説明

照明器具

【課題】横長な配光を実現し、かつ、被照射面の全域を均一に照明する照明器具を提供する。
【解決手段】ランプ10の背後に配置された反射面とを有する投光器本体6を備え、被照射面3から離れた位置から前記被照射面3を照明する投光器において、前記反射面には、前記ランプ10の発光点36の背後に位置する遠方用反射面40を設け、高さ方向に連続して正面用反射面41を設け、前記発光点36を境に前記遠方用反射面40を左右に分けた左側に左側遠方用反射面を設け、右側に右側遠方用反射面を設け、前記被照射面3上の前記投光器本体6の正面に位置する正面領域50を前記ランプ10の直射光及び前記正面用反射面41の反射光で照明し、前記正面領域50から前記被照射面3の左端までの間を左側遠方用反射面の反射光で照明し、前記正面領域50から右端までの間を前記右側遠方用反射面40Bの反射光で照明する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトアップ照明や、看板又はサイン広告の投光照明などに供される照明器具に関し、特に、横に延びたワイドな配光を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャノピー看板やパラペット看板、ファサード看板等の各種看板、或いは、サイン広告などを照明する投光器が知られている。また一般に、看板やサイン広告(以下、「被照射面」という)の横幅が1台の投光器の照明範囲を超える場合、複数台の投光器を被照射面の横幅に沿って配列し、これらの投光器で被照射面の全域が照明されている。しかしながら、投光器の台数が増えると、投光器のイニシャルコストがかかり、また、ランニングコストや消費電力も増加する、という問題がある。
一方、照明分野では、ワイドな配光を実現した各種の照明器具が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−275112号公報
【特許文献2】特開平07−045113号公報
【特許文献3】特開平11−126502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、看板やサイン広告を投光照明する場合、被照射面から所定距離の位置から全域を均一に照明することが望まれる。しかしながら、従来の技術には、横長の被照射面を均一に照明するに適した配光を実現したものはない。したがって、横長の被照射面を均一に照明する場合には、結局は、複数台の投光器を用いて照明する必要があった。
【0005】
特に従来の看板灯は、大型の看板面を上又は下から照射する場合、看板面からの出幅が制限されることが多く、投光器から縦方向(出幅の2〜5倍)に距離のある看板面の照度を確保することが難しく、縦方向の照度を確保しながら横方向では均等間隔で複数の投光器を配置して看板面の照度を確保している。しかし、パラペット看板やファサード看板など小型の看板は、横長の小さな看板面が多く、縦方向が出幅の1〜2倍に対して、横方向が出幅の4倍程度の大きさであり、低W(ワット)の投光器を数台並べて照明しており、照明率は低かった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、横長な被照射面を照明するに適した横長な配光を実現し、かつ、被照射面の全域を均一に照明する照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、光源と該光源の背後に配置された反射面とを有する器具本体を備え、被照射面から離れた位置から前記被照射面を照明する照明器具において、前記反射面には、前記光源の発光点の背後に位置する遠方用反射面を設け、高さ方向に該遠方用反射面に連続して正面用反射面を設け、前記発光点を境に前記遠方用反射面を左右に分けた左側に左側遠方用反射面を設け、右側に右側遠方用反射面を設け、前記被照射面上の前記器具本体の正面に位置する正面領域を前記光源の直射光及び前記正面用反射面の反射光で照明し、前記正面領域から前記被照射面の左端までの間を前記左側遠方用反射面の反射光で照明し、前記正面領域から右端までの間を前記右側遠方用反射面の反射光で照明することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記照明器具において、前記左側遠方用反射面及び前記右側遠方用反射面のそれぞれに複数のファセットを設け、前記正面領域から前記被照射面の左端及び右端までの間のそれぞれでは、各ファセットの反射光が、前記被照射面の中央側で粗になり端側で密になるように重なり合うことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記照明器具において、前記反射面には、前記遠方用反射面から前記正面用反射面とは反対側に連続する副正面用反射面を、前記反射面の高さ方向の端部を正面に向けて折り曲げて形成し、直管型ランプで構成した前記光源を前記副正面用反射面に設けた挿通孔に通して配置し、前記正面用反射面及び前記副正面用反射面の反射光で前記正面領域を照明することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反射面には、光源の発光点の背後に位置する遠方用反射面を設け、高さ方向に該遠方用反射面に連続して正面用反射面を設け、前記発光点を境に前記遠方用反射面を左右に分けた左側に左側遠方用反射面を設け、右側に右側遠方用反射面を設け、被照射面上の器具本体の正面に位置する正面領域を光源の直射光及び正面用反射面の反射光で照明し、正面領域から被照射面の左端までの間を左側遠方用反射面の反射光で照明し、正面領域から右端までの間を右側遠方用反射面の反射光で照明する構成とした。
この構成により、遠方用反射面の左側遠方用反射面及び右側遠方用反射面のそれぞれにより、左右に延びたワイド(横長)な配光が実現しつつ、被照射面の左右の両端を同等の明るさで照明できる。これに加え、反射面には、発光点に一番近い位置に遠方用反射面が設けられているため、被照射面の左右両端での照度が確保され、被照射面全域での照度の均衡を図ることができる。さらに、正面領域から被照射面の左端までの間を左側遠方用反射面の反射光で照明し、右端までの間を右側遠方用反射面の反射光で照明するため、被照射面の左端を照明する光と右端を照明する光が、それぞれ光源を横切ることがなく、光源によって光が遮られて端部での照度低下や照度ムラが発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る広告用投光器の斜視図である。
【図2】投光器本体の構成を示す斜視図である。
【図3】投光器本体の正面及び右側面を示す図である。
【図4】投光器本体の断面視図であり、(A)は図3の正面図におけるI−I断面視図、(B)は図3の正面図におけるII−II断面視図である。
【図5】投光器本体の反射面による配光制御を模式的に示す図である。
【図6】高さ1m、横幅4mのサイン広告を照明したときの照度分布を示す図であり、(A)は広告用投光器の照度分布、(B)は従来の投光器の照度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。この実施形態では、照明器具の一例として、サイン広告や看板の投光照明に用いて好適な広告用投光器を説明する。
図1は、本実施形態に係る広告用投光器1の斜視図である。
広告用投光器1は、棒状に延びた所定長さのアーム4と、このアーム4の先端に設けられた投光器本体(器具本体)6とを有している。アーム4は、照明対象のサイン広告2が設置された建物に、投光器本体6を該サイン広告2の上方位置から前方に所定距離だけ突出した位置に配置するように設置され、この位置から投光器本体6がサイン広告2の広告面である被照射面3を投光照明する。被照射面3としては、サイン広告2の広告面の他、商用施設等の建物に設けられるキャノピー看板やパラペット看板、ファサード看板、或いは、横方向に長い形状の各種広告が挙げられる。なお、広告用投光器1がサイン広告2を照明する際の具体的態様については、後に詳述する。
【0013】
図2は投光器本体6の構成を示す斜視図であり、図3は投光器本体6の正面及び右側面を示す図である。また図4は投光器本体6の断面視図であり、図4(A)は図3の正面図におけるI−I断面視図であり、図4(B)は同正面図におけるII−II断面視図である。
これらの図に示すように、投光器本体6は、ケース体8を備え、このケース体8には、光源たるランプ10が内蔵され、また、このランプ10の背後には反射面12が設けられている。
ケース体8は、アルミダイカストを箱型に形成して成り、上下に基部14と投光部16とに仕切られている。基部14にはアーム取付具18が設けられており、このアーム取付具18には上記アーム4の先端が固定される。設置時には、投光器本体6を上下逆にして上側に基部14、下側に投光部16が位置する姿勢で設置される。この基部14には、図4(B)に示すように、正面側スペース15Aに図示せぬ安定器や電源ボックスが配置され、背面側スペース15Bには、ソケット19が設けられた箱体17が着脱自在に設けられている。
【0014】
投光部16には、図2に示すように、ランプ10が納められ、このランプ10の背後に反射面12が設けられている。投光部16ではケース体8の天面及び左右側面が切り落とされており、投光部16の前面20Aのみならず、左右側面20B、20C及び天面20Dからも光が照射される。投光部16には、これら前面20A、左右側面20B、20C及び天面20Dを覆うポリカーボネート製のグローブ21が取り付けられている。
【0015】
ランプ10には、ランプ光束7700lmの高効率を有する70Wのセラミックメタルハライドランプが用いられている。このランプ10は、図4(B)に示すように、長軸J(図3)を有する直管型の透明な外球30の中に発光管32を支持し、この外球30の一端部(図示例では下端部)に口金を取り付けた、片口金の直管型のランプである。ランプ10は、図4(B)に示すように、ケース体8の基部14のソケット19に口金(図示せず)が装着され、基部14から投光部16にかけて延びた姿勢で配置される。すなわち、直管型のランプ10が、図2及び図3に示すように、投光器本体6の高さ方向に延びる姿勢で配置されることとなり、投光器本体6の横方向遠方まで光を照射できる。ケース体8の左右側面は、図3に示すように、前面20Aの側からランプ10の発光点36の近くまで深く切り落とされており、これら左右側面で横方向遠方に向かう光を遮蔽しないように成されている。また、ケース体8を真横からみた場合に発光管32は、ケース体8にて覆われており、投光器本体6の後方側には漏れ光がなく、照射面側を効率よく照射している。
【0016】
ランプ10の外球30は、図4(B)に示すように、発光管32を包む内管30Aと、この内管30Aを包む外管30Bとを備え、これら発光管32、内管30A及び外管30Bにより三重管構造が構成されている。この三重管構造によれば、ランプ10の寿命末期時にまれに起こる発光管32の破裂に対して、外球30の破損や飛散が防止される。このため、発光管32の破裂に対する保護具を投光器本体6に設ける必要がなく、投光器本体6の小型化、低コスト化が可能になる。従って本実施のように屋外にて使用する場合は、グローブ21が必要であるが、屋内で使用する場合はグローブなしでも使用できる。また、三重管構造によれば、発光管32の熱が外球30の外に漏れにくいため、投光部16の内部容積が小さくとも温度上昇が抑えられるため、さらなる小型化、低コスト化が可能になる。特に本実施形態では70Wの三重管構造を採用したので、従来のセラミック発光管70Wと比べると70%の容積で、温度上昇を抑えることができている。
【0017】
反射面12は、図2及び図4(B)に示すように、ケース体8の投光部16を構成する背面及び底面に形成され断面略L字状を成している。
さらに詳述すると、反射面12は、大別すると、遠方用反射面40と、正面用反射面41と、副正面用反射面42とを備えている。
遠方用反射面40はランプ10の発光点36の背後に位置してランプ10の長軸方向に対して左右(横方向)に延びた帯状に形成され、また、正面用反射面41は遠方用反射面40からランプ10の長軸方向に沿った高さ方向上側に連設されている。これら遠方用反射面40及び正面用反射面41は、ランプ10の背後に、ケース体8の背面に沿って設けられている。
副正面用反射面42は、遠方用反射面40の高さ方向下側から正面側に向かって折れ曲がるように連設されている。この副正面用反射面42により、ケース体8の内部が投光部16と基部14とに仕切られている。副正面用反射面42には、図2に示すように、ランプ10を挿通する挿通孔39が形成されている。ランプ10の装着時には、箱体17のソケット19に装着したランプ10を基部14から挿入し、ランプ10を挿通孔39から通して発光点36を遠方用反射面40の前方に配置する。
【0018】
遠方用反射面40には、図2及び図4(A)に示すように、ランプ10の発光点36を境に左右に分けた左側に左側遠方用反射面40Aを設け、右側に右側遠方用反射面40Bが設けられている。
左側遠方用反射面40A及び右側遠方用反射面40Bのそれぞれは、図4(A)に示すように、ランプ10に近い側の端部が該ランプ10の近傍まで立ち上がることで、左又は右遠方に向けて光を反射するための傾斜面45が形成されている。
【0019】
反射面12は、投光部16を構成するケース体8の背面及び底面のそれぞれに増反射膜を形成することで該ケース体8と一体に構成されている。この増反射膜は、アルミダイカストから成るケース体8に、アンダーコーティング、アルミ蒸着膜、SiO膜、TiO膜を順次積層して形成され90%以上の高い反射率が達成されている。
【0020】
図5は、投光器本体6の反射面12による配光制御を模式的に示す図である。この配光制御ではサイン広告2の左右を同様に照明しており、同図には、右半分の照明についてのみ示している。
サイン広告2は、高さ1m(メートル)、幅4mの矩形状を成し、このサイン広告2の被照射面3から前方に0.96m離れた位置に投光器本体6が配置される。より詳細には、ランプ10の発光点36が、サイン広告2(被照射面3)の横方向の中心線Kに対向し、かつ、サイン広告2(被照射面3)の上端部2Aと同じ高さに位置するように投光器本体6が配置される。投光器本体6の取付角度は90度に設定され、取付位置では、ランプ10が真下に向かって垂直に延びている。
【0021】
被照射面3の全領域は、配光の設計上、横方向に、正面領域50と、側方遠方領域51とに分けられており、さらに、正面領域50は、上下に、正面近傍領域52と正面遠方領域53とに分けられている。そして、正面領域50が直射光と、正面用反射面41の反射光L1と、副正面用反射面42の反射光L2とで照明され、側方遠方領域51が遠方用反射面40の反射光L3で照明される。
【0022】
さらに詳述すると、正面領域50は、被照射面3の中央であって投光器本体6の正面の領域に設定され、投光器本体6から近い上側に正面近傍領域52、投光器本体6から遠い下側に正面遠方領域53が設定されている。そして、投光器本体6は、直射光で正面近傍領域52を照明し、また、正面用反射面41の反射光L1及び副正面用反射面42の反射光L2で正面遠方領域53を照明している。
【0023】
このように、投光器本体6の正面領域50を上下に分け、投光器本体6から近い側を直射光で照明し、遠い側を正面用反射面41及び副正面用反射面42の反射光L1、L2で照明することで、正面領域50の上下での照度の均衡が図られる。
またランプ10が挿入され投光部16の底面に相当する箇所にも副正面用反射面42が設けられているため、図5に示すように、発光点36から、サイン広告2の上端部2Aよりも上に向かう無駄な光が副正面用反射面42で反射して正面遠方領域53の照明に有効利用され、投光器本体6から遠い側の照度を確保することができる。
【0024】
この正面近傍領域52の横幅は、直射光で所定の照度が維持できる広さで規定され、正面遠方領域53は、直射光で照明される正面近傍領域52と同程度或いは若干広い程度の横幅に設定されている。そして、このような正面領域50からサイン広告2の端部2Bまでの間の領域が側方遠方領域51に設定されている。
【0025】
そして投光器本体6は、遠方用反射面40の反射光L3で側方遠方領域51を照明する。より具体的には、遠方用反射面40には、上述したように、左右に左側遠方用反射面40A及び右側遠方用反射面40Bが設けられ、これらには、上述のように、ランプ10の側の端部が該ランプ10に近づくように立ち上がって傾斜した傾斜面45が形成されることで、左側の側方遠方領域51が、これと同じ側にある左側遠方用反射面40Aで照明され、同様に、右側の側方遠方領域51が右側遠方用反射面40Bで照明される。
【0026】
このように、反射面12が、側方遠方領域51を照明する遠方用反射面40を備えるため、サイン広告2が横に長い場合でも、両側の端部2Bを照明することができる。また、この遠方用反射面40を、ランプ10の発光点36に一番近くなる背後に設けたため、サイン広告2が横に長くとも両側の端部2Bでの照度を確保することができる。
さらに、左側遠方用反射面40Aで左側の側方遠方領域51を照明し、右側遠方用反射面40Bで右側の側方遠方領域51を照明するため、遠方用反射面40から左右の側方遠方領域51に向かう反射光L3が、それぞれランプ10を横切ることがないため、該ランプ10が反射光L3を遮って照度ムラや照度低下を引き起こすことがない。
【0027】
ここで、サイン広告2が横に長くなるほど側方遠方領域51が横に広くなるため、投光器本体6からサイン広告2の端部2Bまでの距離が延び、正面領域50近傍に対し端部2Bでの照度の低下が顕著になって照度ムラが発生する。
そこで、図2に示すように、左側遠方用反射面40A及び右側遠方用反射面40Bのそれぞれには、複数のファセット47が形成されている。これらファセット47は、図5に示すように、側方遠方領域51での照射範囲Rの横幅が異なる反射光L3を作る。具体的には、各ファセット47は、側方遠方領域51の全域を照射範囲R1とした反射光L3、この照射範囲R1に対して横幅を漸次小さくした照射範囲R2、R3・・・の各々の反射光L3を作り、これらの反射光L3を、サイン広告2の端部2Bで全ての照射範囲R1、R2、R3・・・が重なり合って密になり、正面領域50の側にかけて重なりが粗になるように照射する。
これにより、各ファセット47により同じ側方遠方照射領域51を照射しながらサイン広告2の端部2Bでは蜜に重なり合っているため、サイン広告2の端部2Bと正面領域50近傍との間の照度の均衡が図られ、照度ムラが抑えられることとなる。
【0028】
また、正面遠方領域53での照度ムラを抑えるべく、図2に示すように、反射面12には、正面用反射面41に複数のファセット48、副正面用反射面42に複数のファセット49がそれぞれ設けられている。これらのファセット48、49は、図5に示すように、正面遠方領域53の全域を照射範囲S1とした反射光L1、L2、この照射範囲S1に対して高さ(縦幅)を漸次小さくした照射範囲S1、S2・・・の各々の反射光L1、L2を作り、これらの反射光L1、L2を、サイン広告2の下端部2Cの側で全ての照射範囲S1、S2、S3・・・が重なり合って密になり、正面近傍領域52の側にかけて重なりが粗になるように照射する。
このように、反射面12の遠方用反射面40、正面用反射面41、及び、副正面用反射面42に、それぞれ上述のファセット47、48、49を形成したため、サイン広告2の左右の端部2B及び下端部2Cと中央部との照度の均衡が図られ照度ムラが抑えられる。
【0029】
図6は高さ1m、横幅4mのサイン広告2を照明したときの照度分布を示す図であり、図6(A)は広告用投光器1の照度分布、図6(B)は従来の投光器90の照度分布を示す。
なお、従来の投光器90は、この寸法のサイン広告2の照明に使用されている、光源に300Wのセルフバラスト水銀ランプ(ランプ光束3700lm)を用いた照明器具であり、図6(B)の照度分布は、3台の投光器90を横方向に等間隔に配置したときの分布である。また、本実施形態の広告用投光器1の設置態様は、図5と同様である。
【0030】
図6に示されるように、このときのサイン広告2の平均照度は、従来の投光器90を用いた図6(B)では554lxであるのに対して、本実施形態の広告用投光器1を用いた図6(A)では627lxが確保されている。また、サイン広告2の横方向両端部の下側、すなわち、広告用投光器1及び投光器90から離れているサイン広告2の下側の照度は、従来の投光器90を用いた図6(B)では300lx前後の明るさであるのに対して、本実施形態の広告用投光器1を用いた図6(A)では500lx前後となっており、本実施形態の広告用投光器1を用いることで良好に照明されていることが分かる。
すなわち、従来では、3台の投光器90を用いて照明していた高さ1m、横幅4mの横に長いサイン広告2の全域を、1台の広告用投光器1でも十分な明るさで照明できるワイド(横長)配光が実現されていることが分かる。
さらに本実施形態の広告用投光器1によれば、70Wのランプ10を用いているにもかかわらず、1台で、300Wのセルフバラスト水銀ランプを用いた従来の投光器90の3台分と同等以上の明るさが達成されていることが分かる。
また、1台の広告用投光器1で照明した場合でも、照度ムラが十分に抑えられていることが分かる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、反射面12に遠方用反射面40を設け、この遠方用反射面40を、発光点36を境に左右に分けて左側遠方用反射面40A及び右側遠方用反射面40Bを形成する構成とした。この構成により、左右に延びたワイド(横長)な配光を実現しつつ、被照射面3の左右の両端を同等の明るさで照明できる。
これに加え、本実施形態によれば、遠方用反射面40を、反射面12の中で発光点36に一番近い位置に設けたため、被照射面3の左右両端での照度が確保され、被照射面3の全域での照度の均衡を図ることができる。
さらに、本実施形態によれば、正面領域50から被照射面3の左端までの間を左側遠方用反射面40Aの反射光で照明し、右端までの間を右側遠方用反射面40Bの反射光で照明するため、被照射面3の左端を照明する光と右端を照明する光が、それぞれランプ10を横切ることがなく、ランプ10によって光が遮られて端部での照度低下や照度ムラが発生することがない。
【0032】
また本実施形態によれば、左側遠方用反射面40A及び右側遠方用反射面40Bのそれぞれに複数のファセット47を設け、正面領域50から被照射面3の左端及び右端までの間のそれぞれで、各ファセット47の反射光L3が、被照射面3の中央側で粗になり端側で密になるように重なり合う構成とした。
この構成により、被照射面3上に設定した側方遠方領域51の横幅が延びても、端部2Bと正面領域50近傍との間の照度の均衡が図られ、側方遠方領域51での照度ムラを抑えることができる。
【0033】
また本実施形態によれば、反射面12には、遠方用反射面40から正面用反射面41とは反対側に連続する副正面用反射面42を、反射面12の高さ方向の端部を正面に向けて折り曲げて形成し、直管型のランプ10を副正面用反射面42に設けた挿通孔39に通して配置し、これら正面用反射面41及び副正面用反射面42の反射光L1、L2で正面領域50の正面遠方領域53を照明する構成とした。
この構成により、設置時に被照射面3の上端よりも上に向かい無駄になる光を副正面用反射面42で反射して正面遠方領域53の照明に有効に利用することができ、また、正面領域50のうち投光器本体6から遠い側の照度を確保することができる。
【0034】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、広告用投光器1がサイン広告2を上から照明する場合を例示したが、これに限らず、広告用投光器1をサイン広告2の下側に配置し、該サイン広告2を下から照明しても良い。
また例えば、上述した実施形態では、反射面12をケース体8の内面に増反射膜を形成することで一体に形成したが、これに限らず、反射面12を反射鏡や反射板を用いて構成してもよい。
【0035】
また例えば、上述した実施形態では、本発明に係る照明器具として広告用投光器1を説明したが、これに限らない。すなわち、本発明は、被照射面3から離れた位置に配置され該被照射面3の全域を均一に照明する照明器具であれば任意の照明器具に適用可能であり、例えば、被照射面の全域を背後から照明するバックライトや、建物壁面の投光照明にも適当可能である。
【0036】
また例えば、上述した実施形態では、光源の一例として、セラミックメタルハライドランプを例示したが、これに限らず、高圧水銀ランプや他のメタルハライドランプなどの高圧金属蒸気放電ランプを用いることができる。さらに光源には、ランプに限らずLEDを用いることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 広告用投光器(照明器具)
2 サイン広告
2B 端部
3 被照射面
6 投光器本体(器具本体)
8 ケース体
10 ランプ(光源)
12 反射面
16 投光部
32 発光管
36 発光点
39 挿通孔
40 遠方用反射面
40A 左側遠方用反射面
40B 右側遠方用反射面
41 正面用反射面
42 副正面用反射面
45 傾斜面
47〜49 ファセット
50 正面領域
51 側方遠方領域
52 正面近傍領域
53 正面遠方領域
90 投光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と該光源の背後に配置された反射面とを有する器具本体を備え、被照射面から離れた位置から前記被照射面を照明する照明器具において、
前記反射面には、前記光源の発光点の背後に位置する遠方用反射面を設け、高さ方向に該遠方用反射面に連続して正面用反射面を設け、
前記発光点を境に前記遠方用反射面を左右に分けた左側に左側遠方用反射面を設け、右側に右側遠方用反射面を設け、
前記被照射面上の前記器具本体の正面に位置する正面領域を前記光源の直射光及び前記正面用反射面の反射光で照明し、前記正面領域から前記被照射面の左端までの間を前記左側遠方用反射面の反射光で照明し、前記正面領域から右端までの間を前記右側遠方用反射面の反射光で照明する
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記左側遠方用反射面及び前記右側遠方用反射面のそれぞれに複数のファセットを設け、前記正面領域から前記被照射面の左端及び右端までの間のそれぞれでは、各ファセットの反射光が、前記被照射面の中央側で粗になり端側で密になるように重なり合うことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記反射面には、前記遠方用反射面から前記正面用反射面とは反対側に連続する副正面用反射面を、前記反射面の高さ方向の端部を正面に向けて折り曲げて形成し、
直管型ランプで構成した前記光源を前記副正面用反射面に設けた挿通孔に通して配置し、
前記正面用反射面及び前記副正面用反射面の反射光で前記正面領域を照明することを特徴とする請求項1又は2に記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−8979(P2011−8979A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149503(P2009−149503)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り [博覧会名] ライティング・フェア2009(第9回国際照明総合展) [主催者名] 社団法人日本照明器具工業会 [主催者名] 株式会社日本経済新聞 [開催日] 平成21年3月3日から3月6日
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】