説明

燃焼機器

【課題】 本体を製造する作業工程中の検査作業を効率よく行うことが可能な燃焼機器を提供する。
【解決手段】 ファンヒータ本体1に設置したタンク収容室32内に燃料タンク31が存在するか検知するタンク検知手段33が正常に作動するか検査する作業工程を行う際、電源検出部29が電源の投入を検出し、入力検知手段30で所定の複数の操作スイッチが押圧されたことを検知したら、燃焼制御部3が通常モードを停止させテストモードを作動させることで、タンク検知手段33のタンク検知スイッチ35が押圧されていれば発光体21を点灯し、押圧されていなければ消灯して報知することで、タンク検知手段33のタンク検知スイッチ35が正常に作動しているか作業者が視覚的に判断でき、検査作業が簡易になり短時間で効率よく作業工程の実施が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃油を燃焼させて室内の暖房を行う燃焼機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものにおいて、燃焼機器本体のタンク収容室内に燃料タンクの存在の有無をマイクロスイッチ等で検知するタンク検知手段を設け、燃焼を開始して暖房対象空間に温風を送る通常モード時にタンク検知手段が燃料タンクの存在を検知できなければ、燃料タンクがタンク収容室内にないとして燃焼制御部が燃焼運転を停止させるものがあった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−355830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、燃焼機器を組み付けて製造する作業工程での検査の際に、タンク検知手段が正常に作動するか確認する検査を、燃焼運転している燃焼機器のタンク収容室内に収納した燃料タンクを取り出して燃焼運転が停止するかどうかで判断しなければならず、更に次に実施する燃焼検査のために再度燃焼運転を開始させる必要もあるため、作業工程全体にかかる時間が長引く問題があった。
又、燃焼機器を組み付けて製造する作業工程の途中で燃料タンクを燃焼機器に入れる際、燃料タンクを燃焼機器にぶつけてしまって燃焼機器や燃料タンクを傷つけてしまう不具合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では燃料を燃焼する燃焼部を有する本体と、該本体内に設けられ燃料タンクを収容するタンク収容室と、該タンク収容室内に設置され燃料タンクの存在を検知するタンク検知手段と、該タンク検知手段で燃料タンクの存在が検知できなければ燃焼運転を停止させる通常モードを制御する燃焼制御部とを備えた燃焼機器において、前記燃焼制御部は、タンク検知手段による燃料タンクの検知状態に関係なく燃焼運転が可能な状態とするテストモードを備えたものである。
【0006】
また、請求項2では燃料を燃焼する燃焼部を有する本体と、該本体の運転状態や各種操作状態を表示する表示部と、前記本体内に設けられ燃料タンクを収容するタンク収容室と、該タンク収容室内に設置され燃料タンクの存在を検知するタンク検知手段と、該タンク検知手段で燃料タンクの存在が検知できなければ燃焼運転を停止させる通常モードを制御する燃焼制御部とを備えた燃焼機器において、前記燃焼制御部は、タンク検知手段による燃料タンクの検知状態に関係なく燃焼運転が可能な状態とするテストモードを備え、該テストモード時はタンク検知手段が燃料タンクの存在を検知すると、通常モード時には燃料タンクの存在を表示しない表示部に燃料タンクの存在を表示するものである。
【0007】
また、請求項3では前記表示部は本体での運転状態や各種操作状態を点灯、消灯で報知する発光体を有し、テストモード時にタンク検知手段がタンク収容室内に燃料タンクがあることを検知した時、該発光体を点灯するものである。
【0008】
また、請求項4では前記本体に電源が投入されたことを検出する電源検出部を備えると共に、前記燃焼制御部は前記テストモード作動後に電源検出部で電源が検出できなければ、テストモードを解除して通常モードに戻すものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の請求項1によれば、燃料タンクがタンク収容室内に入っているか検知するタンク検知手段の検知状態に関係なく燃焼運転を可能にするテストモードを備えたので、製造する際の製品検査時に燃料タンクの存在に関わらず燃焼運転が継続可能となり、燃料タンクの存在に関係なく次の検査を実施でき、検査する作業工程を効率よく行うことができるものである。
【0010】
また、この発明の請求項2によれば、燃料タンクがタンク収容室内に入っているか検知するタンク検知手段の検知状態に関係なく燃焼運転を可能にするテストモードを作動させ、通常モード時には燃料タンクの存在を表示しない表示部に燃料タンクの存在を表示するので、製造する際の製品検査時に燃料タンクの存在に関わらず燃焼運転が継続可能となり、燃料タンクの存在に関係なく次の検査を実施でき、検査する作業工程を効率よく行うことができるものである。
又、製品検査時に燃料タンクの存在を表示するための専用の表示部品が不要となり、更に燃料タンクの存在有無について表示部を確認することで作業者が簡易に判断できるので、検査する作業工程を効率よく行うことができるものである。
【0011】
また、この発明の請求項3によれば、燃料タンクの存在の有無を表示する表示部を発光体とすることで、作業者が燃料タンクの存在の有無を視覚で早期に判断できるため、検査作業にかかる時間を短縮できる。
【0012】
また、この発明の請求項4によれば、本体に電源が投入されたか検出する電源検出部によって電源が検出できなければテストモードを解除して通常モードに戻すことで、テストモードの設定のままになることがなく、製品検査終了後に安全に製品を使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態を示す燃焼器具の断面図
【図2】同実施形態の上面図
【図3】同実施形態の燃料タンク無し時の要部断面図
【図4】同実施形態の燃料タンク有り時の要部断面図
【図5】同実施形態の制御ブロック図
【図6】同実施形態の検査工程時の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
次にこの発明の一実施形態を図1から図5に基づいて説明する。
1は屋内に設置される燃焼機器としてのファンヒータ本体で、ファンヒータ本体1内部には燃焼を行うバーナ2と、このファンヒータの作動を制御するマイコンを主体として構成された燃焼制御部3と、ファンヒータ本体1背面開口部の対流用送風機4と、ファンヒータ本体1前面の温風吹出口5と、ファンヒータ本体1前面側上部の操作部6とを備えており、バーナ2での燃焼排気ガスを対流用送風機4により温風吹出口5から室内に吹き出すことで暖房を行うものである。
【0015】
前記バーナ2は、複数の炎孔を有したバーナヘッド7の下部に気化ヒータ8を有した気化器9を備えて構成され、気化ヒータ8によって加熱された気化器9内に油受け皿10から容積型の電磁ポンプ11の駆動で送油ノズル12を通じて液体燃料を供給し、この液体燃料が気化した気化ガスと燃焼用送風機13から送風路14を通じて供給される燃焼用空気との混合ガスを前記バーナヘッド7の炎孔で燃焼させ、また燃焼中は前記気化器9の上端に複数の炎孔に対向する如く備えた環状の熱回収リング15によって炎から熱回収を行い気化ヒータ8の通電を低減しているもので、ターンダウン比が広く静かな気化燃焼を行うものである。
【0016】
前記操作部6には、運転の開始/停止を指令するための運転スイッチ16と、室温上昇スイッチ17と室温下降スイッチ18とで構成され所望の室温を設定する室温設定手段19と、燃料を節約した燃焼運転を開始するセーブ運転スイッチ20と、タイマースイッチや予熱待機スイッチなど複数の操作スイッチと、各操作スイッチの状態を発光して報知するLED等で構成された表示部としての発光体21と、時刻や設定室温を表示する液晶表示器22が設けられている。
【0017】
23は前記気化ヒータ8で加熱される気化器9の温度を検知する気化温度センサで、前記燃焼制御部3はこの気化温度センサ23の検知温度が所定の上限温度になると前記気化ヒータ8をオフし、また所定の下限温度になると前記気化ヒータ8をオンして気化器9の温度を液体燃料を良好に気化できる温度範囲内に保持する。
【0018】
また、前記燃焼制御部3は、運転スイッチ16の運転指令により、前記気化温度センサ23の検知温度を監視して前記気化器9を液体燃料を気化可能な温度まで気化ヒータ8により加熱し、気化器9の温度を燃焼に適する温度まで上昇させると前記電磁ポンプ11及び燃焼用送風機13を駆動開始し、点火装置24により混合ガスに点火して燃焼運転を開始させ、フレームロッドによる燃焼センサ25により炎を検知し、ファンヒータ本体1背面の対流用送風機4の近傍に設けられた室温センサ26の検知室温と前記室温設定手段19で設定された設定室温との偏差に応じて、前記電磁ポンプ11及び燃焼用送風機13を制御して燃焼火力を可変して前記室温設定手段19で設定された室温になるように制御する。
【0019】
この燃焼火力の可変制御は、燃焼用送風機13の駆動周波数及び電磁ポンプ11の駆動周波数を一組として予め複数段階に細分化されて火力として設定しており、検知室温と設定室温の偏差及び室温の変化勾配に応じて細分化された火力を選択することによって行われる。
【0020】
また、前記燃焼制御部3は、タイマー部27と記憶部28とを有し、前記タイマー部27は、運転スイッチ16の運転停止指令を受けると、前記対流用送風機4と気化ヒータ8と電磁ポンプ11と燃焼用送風機13とを前記タイマー部27のカウントに応じて適宜消火制御して、臭い及び煙のない快適な消火を実現すると共に、燃焼センサ25により不完全燃焼を検出するとカウントを開始し、所定時間経過後にカウントを停止するものである。
【0021】
前記記憶部28は、燃焼センサ25により不完全燃焼を検出してタイマー部27が所定時間をカウントしている間に燃焼センサ25により検出した不完全燃焼の回数を記憶するものである。
【0022】
29は前記燃焼制御部3に備えられた電源検出部で、停電復帰時や図示しない電源プラグによるファンヒータ本体1への電源ON/OFFを検出するものである。
【0023】
30は前記燃焼制御部3に備えられた入力検知手段で、操作部6上にある複数の操作スイッチが押圧された際にどの操作スイッチが押圧されたか判別するものである。
【0024】
31は燃焼用の液体燃料を内部に貯留可能な燃料タンクで、ファンヒータ本体1に設置されたタンク収容室32内にセットされて内部に貯留した液体燃料を油受け皿10内へ補給することで燃焼運転が可能となる。
【0025】
33は燃料タンク31がタンク収容室32内に存在するか検知するタンク検知手段であり、軸を中心にして一定方向への回動が可能な回転体34と、該回転体34が回動してスイッチをON状態にすることで燃料タンク31がタンク収容室32内に有ることが検知可能なタンク検知スイッチ35とで構成されている。
【0026】
また、前記燃焼制御部3は、運転スイッチ16を押圧して燃焼を開始させ燃焼運転を行っている際に、燃料タンク31がタンク収容室32から抜かれタンク検知スイッチ35がOFF状態になったことを検知したら、直ちに燃焼運転を停止する通常モードを制御するものである。
【0027】
次に、タンク検知手段33の作動を検査する作業工程中の制御に関して、図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、油受け皿10に液体燃料を入れて燃焼可能な状態にした後、ファンヒータ本体1に電源が投入されたか電源検出部29で判断して(S101)、電源ONが検出できれば液晶表示器22を所定時間点灯して電源が投入されたことを報知すると共にタイマー部27による時間カウントを開始し(S102)、電源ONが検出できなければS101の判断を繰り返す。
【0028】
S102で電源ONを検出して液晶表示器22が点灯すると共にタイマー部27による時間カウントが開始されたら、タイマー部27による時間カウントが所定時間をカウントする前に操作部6上に備えられた室温上昇スイッチ17と室温下降スイッチ18とセーブ運転スイッチ20とによる複数の操作スイッチが同時に押されたか入力検知手段30で判断して(S103)、所定時間内に複数の操作スイッチが同時に押圧されたことを検知したら、燃焼制御部3が通常モードを停止しテストモードを作動させ(S104)、所定時間を超えたか複数の操作スイッチが同時に押されたことが検知できなければS103の判断を繰り返す。
【0029】
S104でテストモードを作動させたら、タンク検知手段33のタンク検知スイッチ35がON状態になっているか燃焼制御部3で判断して(S105)、ON状態であれば、発光体21を点灯させて報知し(S106)、OFF状態であれば、発光体21は消灯した状態にする(S107)。
【0030】
S106で発光体21が点灯していれば、タンク検知スイッチ35がON状態であると判断しているが、検査作業中に燃料タンク31はタンク収容室32内に入っていないので異常な反応であるとして作業工程を中断し、S107で発光体21が消灯していれば正常な反応であると判断して、次の各操作スイッチの作動確認を行う作業工程へ進むことができるので、作業者が発光体21を視覚的に確認するだけでタンク検知スイッチ35が正常に作動しているか否かを判断可能になり、検査作業に要する時間を短縮できる。
【0031】
S107で発光体21が消灯しておりタンク検知スイッチ35が正常であると判断したら、各操作スイッチをそれぞれ押圧すると液晶表示器22に所定の項目が表示されることを確認する検査や、ファンヒータ本体1を前面に倒すと対震装置が作動して燃焼停止するかを確認する検査等を実施し、所定の検査項目が終了したら、ファンヒータ本体1への電源投入が終了したか電源検出部29で判断して(S108)、電源OFFを検出したら燃焼制御部3がテストモードから通常モードに制御内容を戻して次の作業工程へ進む(S109)。
【0032】
また、別の作業工程である絶縁耐圧検査において、油受け皿10内から液体燃料を抜き取り、燃料タンク31をタンク収容室32内に入れて運転スイッチ16をON状態にすると、燃焼制御部3が絶縁耐圧検査用のモードを作動させることで、タンク検知手段33のタンク検知スイッチ35がON状態であれば液晶表示器22に温度表示をさせる制御にしたので、タンク検知スイッチ35のON状態における作動確認を行うことが可能である。
【0033】
以上により、タンク収容室32内に燃料タンク31が存在するか検知するタンク検知手段33の作動を検査する作業工程の際、電源ON状態で所定時間内に複数の操作スイッチが押圧されたことを検知したら、燃焼制御部3が通常モードを停止させてテストモードを作動させることで、発光体21の点灯、消灯による目視での作動確認が可能になり、燃料タンク31をタンク収容室32内に入れずともタンク検知手段33のタンク検知スイッチ35が正常に作動するか簡易に判断可能となり、短時間で検査作業を行うことができ効率的な作業工程の実施が可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 ファンヒータ本体
3 燃焼制御部
21 発光体
29 電源検出部
31 燃料タンク
32 タンク収容室
33 タンク検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼する燃焼部を有する本体と、該本体内に設けられ燃料タンクを収容するタンク収容室と、該タンク収容室内に設置され燃料タンクの存在を検知するタンク検知手段と、該タンク検知手段で燃料タンクの存在が検知できなければ燃焼運転を停止させる通常モードを制御する燃焼制御部とを備えた燃焼機器において、前記燃焼制御部は、タンク検知手段による燃料タンクの検知状態に関係なく燃焼運転が可能な状態とするテストモードを備えたことを特徴とする燃焼機器。
【請求項2】
燃料を燃焼する燃焼部を有する本体と、該本体の運転状態や各種操作状態を表示する表示部と、前記本体内に設けられ燃料タンクを収容するタンク収容室と、該タンク収容室内に設置され燃料タンクの存在を検知するタンク検知手段と、該タンク検知手段で燃料タンクの存在が検知できなければ燃焼運転を停止させる通常モードを制御する燃焼制御部とを備えた燃焼機器において、前記燃焼制御部は、タンク検知手段による燃料タンクの検知状態に関係なく燃焼運転が可能な状態とするテストモードを備え、該テストモード時はタンク検知手段が燃料タンクの存在を検知すると、通常モード時には燃料タンクの存在を表示しない表示部に燃料タンクの存在を表示することを特徴とする燃焼機器。
【請求項3】
前記表示部は本体での運転状態や各種操作状態を点灯、消灯で報知する発光体を有し、テストモード時にタンク検知手段がタンク収容室内に燃料タンクがあることを検知した時、該発光体を点灯することを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の燃焼機器。
【請求項4】
前記本体に電源が投入されたことを検出する電源検出部を備えると共に、前記燃焼制御部は前記テストモード作動後に電源検出部で電源が検出できなければ、テストモードを解除して通常モードに戻すことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃焼機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−21731(P2012−21731A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161152(P2010−161152)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】