説明

画像形成装置の安全装置

【課題】地震等による大きな外力が働く場合であっても、画像形成装置の転倒や近傍の壁面との衝突による損傷を防止すると共に、前記画像形成装置の移動や転倒に起因して発生する避難路封鎖や避難者との衝突等の人体への危険性を回避させることのできる画像形成装置の安全装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置の安全装置に、前記画像形成装置に加わる振動を検知する振動検知センサ16と、前記画像形成装置の少なくとも前面と背面と左右側面の何れかでエアバッグ172を展開するエアバッグ作動装置17を備え、前記エアバッグ作動装置17は、前記振動検知センサ16が所定レベル以上の振動を検知するとエアバッグ172を展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害、特に震災に対する関心は高く、画像形成装置に使用する耐震部材について多くの提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、地震の際に移動して装置自体が破損したり、該装置が避難者の避難通路を塞いだりする弊害の発生を防止することを目的として、画像形成装置と、この装置に近接する壁面との間に、取付け及び取外し可能な耐震用緩衝部材を設置したり、画像形成装置を固定設置した大容量給紙装置の底部に脚輪移動防止手段や転倒防止部材を設置する画像形成装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−254207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近接する壁面に画像形成装置を固定するには前記壁面が十分な強度を備えている必要がある。さらに、前記画像形成装置の設置場所を少しでも移動させるには前記壁面から取外して、新しい設置場所の壁面に再び取付る作業が必要であり、前記画像形成装置の設置場所が大幅に制限されると共に、操作者に過度の負担を強いるものであった。また、画像形成装置を固定設置した大容量給紙装置の底部に設置した脚輪移動防止手段や転倒防止部材では、前記底部が載置面から離隔する程の大規模地震において、前記画像形成装置の移動や転倒を防止することは難しく、前記地震に起因する前記画像形成装置の移動や転倒を防止し、併せて前記画像形成装置の移動や転倒に起因して発生する避難路封鎖や避難者との衝突等の人体への危険性を回避させる上で、更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、地震等による大きな外力が働く場合であっても、画像形成装置の転倒や近傍の壁面との衝突による損傷を防止すると共に、前記画像形成装置の移動や転倒に起因して発生する避難路封鎖や避難者との衝突等の人体への危険性を回避させることのできる画像形成装置の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明による画像形成装置の安全装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、画像形成装置に加わる振動を検知する振動検知センサと、前記画像形成装置の少なくとも前面と背面と左右側面の何れかでエアバッグを展開するエアバッグ作動装置を備え、前記エアバッグ作動装置は、前記振動検知センサが所定レベル以上の振動を検知するとエアバッグを展開する点にある。
【0008】
上述の構成によると、所定レベルを超える振動が発生する地震等の災害発生時にのみエアバッグは展開され、通常時は、前記エアバッグは画像形成装置内に収納されているため、操作者は前記画像形成装置を任意の位置に設置し、さらに容易に移動させることができる。
【0009】
同第二の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記エアバッグが、前記画像形成装置における床面近傍の低位置で展開する点にある。
【0010】
上述の構成によると、展開された前記エアバッグが前記画像形成装置の底面積を増やすのと同じ効果をもたらすため、前記画像形成装置の移動を防止して近傍の壁面や障害物との衝突による前記画像形成装置の損傷を防止し、さらには前記画像形成装置の転倒も防止することができる。
【0011】
同第三の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記エアバッグ作動装置へ給電する補助バッテリを備えている点にある。
【0012】
上述の構成によると、地震等の災害によって商用電源が断たれたときにも前記エアバッグ作動装置を作動させる電力が確保されるため、災害発生時に確実にエアバッグを展開することが可能となり、画像形成装置の損傷を防止することができる。
【0013】
同第四の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れか特徴構成に加えて、前記エアバッグ作動装置により展開されたエアバッグを収縮させるエアバッグ収縮機構を備えている点にある。
【0014】
上述の構成によると、画像形成装置が損傷する危険性がないと操作者が判断したときには、エアバッグを容易に収縮させることができるので、操作者は前記画像形成装置の移動を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した通り、本発明によれば、地震等による大きな外力が働く場合であっても、画像形成装置の転倒や近傍の壁面との衝突による損傷を防止すると共に、前記画像形成装置の移動や転倒に起因して発生する避難路封鎖や避難者との衝突等の人体への危険性を回避させることのできる画像形成装置の安全装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明による画像形成装置の安全装置を複写機に適用した場合の実施形態について説明する。
【0017】
図2に示すように、画像形成装置の一例である複写機1は、各種の動作メニューを設定する複数のメニュー設定キーや、設定されたメニューで複写動作を起動するスタートキー等が配置された操作部10と、原稿載置部11にセットされた一連の原稿を順次読込んで電子データに変換する画像読取部12と、前記画像読取部12によって電子データに変換された画像データに基づいて用紙上にトナー像を形成して出力する電子写真方式の画像形成部13と、用紙が収容された給紙カセット14と、下側フレーム底面の四隅に設けられたゴム製の台座15と、該複写機1に加わる振動を検知する振動検知センサ16と、エアバッグ展開口170からエアバッグを展開するエアバッグ作動装置17と、前記エアバッグ作動装置17へ給電する補助バッテリ18等を備えて構成されている。
【0018】
前記補助バッテリ18は、商用電源からの給電を受けて端子間電圧が一定電圧となるように充電されており、前記商用電源が断たれたときにおいても前記エアバッグ作動装置17を作動させるために必要な電力容量を備えている。
【0019】
前記エアバッグ作動装置17は、図1に示すように、該複写機1の前面と背面と左右側面における床面近傍の低位置で展開するエアバッグ172と、前記エアバッグ172を収納するエアバッグ収納スペース171と、前記エアバッグ172に窒素ガスを送り込むインフレータ173と、前記インフレータ173を作動させるエアバッグ制御部174と、前記エアバッグ172に送り込まれた前記窒素ガスを排気する排気管175と、前記排気管175を閉状態に維持し、前記窒素ガスの流出を防ぐ排気栓176aを備え、前記排気栓176aを可動させることで前記排気管175から前記窒素ガスの排気を可能とするアクチュエータ176と、前記窒素ガスを前記排気管175から強制排気する排気扇177から構成され、前記補助バッテリ18により、前記インフレータ173と、前記エアバッグ制御部174と、前記アクチュエータ176と、前記排気扇177は給電を受けているため、商用電源からの該複写機1への給電が断たれたときにも給電を受けることが可能に構成されている。
【0020】
前記振動検知センサ16が事前に設定された所定レベル以上の振動を検知すると、図3(a)に示すように、前記振動センサ16からの出力を受け、前記エアバッグ制御部174が着火剤を備えた前記インフレータ173の着火装置173aを作動させ、ガス発生剤173bから急速に窒素ガスを発生させる。該複写機1の前面と背面と左右側面の床面近傍の低位置に設けられた前記エアバッグ収納スペース171に収納された前記エアバッグ172に前記窒素ガスが送り込まれ、前記エアバッグ172は前記エアバッグ展開口170のフタ170aを跳ね上げて展開する。
【0021】
ここで、前記振動検知センサ16の検知する所定レベルについては、工場出荷時に適宜設定するものであっても、適宜選択するものであっても良く、該複写機1の設置時にサービスマンにより設定されるものでも、該複写機1に所定レベル設定手段を設け、操作者が任意に設定できるように構成されたものであっても良い。
【0022】
該複写機1に何らかの外力が働き、前記エアバッグ172が展開された状態において、該複写機1が損傷する危険性がないと判断するときに、操作者は該複写機1に備えられた図示しないエアバッグ収縮スイッチを押圧すると、図3(b)に示すように、前記押圧を受け、前記エアバッグ制御部174が、前記アクチュエータ176を作動させて前記排気栓176aを開状態とし、さらに前記排気扇177を作動させて、前記排気管175から前記エアバッグ172内の窒素ガスを強制的に排気し、前記エアバッグ172を収縮させる。つまり、前記排気管175と、前記アクチュエータ176と、前記排気扇177は、前記エアバッグ作動装置17により展開された前記エアバッグ172を収縮させるエアバッグ収縮機構として動作する。
【0023】
以下に、別実施形態を記載する。
【0024】
上述の構成では、画像形成装置における床面近傍の低位置でエアバッグが展開するものとしたが、画像形成装置の前面と背面と左右側面の何れかに何らかの障害物や壁面が接触して前記画像形成装置が損傷することを防ぐため、図4(a)に示すように、画像形成装置の中位置でエアバッグが展開する構成としても良く、この場合、図4(b)に示すように、前記エアバッグが展開されることで、前記画像形成装置の前面と背面と左右側面の何れかに何らかの障害物や壁面が接触して前記画像形成装置が損傷することを防ぐことができる。また、前記画像形成装置の前面を前記エアバッグが覆うことで用紙カセットの飛び出し等を防止する作用ももたらされることになる。さらに、前記画像形成装置の上部面にも前記エアバッグが展開されるように構成することで、棚等からの落下物による前記画像形成装置の損傷を防ぐことができる。
【0025】
上述の構成では、画像形成装置の前面と背面と左右側面の全てにおいてエアバッグが展開するものとしたが、コストを抑えるため、前記画像形成装置の設置位置に合わせ、前面と背面と左右側面のうち必要な部分のみでエアバッグを展開する構成としても良い。
【0026】
上述の構成では、振動検知センサが所定レベル以上の振動を検知したとき、商用電源からの給電が断たれたときでも、画像形成装置に備えた補助バッテリからの給電を受けて、エアバッグ制御部がインフレータを作動させてエアバッグを展開するものとしたが、前記振動検知センサが前記インフレータの着火装置の撃針を兼ね、前記振動センサが所定レベル以上の振動を検知したときに、前記撃針が直接機械的に前記着火装置を作動させる構成としても良く、この場合、前記画像形成装置に補助バッテリを備えない構成とすることができる。補助バッテリを備えない構成としたときには、エアバッグ内の窒素ガスを排気するには商用電源の復旧を待つ必要があることは言うまでもない。
【0027】
上述の構成では、画像形成装置に何らかの外力が働き、エアバッグが展開された状態において、前記画像形成装置が損傷する危険性がないと判断するときに、操作者が排気扇を作動させることによって前記エアバッグ内の窒素ガスを排気するものとしたが、前記エアバッグ内の窒素ガスは所定時間経過後、自動的にエアバッグから排気される構成としても良く、この場合、操作者が展開された前記エアバッグに躓き、怪我をする等の危険性を減らすことができる。
【0028】
上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等を適宜変更設計できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】エアバッグ作動装置の説明図
【図2】複写機の説明図
【図3】(a)エアバッグが展開した状態のエアバッグ作動装置の説明図、(b)エアバッグが収縮した状態のエアバッグ作動装置の説明図
【図4】(a)エアバッグが中位置で展開される複写機の説明図、(b)エアバッグが中位置で展開された複写機の説明図
【符号の説明】
【0030】
17:エアバッグ作動装置
18:補助バッテリ
170a:エアバッグ展開口のフタ
171:エアバッグ収納スペース
172:エアバッグ
173:インフレータ
173a:着火装置
173b:ガス発生剤
174:エアバッグ制御部
175排気管
176:アクチュエータ
176a:排気栓
177:排気扇

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に加わる振動を検知する振動検知センサと、前記画像形成装置の少なくとも前面と背面と左右側面の何れかでエアバッグを展開するエアバッグ作動装置を備え、前記エアバッグ作動装置は、前記振動検知センサが所定レベル以上の振動を検知するとエアバッグを展開する画像形成装置の安全装置。
【請求項2】
前記エアバッグが、前記画像形成装置における床面近傍の低位置で展開する請求項1記載の画像形成装置の安全装置。
【請求項3】
前記エアバッグ作動装置へ給電する補助バッテリを備えている請求項1または2に記載の画像形成装置の安全装置。
【請求項4】
前記エアバッグ作動装置により展開されたエアバッグを収縮させるエアバッグ収縮機構を備えている請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−271753(P2007−271753A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94977(P2006−94977)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】