説明

甘藷挿苗機

【課題】植付け爪を長く形成すると、植付け爪の往復動に必要なスペースを広大化してしまう。
【解決手段】甘藷苗を土中に植え付ける左右一対の植付け爪20L・20Rと、植付け爪20L・02Rを側面視で往復運動させる爪往復動機構24と、植付け爪20L・20Rを開閉運動させる爪開閉機構40と、を備え、機体の走行に連動して、植付け爪20L・20Rが往復かつ開閉するように駆動される甘藷挿苗機1であって、各植付け爪20L・20Rは、畝中に突入して苗の植付け穴を形成する土中突入部20aと、土中突入部20aを爪開閉機構24より延出する開閉用揺動軸41L・41Rに接続する支持部20bと、を備え、土中突入部20aと支持部20bとはU字状に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘藷苗を畝に植え付ける甘藷挿苗機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機体の走行に連動して、左右一対の植付け爪が往復かつ開閉するように駆動される甘藷挿苗機は公知である。
特許文献1に開示される甘藷挿苗機においては、左右の植付け爪(植込爪)の開閉は、左右の各植付け爪の後端部が揺動されることにより行なわれる。
具体的には、植付け爪の開閉機構には、各植付け爪に固定される開閉用の揺動軸(左爪軸・右爪軸)が出力軸としてそれぞれ設けられると共に、左右それぞれで各揺動軸に各植付け爪の後端部が固定されている。各植付け爪は、対応する揺動軸より、若干湾曲しながらも一直線状に延出する構成である。そして、これらの揺動軸の揺動により、各揺動軸の軸心を揺動中心として、各植付け爪の土中突入側先端が円弧軌道上を揺動し、左右の植付け爪が開閉することになる。
【0003】
甘藷苗の植付け姿勢には、「船底植え」や「斜め植え」といったものがある。「船底植え」とは、船の底面の一端側形状のように、横に寝かせるように植え付けるものである。また、「斜め植え」とは、斜め方向(例えば45度方向)に沿って植え付けるものである。
【特許文献1】特開2003−70319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「船底植え」のように、苗を横に寝かせるような姿勢で受け付ける場合、それに応じて、苗の挿入に必要な植付け穴を形成する植付け爪の長さも、長くなる。
特許文献1に開示される甘藷挿苗機のように、植付け爪の開閉機構より、植付け爪が一直線状に延出する構成の場合、植付け爪を長く形成しようとすると、植付け爪の往復動に必要なスペースが広大になり、機体の大型化に繋がってしまう。
【0005】
つまり、解決しようとする問題点は、植付け爪を長く形成すると、植付け爪の往復動に必要なスペースを広大化してしまう点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、
甘藷苗を土中に植え付ける左右一対の植付け爪と、
前記一対の植付け爪を側面視で往復運動させる爪往復動機構と、
前記一対の植付け爪を開閉運動させる爪開閉機構と、
を備え、
機体の走行に連動して、前記一対の植付け爪が往復かつ開閉するように駆動される甘藷挿苗機であって、
前記各植付け爪は、土中に突入して前記苗の植付け穴を形成する土中突入部と、土中突入部を前記爪開閉機構の動力出力部に接続する支持部と、を備え、
前記土中突入部と前記支持部とはU字状に接続されるものである。
【0008】
請求項2においては、
前記各植付け爪と前記各動力出力部とは、左右それぞれ間座部材を介して連結される、ものである。
【0009】
請求項3においては、
前記爪往復動機構は、この爪往復動機構の駆動軸の回転運動を、前記植付け爪の往復運動に変換するクランク機構とし、
前記植付け爪の往復運動により、この植付け爪の先端が、土中で、前記駆動軸を通過する鉛直線を跨いで前後動する、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、植付け爪の往復動に必要なスペースを広大化することがない。
【0012】
請求項2においては、植付け爪の爪開閉機構への取付・交換が容易である。
【0013】
請求項3においては、苗を土中で横に寝かせるように植え付けることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
これより、本発明の一実施の形態である甘藷挿苗機1を、図面を用いて説明する。
【0015】
まず、図1、図2を用いて、甘藷挿苗機1の構成を説明する。
甘藷挿苗機1は、畝に沿って走行しながら、自動的に甘藷苗(以下苗)を畝中に植え付ける歩行型の自走式作業機であり、畝間の谷部17を走行する左右一対の前輪2・2および後輪3・3と、畝の上方に位置する走行機体4と、を備えている。
【0016】
走行機体4のメインフレームは、前側のエンジンフレーム5と、中央部のミッションケース6と、後側のハンドルフレーム7とを、前後方向に連結固定して構成されており、このメインフレーム上に各種装置が支持されている。
走行機体4には、前記各種装置として、走行方向の前方より後方に向けて、畝ガイド装置8、前輪支持装置9、エンジン10、後輪支持装置11、前記ミッションケース6、畝高さ検出装置16、苗搬送台12、植付け装置13、押圧装置14、運転操作部15、が備えられている。
なお、これらの各種装置において、ミッションケース6より前側に配置される装置はエンジンフレーム5に支持され、ミッションケース6より後側に配置される装置はハンドルフレーム7に支持されている。
【0017】
畝ガイド装置8は、畝に沿って走行する甘藷挿苗機1の走行方向を案内するための装置であり、畝の左右側面(斜面)に当接させるための畝ガイドローラ8a・8aを左右一対備えている。これらの畝ガイドローラ8a・8a間に畝を挟み込み、または、斜面に当接させながら転動させて、この状態で甘藷挿苗機1を走行させることで、甘藷挿苗機1を運転操作により方向制御することなく、畝に沿って走行させることが可能である。
【0018】
前輪支持装置9には、エンジンフレーム5に位置固定されている前輪支持軸9aと、前輪支持軸9a回りに回転自在で、各前輪2を支持する前輪アーム9b・9bと、が備えられている。
後輪支持装置11も、前輪支持装置9と同様の構成であり、ミッションケース6に位置固定されている後輪支持軸11aと、後輪支持軸11a回りに回転自在で、各後輪3を支持するチェーンケース11b・11bと、が備えられている。
なお、後輪支持軸11aの内部には、後輪3・3の駆動軸が内蔵されており、この駆動軸の回転駆動が、左右それぞれで、チェーンケース11b内のチェーンを介して、後輪3に伝達される。
【0019】
走行機体4は次の構成により、前輪2・2および後輪3・3に対する高さ位置の調整、つまり畝上面に対する高さ位置の調整が可能となっている。
まず、前輪アーム9bとチェーンケース11bとは図示せぬ連結軸を介して連結されており、前輪アーム9bおよびチェーンケース11bが平行リンクに構成されている。そして、前輪アーム9bまたはチェーンケース11bを回転させることで、前輪2・2および後輪3・3に対する走行機体4の上下高さが可変である。
本実施の形態では、チェーンケース11bを走行機体4に対して回転させる手段として、エンジンフレーム5とチェーンケース11bとを連結して伸縮させるアクチュエータ19が設けられている。このアクチュエータ19を伸縮させることにより、前記平行リンクの作動を介して、前輪2・2および後輪3・3に対して、走行機体4が上下動する。
【0020】
走行機体4の上下動は、前記畝高さ検出装置16による畝高さの検出に基づいて行なわれるものである。
前記畝高さ検出装置16には、畝上面18と接触するセンサーローラ16aと、センサーローラ16aを支持しエンジンフレーム5に回転自在に設けられるセンサーアーム16bと、が備えられている。
このセンサーアーム16bの傾斜角度は、エンジンフレーム5と畝上面18との離間距離に関する情報を与えるものである。そして、このセンサーアーム16bの傾動に応じて、油圧バルブのスプールが押し引きされて、油圧式とした前記アクチュエータ19の作動が制御され、エンジンフレーム5と畝上面18との離間距離が一定に保たれるように、走行機体4の高さ位置が制御される。
また、左右一方のチェーンケース11bを他方のチェーンケース11bに対して回転させる(傾斜させる)アクチュエータ(図示せず)が、前記アクチュエータ19とは別に設けられており、甘藷挿苗機1は、左右傾斜制御も可能に構成されている。
【0021】
図1、図3を用いて、苗搬送台12を説明する。
苗搬送台12は、図示せぬ苗収容ケースに収容されている苗を、植付け装置13に備える植付け爪20L・20Rに、自動的に搬送して供給する装置である。
苗搬送台12には、前後方向で左回りに回転する帯状の搬送ベルト21が備えられると共に、この搬送ベルト21上には、スポンジ等の弾性体で構成した一対の樹脂材が対向配置されてなる保持部22が、苗を保持する手段として、等間隔に配置されている。
搬送ベルト21の上面は、前記苗収容ケースから取り出した苗を保持させる載置部であり、搬送ベルト21の下端位置は、植付け爪20L・20Rに苗を引き継ぐ受渡し位置21dである。
【0022】
苗搬送台12は、走行機体4のメインフレーム(エンジンフレーム5、ミッションケース6、ハンドルフレーム7)とは別体で構成されており、このメインフレームを主とする本体の組立後に、取り付けることが可能である。苗搬送台12の配設位置は、ミッションケース6の後方かつハンドルフレーム7の上方位置である。
この苗搬送台12には、ミッションケース6のPTO軸50からの動力が伝達される構成であり、後述の植付け装置13と連動して、搬送ベルト21が間欠的に回転駆動されるように構成されている。
また、この苗搬送台12は、前記メインフレームに支持される構成であるが、前記PTO軸50の接続部を解除するだけで、取り外しが可能に構成されており、本体への着脱が容易である。
【0023】
また、苗搬送台12は、苗搬送台12に供給するための苗が収容される苗箱51および補助苗箱52・52を取り付け可能に構成されている。
苗搬送台12を構成するフレームの後端中央には平面視U字状の苗箱載置台53が固定され、前記フレームの前端の左右それぞれに、同じく平面視U字状の補助苗箱載置台54・54が固定されている。
苗箱載置台53に苗箱51を載置して支持し、各補助苗箱載置台54に補助苗箱52を載置して支持することが可能である。
本実施の形態では、苗箱51はトレイ状の内部深さが浅い容器であり、補助苗箱52は洗濯カゴのように、(平面視での)縦横長さより高さが低い(内部深さが浅い)容器である。
作業者は、左右の一方、もしくは両方において、ハンドルフレーム7の側方かつ苗搬送台12の後方の作業位置で、甘藷挿苗機1の走行に随伴しながら苗搬送台12へ苗を供給する。ここで、左右の作業位置にいる作業者は、作業位置に最も近い、苗搬送台12の後側に配置される苗箱51より苗を取り出して、苗搬送台12へ苗を供給する。また、この手元(苗搬送台12の後側)の苗箱51が空になった場合は、苗搬送台12の前側に配置される補助苗箱52より苗を補給して、作業を継続する。
【0024】
図4、図5、図6を用いて、植付け装置13を説明する。
植付け装置13は、左右一対の植付け爪20L・20Rと、植付け爪20L・20Rを受渡し位置21dから畝中まで往復運動させる爪往復動機構24と、植付け爪20L・20Rを開閉させる爪開閉機構40と、を備えている。
【0025】
植付け爪20L・20Rは、苗搬送台12の受渡し位置21dより受け渡された苗を畝中に移植するものであり、左右の植付け爪20L・20Rの開閉により、苗の保持や、保持した苗の解放が可能となっている。
前記往復運動の最上位置は受渡し位置21dであり、この受渡し位置21dにある苗を、植付け爪20L・20Rが挟み込んで掴み取り、畝中にある前記往復運動の最下位置で、植付け爪20L・20Rが苗を解放し、植付け爪20L・20Rが上方へ退くことで、畝中への苗の移植が行なわれる。
【0026】
前記爪往復動機構24は、植付け駆動軸25の回転運動を、苗搬送台12から畝中に至る植付け爪20L・20Rの往復運動に変換する、クランク機構である。この植付け駆動軸25には、ミッションケース6のPTO軸からの動力が伝達される構成である。
より詳しくは、ミッションケース6および植付け装置13の左右一側には、ミッションケース6から植付け装置13に至る伝動ケース55(図2に図示)が配置され、前記PTO軸からの動力が、伝動ケース55内に配置されるチェーン等よりなる駆動伝達機構を介して、植付け装置13の植付け駆動軸25に伝達される構成である。
【0027】
図5、図6を用いて、爪往復動機構24を説明する。
爪往復動機構24には、植付け駆動軸25と一体的に回転する第一リンクアーム26と、姿勢調整軸27に回動自在に設けられる第二リンクアーム28と、が備えられている。
植付け駆動軸25は、自転(自らの軸心周りの回転)は可能であるが、ハンドルフレーム7に位置固定される構成である。また、姿勢調整軸27は、ハンドルフレーム7に位置固定される構成である。
第一リンクアーム26の先端には、第一支点軸29が固定されると共に、第二リンクアーム28の先端には、第二支点軸30が固定されている。
そして、植付け爪20L・20Rを支持する爪支持ケース31が、第一支点軸29および第二支点軸30により、二点支持される。
【0028】
前記爪支持ケース31は、より詳しくは、次の三部分、開閉機構ケース37、ボス38、姿勢調整板39を、略一直線状に順に連結固定してなっている。
開閉機構ケース37には、植付け爪20L・20Rを開閉運動させる爪開閉機構40が内蔵されている。ボス38には、第一支点軸29に回動自在に支持させるためのベアリングが内蔵されている。また、姿勢調整板39には、第二支点軸30が取り付けられる。
【0029】
以上構成において、第一支点軸29から第二支点軸30までの距離は常に一定である。また、植付け駆動軸25から第一支点軸29までの距離や、姿勢調整軸27から第二支点軸30までの距離も一定である。
なお、本明細書において、軸間の距離とは、軸心間の距離のことを意味する。
【0030】
このため、植付け駆動軸25の回転により、爪支持ケース31が植付け駆動軸25周りに回転すると共に、爪支持ケース31の姿勢が変化する。
第一支点軸29から第二支点軸30までの距離が一定のため、爪支持ケース31の公転(植付け駆動軸25周りの回転)に伴って、第二リンクアーム28が姿勢調整軸27周りの円弧軌道上を往復運動する。つまり、第一支点軸29と第二支点軸30との相対位置が変化する。
このため、第一支点軸29および第二支点軸30により二点支持される爪支持ケース31の姿勢が変化する。爪支持ケース31の姿勢の変化は、植付け爪20L・20Rの姿勢の変化を意味する。
【0031】
以上のようにして、植付け駆動軸25の回転により、爪往復動機構24を介して、植付け爪20L・20Rの先端の軌跡が三日月状体の外周の経路(以下、三日月状経路R1)に沿って、往復運動する。
なお、図4に示す三日月状経路R1は、甘藷挿苗機1本体を停止した状態で植付け爪20L・20Rを駆動させたものであり、本体を走行しながら植え付ける移動経路とは、異なるものである。
【0032】
図7に示すように、本体を走行しながら植え付ける、植付け爪20L・20Rの移動経路は、移動経路の両端が離間すると共に、移動経路の中途部の一点で交わった、α字状の経路(以下、α字状経路R2)となる。
これは、植付け爪20L・20Rの運動が、前記爪往復動機構24による運動(三日月の外周状の往復運動)と、甘藷挿苗機1の走行による運動(直線運動)とを、合成したものとなるためである。
【0033】
ここで、α字状経路R2の交点位置Pは、植付け作業時における甘藷挿苗機1の走行速度を変化させることにより、上下するものである。そして、畝上面18の付近に、交点位置Pが位置するように、甘藷挿苗機1の走行速度が設定されている。このようにして、植付け穴の畝上面18での開口幅が、小さくなるようにしている。
また、マルチフィルムの敷設された畝への植付けにおいては、植付け穴の開口幅(畝表面の開口幅)が小さくなるにつれ、植付けに際してのマルチフィルムの切断幅が小さくて済む。特に、植付け爪20L・20Rの畝への突入位置と、畝からの退出位置とが略一致する場合は、植付け爪20L・20Rの先端に設ける切断刃33a(後述)により、突入時に植付け穴の表面となる部位のマルチフィルムを切断しておけば、退出時にも問題がない。したがって、植付け爪20L・20Rとマルチフィルムとの引っ掛かりを防止すべく、マルチフィルムの切断装置を別設するなどの必要がない。
【0034】
以上構成により、植付け爪20L・20Rにより、植付け穴の形成が畝の内部でのみ行なわれて、畝上面18を前後方向に切り裂くことがなく、畝上面18での植付け穴の開口幅が、最小化される。
したがって、植付け爪20L・20Rによる苗移植が行なわれた状態で、苗が土中より露出することがなく、苗の植付けが確実となっている。
【0035】
図4を用いて、植付け爪20L・20Rの形状を説明する。
植付け爪20L・20Rは左右対称の形状であるので、左側の植付け爪20Lについて説明する。
側面視において、植付け爪20Lの形状は、先端側の土中突入部20aと後端側の支持部20bとをU字状に接続してなるものであり、土中突入部20aは支持部20bよりも三倍程度長く形成されている。
土中突入部20aは、第一リンクアーム26の回転に伴って畝中へ突入する部分である。一方、支持部20bは爪支持ケース31内のリンクに接続される部分であり、土中突入部20aを支持する。
【0036】
また、土中突入部20aの先端部には、苗を挟み込むための当接板33が固設されている。
この当接板33の端部には、マルチフィルムを切り裂くための切断刃33aが形成されており、この切断刃33aが、植付け爪20L・20Rの畝中への突入時に、植付け穴の表面に位置するマルチフィルムを切断する。
【0037】
土中突入部20aの形状は、長手方向の二ヶ所で折曲された折れ線形状であり、全体として円弧状に湾曲した形状となっている。
ここで、前記α字状経路(植付け爪20L・20Rの先端の移動経路)は、受渡し位置21dから畝中の最下点に至る往路と、この最下点から受渡し位置21dに戻る復路とが、共に円弧状に湾曲した経路となっている。
このため、土中突入部20aを湾曲させることで、植付け爪20L・20Rの移動経路に沿って、植付け爪20L・20Rの全体が通過し、植付け穴を必要以上に拡大することがない。
【0038】
図5、図6、図8、図9を用いて、前記爪開閉機構40を説明する。
爪開閉機構40は、前記爪往復動機構24による植付け爪20L・20Rの移動に連動して、植付け爪20L・20Rを開閉運動させる機構であり、前記爪支持ケース31内に設けられている。
爪開閉機構40は、植付け爪20L・20Rを、その往復運動の最上位置で開から閉状態に移行させて、苗搬送台12より苗を掴み取らせると共に、前記往復運動の最下位置で閉から開状態に移行させて、畝中に苗を解放させるものである。
【0039】
図5、図6に示すように、爪開閉機構40には、動力の入力部としてレバー36が設けられると共に、動力の出力部として左右一対の開閉用揺動軸41L・41Rが設けられている。
以下で詳しく説明するが、入力部のレバー36はカムを利用して駆動される構成であり、出力部の開閉用揺動軸41L・41Rの回転方向を反転させることにより植付け爪20L・20Rの開閉が切換えられるものである。
【0040】
前記第一支点軸29近傍の開閉機構ケース37に回転軸44が左右方向に設けられ、前記レバー36は、前記爪支持ケース31内で、回転軸44周りに回転自在に設けられる。該レバー36の中央部が回転軸44に枢支され、後方の一端が第一支点軸29に固定される開閉カム32の外周面に当接可能に設けられている。また、開閉機構ケース37には、レバー36を、第一支点軸29に固定される開閉カム32に当接する向きに付勢するスプリング43(図6、図8に図示。後述)が設けられており、レバー36は常時、第一支点軸29に固定される開閉カム32に当接する状態に保たれる。
【0041】
開閉カム32に当接するレバー36は、開閉カム32の外径変化に応じて、その回転位置が変化し、植付け爪20L・20Rの開閉が切り替えられると共に、開放時の開度が変化する。
植付け爪20L・20Rの開閉および開度は、「閉」の状態と、苗を保持する「小さく開」の状態と、保持している苗を解放する「大きく開」の三段階で変化するものとされており、この三段階に対応するように、前記開閉カム32の外周面は、その半径が変化するように形成されている。
【0042】
開閉カム32は第一支点軸29に固設される構成であり、第一リンクアーム26の回転に伴って、植付け駆動軸25周りに公転し、側面視での姿勢(回転位置)が変化する。
一方、爪支持ケース31の姿勢も、第一リンクアーム26の回転に伴って変化するが、この爪支持ケース31の姿勢変化の運動は、開閉カム32の回転運動とは、相対的に異なる運動である。
このため、爪支持ケース31に備える前記レバー36に、開閉カム32の外周面が当たる位置が、植付け駆動軸25の回転に応じて変化する。
そして、植付け駆動軸25の回転に応じて、レバー36が回転軸44周りで揺動することになる。このレバー36の揺動運動に応じて、植付け爪20L・20Rの開閉運動が行なわれる。
【0043】
図6、図8に示すように、開閉用揺動軸41L・41Rは、自転(自らの軸心周りの回転)のみ可能な状態で、爪支持ケース31内に位置固定されている。
開閉用揺動軸41Rには、レバー36の前方先端部(反開閉カム32側端部)に当接可能な右アーム45が固定されている。この右アーム45は、開閉機構ケース37に取り付けられている付勢機構60(図8のみ)により、レバー36が前記カム32に当接する向きに、レバー36を押圧する。この向きは、図8における下向きであり、右アーム45が開閉用揺動軸41Rに接近する向きである。
【0044】
図8に示すように、付勢機構60には、右アーム45に一端が当接するように配置されるスプリング43と、このスプリング43の他端位置を開閉機構ケース37に対して位置決めする押しボルト61と、
押しボルト61を開閉機構ケース37に固定するためのロックナットとが、備えられている。また、付勢機構60には、スプリング43および押しボルト61を挿通して開閉機構ケース37に固定されるボス62も備えられている。ここで、前記ロックナットは、押しボルト61と嵌め合う一対のナット63・64よりなるが、ナット63はボス62に固定されており、ナット64は押しボルト61の軸上を移動自在であり、ナット64をナット63側に締め付けることで、押しボルト61の固定が行なわれる。
ここで、押しボルト61の固定位置を右アーム45側に移動させるにつれ、スプリング43が縮められてその付勢力が大きくなる。
【0045】
また、この右アーム45には、開閉用揺動軸41L・41Rの中間位置に、開閉用支軸46が前方に突出して固定されている。
一方、開閉用揺動軸41Lには、開閉用支軸46を挿通可能な挿通孔47aが形成された左アーム47が、右アーム45と平行に固定されている。この挿通孔47aは長孔であり、挿通孔47aの形成方向に沿って、挿通孔47a内で開閉用支軸46を移動させることが可能である。
【0046】
左右の開閉用揺動軸41L・41R同士は平行な位置に配置され、開閉用揺動軸41Lと回転軸44とは直交する位置に配置されているが、これらの三つの軸は皆同一平面上に配置されている。
そして、前記同一平面に対する直交方向で、レバー36と右アーム45とが当接し、右アーム45上の開閉用支軸46と左アーム47とが当接する。
【0047】
以上構成により、レバー36の回転軸44周りの回転に応じて、開閉用揺動軸41Rおよび右アーム45が回転し、右アーム45に固定された開閉用支軸46の開閉用揺動軸41R周りの回転に応じて、開閉用揺動軸41Lおよび左アーム47が回転する。
また、開閉用揺動軸41R・41Rは連動する構成であるが、開閉用揺動軸41Rの回転方向と、開閉用揺動軸41Lの回転方向とは、逆向きとなっており、植付け爪20L・20Rが共に逆方向に揺動する。
なお、開閉用支軸46は開閉用揺動軸41R周りに回転するので、開閉用支軸46と開閉用揺動軸41Lとの軸心間距離は変化するが、前記挿通孔47aが長孔のため、右アーム45と左アーム47との連動が保たれている。
【0048】
ここで、レバー36と右アーム45との当接は、右アーム45を付勢する付勢機構60により保たれており、レバー36に右アーム45が常時連動する。また、右アーム45と左アーム47との連動も、開閉用支軸46が挿通孔47a内で左アーム47に保持されているため、常時保たれている。
このため、開閉カム32によるレバー36の回転位置の三段階の変化に応じて、開閉用揺動軸41L・41Rの回転位置が変化する。なお、三段階の変化とは、前述したように、植付け爪20L・20Rの開閉および開度に係る前記「閉」、「小さく開」、「大きく開」の三段階である。
加えて、付勢機構60において、押しボルト61の固定位置を変更することで、付勢機構60(スプリング43)が右アーム45を付勢する力が変化し、植付け爪20L・20Rの開閉具合が調節される。
【0049】
図5、図6、図9に示すように、開閉用揺動軸41L・41Rの先端部(反爪支持ケース31側端部)には、それぞれ、間座部材42・42を介して、植付け爪20L・20Rが取り付けられている。
このため、植付け爪20L・20Rの爪開閉機構40への取付・交換が容易に行なわれるものとなっている。ここで、開閉用揺動軸41L・41Rは、爪開閉機構40の一部である。
【0050】
図4、図8、図9に示すように、植付け爪20L・20Rは、その後端部が開閉用揺動軸41L・41Rと平行であると共に、その先端部は開閉用揺動軸41L・41Rに対して直交するものとなっている。特に、土中突入部20aの大部分は、開閉用揺動軸41L・41Rに対して直交する位置関係にある。
このため、開閉用揺動軸41L・41Rの自転に応じて、左右の植付け爪20L・20Rがそれぞれ開閉用揺動軸41L・41R周りに回転し、開閉用揺動軸41L・41Rの自転方向を反転させることで、植付け爪20L・20Rの回転方向も反転する。
ここで、前述したように、互いに連動する開閉用揺動軸41L・41Rの回転方向が逆であるので、開閉用揺動軸41L・41Rの自転方向の切換えに応じて、植付け爪20L・20Rの開閉が行なわれることになる。
【0051】
より詳しくは、レバー36への開閉カム32の外周の当接位置の変化に応じて、レバー36の回転軸44周りの回転位置が変化して、左右の開閉用揺動軸41L・41Rの自転位置が変化し、植付け爪20L・20Rの開閉や開度の大きさが変化する。
【0052】
図4を用いて、植付け爪20L・20Rと爪開閉機構40とのレイアウトについて説明する。
側面視において、植付け爪20L・20Rの形状は、先端側の土中突入部20aと、後端側の支持部20bとがU字状に接続されるものである。植付け爪20L・20Rそれぞれの各支持部20bは、左右の各開閉用揺動軸41L・41Rに、間座部材42・42を介して連結固定されている。
また、開閉用揺動軸41L(および開閉用揺動軸41R)の延長線A上に、植付け爪20L(および植付け爪20R)の土中突入部20aが重なるものとなっている。本実施の形態では、左右において、各土中突入部20aと各延長線Aとは、側面視(図3)だけでなく正面視(図9)でも重複するが、側面視においてのみ重複する構成であれば、後述のコンパクト化の効果は得られるものである。
【0053】
つまり、植付け爪20L・20Rは、まず植付け時の移動方向の逆側へ延出し、その後U字状に屈曲して、植付け時の移動方向の正側へ延出する構成である。前記逆側へ延出する部分が支持部20bであり、前記正側へ延出する部分が土中突入部20aである。ここで、植付け時の移動方向とは、受渡し位置21dから畝中の最下点に向かう前記往路方向を意味する。
側面視において、前記延長線Aを基準として、移動方向の逆側に、支持部20bの全部と、土中突入部20aの後側の一部とが位置し、移動方向の正側に、土中突入部20aの先端側の一部が、位置するものとなっている。
【0054】
このため、爪開閉機構より土中突入部を直接突出させる場合よりも、爪開閉機構と植付け爪とを合わせたスペースがコンパクトとなる。
したがって、植付け爪の往復動に必要なスペースを広大化することがない。
【0055】
また、植付け爪20L・20Rの往復運動により、植付け爪20L・20Rの先端が、畝中(土中)で植付け駆動軸25を通過する鉛直線Bを跨いで前後動するものとなっている。
ここで、クランク機構である爪往復動機構24において、植付け爪20L・20Rの往復運動の軌跡は、駆動源たる植付け駆動軸25、第一支点軸29および第二支点軸30の位置関係により定まるものである。特に、植付け爪20L・20Rの先端の移動軌跡は、爪往復動機構24の構成だけでなく、植付け爪20L・20Rの形状(湾曲形状など)によっても、影響を受けるものである。つまり、爪往復動機構24の構成や植付け爪20L・20Rの形状を適宜設定することにより、植付け爪20L・20Rの先端の移動軌跡が定まるものである。
【0056】
このため、船底植えのように、土中で横に寝かせるように植え付ける場合にも適した植付け穴を、土中に形成することができる。
【0057】
本発明の甘藷挿苗機をまとめる。
第一の発明たる甘藷挿苗機は、甘藷苗を土中に植え付ける左右一対の植付け爪と、前記一対の植付け爪を側面視で往復運動させる爪往復動機構と、前記一対の植付け爪を開閉運動させる爪開閉機構と、を備え、機体の走行に連動して、前記一対の植付け爪が往復かつ開閉するように駆動される甘藷挿苗機である。
前記各植付け爪は、土中に突入して前記苗の植付け穴を形成する土中突入部と、土中突入部を前記爪開閉機構の動力出力部に接続する支持部と、を備え、前記土中突入部と前記支持部とはU字状に接続されるものである。
【0058】
本実施の形態では、爪開閉機構の動力出力部とは、爪支持ケース31より突出する開閉用揺動軸41L・41Rであり、左右の開閉用揺動軸41L・41Rにそれぞれ、間座部材42を介して、植付け爪20L・20Rが固定される。
【0059】
このため、爪開閉機構より土中突入部を直接突出させる場合よりも、爪開閉機構と植付け爪とを合わせたスペースがコンパクトとなる。
したがって、植付け爪の往復動に必要なスペースを広大化することがない。
【0060】
第二の発明たる甘藷挿苗機は、第一の発明において、次の構成としたものである。
前記各植付け爪と前記各動力出力部とは、左右それぞれ間座部材を介して連結されるものである。
【0061】
このため、植付け爪の爪開閉機構への取付・交換が容易である。
【0062】
第三の発明たる甘藷挿苗機は、第一または第二の発明において、次の構成としたものである。
前記爪往復動機構は、この爪往復動機構の駆動軸の回転運動を、前記植付け爪の往復運動に変換するクランク機構とし、前記植付け爪の往復運動により、この植付け爪の先端が、前記駆動軸を通過する鉛直線を跨いで前後動する、ものである。
【0063】
本実施の形態では、前記駆動軸は植付け駆動軸25である。
また、クランク機構である爪往復動機構24における、駆動源たる植付け駆動軸25、第一支点軸29および第二支点軸30の位置関係と、植付け爪20L・20Rの形状と、を適宜設定することにより、植付け爪20L・20Rの先端の移動軌跡が、植付け駆動軸25を通過する鉛直線Bを前後で跨ぐものとなっている。
【0064】
このため、植付け爪先端が前記駆動軸を跨がない場合と比べて、土中に前後方向に沿って長い植付け穴が形成される。
したがって、苗を土中で横に寝かせるように植え付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】甘藷挿苗機の全体側面図である。
【図2】甘藷挿苗機の全体平面図である。
【図3】苗搬送台および苗箱の配置構成を示す甘藷挿苗機の全体平面図である。
【図4】植付け装置の構成を示す側面図である。
【図5】爪往復動機構および爪開閉機構を示す側面図である。
【図6】爪往復動機構および爪開閉機構を示す平面図である。
【図7】地上より見た植付け爪の移動経路を示す側面図である。
【図8】爪開閉機構を示す正面図である。
【図9】植付け爪を示す正面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 甘藷挿苗機
20L・20R 植付け爪
20a 土中突入部
20b 支持部
24 爪往復動機構
40 爪開閉機構
42 間座部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘藷苗を土中に植え付ける左右一対の植付け爪と、
前記一対の植付け爪を側面視で往復運動させる爪往復動機構と、
前記一対の植付け爪を開閉運動させる爪開閉機構と、
を備え、
機体の走行に連動して、前記一対の植付け爪が往復かつ開閉するように駆動される甘藷挿苗機であって、
前記各植付け爪は、土中に突入して前記苗の植付け穴を形成する土中突入部と、土中突入部を前記爪開閉機構の動力出力部に接続する支持部と、を備え、
前記土中突入部と前記支持部とはU字状に接続される、
ことを特徴とする甘藷挿苗機。
【請求項2】
前記各植付け爪と前記各動力出力部とは、左右それぞれ間座部材を介して連結される、
ことを特徴とする請求項2に記載の甘藷挿苗機。
【請求項3】
前記爪往復動機構は、この爪往復動機構の駆動軸の回転運動を、前記植付け爪の往復運動に変換するクランク機構とし、
前記植付け爪の往復運動により、この植付け爪の先端が、土中で、前記駆動軸を通過する鉛直線を跨いで前後動する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の甘藷挿苗機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−166734(P2006−166734A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360364(P2004−360364)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】