説明

田植機

【課題】従来より、エンジン駆動の田植機において、植付操作を行うマーカ選択レバー等は、大きな設置空間が必要な機械的リンク機構を介して被操作部に連動連結されるため、マーカ選択レバー等をボンネットに設けると、該ボンネット内のエンジンルームの空きスペースが小さくなり、設計自由度低下による製造コストの増加やメンテナンス性の悪化を招く、という問題があった。
【解決手段】エンジン6駆動の田植機1において、該田植機1の被操作部である植付部3、植付クラッチ33、及び線引きマーカ40L・40Rを電気制御するコントローラ46に電気信号を送受信するクロスレバー52を、前記エンジン6を収容するエンジンルーム89の直上に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エンジン駆動の田植機に関し、特に、該田植機の各被操作部と連動連結する操作具のリンク機構と配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン駆動の田植機において、被操作部の操作、例えば、植付部の昇降、植付クラッチの断接、及び左右の線引きマーカの選択のような植付作業に必要な操作(以下、「植付操作」とする)については、操向ハンドルの近傍に設けたマーカ選択レバーや、該操向ハンドル後方にある運転席の近傍に設けた植付操作レバーを、操向ハンドルから外した片手を使って操作する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−52120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記技術では、前記マーカ選択レバーと植付操作レバーのいずれも、大きな設置空間が必要な機械的リンク機構を介して、前記植付部、植付クラッチ、及び線引きマーカ等の被操作部に連動連結されている。このため、前記マーカ選択レバーと植付操作レバーを、エンジンルームを内部に有するボンネット上に設けると、エンジンルームに内設する機械的リンク機構によってエンジンルームの空きスペースが小さくなり、設計自由度低下による製造コストの増加やメンテナンス性の悪化を招く、という問題があった。
更に、前記植付操作レバーは、運転席の側方空間に突設されているため、機上における作業者の作業空間が狭くなり、植付部への苗補給等の作業性が低下する、という問題があった。
加えて、畦際旋回のように数種の複合動作が必要な場合は、前記マーカ選択レバーと植付操作レバーの如く、異なる場所に配置した複数の操作具を連続して操作しなければならず、誤操作や操作遅れを招く恐れがある、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、エンジン駆動の田植機において、該田植機の被操作部を電気制御するコントローラに電気信号を送受信するクロスレバーを、前記エンジンを収容するエンジンルームの直上に配置したものである。
請求項2においては、前記被操作部として、走行部の後方に昇降可能に連結する植付部と、該植付部の駆動の断接を行う植付クラッチと、植付作業中の進行方向目標に必要なマーキングを行う左右の線引きマーカとを備え、前記植付部の昇降、植付クラッチの断接、及び左右の線引きマーカの選択を、前記コントローラにより電気制御するものである。
請求項3においては、前記クロスレバー先端のグリップ部は、前記走行部の操向操作を行う操向ハンドルの把持部の下方近傍に配置すると共に、該把持部の回動面に略平行な平面内を前後左右に移動可能とすることにより、前記把持部を把持したままでクロスレバーを傾倒操作可能とするものである。
請求項4においては、前記クロスレバーの前後方向への傾倒操作に、前記植付部の昇降と植付クラッチの断接を連動させると共に、前記クロスレバーの左右方向への傾倒操作に、前記左右の線引きマーカの選択を連動させる制御構成を備えるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、クロスレバーと被操作部間の大部分を電気的にリンクすることができ、たとえ、エンジンルームを内部に有するボンネットに前記クロスレバーを設けても、エンジンルームの空きスペースはそれほど減少せず、設計自由度低下による製造コストの増加やメンテナンス性の悪化を確実に防止できる。更に、クロスレバーをエンジンルームの直上に配置するので、該エンジンルーム上方の大きな空間を利用して、作業者の作業空間へのクロスレバーの干渉を抑えることができ、植付部への苗補給等の作業性を向上させることができる。そして、必要に応じて、単一のクロスレバーに機能を集約して、該クロスレバーを使った一連の操作を容易に行うことができ、操作具の共通化が進み、誤操作や操作遅れを確実に防ぐことができる。
請求項2により、圃場での畦際旋回のような数種の複合動作からなる、一連の植付操作が容易となり、植付作業性が大幅に向上する。
請求項3により、操向ハンドルから両手を離さず、前方に向けていた視線も外すことなく走行することができ、直進走行が容易となって植付位置精度が高くなり、収穫作業時の作業効率が向上する。更に、クロスレバーを指で操作する際、該クロスレバーのグリップ部は前記把持部の回動面に略平行な平面内を移動できるので、該グリップ部の押動による前後左右への傾倒操作を全て指の掌側を使って素早く行うことができ、操作性が大きく向上する。
請求項4により、クロスレバーの傾倒操作と、植付部・左右の線引きマーカの動作状況との関連性を高めることができ、作業者はクロスレバーの操作方法を容易に理解して、圃場での畦際旋回の際の誤操作や操作遅れを一層確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係わる田植機の全体構成を示す側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】ボンネットの側面図である。
【図4】同じく平面図である。
【図5】同じく左前方斜視図である。
【図6】ボンネット内部の左前方斜視図である。
【図7】同じく右後方斜視図である。
【図8】ラジエータの右前方斜視図である。
【図9】同じく平面図である。
【図10】同じく側面図である。
【図11】植付部の制御ブロック図である。
【図12】操作パネルの右後方斜視図である。
【図13】同じく側面図である。
【図14】同じくハンドル軸の軸心上から見た平面図である。
【図15】同じく操作具の配置構成の説明図である。
【図16】別形態の操作パネルの右後方斜視図である。
【図17】同じく側面図である。
【図18】同じく後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図中の矢印Fで示す方向を田植機1の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準とするものである。
【0009】
まず、本発明に関わる田植機1の全体構成について、図1乃至図4、図11により説明する。
該田植機1は、走行部2の後部に、昇降リンク機構4を介して植付部3を配置したものであり、走行部2により走行しながら、植付部3により苗を圃場に植え付けるように構成されている。なお、本実施例では、田植機1は、8条植えの乗用田植機とするが、特に限定するものではなく、例えば、6条植えや10条植えの乗用田植機であってもよい。
【0010】
前記走行部2においては、車体フレーム5の前部上に、エンジン6が載置されて、ボンネット11により上方および側方から覆われると共に、エンジン6後方の車体フレーム5には、ミッションケース77が支持される。更に、車体フレーム5の前下部には、フロントアクスルケース7を介して左右の前輪8が支持されると共に、車体フレーム5の後部には、リアアクスルケース9を介して左右の後輪10が支持されている。
【0011】
これにより、前記エンジン6からの動力が、前記ミッションケース77に入力された後、該ミッションケース77内にある油圧式無段変速装置等の変速機構によって変速され、この変速動力が、前記左右の前輪8と左右の後輪10とにそれぞれ伝達され、前記走行部2が前進走行または後進走行できるようにしている。
【0012】
更に、前記ボンネット11の内部には、前記エンジン6を収容するエンジンルーム89が形成されている。一方、ボンネット11の両側には、予備苗載台12・12が配置され、該予備苗載台12・12を取り付ける各取付フレーム13が、前記車体フレーム5の前部を構成する前メインフレーム91・91より立設される。
【0013】
そして、前記ボンネット11後部のダッシュボード14の上部には、操作パネル24が設けられ、該操作パネル24に、操向ハンドル16や、後で詳述する各種操作具・表示具が配置されている。更に、前記ボンネット11の両側と車体フレーム5の上は、車体カバー17によって覆われると共に、前記操向ハンドル16の後方には、運転席18が配置され、該運転席18の周囲には、乗降用や苗補給用のステップ等が形成されている。これにより、運転席18の作業者が、機体上を移動して、前記予備苗載台12・12から植付部3に対して苗補給できるようにしている。
【0014】
また、前記植付部3においては、植付フレーム29の下部中央付近に図示せぬ植付ミッションケースが支持される。該植付ミッションケースより左右両側方に延出された伝動軸ケース47からは、4個の植付伝動ケース26が後方に延設されると共に、該植付伝動ケース26は、左右方向に適宜の間隔をとって配置されている。
【0015】
該植付伝動ケース26後部の左右両側には、ロータリーケース27が回動自在に支持され、該ロータリーケース27は、植付条数と同数、即ち本実施例では8個備えられている。そして、それぞれのロータリーケース27には、回動支点を挟んで長手方向両側に、それぞれ2個の植付爪28が支持されている。
【0016】
前記植付伝動ケース26の上方には、前高後低の傾斜状態で苗載台25が配置されている。該苗載台25は、前記植付フレーム29の後部に、上下の図示せぬガイドレールを介して支持されており、図示せぬ横送り機構によって、左右方向に往復横送り可能に構成される。
【0017】
そして、前記苗載台25は、8条分設けられ、その下端側が前記各ロータリーケース27と対向するように、左右方向に並設されており、前記ロータリーケース27が回転すると、植付爪28によって、該当する苗載台25上の苗マットから、1株の苗が切り取られるようにしている。
【0018】
更に、前記苗載台25には、条数に合わせた苗縦送りベルト32が設けられている。該苗縦送りベルト32は、前記苗載台25が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、図示せぬ縦送り機構により、苗載台25上の苗マットを下方へ向かって縦送りするようにしている。
【0019】
以上のような構成において、エンジン6からの動力が、前記植付ミッションケース等を介して各ロータリーケース27に伝達されると、該ロータリーケース27が回転すると共に、ロータリーケース27の前後の植付爪28により苗載台25上の苗マットから苗が交互に取り出され、これにより、苗が圃場に植え付けられていく。
【0020】
同時に、エンジン6からの動力が、前記植付ミッションケース等を介して前記横送り機構と縦送り機構に伝達されると、苗載台25上の苗マットが、苗載台25の左右方向の往復横送りに応じて、縦送り機構により苗縦送りベルト32を介して下方へ向けて縦送りされ、これにより、苗載台25上の苗マットが植付爪28に対して適正な位置に移動する。
【0021】
ここで、前記エンジン6からロータリーケース27、横送り機構、及び縦送り機構に動力を伝達するための動力伝達機構において、その伝達経路の途中部には、植付クラッチ33が介設されている。
【0022】
該植付クラッチ33が接続されると、前記エンジン6からの動力が横送り機構、苗縦送りベルト32、及びロータリーケース27に伝達され、逆に、植付クラッチ33が切断されると、エンジン6からの動力は横送り機構、苗縦送りベルト32、及びロータリーケース27には伝達されない。そして、このような植付クラッチ33の断接も、後で詳述する各種操作具により、切り替えられるようにしている。
【0023】
また、前記植付フレーム29には、中央2条分の圃場面を整地する左右中央のセンタフロート38と、左右2条分ずつの圃場面を整地する左右のサイドフロート39・39とが、それぞれの前部側が後部側を回動支点として上下動するように支持されると共に、該フロート38・39・39は、いずれも前記植付伝動ケース26の下方に配置されている。
【0024】
更に、前記植付フレーム29の下部の左右両側には、それぞれ左右の線引きマーカ40L・40Rが回動自在に支持されている。該左右の線引きマーカ40L・40Rは、その基端部40La・40Raを回動支点として上方に回動されることにより収納され、この収納状態から下方に回動されることにより、その先端を左側方または右側方に突出させて、圃場に線引きを行うようにしている。
【0025】
次に、前記ボンネット11とその内部構造について、図3乃至図10により説明する。
図3乃至図7に示すように、該ボンネット11は、中空状の部材であって、側面視で前低後高に傾斜して全体的に先細り形状に形成される。更に、該ボンネット11には、通風口11a・11bが設けられており、該通風口11a・11bは、ボンネット11の左右両側壁の下部に左右方向へ開口されて、横長の多角形状に形成されると共に、通気性を有して塵埃等を除去するネット等の部材から成るカバー126によって、完全に覆われている。
【0026】
この通風口11a・11bは、ボンネット11における空気の吸排気口であり、ボンネット11の内部と外部とを連通させるものであって、後述する冷却ファン131が回転駆動することにより、通風口11a・11bのうち、左右一側の通風口を通じてボンネット11の外部から内部へ空気が吸入され、その吸入された空気は、左右他側の通風口等を通じてボンネット11の外部へ排気される。本実施例では、右側の通風口11aが吸気口となり、左側の通風口11bが排気口となっている。
【0027】
このような通風構成を有するボンネット11の内部には、前記エンジン6に加えて、ラジエータ133、ラジエータカバー138、及び前記冷却ファン131等の各種装置が設けられている。
【0028】
ここで、前記車体フレーム5の前部において、左右一対の前記前メインフレーム91・91が前後方向に配設され、該前メインフレーム91・91の左右の前端部間は、フロント連結フレーム92によって連結される。そして、該フロント連結フレーム92よりも後方の前記前メインフレーム91・91間には、上に開いた正面視U字状のエンジン取付フレーム93a・93bが介設される。
【0029】
この前後一対のエンジン取付フレーム93a・93bのうち、前側のエンジン取付フレーム93aの左右両端近傍からは、前斜め上方にフロントバンパ94が突設されると共に、エンジン取付フレーム93a・93b上で該フロントバンパ94の左右幅よりも内側には、四個の台座95が設けられている。該四個の台座95には、ゴム等の防振部材90を介して、前記エンジン6が載置固定されており、エンジン6の防振性能を高めることができる。
【0030】
また、図5乃至図10に示すように、前記ラジエータ133は、このように防振支持されるエンジン6の右側方で、前記通風口11aに隣接するようにして配置される。更に、該ラジエータ133は、前記ラジエータカバー138に被覆された状態で、ラジエータ133の下部に設けられた図示せぬ取付部材を介して、前記前メインフレーム91に固定されている。
【0031】
該ラジエータ133は、前記エンジン6の冷却水を冷却するものであり、冷却水が循環する多数のパイプが張り巡らされたラジエータコア134を備える。更に、ラジエータ133の上部には、円筒状に形成された冷却水の給水部135が配設され、該給水部135は、ラジエータカバー138の上側部153の切欠部156から上方へ突設されると共に、該給水部135の上端部には、キャップ136が着脱可能に取り付けられている。
【0032】
このような給水部135の側部からは、取付部137が前方へ向けて突設され、該取付部137に、給水配管139aの一端側が接続されると共に、該給水配管139aの他端側には、リザーバタンク139が接続されており、ラジエータ133が給水配管139aを介してリザーバタンク139と連通されている。これにより、ラジエータ133内の冷却水は所定量に設定維持される。
【0033】
更に、このようなラジエータ133とエンジン6との間に、前記冷却ファン131が配置されている。
該冷却ファン131は、その駆動軸が、プーリ、ベルトを介して、前記エンジン6のクランク軸と連動連結されており、エンジン6によって冷却ファン131が回転駆動すると、ボンネット11の外部の空気が、右側の通風口11aを通じて、ボンネット11の内部に吸入され、その吸入された空気は、冷却風として、ラジエータカバー138の内部や、エンジン6の周囲を流れる。
【0034】
その後、空気は、前記左側の通風口11bからと、前記エンジン6下方にある、ボンネット11の下部開口から排気されるようにしている。これにより、冷却に使用した後の空気を、複数箇所から同時に排気することができ、エンジン6の空冷効率の更なる向上を図っている。
【0035】
また、図6乃至図10に示すように、前記ラジエータカバー138は、前述の如く、ラジエータ133の周囲に配置され、ラジエータ133の前後、左側部の一部、上部、及び下部の一部を被覆するものである。そして、該ラジエータカバー138は、その右側面全体の形状をボンネット11の右側壁の内周面形状に略沿った形状に形成し、該右側面を前記ボンネット11の右側壁に密接可能としており、これにより、前記エンジン6の右側方でラジエータ133を被覆した状態で、ラジエータカバー138とボンネット11との間に隙間が生じないようにしている。
【0036】
このようなラジエータカバー138は、カバー本体150と、シュラウド161と、弾性部材162等により構成される。
このうちのカバー本体150において、その左側開口部157は、前記冷却ファン131の回転駆動によりラジエータカバー138の内部にボンネット11の通風口11aを通じて吸入された空気を、エンジン6へ向けて通過させるための開口部である。
【0037】
そして、該左側開口部157は、ラジエータカバー138の膨出部155を含む全体の左側部154に、左右方向へ向けて側面視で略円形状に開口されると共に、該左側開口部157の開口縁部からは、前記シュラウド161が左方へ延出され、該シュラウド161の内部に、前記冷却ファン131が配置されている。なお、左側開口部157の内径は、冷却ファン131の外径よりも長く設定されている。
【0038】
前記シュラウド161とは、前記冷却ファン131の回転駆動によってラジエータ133からエンジン6側に送られる送風が乱れないように、空気を効率よく案内するものであり、左右方向の円筒状に形成される。そして、該シュラウド161の右側開口部の開口縁部が、カバー本体150の左側開口部157の開口縁部に一体的に固定され、該左側開口部157を前記エンジン6に臨むように配置して構成されると共に、該シュラウド161は、平面視で冷却ファン131の一部、具体的には略右側半分を被覆するように配置されている。
【0039】
これにより、冷却ファン131が回転駆動すると、ラジエータ133を通過した空気が、エンジン6側へ集中して送れるようにしており、簡単な構成でエンジン6の冷却効果を高めることができる。
【0040】
更に、冷却ファン131によりエンジン6側へ送る空気は、ラジエータカバー138の内部の空気に限定するようにしており、ラジエータカバー138の内部の空気を、前記左側開口部157を通じて外部(エンジン6側)へ効率良く排出できるので、これに応じて、ボンネット11の外部の空気が、通風口11aおよび右側開口部190を通じて、ラジエータカバー138の内部へ効率良く吸入される。これにより、簡単な構成でエンジン6の冷却効果を更に高めることができる。
【0041】
加えて、前記シュラウド161は、ラジエータカバー138に一体的に形成されている。これにより、シュラウド161をラジエータカバー138と別部材として設ける必要がなく、部材点数が削減されて、製造コストの低減化を図ることができる。
【0042】
前記弾性部材162とは、スポンジやゴム等の素材からなるシール部材であり、前記カバー本体150の前側部151、上側部153、及び後側部152のそれぞれ右側端部、すなわち、右側開口部190の開口縁部に、カバー本体150でボンネット11に近接する側の外周端部である右側端部を取り囲むようにして取り付けられる。
【0043】
更に、該弾性部材162は、ボンネット11の右側壁に隙間なく接触して、カバー本体150とボンネット11とを密着させるようにしている。これにより、弾性部材162が取り付けられるカバー本体150の前側部151、上側部153および後側部152と、ボンネット11の右側壁との間は、通気しないようにシールされた状態、すなわち、ラジエータカバー138の外部にあってボンネット11の内部の空気が、ラジエータカバー138の内部へ吸気されない状態に保持されている。
【0044】
このような構成により、前記ラジエータカバー138の外部にあってボンネット11の内部の空気、すなわち、エンジン6や図示せぬ油圧配管等を冷却した後の空気が、ボンネット11の内部を循環してラジエータ133に戻り、ラジエータカバー138と、ボンネット11の右側壁との間から、ラジエータカバー138の内部へ再び吸気されることを、確実に防止することができる。これにより、ラジエータ133やエンジン6を冷却して昇温した空気によって、ラジエータ133やエンジン6が再び冷却されるのを防止することができ、ラジエータ133による冷却効率を高めることができる。
【0045】
逆に、冷却ファン131により、ボンネット11の内部に右側の通風口11aを通じて吸入されたボンネット11の外部の空気が、ラジエータカバー138と、ボンネット11の右側壁との間から、ラジエータカバー138の外部であってボンネット11の内部へ漏れるのも、確実に防止することができる。これにより、ラジエータカバー138の内部に吸入されたボンネット11の外部の空気を、漏らすことなくエンジン6へ導くことができ、ラジエータ133による冷却効率を更に高めることができる。
【0046】
以上のような防振・空冷構成により、エンジン6による振動や熱の影響を軽減することができ、たとえ、前記植付部3、植付クラッチ33、及び線引きマーカ40L・40R等の被操作部間と電気的にリンクされる、後述のクロスレバー52・52Aを、エンジン6を収容するボンネット11上に配置しても、振動や熱のせいで電気的リンク機構が誤動作することがなく、確実な植付操作を可能としている。もちろん、このようなクロスレバー52・52A以外であっても、被操作部間と電気的にリンクされる操作部材、例えば押しボタンや回転ダイヤルについても、前述した防振・空冷構造により、確実な各種操作が可能となる。
【0047】
次に、以上のような構成から成る田植機1において、前記昇降リンク機構4、植付クラッチ33、及び線引きマーカ40L・40Rの手動による駆動制御に関し、図1、図11により説明する。
このうちの昇降リンク機構4は、前記植付フレーム29の上下部に後端でそれぞれ軸支されるトップリンク41・ロワリンク42と、前記運転席18の下方に設ける油圧式の昇降シリンダ43とによって構成される。
【0048】
そして、前記トップリンク41の前端は、走行部2のリアフレーム48の上部に軸支される一方、ロワリンク42は、前部に側面視三角状の支持体42aを有し、該支持体42aの前部が、前記リアフレーム48の下部に軸支されると共に、支持体42aの上部に、前記昇降シリンダ43の図示せぬピストンロッドの後端が連結されている。
【0049】
該昇降シリンダ43には、電磁制御弁45が接続され、該電磁制御弁45のソレノイドは、信号線60cを介して、操向操作や植付操作を制御するコントローラ46に接続されている。これにより、該コントローラ46からの植付部昇降信号によって前記電磁制御弁45が作動し、前記昇降シリンダ43に作動油が供給されてピストンロッドが伸縮し、前記リンク41・42を介して植付部3が昇降されるようにしている。
【0050】
前記植付クラッチ33には、電動式のクラッチモータ51の出力部が、図示せぬリンク機構を介して連結され、該クラッチモータ51は、信号線60dを介して前記コントローラ46に接続されている。これにより、該コントローラ46からのクラッチ断接信号によって前記クラッチモータ51が作動し、植付クラッチ33が接続または切断されて、エンジン6からの動力が、前記横送り機構、苗縦送りベルト32、及びロータリーケース27に対し、伝達または遮断されるようにしている。
【0051】
前記左右の線引きマーカ40L・40Rにおいては、前記基端部40La・40Raに、左右のワイヤ49L・49Rを介して、それぞれ、電動式の左右のマーカモータ50L・50Rが接続され、該マーカモータ50L・50Rは、それぞれ信号線60e・60fを介して前記コントローラ46に接続されている。
【0052】
これにより、該コントローラ46からのマーカ選択信号によって前記マーカモータ50L・50Rのいずれかが作動して、前記ワイヤ49L・49Rの一方が牽引され、選択された線引きマーカ40Lまたは40Rは、その係止が解除されて下方に回動し、圃場に突出されるようにしている。なお、収納は、前記植付部3の上昇に伴い図示せぬワイヤが引っ張られ、線引きマーカ40L・40Rが回動しながら引き上げられるようにして行われる。
【0053】
このようにして昇降リンク機構4の昇降シリンダ43、植付クラッチ33、及び線引きマーカ40L・40Rが接続される前記コントローラ46には、更に、前記操作パネル24上に設けた、本発明に関わるクロスレバー52のレバー位置センサ53が、信号線60bを介して接続されている。そして、該レバー位置センサ53によって検知したクロスレバー52の傾倒位置は、レバー位置信号として、前記コントローラ46に送信される。
【0054】
ここで、前記クロスレバー52は、操作パネル24上を前後左右の方向のみに傾倒可能な傾倒軸部52aと、該傾倒軸部52aの下端で前後左右への傾倒機構を備える基部52bと、前記傾倒軸部52aの上端に設けたグリップ部52cとから構成され、このうちの基部52bを覆うカバー54内に、前記レバー位置センサ53が設けられている。
【0055】
このような構成において、前記クロスレバー52を傾倒操作すると、レバー位置センサ53からのレバー位置信号に基づき、前記コントローラ46から、植付部昇降信号、クラッチ断接信号、及びマーカ選択信号が、それぞれ、前記電磁制御弁45、クラッチモータ51、及びマーカモータ50L・50Rに送信され、これにより、植付部3の昇降、植付クラッチ33の断接、及び左右の線引きマーカ40L・40Rの選択が行われる。
【0056】
次に、前記操作パネル24における各種操作具・表示具の配置構成について、図3、図4、図11乃至図15により説明する。
図11乃至図14に示すように、前記操作パネル24は、側面視で前高後低となるように後下がりに傾斜されて前記運転席18に向かって下り傾斜する傾斜面57と、該傾斜面57よりも大きな傾斜面を有する第一膨出部58・第二膨出部59とから構成され、該第一膨出部58・第二膨出部59は、操作パネル24の前後部に形成されている。
【0057】
このうちの第一膨出部58は、操作パネル24の前部の左右方向略中央部に形成され、その中に表示パネル55が配置されている。そして、該表示パネル55は、長手方向を左右に向けた略長方形状の画面で構成され、植付部3における各作業状況を表示できるようにしている。なお、この表示パネル55には、以下で説明する条止めスイッチ34、圃場条件スイッチ75等の各操作手段の初期設定状況が表示されるが、この初期設定の項目送りや初期値の確定操作等の機能を、前記クロスレバー52の傾倒操作、あるいは該クロスレバー52と各操作手段との同時操作に割り当ててもよい。これにより、操作性の優れたクロスレバー52を初期設定に使用することができ、各種操作手段の初期設定にかかる時間の短縮や、操作精度の向上を図ることができる。
【0058】
前記第二膨出部59は、操作パネル24の後部に形成されると共に、その左右略中央部が前方に突出され、該突出部59aに、ハンドル軸15が軸心方向を前記傾斜面57と直交するようにして配置されている。そして、該ハンドル軸15に、前記操向ハンドル16が支持されている。更に、このハンドル軸15には、速度固定レバー68が設けられており、図示せぬ変速ペダルの操作により走行速度を変更して、作業者が所望する走行速度に達した時に、該速度固定レバー68を操作することで、該走行部2がその走行速度を維持しながら走行できるようにするものである。
【0059】
一方、第二膨出部59の後部には、植付操作パネル面56が配置されている。該植付操作パネル面56には、植付作業時に使用する種々の植付用操作具、特に、植付作業時に使用頻度が高い操作具が設けられている。
【0060】
該植付操作パネル面56には、左から順に、条止め操作ユニット61、感度ボリューム63、ブザー停止スイッチ64が配置され、更に、最も右側にはエンジンキー差込口65が配置されている。
【0061】
このうちの条止め操作ユニット61には、左から順に、自動マーカスイッチ62、条止めスイッチ34・35・36・37が備えられている。該自動マーカスイッチ62は、前記左右の線引きマーカ40L・40Rの選択を、前記クロスレバー52による傾倒操作によらずに田植機1の旋回操作に伴って自動的に行う「自動制御モード」に設定するためのスイッチである。
【0062】
ここで、前記操向ハンドル16のハンドル軸15には、操向角度を検知する操向センサ67が設けられている。該操向センサ67は、信号線60aを介して前記コントローラ46に接続されており、操向ハンドル16の操向角度を角度信号としてコントローラ46に送信可能としている。
【0063】
そこで、前記自動マーカスイッチ62を「入」にすると、コントローラ46が操向センサ67から受信した角度信号に基づいて、前記マーカモータ50L・50Rにはマーカ選択信号が送信され、自動的に該マーカモータ50L・50Rが作動し、線引きマーカ40L・40Rの係止が解除されて圃場への突出が行われる。
【0064】
前記条止めスイッチ34・35・36・37は、前記植付クラッチ33を操作するスイッチであり、該条止めスイッチ34・35・36・37の入切操作により、対応する条のロータリーケース27の駆動・停止を可能としている。
【0065】
前記感度ボリューム63は、圃場の硬軟に応じて感度を調節するものであり、前記センタフロート38やサイドフロート39に設けた図示せぬフロートセンサからの信号に対する前記昇降シリンダ43の昇降動作を、圃場が硬い場合には鈍感とし、柔らかい場合には敏感となるように調節するものである。
【0066】
前記ブザー停止スイッチ64は、植付クラッチ警報、苗継警報等のために、走行部2または植付部3に設けられた警報ブザーが鳴った時、作業者が認識すれば手動で警報ブザーの鳴動を停止させるものである。
【0067】
前記エンジンキー差込口65は、電源を「入」とし、エンジン6を始動させるためにキーを差し込む穴であり、作業者がキーを差し込み、電源を入位置から始動位置まで回すと、図示せぬセルモータが回転し、エンジン6が始動される。
【0068】
また、前記傾斜面57のうち、前記第一膨出部58・第二膨出部59よりも左方には、走行変速用の主変速レバー69が配置されている。該主変速レバー69は、前記ミッションケース77内の変速機構に連動連結されており、傾斜面57に形成されたガイド溝69aに沿って主変速レバー69を操作すると、田植機1の走行モードを、位置P1で「後進」、位置P2で「低速前進」、位置P3で「苗継」、位置P4で「中立」、位置P5で「移動」の各走行モードに切り替えることができる。
【0069】
前記傾斜面57のうち、前記第一膨出部58と第二膨出部59との間でハンドル軸15よりも左方には、前後に、速度選択スイッチ等のスイッチ類70とコンビネーションスイッチ71が配置されている。該コンビネーションスイッチ71は、ホーンボタン、フラッシャスイッチ、ライトスイッチを有する操作具であり、中央部のホーンボタンを押すと警報が鳴り、ホーンボタンの下方に位置する略直方体形状のフラッシャスイッチを左右に回転させると、回転させた側の図示せぬ方向指示器が点滅する。ホーンボタンの左方に位置する略直方体形状のライトスイッチを前方に回転させると、前照灯が点灯する。
【0070】
前記傾斜面57のうち、前記第一膨出部58と第二膨出部59との間でハンドル軸15よりも右方には、シーソスイッチ72が配置されている。該シーソスイッチ72は、モータ制御により植付部3の前後水平に対する角度を調整するものである。
【0071】
前記傾斜面57のうち、前記第一膨出部58・第二膨出部59よりも右方には、手前から順に、前記クロスレバー52、植付部傾斜設定器73、植付操作関連のスイッチ類74、圃場条件スイッチ75、ボンネット解除スイッチ76が配置されている。
【0072】
このうち、前記クロスレバー52は、前述したように、前記植付部3の昇降、植付クラッチ33の断接、及び左右の線引きマーカ40L・40Rの選択、という複数の操作を単一の操作具に集約可能としたものであり、しかも、図3、図4に示すように、他の操作具・表示具と一緒に操作パネル24の上、すなわち前記エンジンルーム89の直上に配置されており、作業者が田植機1の機体上を移動する際の邪魔にならないようにしている。
【0073】
前記植付部傾斜設定器73は、油圧を制御することにより植付部3の左右水平に対する角度を設定するものである。前記圃場条件スイッチ75は、「深水」、「標準」、「枕地」の各圃場の状態に応じて植付深さを設定すると共に、図示せぬ油圧ストップバルブの入切によって植付部3の昇降動作の許可と禁止を行う油圧ストップスイッチ機能も備えている。また、前記ボンネット解除スイッチ76は、前記ボンネット11を開閉するためのものである。なお、傾斜面57には、上述した以外に、コップやメモ等を置くための円形や長方形状の窪み86・87も形成されている。
【0074】
そして、図15に示すように、以上で説明した各種操作具は、前記操向ハンドル16・速度固定レバー68を支持するハンドル軸15を挟んで、平面視で左斜め上方側の操作パネル24の部分(以下、「走行操作具域」とする)78と右左斜め下方側の操作パネル24の部分(以下、「植付操作具域」とする)79とに分けられて配置され、走行操作具域78には、主に走行操作に関わる、主変速レバー69、スイッチ類70、及びコンビネーションスイッチ71が配置される。
【0075】
一方、植付操作具域79には、主に植付操作に関わる、自動マーカスイッチ62、条止めスイッチ34・35・36・37、感度ボリューム63、ブザー停止スイッチ64、エンジンキー差込口65、シーソスイッチ72、クロスレバー52、植付部傾斜設定器73、スイッチ類74、及び圃場条件スイッチ75が配置される。
【0076】
このようにして、操向ハンドル16を挟んで互いに反対側に、同じ作業に使用する操作具を集中して設けることができ、一連の操作に必要な操作具を互いに近接して配置できると共に、別の作業用の操作具とは離間して配置することができる。
【0077】
すなわち、前記操向ハンドル16を操作パネル24上に配置し、該操作パネル24には、前記操向ハンドル16のハンドル軸15を挟んで、一側に、走行操作に関わる操作具を集中配置した走行操作具域78を設け、他側に、植付操作に関わる操作具を集中配置した植付操作具域79を設けるので、一連の操作に必要な操作具を互いに近接して配置できるのに加え、各操作具域78・79に近い側にある手により操作具を操作することができ、素早い操作が可能となって操作具の操作時間を短縮し、操作具の操作性の向上を図ることができる。更に、走行操作に関わる操作具と、植付操作に関わる操作具とを互いに離間して配置することができ、別の作業用の操作具を誤って使用する可能性が小さくなり、誤操作を防止することができる。
【0078】
更に、以上のように、エンジン6駆動の田植機1において、該田植機1の被操作部である植付部3、植付クラッチ33、及び線引きマーカ40L・40Rを電気制御するコントローラ46に電気信号を送受信するクロスレバー52を、前記エンジン6を収容するエンジンルーム89の直上に配置したので、クロスレバー52と植付部3、植付クラッチ33、及び線引きマーカ40L・40R間の大部分を電気的にリンクすることができ、たとえ、エンジンルーム89を内部に有するボンネット11に前記クロスレバー52を設けても、エンジンルーム89の空きスペースはそれほど減少せず、設計自由度低下による製造コストの増加やメンテナンス性の悪化を確実に防止できる。更に、クロスレバー52をエンジンルーム89の直上に配置するので、該エンジンルーム89上方の大きな空間を利用して、作業者の作業空間へのクロスレバー52の干渉を抑えることができ、植付部3への苗補給等の作業性を向上させることができる。そして、必要に応じて、単一のクロスレバー52に機能を集約して、該クロスレバー52を使った一連の操作を容易に行うことができ、操作具の共通化が進み、誤操作や操作遅れを確実に防ぐことができる。
【0079】
加えて、前記被操作部として、前述の如く、走行部2の後方に昇降可能に連結する植付部3と、該植付部3の駆動の断接を行う植付クラッチ33と、植付作業中の進行方向目標に必要なマーキングを行う左右の線引きマーカ40L・40Rとを備え、前記植付部3の昇降、植付クラッチ33の断接、及び左右の線引きマーカ40L・40Rの選択を、前記コントローラ46により電気制御するので、圃場での畦際旋回のような数種の複合動作からなる、一連の植付操作が容易となり、植付作業性が大幅に向上する。
【0080】
次に、上述した各操作具のうち、操向ハンドル16とクロスレバー52との間の位置関係、及び該クロスレバー52の操作構成について、図11乃至図14により説明する。
該操向ハンドル16は、前記ハンドル軸15の上端から半径方向に突設された左右二本のスポーク16b・16bと、該スポーク16b・16bの先端に前記傾斜面57と略平行に固設されたホイール16aとから成る。そして、該ホイール16aからは、図13、図14に示すように、側面視で下方に距離80、平面視で半径方向外側に距離81だけ離間するようにして、前記クロスレバー52のグリップ部52cが配置されている。
【0081】
該距離80・81は、図12に示すように、作業者がホイール16aを把持したままで、指88を使って前記グリップ部52cを操作可能な距離に設定している。言い換えれば、作業者がホイール16aを握った状態で操向ハンドル16を回転操作しても、指88が前記グリップ部52cに当たらない距離で、しかも、クロスレバー52を操作するために、右手の人指し指、または、中指、または、薬指、または、小指、または、これらのうちの複数本を下方へ伸ばすと、前記グリップ部52cに当たって操作可能な距離に、設定している。
【0082】
なお、作業者によっては、前記ホイール16aを握る位置が異なり、手の大きさも異なるため、また、チルト機構等を設けた場合には相対距離が変化するため、操向ハンドル16のハンドル軸15への取り付け高さ、グリップ部52cの傾倒軸部52aへの取り付け高さを、長孔とボルト等で変更可能としたり、伸縮機構を設けたり、操向ハンドル16やグリップ部52cを別の大きさや形状のものに交換したりして、前記距離80・81を変え、前記操向ハンドル16とクロスレバー52との位置関係を調整できるように構成してもよい。
【0083】
更に、前記グリップ部52cは、図11、図13に示すように、前記ホイール16aの回動面82に略平行に下方へ前記距離80だけ離間した平面83内を、前後左右に移動可能な構成としている。これにより、従来のようにグリップ部52cが回動面82に対して遠近方向に移動する場合とは異なり、グリップ部52cの押動による前後左右への傾倒操作を、指88の掌側を使って容易に行えるようにしている。
【0084】
すなわち、前記クロスレバー52先端のグリップ部52cは、前記走行部2の操向操作を行う操向ハンドル16の把持部であるホイール16aの下方近傍に配置すると共に、該ホイール16aの回動面82に略平行な平面83内を前後左右に移動可能とすることにより、前記ホイール16aを把持したままでクロスレバー52を傾倒操作可能とするので、操向ハンドル16から両手を離さず、前方に向けていた視線も外すことなく走行することができ、直進走行が容易となって植付位置精度が高くなり、収穫作業時の作業効率が向上する。更に、クロスレバー52を指88で操作する際、該クロスレバー52のグリップ部52cは前記ホイール16aの回動面82に略平行な平面83内を移動できるので、該グリップ部52cの押動による前後左右の傾倒操作を全て指88の掌側を使って行うことができ、操作性が大きく向上する。
【0085】
また、このような傾倒操作が可能なクロスレバー52には、前述した駆動制御が可能なコントローラ46により、傾倒操作に応じて以下のような機能が割り当てられている。
図11に示すように、前記クロスレバー52を中央の中立位置85から1回前方に傾倒すると、植付部下降信号が電磁制御弁45に送信され、昇降シリンダ43を介して植付部3が下降し、更に、中立位置85からもう1回前方に傾倒すると、クラッチ接続信号がクラッチモータ51に送信され、植付クラッチ33が接続されて、エンジン6からの動力が苗縦送りベルト32やロータリーケース27に伝達され、これにより、植付作業が開始される。
【0086】
逆に、前記クロスレバー52を中立位置85から1回後方に傾倒すると、クラッチ切断信号がクラッチモータ51に送信され、植付クラッチ33が切断されて、植付作業が停止し、更に、中立位置85からもう1回後方に傾倒すると、植付部上昇信号が電磁制御弁45に送信され、昇降シリンダ43を介して植付部3が上昇する。
【0087】
更に、前記クロスレバー52を中立位置85から左方に傾倒すると、左のマーカモータ50Lがマーカ選択信号によって作動し、左の線引きマーカ40Lは、その係止が解除されて圃場に突出される。
【0088】
逆に、前記クロスレバー52を中立位置85から右方に傾倒すると、右のマーカモータ50Rがマーカ選択信号によって作動し、右の線引きマーカ40Rは、その係止が解除されて圃場に突出される。
【0089】
つまり、クロスレバー52を前後方向に傾倒すると、植付部3の昇降と植付クラッチの断接を行い、クロスレバー52を左右方向に傾倒すると、傾倒側にある線引きマーカ40L・40Rを選択するように設定されている。これにより、植付部3の動作方向がクロスレバー52の傾倒方向と略平行になると共に、線引きマーカ40L・40Rの動作側がクロスレバー52の傾倒側と一致することとなり、植付部3、左右の線引きマーカ40L・40Rの動作状況と、クロスレバー52の傾倒操作とを、分かり易く関連づけることができる。
【0090】
すなわち、前記クロスレバー52の前後方向への傾倒操作に、前記植付部3の昇降と植付クラッチ33の断接を連動させると共に、前記クロスレバー52の左右方向への傾倒操作に、前記左右の線引きマーカ40L・40Rの選択・解除を連動させる制御構成を備えるので、クロスレバー52の傾倒操作と、植付部3、左右の線引きマーカ40L・40Rの動作状況との関連性を高めることができ、作業者はクロスレバー52の操作方法を容易に理解して、圃場での畦際旋回の際の誤操作や操作遅れを一層確実に防ぐことができるのである。
【0091】
次に、別形態の田植機1Aについて、図2、図11、図16乃至図18により説明する。なお、前記田植機1と同様な部品・構成については、同じ符号を用いると共に詳細な説明は省略する。
該田植機1Aは、前記操作パネル24のパネル形状を変更した上で、自動スイッチ類等を新たに追加して配置することにより、操作パネル24Aを形成すると共に、該操作パネル24A上に設けたクロスレバー52Aの傾倒操作に割り当てる機能を変更したものである。
【0092】
前記操作パネル24Aも、前記操作パネル24と同様、側面視で前高後低となるように後下がりに傾斜される傾斜面57Aと、該傾斜面57Aよりも大きな傾斜面を有する第一膨出部58A・第二膨出部59Aとから構成され、該第一膨出部58A・第二膨出部59Aは、操作パネル24Aの前後部に形成されている。
【0093】
このうちの第一膨出部58Aは、操作パネル24Aの前部の左右方向略中央部に形成され、その中に、植付部3における作業状況を表示する前記表示パネル55が配置されている。
【0094】
前記第二膨出部59Aは、操作パネル24Aの後部から略中央にかけて形成されると共に、幅広の膨出後部59A1と、該膨出後部59A1よりも少し低位にあって前記表示パネル55と略同幅内を前方に突出する膨出前部59A2とから構成される。そして、該膨出前部59A2の後部略中央には、操向ハンドル16Aのハンドル軸15Aが配置され、該ハンドル軸15Aにも前記速度固定レバー68が設けられている。
【0095】
更に、前記膨出前部59A2において、ハンドル軸15Aよりも左方には、前後に、速度選択スイッチ等の前記スイッチ類70とコンビネーションスイッチ71とが配置され、ハンドル軸15Aよりも右方には、前記苗載台25をストローク端に移動させるための苗台自動端寄せスイッチ100が新たに配置されている。そして、該苗台自動端寄せスイッチ100の前方には、前記植付部傾斜設定器73が配置され、該植付部傾斜設定器73の左方には、植付深さを自動調節するか否かを設定するための植付深さ自動調節ダイヤル101が新たに配置されている。
【0096】
一方、前記膨出後部59A1の左右略中央には、前記エンジンキー差込口65が配置され、該エンジンキー差込口65よりも左方には、前記条止めスイッチ34・35・36・37が備えられる。そして、エンジンキー差込口65よりも右方には、植付速度を設定する植付設定ダイヤル102が新たに配置され、該植付設定ダイヤル102の更に右方には、前記感度ボリューム63、ブザー停止スイッチ64が順に配置されている。
【0097】
前記傾斜面57Aのうち、前記第一膨出部58A・第二膨出部59Aよりも左方の傾斜面57Aには、前記主変速レバー69が配置される。一方、前記第一膨出部58A・第二膨出部59Aよりも右方の傾斜面57Aには、手前から順に、前記クロスレバー52A、前記圃場条件スイッチ75、前記ボンネット解除スイッチ76が配置されている。なお、この傾斜面57Aにも、コップ等を置くための前記円形窪み86が形成されている。
【0098】
従って、前記操作パネル24と同様に、田植機1Aの操作パネル24Aにおいても、各種操作具は、前記ハンドル軸15Aを挟んで、図18に示すように、主に走行操作に関わる走行操作具域78Aと、主に植付操作に関わる植付操作具域79Aとに分けることができ、一連の操作に必要な操作具を互いに近接して配置すると共に、別の作業用の操作具とは離間して配置するようにしている。
【0099】
また、前記クロスレバー52Aのグリップ部52A1も、操向ハンドル16Aのホイール16A1から、下方に距離80A、半径方向外側に距離81Aだけ離間するようにして配置されており、作業者がホイール16A1を把持したままで、指88を使って前記グリップ部52A1を操作可能な距離に設定されている。
【0100】
更に、該グリップ部52A1は、ホイール16A1の回動面82Aに略平行に下方へ距離80Aだけ離間した平面83A内を、前後左右に移動可能な構成としている。ただし、前述の如く、このクロスレバー52Aの傾倒操作に割り当てる機能は、前記クロスレバー52の場合と一部異なっている。
【0101】
詳しくは、図18に示すように、前記クロスレバー52Aを中央の中立位置85Aから1回後方に傾倒すると、植付部下降信号が前記電磁制御弁45に送信され、昇降シリンダ43を介して植付部3が下降し、更に、中立位置85Aからもう1回後方に傾倒すると、クラッチ接続信号がクラッチモータ51に送信され、植付クラッチ33が接続されて、エンジン6からの動力が苗縦送りベルト32やロータリーケース27に伝達され、これにより、植付作業が開始される。
【0102】
逆に、クロスレバー52Aを中立位置85Aから1回前方に傾倒すると、クラッチ切断信号がクラッチモータ51に送信され、植付クラッチ33が切断されて、植付作業が停止し、更に、中立位置85Aからもう1回前方に傾倒すると、植付部上昇信号が電磁制御弁45に送信され、昇降シリンダ43を介して植付部3が上昇する。なお、クロスレバー52Aを左右方向に傾倒した際の機能は、前記クロスレバー52の場合と同様である。
【0103】
つまり、田植機1Aでは、植付部3の動作方向が、前記田植機1の如くクロスレバー52Aの傾倒方向と略平行になるばかりでなく、略一致するように設定されている。これにより、植付部3の動作状況とクロスレバー52Aの傾倒操作とを、更に分かり易く関連づけることができ、作業者はクロスレバー52Aの操作方法を容易に理解して、圃場での畦際旋回の際の誤操作や操作遅れを、より一層確実に防ぐことができる。
【0104】
なお、以上述べた実施例では、クロスレバー52・52Aによって植付操作を行う場合について説明しているが、操作対象は特に限定されるものではなく、例えば、走行部2の操向操作を行う前記操向ハンドル16や、同じく走行部2の変速操作を行う前記主変速レバー69に替えて、クロスレバー52・52Aを配置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、エンジン駆動の全ての田植機に適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1・1A 田植機
2 走行部
3 植付部(被操作部)
6 エンジン
16・16A 操向ハンドル
16a・16A1 ホイール(把持部)
33 植付クラッチ(被操作部)
40L・40R 線引きマーカ(被操作部)
46 コントローラ
52・52A クロスレバー
52c・52A1 グリップ部
82・82A 回動面
83・83A 平面
89 エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン駆動の田植機において、該田植機の被操作部を電気制御するコントローラに電気信号を送受信するクロスレバーを、前記エンジンを収容するエンジンルームの直上に配置したことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記被操作部として、走行部の後方に昇降可能に連結する植付部と、該植付部の駆動の断接を行う植付クラッチと、植付作業中の進行方向目標に必要なマーキングを行う左右の線引きマーカとを備え、前記植付部の昇降、植付クラッチの断接、及び左右の線引きマーカの選択を、前記コントローラにより電気制御することを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記クロスレバー先端のグリップ部は、前記走行部の操向操作を行う操向ハンドルの把持部の下方近傍に配置すると共に、該把持部の回動面に略平行な平面内を前後左右に移動可能とすることにより、前記把持部を把持したままでクロスレバーを傾倒操作可能とすることを特徴とする請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記クロスレバーの前後方向への傾倒操作に、前記植付部の昇降と植付クラッチの断接を連動させると共に、前記クロスレバーの左右方向への傾倒操作に、前記左右の線引きマーカの選択を連動させる制御構成を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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