説明

田植機のフロート

【課題】作業に伴う水の流れを車両後方へ導出するとともに車両全幅に亘って整地可能および荷重調節可能としたフロートを備え、作業性および作業効率を向上させた田植機を提供する。
【解決手段】車両後部に植付部15を配設し、植付部15を構成する苗載台16は、植付フレーム20に左右往復摺動自在に支持し、植付フレーム20に植付深さ調節支点軸67を回動自在に枢支させるとともに、植付深さ調節支点軸67には、ブラケット68,69および植付深さ調節リンク70,71を介して取付けた、センターフロート34およびサイドフロート35からなる複数のフロート34,35を備え、センターフロート34とサイドフロート35とは、車両進行方向のフロート34,35の接地面の軌跡が、センターフロート34とサイドフロート35の間で整地残りを防止する形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部の植付部に設けたフロートを備える田植機に関し、より詳細には、フロートを構成するセンターフロートとサイドフロートとの間に、圃場の水を車両後方へ向けて導出する流水路を設けた田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の田植機には、車両後部に植付部を配設し、この植付部を構成する苗載台は、植付フレームに左右往復摺動自在に支持し、植付フレームに植付深さ調節支点軸を回動自在に枢支させるとともに、植付深さ調節支点軸には、ブラケットおよび植付深さ調節リンクを介して取付けた、センターフロートおよびサイドフロートからなる3枚のフロートを備えるもの(例えば特許文献1〜3など)があり、フロートの上下揺動により圃場植付面の高さを感知して植付部を昇降させ、苗株の植付深さを一定に維持するとともに、これらフロートにより圃場面の整地を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−190709号公報
【特許文献2】特開平7−39219号公報
【特許文献3】特開2003−153618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような田植機では、フロートとフロートとの間隔を十分に空けないと圃場に水が多く張られたり、あるいは水が溜まるなどして水嵩が高い圃場において高速作業を行う場合、水の通り路がないため、この圃場の水が泥とともにフロート上を通過し、フロート上面に載った泥によりフロートが載荷されるほか、フロートの左右側方に流れる水が多くなり、その勢いにより隣接する植付けを終えた苗を倒してしまい、倒れた苗を作業者が手作業で再度植付けなければならず、作業性が悪いという問題が生じる。それを解消するため、各フロートは、車両進行方向に対し適宜間隔を有して平行に取付けられているので、車両の進行に伴いフロートの設置部分に位置する圃場は整地効果を有するが、車両の全幅に亘りフロートを有しながらフロート間に位置する圃場は整地できず、植付面が凹凸になり、苗が植付深さを保つため、植付をきれいに行うことができない。また、凸面に雑草が生えるという問題があった。さらには、フロートの荷重では押し潰せない土塊が、圃場面の一部にあった場合、フロートの上動により植付部が上昇してしまうため、苗が浅植え状態になったり、土塊が圃場水面より上方に出て、雑草が生え易くなる問題もあった。
そこで、この発明の目的は、作業に伴う水の流れを車両後方へ導出するとともに車両全幅に亘って整地可能なフロートを備え、作業性および作業効率を向上させ、さらに硬い土壌の条件でも整地性能を確保し、苗の植付深さを安定させた田植機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、車両後部に植付部を配設し、前記植付部を構成する苗載台は、植付フレームに左右往復摺動自在に支持し、前記植付フレームに植付深さ調節支点軸を回動自在に枢支させるとともに、前記植付深さ調節支点軸には、ブラケットおよび植付深さ調節リンクを介して取付けた、センターフロートおよびサイドフロートからなる複数のフロートを備える田植機において、前記センターフロートと前記サイドフロートとは、車両進行方向の前記フロートの接地面の軌跡が、前記センターフロートと前記サイドフロートの間で整地残りを防止する形状としたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記センターフロートおよび前記サイドフロート間に、圃場の水を車両後方へ向けて導出する流水路を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の田植機において、前記センターフロートは、リンク機構に取付けた連動部材を介して前記植付部を昇降させる昇降機構の油圧バルブのバルブアームに連係し、前記センターフロートの上下動に伴い前記植付部を昇降させることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の田植機において、前記バルブアームの近傍には、該バルブアームの作動を制動するセンターフロート荷重調節部材を設けるとともに、前記センターフロート荷重調節部材は、リンク部材を介して前記センターフロート荷重調節部材を作動させる操作部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、車両後部に植付部を配設し、植付部を構成する苗載台は、植付フレームに左右往復摺動自在に支持し、植付フレームに植付深さ調節支点軸を回動自在に枢支させるとともに、植付深さ調節支点軸には、ブラケットおよび植付深さ調節リンクを介して取付けた、センターフロートおよびサイドフロートからなる複数のフロートを備える田植機において、センターフロートとサイドフロートとは、車両進行方向のフロートの接地面の軌跡が、センターフロートとサイドフロートの間で整地残りを防止する形状としたので、車両全幅に亘って各フロートにより整地可能とし、整地残しを防ぐことができる。従って、整地性能を向上させた田植機を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、センターフロートおよびサイドフロート間に、圃場の水を車両後方へ向けて導出する流水路を設けたので、圃場の水の植付作業に伴う車両側方への流出を防ぎ、隣接する苗を倒すことなく、また、フロート上面への泥の載荷も防止することができる。従って、作業性を向上させた田植機を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、センターフロートは、リンク機構に取付けた連動部材を介して植付部を昇降させる昇降機構の油圧バルブのバルブアームに連係し、センターフロートの上下動に伴い植付部を昇降させるので、センターフロートの姿勢により圃場植付面の高さを感知して植付部を昇降させ、苗株の植付深さを一定に維持させることができる。従って、作業性を向上させた田植機を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、バルブアームの近傍には、このバルブアームの作動を制動するセンターフロート荷重調節部材を設けるとともに、センターフロート荷重調節部材は、リンク部材を介してセンターフロート荷重調節部材を作動させる操作部材を備えるので、圃場表面から突出した硬い土塊をフロートで押し潰せない場合、センターフロート荷重調節部材によりセンターフロートの押し上げ荷重を上昇させて、圃場表面の均平性能を確保し、センターフロートの上動による植付部の浮き上がりを防止することができる。従って、硬い圃場でも整地性能を向上させ、苗の植付深さを安定させた田植機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一例としての田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の作業部の側面図である。
【図3】同作業部の平面図である。
【図4】センターフロート前端部の斜視図である。
【図5】センターフロートの斜視図である。
【図6】左サイドフロートの斜視図である。
【図7】流水路による水の流れを説明する各フロートの配置を模式的に示した斜視図である。
【図8】リンク部材および操作部材を備えるセンターフロート荷重調節部材を設置した、荷重調節部材の入状態(フロート荷重が重くなる)を示す昇降機構の油圧バルブにおけるバルブアーム近傍の側面図である。
【図9】リンク部材および操作部材を備えるセンターフロート荷重調節部材を設置した、荷重調節部材の切状態(フロート荷重は通常)を示す昇降機構の油圧バルブにおけるバルブアーム近傍の側面図である。
【図10】植付部の下部にレーキを備える田植機後部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例として、田植機の全体側面図、図2は田植機の植付部の側面図、図3は植付部の平面図、図4はセンターフロート前端部の斜視図である。
【0015】
本願の田植機1は作業者が搭乗する車両であり、4条植えを例に説明する。図1〜2に示すように、エンジン2を車体フレーム3に搭載させ、前後方向に長手状のミッションケース4前方に、フロントアクスルケース5を介して水田走行用の前輪6を支持させるとともに、ミッションケース4後部のリヤアクスルケース7に水田走行用の後輪8を支持させる。
【0016】
そして、エンジン2などを覆うボンネット9の両側に予備苗載台10を取付けるとともに、作業者が搭乗する車体カバー11によってミッションケース4などを覆い、車体カバー11後側の運転台12上面に運転席13を取付け、その運転席13の前方でボンネット9後部に操向ハンドル14が設けられる。
【0017】
また、植付部15は、4条植え用の苗載台16並びに複数の苗植付爪17などを具備するものであり、前高後低の合成樹脂製の前傾式苗載台16を下部レール18およびガイドレール19を介して植付フレーム20に左右往復摺動自在に支持させるとともに、一方向に等速回転させるロータリケース21を植付フレーム20に支持させ、このロータリケース21の回転軸芯を中心とした対称位置に一対の爪ケース22を配設し、その爪ケース22先端に苗植付爪17が取付けられる。
【0018】
また、植付フレーム20の左右両端側に左右サイドフレーム23を立設させて苗載台16を支持させ、植付フレーム20左右中央のヒッチブラケット24をトップリンク25およびロワーリンク26を含む昇降機構27を介して車両に連結させ、この車両に設けた油圧式の昇降シリンダ28をロワーリンク26に連結させ、この昇降シリンダ28の駆動時に昇降機構27を介して植付部15を昇降させるとともに、植付部15の下降時には左右に往復摺動させる苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取出し、連続的に苗植え作業が可能な構成とされる。
【0019】
なお、符号29は主変速レバー、30は機体の搭乗位置は勿論のこと機体から降りた位置で走行停止などの操作を可能とさせる苗継ぎレバー、32は主クラッチペダル、34はセンターフロート、35はサイドフロート、36は施肥機、37は後輪8の外側に配備させる補助車輪である。
【0020】
また、施肥機36は、肥料を入れる肥料ホッパ38と、肥料を供給する肥料繰出部である肥料繰出ケース39と、フロート34,35の側条作溝器40にフレキシブル形搬送ホース41を介して肥料を排出させるターボブロワー型送風機42と、円筒形のエアタンク43とを備えるとともに、エアタンク43右側端に、この送風機42を取付け、肥料繰出ケース39をエアタンク43上側に配設させ、肥料ホッパ38の後側に苗載台16の上端を近接配備させている。
【0021】
次に図2〜3に示すように、植付フレーム20は、各2条分用のパイプ製左右縦フレーム44a,44bと、これら左右縦フレーム44a,44bの前端間を連結するパイプ製横フレーム45とを備え、十字管継手46を各縦フレーム44a,44b後端に溶接固定させ、回転軸47を介してロータリケース21を十字管継手46に回転自在に支持させるとともに、十字管継手48a,48bを縦フレーム44a,44bと横フレーム45に溶接固定させて、これら縦および横フレーム44a,44b,45を一体連結させて構成される。
【0022】
また、十字管継手48bの前端部に植付入力軸49を設け、ミッションケース4のそれぞれ図示しないPTO軸からの駆動力を自在軸継手を介し入力軸49に伝達させ、横フレーム45に内設する植付駆動軸51にベベルギヤ49a,52を介して入力軸49を連動連結させるとともに、左右縦フレーム44a,44bに内設する植付爪駆動軸53をベベルギヤ52,54および安全クラッチ55を介して植付駆動軸51に連結させ、回転軸47にそれぞれ図示しないベベルギヤおよび植付爪ユニットクラッチを介して植付爪駆動軸53を連動連結させ、苗植付爪17の駆動を行う構成とされる。
【0023】
さらに、苗載台16の左右方向の横送りと、苗載台16上の苗の縦送りとを行う苗送り軸58を苗送りケース59を介して植付駆動軸51の左端に連動連結させ、十字管継手48aの左側フランジ部60に苗送りケース59の一端側フランジ部61をボルト止め固定させ、苗送りケース59の他端側に苗送り軸58の左端を挿入支持させ、苗送りケース59内の駆動軸51と苗送り軸58間に高低変速用の2組の図示しない切換ギヤで形成する変速機構64を介在させ、機体略中心に対し苗送り軸58の左半分を苗縦送りカム軸65および右半分を苗台横送りネジ軸66に設けて、苗送り軸58の高低2速の回転駆動時に苗載台16の横送りと、苗載台16上の苗の縦送りを行う構成とされる。
【0024】
次に、植付フレーム20の前端下側に植付深さ調節支点軸67を回動自在に枢支させ、センターフロート34および左右サイドフロート35後端上面のブラケット68,69を、植付深さ調節リンク70,71を介して植付深さ調節支点軸67に連結させ、センターフロート34を、左右サイドフロート35より進行方向前方に設置(センターフロート34の前端が左右サイドフロート35の前端より前方に位置)する。また、センターフロート34の前端に連結するリンク機構70によってフロート傾斜角度の変化が検出される。
【0025】
さらに、センターフロート34の前端部は、図4に示すように、上面に固設されたブラケット62が、フロート支持体33に支持された支持アーム61と、上リンク71および下リンク72から構成されるリンク機構70を介して連動連結されている。そして、上リンク71に、図8〜9で後述する昇降機構27のそれぞれ図示しない油圧駆動部の油圧バルブから後方向に延設される連動ワイヤ46の後端部が連結されて、この連動ワイヤ46が上リンク71の回動により前後方向に押し引きされるように構成されている。
【0026】
そして、圃場面の状態などにより、センターフロート34の上下方向の揺動時において、例えば、このセンターフロート34の前端部が上動した場合、下リンク72により上リンク71が押し上げられて、枢支ピン73を支点として左側面視時計回り方向に回動される。次いで、この上リンク71の回動に伴い、図示しない突出部が後方へ移動されて、該突出部に緩衝バネ76を介して連結された連動ワイヤ46が後方へと引っ張られ、後述する昇降機構27の油圧バルブ109が、昇降シリンダ28内に作動油を流入するよう作動される。その結果、昇降シリンダ28が収縮作動して、昇降機構27により植付部3が走行部2に対して上昇される。
【0027】
一方、センターフロート34の前端部が下動した場合、下リンク72を介して枢支ピン74による枢支点が下方へ引っ張られ、上リンク71が枢支ピン73を支点として左側面視反時計回り方向に回動される。そして、上リンク71の回動に伴い前方へ移動された前記突出部に緩衝バネ76を介して連結された連動ワイヤ46が前方へと押し出され、油圧バルブ109が昇降シリンダ28内から作動される。その結果、昇降シリンダ28が伸張作動し、昇降機構27により植付部3が走行部2に対して下降される。
【0028】
次に、本願発明の田植機1におけるフロートの形状について説明する。図5はセンターフロートの斜視図、図6は左サイドフロートの斜視図、図7は流水路による水の流れを説明する各フロートの配置を模式的に示した斜視図である。
【0029】
まず、左右のサイドフロート35は、図3および図6に示すように、例えば中央両端部から後方に向けて平行に延設した二股部35b,35cを有し、車両内側端部を、サイドフロート35の前端部から中途部まで車両内側に向けて傾設させた傾設部35aが設けられる。なお、サイドフロート35の形状は図例に限定されるものではない。
【0030】
また、センターフロート34は、図3および図5に示すように、例えば、前部左右に膨出部34aを形成し、フロート34,35の植付部15への設置状態において、サイドフロート35の傾設部35aに対向する位置における膨出部34aの両端後部には、傾設部35aと略平行になる平行部34bが形成される。なお、センターフロート34の形状は図例に限定されるものではない。
【0031】
そして、フロート34,35の植付部15への設置状態において、センターフロート34の平行部34bと、サイドフロート35の傾設部35aとの間に形成されたスペースが流水路100とされる。なお、この流水路100および左右のサイドフロート35の各車両内側に位置する二股部35bは、後輪8の後方に位置する構成とされる。
【0032】
このような構成にすることで、図7に示すように、植付作業に伴う圃場の水が、各フロート34,35間の流水路100に沿って誘導され、車両内側後方に導出させ易くなる。このため、圃場水の車両側方への流出(放出)を防ぎ、その水圧により隣接する植付けた苗を倒すことなく、苗の植付作業を効率的に行うことができる。
【0033】
また、泥を含む圃場水が、流水路100に沿って誘導されるため、各フロート34,35上を通過する泥水の量も減少する。その結果、各フロート34,35上面への泥の載荷を防止し、各フロート34,35の均平性能を維持できるとともに、昇降機構27の制御に必要なセンターフロート34の揺動検知を正確に行うことができる。
【0034】
また、流水路100の前後位置を各フロート34,35によって重複させることで、車両全幅に亘って各フロート34,35により整地可能とし、整地残しを防ぐことができる。さらに、この流水路100は、車両の後輪後方に形成したので、圃場に生じた後輪の走行跡に圃場の泥水を誘導後、サイドフロート35によって整地するので、走行跡が埋まり易くなる。
【0035】
次に、本願発明の田植機1におけるセンターフロート34は、センターフロート荷重調節部材により、その押し上げ荷重を任意に変更させることができる。図8はリンク部材および操作部材を備えるセンターフロート荷重調節部材を設置した、荷重調節部材の入状態(フロート荷重が重くなる)を示す昇降機構の油圧バルブにおけるバルブアーム近傍の側面図、図9はリンク部材および操作部材を備えるセンターフロート荷重調節部材を設置した、荷重調節部材の切状態(フロート荷重は通常)を示す昇降機構の油圧バルブにおけるバルブアーム近傍の側面図である。
【0036】
上述した図4中の連動ワイヤ46は、図8に示すように、昇降機構27のそれぞれ図示しない油圧駆動部の油圧バルブを操作するバルブアーム104に連動部材101を介して連結される。このバルブアーム104の後方には、油圧バルブ109上に、センターフロート荷重調節部材105が設置される。
【0037】
このセンターフロート荷重調節部材105は、平行リンク106と、この平行リンク106の部材間に取付けられた押圧部材107と、平行リンク106から延設された操作部材108とからなり、操作部材108の前後摺動操作により平行リンク106の下部材106aの前後動を介して押圧部材107が前後動される。なお操作部材108は、運転席13近傍位置など操作し易い位置まで適宜延設させてもよい。
【0038】
ここで、例えば、圃場の土が硬く、圃場面に土塊を有することで、センターフロート34の前部が上動し、昇降機構27を介して植付部15が上昇してしまい、植付苗を浅植えしてしまう恐れなどがある場合には、図8に示すように、操作部材108を入位置に摺動させると、平行リンク106の下部材106aが前方に移動し、バルブアーム104が油圧バルブ109のスプール110を、「植付部下げ」から「植付部上げ」の位置に押す間、バネ111がバルブアーム104に作用する。
【0039】
従って、上述のように圃場面の土塊によりセンターフロート34の前部に、例えば上動の力が加わり、バルブアーム104を作動させるため連動ワイヤ46が後方に引かれようとしても、バルブアームピン104aが押圧部材107により押圧されているため、センターフロート34の押し上げ荷重が上昇し、このセンターフロート34や連動ワイヤ46およびバルブアーム104を制動する。
【0040】
その結果、昇降機構27が作動しないことから、植付部15の上昇を防ぐことができる。
【0041】
なお、上述とは逆に、圃場の表面の土が軟らかいときは、センターフロート34によるバルブ操作荷重が重いと、センターフロート34がかなり地面に沈まなければ植付部15が「上げ」にならないため、植付深さが深くなりすぎるとともに、フロート34,35の跡も深くなるので、図9に示すように、操作部材108を切位置に摺動させると、平行リンク106の下部材106aが後方に摺動するに伴い、押圧部材107が後方に移動し、この押圧部材107がバルブアーム104のバルブアームピン104aから離間してバルブアームピン104aへの押圧が解除される。
【0042】
このような構成により、圃場表面から突出した硬い土塊をセンターフロート34で押し潰せない場合、センターフロート荷重調節部材105によりセンターフロート34の押し上げ荷重を上昇させて、圃場表面の均平性能を確保するほか、センターフロート34の上動による植付部15の浮き上がりを防止することができる。
【0043】
次に、本願発明の田植機1には、フロート前方にレーキを設置させることができる。図10は植付部の下部にレーキを備える田植機後部の斜視図である。
【0044】
この図10に示すように、左右のサイドフロート35の前方には、レーキ109が取付けられる。このレーキ109は、折曲させたステンレスなどの金属棒からなる複数の指部110を櫛状に並設したものであり、それら基端部を取付部材111に固定させ、この取付部材111を、植付深さ調節支点軸67などにボルト固定などして取付ける。なお、レーキ109の材質や取付方法は上述に限定されない。
【0045】
また、例えば、植付深さ調節支点軸67周面の円周方向に設けた複数のボルト穴から選択した1つのボルト穴と、取付部材111のボルト穴とをボルト固定することで、レーキ109の設置高さを任意に調整することができる。
【0046】
また、各指部110は、側面視で先端(後部)ほど車両後方側に傾斜させた傾斜部110aを設けるとともに、この傾斜部110aは、サイドフロート35前部の上方に傾斜させた傾斜部35bの前方に位置させる。なお、上述のレーキ109は、左右のサイドフロート35前方位置に設置したが、センターフロート34の前方位置にも上述同様に設置してもよい。
【0047】
このような構成にすることで、表面に比較的硬い土塊が突出している圃場を走行作業する際、この硬い土塊を、サイドフロート35(センターフロート34)の整地前段階でレーキ109により粉砕でき、フロート34,35の整地効果を高めることができる。また、レーキ109で粉砕できない土塊がある場合には、この硬い土塊をレーキ109の指部110で土中に押し込むことができるため、フロート34,35の整地効果をより高めることができる。
【0048】
さらに、レーキ109は、サイドフロート35前方の狭い空間内において、傾斜部110aにより下方から後方に向けて傾設させているため、レーキ109の車両前後方向の直線長さを短くすることができ、その結果、植付部15を車両後方へ下げて設置する必要がなく、レーキ109の設置によっても車両サイズを維持することができる。
【0049】
以上詳述したように、この例の田植機1は、車両後部に植付部15を配設し、植付部15を構成する苗載台16は、植付フレーム20に左右往復摺動自在に支持し、植付フレーム20に植付深さ調節支点軸67を回動自在に枢支させるとともに、植付深さ調節支点軸67には、ブラケット68,69および植付深さ調節リンク70,71を介して取付けた、センターフロート34およびサイドフロート35からなる複数のフロート34,35を備え、センターフロート34とサイドフロート35とは、車両進行方向のフロート34,35の接地面の軌跡が、センターフロート34とサイドフロート35の間で整地残りを防止する形状としたものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
なお、この発明は、植付部にセンターフロートおよびサイドフロートを備えるあらゆる田植機に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 田植機
15 植付部
27 昇降機構
34 センターフロート
34a 膨出部
34b 平行部
35 サイドフロート
35a 傾設部
100 流水路
101 連動部材
102,103 規制部材
104 バルブアーム
105 センターフロート荷重調節部材
106 平行リンク
106a 下部材
107 押圧部材
108 操作部材
109 レーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に植付部を配設し、
前記植付部を構成する苗載台は、植付フレームに左右往復摺動自在に支持し、
前記植付フレームに植付深さ調節支点軸を回動自在に枢支させるとともに、前記植付深さ調節支点軸には、ブラケットおよび植付深さ調節リンクを介して取付けた、センターフロートおよびサイドフロートからなる複数のフロートを備える田植機において、
前記センターフロートと前記サイドフロートとは、車両進行方向の前記フロートの接地面の軌跡が、前記センターフロートと前記サイドフロートの間で整地残りを防止する形状としたことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記センターフロートおよび前記サイドフロート間に、圃場の水を車両後方へ向けて導出する流水路を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記センターフロートは、リンク機構に取付けた連動部材を介して前記植付部を昇降させる昇降機構の油圧バルブのバルブアームに連係し、前記センターフロートの上下動に伴い前記植付部を昇降させることを特徴とする、請求項1または2に記載の田植機。
【請求項4】
前記バルブアームの近傍には、該バルブアームの作動を制動するセンターフロート荷重調節部材を設けるとともに、前記センターフロート荷重調節部材は、リンク部材を介して前記センターフロート荷重調節部材を作動させる操作部材を備えることを特徴とする、請求項3に記載の田植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate