説明

田植機

【課題】植付作業時に、苗残量が苗の補給が必要な量まで減少したとき、別途操作を行わなくても、走行機体を速やかに停止状態または低速状態にすることができる田植機の技術を提供する。
【解決手段】苗植装置2を装着した走行機体3に、エンジン5の出力を変速して車輪6・7に伝達する無段変速装置21と、変速ペダル16の操作量に基づいて無段変速装置21の変速比を変更する変速アクチュエータ60とを備える田植機1において、苗植装置2における苗の残量が設定値であるか否かを検知する苗残量検知手段58と、苗残量検知手段58により苗の残量が設定値以下であることが検知されたとき、無段変速装置21の変速比が走行機体3を停止状態または低速状態とする値となるように、変速アクチュエータ60を駆動させる制御装置80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は田植機の技術に関し、より詳しくは田植機の走行速度の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体の後部に苗植装置を昇降可能に連結するとともに、電動ブロワの作動により肥料を圧送する施肥装置を装備した施肥装置付きの田植機の技術が広く知られている。
そして、このような田植機に、苗植装置の苗載台に載置した苗が残り少なくなったことを検出する苗残量検知手段(苗切れ検出センサ)や、施肥装置の肥料ホッパ内に収容した肥料が残り少なくなったことを検出する肥料残量検知手段(肥料切れ検出センサ)や、施肥装置の作溝器内で肥料詰まりが発生したことを検出する詰まり検知手段(肥料詰まり検出センサ)などを備える技術が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示される田植機では、苗残量検知手段、肥料残量検知手段、および詰まり検知手段が制御装置に入力接続されている。そして、これらのセンサの何れかが苗残量の減少、肥料残量の減少、あるいは肥料詰まりの発生などの状況を検出すると、前記制御装置に出力接続されている警報ランプなどの報知手段(警報発生手段)が作動し、作業者に苗の補給、肥料の補給、あるいは詰まった肥料の除去などの措置が必要となったことを報知するように構成されている。
【0004】
しかしながら、前記警報ランプなどの報知手段が作動してから作業者がこれを認識し、ブレーキなどの操作具により走行機体を停止するまでには時間差が生じてしまう上、操作が煩雑である点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2695567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は叙上の事情に鑑みてなされたものであり、植付作業時に、苗残量が苗の補給が必要な量まで減少したとき、肥料残量が肥料の補給が必要な量まで減少したとき、あるいは肥料詰まりが発生したとき、別途操作を行わなくても、走行機体を速やかに停止状態または低速状態にすることができる田植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の田植機においては、
苗植装置を装着した走行機体に、
エンジンの出力を変速して走行装置に伝達する無段変速装置と、
変速操作手段の操作量に基づいて前記無段変速装置の変速比を変更する変速アクチュエータとを備える田植機であって、
前記苗植装置における苗の残量が設定値であるか否かを検知する苗残量検知手段と、
前記苗残量検知手段により苗の残量が設定値以下であることが検知されたとき、前記無段変速装置の変速比が前記走行機体を停止状態または低速状態とする値となるように、前記変速アクチュエータを駆動させる制御装置とを備えるものである。
【0009】
請求項2に記載の田植機においては、
苗植装置および施肥装置を装着した走行機体に、
エンジンの出力を変速して走行装置に伝達する無段変速装置と、
変速操作手段の操作量に基づいて前記無段変速装置の変速比を変更する変速アクチュエータとを備える田植機であって、
前記施肥装置における肥料の残量が設定値以下であるか否かを検知する肥料残量検知手段と、
前記施肥装置における肥料詰まりが発生したか否かを検知する詰まり検知手段との少なくとも一方を備えるとともに、
前記肥料残量検知手段により肥料の残量が設定値以下であることが検知されたとき、または/および、前記詰まり検知手段により詰まりが発生したことが検知されたとき、前記無段変速装置の変速比が前記走行機体を停止状態または低速状態とする値となるように、前記変速アクチュエータを駆動させる制御装置とを備えるものである。
【0010】
請求項3に記載の田植機においては、
走行速度を検出する走行速度検知手段と、
走行速度を定速に設定する定速設定手段とを備え、
前記制御装置は、前記定速設定手段がオンされたとき、前記変速アクチュエータを走行速度がそのときの走行速度で定速に維持されるように駆動させるものである。
【0011】
請求項4に記載の田植機においては、
前記制御装置は、前記定速設定手段により走行速度が定速に維持されている場合、前記変速操作手段が操作されたとき、この定速での走行状態を解除するものである。
【0012】
請求項5に記載の田植機においては、
走行を停止させる操作が可能な走行停止操作手段を備え、
前記制御装置は、前記定速設定手段により走行速度が定速に維持されている場合、前記走行停止操作手段が操作されたとき、この定速での走行状態を解除するものである。
【0013】
請求項6に記載の田植機においては、
走行速度をそのすぐ前に前記定速設定手段により定速に設定されたときの走行速度で定速に再設定する再設定手段を備え、
前記制御装置は、前記定速設定手段により走行速度が定速に維持されていない場合、前記再設定手段がオンされたとき、前記変速アクチュエータを走行速度がそのすぐ前に前記定速設定手段により定速とされた際の走行速度で定速に維持されるように駆動させるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1に記載の田植機によれば、植付作業時に、苗の残量が設定値以下になったとき、即ち苗残量が苗の補給が必要な量まで減少したとき、走行を停止させる操作または低速で行う操作を別途行わなくても、無段変速装置の変速比を減速側に変更して、走行機体を速やかに停止状態または低速状態にすることが可能となる。また、苗の残量が設定値以下になったとき、作業者が要する操作手順が少なくなるため、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の田植機によれば、植付作業時に、肥料の残量が設定値以下になったとき、即ち肥料残量が肥料の補給が必要な量まで減少したとき、または肥料の詰まりが発生したとき、走行を停止させる操作または低速で行う操作を別途行わなくても、無段変速装置の変速比を減速側に変更して、走行機体を速やかに停止状態または低速状態にすることが可能となる。また、肥料の残量が設定値以下になったとき、または肥料の詰まりが発生したとき、作業者が要する操作手順が少なくなるため、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の田植機によれば、植付作業時における走行機体の走行速度を、定速設定手段をオンするだけの簡単な操作で固定することが可能となる。これにより、圃場面に苗を植え付ける間隔や、圃場面に肥料を落下させる間隔などを、一定に保持しやすくなり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の田植機によれば、定速設定手段による定速走行状態を、変速操作手段の操作により簡単に解除することが可能となる。これにより、定速走行状態で走行速度を変更したい場合に、変速操作手段の操作のみで定速走行状態を解除して、走行速度を変更することができるため、定速設定手段のオフする操作を省いて、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の田植機によれば、定速設定手段による定速走行状態を、走行停止操作手段の操作により簡単に解除することが可能となる。これにより、定速走行状態で走行を停止したい場合に、走行停止操作手段の操作のみで定速走行状態を解除して、走行を停止することができるため、走行停止操作手段のオフする操作を省いて、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の田植機によれば、再設定手段をオンするだけの簡単な操作で、走行速度をそのすぐ前の定速設定手段による定速走行状態での走行速度にして固定することが可能となる。これにより、圃場面に苗を植え付ける間隔や、圃場面に肥料を落下させる間隔などを、定速走行状態を解除した前後を通じて一定に保持しやすくなり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態に係る田植機の全体的な構成を示す左側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】走行変速ミッションの動力伝達機構を示す概略図である。
【図4】変速ペダルの操作による走行変速ミッションの作動機構を示す概略図である。
【図5】運転操作部と走行変速ミッションとの関係を示す概略図である。
【図6】変速アクチュエータの駆動による走行変速ミッションの作動機構を示す概略図である。
【図7】田植機の走行速度の制御機構を示すブロック図である。
【図8】苗残量による田植機の走行速度の制御態様を示すフロー図である。
【図9】肥料残量による田植機の走行速度の制御態様を示すフロー図である。
【図10】肥料詰まりによる田植機の走行速度の制御態様を示すフロー図である。
【図11】定速設定手段の設定状態による田植機の走行速度の制御態様を示すフロー図である。
【図12】再設定手段の設定状態による田植機の走行速度の制御態様を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る田植機の実施の一形態である田植機1について説明する。
まず、田植機1の全体的な構成について、図1における矢印A方向を前方向として説明する。
【0023】
図1、図2に示すように、田植機1は多条植式の苗植装置2と走行機体3とで構成される。苗植装置2は、走行機体3の後部に上下方向に回転可能に装着される。この田植機1においては、施肥装置9が走行機体3の後部に装着され、苗植装置2の前方に配置されている。
【0024】
走行機体3では、車体フレーム4が左右一対の前車輪6と、左右一対の後車輪7とで支持される。車体フレーム4には、エンジン5が搭載されるとともに、走行変速ミッション20が搭載される。そして、エンジン5の出力が走行変速ミッション20により適宜変速されたあと、各車輪6・7に伝達されるように構成される。これにより、走行機体3が走行可能とされる。
【0025】
また、車体フレーム4には運転操作部10が設けられる。運転操作部10には座席12、操縦ハンドル13、変速レバー、表示パネル15、変速ペダル16、ブレーキペダル17等が備えられる。変速ペダル16およびブレーキペダル17は、前方向への足踏み式のペダルであり、操縦ハンドル13の右側で運転操作部10の床面に左右に並べられて、車体フレーム4に枢着される。
【0026】
図2に示すように、表示パネル15は操縦ハンドル13の近傍に配置される。表示パネル15には、機体状況を表示する表示手段が備えられるとともに、後述する苗や肥料の切れおよび肥料の詰まり等の問題が発生した場合に、これを操縦者に報知する報知手段が備えられる。
【0027】
この報知手段は、たとえば、図示せぬ表示ランプを表示パネル本体に設け、前述のような不具合が発生した場合に点灯または点滅するようにして構成される。ただし、報知手段は、ブザー等を表示パネル本体に設け、前述のような問題が発生した場合に報知音がなるようにして構成することも可能である。また、報知手段は表示パネルに限らず、別の部材に備えてもよい。
【0028】
以下では、苗植装置2の構成について、図1および図2を参照して説明する。
苗植装置2は、油圧シリンダにより駆動される昇降リンク機構を介して、走行機体3の後部に昇降可能に装着されている。この苗植装置2には、植付ミッションケース52、苗載台53、植付機構54、および整地フロート56などが備えられる。
【0029】
走行機体3に搭載されるエンジン5から取り出された出力の一部は、植付ミッションケース52に伝達されたあと、植付機構54等に伝達される。圃場面に植え付けられる苗は、マット状苗として苗載台53に並列に載置されて、苗載台53とともに一定ストロークで往復横移動(左右移動)される。苗載台53上の苗は、回転式の植付機構54により苗載台53の下端から一株ずつ切り出されて、圃場面に植え付けられる。苗植装置2の下部には左右方向に並設された整地フロート56が備えられ、この整地フロート56により圃場面における苗の植付予定箇所が均平される。
【0030】
苗載台53の下手側には、載置されたマット状苗を下端の苗取出箇所に向けて搬送する苗送ベルトが設けられている。この苗送ベルトは、苗載台53が往復横移動でストロークエンドに到達するごとに、所定量だけ回動されて、載置されたマット状苗を下方に向けて順送りすることができるようになっている。
【0031】
以下では、施肥装置9の構成について、図1および図2を参照して説明する。
施肥装置9の主要部は、走行機体3の後部に設けられて、座席12と苗植装置2との間に配置されている。この施肥装置9には、肥料ホッパ91、繰出機構92、供給ホース93、作溝器94、および電動ブロワ95などが備えられる。
【0032】
肥料ホッパ91には、粉粒状の肥料が貯溜される。この肥料ホッパ91内の肥料は、回転ロール式の繰出機構92により定量ずつ繰り出される。繰出機構92により繰り出された肥料は、電動ブロワ95により、供給ホース93を介して整地フロート56に取り付けられた作溝器94に搬送される。そして、作溝器94が圃場面を通過する際に、植付苗条の横側近傍に施肥溝が形成されて、この施肥溝に肥料が作溝器94から落下するようになっている。
【0033】
次に、変速を行う構成について説明する。
【0034】
図3に示すように、走行変速ミッション20には、油圧式の無段変速装置21が備えられる。無段変速装置21は、エンジン5の出力により駆動される可変式の油圧ポンプ24と、この油圧ポンプ24からの油圧にて駆動される油圧モータ25とを有し、油圧ポンプ24における斜板24aの傾斜角が変更されることによって、変速比を変更して、走行機体3の走行速度を変速させるように構成される。
【0035】
なお、本実施形態においては、油圧式の無段変速装置21に遊星歯車機構からなる機械式変速装置30が組み合わされて、油圧・機械式無段変速装置が構成される。
【0036】
また、車体フレーム4の前部には、図4、図6に示すように、変速操作軸63が横方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。変速操作軸63には扇形歯車62が固定されて、この扇形歯車62と変速操作軸63とが一体的に回転可能とされる。変速操作軸63には、また、アーム65がその基端部で固定されて、このアーム65と変速操作軸63とが一体的に回転可能とされる。
【0037】
変速操作軸63上の扇形歯車62には、ピニオン61が噛合される。ピニオン61は、電動式モータからなる変速アクチュエータ60により回転可能とされ、その回転により変速操作軸63を扇形歯車62を介して図6における矢印C方向、または図6における矢印D方向へ回転させることができるように構成される。
【0038】
一方、変速操作軸63上のアーム65の先端部には、前後方向に延設された変速ロッド杆67の前端部が枢着される。変速ロッド杆67の後端部には長溝孔67aが前後方向に所定長さをもって形成される。この長溝孔67aに無段変速装置21の変速アーム47の先端部に設けられたピン47aが摺動自在に嵌入されて、変速ロッド杆67の後端部と変速アーム47の先端部とが係合される。変速アーム47はその基部で油圧ポンプ24の斜板24aにトラニオン軸57(図7参照)を介して連動連結される。
【0039】
こうして、無段変速装置21は、変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されないとき、または、変速操作軸63が回転されて、変速ロッド杆67が後方に移動されても、その移動量が長溝孔67aの所定長さを超えないとき、変速アーム47およびトラニオン軸57によって、油圧ポンプ24の斜板24aを傾転させずに中立位置とし、各車輪6・7へ向けて出力を伝達しない中立状態となるように構成される。
【0040】
無段変速装置21は、変速ロッド杆67が殆ど後方へ移動されていない状態で、変速操作軸63が図6における矢印C方向へ回転されて、変速ロッド杆67が後方へ移動され、その後方への移動量が長溝孔67aの所定長さを超えたとき、その時点から、変速アーム47およびトラニオン軸57によって、油圧ポンプ24の斜板24aを変速ロッド杆67の後方への移動量に基づいて傾転させて、変速比を増速側に変更し、走行速度を無段に増速させるように構成される。
【0041】
無段変速装置21は、変速ロッド杆67が長溝孔67aの所定長さを超えて後方へ移動されている状態で、変速操作軸63が図6における矢印D方向へ回転されて、変速ロッド杆67が前方へ移動されたとき、変速ロッド杆67の後方への移動量が長溝孔67aの所定長さを超えている間は、変速アーム47およびトラニオン軸57によって、油圧ポンプ24の斜板24aを変速ロッド杆67の前方への移動量に基づいて傾転させて、変速比を減速側に変更し、走行速度を無段に減速させるように構成される。
【0042】
変速操作軸63には、図4に示すように、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角(変速アクチュエータ60の回転角)を検知するための第二検出手段66が設けられる。第二検出手段66は、ポテンショメータ等の角センサからなり、変速操作軸63の回転角を検出することができるように構成される。
【0043】
また、車体フレーム4の前部には、変速ペダル軸51が横方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。変速ペダル軸51には変速ペダル16が連動機構50を介して連動連結される。
【0044】
変速ペダル16は、ばね手段にて付勢され、運転操作部10の床面で起立した状態となる初期位置に保持される。この変速ペダル16に対しては、操縦者が初期位置にある変速ペダル16を足にて前方向へ踏み込む踏込操作、操縦者が踏み込まれた状態の変速ペダル16から足を外す踏込解除操作が行われる。
【0045】
変速ペダル16は、踏込操作が行われると、初期位置からばね手段に抗して前方向へ回転されて、変速ペダル軸51を図5における矢印E方向へ回転させる一方、踏込解除操作が行われると、ばね手段にて元の初期位置に戻されて、変速ペダル軸51を図5における矢印F方向へ回転させるように構成される。
【0046】
変速ペダル軸51には、変速ペダル16の踏込操作量を検知するための第一検出手段55が設けられる。第一検出手段55は、ポテンショメータ等の角センサからなり、変速ペダル軸51の回転角を検出することができるように構成される。
【0047】
また、走行変速ミッション20には、図3に示すように、油圧式無段変速装置21から各車輪6・7への出力を伝達または遮断可能とするためのクラッチ機構22が備えられるとともに、各車輪6・7に制動力を付与するブレーキ機構23が備えられる。
【0048】
走行変速ミッション20には、図4に示すように、ブレーキ機構23に対する回転式の操作軸45が設けられる。操作軸45には作動部材46が固定されて、この作動部材46と操作軸45とが一体的に回転可能とされる。作動部材46はブレーキ機構23に連動連結されるだけでなく、ワイヤー等を介してクラッチ機構22とも連動連結される。
【0049】
そして、作動部材46は、操作軸45とともに回転して所定回転位置にあるとき、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態となる一方、別の所定回転位置にあるとき、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態となるように構成される。作動部材46はばね手段により走行状態となるように付勢される。
【0050】
このようにクラッチ機構22およびブレーキ機構23の両方に対する作動部材46には、図4に示すように、受け片46aが一体的に設けられる。受け片46aには、変速ロッド杆67が前後方向に摺動自在に挿通される。変速ロッド杆67の受け片46aよりも後方に位置する部分には、ストッパー片67bが設けられて、このストッパー片67bと受け片46aとが当接可能とされる。
【0051】
変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されないとき、つまり変速ペダル16が初期位置に保持され、その踏込操作が行われないとき、作動部材46は、ばね手段に抗するように、ストッパー片67bに当接されて回転を規制されて、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態に保持される。
【0052】
変速操作軸63が回転され、変速ロッド杆67が後方に移動されたとき、つまり変速ペダル16の踏込操作が行われて後述のように変速アクチュエータ60が回転駆動されたとき、作動部材46は、ストッパー片67bの後方への移動にともなってばね手段により回転されて、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態に変更される。
【0053】
また、車体フレーム4の前部には、ブレーキ軸70が横方向に延設されて、軸受にて回転自在に軸支される。ブレーキ軸70にはブレーキペダル17が連動連結される。
【0054】
ブレーキペダル17は、ばね手段にて付勢され、運転操作部10の床面上で起立した状態となる初期位置に保持される。このブレーキペダル17に対しては、操縦者が初期位置にあるブレーキペダル17を足にて前方向へ踏み込む踏込操作、操縦者が踏み込まれた状態のブレーキペダル17から足を外す踏込解除操作が行われる。
【0055】
ブレーキペダル17は、踏込操作が行われると、初期位置からばね手段に抗して前方向へ回転されて、ブレーキ軸70を図5における矢印M方向へ回転させる一方、踏込解除操作が行われると、ばね手段により後方向へ回転されて元の初期位置に戻され、ブレーキ軸70を図5における矢印M方向と逆方向へ回転させるように構成される。
【0056】
ブレーキ軸70には、アーム71がその基端部で固定される。アーム71の先端部には、前後方向に延設されたブレーキロッド杆72の前端部が枢着される。ブレーキロッド杆72の後端部は作動部材46の係止片46bに前後方向に摺動自在に挿通される。
【0057】
係止片46bは作動部材46に一体に設けられる。ブレーキロッド杆72の係止片46bよりも後方へ位置する部分には、ストッパー72aが設けられて、このストッパー72aと係止片46bとが当接可能とされる。
【0058】
ブレーキ軸70が回転されず、ブレーキロッド杆72が前方に移動されないとき、つまりブレーキペダル17が初期位置に保持され、その踏込操作が行われないとき、作動部材46の、ブレーキ機構23を作動状態にすると同時にクラッチ機構22を切状態にする停止状態から、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態への自由な作動が許容される。そのため、変速ペダルの踏込操作が行われたとき、作動部材46は前述のように走行状態に変更される。
【0059】
ブレーキ軸70が回転され、ブレーキロッド杆72が前方、即ち図4および図5における矢印L方向に移動されたとき、つまりブレーキペダル17の踏込操作が行われたとき、作動部材46は、ブレーキ機構23を非作動状態にすると同時にクラッチ機構22を入状態にする走行状態であれば、ばね手段に抗して回転されて、変速ロッド杆67の移動位置にかかわらず、つまり変速ペダル16の踏込操作よりも優先して、強制的に停止状態に変更される。
【0060】
また、走行機体3には、制御装置80が備えられる。この制御装置80には、第一検出手段55、第二検出手段66、電動式モータからなる変速アクチュエータ60が接続される。
【0061】
制御装置80は、第一検出手段55に基づいて変速ペダル16の踏込操作量を検知し、その検知結果に基づいて無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角があらかじめ設定された設定角となるように、変速アクチュエータ60を回転駆動させるように構成される。制御装置80は、また、第二検出手段66に基づいて油圧ポンプ24の斜板24aの傾転角を検知するように構成される。
【0062】
このような構成において、変速ペダル16の踏込操作が行われないときには、変速アクチュエータ60により変速操作軸63が回転されず、変速ロッド杆67が後方に移動されない。そのため、走行変速ミッション20における無段変速装置21の変速アーム47が回転せず、無段変速装置21の油圧ポンプ24の斜板24aが中立位置で保持される。つまり、無段変速装置21が各車輪6・7へ向けて出力を伝達しない中立状態となる。
【0063】
しかも、変速ペダル16の踏込操作が行われないときには、作動部材46が停止状態となって、ブレーキ機構23が作動状態となると同時に、クラッチ機構22が切状態となる。これにより、無段変速装置21(油圧・機械式無段変速装置)から各車輪6・7への出力が遮断されることとなる。したがって、走行機体3は走行せずに停止状態となる。
【0064】
走行機体3が停止状態である場合に、変速ペダル16の踏込操作が行われると、まず、変速ペダル軸51が図5における矢印E方向に回転し、第一検出手段55がこの回転よる変速ペダル軸51の回転角を検出する。制御装置80は、この第一検出手段55の検出値を取得し、これに基づいて変速ペダル16の踏込操作量を検知する。
【0065】
そして、変速ペダル16の踏込操作量に基づいて、制御装置80は変速アクチュエータ60を一方向に回転駆動する。この変速アクチュエータ60の回転駆動にともなって変速操作軸63が図6における矢印C方向に回転し、変速ロッド杆67が図6における矢印G方向へ移動し始める。
【0066】
変速ロッド杆67の後方への移動量が、その後端側の長溝孔67aの所定長さを超えると、ストッパー片67bが後方へ移動する。その結果、ストッパー片67bにてばね手段による回転を規制されていた作動部材46が回転し、走行状態となって、ブレーキ機構23が非作動状態になると同時に、クラッチ機構22が入状態になる。これにより無段変速装置21から各車輪6・7へ出力が伝達可能となる。
【0067】
このときには、変速アーム47が後方に回転し、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aが、その傾転角が変速ペダル16の踏込操作量に応じた設定角となるように、トラニオン軸57を介して傾転する。これにより、無段変速装置21がその変速比を増速側に変更し、変速した出力を各車輪6・7へ伝達する。したがって、走行機体3は走行を始める。
【0068】
つづいて、変速ペダル16の踏込操作量が大きくなるに従って変速ロッド杆67がさらに後方へ移動すると、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aがより大きな設定角となるように傾転する。この際、制御装置80は斜板24aの傾転角を第二検出手段66の検出値に基づいて随時検知する。これにより、無段変速装置21が変速比を増速側により大きく変更し、変速した出力を各車輪6・7へ伝達する。したがって、走行機体3の走行速度が増速する。
【0069】
このような状態で、変速ペダル16の踏込解除操作を行うと、変速ペダル軸51が図5における矢印F方向に回転し、第一検出手段55がこの回転よる変速ペダル軸51の回転角を検出する。制御装置80は、第一検出手段55の検出値を取得して、これに基づいて変速ペダル16の踏込操作量を検知する。
【0070】
そして、この変速ペダル16の踏込操作量に基づいて、制御装置80は変速アクチュエータ60を前記とは逆方向に回転駆動する。変速アクチュエータ60の回転駆動にともなって変速操作軸63が図6における矢印D方向に回転し、変速ロッド杆67が図6における矢印H方向へ移動する。
【0071】
変速ロッド杆67の前方への移動にともなって、変速アーム47が前方に回転し、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板24aが、その傾転角が変速ペダル16の踏込操作量に応じた設定角となるように、トラニオン軸57を介して傾転する。これにより、無段変速装置21がその変速比を減速側に変更し、変速した出力を各車輪6・7へ伝達する。したがって、走行機体3の速度が減速する。
【0072】
変速ペダル16が元の初期位置まで戻った時点で、変速アーム47も元の位置に戻り、無段変速装置21の油圧ポンプ24の斜板24aが中立位置となる。また、作動部材46が変速ロッド杆67のストッパー片67bにより停止状態に保持されて、ブレーキ機構23が作動状態となると同時に、クラッチ機構22が切状態となる。したがって、走行機体3の走行が停止する。
【0073】
このように、本実施形態の田植機1は、変速ペダル16の操作量に基づいて無段変速装置21の変速比を変更し、田植機1の走行機体3の走行速度を増速・減速することが可能となっている。
【0074】
次に、エンジン5の回転数を変更する構成について説明する。
【0075】
図6に示すように、扇形歯車62にカム溝62aが円弧状に形成される。ここで、カム溝62aは、その始端部(低速側)を扇形歯車62の中心である変速操作軸63と所定距離をとって配置する一方、終端部(高速側)を始端部(低速側)よりも変速操作軸63に近づけて(変速操作軸63からの距離を短く)配置して、始端部から終端部に向かうに従って変速操作軸63に近づくように傾斜状に形成される。
【0076】
このカム溝62aには、前記車体フレーム4に回転自在に軸支され横軸63bから延出される第一アーム63cの先端部が摺動自在に係合される。そして、横軸63bに固着された第二アーム63dが、エンジン5における回転数変更手段となるアクセルレバー5aと、ワイヤー5b等を介して連動連結される。
【0077】
この構成において、走行速度が増速するように変速アクチュエータ60が回転駆動されると、扇形歯車62が図6における矢印C方向へ回転する。この回転に応じて、カム溝62aに沿って第一アーム63cが移動し、これにともなう第二アーム63dの回転によりアクセルレバー5aがその戻しばね手段5cに抗して図6における矢印J方向に回転する。したがって、エンジン回転数が、アイドル回転から走行速度の増速に比例して自動的に増加する。
【0078】
一方、走行速度が減速するように変速アクチュエータ60が回転駆動されると、扇形歯車62が図6における矢印D方向へ回転する。この回転に応じて、カム溝62aに沿って第一アーム63cが前記と逆方向に移動し、これにともなう第二アーム63dの回転によりアクセルレバー5aが図6における矢印K方向に回転する。したがって、エンジン回転数が、走行速度の減速に比例して自動的に減少し、走行が停止したときにはアイドル回転数となる。
【0079】
このように、本実施形態において、田植機1は、エンジン5の回転数を走行変速ミッション20における変速動作に応じて自動的に変更するように構成される。なお、田植機1は、アクセルレバー5aを手動で回動操作することによって、エンジン5の回転数を任意に変更することができるようにも構成される。
【0080】
以下では、田植機1の制御機構について説明する。
【0081】
図7に示すように、制御装置80には、前述のように第一検出手段55および第二検出手段66が電気的に接続されるとともに、変速操作量検知手段84、ブレーキ操作量検知手段85、走行速度検知手段81、苗残量検知手段58、肥料残量検知手段96、詰まり検知手段97、定速設定手段19、および再設定手段41が電気的に接続される。
【0082】
制御装置80には、また、前述のように変速アクチュエータ60が電気的に接続されるとともに、苗残量低下報知手段18、肥料残量低下報知手段28、詰まり報知手段29が電気的に接続される。
【0083】
変速操作量検知手段84は、変速ペダル軸51の回転角を検出する第一検出手段55等からなり、変速ペダル16の踏込操作量を検知することができるように構成される。変速ペダル16は、変速操作手段として、前述のように無段変速装置21の変速比を設定する操作具であり、運転操作部10に配置される。
なお、変速操作手段は、本実施形態においては、足踏み式のペダルにより構成するものとしたが、レバーやスライド式やダイヤル式のスイッチなどにより構成することも可能である。
【0084】
ブレーキ操作量検知手段85は、ブレーキ軸70の回転角を検出する角センサ等からなり、ブレーキペダル17の踏込操作量を検知することができるように構成される。ブレーキペダル17は、走行停止操作手段として、前述のようにブレーキ機構23を作動状態にして走行を停止させる操作具であり、運転操作部10に配置される。
【0085】
走行速度検知手段81は、車輪6・7の車軸の回転数を検出する回転数センサ等からなり、田植機1(走行機体3)の走行速度を検出することができるように構成される。
【0086】
苗残量検知手段58は、苗載台53に載置されたマット状苗の床土底面に作用する接触式のセンサ等からなり、マット状苗が苗残量検知手段58の上にあることでその存在を検知し、マット状苗が下方に向けて順送りされて苗残量検知手段58の上から外れることで苗の残量が設定値以下であることを検知することができるように構成される。この設定値は苗の補給が必要な量にあらかじめ設定される。苗残量検知手段58は、苗載台53における各条の苗載面の適宜位置に設けられる。
なお、苗残量検知手段は、本実施形態においては、接触式のセンサを用いて構成しているが、これは特に限定するものではなく、例えば光通過式のセンサを用いて構成して、苗の残量が設定値以下であることを検知するものとしてもよい。
【0087】
肥料残量検知手段96は、肥料ホッパ91内の肥料レベルが設定位置より下がったことを検出する光通過式のセンサ等からなり、施肥装置9における肥料の残量が設定値以下であることを検知することができるように構成される。この設定値は肥料の補給が必要な量にあらかじめ設定される。肥料残量検知手段96は、施肥装置9における肥料ホッパ91の内部に設けられる。
なお、肥料残量検知手段は、本実施形態においては、光通過式のセンサを用いて構成しているが、これは特に限定するものではなく、例えば近接センサやスイッチを用いて構成することも可能である。
【0088】
また、施肥装置9は、本実施形態においては、粉粒状肥料を用いる施肥装置としているが、これは特に限定するものではなく、液状肥料を用いる施肥装置としてもよい。この場合には、肥料残量検知手段を施肥装置における液面を検出するセンサを用いて構成することが可能である。
【0089】
詰まり検知手段97は、一対の電極間の電気抵抗から肥料の付着堆積を検出するセンサ等からなり、両電極に亘って付着する肥料の量が多くなるに従って低下する電極間の通電抵抗が設定値を超えることで肥料詰まりの発生を検知することができるように構成される。詰まり検知手段97は、整地フロート56に取り付けられた作溝器94に設けられる
なお、詰まり検知手段は、本実施形態においては、電極を用いて構成しているが、これは特に限定するものではなく、例えば光通過式のセンサを用いて構成することも可能である。
【0090】
定速設定手段19は、オン・オフ操作可能なスイッチ等からなり、オンになったとき、田植機1(走行機体3)の走行速度を一定に保持させる(走行速度を固定する)、即ち走行速度を定速にすることができ、オフになったとき、定速走行状態を解除することができるように構成される。定速設定手段19は、図2に示すように、運転操作部10に配置される。
なお、定速設定手段は、本実施形態においては、スイッチを用いて構成しているが、これは特に限定するものではなく、例えばレバーやダイヤルで構成することも可能である。
【0091】
再設定手段41は、オン・オフ操作可能なスイッチ等からなり、定速設定手段19により走行速度が定速に維持されていない場合に、オンになったとき、走行速度をそのすぐ前に定速設定手段19により定速とされた際の走行速度で定速に再設定することができるように構成される。つまり、再設定手段41は、そのすぐ前に行われた定速走行状態を再現することができるように構成される。再設定手段41は、図2に示すように、運転操作部10に配置される。
なお、再設定手段は、本実施形態においては、スイッチを用いて構成しているが、これは特に限定するものではなく、例えばレバーやダイヤルで構成することも可能である。
【0092】
変速アクチュエータ60は、前述のように電動式のモータからなり、無段変速装置21における油圧ポンプ24の斜板を傾転させて、無段変速装置21の変速比を変更することができるように構成される。
【0093】
苗残量低下報知手段18、肥料残量低下報知手段28、詰まり報知手段29は、それぞれランプ等からなり、個別に点灯可能に構成される。これらの報知手段は表示パネル15に設けられる。
なお、苗残量低下報知手段、肥料残量低下報知手段、詰まり報知手段は、本実施形態においては、ランプを用いて構成しているが、これは特に限定するものではなく、例えば報知音が個別になるように構成することも可能である。
【0094】
以下では、苗の残量に基づく、制御装置80の制御について、図8を参照して説明する。
【0095】
ステップS110において、制御装置80は、変速操作量検知手段84に基づく変速ペダルの踏込操作量を取得する。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS120に移行する。
【0096】
ステップS120において、制御装置80は、変速操作量検知手段84に基づく変速ペダル16の踏込操作量に応じて、変速アクチュエータ60を駆動させる。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS130に移行する。
【0097】
ステップS130において、制御装置80は、苗残量検知手段58の検知情報に基づいて苗の残量が設定値以下であるか否かを判定する。
制御装置80は、苗の残量が設定値以下である場合、ステップS140に移行する。一方、制御装置80は、苗の残量が設定値以下でない場合、ステップS110に移行する。
【0098】
ステップS140において、制御装置80は、無段変速装置21の変速比が走行機体3を停止状態とする値となるように、変速アクチュエータ60を駆動させる。この際、無段変速装置21が中立状態となると、前述のようにブレーキ機構23が作動状態となり、クラッチ機構22が切状態となる。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS150に移行する。
【0099】
ステップS150において、制御装置80は、走行速度検知手段81に基づく田植機1の走行速度を取得する。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS160に移行する。
【0100】
ステップS160において、制御装置80は、ステップS150で取得した走行速度がゼロであるか否かを判定する。
制御装置80は、ステップS150で取得した走行速度がゼロであると判定した場合、この制御を終了する。一方、制御装置80は、ステップS150で取得した走行速度がゼロでないと判定した場合には、ステップS140に移行する。
【0101】
なお、本実施形態においては、ステップS130において、苗の残量が設定値以下であることが検知された場合、制御装置80は、苗残量低下報知手段18としてのランプを点灯させる。こうして、苗残量低下報知手段18にて苗の残量が設定値以下であることが作業者に報知される。
【0102】
このような制御が行われることにより、田植機1では、植付作業中に苗植装置2の苗載台53に載置されたマット状苗の残量が設定値以下であることが検知されると、無段変速装置21の変速比が減速側に変更されて、走行機体3が停止状態とされる。したがって、苗の残量が設定値以下まで少なくなったとき、即ち苗残量が苗の補給が必要な量まで減少したとき、作業者が走行を停止させる操作を行わなくても、走行速度を自動的に減速させて走行機体3が速やかに停止状態となる。
【0103】
これにより、従来の田植機では作業者が警報ランプなどにより苗の残量が低下したことを認識してから走行を停止するまでに生じていた時間差を、解消することができる。そのため、作業者が苗植装置2のマット状苗が無くなったことに気づかずに植付作業を続行したり、苗継ぎを無視して植付作業を続行したりして、欠株が生じる事態を防止することが可能となる。
【0104】
なお、この制御態様では、ステップS140の処理がされた後に、さらにステップS150およびステップS160の処理がされるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、ステップS140で無段変速装置の変速比を走行機体3が停止状態なる値まで減速側に変更するのではなく、その変速比を走行機体3が低速状態となる値まで減速側に変更するようにして、ステップS150とステップS160とを省略する態様にしても良い。この場合には、走行機体3を速やかに低速状態とすることが可能となる。そのため、例えば植付作業に係る不具合の発生を抑制しつつ、走行機体3を苗の補給作業が可能な場所までに移動させることができる。
【0105】
以下では、肥料残量に基づく、制御装置80の制御について、図9を参照して説明する。
【0106】
ステップS210において、制御装置80は、変速操作量検知手段84に基づく変速ペダル16の踏込操作量を取得する。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS220に移行する。
【0107】
ステップS220において、制御装置80は、変速操作量検知手段84に基づく変速ペダル16の踏込操作量に応じて、変速アクチュエータ60を駆動させる。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS230に移行する。
【0108】
ステップS230において、制御装置80は、肥料残量検知手段96の検知情報に基づいて肥料の残量が設定値以下であるか否かを判定する。
制御装置80は、肥料の残量が設定値以下であると判定した場合には、ステップS240に移行する。一方、制御装置80は、肥料の残量が設定値以下でないと判定した場合には、ステップS210に移行する。
【0109】
ステップS240において、制御装置80は、無段変速装置21の変速比が走行機体3を停止状態とする値となるように、変速アクチュエータ60を駆動させる。この際、無段変速装置21が中立状態となると、前述のようにブレーキ機構23が作動状態となり、クラッチ機構22が切状態となる。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS250に移行する。
【0110】
ステップS250において、制御装置80は、走行速度検知手段81に基づく田植機1の走行速度を取得する。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS260に移行する。
【0111】
ステップS260において、制御装置80は、ステップS250で取得した走行速度がゼロであるか否かを判定する。
制御装置80は、ステップS250で取得した走行速度がゼロであると判定した場合には、この制御を終了する。一方、制御装置80は、ステップS250で取得した走行速度がゼロでないと判定した場合には、ステップS240に移行する。
【0112】
なお、本実施形態においては、ステップS230において、肥料の残量が設定値以下であることが検知された場合、制御装置80は、肥料残量低下報知手段28としてのランプを点灯させる。こうして、肥料残量低下報知手段28にて苗の残量が設定値以下であることが作業者に報知される。
【0113】
このような制御が行われることにより、田植機1では、植付作業および施肥作業中に施肥装置9の肥料ホッパ91内の肥料の残量が設定値以下であることが検知されると、無段変速装置21の変速比が減速側に変更されて、走行機体3が停止状態とされる。したがって、肥料の残量が設定値以下まで少なくなったとき、即ち肥料残量が肥料の補給が必要な量まで減少したとき、作業者が走行を停止させる操作を行わなくても、走行速度を自動的に減速させて走行が速やかに停止することとなる。
【0114】
これにより、従来の田植機では作業者が警報ランプなどにより肥料の残量が低下したことを認識してから走行機体を停止するまでに生じていた時間差を、解消することができる。そのため、作業者が施肥装置9の肥料が無くなったことに気づかずに植付作業を続行してしまう事態を防止することが可能となる。
【0115】
なお、この制御態様では、ステップS240の処理がされた後に、さらにステップS250およびステップS260の処理がされるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、ステップS240で無段変速装置の変速比を走行機体3が停止状態となる値まで減速側に変更するのではなく、その変速比を走行機体3が低速状態となる値まで減速側に変更するようにして、ステップS250とステップS260とを省略する態様としても良い。この場合には、走行機体3を速やかに低速状態とすることが可能となる。そのため、例えば施肥作業に係る不具合の発生を抑制しつつ、走行機体3を肥料の補給作業が可能な場所までに移動させることができる。
【0116】
以下では、肥料詰まりに基づく、制御装置80の制御について、図10を参照して説明する。
【0117】
ステップS310において、制御装置80は、変速操作量検知手段84に基づく変速ペダル16の踏込操作量を取得する。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS320に移行する。
【0118】
ステップS320において、制御装置80は、変速操作量検知手段84に基づく変速ペダル16の踏込操作量に応じて、変速アクチュエータ60を駆動させる。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS330に移行する。
【0119】
ステップS330において、制御装置80は、詰まり検知手段97の検知情報に基づいて肥料の詰まりが発生したか否かを判定する。
制御装置80は、肥料の詰まりが発生したと判定した場合には、ステップS340に移行する。一方、制御装置80は、肥料詰まりが発生していないと判定した場合には、ステップS310に移行する。
【0120】
ステップS340において、制御装置80は、無段変速装置21の変速比が走行機体3を停止状態とする値となるように、変速アクチュエータ60を駆動させる。この際、無段変速装置21が中立状態となると、前述のようにブレーキ機構23が作動状態となり、クラッチ機構22が切状態となる。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS350に移行する。
【0121】
ステップS350において、制御装置80は、走行速度検知手段81に基づく田植機1の走行速度を取得する。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS360に移行する。
【0122】
ステップS360において、制御装置80は、ステップS350で取得した走行速度がゼロであるか否かを判定する。
制御装置80は、ステップS350で取得した走行速度がゼロであると判定した場合には、この制御を終了する。一方、制御装置80は、ステップS350で取得した走行速度がゼロでないと判定した場合には、ステップS340に移行する。
【0123】
なお、本実施形態においては、ステップS330において、肥料の詰まりが発生したことが検知された場合、制御装置80は、詰まり報知手段29としてのランプを点灯させる。こうして、詰まり報知手段29にて肥料詰まりが発生したことが作業者に報知される。
【0124】
このような制御が行われることにより、田植機1では、植付作業および施肥作業中に施肥装置9における作溝器94の内部で肥料が詰まり、肥料詰まりの発生が検知されると、無段変速装置21の変速比が減速側に変更されて、走行機体3が停止状態とされる。したがって、肥料詰まりの発生が検知されたとき、作業者が走行を停止させる操作を行わなくても、走行速度を自動的に減速させて走行が速やかに停止することとなる。
【0125】
これにより、従来の田植機では作業者が警報ランプなどにより肥料の詰まりが発生したことを認識してから走行を停止するまでに生じていた時間差を、解消することができる。そのため、作業者が作溝器94で肥料の詰まりが発生したことに気づかずに苗植付作業を続行してしまう事態を防止することが可能となる。
【0126】
なお、この制御は、ステップS340の処理がされた後に、さらにステップS350およびステップS360の処理がされるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、ステップS340で無段変速装置21の変速比を走行機体3が停止状態となる値まで減速側に変更するのではなく、その変速比を走行機体3が低速状態となる値まで減速側に変更するようにして、ステップS350とステップS360とを省略するようにしても良い。この場合には、走行機体3を速やかに低速状態とすることが可能となる。そのため、例えば施肥作業に係る不具合の発生を抑制しつつ、走行機体3を肥料の詰まりを解消可能な場所までに移動させることができる。
【0127】
以下では、定速設定手段19に基づく、走行中における制御装置80の制御について、図11を参照して説明する。
【0128】
ステップS410において、制御装置80は、定速設定手段37がオンであるか否かを判定する。
制御装置80は、定速設定手段37がオンであると判定した場合には、ステップS420に移行する。一方、制御装置80は、定速設定手段37がオンでない(オフである)と判定した場合には、ステップS410を繰り返す。
【0129】
ステップS420において、制御装置80は、変速操作量検知手段84に基づく変速ペダル16の踏込操作量を取得する。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS430に移行する。
【0130】
ステップS430において、制御装置80は、そのときの変速操作量検知手段84に基づく変速ペダル16の踏込操作量を記憶する。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS440に移行する。
【0131】
ステップS440において、制御装置80は、ステップS430で記憶した変速ペダル16の踏込操作量に応じた走行速度が維持されるように、変速アクチュエータ60を駆動させる。すなわち、制御装置80は、オートクルーズ制御を開始する。これにより、田植機1が定速で走行する定速走行状態となる。
制御装置80は、前述の処理を行った後、ステップS450に移行する。
【0132】
ステップS450において、制御装置80は、変速操作量検知手段84に基づく変速ペダル16の踏込操作量に応じて、変速ペダル16が操作されたか否かを判定する。
制御装置80は、変速ペダル16の踏込操作量が許容範囲外であれば、変速ペダル16が踏込操作されたと判定し、ステップS470に移行する。一方、変速ペダル16の踏込操作量が許容範囲内であれば、変速ペダル16が踏込操作されなかったと判定し、ステップS460に移行する。
【0133】
ステップS460において、制御装置80は、ブレーキ操作量検知手段85に基づくブレーキペダル17の踏込操作量に応じて、ブレーキペダル17が操作されたか否かを判定する。
制御装置80は、ブレーキペダル17の踏込操作量が許容範囲外であれば、ブレーキペダル17が踏込操作されたと判定し、ステップS470に移行する。一方、ブレーキペダル17の踏込操作量が許容範囲内であれば、ブレーキペダル17が踏込操作されなかったと判定し、ステップS450に移行する。
【0134】
ステップS470において、制御装置80は、オートクルーズ制御を解除する。これにより、田植機1が変速可能な通常の走行状態となる。
【0135】
このような制御が行われることにより、田植機1では、走行機体3の走行中に定速設定手段19がオンされたとき、無段変速装置21の変速比がそのときの走行速度が維持されるように適宜に変更される。したがって、植付作業中の田植機1(走行機体3)の走行速度を簡単に任意の走行速度で定速にすることが可能となる。これにより、圃場面に苗を植え付ける間隔や、圃場面に肥料を落下させる間隔などを、一定に保持することが容易に可能となる。
【0136】
また、田植機1では、定速設定手段19がオンされているとき、すなわちオートクルーズ制御がなされているときに、変速ペダル16の踏込操作が行われると、定速設定手段19がオンからオフに自動的に切り換えられて、オートクルーズ制御が解除される。したがって、変速ペダル16の踏込操作に加えて、定速設定手段19をオフする操作をしなくても、オートクルーズ制御を自動的に解除し、走行速度を速やかに増減速することが可能となる。
【0137】
さらに、田植機1では、定速設定手段19がオンされているとき、すなわちオートクルーズ制御がなされているときに、ブレーキペダル17の踏込操作が行われると、定速設定手段19がオンからオフ自動的に切り換えられて、オートクルーズ制御が解除される。したがって、ブレーキペダル17の踏込操作に加えて、定速設定手段19をオフとする操作をしなくても、オートクルーズ制御を自動的に解除し、走行速度を速やかに減速して走行を停止することが可能となる。
【0138】
田植機1では、この制御とともに前記各制御が行われる。そのため、苗の残量の減少、肥料の残量の減少、または肥料の詰まりの発生のうち、少なくともいずれか一つの状況が検知されると、定速設定手段19をオフ操作をしなくても、走行を速やかに停止することが可能となる。したがって、前述のような状況が発生した場合に、走行を停止させる操作をする必要がなくなり、また定速設定手段19をオフとする操作によりオートクルーズ制御の解除をする必要もなくなり、作業効率を向上させることが可能となる。
【0139】
なお、本実施形態のステップS420およびステップS430では、オートクルーズ制御時の走行機体3の走行速度を、変速ペダル16の操作量として検出し(ステップS420)、これを記憶する(ステップS430)ものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、例えばオートクルーズ制御時の走行機体3の走行速度を、走行速度検知手段81により検出した値として記憶する構成としても良い。この場合、制御装置80は、そのときの走行速度検知手段に基づく走行速度が維持されるように、変速アクチュエータ60を制御する。
【0140】
また、本実施形態のステップS450およびステップS460では、変速ペダル16またはブレーキペダル17の操作によって、制御装置80は、オートクルーズ制御を解除するように構成しているが、別途オートクルーズ制御を停止させる操作が可能なオートクルーズ停止操作手段を設け、このオートクルーズ停止操作手段がオンされたときや、操縦ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段を設け、この操舵角検出手段の検出値が所定値以上となったとき、オートクルーズ制御を解除するように構成することも可能である。
【0141】
以下では、ステップS470においてオートクルーズ制御が解除された後における、制御装置80の制御について、図12を参照して説明する。
【0142】
ステップS510において、制御装置80は、再設定手段41がオンであるか否かを判定する。
制御装置80は、再設定手段41がオンであると判定した場合には、ステップS520に移行する。一方、制御装置80は、再設定手段41がオンでない(オフである)と判定した場合には、再度ステップS510を繰り返す。
【0143】
ステップS520において、制御装置80は、ステップS430で記憶した変速ペダル16の操作量に応じた走行速度が維持されるように、変速アクチュエータ60を駆動させる。この際、前述のように、エンジン5の回転数は変速アクチュエータ60の駆動に連動して増減速するようになっている。こうして、制御装置80は、オートクルーズ制御を行う。これにより、田植機1がそのすぐ前の定速走行状態における速度で定速走行する状態となる。
制御装置80は、前述の処理を行った後、前記同様に変速ペダル16またはブレーキペダル17の操作に係るステップに移行して、オートクルーズ制御を継続または解除する。
【0144】
このような制御が行われることにより、田植機1では、オートクルーズ制御が解除された後に再設定手段41がオンされると、そのすぐ前のオートクルーズ制御中に記憶された変速ペダル16の操作量に応じた走行速度が維持されるように、変速アクチュエータ60が駆動される。したがって、植付作業時にオートクルーズ制御を中断したあと、このオートクルーズ制御における走行速度で走行を行いたい場合、走行速度を元のオートクルーズ制御がなされていたときの走行速度に簡単な操作で再設定することが可能となる。
【0145】
これにより、苗の残量の減少、肥料の残量の減少、または肥料の詰まりの発生のうち、少なくともいずれか一つの状況が検知されて、または変速ペダル16やブレーキペダル17の操作などが行われて、オートクルーズ制御が一時的に中断された場合などに、再設定手段41をオンするだけの簡単な操作で、元の走行速度にて植付作業を行うことができるように、オートクルーズ制御を再開することが可能となる。そのため、簡単な操作で、圃場面に苗を植え付ける間隔や、圃場面に肥料を落下させる間隔などを、定速走行状態を解除した前後を通じて一定に保持することが可能となる。
【0146】
以上の如く、本実施形態に係る田植機1は、
苗植装置2を装着した走行機体3に、
エンジン5の出力を変速して車輪6・7に伝達する無段変速装置21と、
変速ペダル16の操作量に基づいて無段変速装置21の変速比を変更する変速アクチュエータ60とを備える田植機1であって、
苗植装置2における苗の残量が設定値であるか否かを検知する苗残量検知手段58と、
苗残量検知手段58により苗の残量が設定値以下であることが検知されたとき、無段変速装置21の変速比が走行機体3を停止状態または低速状態とする値となるように、変速アクチュエータ60を駆動させる制御装置80とを備えるものである。
したがって、植付作業時に、苗の残量が設定値以下になったとき、即ち苗残量が苗の補給が必要な量まで減少したとき、走行を停止させる操作または低速で行う操作を別途行わなくても、無段変速装置21の変速比を減速側に変更して、走行機体3を速やかに停止状態または低速状態にすることが可能となる。また、苗の残量が設定値以下になったとき、作業者が要する操作手順が少なくなるため、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0147】
また、本実施形態に係る田植機1は、
苗植装置2および施肥装置9を装着した走行機体3に、
エンジン5の出力を変速して車輪6・7に伝達する無段変速装置21と、
変速ペダル16の操作量に基づいて無段変速装置21の変速比を変更する変速アクチュエータ60とを備える田植機1であって、
施肥装置9における肥料の残量が設定値以下であるか否かを検知する肥料残量検知手段96と、
施肥装置9における肥料詰まりが発生したか否かを検知する詰まり検知手段97との少なくとも一方を備えるとともに、
肥料残量検知手段96により肥料の残量が設定値以下であることが検知されたとき、または/および、詰まり検知手段97により詰まりが発生したことが検知されたとき、無段変速装置21の変速比が走行機体3を停止状態または低速状態とする値となるように、変速アクチュエータ60を駆動させる制御装置80とを備えるものである。
したがって、植付作業時に、肥料の残量が設定値以下になったとき、即ち肥料残量が肥料の補給が必要な量まで減少したとき、または肥料の詰まりが発生したとき、走行を停止させる操作または低速で行う操作を別途行わなくても、無段変速装置21の変速比を減速側に変更して、走行機体3を速やかに停止状態または低速状態にすることが可能となる。また、肥料の残量が設定値以下になったとき、または肥料の詰まりが発生したとき、作業者が要する操作手順が少なくなるため、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0148】
また、本実施形態に係る田植機1は、
走行速度を検出する走行速度検知手段81と、
走行速度を定速に設定する定速設定手段19とを備え、
制御装置80は、定速設定手段19がオンされたとき、変速アクチュエータ60を走行速度がそのときの走行速度で定速に維持されるように駆動させるものである。
したがって、植付作業時における走行機体3の走行速度を、定速設定手段19をオンするだけの簡単な操作で固定することが可能となる。これにより、圃場面に苗を植え付ける間隔や、圃場面に肥料を落下させる間隔などを、一定に保持しやすくなり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0149】
さらに、本実施形態に係る田植機1は、
制御装置80は、定速設定手段19により走行速度が定速に維持されている場合、変速ペダル16が操作されたとき、この定速での走行状態を解除するものである。
したがって、定速設定手段19による定速走行状態を、変速ペダル16の操作により簡単に解除することが可能となる。これにより、定速走行状態で走行速度を変更したい場合に、変速ペダル16の操作のみで定速走行状態を解除して、走行速度を変更することができるため、定速設定手段19のオフする操作を省いて、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0150】
さらに、本実施形態に係る田植機1は、
走行を停止させる操作が可能なブレーキペダル17を備え、
制御装置80は、定速設定手段19により走行速度が定速に維持されている場合、ブレーキペダル17が操作されたとき、この定速での走行状態を解除するものである。
したがって、定速設定手段19による定速走行状態を、ブレーキペダル17の操作により簡単に解除することが可能となる。これにより、定速走行状態で走行を停止したい場合に、ブレーキペダル17の操作のみで定速走行状態を解除して、走行を停止することができるため、定速設定手段19のオフする操作を省いて、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0151】
さらに、本実施形態に係る田植機1は、
走行速度をそのすぐ前に定速設定手段19により定速に設定されたときの走行速度で定速に再設定する再設定手段41を備え、
制御装置80は、定速設定手段19により走行速度が定速に維持されていない場合、再設定手段41がオンされたとき、変速アクチュエータ60を走行速度がそのすぐ前に定速設定手段19により定速とされた際の走行速度で定速に維持されるように駆動させるものである。
したがって、再設定手段41をオンするだけの簡単な操作で、走行速度をそのすぐ前の定速設定手段19による定速走行状態での走行速度にして固定することが可能となる。これにより、圃場面に苗を植え付ける間隔や、圃場面に肥料を落下させる間隔などを、定速走行状態を解除した前後を通じて一定に保持しやすくなり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0152】
1 田植機
2 苗植装置
3 走行機体
5 エンジン
6 前車輪(走行装置)
7 後車輪(走行装置)
9 施肥装置
16 変速ペダル(変速操作手段)
17 ブレーキペダル(走行停止操作手段)
19 定速設定手段
20 走行変速ミッション
21 無段変速装置
41 再設定手段
60 変速アクチュエータ
57 トラニオン軸
58 苗残量検知手段
80 制御装置
81 走行速度検知手段
96 肥料残量検知手段
97 詰まり検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植装置を装着した走行機体に、
エンジンの出力を変速して走行装置に伝達する無段変速装置と、
変速操作手段の操作量に基づいて前記無段変速装置の変速比を変更する変速アクチュエータとを備える田植機であって、
前記苗植装置における苗の残量が設定値であるか否かを検知する苗残量検知手段と、
前記苗残量検知手段により苗の残量が設定値以下であることが検知されたとき、前記無段変速装置の変速比が前記走行機体を停止状態または低速状態とする値となるように、前記変速アクチュエータを駆動させる制御装置とを備える田植機。
【請求項2】
苗植装置および施肥装置を装着した走行機体に、
エンジンの出力を変速して走行装置に伝達する無段変速装置と、
変速操作手段の操作量に基づいて前記無段変速装置の変速比を変更する変速アクチュエータとを備える田植機であって、
前記施肥装置における肥料の残量が設定値以下であるか否かを検知する肥料残量検知手段と、
前記施肥装置における肥料詰まりが発生したか否かを検知する詰まり検知手段との少なくとも一方を備えるとともに、
前記肥料残量検知手段により肥料の残量が設定値以下であることが検知されたとき、または/および、前記詰まり検知手段により詰まりが発生したことが検知されたとき、前記無段変速装置の変速比が前記走行機体を停止状態または低速状態とする値となるように、前記変速アクチュエータを駆動させる制御装置とを備える田植機。
【請求項3】
走行速度を検出する走行速度検知手段と、
走行速度を定速に設定する定速設定手段とを備え、
前記制御装置は、前記定速設定手段がオンされたとき、前記変速アクチュエータを走行速度がそのときの走行速度で定速に維持されるように駆動させる、請求項1または請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記定速設定手段により走行速度が定速に維持されている場合、前記変速操作手段が操作されたとき、この定速での走行状態を解除する、請求項3に記載の田植機。
【請求項5】
走行を停止させる操作が可能な走行停止操作手段を備え、
前記制御装置は、前記定速設定手段により走行速度が定速に維持されている場合、前記走行停止操作手段が操作されたとき、この定速での走行状態を解除する、請求項3または請求項4に記載の田植機。
【請求項6】
走行速度をそのすぐ前に前記定速設定手段により定速に設定されたときの走行速度で定速に再設定する再設定手段を備え、
前記制御装置は、前記定速設定手段により走行速度が定速に維持されていない場合、前記再設定手段がオンされたとき、前記変速アクチュエータを走行速度がそのすぐ前に前記定速設定手段により定速とされた際の走行速度で定速に維持されるように駆動させる、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−207104(P2010−207104A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53858(P2009−53858)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】