説明

物置、物置用トイレキット

【課題】平常時および非常時のいずれにおいても設置スペースを有効に活用することが可能な物置を提供する。
【解決手段】物置100において、側面パネル120の下端を支持する土台部材110の内部を便槽空間111として利用すべく、この便槽空間111の内部に大便器151、小便器152、トイレ用品収納箱150a、消臭剤ボトル150b等のトイレキット150を収納し、同じくトイレキット150に含まれる便槽蓋153、便槽蓋154、床パネル156、床パネル157を、便槽空間111の上部開口部を覆うように取り外し可能に配置して物置空間160の床を構成する。非常時には、大便器151、小便器152等を取り出し、床パネル156、床パネル157を外して便槽蓋153、便槽蓋154の便器用開口部153a、便器用開口部154aに設置して物置100を簡易トイレとして利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物置、物置用トイレキットに関し、たとえば災害時等に有効に機能する物置、物置用トイレキットに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、地震等の大規模災害の発生時においては、倒壊等の懸念から一般の家屋や集合住宅等の住人は避難を余儀なくされる。このような避難時において問題となるのがトイレである。すなわち、大規模災害時には、広範囲の停電および断水が発生して電気や水道は一切使用不能になることが予想され、電気や水道の使用を前提とした一般家屋や公共施設のトイレは使用不能となるからである。
【0003】
従来、このような大規模災害等の非常時にトイレ設備を提供する技術として、たとえば特許文献1に開示された緊急対応簡易トイレが知られている。すなわち、避難場所の敷地内に便槽を埋設し、その内部に仮設の覆い幕や便器を収納し、この便槽の上部に花壇等の識別可能な施設を配置したものである。そして、緊急時には便槽の上部の施設を取り除いて、内部の便器や覆い幕を取り出してトイレ空間を構成するように組み立て、トイレとして使用するものである。
【0004】
また、特許文献2には、便槽として機能するタンクを所定の場所に埋設し、埋設場所の地面の開口部に、反転した和式便器と当該便器の開口部を覆う上蓋とで隠蔽する構造の非常時用トイレが開示されている。
【0005】
しかし、上述の特許文献1および特許文献2のいずれの場合も、非常時のトイレ専用の設備で、しかも平常時は不使用となるため、その設置スペースは全く活用できないという問題がある。
【0006】
さらに、上述の特許文献1および特許文献2のいずれの場合も、夜間のトイレ使用時における照明の問題を全く考慮していない。すなわち、災害時には、停電のため照明用の電源供給は期待できず、夜間においては、利用者は暗闇の中での極めて不便なトイレ使用を強いられる、という問題もある。
【0007】
【特許文献1】特開平9−296618号公報
【特許文献2】特開平9−140627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、平常時および非常時のいずれにおいても設置スペースを有効に活用することが可能な物置を提供することにある。
本発明の他の目的は、非常時に利便性の高いトイレとして使用することが可能な物置を提供することにある。
本発明の他の目的は、既設の物置を非常時にトイレとして有効に活用することが可能な物置用トイレキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、屋根部、側壁部、扉を含み第1収納空間を構成する上部構造体と、前記上部構造体を支持するとともに、床部に隠蔽された第2収納空間を備えた下部構造体と、前記第2収納空間に収納されたトイレキットと、を含む物置を提供する。
この第1の態様によれば、たとえば、平常時は物置として物品を収納し、非常時にはトイレとして活用でき、平常時および非常時のいずれにおいても設置スペースを有効に活用することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の物置において、前記屋根部は、蓄光性顔料を含む透光性のトップライトと、前記トップライトの内側に着脱自在に設けられた遮光性の天井パネルとを含む物置を提供する。
この第2の態様によれば、平常時の物置としての使用時にはトップライトを通じて射し込む外光を天井パネルで遮ることにより、物置内の物品を光や熱から保護できる。また、非常時に物置をトイレとして使用する際には、天井パネルを取り外してトップライトを採光窓として機能させることができるとともに、夜間には電源等のエネルギー供給を必要とすることなく、蓄光性顔料の発光作用によってトップライトを照明装置として機能させることができるので、停電が予想される非常時に利便性の高いトイレとして使用することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載の物置において、前記床部は、前記第2収納空間の上部に着脱自在に配置され、前記トイレキットに含まれる便器が接続される便器用開口部を備えた便槽蓋と、前記便槽蓋を覆う床板と、を含む物置を提供する。
この第3の態様によれば、平常時に物置の床を物品の置き場所として使用する際における便槽蓋の紛失を防止できるとともに、非常時には、この便槽蓋を使用して物置の床に便器を設置してトイレを簡単に構築できる。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の物置において、便槽蓋は、大便器用の第1便槽蓋と、小便器用の第2便槽蓋とからなる物置を提供する。
この第4の態様によれば、非常時等において、大便器および小便器を用いた本格的な多機能のトイレを構築できる。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載の物置において、前記トイレキットは、便器、汚物用ビニール袋、を含む物置を提供する。
この第5の態様によれば、便器に汚物用ビニール袋を使用して汚物を補足することにより、汚物の廃棄処理を効率よく行うことができる。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1の態様に記載の物置において、前記下部構造体は、基礎に嵌合する嵌合凹部を備えたカップ状に成形され、前記第2収納空間を構成する繊維強化プラスチック(FRP)からなる物置を提供する。
この第6の態様によれば、下部構造体に型成形等の方法で任意の形状や数の第2収納空間を容易に形成できる。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1の態様に記載の物置において、前記扉は、前記第1収納空間の内部側から施錠可能な錠前機構を備えた物置を提供する。
この第7の態様によれば、たとえば非常時に物置の前記第1収納空間をトイレとして使用する際に、内側から施錠してプライバシを確保できる。
【0016】
本発明の第8の態様は、第1の態様に記載の物置において、前記上部構造体と前記下部構造体とが、搬送可能に一体に連結されたコンテナボックスからなる物置を提供する。
この第8の態様によれば、平常時には物品の収納に用いることができ、非常時にはトイレとして使用できる物置において、運搬や設置の利便性が向上する。
【0017】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の物置において、前記第1収納空間が複数の独立な小室に分割されている場合、個々の前記小室の各々を独立したトイレ用の個室として機能させるための複数の前記下部構造体および前記トイレキットを含む物置を提供する。
この第9の態様によれば、コンテナボックスの複数の小室を利用して、非常時に複数のトイレを構築することができる。
【0018】
本発明の第10の態様は、便器と、汚物用ビニール袋と、既設の物置の基礎部分の空間を便槽として使用する場合に前記便器を設置するための便器用開口部を備えた蓋槽蓋と、前記蓋槽蓋を覆って前記物置の床を構成する床板と、を含む物置用トイレキットを提供する。
この第10の態様によれば、既存の物置の基礎部分の床下空間を利用して物置用トイレキット保管することにより、平常時には物品の収納に使用される物置を、非常時には床下空間を便槽として利用するトイレとして迅速かつ簡便に有効利用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の物置によれば、平常時および非常時のいずれにおいても設置スペースを有効に活用することができる。
本発明の物置によれば、非常時に利便性の高いトイレとして使用することができる。
本発明の物置用トイレキットによれば、既設の物置を非常時にトイレとして有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である物置100の構成の一例を示す斜視図、図2は、その内部構成の一例を示す斜視図、図3は、その屋根部分の分解組立図、図4は、その基礎部分を取り出して示す斜視図である。
【0021】
本実施の形態の物置100は、下部構造体としての土台部材110と、上部構造体としての側面パネル120、扉130、屋根140を備えている。
【0022】
図2に例示されるように、側面パネル120、パネル結合部材121、扉130、屋根140で囲まれた物置空間160(第1収納空間)には、複数の棚板122、および当該棚板122を支持する支柱123が取り外し可能に設置されており、図示しない所望の物品を物置空間160の内部に保管することが可能になっている。
【0023】
図4に例示されるように、土台部材110は、たとえば、繊維強化プラスチック(FRP)を、開口部が矩形を呈するカップ状に成形して構成されており、内部は、後述のトイレキット150が収納される便槽空間111(第2収納空間)を構成している。
【0024】
土台部材110の周囲には、設置場所の地面に設けられた後述のような基礎ブロック900に嵌合する凹型の基礎嵌合部112が形成されている。
土台部材110の外周部には、基礎嵌合部112等の凹凸を隠蔽して美観を向上させるための基礎カバー113が必要に応じて装着されている。
【0025】
土台部材110の矩形の開口部の一つの長辺と二つの短辺に、コ字形に配列された側面パネル120の下端部が支持されている。土台部材110の矩形の開口部の残りの一つの長辺には、たとえば引き違い戸131および引き違い戸132からなる扉130が設けられている。
【0026】
側面パネル120の上端部には、屋根140が配置されている。図3に例示されるように、本実施の形態の物置100の屋根140は、その中央部に採光開口部140aを備えている。この採光開口部140aには、たとえば、半透明なプラスチック等で構成され、上方に凸のカップ形状を呈するトップライト141が固定されている。
【0027】
屋根140の内側には、遮光性および断熱性を有する天井パネル142が、取り外し可能に配置されている。この天井パネル142を取り付けた状態では、トップライト141を透過する外光の光や熱は天井パネル142によって遮断され、物置空間160に保管されている図示しない物品の変質等を防止している。
【0028】
この場合、トップライト141には、昼間の日光を吸収して蓄積し、蓄積した光を夜間に光を放出する蓄光性顔料141aが塗布されている。
これにより、トップライト141は、蓄光性顔料141aが発する光によって自発的に発光し、後述のように物置100をトイレとして使用する時に照明として機能する。
【0029】
本実施の形態の場合、土台部材110の内部の便槽空間111には、図5に例示されるようなトイレキット150が、図6および図7に例示されるような状態にて収納される。
【0030】
本実施の形態のトイレキット150は、一例として、大便器151、小便器152、便槽蓋153、便槽蓋154、汚物用ビニール袋155、床パネル156、床パネル157、トイレ用品収納箱150a、消臭剤ボトル150bを含んでいる。
【0031】
このトイレキット150のうち、大便器151、小便器152、消臭剤ボトル150bは、そのまま便槽空間111の内部に収納され、汚物用ビニール袋155は、図示しないトイレットペーパ等のトイレ用品とともにトイレ用品収納箱150aに収納された状態で便槽空間111に配置される。
【0032】
図6および図7の例では、土台部材110の便槽空間111の両端部に大便器151、小便器152を収納し、中央部にトイレ用品収納箱150aおよび消臭剤ボトル150bが収納されている。
便槽蓋153には、大便器151を後述のように設置する際に当該大便器151に嵌合する便器用開口部153aが設けられている。
【0033】
同様に、便槽蓋154には、小便器152を後述のように設置する際に、当該小便器152が嵌合する便器用開口部154aが設けられている。
【0034】
そして、便槽蓋153および便槽蓋154は、便槽空間111の上部を覆うように、土台部材110の開口部に並べて配置され、さらに、その各々の上に、取り外し可能に、床パネル156および床パネル157が載置されることによって、物置空間160の床が構成されている。
【0035】
この床パネル156および床パネル157によって、下側の便槽蓋153の便器用開口部153a、および便槽蓋154の便器用開口部154aが隠蔽されるため、物置空間160の床部分は穴等のない平坦な状態となり、床面全体を有効に利用して、支障なく図示しない所望の物品を並べたり、当該物品を出し入れする作業者が通行することが可能となる。
【0036】
一方、図1に例示されるように、引き違い戸131および引き違い戸132からなる扉130には、外側から扉130に施錠可能な召し合わせ錠等からなる外側錠機構134が設けられている。
【0037】
本実施の形態の物置100では、後述のように物置空間160をトイレとして使用する際に、内側から施錠可能にするための内側錠機構135が設けられている。
図8は、扉130を物置空間160の内側から見た斜視図であり、図9は、その一部を取り出して拡大した斜視図である。
【0038】
扉130の内側には、外側錠機構134を避けた高さ位置に、内側錠機構135が設けられている。この内側錠機構135は、一例として、クレセント錠を用いることができる。
【0039】
すなわち、本実施の形態の場合、一例として、内側錠機構135は、引き違い戸131の側に固定されたクレセント本体136と、引き違い戸132の側に固定されたクレセント受け部137で構成されている。
【0040】
クレセント本体136は、固定座136c、回動軸136dを介して引き違い戸131に回動自在に支持されている。そして、ハンドル136bによって嵌合爪136aを、クレセント受け部137に嵌合させる位置と離脱させる位置との間で回動させることにより、物置空間160の内側から施錠および解錠操作を行うことが可能になっている。
【0041】
以下、本実施の形態の物置100の作用の一例について説明する。
まず、図10、図11、図12を参照して、上述のような構成の本実施の形態の物置100の設置手順の一例を説明する。
【0042】
図10に示されるように、所望の設置場所に、物置100の土台部材110における基礎嵌合部112の配列ピッチに合わせて複数の基礎ブロック900を配置し、これらの基礎ブロック900に対して、複数の基礎嵌合部112の各々が嵌合するように、便槽空間111の開口部を上向きにして当該土台部材110を載置する。
【0043】
その後、トイレキット150の大便器151、小便器152、トイレ用品収納箱150a、消臭剤ボトル150b等を土台部材110の便槽空間111の中に配置する。
その後、図11のように、土台部材110の開口部(便槽空間111)を隠蔽するように、まず、便槽蓋153、便槽蓋154を並べて配置する。
【0044】
その後、側面パネル120を土台部材110に組み付け、さらに、側面パネル120の上端に屋根140およびトップライト141を組み上げる。
さらに、図11に例示されるように、便槽蓋153、便槽蓋154の各々を覆うように、床パネル156、床パネル157を配置する。
【0045】
また、土台部材110の外周を覆うように、基礎カバー113を設置する。
さらに、屋根140の内側に天井パネル142を設置し、必要に応じて、側面パネル120で囲まれた物置空間160の内部に棚板122、支柱123を設置する。
こうして、上述の図1および図2に例示されるような物置100が完成する。
【0046】
この図1および図2は、通常の物置として使用される状態を示しており、この状態では、物置空間160の床は、床パネル156、床パネル157によって平坦になっているため、床面全体を図示しない物品等の配列に有効に使用することができる。
【0047】
また、屋根140の部分では、天井パネル142が設けられているため、トップライト141を透過する日光や熱は天井パネル142によって遮断され、物置空間160の内部に収納された図示しない物品は、光や熱から保護される。これにより、物置100は、物置それ自体として、所望の物品の保管や収納の用途に有効に機能する。
【0048】
なお、本実施の形態の物置100は、災害時等に使用される防災用品の収納物置として使用することが特に望ましいと考えられる。
【0049】
一方、たとえば、災害時等の非常時においては、本実施の形態の物置100は、図13、図14、図15、図16に例示されるように、必要に応じてトイレとして機能させることができる。すなわち、本実施の形態の物置100をトイレに変更して使用するためには、以下のように構成を変更する。
【0050】
まず、物置空間160の内部の棚板122、支柱123、および天井パネル142を取り外す。
【0051】
次に、床パネル156、床パネル157、便槽蓋153、便槽蓋154を取り外し、土台部材110の便槽空間111に収納されていたトイレキット150を取り出した後、便槽蓋153、便槽蓋154を土台部材110の開口部に設置する(すなわち元の位置に戻す)。床パネル156、床パネル157は使用しないので適宜保管する。
【0052】
そして、トイレキット150の大便器151を、便槽蓋153の便器用開口部153aに、汚物用ビニール袋155とともに嵌合させて設置し、小便器152を、便槽蓋154の便器用開口部154aに汚物用ビニール袋155とともに嵌合させて設置する(図15参照)。
【0053】
そして、汚物用ビニール袋155(便槽空間111)の中に消臭剤ボトル150bから適量の消臭剤を流し込む。
また、大便器151側の一方の引き違い戸131を図示しない金具等で固定し、他方の小便器152の側の引き違い戸132のみが開閉されるようにする。
【0054】
これにより、図13に例示される外観、および図14に例示される内部構成を有する物置100を利用したトイレが完成する。
【0055】
なお、上述の物置100からトイレへの切り替え作業は、天井パネル142、床パネル156、床パネル157、便槽蓋153、便槽蓋154等は着脱式になっているため、作業は極めて短時間で、誰にでも簡単に行うことができる。
【0056】
こうして本実施の形態の物置100を、図13、図14に例示されるようなトイレとして使用する場合、利用者は、小便器152の側の引き違い戸132を通じて物置空間160(トイレ)の中に入る。
【0057】
大便器151、小便器152に排泄される汚物は、各々の汚物用ビニール袋155にて捕捉される。なお、汚物用ビニール袋155を使用しないで、便槽空間111の全体を汲み取り式の便槽として使用してもよい。
【0058】
大便器151を使用する場合は、必要に応じて引き違い戸132を閉じて、内部側から内側錠機構135を施錠する。これにより用便中のプライバシーを保持できる。
なお、引き違い戸132を閉じても、昼間であればトップライト141を透過する外光にてトイレ内部が照明されるため、利用者に不便はない。
【0059】
さらに、夜間の場合には、トップライト141に塗布されている蓄光性顔料141aが昼間の日光による蓄光によって自発的に発光するため、電源無しで、トップライト141がトイレ内の照明として機能することになる。従って、本実施の形態の場合には、夜間におけるトイレの使用にも全く不便を生じない。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態の物置100によれば、平常時は、本来の物置として物品等の保管、収納に有効に活用できるとともに、災害時等においては、簡単な切り替え作業にて、土台部材110の便槽空間111に保管されていたトイレキット150を利用してトイレとして使用することが可能になる。
【0061】
すなわち、本実施の形態の物置100によれば、平常時および非常時のいずれにおいても設置スペースを有効に活用することができる。
【0062】
さらに、屋根140に、蓄光性顔料141aが塗布された半透明のトップライト141を設けることにより、昼間のトイレ使用においてはトップライト141を透過する外光が照明として機能し、夜間では、蓄光発光による自発的な発光によって蓄光性顔料141aが照明として機能するので、電源等を全く必要とすることなく、非常時に利便性の高いトイレとして使用することができる。
物置100は設置型の物置であるため移動も容易である。
【0063】
(実施の形態2)
図17は、本発明の他の実施の形態である物置の構成例を示す斜視図であり、図18は、その平断面図である。本実施の形態2の場合には、物置としてコンテナボックス200に適用した例を示す。
【0064】
このコンテナボックス200は、比較的大型の物置であり、平常時は、たとえば、集合住宅のトランクルームや集会所、自治会、工場の集会所や倉庫として使用されるものである。
【0065】
本実施の形態のコンテナボックス200は、土台部材210、側壁部220、屋根部250が一体に結合され、屋根部250に設けられたフック251によってクレーン等で吊り上げることにより、運搬や設置が容易な構成となっている。
【0066】
本実施の形態のコンテナボックス200は、基礎ブロック900の上に設置され、その内部は、複数の小型収納室230と、一つの大型収納室240に区切られている。
【0067】
土台部材210は、たとえばFRP等で成形されることにより、複数の便槽空間211が形成されている。すなわち、本実施の形態の場合、土台部材210には、複数の小型収納室230の各々の直下の位置、および大型収納室240のコーナの位置に便槽空間211がそれぞれ設けられている。
【0068】
そして、便槽空間211の各々には、上述の実施の形態1の場合と同様に、トイレキット150が配置されている。なお、この場合、トイレキット150の一部として、手摺部材150c、トイレットペーパホルダ150d、等を含んでいてもよい。
【0069】
すなわち、個々の小型収納室230においては、直下の便槽空間211の内部に大便器151および小便器152等が収納され、取り外し可能な便槽蓋153、床パネル156によって便槽空間211を隠蔽する床面が構成されている。
また、個々の小型収納室230の内部には、棚板233が取り外し可能に設けられている。
【0070】
個々の小型収納室230には、扉231が設けられ、この扉231には、採光のために半透明なプラスチック等で構成される小窓232と、ドアノブ231aが設けられている。本実施の形態の場合、小窓232には、蓄光性顔料232aが塗布されており、夜間は、蓄光性顔料232aの蓄光発光により、小窓232自体が無電源の照明として機能する。
【0071】
特に図示しないが、ドアノブ231aには、小型収納室230の外側および内側のいずれからも施錠可能な錠が設けられている。平常時に物置として使用する場合には、ドアノブ231aに外側から施錠し、非常時に後述のようにトイレとして使用する場合には、内側から施錠してプライバシーを確保することが可能になっている。
【0072】
大型収納室240には、右奥の位置に便槽空間211が設けられ、内部にトイレキット150が収納され、便槽蓋153および床パネル156で覆われている。なお、この場合、トイレキット150には、洋式便器151aが含まれており、便槽蓋153は、洋式便器151aに対応した便器用開口部153aを備えている。また、トイレキット150の一部として、手摺部材150c、トイレットペーパホルダ150d、等を含んでいてもよい。
【0073】
大型収納室240には、引き違い戸からなる扉241が設けられている。また、大型収納室240に面する側壁部220には、採光のために半透明のプラスチック等で構成される小窓221が設けられ、この小窓221には蓄光性顔料221aが塗布されている。この小窓221も蓄光性顔料221aの蓄光発光により夜間は電源不要の照明として機能する。
【0074】
側壁部220の上部には、個々の小型収納室230に対応する位置、および大型収納室240に対応する位置に、換気口222が設けられている。
以下、本実施の形態のコンテナボックス200の作用について説明する。
【0075】
平常時は、図17のような外観を呈し、コンテナボックス200の個々の小型収納室230は、図18の下側のように、棚板233を備え、床面が平坦な床パネル156で構成される通常のトランクルームのような物置として機能する。
【0076】
同様に、大型収納室240は、便槽空間211の上部が便槽蓋153、床パネル156で覆われることにより、全体が平坦な床となっており、物置や集会所等として使用される。
【0077】
一方、非常時には、以下のようにして簡単に図18に例示されるような簡易トイレに変更できる。まず、小型収納室230では、棚板233を取り去り、さらに、床部分を構成しているトイレキット150の床パネル156および便槽蓋153を外して、便槽空間211の中からトイレキット150の大便器151、小便器152、トイレ用品収納箱150a、消臭剤ボトル150b等を取り出す。
【0078】
その後、便槽蓋153を元に戻して便槽空間211の上部を覆い、便器用開口部153aに大便器151を嵌合して配置する。また、トイレキット150に含まれていた手摺部材150c、トイレットペーパホルダ150dを小型収納室230の壁面に適宜固定する。
【0079】
なお、図18では、比較のため、複数の小型収納室230のうち図中の上半分が簡易トイレに変更された状態を示し、下側半分は変更前の状態が示されているが、全ての小型収納室230を簡易トイレに変更することができる。
【0080】
この小型収納室230の簡易トイレの場合、便槽空間211をそのまま便槽として用いても良いし、汚物用ビニール袋155を大便器151の内部に装着して汚物を回収するようにしてもよい。
【0081】
また、小型収納室230の小窓232は、トイレとしての使用時には採光窓として機能し、さらに蓄光性顔料232aが塗布されていることにより、夜間には、蓄光性顔料232aの蓄光発光により、電源不要の照明として機能する。
【0082】
小型収納室230のトイレキット150に含まれていた小便器152は、大型収納室240の側壁部220の外周に所定の間隔で配置され、各々の小便器152の間には、小型収納室230から取り外された棚板233がスクリーン(目隠し)として配置される。
【0083】
小便器152の排出口は大型収納室240の下の便槽空間211に接続してもよいし、近傍の排水路に適宜接続してもよい。
【0084】
一方、大型収納室240では、当該大型収納室240の下部に配置されている便槽空間211を覆っていた床パネル156、便槽蓋153を取り外して、トイレキット150として収納されていた洋式便器151a等を取り出した後、便槽蓋153で便槽空間211を覆う。そして、便槽蓋153の便器用開口部153aに洋式便器151aを配置する。また、手摺部材150c、トイレットペーパホルダ150dを比較的広い大型収納室240の側壁部220の内側の適宜の位置に固定する。
【0085】
これにより、比較的広い大型収納室240は、たとえば、洋式便器151aを備えた身障者用の簡易トイレとして使用することができる。
【0086】
なお、このコンテナボックス200においては、土台部材210における小型収納室230および大型収納室240の底部に配置された便槽空間211を連通させ、図示しない手動式のポンプ等で汚物を下水等に排出する構成とすることもできる。
【0087】
このように、本実施の形態のコンテナボックス200の場合にも、平常時は物置や集会所として活用し、災害時等の非常時には、簡易トイレに変更して活用することが可能である。すなわち、平常時および非常時のいずれにおいてもコンテナボックス200の設置スペースを有効に活用することが可能となる。
【0088】
(実施の形態3)
本発明の他の実施の形態として、上述のトイレキット150を、既設の物置の改造に使用する場合について説明する。
一般に物置等の建物の床下空間(基礎や土台と床板に囲まれた空間)は、いわゆるデッドスペースとして全く活用さていない。
【0089】
そこで、本実施の形態3の場合には、たとえば、既設の物置の床板を剥がして、代わりに、上述の図5に例示したトイレキット150を設置する。
【0090】
すなわち、既設の床板を剥がして、床下空間に、汚物用ビニール袋155等を収納したトイレ用品収納箱150a、大便器151、小便器152、さらに必要に応じて消臭剤ボトル150bを配置し、便槽蓋153および便槽蓋154、床パネル156および床パネル157で隠蔽して、既設の物置の床を再構築する。
【0091】
これにより、既設の単なる物置を、災害時等の非常時におけるトイレとして有効に活用することが可能になる。改造は、既設の床板を剥がす程度の簡単な工事で済むため、改造コストが嵩むこともない。すなわち、低コストにて、既設の物置を、非常時等に使用されるトイレ兼用の物置に改造することができる。
【0092】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、物置100やコンテナボックス200は、上述の構成に限らず、土台部材110や土台部材210の部分(すなわち床下部分)にデッドスペースを有する一般の構造物に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施の形態である物置の構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態である物置の内部構成の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態である物置の屋根部分の分解組立図である。
【図4】本発明の一実施の形態である物置の基礎部分を取り出して示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態であるトイレキットの構成の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態である物置におけるトイレキットの収納状態の一例を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態である物置におけるトイレキットの収納状態の一例を示す平面図である。
【図8】本発明の一実施の形態である物置の扉を内側から見た斜視図である。
【図9】本発明の一実施の形態である物置の扉の一部を取り出して拡大した斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態である物置の設置手順の一例を説明する平面図である。
【図11】本発明の一実施の形態である物置の設置手順の一例を説明する平面図である。
【図12】本発明の一実施の形態である物置の設置手順の一例を説明する平面図である。
【図13】本発明の一実施の形態である物置をトイレとして使用する際の外観を示す斜視図である。
【図14】本発明の一実施の形態である物置をトイレとして使用する際の内部構造を示す斜視図である。
【図15】本発明の一実施の形態である物置をトイレとして使用する際の内部構造を示す断面図である。
【図16】本発明の一実施の形態である物置をトイレとして使用する際の内部構造を示す平面図である。
【図17】本発明の他の実施の形態である物置の構成例を示す斜視図である。
【図18】本発明の他の実施の形態である物置の平断面図である。
【符号の説明】
【0094】
100 物置
110 土台部材
111 便槽空間
112 基礎嵌合部
113 基礎カバー
120 側面パネル
121 パネル結合部材
122 棚板
123 支柱
130 扉
131 引き違い戸
132 引き違い戸
134 外側錠機構
135 内側錠機構
136 クレセント本体
136a 嵌合爪
136b ハンドル
136c 固定座
136d 回動軸
137 クレセント受け部
140 屋根
140a 採光開口部
141 トップライト
141a 蓄光性顔料
142 天井パネル
150 トイレキット
150a トイレ用品収納箱
150b 消臭剤ボトル
150c 手摺部材
150d トイレットペーパホルダ
151 大便器
151a 洋式便器
152 小便器
153 便槽蓋
153a 便器用開口部
154 便槽蓋
154a 便器用開口部
155 汚物用ビニール袋
156 床パネル
157 床パネル
160 物置空間
200 コンテナボックス
210 土台部材
211 便槽空間
220 側壁部
221 小窓
221a 蓄光性顔料
222 換気口
230 小型収納室
231 扉
231a ドアノブ
232 小窓
232a 蓄光性顔料
233 棚板
240 大型収納室
241 扉
250 屋根部
251 フック
900 基礎ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根部、側壁部、扉を含み第1収納空間を構成する上部構造体と、
前記上部構造体を支持するとともに、床部に隠蔽された第2収納空間を備えた下部構造体と、
前記第2収納空間に収納されたトイレキットと、
を含むことを特徴とする物置。
【請求項2】
請求項1記載の物置において、
前記屋根部は、蓄光性顔料を含む透光性のトップライトと、前記トップライトの内側に着脱自在に設けられた遮光性の天井パネルとを含むことを特徴とする物置。
【請求項3】
請求項1記載の物置において、
前記床部は、前記第2収納空間の上部に着脱自在に配置され、前記トイレキットに含まれる便器が接続される便器用開口部を備えた便槽蓋と、前記便槽蓋を覆う床板と、を含むことを特徴とする物置。
【請求項4】
請求項3記載の物置において、
便槽蓋は、大便器用の第1便槽蓋と、小便器用の第2便槽蓋とからなることを特徴とする物置。
【請求項5】
請求項1記載の物置において、
前記トイレキットは、便器、汚物用ビニール袋、を含むことを特徴とする物置。
【請求項6】
請求項1記載の物置において、
前記下部構造体は、基礎に嵌合する嵌合凹部を備えたカップ状に成形され、前記第2収納空間を構成する繊維強化プラスチック(FRP)からなることを特徴とする物置。
【請求項7】
請求項1記載の物置において、
前記扉は、前記第1収納空間の内部側から施錠可能な錠前機構を備えたことを特徴とする物置。
【請求項8】
請求項1記載の物置において、
前記上部構造体と前記下部構造体とが、搬送可能に一体に連結されたコンテナボックスからなることを特徴とする物置。
【請求項9】
請求項8記載の物置において、
前記第1収納空間が複数の独立な小室に分割されている場合、個々の前記小室の各々を独立したトイレ用の個室として機能させるための複数の前記下部構造体および前記トイレキットを含むことを特徴とする物置。
【請求項10】
便器と、汚物用ビニール袋と、既設の物置の基礎部分の空間を便槽として使用する場合に前記便器を設置するための便器用開口部を備えた蓋槽蓋と、前記蓋槽蓋を覆って前記物置の床を構成する床板と、を含むことを特徴とする物置用トイレキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−2214(P2008−2214A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174596(P2006−174596)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【特許番号】特許第3983262号(P3983262)
【特許公報発行日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(506218343)
【Fターム(参考)】