生産順序再計画システム、生産順序再計画装置及び方法
【課題】遅延車両など、予め計画された生産計画順序の遵守が不可能となった車両が発生した場合に、遅延車両を考慮した生産計画順序を再計画できるようにする。
【解決手段】修正作業工程へ投入される車両を検出する車両通過検知装置4と、車両の修正作業の所要時間が入力される修正作業所要時間入力装置2A、2Bと、生産順序再計画装置1とを備え、生産順序再計画装置1が車両通過検知装置4から修正作業工程へ投入される車両を検出したとの通知を受けると、修正作業所要時間入力装置2A、2Bから入力された修正作業所要時間を基に、組立工程における車両生産順序を再計画する。
【解決手段】修正作業工程へ投入される車両を検出する車両通過検知装置4と、車両の修正作業の所要時間が入力される修正作業所要時間入力装置2A、2Bと、生産順序再計画装置1とを備え、生産順序再計画装置1が車両通過検知装置4から修正作業工程へ投入される車両を検出したとの通知を受けると、修正作業所要時間入力装置2A、2Bから入力された修正作業所要時間を基に、組立工程における車両生産順序を再計画する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多品種混合生産ラインにおいて、計画された生産計画順序の遵守が不可能となった車両が発生した場合に、生産順序の再計画を実行する生産順序再計画システム、生産順序再計画装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の生産ラインなどでは、複数の車種を1つのラインで生産できる、多品種混合生産を行っている。このような多品種混合生産では、車種によって作業員の作業負荷が異なる。そのため、効率的な生産を実施するために、車種毎に異なる作業負荷を基に、全体の作業負荷の平準化を目指した生産計画が立てられている。例えば、四輪駆動(4WD:four-wheel drive)等の作業負荷の高い車種は、続けて3台以上はラインに投入しないなどの制約条件を考慮した順番になるよう計画されている。
一般的に、自動車は車体工程・塗装工程・組立工程などの工程を順に経て生産されているが、これらの工程全体を通して、予め計画された車両の生産順序に基づいて作業が行われている。そのため、生産計画順の遵守が重要となっている。
【0003】
また、自動車生産ラインの部品在庫管理においても、効率的な部品供給のために、生産計画に同期させた部品供給を行っている。例えば、車体に部品を組み付ける組立工程に対しては、組立工程で使用する組付け部品を生産計画に同期して組立ラインへ運搬している。そのため、前の工程から投入される車体が、計画された順番の通りでない場合、既に組立ラインへ供給されていた組付け部品を別に管理する必要がある。例えば、塗装工程において塗装のムラなどの品質不良が発生し、修正作業が必要になった場合、生産計画順序の遵守ができなくなり、次の組立工程において生産計画順序に沿った車両投入ができなくなる場合がある。このような場合は、修正作業を行う車両より後の車両が先に組立工程へ投入され、修正作業を行う車両が遅延することになり、組立工程における部品管理にも影響が出る。
このように、特に組立工程においては、立案された生産計画に基づいて組立ラインへの組付け部品の供給が行なわれるという点から、生産計画順の遵守が強く求められている。
【0004】
従来、このような場合は、作業員が修正作業を行うべき遅延車両の状況を管理し、生産計画順序を調整していた。具体的には、自動車生産ラインにおいて、塗装工程と組立工程との間に複数の並列ラインを持つストレージを設け、ストレージから組立工程への車両の搬出順序を調整することで、塗装工程において崩れた生産計画順序を調整していた。
【0005】
特許文献1には、組立工程の組立作業負荷の平準化などを考慮したストレージ搬出計画決定ロジックを用いた、多品種混合生産ラインにおける投入品種決定方式の例についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−74559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された従来技術では、生産計画順序を基準として複数の制約条件に重みを付け、重み計算することで最適なストレージ搬出順序を決定している。制約条件としては、車両搬出間隔台数制約(同一車種の間には数台の異なる車種を挟み、間隔をあけなければならない制約)や、連続台数制約(同一車種の連続搬出が可能な台数の上限)、在庫部品の割り当て、オフライン期限(車両の製造が完了しなくてはいけない期限)などがある。
【0008】
しかし、従来のストレージ搬出順序は、ストレージへの車両搬入に合わせて漸次的に搬出車両を決定していくため、搬出順序が決定されるのは数台先までである。そのため、生産計画順序から遅れた車両が、どの程度生産計画順序から遅れて搬出されるのか判断できなかった。
【0009】
一方、遅延した車両のストレージへの搬入は、一般車両(遅延していない車両)よりも早く搬出することを目的として、レーン搬出までの距離が短い、即ち、在籍車両が少ないといった搬出優位なレーンへの搬入を行っていた。
【0010】
しかし、上記従来のストレージ搬出計画決定ロジックにおいては、遅延車両を一般の車両と区別して処理するなどの考慮がされていなかったため、遅延車両を優先的にストレージから搬出するようなロジックはなかった。このため、遅延車両がオフライン期限までストレージ搬出されない可能性があった。遅延車両の搬出ができず、オフライン期限に達してしまった場合は、強制的に組立工程へ搬出する必要があった。
その結果、ストレージから組立工程へ自動的に車両を搬出する自動搬出システムを停止し、車両搬出間隔台数制約や連続台数制約などの制約条件を無視して組立工程へ投入しなくてはならなかった。
このように、従来は、遅延車両の発生が組立工程における作業員の負担の増加となり、それが、生産工程全体の作業効率の低下につながり、効率化の妨げとなっていた。
【0011】
また、組立工程においては、車両の遅延時間が予測できないため、作業員が、生産計画順序に同期してラインに供給されていた当該車両の組付け部品を一端ラインの外に置き、仕掛かり部品として個別に管理する必要があった。更に、その部品を置くためのスペースも必要になっていた。
このように、遅延車両の発生は、ラインに供給される組付け部品の運搬計画や、既にラインサイドへ供給された部品の管理などに影響を与え、作業員の負荷を増大させていた。このような状況を受け、車両生産の効率化のため、遅延車両の発生時に、組立工程における車両生産順序を再計画し、再計画された車両生産順序に基づいてストレージから組立工程のラインへ車両の搬出が行われることが望まれていた。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、遅延車両など、予め計画された生産計画順序の遵守が不可能となった車両が発生した場合に、遅延車両を考慮した生産計画順序を再計画できるようにする。これにより、その後の工程における車両生産への影響を最小限にし、車両生産の効率化を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数の車種を同一ラインで生産するラインを有し、予め計画された車両生産順序に基づいて複数の工程により車両を生産する車両生産ラインにおいて、予め計画された車両生産順序の通りに車両を投入できなくなった場合に、車両生産順序を再計画する生産順序再計画システムである。本発明の車両生産ラインには、車体に対する作業を行う塗装工程と車体に部品を組み付ける組立工程との間に、品質検査を実施する工程と、品質検査の結果、品質不良と判定された車両に対して修正作業を実施する工程を有す。また、塗装工程と修正作業工程との合流工程から組立工程へ車両を投入する前に、車両を一時待機させるための複数の並列レーンを持つストレージ工程を備える。本発明は、上記車両生産ラインにおいて、修正作業を実施するため、予め計画された車両生産順序の通りに組立工程へ車両を投入できなくなった場合に、組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画システムである。本発明における生産順序再計画システムには、修正作業工程へ投入される車両を検出する車両通過検知装置と、修正作業工程へ投入される車両の修正作業の所要時間が入力される修正作業所要時間入力装置とを備える。そして、車両通過検知装置から修正作業工程へ投入される車両を検出したとの通知を受けると、修正作業所要時間入力装置から入力された修正作業所要時間を基に、組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画装置とを備えるものである。
【0014】
また、本発明による生産順序再計画装置には、生産ラインに設けた通過ポイント毎に定義された車両の通過時間間隔を記憶する車両通過時間間隔情報記憶部と、塗装工程の車両生産順序を記憶する塗装工程車両生産順序記憶部と、修正作業所要時間入力装置から入力された修正作業所要時間を記憶する修正作業所要時間記憶部とを備える。更に、車両通過時間間隔と、塗装工程車両生産順序と、修正作業所要時間を基に、修正作業実施車両の生産ラインへの再投入位置を予測する修正車両ライン再投入位置予測部と、修正車両ライン再投入位置予測部により予測された修正作業実施車両の再投入位置と塗装工程車両生産順序を基に、ストレージ工程へ搬入する順序を計画するストレージ搬入順序計画部と、計画されたストレージ搬入順序を基に、組立工程の生産順序を再計画する組立工程生産計画順序計画部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遅延車両が発生した場合に、遅延車両を優先してストレージから搬出する組立工程の生産計画順序を再計画することができる。これにより、遅延車両も考慮したストレージからの自動搬出が可能になるため、作業員の負荷を軽減することができる。また、従来よりも遅延車両の搬出が早く行えるようになるため、組立工程における遅延車両の組付け部品の滞留時間も短縮でき、作業員が管理するための負荷を軽減することができる。また、仕掛かり部品を置いておくためのスペースも削減できる。
このように、本発明によれば、遅延車両が発生した場合でも、車両生産への影響を最小限にすることができ、従来よりも作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態による生産順序再計画装置と車両生産工程全体の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態による生産順序再計画装置と車両生産ラインとの関係と構成例を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるストレージの例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態による生産順序再計画システムの構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態による車両通過時間間隔情報記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態による塗装工程車両生産順序記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるストレージ搬入計画順序記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態によるストレージ車両在籍状況記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態による組立工程生産計画順序記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態による修正車両ライン投入位置予測処理例を表すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施の形態によるストレージ搬入順序計画処理例を表すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施の形態による組立工程生産計画順序計画処理例を表すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施の形態による車両oに対する修正作業の実施が決定した時点のストレージの車両在籍状況例を示す説明図である。
【図14】本発明の一実施の形態による修正車両oが遅延車両搬入レーンの先頭の場合のストレージの車両在籍状況例を示す説明図である。
【図15】本発明の一実施の形態による修正車両oが搬出車両として決定した時点のストレージの車両在籍状況例を示す説明図である。
【図16】本発明の他の実施の形態による構成例を示すブロック図である。
【図17】本発明の更に他の実施の形態による構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、本発明においては、車両を特定し、識別するために、RFID(Radio Frequency Identification)やバーコードなどのID記憶機器を車両に備えているものとする。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態例である生産順序再計画装置1と車両生産工程全体の概要を示したものである。
自動車などの車両は、一般に車体工程71、塗装工程72、組立工程76を経て生産される。また、塗装工程72を終了した車両に対しては、検査工程73で品質確認を実施する。検査の結果、品質に問題が無い車両は、そのまま次工程へ移動する。検査により品質不良(色むらがあるなど)と判断された車両は修正工程77へ移動し、修正作業が施される。修正作業の終了後、修正車両は合流工程74で通常の生産ラインへ再投入される。この時点では、修正車両は、修正に要した時間分遅れてラインへ再投入されるため、当初計画されていた生産順序とは異なる位置へ投入されることになる。
【0019】
合流工程74を通過した車両は、車両を一時待機させるための複数のレーンが並列に配置されたストレージ工程75へ搬入される。本例では、遅れの発生した修正車両をID記憶機器の読み取り装置3などにより検出すると、修正作業に要する時間を入力する修正作業所要時間入力装置2から入力された修正作業所要時間を基に、生産順序再計画装置1により、次の組立工程76における生産順序を再計画する。そして、再計画された生産順序を基に、ストレージ工程75にて車両の順序を調整し、次の工程である組立工程76へ搬出する。
【0020】
図2は、本発明の一実施の形態例である生産順序再計画装置1と車両生産ラインとの関係を示したものである。
【0021】
車両生産ラインは、各工程に対応したラインを備え、ライン上を流れる車両に対して、作業員が各工程の作業を施していく。生産ラインには、複数の通過ポイントが設けられ、車両に貼付されたRFIDなどのID記憶機器の情報を読み取る読み取り装置を備えることにより、当該ポイントを通過した車両を検出するともに、車両の通過時間間隔などの情報を収集できるように構成されている。
【0022】
検査工程に対応する検査ライン703を通過した結果、品質不良と判断された車両は、修正ライン707へ移動する。修正ライン707の前に設けられた通過ポイントの読み取り装置3は、修正ライン707へ移動した車両のID情報を読み取り、その情報を車両通過検知・ID読込装置4へ入力する。そして、車両通過検知・ID読込装置4は、入力された情報を基に、修正車両の発生と修正車両の車両IDなどの情報を生産順序再計画装置1へ通知する。
【0023】
そして、作業者は、修正車両に要する修正内容を基に修正作業にかかる所要時間を推定し、入力用の端末から修正作業所要時間を入力する。図2では、車体ライン701と塗装ライン702の近傍に修正作業所要時間入力装置2A、2Bを設け、それぞれのラインの作業終了後に、作業員が修正必要と判断した車両に対する修正作業所要時間を入力する。このように、各作業工程のライン毎に修正作業所要時間入力装置を設ける構成の他に、検査ライン703の近傍に修正作業所要時間入力装置を設け、検査の結果、修正が必要となった車両に対して修正作業所要時間を入力するような構成としてもよい。
【0024】
また、車両生産ラインには、ストレージ705の複数のレーンから組立ライン706へ車両を1台ずつ自動的に搬出する自動搬出装置5が設けられている。本発明の一実施の形態例による生産順序再計画装置1では、修正車両に対する修正作業所要時間を基に、組立ライン706における生産順序を再計画し、その生産順序に基づいてストレージ705から車両を搬出するように自動搬出装置5へ指示する。
また、生産順序再計画装置1によって再計画された組立ラインの車両生産順序を組立ライン706の作業員に提示するための表示装置6を設ける構成としてもよい。表示装置6は、パーソナルコンピュータなどのディスプレイに画面表示する構成や、帳票などに印字する構成などとしてもよい。これにより、組立ライン706の作業員が、ストレージ705から搬出される車両の順番が当初の計画から変更された場合に、その順序を事前に把握することができるため、修正作業による遅延車両が発生しても、作業の効率化の妨げにならない。
【0025】
図3に、本発明の一実施の形態例におけるストレージ705の例を示す。ストレージ705は、修正作業により生じた組立工程生産計画順序のズレを調整するために、塗装ライン702と修正ライン707との合流地点704と組立ライン706との間に設けたものである。ストレージ705は、修正作業がなく、予め計画された生産計画順序の通りである車両を搬入する通常車両搬入レーン51〜54を複数備える。また、修正作業の発生などにより、予め計画された生産計画順序から遅れた車両(当該車両の遅延時間の予測が可能なもの)である遅延車両のみを搬入する遅延車両搬入レーン55を一つ以上備える。また、組付け部品在庫の欠如などにより組立工程への搬出ができない車両(当該車両は、遅延時間の予測が不可能なもの)である搬出不可車両のみを搬入する搬出不可車両搬入レーン56を一つ以上備える。更に、搬入順序の調整などのために、レーンの先頭車両をレーンの最後尾に移動する回送レーン57を備える。
【0026】
ここで、塗装ライン702と修正ライン707との合流地点704からストレージ搬入口までは1本のラインであり、合流地点を通過した後、ストレージ搬入されるまでは車両の順序が変更されることはない。本例のストレージ705では、車両の順序を生産順序再計画装置1によって再計画された組立ライン706における生産順序の通りにするために、複数ある搬入レーンを用いて車両の生産順序を調整する。生産順序再計画装置1では、ストレージ搬入口に搬入された車両を、複数のレーンのうち、どのレーンへ搬入するかを決定し、各レーンに在籍する車両の状況を模擬する。そして、模擬したストレージの車両在籍状況を基に、組立ライン706へ搬出する車両を決定し、決定された順序になるように、ストレージ705にて車両の生産順序を調整して、組立ライン706へ搬出する。
【0027】
図4は、本発明の一実施の形態例である生産順序再計画装置1の内部構成例を示した構成図である。本例の生産順序再計画装置1においては、例えば電子計算機に該当する処理を行うプログラムを実装し、その電子計算機が備える演算処理機能や記憶機能などを利用して実現したものである。
【0028】
生産順序再計画装置1は、処理部として修正作業所要時間入力部11、修正車両ライン再投入位置予測部12、ストレージ搬入順序計画部13、組立工程生産計画順序計画部14を備える。また、各処理部で用いる情報を格納する記憶部として、修正作業所要時間記憶部15、車両通過時間間隔情報記憶部16、塗装工程車両生産順序記憶部17、ストレージ搬入計画順序記憶部18、ストレージ車両在籍状況記憶部19、組立工程生産計画順序記憶部20を備える。
【0029】
次に、各処理部の処理内容と、各処理部で用いる情報について説明する。
【0030】
修正作業所要時間入力部11は、作業員が修正作業所要時間入力装置2A、2Bを介して入力した修正車両の修正作業所要時間を入力し、修正作業所要時間記憶部15へ格納する。修正作業所要時間記憶部15には、修正作業を行う車両を識別するためのIDと、その車両の修正作業に要する時間の情報とを対応付けて格納する。
【0031】
修正車両ライン再投入位置予測部12は、修正車両が修正作業後に通常の生産ラインへ再投入される位置(修正車両が再投入された際に修正車両より前方にくる車両)を予測する。修正車両ライン再投入位置予測部12は、車両通過検知・ID読込装置4から修正車両の発生通知を受けることにより、処理を開始する。
修正車両ライン再投入位置予測部12にて再投入位置を予測する処理では、修正作業所要時間記憶部15と、車両通過時間間隔情報記憶部16と、塗装工程車両生産順序記憶部17を参照する。なお、車両通過時間間隔情報記憶部16は図5に、塗装工程車両生産順序記憶部17は図6に示す。
【0032】
ストレージ搬入順序計画部13は、修正車両ライン再投入位置予測部12にて求められた修正車両の再投入位置からストレージ搬入順序を計画し、作成されたストレージ搬入計画順序の情報を、ストレージ搬入計画順序記憶部18に格納する。なお、ストレージ搬入計画順序記憶部18は図7に示す。
【0033】
組立工程生産計画順序計画部14は、ストレージ搬入順序計画部13で求められたストレージ搬入計画順序と、ストレージ内の各レーンの車両の位置情報を表すストレージ車両在籍状況を基に、ストレージから組立工程への車両の搬出順序を作成する。作成された組立工程への搬出順序は、組立工程生産計画順序として組立工程生産計画順序記憶部20へ格納する。
組立工程生産計画順序計画部14にて、組立工程生産計画順序(即ち、ストレージから組立工程への車両の搬出順序)を作成する際に必要なストレージ車両在籍状況は、ストレージ車両在籍状況記憶部19に格納する。組立工程生産計画順序計画部14では、計画処理に伴い、ストレージ車両在籍状況を順次模擬し、模擬した情報を基にストレージ車両在籍状況記憶部19を更新しながら処理を実行する。なお、ストレージ車両在籍状況記憶部19は図8に、組立工程生産計画順序記憶部20は図9に示す。
【0034】
次に、各処理部で参照する情報記憶部のデータ構成例について説明する。
【0035】
図5に車両通過時間間隔情報記憶部16のデータ構成例を示す。車両通過時間間隔情報記憶部16に格納される車両通過時間間隔情報は、製造ラインに設けられた通過ポイント毎に車両が通過するべき時間間隔を予め定義したものである。図5の例では、製造ラインに設けられたポイントの名称を設定する通過ポイント161、車両の通過時間間隔162によりデータを構成する。
【0036】
図6に、塗装工程車両生産順序記憶部17のデータ構成例を示す。塗装工程車両生産順序記憶部17に格納される塗装工程車両生産順序は、塗装工程において車両が生産されている順序を記録したものである。図6の例では、生産順171に対応する、車両のIDなどの識別情報である車両172によりデータを構成する。
【0037】
図7に、ストレージ搬入計画順序記憶部18のデータ構成例を示す。ストレージ搬入計画順序記憶部18に格納されるストレージ搬入計画順序は、ストレージ搬入口に搬入される車両の順序を記録したものである。図7の例では、搬入順181に対応する、車両のIDなどの識別情報である車両182によりデータを構成する。
【0038】
図8に、ストレージ車両在籍状況記憶部19のデータ構成例を示す。ストレージ車両在籍状況記憶部19に格納されるストレージ車両在籍状況は、ストレージの各レーンに在籍する車両とそのレーン内の順序を記録したものである。図8の例では、レーンを識別するためのデータであるレーン191、レーン内順序192、車両のIDなどの識別情報である車両193によりデータを構成する。
【0039】
図9に、組立工程生産計画順序記憶部20のデータ構成例を示す。組立工程生産計画順序記憶部20に格納される組立工程生産計画順序は、組立工程における車両の生産計画順序、即ち、ストレージから組立工程への車両の搬出順序を記録したものである。図9の例では、ストレージ搬出順201に対応する、車両のIDなどの識別情報である車両202によりデータを構成する。
【0040】
次に、各処理部で実施する処理例について説明する。
【0041】
図10は、修正車両ライン再投入位置予測部12による修正車両ライン投入位置予測処理例を表すフローチャートである。本処理は、修正ライン707へ移動した車両が発生し、車両通過検知・ID読込装置4から生産順序再計画装置1へ、修正車両の発生と修正車両の車両IDが通知されることにより起動される。
【0042】
まず、修正作業所要時間記憶部15から修正車両の修正作業に要する推定所要時間を取得する(ステップS101)。次に、車両通過時間間隔情報記憶部16から合流地点における通過時間間隔を取得する(ステップS102)。そして、取得した修正作業推定所要時間を車両通過時間間隔で割ることで、修正車両が修正作業を実施している間に合流地点を通過する車両の台数を求める(ステップS103)。
そして、求めた通過車両台数と塗装工程車両生産順序記憶部17から取得した塗装工程の車両生産順序から、当該修正車両が合流地点において通常ラインへ再投入される位置、即ち、通常ラインに再投入された際の修正車両の前方の車両(どの車両の後に再投入されるか)を求める(ステップS104)。
【0043】
図11は、ストレージ搬入順序計画部13によるストレージ搬入順序計画処理例を表すフローチャートである。本処理は、修正車両ライン再投入位置予測部12の処理終了後に起動される。
【0044】
まず、修正車両ライン再投入位置予測部12で求められた修正車両の生産ラインへの再投入位置を取得し(ステップS111)、更に、塗装工程の車両生産順序を取得する(ステップS112)。次に、修正車両の生産ラインへの再投入位置と塗装工程車両生産順序から、ストレージ搬入順序計画を作成する(ステップS113)。ストレージ搬入順序は、合流地点における車両の通過順序と同じである。そのため、修正車両の再投入位置と塗装工程車両生産順序から、修正車両の合流位置を基に修正車両の前後の車両の順序を並べ替えた合流地点での車両通過順序を求め、それをストレージ搬入計画順序とする。そして、作成したストレージ搬入順序計画をストレージ搬入計画順序記憶部18へ保存する(ステップS114)。
【0045】
図12は、組立工程生産計画順序計画部14による組立工程生産計画順序計画処理例を表すフローチャートである。
本処理は、ストレージ搬入順序計画部13で求められたストレージ搬入計画順序と、ストレージ内の各レーンの車両の在籍状況を基に、ストレージから組立工程への車両の搬出順序を作成する。本例では、作成されたストレージから組立工程への車両の搬出順序が、組立工程生産計画順序となる。また、本例において、組立工程生産計画順序を作成する際に、ストレージへの車両の搬入・搬出順序をシミュレーションするが、その前提として、ストレージ搬入とストレージ搬出は交互に1台ずつ実施されるものとする。また、ストレージ搬入・搬出シミュレーションは、既存の搬入レーン決定ロジック・搬出計画決定ロジックを用いて実施する。なお、既存の搬入・搬出のロジックは、複数の制約条件に重みを付け、重み計算することで最適なストレージ搬入・搬出順序を決定するものである。
【0046】
本処理は、修正車両の発生通知を受け、ストレージ搬入順序計画部13の処理終了後に起動される。初めに、初期値として、修正車両発生時のストレージの車両在籍状況をストレージ車両在籍状況記憶部19に格納する(ステップS121)。次に、ストレージ搬入対象である車両のストレージ搬入計画順序を表すパラメータSinを初期化し(ステップS122)、組立工程生産計画順序を表すパラメータSoutの初期化を行なう(ステップS123)。
そして、まず、既存のストレージ搬出計画決定ロジックに基づいて、ストレージ車両在籍状況記憶部19に格納されているストレージの車両在籍状況における車両搬出計画を作成する(ステップS124)。ここでは、既存のストレージ搬出計画決定ロジックに基づいて各制約条件を考慮し、ストレージから搬出する車両の順番を計画する。なお、1回の処理で搬出計画を作成する車両の台数は、予め決めた台数とする。
【0047】
次に、修正車両のストレージからの搬出可否を判断する。本例におけるストレージ搬出は、修正車両を優先的に扱うため、ステップS124で決定した搬出計画とは別に、修正車両が搬出可能であれば修正車両の搬出を最優先で行う。そのための、修正車両のストレージ搬出可否判断として、まず、修正車両が遅延車両搬入レーンの先頭にいるかを判定する(ステップS125)。判定の結果、修正車両が遅延車両搬入レーンの先頭にいる場合、修正車両の搬出が搬出制約に違反するかを判定する(ステップS126)。ここで、搬出制約とは、車両生産の効率化を図るため、組立工程における作業負荷の平準化や部品在庫管理を考慮して設定されたものであり、車両搬出間隔台数制約や連続台数制約、在庫部品の割り当て、オフライン期限などがある。
【0048】
ステップS126の判定の結果、修正車両の搬出が搬出制約に違反していない場合は、修正車両の搬出が可能となるため、当該修正車両を搬出車両として決定する(ステップS127)。そして、組立工程生産計画順序記憶部20の組立工程生産計画順=Soutの位置に修正車両を格納し(ステップS128)、組立工程生産計画順序計画処理を終了する。
【0049】
ステップS125で修正車両が遅延レーンの先頭にいないと判定された場合と、ステップS126で修正車両の搬出が搬出制約に違反すると判定された場合は、ステップS124で既に決定している搬出計画に従い、その先頭の車両を搬出車両として決定する(ステップS129)。そして、組立工程生産計画順序計画記憶部20の組立工程生産計画順=Soutの位置に搬出車両を格納する(ステップS130)。
次に、組立工程生産計画順序:Soutの値を1増加する(ステップS131)。そして、ストレージ車両在籍状況を車両搬出した後のストレージの車両在籍状況へ更新する(ステップS132)。具体的には、ストレージ車両在籍状況のデータから搬出車両に関する情報を削除し、搬出車両が在籍していたレーンに在籍している他の車両について、レーン内順番を一つずつ減らして格納する。
【0050】
次に、ストレージ搬入計画順=Sinの車両のストレージ搬入レーンを、既存のストレージ搬入レーン決定ロジックを基に決定する(ステップS133)。そして、ストレージ車両在籍状況を、決定したレーンへの車両搬入が実施された後のストレージ車両在籍状況へ更新する(ステップS134)。具体的には、搬入車両に対して、搬入レーンとして決定したレーンを設定し、レーン内順序として搬入レーンの最後尾に1加えた値を設定して、ストレージ車両在籍状況記憶部19に格納する。
次に、ストレージ搬入計画順序:Sinの値を1増加する(ステップS135)。そして、ステップS124へ戻り、更新されたストレージ車両在籍状況を基に、次のストレージ搬出車両を決定する処理を実行し、修正車両が搬出可能と判断されるまで処理を繰り返す。
【0051】
これにより、本発明では、修正車両が発生したことを検出した場合、その車両の組立工程における生産計画順序を再計画することができる。また、ストレージからの搬出車両を決定する際には、修正車両を優先して搬出するように計画することができるため、修正車両の遅延時間を従来よりも短縮することができる。
【0052】
次に、具体的な車両の例を用いて、本発明の生産順序再計画装置による組立工程生産計画順序計画処理の例について説明する。
【0053】
ここでは、塗装工程における車両生産順序は、図6に示した塗装工程車両生産順序例の通りとし、車両a〜z、A〜Zまでの車両が塗装工程を終了もしくは、生産仕掛り中であるとする。ここで、車両oが、検査工程により品質不良とされ、20分の修正作業が必要となったケースを例として以下に説明する。
【0054】
図13に、車両oに対する修正作業の実施が決定した時点のストレージの車両在籍状況を示す。この時点では、塗装工程車両生産順序のうちの車両a〜mがストレージ内に在籍している。図13では、各レーン上に位置する長方形が1台の車両を表し、その中に記載されている車両表記は、アルファベットは車両IDを意味し、アンダーバーの右の数字は、現在ストレージ内に在籍している車両におけるストレージ搬出計画順序を表している。ストレージ搬出計画順序の数字が「??」の車両は、まだ搬出順序が決定していないことを示している。また、括弧内の数字はストレージへの搬入順序を意味している。例えば、「c_2(3)」は、車両cは3番目にストレージ搬入され、ストレージ搬出が2番目に実施される計画であることを意味している。なお、(カ)のレーンは、搬出不可車両搬入レーン56であり、このレーンに在籍している「xxxx」「yyyy」の車両は、本例による組立工程生産計画順序計画処理の対象外である。
ここで、図13に示したストレージ車両在籍状況は、図8に示したストレージ車両在籍状況例に対応している。
【0055】
車両oに対する修正作業が発生すると、まず、修正車両ライン再投入位置予測部12による修正車両ライン投入位置予測処理が実行される。まず、車両oの修正作業は20分と推定されており、図5に示した車両通過時間間隔情報から、合流地点での車両通過時間間隔は1(分/台)であることから、車両oが修正作業を実施している間に合流地点を通過する車両は20台であることがわかる。
【0056】
本例では、検査ラインと合流地点は近いものと考え、修正作業開始から通常ラインへの合流までにかかる時間は修正作業時間のみであり、修正ラインから合流地点までの移動時間はかからないと考える。これにより、修正車両oが修正ラインへ移動した後、車両oの直後にラインを流れていた車両から20台が先に合流地点を通過すると考える。そして、修正車両ライン投入位置予測処理の結果として、図7に示した塗装工程車両生産順序例を基に、車両oから20台後である車両Jの後を修正車両ライン投入位置とする。
【0057】
次に、ストレージ搬入順序計画部13によるストレージ搬入順序計画処理が実行される。ここでは、塗装工程車両生産順序から車両oを取り出し、それ以降の車両を一つずつ詰め、車両Jの後ろに車両oを挿入した順序を作成し、ストレージ搬入計画順序とする。作成されたストレージ搬入計画順序が、図7に示したストレージ搬入計画順序例に対応する。
【0058】
次に、組立工程生産計画順序計画部14による組立工程生産計画順序計画処理が実行される。まず、ストレージ車両在籍状況から、ストレージ搬出計画決定ロジックを基に搬出計画を立てる。ここでは、ストレージ搬出計画決定ロジックにより、5台分の車両の搬出順番を計画するものとする。図13の例では、車両a、車両c、車両b、車両d、車両eの順で搬出する計画が立てられている。組立工程生産計画順序計画処理では、搬出計画の先頭の車両を1台搬出した後、図7に示したストレージ搬入計画順序で次に搬入が計画されている車両に対して、ストレージ搬入レーン決定ロジックにより搬入レーンを決定し、車両の搬入を実施する。この搬出・搬入を模擬する処理を、修正車両oが搬出可能となるまで繰り返す。
【0059】
図14は、修正車両oが遅延車両搬入レーン(オ)の先頭となり、搬出制約に違反しない状態である場合のストレージ車両在籍状況を示す。図14では、既に、ストレージ搬入計画順序で修正車両oより先にストレージへ搬入された車両a〜l、m〜z、A〜Eは搬出された状態で、搬出計画として車両F、車両G、車両H、車両I、車両Jの順で搬出が計画されていた場合を表している。ここで、組立工程生産計画順序計画処理において修正車両oの搬出が可能と判断された場合、修正車両oの搬出を最優先で実施するため、修正車両oを搬出車両として決定する。
【0060】
図15に修正車両oが搬出車両として決定した状態を示す。図15では、修正車両oの搬出順番が31に決定したことを示している。
【0061】
以上の処理の結果、車両oに対して修正作業の実施が決定した時点から、修正車両oのストレージからの搬出が決定するまでにストレージ搬出が実施された車両順序を、組立工程生産計画順序とする。このように、計画された組立工程生産計画順序が、図9に示した組立工程生産計画順序例に対応する。
【0062】
このように、塗装工程などで生じた修正作業により、生産計画順序から遅れた車両に対して、修正作業開始時点で組立工程の生産計画順序の再計画を作成することができる。その結果、修正車両のストレージから組立工程への搬出計画が事前に立てられるため、組立工程における計画的な部品在庫管理や組付け部品のラインへの供給が実施でき、作業員の負担を軽減することができる。
【0063】
また、本発明の他の実施の形態例を図16に示す。図16において、図4で説明した本発明による生産順序再計画システムの構成例に対応するものについては同一符号を付け、その説明を省略する。
【0064】
図4の構成では、検査の結果、修正作業が必要と判断された車両について、作業員がその車両の状態を直接見て判断し、その修正作業に要する時間を作業員が修正作業所要時間入力装置2A、2Bを介して入力していた。
一方、図16では、検査ライン703から修正ライン707へ移動する車両を監視するカメラなどから成る監視装置8と、監視装置8から画像情報などの情報を入力し、その情報を基に作業員が車両の状態を入力する車両状態入力装置91を設ける構成とする。また、生産順序再計画システム1には、修正作業所要時間推定部21と修正作業時間データ記憶部22を設ける。
【0065】
本実施の形態例では、作業員は、車両状態入力装置91に接続された入出力装置92に表示された車両の画像などを見て車両の状態を判断し、その車両状態を入力する。車両状態は、例えば、塗装工程で行った塗装の良否の程度を複数のレベルに分けて判断するもので、色むらなどの不良が軽微なもの(A)、色むらなどの不良はあるが中程度のもの(B)、色むらなどの不良が顕著なもの(C)などのように判定する。また、その色むらの面積や色むらの数などを入力するようにしてもよい。
作業員により入力された車両状態は、車両状態入力装置91から生産順序再計画システム1の修正作業所要時間推定部21へ入力する。修正作業所要時間推定部21は、車両状態と、その状態に対応した修正作業所要時間を定義した修正作業時間データ記憶部22を参照し、入力された修正車両の車両状態を基に修正作業の所要時間を推定し、修正作業所要時間記憶部15へ格納する。以降の動作は、図4の構成と同様である。修正作業時間データ記憶部22には、例えば色むらの程度に応じてAは5分、Bは10分、Cは20分などのように作業時間を定義しておく。
【0066】
このように、構成することで、作業員は、車両の状態のみを判断すればよく、作業の負担を軽減することができる。また、車両の状態を総合的に判断して修正作業に要する時間を推定するためには、そのための知識と経験を持つ作業員を配置する必要があるが、本実施の形態例では、作業員は、車両の状態のみを判断できればよい。
【0067】
また、本発明の更に他の実施の形態例を図17に示す。図17において、図4で説明した本発明による生産順序再計画システムの構成例に対応するものについては同一符号を付け、その説明を省略する。
【0068】
図17では、図16の構成と同様に、生産順序再計画システム1に、車両状態から修正作業の所要時間を推定する修正作業所要時間推定部21と、車両状態に対応した修正作業所要時間を定義した修正作業時間データ記憶部22を設ける。図17では、検査ライン703から修正ライン707へ移動する車両を監視するカメラなどから成る監視装置8と、監視装置8から画像情報などの情報を入力し、車両状態を自動的に判定する車両状態判定装置9を設ける。車両状態判定装置9は、監視装置8で撮影された車両の画像情報などを基に、画像解析処理を行い、例えば車両の塗装の色むらの程度を判定する。車両状態判定装置9で実施する画像解析処理は、例えば、正常な塗装状態の車両の画像と、修正車両の画像の画素を比較し、その差分を算出する処理とする。そして、その差分の値を基に、車両状態の程度を判定する。車両状態判定装置9で判定された車両状態は、生産順序再計画システム1の修正作業所要時間推定部21へ入力し、以降の処理は、図17の構成と同様である。
【0069】
このように構成することで、車両の状態は、車両状態判定装置9によって自動的に判定されるため、作業員が車両の状態を判断する必要もなくなり、作業員の負荷を更に軽減することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…生産順序再計画装置、2、2A、2B…修正作業所要時間入力装置、3…読み取り装置、4…車両通過検知・ID読込装置、5…自動搬出装置、6…表示装置、8…監視装置、9…車両状態判定装置、91…車両状態入力装置、92…入出力装置、11…修正作業所要時間入力部、12…修正車両ライン再投入位置予測部、13…ストレージ搬入順序計画部、14…組立工程生産計画順序計画部、15…修正作業所要時間記憶部、16…車両通過時間間隔情報記憶部、17…塗装工程車両生産順序記憶部、18…ストレージ搬入計画順序記憶部、19…ストレージ車両在籍状況記憶部、20…組立工程生産計画順序記憶部、21…修正作業所要時間推定部、22…修正作業時間データ記憶部、51〜54…通常車両搬入レーン、55…遅延車両搬入レーン、56…搬出不可車両搬入レーン、57…回送レーン、71…車体工程、72…塗装工程、73…検査工程、74…合流工程、75…ストレージ工程、76…組立工程、77…修正工程、701…車体ライン、702…塗装ライン、703…検査ライン、704…合流地点、705…ストレージ、706…組立ライン、707…修正ライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、多品種混合生産ラインにおいて、計画された生産計画順序の遵守が不可能となった車両が発生した場合に、生産順序の再計画を実行する生産順序再計画システム、生産順序再計画装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の生産ラインなどでは、複数の車種を1つのラインで生産できる、多品種混合生産を行っている。このような多品種混合生産では、車種によって作業員の作業負荷が異なる。そのため、効率的な生産を実施するために、車種毎に異なる作業負荷を基に、全体の作業負荷の平準化を目指した生産計画が立てられている。例えば、四輪駆動(4WD:four-wheel drive)等の作業負荷の高い車種は、続けて3台以上はラインに投入しないなどの制約条件を考慮した順番になるよう計画されている。
一般的に、自動車は車体工程・塗装工程・組立工程などの工程を順に経て生産されているが、これらの工程全体を通して、予め計画された車両の生産順序に基づいて作業が行われている。そのため、生産計画順の遵守が重要となっている。
【0003】
また、自動車生産ラインの部品在庫管理においても、効率的な部品供給のために、生産計画に同期させた部品供給を行っている。例えば、車体に部品を組み付ける組立工程に対しては、組立工程で使用する組付け部品を生産計画に同期して組立ラインへ運搬している。そのため、前の工程から投入される車体が、計画された順番の通りでない場合、既に組立ラインへ供給されていた組付け部品を別に管理する必要がある。例えば、塗装工程において塗装のムラなどの品質不良が発生し、修正作業が必要になった場合、生産計画順序の遵守ができなくなり、次の組立工程において生産計画順序に沿った車両投入ができなくなる場合がある。このような場合は、修正作業を行う車両より後の車両が先に組立工程へ投入され、修正作業を行う車両が遅延することになり、組立工程における部品管理にも影響が出る。
このように、特に組立工程においては、立案された生産計画に基づいて組立ラインへの組付け部品の供給が行なわれるという点から、生産計画順の遵守が強く求められている。
【0004】
従来、このような場合は、作業員が修正作業を行うべき遅延車両の状況を管理し、生産計画順序を調整していた。具体的には、自動車生産ラインにおいて、塗装工程と組立工程との間に複数の並列ラインを持つストレージを設け、ストレージから組立工程への車両の搬出順序を調整することで、塗装工程において崩れた生産計画順序を調整していた。
【0005】
特許文献1には、組立工程の組立作業負荷の平準化などを考慮したストレージ搬出計画決定ロジックを用いた、多品種混合生産ラインにおける投入品種決定方式の例についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−74559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された従来技術では、生産計画順序を基準として複数の制約条件に重みを付け、重み計算することで最適なストレージ搬出順序を決定している。制約条件としては、車両搬出間隔台数制約(同一車種の間には数台の異なる車種を挟み、間隔をあけなければならない制約)や、連続台数制約(同一車種の連続搬出が可能な台数の上限)、在庫部品の割り当て、オフライン期限(車両の製造が完了しなくてはいけない期限)などがある。
【0008】
しかし、従来のストレージ搬出順序は、ストレージへの車両搬入に合わせて漸次的に搬出車両を決定していくため、搬出順序が決定されるのは数台先までである。そのため、生産計画順序から遅れた車両が、どの程度生産計画順序から遅れて搬出されるのか判断できなかった。
【0009】
一方、遅延した車両のストレージへの搬入は、一般車両(遅延していない車両)よりも早く搬出することを目的として、レーン搬出までの距離が短い、即ち、在籍車両が少ないといった搬出優位なレーンへの搬入を行っていた。
【0010】
しかし、上記従来のストレージ搬出計画決定ロジックにおいては、遅延車両を一般の車両と区別して処理するなどの考慮がされていなかったため、遅延車両を優先的にストレージから搬出するようなロジックはなかった。このため、遅延車両がオフライン期限までストレージ搬出されない可能性があった。遅延車両の搬出ができず、オフライン期限に達してしまった場合は、強制的に組立工程へ搬出する必要があった。
その結果、ストレージから組立工程へ自動的に車両を搬出する自動搬出システムを停止し、車両搬出間隔台数制約や連続台数制約などの制約条件を無視して組立工程へ投入しなくてはならなかった。
このように、従来は、遅延車両の発生が組立工程における作業員の負担の増加となり、それが、生産工程全体の作業効率の低下につながり、効率化の妨げとなっていた。
【0011】
また、組立工程においては、車両の遅延時間が予測できないため、作業員が、生産計画順序に同期してラインに供給されていた当該車両の組付け部品を一端ラインの外に置き、仕掛かり部品として個別に管理する必要があった。更に、その部品を置くためのスペースも必要になっていた。
このように、遅延車両の発生は、ラインに供給される組付け部品の運搬計画や、既にラインサイドへ供給された部品の管理などに影響を与え、作業員の負荷を増大させていた。このような状況を受け、車両生産の効率化のため、遅延車両の発生時に、組立工程における車両生産順序を再計画し、再計画された車両生産順序に基づいてストレージから組立工程のラインへ車両の搬出が行われることが望まれていた。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、遅延車両など、予め計画された生産計画順序の遵守が不可能となった車両が発生した場合に、遅延車両を考慮した生産計画順序を再計画できるようにする。これにより、その後の工程における車両生産への影響を最小限にし、車両生産の効率化を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数の車種を同一ラインで生産するラインを有し、予め計画された車両生産順序に基づいて複数の工程により車両を生産する車両生産ラインにおいて、予め計画された車両生産順序の通りに車両を投入できなくなった場合に、車両生産順序を再計画する生産順序再計画システムである。本発明の車両生産ラインには、車体に対する作業を行う塗装工程と車体に部品を組み付ける組立工程との間に、品質検査を実施する工程と、品質検査の結果、品質不良と判定された車両に対して修正作業を実施する工程を有す。また、塗装工程と修正作業工程との合流工程から組立工程へ車両を投入する前に、車両を一時待機させるための複数の並列レーンを持つストレージ工程を備える。本発明は、上記車両生産ラインにおいて、修正作業を実施するため、予め計画された車両生産順序の通りに組立工程へ車両を投入できなくなった場合に、組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画システムである。本発明における生産順序再計画システムには、修正作業工程へ投入される車両を検出する車両通過検知装置と、修正作業工程へ投入される車両の修正作業の所要時間が入力される修正作業所要時間入力装置とを備える。そして、車両通過検知装置から修正作業工程へ投入される車両を検出したとの通知を受けると、修正作業所要時間入力装置から入力された修正作業所要時間を基に、組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画装置とを備えるものである。
【0014】
また、本発明による生産順序再計画装置には、生産ラインに設けた通過ポイント毎に定義された車両の通過時間間隔を記憶する車両通過時間間隔情報記憶部と、塗装工程の車両生産順序を記憶する塗装工程車両生産順序記憶部と、修正作業所要時間入力装置から入力された修正作業所要時間を記憶する修正作業所要時間記憶部とを備える。更に、車両通過時間間隔と、塗装工程車両生産順序と、修正作業所要時間を基に、修正作業実施車両の生産ラインへの再投入位置を予測する修正車両ライン再投入位置予測部と、修正車両ライン再投入位置予測部により予測された修正作業実施車両の再投入位置と塗装工程車両生産順序を基に、ストレージ工程へ搬入する順序を計画するストレージ搬入順序計画部と、計画されたストレージ搬入順序を基に、組立工程の生産順序を再計画する組立工程生産計画順序計画部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遅延車両が発生した場合に、遅延車両を優先してストレージから搬出する組立工程の生産計画順序を再計画することができる。これにより、遅延車両も考慮したストレージからの自動搬出が可能になるため、作業員の負荷を軽減することができる。また、従来よりも遅延車両の搬出が早く行えるようになるため、組立工程における遅延車両の組付け部品の滞留時間も短縮でき、作業員が管理するための負荷を軽減することができる。また、仕掛かり部品を置いておくためのスペースも削減できる。
このように、本発明によれば、遅延車両が発生した場合でも、車両生産への影響を最小限にすることができ、従来よりも作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態による生産順序再計画装置と車両生産工程全体の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態による生産順序再計画装置と車両生産ラインとの関係と構成例を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるストレージの例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態による生産順序再計画システムの構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態による車両通過時間間隔情報記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態による塗装工程車両生産順序記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるストレージ搬入計画順序記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態によるストレージ車両在籍状況記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態による組立工程生産計画順序記憶部のデータ構成例を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態による修正車両ライン投入位置予測処理例を表すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施の形態によるストレージ搬入順序計画処理例を表すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施の形態による組立工程生産計画順序計画処理例を表すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施の形態による車両oに対する修正作業の実施が決定した時点のストレージの車両在籍状況例を示す説明図である。
【図14】本発明の一実施の形態による修正車両oが遅延車両搬入レーンの先頭の場合のストレージの車両在籍状況例を示す説明図である。
【図15】本発明の一実施の形態による修正車両oが搬出車両として決定した時点のストレージの車両在籍状況例を示す説明図である。
【図16】本発明の他の実施の形態による構成例を示すブロック図である。
【図17】本発明の更に他の実施の形態による構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、本発明においては、車両を特定し、識別するために、RFID(Radio Frequency Identification)やバーコードなどのID記憶機器を車両に備えているものとする。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態例である生産順序再計画装置1と車両生産工程全体の概要を示したものである。
自動車などの車両は、一般に車体工程71、塗装工程72、組立工程76を経て生産される。また、塗装工程72を終了した車両に対しては、検査工程73で品質確認を実施する。検査の結果、品質に問題が無い車両は、そのまま次工程へ移動する。検査により品質不良(色むらがあるなど)と判断された車両は修正工程77へ移動し、修正作業が施される。修正作業の終了後、修正車両は合流工程74で通常の生産ラインへ再投入される。この時点では、修正車両は、修正に要した時間分遅れてラインへ再投入されるため、当初計画されていた生産順序とは異なる位置へ投入されることになる。
【0019】
合流工程74を通過した車両は、車両を一時待機させるための複数のレーンが並列に配置されたストレージ工程75へ搬入される。本例では、遅れの発生した修正車両をID記憶機器の読み取り装置3などにより検出すると、修正作業に要する時間を入力する修正作業所要時間入力装置2から入力された修正作業所要時間を基に、生産順序再計画装置1により、次の組立工程76における生産順序を再計画する。そして、再計画された生産順序を基に、ストレージ工程75にて車両の順序を調整し、次の工程である組立工程76へ搬出する。
【0020】
図2は、本発明の一実施の形態例である生産順序再計画装置1と車両生産ラインとの関係を示したものである。
【0021】
車両生産ラインは、各工程に対応したラインを備え、ライン上を流れる車両に対して、作業員が各工程の作業を施していく。生産ラインには、複数の通過ポイントが設けられ、車両に貼付されたRFIDなどのID記憶機器の情報を読み取る読み取り装置を備えることにより、当該ポイントを通過した車両を検出するともに、車両の通過時間間隔などの情報を収集できるように構成されている。
【0022】
検査工程に対応する検査ライン703を通過した結果、品質不良と判断された車両は、修正ライン707へ移動する。修正ライン707の前に設けられた通過ポイントの読み取り装置3は、修正ライン707へ移動した車両のID情報を読み取り、その情報を車両通過検知・ID読込装置4へ入力する。そして、車両通過検知・ID読込装置4は、入力された情報を基に、修正車両の発生と修正車両の車両IDなどの情報を生産順序再計画装置1へ通知する。
【0023】
そして、作業者は、修正車両に要する修正内容を基に修正作業にかかる所要時間を推定し、入力用の端末から修正作業所要時間を入力する。図2では、車体ライン701と塗装ライン702の近傍に修正作業所要時間入力装置2A、2Bを設け、それぞれのラインの作業終了後に、作業員が修正必要と判断した車両に対する修正作業所要時間を入力する。このように、各作業工程のライン毎に修正作業所要時間入力装置を設ける構成の他に、検査ライン703の近傍に修正作業所要時間入力装置を設け、検査の結果、修正が必要となった車両に対して修正作業所要時間を入力するような構成としてもよい。
【0024】
また、車両生産ラインには、ストレージ705の複数のレーンから組立ライン706へ車両を1台ずつ自動的に搬出する自動搬出装置5が設けられている。本発明の一実施の形態例による生産順序再計画装置1では、修正車両に対する修正作業所要時間を基に、組立ライン706における生産順序を再計画し、その生産順序に基づいてストレージ705から車両を搬出するように自動搬出装置5へ指示する。
また、生産順序再計画装置1によって再計画された組立ラインの車両生産順序を組立ライン706の作業員に提示するための表示装置6を設ける構成としてもよい。表示装置6は、パーソナルコンピュータなどのディスプレイに画面表示する構成や、帳票などに印字する構成などとしてもよい。これにより、組立ライン706の作業員が、ストレージ705から搬出される車両の順番が当初の計画から変更された場合に、その順序を事前に把握することができるため、修正作業による遅延車両が発生しても、作業の効率化の妨げにならない。
【0025】
図3に、本発明の一実施の形態例におけるストレージ705の例を示す。ストレージ705は、修正作業により生じた組立工程生産計画順序のズレを調整するために、塗装ライン702と修正ライン707との合流地点704と組立ライン706との間に設けたものである。ストレージ705は、修正作業がなく、予め計画された生産計画順序の通りである車両を搬入する通常車両搬入レーン51〜54を複数備える。また、修正作業の発生などにより、予め計画された生産計画順序から遅れた車両(当該車両の遅延時間の予測が可能なもの)である遅延車両のみを搬入する遅延車両搬入レーン55を一つ以上備える。また、組付け部品在庫の欠如などにより組立工程への搬出ができない車両(当該車両は、遅延時間の予測が不可能なもの)である搬出不可車両のみを搬入する搬出不可車両搬入レーン56を一つ以上備える。更に、搬入順序の調整などのために、レーンの先頭車両をレーンの最後尾に移動する回送レーン57を備える。
【0026】
ここで、塗装ライン702と修正ライン707との合流地点704からストレージ搬入口までは1本のラインであり、合流地点を通過した後、ストレージ搬入されるまでは車両の順序が変更されることはない。本例のストレージ705では、車両の順序を生産順序再計画装置1によって再計画された組立ライン706における生産順序の通りにするために、複数ある搬入レーンを用いて車両の生産順序を調整する。生産順序再計画装置1では、ストレージ搬入口に搬入された車両を、複数のレーンのうち、どのレーンへ搬入するかを決定し、各レーンに在籍する車両の状況を模擬する。そして、模擬したストレージの車両在籍状況を基に、組立ライン706へ搬出する車両を決定し、決定された順序になるように、ストレージ705にて車両の生産順序を調整して、組立ライン706へ搬出する。
【0027】
図4は、本発明の一実施の形態例である生産順序再計画装置1の内部構成例を示した構成図である。本例の生産順序再計画装置1においては、例えば電子計算機に該当する処理を行うプログラムを実装し、その電子計算機が備える演算処理機能や記憶機能などを利用して実現したものである。
【0028】
生産順序再計画装置1は、処理部として修正作業所要時間入力部11、修正車両ライン再投入位置予測部12、ストレージ搬入順序計画部13、組立工程生産計画順序計画部14を備える。また、各処理部で用いる情報を格納する記憶部として、修正作業所要時間記憶部15、車両通過時間間隔情報記憶部16、塗装工程車両生産順序記憶部17、ストレージ搬入計画順序記憶部18、ストレージ車両在籍状況記憶部19、組立工程生産計画順序記憶部20を備える。
【0029】
次に、各処理部の処理内容と、各処理部で用いる情報について説明する。
【0030】
修正作業所要時間入力部11は、作業員が修正作業所要時間入力装置2A、2Bを介して入力した修正車両の修正作業所要時間を入力し、修正作業所要時間記憶部15へ格納する。修正作業所要時間記憶部15には、修正作業を行う車両を識別するためのIDと、その車両の修正作業に要する時間の情報とを対応付けて格納する。
【0031】
修正車両ライン再投入位置予測部12は、修正車両が修正作業後に通常の生産ラインへ再投入される位置(修正車両が再投入された際に修正車両より前方にくる車両)を予測する。修正車両ライン再投入位置予測部12は、車両通過検知・ID読込装置4から修正車両の発生通知を受けることにより、処理を開始する。
修正車両ライン再投入位置予測部12にて再投入位置を予測する処理では、修正作業所要時間記憶部15と、車両通過時間間隔情報記憶部16と、塗装工程車両生産順序記憶部17を参照する。なお、車両通過時間間隔情報記憶部16は図5に、塗装工程車両生産順序記憶部17は図6に示す。
【0032】
ストレージ搬入順序計画部13は、修正車両ライン再投入位置予測部12にて求められた修正車両の再投入位置からストレージ搬入順序を計画し、作成されたストレージ搬入計画順序の情報を、ストレージ搬入計画順序記憶部18に格納する。なお、ストレージ搬入計画順序記憶部18は図7に示す。
【0033】
組立工程生産計画順序計画部14は、ストレージ搬入順序計画部13で求められたストレージ搬入計画順序と、ストレージ内の各レーンの車両の位置情報を表すストレージ車両在籍状況を基に、ストレージから組立工程への車両の搬出順序を作成する。作成された組立工程への搬出順序は、組立工程生産計画順序として組立工程生産計画順序記憶部20へ格納する。
組立工程生産計画順序計画部14にて、組立工程生産計画順序(即ち、ストレージから組立工程への車両の搬出順序)を作成する際に必要なストレージ車両在籍状況は、ストレージ車両在籍状況記憶部19に格納する。組立工程生産計画順序計画部14では、計画処理に伴い、ストレージ車両在籍状況を順次模擬し、模擬した情報を基にストレージ車両在籍状況記憶部19を更新しながら処理を実行する。なお、ストレージ車両在籍状況記憶部19は図8に、組立工程生産計画順序記憶部20は図9に示す。
【0034】
次に、各処理部で参照する情報記憶部のデータ構成例について説明する。
【0035】
図5に車両通過時間間隔情報記憶部16のデータ構成例を示す。車両通過時間間隔情報記憶部16に格納される車両通過時間間隔情報は、製造ラインに設けられた通過ポイント毎に車両が通過するべき時間間隔を予め定義したものである。図5の例では、製造ラインに設けられたポイントの名称を設定する通過ポイント161、車両の通過時間間隔162によりデータを構成する。
【0036】
図6に、塗装工程車両生産順序記憶部17のデータ構成例を示す。塗装工程車両生産順序記憶部17に格納される塗装工程車両生産順序は、塗装工程において車両が生産されている順序を記録したものである。図6の例では、生産順171に対応する、車両のIDなどの識別情報である車両172によりデータを構成する。
【0037】
図7に、ストレージ搬入計画順序記憶部18のデータ構成例を示す。ストレージ搬入計画順序記憶部18に格納されるストレージ搬入計画順序は、ストレージ搬入口に搬入される車両の順序を記録したものである。図7の例では、搬入順181に対応する、車両のIDなどの識別情報である車両182によりデータを構成する。
【0038】
図8に、ストレージ車両在籍状況記憶部19のデータ構成例を示す。ストレージ車両在籍状況記憶部19に格納されるストレージ車両在籍状況は、ストレージの各レーンに在籍する車両とそのレーン内の順序を記録したものである。図8の例では、レーンを識別するためのデータであるレーン191、レーン内順序192、車両のIDなどの識別情報である車両193によりデータを構成する。
【0039】
図9に、組立工程生産計画順序記憶部20のデータ構成例を示す。組立工程生産計画順序記憶部20に格納される組立工程生産計画順序は、組立工程における車両の生産計画順序、即ち、ストレージから組立工程への車両の搬出順序を記録したものである。図9の例では、ストレージ搬出順201に対応する、車両のIDなどの識別情報である車両202によりデータを構成する。
【0040】
次に、各処理部で実施する処理例について説明する。
【0041】
図10は、修正車両ライン再投入位置予測部12による修正車両ライン投入位置予測処理例を表すフローチャートである。本処理は、修正ライン707へ移動した車両が発生し、車両通過検知・ID読込装置4から生産順序再計画装置1へ、修正車両の発生と修正車両の車両IDが通知されることにより起動される。
【0042】
まず、修正作業所要時間記憶部15から修正車両の修正作業に要する推定所要時間を取得する(ステップS101)。次に、車両通過時間間隔情報記憶部16から合流地点における通過時間間隔を取得する(ステップS102)。そして、取得した修正作業推定所要時間を車両通過時間間隔で割ることで、修正車両が修正作業を実施している間に合流地点を通過する車両の台数を求める(ステップS103)。
そして、求めた通過車両台数と塗装工程車両生産順序記憶部17から取得した塗装工程の車両生産順序から、当該修正車両が合流地点において通常ラインへ再投入される位置、即ち、通常ラインに再投入された際の修正車両の前方の車両(どの車両の後に再投入されるか)を求める(ステップS104)。
【0043】
図11は、ストレージ搬入順序計画部13によるストレージ搬入順序計画処理例を表すフローチャートである。本処理は、修正車両ライン再投入位置予測部12の処理終了後に起動される。
【0044】
まず、修正車両ライン再投入位置予測部12で求められた修正車両の生産ラインへの再投入位置を取得し(ステップS111)、更に、塗装工程の車両生産順序を取得する(ステップS112)。次に、修正車両の生産ラインへの再投入位置と塗装工程車両生産順序から、ストレージ搬入順序計画を作成する(ステップS113)。ストレージ搬入順序は、合流地点における車両の通過順序と同じである。そのため、修正車両の再投入位置と塗装工程車両生産順序から、修正車両の合流位置を基に修正車両の前後の車両の順序を並べ替えた合流地点での車両通過順序を求め、それをストレージ搬入計画順序とする。そして、作成したストレージ搬入順序計画をストレージ搬入計画順序記憶部18へ保存する(ステップS114)。
【0045】
図12は、組立工程生産計画順序計画部14による組立工程生産計画順序計画処理例を表すフローチャートである。
本処理は、ストレージ搬入順序計画部13で求められたストレージ搬入計画順序と、ストレージ内の各レーンの車両の在籍状況を基に、ストレージから組立工程への車両の搬出順序を作成する。本例では、作成されたストレージから組立工程への車両の搬出順序が、組立工程生産計画順序となる。また、本例において、組立工程生産計画順序を作成する際に、ストレージへの車両の搬入・搬出順序をシミュレーションするが、その前提として、ストレージ搬入とストレージ搬出は交互に1台ずつ実施されるものとする。また、ストレージ搬入・搬出シミュレーションは、既存の搬入レーン決定ロジック・搬出計画決定ロジックを用いて実施する。なお、既存の搬入・搬出のロジックは、複数の制約条件に重みを付け、重み計算することで最適なストレージ搬入・搬出順序を決定するものである。
【0046】
本処理は、修正車両の発生通知を受け、ストレージ搬入順序計画部13の処理終了後に起動される。初めに、初期値として、修正車両発生時のストレージの車両在籍状況をストレージ車両在籍状況記憶部19に格納する(ステップS121)。次に、ストレージ搬入対象である車両のストレージ搬入計画順序を表すパラメータSinを初期化し(ステップS122)、組立工程生産計画順序を表すパラメータSoutの初期化を行なう(ステップS123)。
そして、まず、既存のストレージ搬出計画決定ロジックに基づいて、ストレージ車両在籍状況記憶部19に格納されているストレージの車両在籍状況における車両搬出計画を作成する(ステップS124)。ここでは、既存のストレージ搬出計画決定ロジックに基づいて各制約条件を考慮し、ストレージから搬出する車両の順番を計画する。なお、1回の処理で搬出計画を作成する車両の台数は、予め決めた台数とする。
【0047】
次に、修正車両のストレージからの搬出可否を判断する。本例におけるストレージ搬出は、修正車両を優先的に扱うため、ステップS124で決定した搬出計画とは別に、修正車両が搬出可能であれば修正車両の搬出を最優先で行う。そのための、修正車両のストレージ搬出可否判断として、まず、修正車両が遅延車両搬入レーンの先頭にいるかを判定する(ステップS125)。判定の結果、修正車両が遅延車両搬入レーンの先頭にいる場合、修正車両の搬出が搬出制約に違反するかを判定する(ステップS126)。ここで、搬出制約とは、車両生産の効率化を図るため、組立工程における作業負荷の平準化や部品在庫管理を考慮して設定されたものであり、車両搬出間隔台数制約や連続台数制約、在庫部品の割り当て、オフライン期限などがある。
【0048】
ステップS126の判定の結果、修正車両の搬出が搬出制約に違反していない場合は、修正車両の搬出が可能となるため、当該修正車両を搬出車両として決定する(ステップS127)。そして、組立工程生産計画順序記憶部20の組立工程生産計画順=Soutの位置に修正車両を格納し(ステップS128)、組立工程生産計画順序計画処理を終了する。
【0049】
ステップS125で修正車両が遅延レーンの先頭にいないと判定された場合と、ステップS126で修正車両の搬出が搬出制約に違反すると判定された場合は、ステップS124で既に決定している搬出計画に従い、その先頭の車両を搬出車両として決定する(ステップS129)。そして、組立工程生産計画順序計画記憶部20の組立工程生産計画順=Soutの位置に搬出車両を格納する(ステップS130)。
次に、組立工程生産計画順序:Soutの値を1増加する(ステップS131)。そして、ストレージ車両在籍状況を車両搬出した後のストレージの車両在籍状況へ更新する(ステップS132)。具体的には、ストレージ車両在籍状況のデータから搬出車両に関する情報を削除し、搬出車両が在籍していたレーンに在籍している他の車両について、レーン内順番を一つずつ減らして格納する。
【0050】
次に、ストレージ搬入計画順=Sinの車両のストレージ搬入レーンを、既存のストレージ搬入レーン決定ロジックを基に決定する(ステップS133)。そして、ストレージ車両在籍状況を、決定したレーンへの車両搬入が実施された後のストレージ車両在籍状況へ更新する(ステップS134)。具体的には、搬入車両に対して、搬入レーンとして決定したレーンを設定し、レーン内順序として搬入レーンの最後尾に1加えた値を設定して、ストレージ車両在籍状況記憶部19に格納する。
次に、ストレージ搬入計画順序:Sinの値を1増加する(ステップS135)。そして、ステップS124へ戻り、更新されたストレージ車両在籍状況を基に、次のストレージ搬出車両を決定する処理を実行し、修正車両が搬出可能と判断されるまで処理を繰り返す。
【0051】
これにより、本発明では、修正車両が発生したことを検出した場合、その車両の組立工程における生産計画順序を再計画することができる。また、ストレージからの搬出車両を決定する際には、修正車両を優先して搬出するように計画することができるため、修正車両の遅延時間を従来よりも短縮することができる。
【0052】
次に、具体的な車両の例を用いて、本発明の生産順序再計画装置による組立工程生産計画順序計画処理の例について説明する。
【0053】
ここでは、塗装工程における車両生産順序は、図6に示した塗装工程車両生産順序例の通りとし、車両a〜z、A〜Zまでの車両が塗装工程を終了もしくは、生産仕掛り中であるとする。ここで、車両oが、検査工程により品質不良とされ、20分の修正作業が必要となったケースを例として以下に説明する。
【0054】
図13に、車両oに対する修正作業の実施が決定した時点のストレージの車両在籍状況を示す。この時点では、塗装工程車両生産順序のうちの車両a〜mがストレージ内に在籍している。図13では、各レーン上に位置する長方形が1台の車両を表し、その中に記載されている車両表記は、アルファベットは車両IDを意味し、アンダーバーの右の数字は、現在ストレージ内に在籍している車両におけるストレージ搬出計画順序を表している。ストレージ搬出計画順序の数字が「??」の車両は、まだ搬出順序が決定していないことを示している。また、括弧内の数字はストレージへの搬入順序を意味している。例えば、「c_2(3)」は、車両cは3番目にストレージ搬入され、ストレージ搬出が2番目に実施される計画であることを意味している。なお、(カ)のレーンは、搬出不可車両搬入レーン56であり、このレーンに在籍している「xxxx」「yyyy」の車両は、本例による組立工程生産計画順序計画処理の対象外である。
ここで、図13に示したストレージ車両在籍状況は、図8に示したストレージ車両在籍状況例に対応している。
【0055】
車両oに対する修正作業が発生すると、まず、修正車両ライン再投入位置予測部12による修正車両ライン投入位置予測処理が実行される。まず、車両oの修正作業は20分と推定されており、図5に示した車両通過時間間隔情報から、合流地点での車両通過時間間隔は1(分/台)であることから、車両oが修正作業を実施している間に合流地点を通過する車両は20台であることがわかる。
【0056】
本例では、検査ラインと合流地点は近いものと考え、修正作業開始から通常ラインへの合流までにかかる時間は修正作業時間のみであり、修正ラインから合流地点までの移動時間はかからないと考える。これにより、修正車両oが修正ラインへ移動した後、車両oの直後にラインを流れていた車両から20台が先に合流地点を通過すると考える。そして、修正車両ライン投入位置予測処理の結果として、図7に示した塗装工程車両生産順序例を基に、車両oから20台後である車両Jの後を修正車両ライン投入位置とする。
【0057】
次に、ストレージ搬入順序計画部13によるストレージ搬入順序計画処理が実行される。ここでは、塗装工程車両生産順序から車両oを取り出し、それ以降の車両を一つずつ詰め、車両Jの後ろに車両oを挿入した順序を作成し、ストレージ搬入計画順序とする。作成されたストレージ搬入計画順序が、図7に示したストレージ搬入計画順序例に対応する。
【0058】
次に、組立工程生産計画順序計画部14による組立工程生産計画順序計画処理が実行される。まず、ストレージ車両在籍状況から、ストレージ搬出計画決定ロジックを基に搬出計画を立てる。ここでは、ストレージ搬出計画決定ロジックにより、5台分の車両の搬出順番を計画するものとする。図13の例では、車両a、車両c、車両b、車両d、車両eの順で搬出する計画が立てられている。組立工程生産計画順序計画処理では、搬出計画の先頭の車両を1台搬出した後、図7に示したストレージ搬入計画順序で次に搬入が計画されている車両に対して、ストレージ搬入レーン決定ロジックにより搬入レーンを決定し、車両の搬入を実施する。この搬出・搬入を模擬する処理を、修正車両oが搬出可能となるまで繰り返す。
【0059】
図14は、修正車両oが遅延車両搬入レーン(オ)の先頭となり、搬出制約に違反しない状態である場合のストレージ車両在籍状況を示す。図14では、既に、ストレージ搬入計画順序で修正車両oより先にストレージへ搬入された車両a〜l、m〜z、A〜Eは搬出された状態で、搬出計画として車両F、車両G、車両H、車両I、車両Jの順で搬出が計画されていた場合を表している。ここで、組立工程生産計画順序計画処理において修正車両oの搬出が可能と判断された場合、修正車両oの搬出を最優先で実施するため、修正車両oを搬出車両として決定する。
【0060】
図15に修正車両oが搬出車両として決定した状態を示す。図15では、修正車両oの搬出順番が31に決定したことを示している。
【0061】
以上の処理の結果、車両oに対して修正作業の実施が決定した時点から、修正車両oのストレージからの搬出が決定するまでにストレージ搬出が実施された車両順序を、組立工程生産計画順序とする。このように、計画された組立工程生産計画順序が、図9に示した組立工程生産計画順序例に対応する。
【0062】
このように、塗装工程などで生じた修正作業により、生産計画順序から遅れた車両に対して、修正作業開始時点で組立工程の生産計画順序の再計画を作成することができる。その結果、修正車両のストレージから組立工程への搬出計画が事前に立てられるため、組立工程における計画的な部品在庫管理や組付け部品のラインへの供給が実施でき、作業員の負担を軽減することができる。
【0063】
また、本発明の他の実施の形態例を図16に示す。図16において、図4で説明した本発明による生産順序再計画システムの構成例に対応するものについては同一符号を付け、その説明を省略する。
【0064】
図4の構成では、検査の結果、修正作業が必要と判断された車両について、作業員がその車両の状態を直接見て判断し、その修正作業に要する時間を作業員が修正作業所要時間入力装置2A、2Bを介して入力していた。
一方、図16では、検査ライン703から修正ライン707へ移動する車両を監視するカメラなどから成る監視装置8と、監視装置8から画像情報などの情報を入力し、その情報を基に作業員が車両の状態を入力する車両状態入力装置91を設ける構成とする。また、生産順序再計画システム1には、修正作業所要時間推定部21と修正作業時間データ記憶部22を設ける。
【0065】
本実施の形態例では、作業員は、車両状態入力装置91に接続された入出力装置92に表示された車両の画像などを見て車両の状態を判断し、その車両状態を入力する。車両状態は、例えば、塗装工程で行った塗装の良否の程度を複数のレベルに分けて判断するもので、色むらなどの不良が軽微なもの(A)、色むらなどの不良はあるが中程度のもの(B)、色むらなどの不良が顕著なもの(C)などのように判定する。また、その色むらの面積や色むらの数などを入力するようにしてもよい。
作業員により入力された車両状態は、車両状態入力装置91から生産順序再計画システム1の修正作業所要時間推定部21へ入力する。修正作業所要時間推定部21は、車両状態と、その状態に対応した修正作業所要時間を定義した修正作業時間データ記憶部22を参照し、入力された修正車両の車両状態を基に修正作業の所要時間を推定し、修正作業所要時間記憶部15へ格納する。以降の動作は、図4の構成と同様である。修正作業時間データ記憶部22には、例えば色むらの程度に応じてAは5分、Bは10分、Cは20分などのように作業時間を定義しておく。
【0066】
このように、構成することで、作業員は、車両の状態のみを判断すればよく、作業の負担を軽減することができる。また、車両の状態を総合的に判断して修正作業に要する時間を推定するためには、そのための知識と経験を持つ作業員を配置する必要があるが、本実施の形態例では、作業員は、車両の状態のみを判断できればよい。
【0067】
また、本発明の更に他の実施の形態例を図17に示す。図17において、図4で説明した本発明による生産順序再計画システムの構成例に対応するものについては同一符号を付け、その説明を省略する。
【0068】
図17では、図16の構成と同様に、生産順序再計画システム1に、車両状態から修正作業の所要時間を推定する修正作業所要時間推定部21と、車両状態に対応した修正作業所要時間を定義した修正作業時間データ記憶部22を設ける。図17では、検査ライン703から修正ライン707へ移動する車両を監視するカメラなどから成る監視装置8と、監視装置8から画像情報などの情報を入力し、車両状態を自動的に判定する車両状態判定装置9を設ける。車両状態判定装置9は、監視装置8で撮影された車両の画像情報などを基に、画像解析処理を行い、例えば車両の塗装の色むらの程度を判定する。車両状態判定装置9で実施する画像解析処理は、例えば、正常な塗装状態の車両の画像と、修正車両の画像の画素を比較し、その差分を算出する処理とする。そして、その差分の値を基に、車両状態の程度を判定する。車両状態判定装置9で判定された車両状態は、生産順序再計画システム1の修正作業所要時間推定部21へ入力し、以降の処理は、図17の構成と同様である。
【0069】
このように構成することで、車両の状態は、車両状態判定装置9によって自動的に判定されるため、作業員が車両の状態を判断する必要もなくなり、作業員の負荷を更に軽減することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…生産順序再計画装置、2、2A、2B…修正作業所要時間入力装置、3…読み取り装置、4…車両通過検知・ID読込装置、5…自動搬出装置、6…表示装置、8…監視装置、9…車両状態判定装置、91…車両状態入力装置、92…入出力装置、11…修正作業所要時間入力部、12…修正車両ライン再投入位置予測部、13…ストレージ搬入順序計画部、14…組立工程生産計画順序計画部、15…修正作業所要時間記憶部、16…車両通過時間間隔情報記憶部、17…塗装工程車両生産順序記憶部、18…ストレージ搬入計画順序記憶部、19…ストレージ車両在籍状況記憶部、20…組立工程生産計画順序記憶部、21…修正作業所要時間推定部、22…修正作業時間データ記憶部、51〜54…通常車両搬入レーン、55…遅延車両搬入レーン、56…搬出不可車両搬入レーン、57…回送レーン、71…車体工程、72…塗装工程、73…検査工程、74…合流工程、75…ストレージ工程、76…組立工程、77…修正工程、701…車体ライン、702…塗装ライン、703…検査ライン、704…合流地点、705…ストレージ、706…組立ライン、707…修正ライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車種を同一ラインで生産するラインを有し、予め計画された車両生産順序に基づいて複数の工程により車両を生産する車両生産ラインにおいて、車体の塗装作業を行う塗装工程と車体に部品を組み付ける組立工程との間に、品質検査を実施する工程と、前記品質検査の結果、品質不良と判定された車両に対して修正作業を実施する工程とを有し、前記塗装工程と前記修正作業工程との合流工程から前記組立工程へ車両を投入する前に、車両を一時待機させるための複数の並列レーンを持つストレージ工程を備える車両生産ラインにおいて、前記修正作業を実施するため、予め計画された車両生産順序の通りに前記組立工程へ車両を投入できなくなった場合に、前記組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画システムであって、
前記修正作業工程へ投入される車両を検出する車両通過検知装置と、
前記修正作業工程へ投入される車両の修正作業の所要時間が入力される修正作業所要時間入力装置と、
前記車両通過検知装置から前記修正作業工程へ投入される車両を検出したとの通知を受けると、前記修正作業所要時間入力装置から入力された修正作業所要時間を基に、前記組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画装置とを備える生産順序再計画システム。
【請求項2】
請求項1記載の生産順序再計画システムにおいて、前記生産順序再計画装置には、
前記生産ラインに設けた通過ポイント毎に定義された車両の通過時間間隔を記憶する車両通過時間間隔情報記憶部と、
前記塗装工程の車両生産順序を記憶する塗装工程車両生産順序記憶部と、
前記修正作業所要時間入力装置から入力された修正作業所要時間を記憶する修正作業所要時間記憶部と、
前記車両通過時間間隔と、前記塗装工程車両生産順序と、前記修正作業所要時間を基に、修正作業実施車両の生産ラインへの再投入位置を予測する修正車両ライン再投入位置予測部と、
前記修正車両ライン再投入位置予測部により予測された修正作業実施車両の再投入位置と前記塗装工程車両生産順序を基に、前記ストレージ工程へ搬入する順序を計画するストレージ搬入順序計画部と、
前記計画されたストレージ搬入順序を基に、組立工程の生産順序を再計画する組立工程生産計画順序計画部とを備えることを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生産順序再計画システムにおいて、
前記ストレージ工程から前記組立工程の生産ラインへ車両を自動的に搬出する自動搬出装置を備え、
前記生産順序再計画装置によって再計画された前記組立工程の車両生産順序に従って、前記自動搬出装置が車両を搬出することを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の生産順序再計画システムにおいて、
前記組立工程の生産ラインの近傍に、車両の生産状況を出力する出力装置を備え、
前記生産順序再計画装置によって再計画された前記組立工程の車両生産順序に関する情報を前記出力装置へ出力することを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生産順序再計画システムにおいて、
前記修正作業工程へ投入される車両を監視する監視装置と、前記監視装置の監視結果を基に、作業員が前記車両の品質状態を入力する入力装置とを備えた車両状態入力装置を設け、
前記生産順序再計画装置には、
車両の品質状態に対応する修正作業の所要時間を定義した修正作業時間データ記憶部と、
前記車両状態入力装置から入力された車両の品質状態と、前記修正作業時間データから修正作業所要時間を推定する修正作業所要時間推定部を備えることを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生産順序再計画システムにおいて、
前記修正作業工程へ投入される車両を監視する監視装置と、前記監視装置の監視結果を解析し、前記車両の品質状態を自動的に判定する車両状態判定装置を設け、
前記生産順序再計画装置には、
車両の品質状態に対応する修正作業の所要時間を定義した修正作業時間データ記憶部と、
前記車両状態判定装置から入力された車両の品質状態と、前記修正作業時間データから修正作業所要時間を推定する修正作業所要時間推定部を備えることを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項7】
複数の車種を同一ラインで生産するラインを有し、予め計画された車両生産順序に基づいて複数の工程により車両を生産する車両生産ラインにおいて、車体の塗装作業を行う塗装工程と車体に部品を組み付ける組立工程との間に、品質検査を実施する工程と、前記品質検査の結果、品質不良と判定された車両に対して修正作業を実施する工程とを有し、前記塗装工程と前記修正作業工程との合流工程から前記組立工程へ車両を投入する前に、車両を一時待機させるための複数の並列レーンを持つストレージ工程を備える車両生産ラインにおいて、前記修正作業を実施するため、予め計画された車両生産順序の通りに前記組立工程へ車両を投入できなくなった場合に、前記組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画装置であって、
前記生産ラインに設けた通過ポイント毎に定義された車両の通過時間間隔を記憶する車両通過時間間隔情報記憶部と、
前記塗装工程の車両生産順序を記憶する塗装工程車両生産順序記憶部と、
前記修正作業工程へ投入される車両の修正作業の所要時間を記憶する修正作業所要時間記憶部と、
前記車両通過時間間隔と、前記塗装工程車両生産順序と、前記修正作業所要時間を基に、修正作業実施車両の生産ラインへの再投入位置を予測する修正車両ライン再投入位置予測部と、
前記修正車両ライン再投入位置予測部により予測された修正作業実施車両の再投入位置と前記塗装工程車両生産順序を基に、前記ストレージ工程へ搬入する順序を計画するストレージ搬入順序計画部と、
前記計画されたストレージ搬入順序を基に、前記組立工程の生産順序を再計画する組立工程生産計画順序計画部とを備えることを特徴とする生産順序再計画装置。
【請求項8】
複数の車種を同一ラインで生産するラインを有し、予め計画された車両生産順序に基づいて複数の工程により車両を生産する車両生産ラインにおいて、車体の塗装作業を行う塗装工程と車体に部品を組み付ける組立工程との間に、品質検査を実施する工程と、前記品質検査の結果、品質不良と判定された車両に対して修正作業を実施する工程とを有し、前記塗装工程と前記修正作業工程との合流工程から前記組立工程へ車両を投入する前に、車両を一時待機させるための複数の並列レーンを持つストレージ工程を備える車両生産ラインにおいて、前記修正作業を実施するため、予め計画された車両生産順序の通りに前記組立工程へ車両を投入できなくなった場合に、前記組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画方法であって、
前記生産ラインに設けた通過ポイント毎に定義された車両の通過時間間隔と、前記塗装工程の車両生産順序と、前記修正作業工程へ投入される車両の修正作業の所要時間を基に、修正作業実施車両の生産ラインへの再投入位置を予測する処理と、
前記予測された修正作業実施車両の再投入位置と前記塗装工程車両生産順序を基に、前記ストレージ工程へ搬入する順序を計画する処理と、
前記計画されたストレージ搬入順序を基に、前記組立工程の生産順序を再計画する処理を行うことを特徴とする生産順序再計画方法。
【請求項1】
複数の車種を同一ラインで生産するラインを有し、予め計画された車両生産順序に基づいて複数の工程により車両を生産する車両生産ラインにおいて、車体の塗装作業を行う塗装工程と車体に部品を組み付ける組立工程との間に、品質検査を実施する工程と、前記品質検査の結果、品質不良と判定された車両に対して修正作業を実施する工程とを有し、前記塗装工程と前記修正作業工程との合流工程から前記組立工程へ車両を投入する前に、車両を一時待機させるための複数の並列レーンを持つストレージ工程を備える車両生産ラインにおいて、前記修正作業を実施するため、予め計画された車両生産順序の通りに前記組立工程へ車両を投入できなくなった場合に、前記組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画システムであって、
前記修正作業工程へ投入される車両を検出する車両通過検知装置と、
前記修正作業工程へ投入される車両の修正作業の所要時間が入力される修正作業所要時間入力装置と、
前記車両通過検知装置から前記修正作業工程へ投入される車両を検出したとの通知を受けると、前記修正作業所要時間入力装置から入力された修正作業所要時間を基に、前記組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画装置とを備える生産順序再計画システム。
【請求項2】
請求項1記載の生産順序再計画システムにおいて、前記生産順序再計画装置には、
前記生産ラインに設けた通過ポイント毎に定義された車両の通過時間間隔を記憶する車両通過時間間隔情報記憶部と、
前記塗装工程の車両生産順序を記憶する塗装工程車両生産順序記憶部と、
前記修正作業所要時間入力装置から入力された修正作業所要時間を記憶する修正作業所要時間記憶部と、
前記車両通過時間間隔と、前記塗装工程車両生産順序と、前記修正作業所要時間を基に、修正作業実施車両の生産ラインへの再投入位置を予測する修正車両ライン再投入位置予測部と、
前記修正車両ライン再投入位置予測部により予測された修正作業実施車両の再投入位置と前記塗装工程車両生産順序を基に、前記ストレージ工程へ搬入する順序を計画するストレージ搬入順序計画部と、
前記計画されたストレージ搬入順序を基に、組立工程の生産順序を再計画する組立工程生産計画順序計画部とを備えることを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生産順序再計画システムにおいて、
前記ストレージ工程から前記組立工程の生産ラインへ車両を自動的に搬出する自動搬出装置を備え、
前記生産順序再計画装置によって再計画された前記組立工程の車両生産順序に従って、前記自動搬出装置が車両を搬出することを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の生産順序再計画システムにおいて、
前記組立工程の生産ラインの近傍に、車両の生産状況を出力する出力装置を備え、
前記生産順序再計画装置によって再計画された前記組立工程の車両生産順序に関する情報を前記出力装置へ出力することを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生産順序再計画システムにおいて、
前記修正作業工程へ投入される車両を監視する監視装置と、前記監視装置の監視結果を基に、作業員が前記車両の品質状態を入力する入力装置とを備えた車両状態入力装置を設け、
前記生産順序再計画装置には、
車両の品質状態に対応する修正作業の所要時間を定義した修正作業時間データ記憶部と、
前記車両状態入力装置から入力された車両の品質状態と、前記修正作業時間データから修正作業所要時間を推定する修正作業所要時間推定部を備えることを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生産順序再計画システムにおいて、
前記修正作業工程へ投入される車両を監視する監視装置と、前記監視装置の監視結果を解析し、前記車両の品質状態を自動的に判定する車両状態判定装置を設け、
前記生産順序再計画装置には、
車両の品質状態に対応する修正作業の所要時間を定義した修正作業時間データ記憶部と、
前記車両状態判定装置から入力された車両の品質状態と、前記修正作業時間データから修正作業所要時間を推定する修正作業所要時間推定部を備えることを特徴とする生産順序再計画システム。
【請求項7】
複数の車種を同一ラインで生産するラインを有し、予め計画された車両生産順序に基づいて複数の工程により車両を生産する車両生産ラインにおいて、車体の塗装作業を行う塗装工程と車体に部品を組み付ける組立工程との間に、品質検査を実施する工程と、前記品質検査の結果、品質不良と判定された車両に対して修正作業を実施する工程とを有し、前記塗装工程と前記修正作業工程との合流工程から前記組立工程へ車両を投入する前に、車両を一時待機させるための複数の並列レーンを持つストレージ工程を備える車両生産ラインにおいて、前記修正作業を実施するため、予め計画された車両生産順序の通りに前記組立工程へ車両を投入できなくなった場合に、前記組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画装置であって、
前記生産ラインに設けた通過ポイント毎に定義された車両の通過時間間隔を記憶する車両通過時間間隔情報記憶部と、
前記塗装工程の車両生産順序を記憶する塗装工程車両生産順序記憶部と、
前記修正作業工程へ投入される車両の修正作業の所要時間を記憶する修正作業所要時間記憶部と、
前記車両通過時間間隔と、前記塗装工程車両生産順序と、前記修正作業所要時間を基に、修正作業実施車両の生産ラインへの再投入位置を予測する修正車両ライン再投入位置予測部と、
前記修正車両ライン再投入位置予測部により予測された修正作業実施車両の再投入位置と前記塗装工程車両生産順序を基に、前記ストレージ工程へ搬入する順序を計画するストレージ搬入順序計画部と、
前記計画されたストレージ搬入順序を基に、前記組立工程の生産順序を再計画する組立工程生産計画順序計画部とを備えることを特徴とする生産順序再計画装置。
【請求項8】
複数の車種を同一ラインで生産するラインを有し、予め計画された車両生産順序に基づいて複数の工程により車両を生産する車両生産ラインにおいて、車体の塗装作業を行う塗装工程と車体に部品を組み付ける組立工程との間に、品質検査を実施する工程と、前記品質検査の結果、品質不良と判定された車両に対して修正作業を実施する工程とを有し、前記塗装工程と前記修正作業工程との合流工程から前記組立工程へ車両を投入する前に、車両を一時待機させるための複数の並列レーンを持つストレージ工程を備える車両生産ラインにおいて、前記修正作業を実施するため、予め計画された車両生産順序の通りに前記組立工程へ車両を投入できなくなった場合に、前記組立工程における車両生産順序を再計画する生産順序再計画方法であって、
前記生産ラインに設けた通過ポイント毎に定義された車両の通過時間間隔と、前記塗装工程の車両生産順序と、前記修正作業工程へ投入される車両の修正作業の所要時間を基に、修正作業実施車両の生産ラインへの再投入位置を予測する処理と、
前記予測された修正作業実施車両の再投入位置と前記塗装工程車両生産順序を基に、前記ストレージ工程へ搬入する順序を計画する処理と、
前記計画されたストレージ搬入順序を基に、前記組立工程の生産順序を再計画する処理を行うことを特徴とする生産順序再計画方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−244200(P2010−244200A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90414(P2009−90414)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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