田植機
【課題】 本発明の課題は、取り外し自在にした安価なスペースマーカを備えた田植機を提供することである。
【解決手段】 走行車体の後側に昇降リンク装置を介して苗植付部を装着した田植機において、走行車体の左右側方には支持部材に設けた回動中心回りに回動可能に苗枠(6)を設け、機体の側方へ突出させて側方の畦と機体の間隔を測るスペースマーカ(61)を、左右いずれの苗枠(6)にも着脱可能で該苗枠(6)の長辺側の一辺部に沿って取付部材を介して着脱自在に取り付け、苗枠(6)の回動により機体の前端側に向け得る構成とした。
【解決手段】 走行車体の後側に昇降リンク装置を介して苗植付部を装着した田植機において、走行車体の左右側方には支持部材に設けた回動中心回りに回動可能に苗枠(6)を設け、機体の側方へ突出させて側方の畦と機体の間隔を測るスペースマーカ(61)を、左右いずれの苗枠(6)にも着脱可能で該苗枠(6)の長辺側の一辺部に沿って取付部材を介して着脱自在に取り付け、苗枠(6)の回動により機体の前端側に向け得る構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機などの水田作業機は機体と畦との間隔を図るマーカを取付けており、該マーカを用いることで水田作業機と畦との間隔を一定に保ちながら畦際での苗植付作業を能率良く行っている。特許文献1にはスペースマーカを機体の先端部に取り付けた例が記載され、特許文献2には長さの調節が可能なスペースマーカを機体の左右方向に設けた例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−105142号公報
【特許文献2】特開2003−8号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記いずれのスペースマーカも機体に取り付けた構成であり、スペースマーカの不使用時には収納位置に収納はできるが、機体からスペースマーカを取り外すことができる構成ではない。そのため機体の前端部にスペースマーカを取り付けた水田作業機と機体の左右方向にスペースマーカを設けた水田作業機とを用途に応じて使い分けるしかなかった。
【0005】
本発明の課題は、取り外し自在にした安価なスペースマーカを備えた田植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)を装着した田植機において、走行車体(2)の左右側方には支持部材(66)に設けた回動中心(66a)回りに回動可能に苗枠(6)を設け、機体の側方へ突出させて側方の畦と機体の間隔を測るスペースマーカ(61)を、左右いずれの苗枠(6)にも着脱可能で該苗枠(6)の長辺側の一辺部に沿って取付部材(63)を介して着脱自在に取り付け、苗枠(6)の回動により機体の前端側に向け得る構成とした田植機とした。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、スペースマーカ(61)を、苗枠(6)の回動により該苗枠(6)の長辺を機体の進行方向に向けた状態で該苗枠(6)の内側に配置し得る構成とした請求項1に記載の田植機とした。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、苗枠(6)側に設けたピン(65)を取付部材(63)側の穴(63a)に挿脱して取付部材(63)を苗枠(6)に着脱する構成とした請求項1又は請求項2に記載の田植機とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、側方の畦と機体の間隔を測るスペースマーカ(61)を、苗枠(6)の回動により機体の前端側に向け、所望の枕地幅を残して機体を旋回させることができる。また、スペースマーカ(61)を着脱自在に取り付け、左右いずれの苗枠(6)にも着脱できるので、機体の左側又は右側の畦と機体の間隔を容易に測ることができる。更に、使用しない場合には、苗枠(6)から取り外して適宜の格納場所に容易に収納できる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明の効果に加えて、スペースマーカ(61)を、苗枠(6)の回動により該苗枠(6)の長辺を機体の進行方向に向けた状態で該苗枠(6)の内側に配置すれば、機体の走行やオペレータの作業の邪魔にならないようにできる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、苗枠(6)にスペースマーカ(61)の取付部材(63)を片手で取り付け、取り外しできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例の水田作業機の側面図である。
【図2】図1の水田作業機の平面図である。
【図3】図1の水田作業機の油圧回路図である。
【図4】図1の水田作業機のスペースマーカの予備苗枠への取付構造を示す側面図(図4(a))と図4(a)の矢印A方向から見た図(図4(b))である。
【図5】図1の水田作業機の左側又は右側の畦と機体との間隔(図5(a))及び機体の前端側の畦と機体との間隔(図5(b))をスペースマーカを用いて設定する様子を説明する平面図である。
【図6】図1の水田作業機の一実施例の側面図(図6(a))と前部の平面図(図6(b))である。
【図7】図1の水田作業機の一実施例の正面図(図7(a))と側面図(図7(b))である。
【図8】図1の水田作業機の一実施例のセンタフロートの側面図である。
【図9】図1の水田作業機の一実施例のセンタフロートの側面図である。
【図10】図1の水田作業機のHSTの斜板取付部の断面図(図10(a)と図10(a)の矢印S方向から見た図(図10(b))である。
【図11】図1の水田作業機のHSTと主変速レバーとアクセルペダルの連係図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
水田作業機の典型例である乗用施肥田植機の側面図を図1に示し、平面図を図2に示す。
【0014】
走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、さらに走行車体2の後部に施肥装置5の肥料タンク50等が設けられている。走行車体2の前部左右両側には、複数段づつの予備苗枠6、…が設けられている。
【0015】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10、10及び後輪11、11を備えた四輪駆動車両で、機体の前部にミッションケース12、その後方にエンジン13が設けられている。エンジン13の回転動力は、油圧式無段変速装置(HST)22を介してミッションケース12へ伝達される。そして、ミッションケース12内の主変速装置で変速された後、前輪10、10及び後輪11、11と、苗植付部4及び施肥装置5の各駆動部とに伝達される。
【0016】
エンジン13の上側には操縦席15が設置され、その前方に操向車輪である前輪10、10の操向ハンドル16が設けられている。図2に示すように左右の後輪11、11を個別に制動することのできる後輪ブレーキペダル17L、17Rがフロントカバー7の右脇に設けられている。また操縦席15の左脇には操作ボックス18が設けられ、自動操向で機体を直進させるときにオンにする自動直進スイッチ、自動操向時における走行方位を設定する方位設定器等が操作ボックス18に配置されている。また、緊急時にエンジン13を停止させる緊急停止スイッチ19も設けられている。
【0017】
なお本明細書では田植機の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
昇降リンク装置3は、前端側で回動自在に支持された互いに平行な1本の上リンク30と左右一対の下リンク31、31の後端部とに連結枠32が連結されており、該連結枠32に苗植付部4がローリングシリンダ34によりローリング自在に装着されている。昇降シリンダ33を作動させることにより、各リンク30、31が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。また、苗植付装置4の昇降シリンダ作動用の昇降バルブユニット21(図3)はパワステシリンダ24を作動させる操向バルブユニット20(図3)の近傍に配置される。
【0018】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース40、苗を載せて左右往復動し苗を一株づつ各条の苗取出口41a、…に供給する苗載台41、苗取出口41a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置42、…等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート45、その左右両側にサイドフロート46,46がそれぞれ設けられており、植付作業時には、各フロート45,46が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置42、…により苗が植付けられる。
【0019】
施肥装置5は、肥料タンク50内の肥料を肥料繰出部51、…によって一定量づつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料を施肥ホース52、…を通して施肥ガイド53、…まで移送し、該施肥ガイドの前側に設けた作溝体54、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。
【0020】
図3はこの水田作業機の油圧装置全体の油圧回路図である。
油タンク55の油を送り出す圧力油供給源である油圧ポンプ56から送り出される圧力油はパワステシリンダ24(24a、24b)を作動させる操向油圧回路(操向バルブユニット)20と苗植付装置4の昇降シリンダ作動用の昇降油圧回路(昇降バルブユニット)21及びHST22に供給される。操向油圧回路20は、操向ハンドル16の操作に連動する方向制御バルブ25で構成したもので、操向ハンドル16が中立位置にあるときは、操向油圧回路20に供給される圧力油をそのまま昇降バルブユニット21へ供給し、操向ハンドル16を中立位置よりも右に回すとその操作量に相当する流量の油をパワステシリンダ24の左シリンダ室24aに供給し、操向ハンドル16を中立位置よりも左に回すとその操作量に相当する流量の圧力油をパワステシリンダ24の右シリンダ室24bに供給するようになっている。
【0021】
また、ポンプ56の吐出量が所定量以上のときは、圧力制御バルブ23が開き、余剰の圧力油は操向油圧回路20を経由せず苗植付装置4の昇降シリンダ作動用に昇降油圧回路21に送られる。
【0022】
昇降油圧回路21ではプライオリティバルブ26を流れる油量が図示の状態から増えると、バルブ26内のスプールが図面右側にシフトし、昇降レバー27を備えた昇降バルブ28に流入する。昇降バルブ28に流入した圧油は昇降レバー27によりスプール位置が変化して苗植付装置4側に送油されるかバルブ26側に還流される。
【0023】
昇降バルブ28を通り下降規制レバー37を備えた下降規制バルブ38に流入した圧油は、バルブ38のスプールが図示の状態から左方向に移動すると、昇降シリンダ33を作動させる。
【0024】
プライオリティバルブ26は2位置4ポートの比例ソレノイドバルブで、常態では図3に示す位置にあり、圧油は昇降シリンダ33には送られずに、圧力制御バルブ35からオイルフィルタ36を経由してHST22に供給される。
【0025】
昇降バルブ28が昇降シリンダ33を作動させる場合には、昇降レバー27の作動により昇降バルブ28が図示の状態から右端のスプールのポートが開く方向に移動する。このとき、該スプールには絞り28aが設けられているので、該絞り28aを経由してHST22への送油が途絶えることがない。
【0026】
なお、下降規制バルブ38には一方向性弁38aがあるので、レバー37を操作しない限り昇降シリンダ33内のオイルが抜けないようになっている。
図3に示す本実施例の油圧回路は、パワステシリンダ24を作動させる操向油圧回路20と苗植付装置4の昇降シリンダ33の作動用油圧回路21及びHST22が直列に接続されて、また互いに近くに配置されているので油圧ポンプ56の吐出圧がこれらの油圧回路20、21、22が並列接続されている場合に比して吐出圧が少なくて済む。
【0027】
上記本実施例の乗用施肥田植機には伸縮式のスペースマーカ61を予備苗枠6の一辺に沿った状態で着脱可能に取り付けている。スペースマーカ61は取付部材63を介して予備苗枠6にボルト62(図4)により着脱可能に配置されているので、スペースマーカ61を左右どちらの予備苗枠6にも付け替えることができる。
【0028】
また、スペースマーカ61が機体に着脱可能であるので、機体に予め取り付けた固定部品としては用いず、オプションとして本機を改造することなく取り付けることができる。
また、予備苗枠6に着脱可能であるスペースマーカ61は、使用しない場合には予備苗枠6から取り外してオペレータの好きなところに保管できる。さらにスペースマーカ61が破損した場合に市販の釣り竿を代用品として使用することもできる。
【0029】
図4にはスペースマーカ61の予備苗枠6への取付構造を示す側面図(図4(a))と図4(a)の矢印A方向から見た図(図4(b))を示す。
スペースマーカ61の取付部材63を予備苗枠6に係止するためのピン65を介して予備苗枠6に取り付ける。該取付部材63を予備苗枠6に着脱自在となるようにピン挿脱用の穴63aを設けている。このような着脱機構でスペースマーカ61の取付部材63を予備苗枠6に片手で取り付け、取り外しが可能となる。
【0030】
また、このスペースマーカ61を取り付けた予備苗枠6は機体に取り付けられた予備苗枠の支持部材66の回動中心66aを回転中心として90度または180度回動可能であるので、スペースマーカ61は田植機の先端側と左右両側に向けて伸縮自在となる。
【0031】
従って図5の田植機の平面図に示すように、田植機の左側又は右側の畦と田植機との間隔(図5(a))及び田植機の先端側の畦と田植機との間隔(図5(b))をスペースマーカ61を用いて設定することが容易にできる。またスペースマーカ61の苗枠6への設置位置はどこでもよいが、スペースマーカ61を使用しない場合には予備苗枠6の長辺側を図2に示すように田植機進行方向へ向け、且つスペースマーカ61は、この状態の予備苗枠6の長辺側の内側に係止しておくことが田植機の走行及びオペレータの田植機の周りでの作業の邪魔にならないので望ましい。
【0032】
図5(b)に示すように田植機の先端側の畦に向けてスペースマーカ61を伸ばす場合にはオペレータが任意の長さにスペースマーカ61を伸ばして、マーカ61の先端と畦が重なった時に田植機を旋回させることができる。従ってオペレータは圃場内の苗の枕植え用のスペース(枕地)として希望する幅だけ残すことができる。
【0033】
本発明の一実施例として図6(a)の田植機の側面図と図6(b)の田植機前方部の平面図に示すように、予備苗枠6を機体に支持させるための支持ロッド67を設け、該支持ロッド67は、機体に設けた回動支点67aがブレーキパッドにより任意の傾斜角で保持される構成であるので、回動支点67aを中心に矢印A方向である前方へ傾斜可能な構成である。予備苗枠6は支持ロッド67の上端部に回動可能に吊り下げられているだけなので、予備苗枠6の上面は水平面を保ったまま支持ロッド67に吊り下げられるので補助苗が予備苗枠6から落下するおそれはない。
【0034】
上記図6に示す構成により、予備苗の補給時は、予備苗枠6が前方に張り出すと共に外側にせり出すため、オペレータが降りて、補助苗や肥料を補助する時、ステップ上を通り易くなるため、作業性が向上する。
【0035】
図7には本発明の他の実施例の田植機の正面図(図7(a))と側面図(図7(b))を示すが、予備苗枠6を支持する一部アーチ形の支持ロッド68,68は前後方向に伸びる左右一対のレール70上をスライド自在になっている。予備苗枠6の支持ロッド68の下端部は車輪71が取り付けられている台座72に固定支持されているので、車輪71がレール70上を走行することで予備苗枠6を機体の前後方向へスライドさせることができる。レール70の前後端部と車輪71付きの台座72の前後端部にはそれぞれ磁石74を取り付けてあり、レール70が水平状態にあるときは、前記レール70の前方の磁石74と台座72の磁石74同士の吸着により、又はレール70の後方の磁石74と台座72の磁石74同士の吸着により、レール70の前方又は後方に台座72が不動状態で支持されている。
【0036】
本実施例ではレール70の前端部が機体に回動自在に支持されている。さらにレール70の中間部には機体に支持された油圧シリンダ76のピストンロッド76aの先端が回動自在に支持されているので、該ピストンロッド76aを伸縮制御するレバー75の前後方向への操作によりレール70を上下させることができる。レール70の上下動で予備苗枠6の台座72とレール70の磁石74,74同士の吸引力に打ち勝って予備苗枠6は前方又は後方にレール70上を移動する。
【0037】
レール70を前傾させると予備苗枠6はレール70の前端部に移動し、レール70を後傾させると予備苗枠6がレール70の後端部に移動する。予備苗枠6が前傾していると補助者が畦から予備苗枠6へ苗を補給し易くなり、また予備苗枠6が後傾するとオペレータが操縦席15から苗を予備苗枠6へ補給し易くなる。
【0038】
図8にはセンタフロート45の側面図を示すが、フロート取付脚78aを回動可能にフロート45に取り付けるための取付片78bと前記フロート45を取付ボルト79で固定し、該ボルト79の脚の長さによってフロート45の傾斜角度を調整する構成にしている。ボルト79の脚の長さを変えてボルト79の脚がフロート取付脚78aに当たる位置を調整してフロート45の前上がりを抑制しながらフロート45の傾斜角度を容易に調整できる。その結果、苗植付装置42の圃場への苗植え付け深さを調整することができる。
【0039】
また、図9に示すようにセンタフロート45とサイドフロート46の両方のフロート45,46の後端側底面を前端部と同様に側面視で後ろ上がりの曲面形状とすることができる。この場合には、圃場の畦際から植え始めるために必ず田植機を後退させる動作をするので、フロート45,46の後端側底面が後ろ上がりの曲面を持っていると、フロート45,46の後端部が圃場の泥内にめり込むのを防ぐ効果がある。
【0040】
また、水平状態の圃場での苗の植え付け作業中であっても、田植機が後退することがあるが、フロート45,46の後端側に後ろ上がりの曲面を持っていると、フロート45,46上に泥が載ることがない。
【0041】
図10(a)にはHST(油圧無段変速装置)22の斜板85の回転により可変容量形ポンプ22b(図3参照)が作動する機構を説明するための可変容量形ポンプ22bの要部一部断面図を示し、図10(b)は図10(a)の矢印S方向から見た図である。
【0042】
可変容量形ポンプ22bの回転軸87と同心の回転中心を有する斜板85は、中央部に貫通口85aを備えたドーム状の中実構造体であり、可変容量形ポンプ22bの回転軸87の回りに該回転軸87と平行な方向に並列配置された複数(本実施例では9本)の伸縮自在のピストン89に当接する平面85bを有する。また、9本のピストン89は、シリンダブロック90内の前記回転軸87と平行な方向に設けられた各シリンダ90a内にスプリング90bにより伸縮自在に配置されている。スプリング90bにより常時付勢されたピストン89の先端部89aが斜板85の平面部85bに当接し、その反対側のピストン底面89bは各シリンダ90a内のオイルをピストン89の伸縮に応じて各シリンダ90a内から出し入れする構成である。
【0043】
なお、シリンダブロック90は回転軸87にスプライン係合しているが、回転軸87がエンジン13から駆動力を得て回転するときに斜板85は回転軸87に連結していないので回転しない。各シリンダ90a内のオイルは図10(b)に示すケース91に設けられた三日月状の二つの油路91a、91bからHSTの油圧閉回路22a(図3)を流れて可変容量形モータ22cに流れる。
【0044】
従って可変容量形ポンプ22bの回転軸87に対する所定角度αで傾斜した斜板85が図10(a)の矢印φ方向に回転軸87を中心に回転すると、該斜板85の傾斜角度に応じて9本のピストン89が順次伸縮して、油路91aがオイル吸入ポートとなり、油路91bがオイル吐出ポートとなり、各シリンダ90a内のオイルがHSTの油圧閉回路22aに送り出される。この送油量は斜板85の傾斜角度に応じて変化するので、斜板85の傾斜角度を調節して前記送油量を変化させ、同時に斜板85の傾斜角度に応じて可変容量形モータ22cの出力も調節することができる。
【0045】
この様なHSTのピストン式の油圧ポンプ22bにおいて、精度が要求されるシリンダブロック90と回転軸87の間の接合部にカップリング92を介在させることにより、シリンダブロック90をより平行にケース(バルブプレート)91に密着させることができ、油圧ポンプ22bのポンプ効率が向上する。また、シリンダブロック90と回転軸87の間隔を精密加工しなくても良くなり加工の容易化と生産安定化が達成できる。
【0046】
図11に示すように、田植機の圃場作業時は、主にHST22の駆動モータ96によりトラニオン軸93の回転角度の制御(斜板85の傾斜角度の制御)を行い、路上走行時はトラニオン軸93に直接連結したアクセルペダル94でHST22の制御を行う構成にしても良い。
【0047】
HST22を使用した水田作業機などの走行車両において、主に圃場内作業時はHST22のトラニオン軸93の回転角度の制御を駆動モータ96により行い、その駆動モータ96の制御を主変速レバー14(図2も参照)に設置したポテンショメータ95により行う。
【0048】
主に路上走行時は、リレー97によりモータ96の作動を切り、トラニオン軸93に直接接続したアクセルペダル94でHST22の制御を行う。
このように、主に一定の速度で作業を行う圃場内作業時は主変速レバー14で行い、頻繁に増減速、停車を行う路上走行時はアクセルペダル94でHSTトラニオン軸93の制御を行うことにより、HST22の特性を十二分に発揮でき、操作性の良い水田作業機などの走行車両を簡単な装備で提供できる。
【符号の説明】
【0049】
2:走行車体、3:昇降リンク装置、4:農作業装置(苗植付部)、6:予備苗枠、61:スペースマーカ、63:取付部材、63a:穴、65:ピン、66:支持部材、66a:回動中心
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機などの水田作業機は機体と畦との間隔を図るマーカを取付けており、該マーカを用いることで水田作業機と畦との間隔を一定に保ちながら畦際での苗植付作業を能率良く行っている。特許文献1にはスペースマーカを機体の先端部に取り付けた例が記載され、特許文献2には長さの調節が可能なスペースマーカを機体の左右方向に設けた例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−105142号公報
【特許文献2】特開2003−8号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記いずれのスペースマーカも機体に取り付けた構成であり、スペースマーカの不使用時には収納位置に収納はできるが、機体からスペースマーカを取り外すことができる構成ではない。そのため機体の前端部にスペースマーカを取り付けた水田作業機と機体の左右方向にスペースマーカを設けた水田作業機とを用途に応じて使い分けるしかなかった。
【0005】
本発明の課題は、取り外し自在にした安価なスペースマーカを備えた田植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)を装着した田植機において、走行車体(2)の左右側方には支持部材(66)に設けた回動中心(66a)回りに回動可能に苗枠(6)を設け、機体の側方へ突出させて側方の畦と機体の間隔を測るスペースマーカ(61)を、左右いずれの苗枠(6)にも着脱可能で該苗枠(6)の長辺側の一辺部に沿って取付部材(63)を介して着脱自在に取り付け、苗枠(6)の回動により機体の前端側に向け得る構成とした田植機とした。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、スペースマーカ(61)を、苗枠(6)の回動により該苗枠(6)の長辺を機体の進行方向に向けた状態で該苗枠(6)の内側に配置し得る構成とした請求項1に記載の田植機とした。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、苗枠(6)側に設けたピン(65)を取付部材(63)側の穴(63a)に挿脱して取付部材(63)を苗枠(6)に着脱する構成とした請求項1又は請求項2に記載の田植機とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、側方の畦と機体の間隔を測るスペースマーカ(61)を、苗枠(6)の回動により機体の前端側に向け、所望の枕地幅を残して機体を旋回させることができる。また、スペースマーカ(61)を着脱自在に取り付け、左右いずれの苗枠(6)にも着脱できるので、機体の左側又は右側の畦と機体の間隔を容易に測ることができる。更に、使用しない場合には、苗枠(6)から取り外して適宜の格納場所に容易に収納できる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明の効果に加えて、スペースマーカ(61)を、苗枠(6)の回動により該苗枠(6)の長辺を機体の進行方向に向けた状態で該苗枠(6)の内側に配置すれば、機体の走行やオペレータの作業の邪魔にならないようにできる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、苗枠(6)にスペースマーカ(61)の取付部材(63)を片手で取り付け、取り外しできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例の水田作業機の側面図である。
【図2】図1の水田作業機の平面図である。
【図3】図1の水田作業機の油圧回路図である。
【図4】図1の水田作業機のスペースマーカの予備苗枠への取付構造を示す側面図(図4(a))と図4(a)の矢印A方向から見た図(図4(b))である。
【図5】図1の水田作業機の左側又は右側の畦と機体との間隔(図5(a))及び機体の前端側の畦と機体との間隔(図5(b))をスペースマーカを用いて設定する様子を説明する平面図である。
【図6】図1の水田作業機の一実施例の側面図(図6(a))と前部の平面図(図6(b))である。
【図7】図1の水田作業機の一実施例の正面図(図7(a))と側面図(図7(b))である。
【図8】図1の水田作業機の一実施例のセンタフロートの側面図である。
【図9】図1の水田作業機の一実施例のセンタフロートの側面図である。
【図10】図1の水田作業機のHSTの斜板取付部の断面図(図10(a)と図10(a)の矢印S方向から見た図(図10(b))である。
【図11】図1の水田作業機のHSTと主変速レバーとアクセルペダルの連係図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
水田作業機の典型例である乗用施肥田植機の側面図を図1に示し、平面図を図2に示す。
【0014】
走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、さらに走行車体2の後部に施肥装置5の肥料タンク50等が設けられている。走行車体2の前部左右両側には、複数段づつの予備苗枠6、…が設けられている。
【0015】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10、10及び後輪11、11を備えた四輪駆動車両で、機体の前部にミッションケース12、その後方にエンジン13が設けられている。エンジン13の回転動力は、油圧式無段変速装置(HST)22を介してミッションケース12へ伝達される。そして、ミッションケース12内の主変速装置で変速された後、前輪10、10及び後輪11、11と、苗植付部4及び施肥装置5の各駆動部とに伝達される。
【0016】
エンジン13の上側には操縦席15が設置され、その前方に操向車輪である前輪10、10の操向ハンドル16が設けられている。図2に示すように左右の後輪11、11を個別に制動することのできる後輪ブレーキペダル17L、17Rがフロントカバー7の右脇に設けられている。また操縦席15の左脇には操作ボックス18が設けられ、自動操向で機体を直進させるときにオンにする自動直進スイッチ、自動操向時における走行方位を設定する方位設定器等が操作ボックス18に配置されている。また、緊急時にエンジン13を停止させる緊急停止スイッチ19も設けられている。
【0017】
なお本明細書では田植機の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
昇降リンク装置3は、前端側で回動自在に支持された互いに平行な1本の上リンク30と左右一対の下リンク31、31の後端部とに連結枠32が連結されており、該連結枠32に苗植付部4がローリングシリンダ34によりローリング自在に装着されている。昇降シリンダ33を作動させることにより、各リンク30、31が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。また、苗植付装置4の昇降シリンダ作動用の昇降バルブユニット21(図3)はパワステシリンダ24を作動させる操向バルブユニット20(図3)の近傍に配置される。
【0018】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース40、苗を載せて左右往復動し苗を一株づつ各条の苗取出口41a、…に供給する苗載台41、苗取出口41a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置42、…等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート45、その左右両側にサイドフロート46,46がそれぞれ設けられており、植付作業時には、各フロート45,46が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置42、…により苗が植付けられる。
【0019】
施肥装置5は、肥料タンク50内の肥料を肥料繰出部51、…によって一定量づつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料を施肥ホース52、…を通して施肥ガイド53、…まで移送し、該施肥ガイドの前側に設けた作溝体54、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。
【0020】
図3はこの水田作業機の油圧装置全体の油圧回路図である。
油タンク55の油を送り出す圧力油供給源である油圧ポンプ56から送り出される圧力油はパワステシリンダ24(24a、24b)を作動させる操向油圧回路(操向バルブユニット)20と苗植付装置4の昇降シリンダ作動用の昇降油圧回路(昇降バルブユニット)21及びHST22に供給される。操向油圧回路20は、操向ハンドル16の操作に連動する方向制御バルブ25で構成したもので、操向ハンドル16が中立位置にあるときは、操向油圧回路20に供給される圧力油をそのまま昇降バルブユニット21へ供給し、操向ハンドル16を中立位置よりも右に回すとその操作量に相当する流量の油をパワステシリンダ24の左シリンダ室24aに供給し、操向ハンドル16を中立位置よりも左に回すとその操作量に相当する流量の圧力油をパワステシリンダ24の右シリンダ室24bに供給するようになっている。
【0021】
また、ポンプ56の吐出量が所定量以上のときは、圧力制御バルブ23が開き、余剰の圧力油は操向油圧回路20を経由せず苗植付装置4の昇降シリンダ作動用に昇降油圧回路21に送られる。
【0022】
昇降油圧回路21ではプライオリティバルブ26を流れる油量が図示の状態から増えると、バルブ26内のスプールが図面右側にシフトし、昇降レバー27を備えた昇降バルブ28に流入する。昇降バルブ28に流入した圧油は昇降レバー27によりスプール位置が変化して苗植付装置4側に送油されるかバルブ26側に還流される。
【0023】
昇降バルブ28を通り下降規制レバー37を備えた下降規制バルブ38に流入した圧油は、バルブ38のスプールが図示の状態から左方向に移動すると、昇降シリンダ33を作動させる。
【0024】
プライオリティバルブ26は2位置4ポートの比例ソレノイドバルブで、常態では図3に示す位置にあり、圧油は昇降シリンダ33には送られずに、圧力制御バルブ35からオイルフィルタ36を経由してHST22に供給される。
【0025】
昇降バルブ28が昇降シリンダ33を作動させる場合には、昇降レバー27の作動により昇降バルブ28が図示の状態から右端のスプールのポートが開く方向に移動する。このとき、該スプールには絞り28aが設けられているので、該絞り28aを経由してHST22への送油が途絶えることがない。
【0026】
なお、下降規制バルブ38には一方向性弁38aがあるので、レバー37を操作しない限り昇降シリンダ33内のオイルが抜けないようになっている。
図3に示す本実施例の油圧回路は、パワステシリンダ24を作動させる操向油圧回路20と苗植付装置4の昇降シリンダ33の作動用油圧回路21及びHST22が直列に接続されて、また互いに近くに配置されているので油圧ポンプ56の吐出圧がこれらの油圧回路20、21、22が並列接続されている場合に比して吐出圧が少なくて済む。
【0027】
上記本実施例の乗用施肥田植機には伸縮式のスペースマーカ61を予備苗枠6の一辺に沿った状態で着脱可能に取り付けている。スペースマーカ61は取付部材63を介して予備苗枠6にボルト62(図4)により着脱可能に配置されているので、スペースマーカ61を左右どちらの予備苗枠6にも付け替えることができる。
【0028】
また、スペースマーカ61が機体に着脱可能であるので、機体に予め取り付けた固定部品としては用いず、オプションとして本機を改造することなく取り付けることができる。
また、予備苗枠6に着脱可能であるスペースマーカ61は、使用しない場合には予備苗枠6から取り外してオペレータの好きなところに保管できる。さらにスペースマーカ61が破損した場合に市販の釣り竿を代用品として使用することもできる。
【0029】
図4にはスペースマーカ61の予備苗枠6への取付構造を示す側面図(図4(a))と図4(a)の矢印A方向から見た図(図4(b))を示す。
スペースマーカ61の取付部材63を予備苗枠6に係止するためのピン65を介して予備苗枠6に取り付ける。該取付部材63を予備苗枠6に着脱自在となるようにピン挿脱用の穴63aを設けている。このような着脱機構でスペースマーカ61の取付部材63を予備苗枠6に片手で取り付け、取り外しが可能となる。
【0030】
また、このスペースマーカ61を取り付けた予備苗枠6は機体に取り付けられた予備苗枠の支持部材66の回動中心66aを回転中心として90度または180度回動可能であるので、スペースマーカ61は田植機の先端側と左右両側に向けて伸縮自在となる。
【0031】
従って図5の田植機の平面図に示すように、田植機の左側又は右側の畦と田植機との間隔(図5(a))及び田植機の先端側の畦と田植機との間隔(図5(b))をスペースマーカ61を用いて設定することが容易にできる。またスペースマーカ61の苗枠6への設置位置はどこでもよいが、スペースマーカ61を使用しない場合には予備苗枠6の長辺側を図2に示すように田植機進行方向へ向け、且つスペースマーカ61は、この状態の予備苗枠6の長辺側の内側に係止しておくことが田植機の走行及びオペレータの田植機の周りでの作業の邪魔にならないので望ましい。
【0032】
図5(b)に示すように田植機の先端側の畦に向けてスペースマーカ61を伸ばす場合にはオペレータが任意の長さにスペースマーカ61を伸ばして、マーカ61の先端と畦が重なった時に田植機を旋回させることができる。従ってオペレータは圃場内の苗の枕植え用のスペース(枕地)として希望する幅だけ残すことができる。
【0033】
本発明の一実施例として図6(a)の田植機の側面図と図6(b)の田植機前方部の平面図に示すように、予備苗枠6を機体に支持させるための支持ロッド67を設け、該支持ロッド67は、機体に設けた回動支点67aがブレーキパッドにより任意の傾斜角で保持される構成であるので、回動支点67aを中心に矢印A方向である前方へ傾斜可能な構成である。予備苗枠6は支持ロッド67の上端部に回動可能に吊り下げられているだけなので、予備苗枠6の上面は水平面を保ったまま支持ロッド67に吊り下げられるので補助苗が予備苗枠6から落下するおそれはない。
【0034】
上記図6に示す構成により、予備苗の補給時は、予備苗枠6が前方に張り出すと共に外側にせり出すため、オペレータが降りて、補助苗や肥料を補助する時、ステップ上を通り易くなるため、作業性が向上する。
【0035】
図7には本発明の他の実施例の田植機の正面図(図7(a))と側面図(図7(b))を示すが、予備苗枠6を支持する一部アーチ形の支持ロッド68,68は前後方向に伸びる左右一対のレール70上をスライド自在になっている。予備苗枠6の支持ロッド68の下端部は車輪71が取り付けられている台座72に固定支持されているので、車輪71がレール70上を走行することで予備苗枠6を機体の前後方向へスライドさせることができる。レール70の前後端部と車輪71付きの台座72の前後端部にはそれぞれ磁石74を取り付けてあり、レール70が水平状態にあるときは、前記レール70の前方の磁石74と台座72の磁石74同士の吸着により、又はレール70の後方の磁石74と台座72の磁石74同士の吸着により、レール70の前方又は後方に台座72が不動状態で支持されている。
【0036】
本実施例ではレール70の前端部が機体に回動自在に支持されている。さらにレール70の中間部には機体に支持された油圧シリンダ76のピストンロッド76aの先端が回動自在に支持されているので、該ピストンロッド76aを伸縮制御するレバー75の前後方向への操作によりレール70を上下させることができる。レール70の上下動で予備苗枠6の台座72とレール70の磁石74,74同士の吸引力に打ち勝って予備苗枠6は前方又は後方にレール70上を移動する。
【0037】
レール70を前傾させると予備苗枠6はレール70の前端部に移動し、レール70を後傾させると予備苗枠6がレール70の後端部に移動する。予備苗枠6が前傾していると補助者が畦から予備苗枠6へ苗を補給し易くなり、また予備苗枠6が後傾するとオペレータが操縦席15から苗を予備苗枠6へ補給し易くなる。
【0038】
図8にはセンタフロート45の側面図を示すが、フロート取付脚78aを回動可能にフロート45に取り付けるための取付片78bと前記フロート45を取付ボルト79で固定し、該ボルト79の脚の長さによってフロート45の傾斜角度を調整する構成にしている。ボルト79の脚の長さを変えてボルト79の脚がフロート取付脚78aに当たる位置を調整してフロート45の前上がりを抑制しながらフロート45の傾斜角度を容易に調整できる。その結果、苗植付装置42の圃場への苗植え付け深さを調整することができる。
【0039】
また、図9に示すようにセンタフロート45とサイドフロート46の両方のフロート45,46の後端側底面を前端部と同様に側面視で後ろ上がりの曲面形状とすることができる。この場合には、圃場の畦際から植え始めるために必ず田植機を後退させる動作をするので、フロート45,46の後端側底面が後ろ上がりの曲面を持っていると、フロート45,46の後端部が圃場の泥内にめり込むのを防ぐ効果がある。
【0040】
また、水平状態の圃場での苗の植え付け作業中であっても、田植機が後退することがあるが、フロート45,46の後端側に後ろ上がりの曲面を持っていると、フロート45,46上に泥が載ることがない。
【0041】
図10(a)にはHST(油圧無段変速装置)22の斜板85の回転により可変容量形ポンプ22b(図3参照)が作動する機構を説明するための可変容量形ポンプ22bの要部一部断面図を示し、図10(b)は図10(a)の矢印S方向から見た図である。
【0042】
可変容量形ポンプ22bの回転軸87と同心の回転中心を有する斜板85は、中央部に貫通口85aを備えたドーム状の中実構造体であり、可変容量形ポンプ22bの回転軸87の回りに該回転軸87と平行な方向に並列配置された複数(本実施例では9本)の伸縮自在のピストン89に当接する平面85bを有する。また、9本のピストン89は、シリンダブロック90内の前記回転軸87と平行な方向に設けられた各シリンダ90a内にスプリング90bにより伸縮自在に配置されている。スプリング90bにより常時付勢されたピストン89の先端部89aが斜板85の平面部85bに当接し、その反対側のピストン底面89bは各シリンダ90a内のオイルをピストン89の伸縮に応じて各シリンダ90a内から出し入れする構成である。
【0043】
なお、シリンダブロック90は回転軸87にスプライン係合しているが、回転軸87がエンジン13から駆動力を得て回転するときに斜板85は回転軸87に連結していないので回転しない。各シリンダ90a内のオイルは図10(b)に示すケース91に設けられた三日月状の二つの油路91a、91bからHSTの油圧閉回路22a(図3)を流れて可変容量形モータ22cに流れる。
【0044】
従って可変容量形ポンプ22bの回転軸87に対する所定角度αで傾斜した斜板85が図10(a)の矢印φ方向に回転軸87を中心に回転すると、該斜板85の傾斜角度に応じて9本のピストン89が順次伸縮して、油路91aがオイル吸入ポートとなり、油路91bがオイル吐出ポートとなり、各シリンダ90a内のオイルがHSTの油圧閉回路22aに送り出される。この送油量は斜板85の傾斜角度に応じて変化するので、斜板85の傾斜角度を調節して前記送油量を変化させ、同時に斜板85の傾斜角度に応じて可変容量形モータ22cの出力も調節することができる。
【0045】
この様なHSTのピストン式の油圧ポンプ22bにおいて、精度が要求されるシリンダブロック90と回転軸87の間の接合部にカップリング92を介在させることにより、シリンダブロック90をより平行にケース(バルブプレート)91に密着させることができ、油圧ポンプ22bのポンプ効率が向上する。また、シリンダブロック90と回転軸87の間隔を精密加工しなくても良くなり加工の容易化と生産安定化が達成できる。
【0046】
図11に示すように、田植機の圃場作業時は、主にHST22の駆動モータ96によりトラニオン軸93の回転角度の制御(斜板85の傾斜角度の制御)を行い、路上走行時はトラニオン軸93に直接連結したアクセルペダル94でHST22の制御を行う構成にしても良い。
【0047】
HST22を使用した水田作業機などの走行車両において、主に圃場内作業時はHST22のトラニオン軸93の回転角度の制御を駆動モータ96により行い、その駆動モータ96の制御を主変速レバー14(図2も参照)に設置したポテンショメータ95により行う。
【0048】
主に路上走行時は、リレー97によりモータ96の作動を切り、トラニオン軸93に直接接続したアクセルペダル94でHST22の制御を行う。
このように、主に一定の速度で作業を行う圃場内作業時は主変速レバー14で行い、頻繁に増減速、停車を行う路上走行時はアクセルペダル94でHSTトラニオン軸93の制御を行うことにより、HST22の特性を十二分に発揮でき、操作性の良い水田作業機などの走行車両を簡単な装備で提供できる。
【符号の説明】
【0049】
2:走行車体、3:昇降リンク装置、4:農作業装置(苗植付部)、6:予備苗枠、61:スペースマーカ、63:取付部材、63a:穴、65:ピン、66:支持部材、66a:回動中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)を装着した田植機において、走行車体(2)の左右側方には支持部材(66)に設けた回動中心(66a)回りに回動可能に苗枠(6)を設け、機体の側方へ突出させて側方の畦と機体の間隔を測るスペースマーカ(61)を、左右いずれの苗枠(6)にも着脱可能で該苗枠(6)の長辺側の一辺部に沿って取付部材(63)を介して着脱自在に取り付け、苗枠(6)の回動により機体の前端側に向け得る構成とした田植機。
【請求項2】
スペースマーカ(61)を、苗枠(6)の回動により該苗枠(6)の長辺を機体の進行方向に向けた状態で該苗枠(6)の内側に配置し得る構成とした請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
苗枠(6)側に設けたピン(65)を取付部材(63)側の穴(63a)に挿脱して取付部材(63)を苗枠(6)に着脱する構成とした請求項1又は請求項2に記載の田植機。
【請求項1】
走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)を装着した田植機において、走行車体(2)の左右側方には支持部材(66)に設けた回動中心(66a)回りに回動可能に苗枠(6)を設け、機体の側方へ突出させて側方の畦と機体の間隔を測るスペースマーカ(61)を、左右いずれの苗枠(6)にも着脱可能で該苗枠(6)の長辺側の一辺部に沿って取付部材(63)を介して着脱自在に取り付け、苗枠(6)の回動により機体の前端側に向け得る構成とした田植機。
【請求項2】
スペースマーカ(61)を、苗枠(6)の回動により該苗枠(6)の長辺を機体の進行方向に向けた状態で該苗枠(6)の内側に配置し得る構成とした請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
苗枠(6)側に設けたピン(65)を取付部材(63)側の穴(63a)に挿脱して取付部材(63)を苗枠(6)に着脱する構成とした請求項1又は請求項2に記載の田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−212016(P2011−212016A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142006(P2011−142006)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2008−143982(P2008−143982)の分割
【原出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2008−143982(P2008−143982)の分割
【原出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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