説明

熱処理装置および熱処理方法

【課題】 対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する際に、対象物に損傷を生じることなく、熱処理後の対象物を短時間で冷却することが可能な技術を提供する。
【解決手段】 本発明は対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する熱処理装置として具現化される。その熱処理装置は、対象物と雰囲気ガスを収容する搬送容器と、搬送容器を加熱する加熱装置と、搬送容器を冷却する冷却装置を備えている。この熱処理装置では、加熱装置から冷却装置へ搬送容器を搬送する際に、搬送容器の内部に収容された対象物が搬送用の治具と接触することがない。従って、熱処理が施された直後の高温の対象物が常温の搬送用治具と接触して、対象物に熱ショックによる損傷が発生する事態を未然に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハを加工する際には、酸化工程、拡散工程、リフロー工程、アニール工程、シンタリング工程など、種々の熱処理が行われる。従来これらの熱処理においては、半導体ウェハを収容室に収容した後、雰囲気ガスを収容室に導入して、半導体ウェハを加熱して高温に維持する。熱処理が終了すると、高温となった半導体ウェハを冷却して収容室から取り出し、次の工程へ搬送する。
【0003】
熱処理が施された半導体ウェハの冷却に要する時間を短縮する技術が開発されている。例えば特許文献1には、半導体ウェハを加熱する加熱用チャンバと半導体ウェハを冷却する冷却用チャンバを隣接して配置し、熱処理が終了した半導体ウェハを加熱用チャンバから冷却用チャンバへ搬送して、冷却用チャンバで冷却する。このような構成とすることによって、熱処理が施された半導体ウェハの冷却に要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−243719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱した半導体ウェハを冷却する際には、加熱装置とは別個に設けられた冷却装置へ半導体ウェハを搬送して冷却することが好ましい。加熱装置から冷却装置へ半導体ウェハを搬送する際には、搬送用の治具によって半導体ウェハを把持することが必要になる。しかしながら、熱処理が施された直後の高温の半導体ウェハを常温の搬送用治具と接触させると、半導体ウェハに局所的な熱ショックが作用し、半導体ウェハに損傷が発生してしまうおそれがある。
【0006】
上記のような熱ショックによる半導体ウェハの損傷を防ぐために、加熱装置から搬出する前に、加熱装置の内部である程度の温度まで半導体ウェハを冷却する方策が考えられる。しかしながら、半導体ウェハの熱処理が終了した直後は、半導体ウェハのみではなく、加熱装置そのものも高温となっている。従って、加熱装置から搬出する前に半導体ウェハを冷却する場合は、高温の加熱装置から半導体ウェハへの伝熱を防ぐために、加熱装置そのものについても冷却する必要が生じる。加熱装置の熱容量は半導体ウェハの熱容量にくらべて極めて大きいため、冷却に長時間を必要とする。
【0007】
半導体ウェハに損傷を生じることなく、熱処理が施された半導体ウェハを短時間で冷却することが可能な技術が待望されている。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、半導体ウェハを始めとする対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する際に、対象物に損傷を生じることなく、熱処理後の対象物を短時間で冷却することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する熱処理装置として具現化される。その熱処理装置は、対象物と雰囲気ガスを収容する搬送容器と、搬送容器を加熱する加熱装置と、搬送容器を冷却する冷却装置を備えている。
【0010】
上記の熱処理装置では、対象物と雰囲気ガスを搬送容器に収容して、加熱装置によって搬送容器を加熱する。搬送容器を加熱することによって、内部に収容された対象物も加熱されて、雰囲気ガス環境下で対象物の熱処理がなされる。その後、搬送容器は加熱装置から冷却装置へ搬送されて、冷却装置によって搬送容器を冷却する。搬送容器を冷却することによって、内部に収容された対象物も冷却される。加熱装置とは別の冷却装置を用いて搬送容器と対象物を冷却するので、熱容量の大きな加熱装置そのものを冷却する必要がなく、短時間で対象物を冷却することができる。
【0011】
上記の熱処理装置では、加熱装置から冷却装置へ搬送容器を搬送する際に、搬送容器の内部に収容された対象物が搬送用の治具と接触することがない。従って、熱処理が施された直後の高温の対象物が常温の搬送用治具と接触して、対象物に熱ショックによる損傷が発生する事態を未然に防止することができる。
【0012】
上記の熱処理装置は、搬送容器が高熱伝導材料で形成されていることが好ましい。
【0013】
上記の熱処理装置では、搬送容器が高熱伝導材料で形成されているので、加熱装置による搬送容器の加熱効率および冷却装置による搬送容器の冷却効率を高めることができる。加熱や冷却に要する時間をさらに短縮することができる。
【0014】
上記の熱処理装置では、冷却装置が、搬送容器の外面に沿って冷却ガスを流すことで搬送容器を冷却することが好ましい。
【0015】
加熱装置で加熱された直後の搬送容器は高温となっており、室温で自然冷却させると、十分に冷却されるまでに長時間を要することになる。上記の熱処理装置によれは、冷却ガスによって搬送容器を強制的に冷却することで、冷却に要する時間をさらに短縮することができる。
【0016】
上記の熱処理装置では、冷却装置が、搬送容器の外面に対向する黒色処理された面を備えることが好ましい。
【0017】
上記の熱処理装置によれば、高温の搬送容器から黒色処理された面への輻射伝熱によって、搬送容器から冷却装置への吸熱を促進することができる。冷却に要する時間をさらに短縮することができる。
【0018】
上記の熱処理装置は、対象物を冷却する第2冷却装置をさらに備えており、冷却装置で搬送容器を冷却した後に、搬送容器から取り出した対象物を第2冷却装置で冷却することが好ましい。
【0019】
上記の熱処理装置によれば、搬送容器を冷却する冷却装置によってある程度の温度まで搬送容器と対象物を冷却した後は、第2冷却装置によって対象物を直接的に冷却することができる。冷却装置によって対象物を収容した搬送容器を冷却する場合に比べて、第2冷却装置によって対象物を直接的に冷却する方が、より速やかに冷却を行うことができる。この場合に、冷却装置で搬送容器を冷却した後は、対象物もある程度の温度まで冷却されているから、搬送用の治具との接触による熱ショックもそれほど生じない。対象物を損傷することなく、冷却に要する時間をさらに短縮することができる。
【0020】
本発明は方法として具現化することもできる。本発明の方法は、対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する熱処理方法である。その方法は、対象物と雰囲気ガスを搬送容器に収容する工程と、加熱装置で搬送容器を加熱する工程と、冷却装置で搬送容器を冷却する工程を備えている。
【0021】
上記の熱処理方法は、搬送容器が高熱伝導材料で形成されていることが好ましい。
【0022】
上記の熱処理方法は、冷却装置で搬送容器を冷却する工程において、搬送容器の外面に沿って冷却ガスを流すことで搬送容器を冷却することが好ましい。
【0023】
上記の熱処理方法は、冷却装置で搬送容器を冷却する工程において、搬送容器の外面に対向する黒色処理された面への輻射伝熱によっても搬送容器を冷却することが好ましい。
【0024】
上記の熱処理方法は、冷却装置で搬送容器を冷却する工程の後に、搬送容器から取り出した対象物を第2冷却装置で冷却する工程をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱処理装置および熱処理方法によれば、対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する際に、対象物に損傷を生じることなく、熱処理後の対象物を短時間で冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は実施例1の熱処理装置100の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は実施例1の加熱装置104の構成を模式的に示す図である。
【図3】図3は実施例1の第1冷却装置106の構成を模式的に示す図である。
【図4】図4は実施例1の第2冷却装置108の構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は実施例1の第1冷却装置106に代えて用いることができる第1冷却装置500の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に説明する実施例の主要な特徴を最初に整理する。
(特徴1) 対象物は半導体ウェハである。
【実施例1】
【0028】
図1に示す本実施例の熱処理装置100は、半導体ウェハWの酸化工程において半導体ウェハWに熱処理を施す。熱処理装置100は主に、搬送チャンバ102と、加熱装置104と、第1冷却装置106と、第2冷却装置108と、チャンバ搬送アーム110と、ウェハ搬送アーム112を備えている。
【0029】
搬送チャンバ102は、高熱伝導材料(例えばSiC、Si、C、AlNなど)で形成されたほぼ直方体形状の容器である。搬送チャンバ102の内部には、半導体ウェハWを載置するサセプタ114が設けられている。搬送チャンバ102の側面には、半導体ウェハWを出し入れするための出入口116と、その出入口116を閉塞するための開閉板118が設けられている。また図示はされていないが、搬送チャンバ102は内部に雰囲気ガスを封入するためのポートと開閉弁を備えている。
【0030】
搬送チャンバ102に半導体ウェハWを収容した後、搬送チャンバ102の内部へ雰囲気ガスの封入が行われる。本実施例では、半導体ウェハWを酸化する際に必要とされる分量の酸素ガスと水素ガスが雰囲気ガスとして封入される。
【0031】
内部に半導体ウェハWと雰囲気ガスを収容した搬送チャンバ102は、チャンバ搬送アーム110によって側面を把持されて搬送される。搬送チャンバ102は作業台120から加熱装置104へ搬送される。
【0032】
図2に示すように、加熱装置104は、下側加熱容器202と上側加熱容器204を備えている。下側加熱容器202はその位置を固定されており、上側加熱容器204は下側加熱容器202に対して上下方向に移動可能である。上側加熱容器204を上方に移動させた状態で、チャンバ搬送アーム110によって搬送チャンバ102が下側加熱容器202に載置される。その後、上側加熱容器204を下方に移動させることで、搬送チャンバ102を内部に収容した状態で加熱装置104が密閉される。
【0033】
加熱装置104の内部に搬送チャンバ102が収容された状態において、搬送チャンバ102の下面は下側加熱容器202の内面にほぼ隙間なく接しており、搬送チャンバ102の側面および上面は上側加熱容器204の内面にほぼ隙間なく接している。
【0034】
下側加熱容器202は、内面に均熱板206を備えている。均熱板206は高熱伝導材料(例えばSiC、Si、C、AlNなど)で形成されており、均熱板206の面内での温度分布が均一化される。下側加熱容器202はさらに、均熱板206を覆うように均熱板206の外側に設けられたヒータ208と、ヒータ208を覆うようにヒータ208の外側に設けられた断熱材210を備えている。
【0035】
上側加熱容器204は、内面に均熱板212を備えている。均熱板212は高熱伝導材料(例えばSiC、Si、C、AlNなど)で形成されており、均熱板212の面内での温度分布が均一化される。上側加熱容器204はさらに、均熱板212を覆うように均熱板212の外側に設けられたヒータ214と、ヒータ214を覆うようにヒータ214の外側に設けられた断熱材216を備えている。
【0036】
加熱装置104は、内部に搬送チャンバ102を収容して密閉した後、ヒータ208、214による加熱を開始する。ヒータ208、214からの熱は、均熱板206、212を介して、搬送チャンバ102の外面を均一に加熱する。これによって、搬送チャンバ102の温度が上昇する。
【0037】
搬送チャンバ102が加熱されて高温となると、搬送チャンバ102の内面からの輻射伝熱によって、半導体ウェハWが加熱される。また、搬送チャンバ102の内部に収容された雰囲気ガスの対流伝熱によっても、半導体ウェハWが加熱される。これによって、半導体ウェハWの表面において、酸化反応が生じる。半導体ウェハWの酸化反応のために必要とされる時間が経過するまで、ヒータ214、216による加熱が継続される。
【0038】
加熱装置104における加熱処理が終了すると、上側加熱容器204を上方に移動させて、チャンバ搬送アーム110によって搬送チャンバ102の側面を把持し、搬送チャンバ102を加熱装置104から搬出する。この際に、搬送チャンバ102とその内部に収容された半導体ウェハWは、いずれも高温となっている。しかしながら、本実施例では、常温のチャンバ搬送アーム110は搬送チャンバ102と接触するものの、半導体ウェハWとは接触しない。従って、高温の半導体ウェハWが常温の搬送用治具と接触して、熱ショックによる損傷が半導体ウェハWに発生してしまうことがない。加熱装置104から搬出された搬送チャンバ102は、チャンバ搬送アーム110によって第1冷却装置106に搬入される。
【0039】
図3に示すように、第1冷却装置106は、下側冷却容器302と上側冷却容器304を備えている。下側冷却容器302はその位置を固定されており、上側冷却容器304は下側冷却容器302に対して上下方向に移動可能である。下側冷却容器302には搬送チャンバ102を支持するためのチャンバ支持ピン306が設けられている。上側冷却容器304を上方に移動させた状態で、搬送チャンバ102が下側冷却容器302のチャンバ支持ピン306に載置される。その後、上側冷却容器304を下方に移動させることで、搬送チャンバ102を内部に収容した状態で冷却装置106が密閉される。
【0040】
下側冷却容器302には、下側冷却ガス供給路308が形成されている。下側冷却容器302の内面には、冷却ガスを下側冷却ガス供給路308から内部に導入する複数の導入口310が設けられている。また、下側冷却容器302には、下側冷却ガス排出路312が形成されている。下側冷却容器302の内面には、冷却ガスを内部から下側冷却ガス排出路312に排出する複数の排出口314が設けられている。
【0041】
上側冷却容器304には、上側冷却ガス供給路316が形成されている。上側冷却容器304の内面には、冷却ガスを上側冷却ガス供給路316から内部に導入する複数の導入口318が設けられている。
【0042】
下側冷却容器302の内面と上側冷却容器304の内面において、導入口310、318や排出口314が設けられていない箇所には、黒色処理が施されている。
【0043】
第1冷却装置106は、内部に搬送チャンバ102を収容して密閉した後、冷却ガスによって搬送チャンバ102を冷却する。下側冷却ガス供給路308と上側冷却ガス供給路316に冷却ガスが供給されると、第1冷却装置106の内部に冷却ガスが導入される。搬送チャンバ102の外面に沿って冷却ガスが流れることで、搬送チャンバ102の外面が冷却される。搬送チャンバ102はチャンバ支持ピン306に載置されているので、搬送チャンバ102の下方にも冷却ガスが回りこんで、搬送チャンバ102の下面も冷却される。搬送チャンバ102を冷却した冷却ガスは、下側冷却ガス排出路312から外部へ排出される。
【0044】
また、第1冷却装置106へ搬送された直後の搬送チャンバ102は高温となっている。この高温の搬送チャンバ102から黒色処理された下側冷却容器302の内面と上側冷却容器304の内面への輻射伝熱によっても、搬送チャンバ102が冷却される。搬送チャンバ102および半導体ウェハWがある程度の温度に冷却されるまで、冷却ガスによる冷却が継続される。
【0045】
第1冷却装置106における冷却処理が終了すると、上側冷却容器304を上方に移動させて、チャンバ搬送アーム110によって搬送チャンバ102の側面を把持し、搬送チャンバ102を第1冷却装置106から搬出する。搬送チャンバ102は図1の作業台120に載置される。
【0046】
その後、搬送チャンバ102の開閉板118を開けて、ウェハ搬送アーム112によって搬送チャンバ102の中から半導体ウェハWを取り出す。この時点で、半導体ウェハWはある程度の温度まで冷却されているので、常温のウェハ搬送アーム112との接触の際にそれほど熱ショックを受けることがない。半導体ウェハWは、ウェハ搬送アーム112によって第2冷却装置108へ搬送される。
【0047】
図4に示すように、第2冷却装置108は、下側冷却容器402と、上側冷却容器404を備えている。下側冷却容器402はその位置を固定されており、上側冷却容器404は下側冷却容器402に対して上下方向に移動可能である。下側冷却容器402には半導体ウェハWを支持するためのウェハ支持ピン406が設けられている。上側冷却容器404を上方に移動させた状態で、半導体ウェハWが下側冷却容器402のウェハ支持ピン406に載置される。その後、上側冷却容器404を下方に移動させることで、半導体ウェハWを内部に収容した状態で第2冷却装置108が密閉される。
【0048】
下側冷却容器402には、下側冷却ガス供給路408が形成されている。下側冷却容器402の内面には、冷却ガスを下側冷却ガス供給路408から内部に導入する複数の導入口410が設けられている。また、下側冷却容器402には、下側冷却ガス排出路412が形成されている。下側冷却容器402の内面には、冷却ガスを内部から下側冷却ガス排出路412へ排出する複数の排出口414が設けられている。
【0049】
上側冷却容器404には、上側冷却ガス供給路416が形成されている。上側冷却容器404の内面には、冷却ガスを上側冷却ガス供給路416から内部に導入する複数の導入口418が設けられている。
【0050】
第2冷却装置108は、内部に半導体ウェハWを収容して密閉した後、冷却ガスによって半導体ウェハWを冷却する。下側冷却ガス供給路408と上側冷却ガス供給路416に冷却ガスが供給されると、第2冷却装置108の内部に冷却ガスが導入される。半導体ウェハWの外面に沿って冷却ガスが流れることで、半導体ウェハWが冷却される。半導体ウェハWはウェハ支持ピン406に載置されているので、半導体ウェハWの下方にも冷却ガスが回りこんで、半導体ウェハWは上下面から冷却される。半導体ウェハWを冷却した冷却ガスは、下側冷却ガス排出路412から排出される。半導体ウェハWが常温まで冷却されると、第2冷却装置108は冷却ガスによる冷却を終了する。
【0051】
第2冷却装置108における冷却処理が終了すると、上側冷却容器404を上方に移動させて、ウェハ搬送アーム112によって半導体ウェハWを把持し、第2冷却装置108から半導体ウェハWを搬出する。半導体ウェハWは次の工程に向けて搬送される。
【0052】
なお上記の実施例では熱処理装置100を半導体ウェハWの酸化工程における熱処理に用いる場合について説明しているが、これ以外にも、例えば半導体ウェハWの拡散工程、リフロー工程、アニール工程、シンタリング工程における熱処理に用いることもできる。これらの各工程においては、半導体ウェハWを加熱する際の雰囲気ガスの種類が異なるが、上記の熱処理装置100を用いることで、半導体ウェハWの加熱や冷却に要する時間を短縮することができる。
【0053】
なお上記の実施例では、搬送チャンバ102を冷却する第1冷却装置106として、冷却ガスを搬送チャンバ102の外面に沿って流すことで搬送チャンバ102を冷却する構成のものを示したが、第1冷却装置106はこれ以外の構成のものに置き換えてもよい。
【0054】
例えば図3に示す第1冷却装置106に代えて、図5に示す第1冷却装置500を用いてもよい。図5の第1冷却装置500は、下側冷却容器502と、上側冷却容器504を備えている。下側冷却容器502は位置が固定されており、上側冷却容器504は下側冷却容器502に対して上下方向に移動可能である。上側冷却容器504を上方に移動させた状態で搬送チャンバ102を下側冷却容器502の上に載置して、上側冷却容器504を下方に移動させると、搬送チャンバ102を内部に収容した状態で冷却装置500が密閉される。
【0055】
第1冷却装置500の内部に搬送チャンバ102が収容された状態において、搬送チャンバ102の下面は下側冷却容器502の内面に隙間なく接しており、搬送チャンバ102の側面および上面は上側冷却容器504の内面に隙間なく接している。
【0056】
下側冷却容器502には、複数の冷媒循環路506が形成されている。上側冷却容器504には、複数の冷媒循環路508が形成されている。冷媒循環路506、508には、低温の冷媒が流れる。冷媒としては、例えば冷却水や冷却ガス、吸熱ゲルなどを用いることができる。また、下側冷却容器502の内面には均熱板510が設けられており、上側冷却容器504の内面には均熱板512が設けられている。
【0057】
第1冷却装置500は、内部に搬送チャンバ102を収容して密閉した後、冷媒の循環によって搬送チャンバ102を冷却する。冷媒循環路506、508に冷媒を循環させると、下側冷却容器502と上側冷却容器504が冷却されて低温となり、搬送チャンバ102から吸熱する。高温の搬送チャンバ102からの熱は、均熱板510、512によって、下側冷却容器502と上側冷却容器504で均一に吸熱される。
【0058】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0059】
100 熱処理装置
102 搬送チャンバ
104 加熱装置
106 第1冷却装置
108 第2冷却装置
110 チャンバ搬送アーム
112 ウェハ搬送アーム
114 サセプタ
116 出入口
118 開閉板
120 作業台
202 下側加熱容器
204 上側加熱容器
206 均熱板
208 ヒータ
210 断熱材
212 均熱板
214 ヒータ
216 断熱材
302 下側冷却容器
304 上側冷却容器
306 チャンバ支持ピン
308 下側冷却ガス供給路
310 導入口
312 下側冷却ガス排出路
314 排出口
316 上側冷却ガス供給路
318 導入口
402 下側冷却容器
404 上側冷却容器
406 ウェハ支持ピン
408 下側冷却ガス供給路
410 導入口
412 下側冷却ガス排出路
414 排出口
416 上側冷却ガス供給路
418 導入口
500 冷却装置
502 下側冷却容器
504 上側冷却容器
506 冷媒循環路
508 冷媒循環路
510 均熱板
512 均熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する熱処理装置であって、
対象物と雰囲気ガスを収容する搬送容器と、
搬送容器を加熱する加熱装置と、
搬送容器を冷却する冷却装置を備える熱処理装置。
【請求項2】
搬送容器が高熱伝導材料で形成されている請求項1の熱処理装置。
【請求項3】
冷却装置が、搬送容器の外面に沿って冷却ガスを流すことで搬送容器を冷却する請求項1または2の熱処理装置。
【請求項4】
冷却装置が、搬送容器の外面に対向する黒色処理された面を備える請求項3の熱処理装置。
【請求項5】
対象物を冷却する第2冷却装置をさらに備えており、
冷却装置で搬送容器を冷却した後に、搬送容器から取り出した対象物を第2冷却装置で冷却する請求項1から4の何れか一項の熱処理装置。
【請求項6】
対象物を雰囲気ガス環境下で熱処理する熱処理方法であって、
対象物と雰囲気ガスを搬送容器に収容する工程と、
加熱装置で搬送容器を加熱する工程と、
冷却装置で搬送容器を冷却する工程を備える熱処理方法。
【請求項7】
搬送容器が高熱伝導材料で形成されている請求項6の熱処理方法。
【請求項8】
冷却装置で搬送容器を冷却する工程において、搬送容器の外面に沿って冷却ガスを流すことで搬送容器を冷却する請求項6または7の熱処理方法。
【請求項9】
冷却装置で搬送容器を冷却する工程において、搬送容器の外面に対向する黒色処理された面への輻射伝熱によっても搬送容器を冷却する請求項8の熱処理方法。
【請求項10】
冷却装置で搬送容器を冷却する工程の後に、搬送容器から取り出した対象物を第2冷却装置で冷却する工程をさらに備える請求項6から9の何れか一項の熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−182766(P2010−182766A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23237(P2009−23237)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】