することができる。これにより、ユーザは、電池交換のタイミングを見極めることが可能となる。
【0013】
また、当該応答器のモードが前記低消費電力モードから前記通常モードに移行すると、前記電池の電圧を検出し、電池の電圧低下を報知するようにしたので、電池の電圧を常時(低消費電力モードの場合も通常モードの場合も)監視する構成に比して、前記低消費電力モードでは電池の電圧を監視しない分、応答器における消費電力の低減を図ることができる。
【0014】
前記報知部による報知のタイミングとしては、例えば請求項2に記載の発明のように、前記報知部は、前記起動信号受信部による前記起動信号の受信に基づく前記低消費電力モードから前記通常モードへの移行をトリガとして、前記電池の電圧低下を報知する態様が考えられる。
【0015】
また、この他、前記応答器が、前記応答信号を送信する指示を入力するための送信指示入力操作部を備え、前記送信部が、応答器のモードが前記通常モードに設定されている状態で、前記送信指示入力操作部に対して前記操作が行われた旨の操作信号を受信した場合に、前記応答信号を前記受信器に送信するものである場合には、請求項3に記載の発明のように、前記報知部が、前記通常モードの設定下における前記送信指示入力操作部からの前記操作信号の出力をトリガとして、前記電池の電圧低下を報知する態様、請求項4に記載の発明のように、前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されたとき、前記送信指示入力操作部が予め定められた回数操作されるまで、前記報知部が、前記送信部による前記応答信号の送信を禁止することにより前記電池の電圧低下を報知する態様、或いは、請求項5に記載の発明のように、前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されたとき、前記送信指示入力操作部が連続して操作された時間が予め定められた時間に達するまで、前記報知部が、前記送信部による前記応答信号の送信を禁止することにより前記電池の電圧低下を報知する態様も考えられる。
【0016】
なお、請求項3ないし5のいずれかに記載の発明では、前記送信部が、応答器のモードが前記通常モードに設定されている状態で、且つ、少なくとも前記送信部が前記送信指示入力操作部に対して前記操作が行われた旨の操作信号を受信しなければ、前記応答信号を前記受信器に送信しないから、応答信号が応答器から受信器に送信される機会、ひいては電池の電圧低下が報知される機会が、前記送信指示入力操作部により前記指示が入力された場合に限定されることとなる。これにより、前記起動信号に呼応して常に前記応答信号を受信器に送信する構成に比して、例えば入室の意思があるユーザに対してのみ、電池の電圧低下を報知することができ、応答器の消費電力を図ることができる。
【0017】
さらに、請求項4,5に記載の発明によれば、電池の電圧が予め定められた閾値以下になると、前記送信指示入力操作部に対する通常の操作では応答器から応答信号が送信されないことをもって電池の電圧低下を報知するようにしたので、前記報知を行うための表示や音の出力を行う機械的な構成が不要となる。
【0018】
前記報知部の形態としては、請求項6に記載の発明のように、前記電池の電圧低下を視覚的に報知する表示部や、請求項7に記載の発明のように、前記電池の電圧低下を音で報知する音出力部が採用可能である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに無線通信システムにおいて、前記受信器により受信された応答信号に基づいて前記応答器の認証処理を行う認証装置を更に備えるものである。
【0020】
この発明によれば、受信器により受信された応答信号に基づいて前記応答器の認証処理を行う認証装置を更に備えた無線通信システムにおいて、請求項1ないし7のいずれかに記載の発明が特に有効なものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、応答器と受信器との間の通信のタイミングで、電池交換の要否を判断する機会をユーザに提供するようにしたので、消費電力の低減を図りつつ、電池の消耗により応答器の動作に異常が発生するのを未然に防止又は抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明に係る無線通信システムの第1の実施形態の電気的な構成を示す図である。図1に示すように、無線通信システム100は、図8に示すような部屋3の入退室管理に使用されるものであり、質問器31と応答器32とを備えて構成されている。
【0023】
質問器31は、制御部4で生成した起動信号を、無線送信部(LF帯送信回路)42において誘導磁界の信号成分に重畳し、増幅してLFアンテナ43から第1の無線通信方式(LF)により応答器32に向けて一定の周期で同報送信する。これにより、質問器31に周囲には、認証エリア(起動エリア;図8参照)5が形成される。
【0024】
応答器32は、例えばユーザ等により携行される。ユーザにより携行される応答器32は、前記認証エリア5内に進入すると、質問器31からの起動信号をLFアンテナ51で受信する。ここで、応答器32は、前記認証エリア5内に進入するまで、無線受信部(LF帯受信回路)52以外の各部(無線送信部54、表示部57、操作部58、電圧検出部59及び制御部53等)には電力が供給されない又はほとんど供給されない低消費電力モードに設定されており、質問器31からの起動信号をLFアンテナ51で受信すると、無線受信部52が制御部53を起動し、前記各部への通常の電力供給が行われる通常モードに切り替わる。
【0025】
そして、制御部53は内蔵電池56(以下、単に電池56という)を電源として、自身に予め設定されている固有の識別情報(ID)を含む応答信号を生成し、該応答信号を、無線送信部(RF送信回路)54からRFアンテナ55を介して、第2の無線通信方式(UHF)により質問器31に対して返信する。
【0026】
前記応答信号は、質問器31のRFアンテナ44から無線受信部(RF受信回路)45で受信され、前記制御部4に入力される。制御部4は、この応答信号に含まれる識別情報に基づき、応答した応答器を識別する。識別した応答器がユーザIDやグループIDなどで予め登録された識別情報を有するものであれば、制御部4は、表示部46や音出力部48で認証完了を示す音の出力や表示を行うとともにドアD(図8参照)の解錠を行う一方、識別した応答器が予め登録された識別情報を有さないものであるときには、施錠状態を維持するとともに、前記表示部46や音出力部48で警告表示や警告音出力を行う。なお、前記表示部46は、例えばLEDランプや液晶表示画面などからなり、音出力部48は、スピーカなどからなる。
【0027】
このようにLF帯(長波帯:30〜300kHz)の起動信号で応答器32を起動させて、制御部53が、無線送信部54に、電池56を電源として、UHF帯(極超短波帯:300MHz〜3GHz)の応答信号を返信させることで、前記認証エリア8を、1.5〜2mの比較的狭い範囲に正確に規定することができるとともに、UHF帯の無線送信部54の消費電力が10〜20mAと大きくても、LF帯の無線受信部52が数μAの微弱な電力で作動するので、待機状態で無線送信部54を使用しないことで、前記内蔵電池56の電力消費を抑え、応答器32の長寿命化が図られている。
【0028】
本実施形態では、前記UHF帯に対して、応答器32側では無線送信部54が用いられ、質問器31側では無線受信部45が用いられ、逆方向の通信が行われない単方向通信である。代わりに、質問器31の制御部4は、認証を完了した応答器32の識別情報(ID)を、前記起動信号の次回送信フレームに含め、前記無線送信部42において誘導磁界の信号成分に重畳させ、第1の無線通信方式(LF)にて応答器32に向けて送信させる。前記起動信号をLFアンテナ51から無線受信部52で受信すると、制御部53は、表示部57に表示を行うとともに、応答信号の送信を終了する。
【0029】
以上の構成に加えて、本実施形態の無線通信システム100では、電池56の消耗をユーザに報知する構成が備えられている。
【0030】
図1に示すように、応答器32には、電池56の電圧を検出し、その検出信号を制御部53に出力する電圧検出部59が備えられている。電圧検出部59は、例えばADコンバータやコンパレータ等を用いて構成されている。また、制御部53には、電圧検出部59から出力される検出信号を受信し、該検出信号が示す電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する判断部531と、判断部531により前記電圧が予め定められた閾値以下であると判断された場合、表示部57に電池56の電圧低下を報知する指示を出力する報知指示部532とが機能的に備えられている。
【0031】
特に本実施形態では、電圧検出部59は、無線受信部52により起動信号が受信されることにより当該応答器32のモードが前記低消費電力モードから通常モードに移行すると、電圧検出部59が電池58の電圧検出を開始し、判断部531により前記電圧が予め定められた閾値以下であると判断された場合、報知指示部532は、表示部57に電池56の電圧低下を報知させるというように、表示部57による前記報知が、前記無線受信部52が起動信号を受信したことによる前記低消費電力モードから通常モードへの移行をトリガとして行われる。
【0032】
表示部57は、報知指示部42により指示に基づき、認証の完了や警告を報知する通常の報知態様と異なる態様、例えばLEDランプの場合には、点灯パターンや点滅パターンを、認証OKや認証エラーを報知する通常の報知態様と異なる態様、液晶表示画面の場合には、電池の電圧低下を報知するメッセージの文字表示によって、前記電池56の電圧が予め定められた閾値以下であることを視覚的に報知する。表示部57は、前記報知部の一例である。
【0033】
図2は、前記応答器32の電池56の消耗に関する報知処理を示すフローチャートである。図2に示すように、応答器32において、無線受信部52がLFアンテナ51を介して質問器31からの起動信号を受信すると(ステップ♯1でYES)、無線受信部52は、制御部53を起動する(ステップ♯2)。次に、制御部53は、電圧検出部59からの検出信号に基づいて電池56の電圧を検出し(ステップ♯3)、この検出した電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する(ステップ♯4)。
【0034】
その結果、制御部53は、電圧が予め定められた閾値以下であると判断した場合には(ステップ♯4でYES)、表示部57を用いて電池56の電圧低下を報知する一方(ステップ♯5)、前記電圧が予め定められた閾値以下ではないと判断した場合には(ステップ♯4でNO)、ステップ♯5の処理を実行しない。
【0035】
以上のように、本実施形態では、応答器32に搭載されている電池56の電圧を検出し、この検出した電圧が予め定められた閾値以下であるときに、電池56の電圧低下を表示部57にて報知するようにしたので、電池交換の要否を判断する機会をユーザに提供することができる。これにより、ユーザは、電池交換のタイミングを見極めることが可能となるため、電池の消耗により応答器の動作に異常が発生するのを未然に防止又は抑制することができる。
【0036】
また、応答器32のモードが低消費電力モードから前記通常モードに移行したことをトリガとして、前記電池の電圧検出を開始し、電池の電圧低下を報知するようにしたので、電池の電圧を常時(低消費電力モードの場合も通常モードの場合も)監視する構成に比して、前記低消費電力モードでは電圧検出部59も電力を供給せず電池の電圧を監視しない分、応答器32における消費電力の低減を図ることができる。
【0037】
なお、本件は、前記実施形態に代えて、又は前記実施形態に加えて次のような変形形態も採用可能である。
【0038】
[1]前記実施形態では、応答器32は、前記報知動作を、前記起動信号の受信をトリガとして行うようにしたが、この形態の他にも次のような形態が考えられる。
【0039】
図3は、応答信号を質問器31に送信する指示を入力するための操作ボタン581(前記送信指示入力操作部の一例)が前記操作部58に設けられており、起動信号を受信しても直ぐには応答信号を送信しないで、応答器32のモードが通常モードに設定されている状態で前記操作ボタン581に対する操作が行われた場合に、応答信号を質問器31に返信する実施形態、又は、このような動作を行うモードを備えた実施形態を示している。
【0040】
このような構成においては、入室する意思があるユーザは、応答器32から応答信号を送信しようとするときには応答器32に着目している可能性が高いことから、応答器32のモードが通常モードに設定されている状態で、前記操作ボタン581に対する操作が行われたとき、すなわち、操作ボタン581から操作信号が出力されたことをトリガとして、前記報知動作を行うようにすることで、電池56の電圧低下をユーザにより確実に認識させることができる。
【0041】
本実施形態における前記応答器32の電池56の消耗に関する報知処理は図4に示すフローチャートのようになる。
【0042】
図4に示すように、応答器32において、無線受信部52がLFアンテナ51を介して質問器31からの起動信号を受信した状態で(ステップ♯11でYES)、操作ボタン581に対する操作が行われると(ステップ♯12でYES)、無線受信部52は、制御部53を起動する(ステップ♯13)。次に、制御部53は、電圧検出部59からの検出信号に基づいて電池56の電圧を検出し(ステップ♯14)、この検出した電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する(ステップ♯15)。
【0043】
その結果、制御部53は、電圧が予め定められた閾値以下であると判断した場合には(ステップ♯15でYES)、表示部57を用いて電池56の電圧低下を報知する一方(ステップ♯16)、前記電圧が予め定められた閾値以下ではないと判断した場合には(ステップ♯15でNO)、ステップ♯16の処理を実行しない。
【0044】
本実施形態によれば、応答信号が応答器32から質問器31に送信される機会が、前記操作ボタン581に対する操作が行われた場合に限定されるため、電池の電圧低下が報知される機会も前記操作ボタン581に対する操作が行われた場合に限定されることとなる。
【0045】
これにより、前記第1の実施形態のように前記起動信号を受信すると報知動作を行う構成に比して、入室の意思があるユーザに対してのみ、電池の電圧低下の報知を行うことができる。
【0046】
[2]前記各実施形態では、前記報知部の一例として、電池56の電圧低下を視覚的に報知する表示部57を採用したが、これに限らず、電池56の電圧低下を示すメッセージの音声出力を行うスピーカ等の音出力部を採用してもよい。
【0047】
[3]前記各実施形態のように、前記表示部57や音出力部により積極的に報知する形態に限らず、前記変形形態[1]のように操作ボタン581が応答器32に備えられている場合には、その操作ボタン581に対する通常の操作とは異なる特別な操作が行われるまで前記応答信号の送信を行わないようにして、間接的に電池56の電圧低下を報知するようにしてもよい。
【0048】
すなわち、前記通常の操作として、例えば操作ボタン581を1回押圧する操作を想定した場合、前記特別な操作として、例えば、所定時間内に操作ボタン581を予め定められた回数以上連続して押圧する操作が考えられる。この操作では、図5(a)に示すように、出力時間t1が比較的短い複数の操作信号(パルス)が操作ボタン581から出力される。この場合、ユーザは、通常と異なる操作をしなければ認証処理が行われないので電池56の消耗に気付く。
【0049】
本実施形態における前記応答器32の電池56の消耗に関する報知処理は図6に示すフローチャートのようになる。
【0050】
図6に示すように、応答器32において、無線受信部52がLFアンテナ51を介して質問器31からの起動信号を受信した状態で(ステップ♯21でYES)、操作ボタン581に対する操作が行われると(ステップ♯22でYES)、無線受信部52は、制御部53を起動する(ステップ♯23)。次に、制御部53は、電圧検出部59からの検出信号に基づいて電池56の電圧を検出し(ステップ♯24)、この検出した電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する(ステップ♯25)。
【0051】
その結果、制御部53は、電圧が予め定められた閾値以下であると判断した場合には(ステップ♯25でYES)、操作ボタン581に対して特別な操作が行われたか否か、すなわち、ここでは所定時間内に操作ボタン581が予め定められた回数以上連続して押圧されたか否かを判断する(ステップ♯26)。制御部53は、この特別な操作が行われたと判断すると(ステップ♯26でYES)、応答信号を質問器31に送信する処理を行う一方(ステップ♯27)、前記特別な操作が行われていないと判断した場合には(ステップ♯26でNO)、前記特別な操作が行われるまで待機する。制御部53は、電圧が予め定められた閾値以下ではないと判断した場合には(ステップ♯25でNO)、応答信号を質問器31に送信する処理を行う(ステップ♯27)。
【0052】
このように、本実施形態によれば、電池56の電圧が前記閾値以下になると、操作ボタン581に対する通常の操作では応答信号が応答器32から送信されないことをもって、電池56の電圧が大幅に低下したことを報知するようにしたので、前記第1の実施形態や変形形態[1],[2]のように、例えば表示部57など、前記報知を行うための機械的な構成が不要となり、部品点数やコストを削減することができる。
【0053】
なお、前記特別な操作の他の例として、前記操作ボタン581を予め定められた時間以上押圧し続ける操作も考えられる。この操作では、図5(b)に示すように、出力時間t2が比較的長い1つの操作信号(パルス)が操作ボタン581から出力される。この場合も、前記報知を行うための機械的な構成が不要となり、部品点数やコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】無線通信システムの第1の実施形態の電気的な構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態における応答器の電池の消耗に関する報知処理を示すフローチャートである。
【図3】無線通信システムの変形形態[1]の電気的な構成を示す図である。
【図4】変形形態[1]における応答器の電池の消耗に関する報知処理を示すフローチャートである。
【図5】無線通信システムの変形形態[3]の説明図である。
【図6】変形形態[3]における応答器の電池の消耗に関する報知処理を示すフローチャートである。
【図7】無線通信システムの典型的な従来技術を示すブロック図である。
【図8】無線通信システムが部屋の入退室管理に使用される例の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
100 無線通信システム
31 質問器
32 応答器
53 制御部
56 電池
57 表示部
59 電圧検知部
531 判断部
532 報知指示部
581 操作ボタン
4 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導磁界を利用した第1の無線通信方式により起動信号を出力する起動装置と、
前記起動信号を受信する起動信号受信部、予め個別に設定された識別情報を含む応答信号を生成する応答信号生成部、前記応答信号生成部により生成された応答信号を第2の無線通信方式により送信する送信部を備える応答器と、
前記応答信号を前記第2の無線通信方式により受信する応答信号受信器と
を備えた無線通信システムであって、
前記応答器は、
前記起動信号受信部、応答信号生成部及び送信部のうち前記起動信号受信部にのみ予め定められた電力値以上の電力が供給される低消費電力モードと、前記起動信号受信部、応答信号生成部及び送信部に予め定められた電力値以上の電力が供給される通常モードとを有し、前記起動信号受信部により前記起動信号が受信されると、前記低消費電力モードから前記通常モードに移行し、
前記応答器の動作に要する電力を供給する電池と、
当該応答器のモードが前記低消費電力モードから前記通常モードに移行すると、前記電池の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部により検出された電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されると、当該応答器と前記起動装置又は応答信号受信器との間で行われる通信のタイミングで、前記電池の電圧低下を報知する報知部と
を有する無線通信システム。
【請求項2】
前記報知部は、前記起動信号受信部による前記起動信号の受信に基づく前記低消費電力モードから前記通常モードへの移行をトリガとして、前記電池の電圧低下を報知する請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記応答器は、前記応答信号を送信する指示を入力する操作を行うための送信指示入力操作部を備え、
前記送信部は、当該応答器のモードが前記通常モードに設定されている状態で、前記送信指示入力操作部に対して前記操作が行われた旨の操作信号を受信した場合に、前記応答信号を前記受信器に送信するものであり、
前記報知部は、前記通常モードの設定下における前記送信指示入力操作部からの前記操作信号の出力をトリガとして、前記電池の電圧低下を報知する請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記応答器は、前記応答信号を送信する指示を入力する操作を行うための送信指示入力操作部を備え、
前記送信部は、当該応答器のモードが前記通常モードに設定されている状態で、前記送信指示入力操作部に対して前記操作が行われた旨の操作信号を受信した場合に、前記応答信号を前記受信器に送信するものであり、
前記報知部は、前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されたとき、前記送信指示入力操作部が予め定められた回数操作されるまで、前記送信部による前記応答信号の送信を禁止することにより前記電池の電圧低下を報知するものである請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記応答器は、前記応答信号を送信する指示を入力する操作を行うための送信指示入力操作部を備え、
前記送信部は、当該応答器のモードが前記通常モードに設定されている状態で、前記送信指示入力操作部に対して前記操作が行われた旨の操作信号を受信した場合に、前記応答信号を前記受信器に送信するものであり、
前記報知部は、前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されたとき、前記送信指示入力操作部が連続して操作された時間が予め定められた時間に達するまで、前記送信部による前記応答信号の送信を禁止することにより前記電池の電圧低下を報知するものである請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記報知部は、前記電池の電圧低下を視覚的に報知する表示部を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記報知部は、前記電池の電圧低下を音で報知する音出力部を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記受信器により受信された応答信号に基づいて前記応答器の認証処理を行う認証装置を更に備える請求項1ないし7のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項9】
起動装置から誘導磁界を利用した第1の無線通信方式により出力された起動信号を受信する起動信号受信部と、予め個別に設定された識別情報を含む応答信号を生成する応答信号生成部と、前記応答信号生成部により生成された応答信号を第2の無線通信方式により応答信号受信器に送信する送信部とを備える応答器であって、
前記起動信号受信部、応答信号生成部及び送信部のうち前記起動信号受信部にのみ予め定められた電力値以上の電力が供給される低消費電力モードと、前記起動信号受信部、応答信号生成部及び送信部に予め定められた電力値以上の電力が供給される通常モードとを有し、前記起動信号受信部により前記起動信号が受信されると、前記低消費電力モードから前記通常モードに移行し、
前記応答器の動作に要する電力を供給する電池と、
当該応答器のモードが前記低消費電力モードから前記通常モードに移行すると、前記電池の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部により検出された電圧が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部により前記電圧が前記閾値以下であると判断されると、当該応答器と前記起動装置又は応答信号受信器との間で行われる通信のタイミングで、前記電池の電圧低下を報知する報知部と
を有する応答器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−211304(P2009−211304A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52396(P2008−52396)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】