説明

燃料用フィルタ

【課題】給油管に加工を施すことなく、燃料タンク本体からの空気を円滑に抜くことが可能な燃料用フィルタを提供する
【解決手段】燃料タンクに接続される給油管4の給油口5に取り付けられる燃料用フィルタ10は、燃料の通過を許すフィルタ部11を備えた筒状の本体部12と、本体部12を給油口5に保持する保持部13とを備え、保持部13は、本体部12の外周面と給油管4の内周面との間に通気路Pが形成されるように本体部12の外周に設けられ、且つ前記通気路に連通する通気口15を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに接続された給油管の給油口に取り付けられる燃料用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の燃料タンクへの給油は、燃料タンク本体に接続された給油管にポリタンク等の燃料容器から燃料を注ぎ込むことで行われる。通常、給油口には給油される燃料をろ過するフィルタが取り付けられている。こうした構成において、給油口に大量の燃料を注ぎ込んでしまうと、燃料によってフィルタが塞がれてしまい、燃料タンク内の空気が外部に抜けるための通気路を閉鎖されてしまうことがあった。そうなると、給油タンクに燃料を円滑に供給できないばかりか、通気路が再度外部と連通したときに給油口から燃料が吹出してしまうおそれがある。
【0003】
上述の問題を対し、給油口と燃料タンク本体との間に、給油管とは別に両者を接続する空気抜き用パイプを設ける構成が存在する(特許文献1参照)。また、給油管の一部を外方に膨出形成し、この膨出部分を通気路とする構成が存在する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−8819号公報
【特許文献2】特開2002−192964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、給油管とは別に空気抜き用パイプを追加する構成であるため、コスト高になるうえ、空気抜き用パイプの存在により燃料タンク周りの外観も損なわれる。また、特許文献2の構成においても、給油管の一部に新たな加工が必要となるため、コスト高となってしまう。
【0006】
本発明の目的は、給油管に加工を施すことなく、燃料タンク本体からの空気を円滑に抜くことが可能な燃料用フィルタを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料用フィルタの第1特徴構成は、燃料タンクに接続される給油管の給油口に取り付けられる燃料用フィルタであって、燃料の通過を許すフィルタ部を備えた筒状の本体部と、前記本体部を前記給油口に保持する保持部とを備え、前記保持部は、前記本体部の外周面と前記給油管の内周面との間に通気路が形成されるように前記本体部の外周に設けられ、且つ前記通気路に連通する通気口を有する点にある。
【0008】
〔作用〕燃料用フィルタは、フィルタ部を備えた本体部から燃料を燃料タンクに供給することができ、本体部の外周に設けられた保持部によって給油管の給油口に保持される。保持部には、本体部の外周面と給油管の内周面との間に通気路が形成されるように本体部の外周に設けられ、且つ通気路に連通する通気口を有するので、燃料用フィルタを給油管に装着するだけで、本体部の外周面と給油管の内周面との間に通気路を形成することができる。
【0009】
本構成であれば、フィルタ部を介して燃料を燃料タンクに供給する際に、燃料が通過する領域と空気が通過する領域とを確実に仕切ることができるため、燃料タンク本体内の空気を円滑に抜くことができる。
【0010】
本発明に係る燃料用フィルタの第2特徴構成は、前記給油管の断面視において前記本体部が前記給油管の中心に位置するように、前記保持部に前記本体部を同芯状に取り付けてある点にある。
【0011】
〔作用〕給油管の断面視において本体部が給油管の中心に位置するように、保持部に本体部を同芯状に取り付けると、通気路を本体部の外周面の全体に亘って確保することができる。これにより、例えば給油管が傾いている場合等において、給油された燃料が本体部の外周面における偏った位置から流出したとしても、本体部の外周面のうち燃料が流出しない側には通気路が確実に形成されることとなる。よって、給油時に燃料タンク内の空気がより抜け易くなる。
【0012】
本発明に係る燃料用フィルタの第3特徴構成は、前記フィルタ部が前記本体部の少なくとも外周面に形成されており、燃料供給用のノズルが前記本体部に挿入された状態において、前記ノズルの先端部が前記本体部の底部に接触するのを阻止する阻止部を前記本体部に備えてある点にある。
【0013】
〔作用〕燃料供給用ノズルが燃料用フィルタにおける本体部の底部に近い奥にまで差し込まれると、燃料がフィルタ部を通過する領域が本体部の底部付近に限られて小さくなる。こうしたときに、例えば本体部の底部のフィルタ部にゴミが貯留してしまうと、燃料がフィルタをスムーズに通過しないか、あるいは、ノズルの先端部が閉塞されて燃料供給が困難となり、給油時間が長くなるばかりか、燃料が給油中に本体部から溢れることも起こり得る。
しかし、本構成のように、本体部の外周面にフィルタ部を形成しておき、燃料供給用のノズルが本体部に挿入された状態において、ノズルの先端部が本体部の底部に接触するのを阻止する阻止部を本体部に備えてあると、ノズルの先端部と本体部の底部との間に十分な隙間を確保できるから、燃料を本体部の外周面のフィルタ部から確実に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】乗用田植機の右側面図である。
【図2】乗用田植機の前方平面図である。
【図3】燃料タンクの構造を示す平面図である。
【図4】燃料タンクの構造を示す側面図である。
【図5】給油管内に設置された燃料用フィルタを示す斜視図である。
【図6】給油管内に設置された燃料用フィルタを示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は縦断面図である。
【図7】燃料用フィルタの縦断面図である。
【図8】給油管内に設置された第2実施形態の燃料用フィルタを示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は縦断面図である。
【図9】給油管内に設置された第3実施形態の燃料用フィルタを示す縦断面図である。
【図10】給油管内に設置された別実施形態の燃料用フィルタを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、乗用田植機においては、例えば乗用部1の下方に燃料タンク2が搭載されている。図3及び図4に示すように、燃料タンク2の側板と天板とが接する部分に形成された接続口3に給油管4が接続されている。給油管4は、機体側方に向け水平方向に延出されて斜め後方上方に延出されている。給油管4の上部は機体のフレーム7に取付金具8を介して支持されており、給油管4の上端に形成された給油口5には、開閉自在な捻じ込み式のキャップ6を備えている。
【0016】
図5に示すように、給油口5の内側に給油口5から給油される燃料を濾過する燃料用フィルタ10が設置されている。例えば、燃料用フィルタ10に燃料供給用のノズル20を差し込んで燃料タンク2に燃料を供給する。
【0017】
図5及び図6(a)、図6(b)に示すように、燃料用フィルタ10は、燃料の通過を許すフィルタ部11を外周面及び底面に備えた筒状の本体部12と、本体部12を給油口5に保持する保持部13とを備える。保持部13は本体部12の上端の外周に鍔状に形成されている。給油口5の内面には部分的に内側へ張り出す受け座5aが形成してあり、この受け座5aに燃料用フィルタ10の保持部13の外周縁13aを受止め支持して、燃料用フィルタ10を給油管4内に装着できるよう構成してある。
【0018】
本体部12には、下部の周方向の全体及び底部12aに亘ってフィルタ部11が仕切り部14を介在させた状態で設けられている。鍔状の保持部13には、外周縁13aと本体部12に連続する部分である内周部13bを除く部分に、通気口15が仕切り部16を介在させた状態で設けられている。このような燃料用フィルタ10を給油管4の給油口5に取付けると、保持部13の通気口15によって本体部12の外周面と給油管4の内周面との間に通気路Pが形成される。給油管4内に通気路Pが形成されることで、燃料用フィルタ10へ燃料を供給したときに、燃料タンク2内の空気と外部の空気との入れ替えが本体部12の高さの通気路Pにおいて起こり易くなる。その結果、燃料タンク2内の空気をスムーズに外部に抜くことができる。
【0019】
保持部13に形成される通気口15は、通気路Pを形成する上では開口のままでも構わないが、本実施形態では、フィルタ部11と同じくメッシュが取付られて構成されている。このように、通気口15をメッシュで構成すると、給油時に保持部13に形成される通気口15から粉塵等が入ることを防止することができる。
【0020】
燃料用フィルタ10は、図6(a)に示されるように、給油管4の断面視において本体部12が給油管4の中心に位置するように、保持部13に本体部12を同芯状に取り付けてある。すなわち、本体部12と保持部13は共に中心は点Oである。本構成により、燃料用フィルタ10において、本体部12のフィルタ部11から本体部12の周囲に向けて燃料を通過させながら燃料タンク2に供給することができる。また、給油管4の断面視において本体部12が給油管4の中心に位置するように、保持部13に本体部12を同芯状に取り付けると、通気路Pを本体部12の外周面の全体に亘って確保することができる。これにより、例えば給油管4が傾いている場合等において、給油された燃料が本体部12の外周面における偏った位置から流出したとしても、本体部12の外周面のうち燃料が流出しない側には通気路Pが確実に形成されることとなる。よって、給油時に燃料タンク2内の空気が外部へ抜け易くなる。
【0021】
図7に示すように、燃料用フィルタ10の本体部12の内部には、底部12aから中央部を空けた状態で内面の対向する位置にリブ17、17が立設されている。このリブ17,17は、燃料供給用のノズル20の先端部が本体部12の底部12aに接触するのを阻止するための阻止部である。
【0022】
燃料供給用のノズル20が燃料用フィルタ10における本体部12の底部12aに近い奥深くまで差し込まれると、燃料が通過するフィルタ部11の領域が本体部12の底部12a付近に限られて小さくなる。このときに、仮に本体部12の底部12aのフィルタ部11にゴミが貯留してしまうと、燃料がフィルタ部11をスムーズに通過しないか、あるいは、ノズル20の先端部が閉塞されて燃料供給が困難となり、給油時間が長くなるばかりか、燃料が給油中に本体部12から溢れ出すことも起こり得る。
【0023】
しかし、本構成のように、ノズル20の先端部が本体部12の底部12aに接触するのを阻止する阻止部としてリブ17、17が本体部12の内部に備えてあると、ノズル20の本体部12への挿入は、最大で阻止部であるリブ17、17の上端の位置までとなる。その結果、ノズル20の先端部と本体部12の底部12aとの間に十分な隙間を確保できるから、燃料を本体部12の外周面のフィルタ部11から確実に供給することができる。
特に、図7に示すように、本体部12のフィルタ部11がリブ17,17の上端の位置まで形成されていると、ノズル20の側面によってフィルタ部11を閉塞することがなく、ノズル20からの燃料が広範囲のフィルタ部11を通過して燃料タンク2に供給される。よって、燃料タンク2への燃料供給がスムーズになり、燃料が給油中に本体部12から溢れ難くなる。
また、フィルタ部11の仕切り部14にリブ17,17を形成することで、本体部12を補強する効果も得られる。
【0024】
燃料タンク2に接続される給油管4は、機体の下部に配置される燃料タンク2に対して給油口5が機体の側方に位置する関係上、機体に対して水平な管部を含むL字状に形成されることがある。その場合、水平な管部では燃料が流れ難いばかりか、給油した燃料が水平な管部に溜まることもある。このような場合には、給油管4を可撓性を有するものとし、乗用部1のフレーム7に取付金具8を介して給油口5が吊り上げられるように取付けて給油口5の支持位置を上方に変更するようにし、給油管4の水平な管部を下方に向けて傾斜させるとよい。こうすると、給油経路が給油口5から燃料タンク2の方向に下るようになり、給油経路内での燃料の流れをスムーズにできる。
【0025】
なお、燃料用フィルタ10の本体部12は、フィルタ部11を含む全体を金属やプラスチックで構成してもよいし、例えばプラスチック製のフレームに金網を取り付けて構成してもよい。
【0026】
[実施形態2]
図8に示すように、本実施形態の燃料用フィルタ10では、平面視において保持部13の中心Oに対して本体部12の中心O´が偏心した位置に設けられている。本体部12の外周の一部が給油管4の内周の一部に近接している。平面視において保持部13に対して本体部12が偏心する位置に配置されることで、保持部13において、通気口15の領域が大きい部分13Aと、通気口15の領域が小さい部分13Bが形成される。
【0027】
こうして、保持部13における通気口15の領域が大きい部分13Aによって、給油管4の内面の一方と、本体部12の外周との間に通気路Pが確実に確保される。その結果、この通気路Pを介して燃料タンク2内の空気を逃がすことで、本体部12から燃料の溢れ出しを抑制することも可能である。例えば、給油管4が傾いている場合において、本体部12を給油管4の下面に沿わせるようにすると、保持部13における通気口15が大きい部分13Aに通気路Pが確保され易くなる。
【0028】
[実施形態3]
図9に示すように、本実施形態では、燃料用フィルタ10の本体部12の外周面を、フィルタ部11の領域と、フィルタ部11が存在しない領域18とに完全に区別して形成している。燃料はフィルタ部11を通過して本体部12の外周から流れ出て燃料タンク2に供給される。このとき、本体部12の外周から流れ出る燃料によって、通気路Pが塞がれてしまうことがある。しかし、本実施形態のように、フィルタ部11を本体部12の外周全体ではなく、外周の一部に設けるようにすると、フィルタ部11が存在しない領域18からは燃料が流れ出ないので、その領域18の外周側の通気路Pを燃料で塞ぐことがない。その結果、通気路Pが確実に確保されることとなり、円滑な空気抜きを行いながら燃料タンク2への燃料補給を行うことができる。
【0029】
[その他の実施形態]
(1)図10に示すように、燃料用フィルタ10の本体部12は、全体が柔軟の素材で構成されたフィルタ部11であってもよい。このような筒状のフィルタ部11を給油管4の奥まで挿入した状態に配置する。本体部12の外周が全てフィルタ部11であったとしても、ある程度は燃料の流通方向を規制することができる。よって、給油管4の形状が何れのものにおいても、フィルタ部11により区画された燃料流路が給油管4の奥まで確保される。その結果、燃料の流路と通気路Pとが適切に区画され、良好な空気抜き効果を得ることができる。
【0030】
(2)上記の実施形態では、保持部13を本体部12の全外周に設ける例を示したが、保持部13は、本体部12の外周の一部に設けてもよい。また、本体部12の形状は円筒状に限定されることはなく、断面が四角等の角筒状に構成されていてもよい。
【0031】
(3)上記の実施形態では、保持部13に形成される通気口15にメッシュを取付けて構成する例を示したが、通気口15はメッシュのない開口で構成されていてもよい。
【0032】
(4)上記の実施形態では、本体部12に燃料供給用のノズル20の先端部の阻止部17を底部12aから立設されたリブで構成する例を示したが、阻止部17は、リブに限定されることはなく、例えば、本体部12の内面に凸部を設けて構成してもよい。また、本体部12に阻止部17を設けずに燃料用フィルタ10を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、田植機に限らず、トラクタ、コンバイン、建設機械等の各種作業車両の燃料タンクに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
2 燃料タンク
4 給油管
5 給油口
10 燃料用フィルタ
11 フィルタ
12 本体部
12a 底部
13 保持部
15 通気口
17 リブ(阻止部)
20 燃料供給用のノズル
P 通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに接続される給油管の給油口に取り付けられる燃料用フィルタであって、
燃料の通過を許すフィルタ部を備えた筒状の本体部と、前記本体部を前記給油口に保持する保持部とを備え、
前記保持部は、前記本体部の外周面と前記給油管の内周面との間に通気路が形成されるように前記本体部の外周に設けられ、且つ前記通気路に連通する通気口を有する燃料用フィルタ。
【請求項2】
前記給油管の断面視において前記本体部が前記給油管の中心に位置するように、前記保持部に前記本体部を同芯状に取り付けてある請求項1記載の燃料用フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ部が前記本体部の少なくとも外周面に形成されており、燃料供給用のノズルが前記本体部に挿入された状態において、前記ノズルの先端部が前記本体部の底部に接触するのを阻止する阻止部を前記本体部に備えてある請求項1又は2記載の燃料用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−1285(P2013−1285A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135568(P2011−135568)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】