説明

略自然降伏デバイス

【課題】 バイアス電圧が印加されるときに半導体デバイス上に自然降伏状態を作り出すような「略自然降伏状態」を提供する。
【解決手段】 本発明の半導体デバイスは第1半導体領域を含み、第1半導体領域は、強制または非強制略自然降伏領域であり、この領域は、非自然降伏(例えば、ツェナー降伏及び雪崩降伏)の降伏電圧以下の大きさを有する所定電圧がデバイスの両端に印加されるときに完全に空乏化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許出願第11/446,699号(特許文献1)の優先権を主張し、特許文献1は、そっくりそのまま引用を以って本明細書の一部となす。米国を指定する場合、本願は、米国特許出願第10/963,357号(特許文献2)の一部継続出願である米国特許出願第11/446,699号の継続出願であり、特許文献2もそっくりそのまま引用を以って本明細書の一部となす。
【0002】
本発明は、高速スイッチング用途及び発振器用途を含む用途のための、バイアス電圧を利用してデバイスの半導体領域内に自然降伏状態を作り出す半導体デバイスに関する。ゼロバイアスで、デバイスの半導体領域は略自然降伏状態を有する。バイアスされた後、領域は、自然降伏状態にあり(完全に空乏化され)、デバイスに電流を伝導させる。略自然降伏状態を有する半導体デバイスの一例が特許文献2に開示されている。
【背景技術】
【0003】
図2は、従来のpn接合ダイオードの電流対電圧特性を示している。図1は、従来の階段pn接合ダイオード100の略図である。図1に示すように、従来のpn接合ダイオード100は、p領域101及びn領域102を含む。p領域101は、例えばp型ドーパント(すなわちホウ素などの電子受容体)を用いてドープされることができ、n領域102は、n型ドーパント(すなわちリンなどの電子供与体)を用いてドープされることができる。p領域101とn領域102間の階段接合の近くで、2つの領域間の電荷キャリア(例えば電子及び「正孔」)の拡散及び2つの領域の電気化学ポテンシャルの差に起因する平衡は、電荷キャリアを減らし(空乏化)、p領域101及びn領域102にそれぞれ「空乏」領域(空乏層)103及び104を形成する。いわゆる「階段接合近似」下で、空乏領域103の幅x及び空乏領域104の幅xは、pn接合両端に外部から電圧Vをかけられた状態で、それぞれ次式で与えられる。
【数1】

【数2】

ここで、εはシリコンの誘電率、qは電子の電荷、φはpn接合の「内蔵」電位(「ビルトイン」ポテンシャル)、N及びNはそれぞれp領域101及びn領域102のドーピング濃度である。
【0004】
図2に示すように、横軸はpn接合両端の電圧Vを示し、縦軸はpn接合両端のダイオード電流Iを示している。図2に示すように、pn接合両端の電圧Vが0ボルトより大きくかつ電圧Vth(「閾値電圧」)より大きいときには、pn接合は強く「順バイアス」され、ダイオード電流Iは電圧Vと共に指数関数的に増大する。pn接合両端の電圧Vが0ボルトよりは小さいが電圧Vbr(「降伏電圧」)よりは小さくないときには、pn接合は「逆バイアス」され、ダイオード電流Iは非常に小さい。逆バイアス下では、電圧の大きさが増大するにつれて、生成されたキャリアはエネルギーを増し、電圧Vbrで降伏現象(注1)、例えば、トンネル現象及び衝撃イオン化をもたらす。電圧Vbrでは、ダイオード電流Iは非常に大きくなり、ダイオードの「降伏」が起こる。降伏時点では、pn接合両端の平均電界の大きさ(V/cm)は実験式
【数3】

によって与えられる。ここで、Nは、N及びNのうち、より小さい方である。
【0005】
(注1)本開示では、「非自然降伏」なる語は、以下に詳述されるような「自然降伏」及び「略自然降伏」現象と区別される降伏現象を指すために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第11/446,699号(米国特許公開公報20070215873号)明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/963,357号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、バイアス電圧が印加されるときに半導体デバイス上に自然降伏状態を作り出すような「略自然降伏状態」を提供する。自然降伏状態は、電流伝導やスイッチング用途に用いられる。「略自然降伏デバイス」(「near natural breakdown device:NNBD」)は、バイアスされると自然降伏状態を達成するような新たな能動領域を有する。本発明の一実施形態では、NNBDは2端子略自然降伏デバイスである。NNBDは、高速発振器及びスイッチング用途に用いられることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に従って、半導体デバイス及びNNBDを形成する方法を開示する。半導体デバイスは、第2領域に隣接して形成される半導体領域を含み、第1半導体領域は強制または非強制略自然降伏デバイスであり、これは、所定電圧が例えばツェナー降伏及び雪崩降伏の非自然降伏電圧以下の大きさを有するときに完全に空乏化される。非自然降伏電圧は、第1及び第2領域の両端に印加される。第2領域は、第1導電型と極性が逆の第2導電型の半導体材料であり得る。あるいは、第2領域は、第1領域へのショットキー障壁を形成する金属であり得る。さらに、半導体デバイスは、第2領域に隣接する第3領域を含み、第2領域及び第3領域は共に半導体材料を含むので、第1領域、第2領域及び第3領域がバイポーラトランジスタを形成することがある。そのようなバイポーラトランジスタでは、第1領域はバイポーラトランジスタのエミッタまたはコレクタであり得る。
【0009】
PIN型ダイオード構造、MOSFET及びJFET構造を含むNNBDデバイスも可能である。
【0010】
本発明は、以下の詳細な説明及び添付図面を考慮してより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のpn接合ダイオード100の略図である。
【図2】従来のpn接合ダイオードの電流(I)対電圧(V)特性を示している。
【図3】本発明の一実施形態に従って、自然降伏電圧Vfbrが印加される前に略自然降伏状態にあるP型領域を有するような、強制略自然降伏デバイス(NNBD)300の略図である。
【図4】NNBD300の電流−電圧(IV)特性を示している。
【図5(a)】本発明の一実施形態に従って、自然降伏電圧Vfbr NPNが印加される前に略自然降伏状態にあるコレクタ半導体領域を有するNPNトランジスタであるNNBD500の略図である。
【図5(b)】自然降伏状態下でコレクタ半導体領域501が完全に空乏化されたときのNNBD500の拡大図を示している。
【図5(c)】本発明の一実施形態に従って、自然降伏電圧Vfbr PNPfbr NPNの前に略自然降伏状態にあるコレクタ半導体領域を有するPNPトランジスタであるNNBD510の略図である。
【図5(d)】自然降伏状態下でコレクタ半導体領域511が完全に空乏化されたときのNNBD510の拡大図を示している。
【図5(e)】バイポーラトランジスタに対するコレクタ電流I対VCE IV曲線を示している。
【図5(f)】本発明の一実施形態に従って、自然降伏電圧Vfbrが印加される前に略自然降伏状態にあるエミッタ半導体領域を有するNPNトランジスタであるNNBD520の略図である。
【図5(g)】自然降伏状態下でエミッタ半導体領域が完全に空乏化されたときのNNBD520の拡大図を示している。
【図5(h)】本発明の一実施形態に従って、自然降伏電圧が印加される前に略自然降伏状態にあるコレクタ及びエミッタの両半導体領域を有するNPNトランジスタであるNNBD530の略図である。
【図5(i)】自然降伏状態下でコレクタ及びエミッタの両半導体領域が完全に空乏化されたときのNNBD530の拡大図を示している。
【図5(j)】本発明の一実施形態に従って、自然降伏電圧Vfbrが印加される前に略自然降伏状態にあるエミッタ半導体領域を有するPNPトランジスタであるNNBD540の略図である。
【図5(k)】自然降伏状態下でエミッタ半導体領域が完全に空乏化されたときのNNBD540の拡大図を示している。
【図5(l)】自然降伏電圧が印加される前に略自然降伏状態にあるコレクタ及びエミッタの両半導体領域を有するPNPトランジスタであるNNBD550の略図と、本発明の一実施形態に従って、自然降伏状態下でコレクタ及びエミッタの両半導体領域が完全に空乏化されたときの拡大図である。
【図6(a)】本発明の一実施形態に従って、逆自然降伏電圧Vfbrで完全に空乏化されるN型領域を有するNNBD600の略図である。
【図6(b)】NNBD600の電流−電圧(IV)特性を示している。
【図6(c)】本発明の一実施形態に従って、逆自然降伏電圧Vfbrで完全に空乏化されるN型領域を有するNNBD600の略図である。
【図7(a)】本発明の一実施形態に従って、ゼロ印加バイアス電圧でと、Vfbrの逆バイアス電圧でのNNBD700の略図である。NNBD700は、強制略自然降伏状態下での強制略自然降伏Nショットキーダイオードを表す。
【図7(b)】本発明の一実施形態に従って、ゼロ印加バイアス電圧でと、Vfbrの逆バイアス電圧でのNNBD710の略図である。NNBD710は、強制略自然降伏状態下での強制略自然降伏Pショットキーダイオードを表す。
【図8(a)】ゼロバイアス電圧バイアスでコンタクトに隣接する1つの強制略自然降伏領域を含むNNBD800を示している。
【図8(b)】ゼロバイアス電圧バイアスでコンタクトに隣接する2つの強制略自然降伏領域を含むNNBD810を示している。
【図8(c)】自然降伏電圧Vfbrでコンタクトに隣接する1つの強制略自然降伏領域を含むNNBD820を示している。
【図8(d)】自然降伏電圧Vfbrでコンタクトに隣接する2つの強制略自然降伏領域を含むNNBD830を示している。
【図9】本発明に従って、バイアス電圧下でのNNBD構造及び特性の表を示している。
【図10(a)】p領域301上に自然降伏状態を作り出すためにVfbrがその最も小さいバイアス電圧(略ゼロ)にあるときの順電流及び順バイアス電圧でのNNBD300のIV曲線を示している。
【図10(b)】p領域301上に自然降伏状態を作り出すためにVfbrがその最も小さいバイアス電圧(略ゼロ)にあるときの逆電流及び逆バイアス電圧でのNNBD300のIV曲線を示している。
【図11(a)】本発明の一実施形態に従ってP型略自然降伏領域を有するNNBD PINダイオードであるNNBD1100の略図を示している。
【図11(b)】本発明の一実施形態に従ってN型略自然降伏領域を有するNNBD PINダイオードであるNNBD1110の略図を示している。
【図11(c)】本発明の一実施形態に従ってP型略自然降伏領域及びN型略自然降伏領域を有するNNBD PINダイオードであるNNBD1120の略図を示している。
【図12】本発明の一実施形態に従ってソースコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有するNNBD MOSFETトランジスタであるNNBD1200の略図である。
【図13】本発明の一実施形態に従って、ドレインコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有するNNBD MOSFETトランジスタであるNNBD1300の略図である。
【図14】本発明の一実施形態に従って、ドレインコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有するNNBD JFETトランジスタであるNNBD1400の略図である。
【図15】本発明の一実施形態に従って、ソースコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有するNNBD JFETトランジスタであるNNBD1500の略図である。
【図16】本発明の一実施形態に従って、ドレインコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有するNNBD JFETトランジスタであるNNBD1600の略図である。 図面間の比較を容易にするために、類似の要素には類似の符号が割り当てられている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、p型またはn型領域を、領域全体がその多数キャリアを失うときに、完全に空乏化されると見なす。この領域は、任意の適切な形、形状、寸法、層、構造、導電率または濃度で、異なる材料を含み得る。本明細書中のNNBDの例及び図面は均質または均一なドーパント濃度の領域を示しているが、そのような領域は例示のためだけに与えられている。本発明は、その様々な領域内のドーパント濃度が均質でないかまたは均一でないような半導体デバイスに等しく適用できる。さらに、本発明は、ヘテロ接合を有するデバイスにも適用され得る。
【0013】
特許文献2に記載されているように、半導体デバイス(「NBD」)は、その半導体領域の一方(P型またはN型)が外部バイアス電圧の印加なしに完全に空乏化されるときに「自然降伏」状態にある。本発明は、「略自然降伏」状態を導入する。半導体デバイスは、半導体デバイス上の半導体領域(P型またはN型)が、ゼロバイアスでは完全に空乏化されないが、特定のバイアス電圧が印加されると完全に空乏化する(すなわち、デバイスに非ゼロバイアス電圧が印加されると半導体デバイスの半導体領域が「略自然降伏」状態から「自然降伏」状態に変化する)とき、「略自然降伏」状態にあると言われる。非ゼロバイアス電圧は、電流伝導が発生しかつスイッチング電圧として用いられ得るような電圧レベルである。略自然降伏状態にある半導体領域を有する半導体デバイスは、「略自然降伏デバイス」(NNBD)である。
【0014】
本発明に従って、略自然降伏状態は従来のまたは新たな半導体デバイスに適用され、新たな特性を作り出すことができる。略自然降伏状態を利用することによって新たなデバイスが作り出され得る。
【0015】
略自然降伏状態は、「非自然降伏」状態下で動作する半導体デバイス構造に適用され得る。これらの半導体デバイスの例には、トンネル現象(すなわちツェナー効果)または衝撃イオン化(すなわち雪崩効果)デバイスが含まれる。略自然降伏デバイスの降伏電圧の大きさは、任意の非自然降伏電圧以下である。後述する技術を用いて、半導体デバイスは、非自然降伏電圧と一致する自然降伏電圧を有するように製造され得る。後述する式P、式N、または当業者に既知の他の公式を用いて、自然降伏電圧範囲を計算することができる。デバイスが、デバイスの降伏電圧の「非自然降伏」電圧よりも大きさが小さい略自然降伏電圧を有するとき、デバイスには「非自然降伏」の代わりに自然降伏が起こる。デバイスの自然降伏電圧と「非自然降伏」電圧が一致するとき、同じ降伏現象が同時に現れることがあり、両方の現象に起因する電流が生じ得るので、全電流はどちらかの降伏効果に起因する電流を超える。例えば、ツェナー降伏電圧を有する半導体デバイスは、ツェナー降伏電圧で自然降伏電圧になるような、略自然降伏状態の半導体領域(すなわち略自然降伏ツェナーデバイス)を有するように設計されることがある。そのようなデバイスにおいては、ツェナー降伏電圧において、デバイスには複合降伏効果が起こる。デバイスは、ツェナーデバイスより速くスイッチすることができ、より強い電流を生成することができる。雪崩降伏及び自然降伏の複合効果は、半導体デバイスに適用され得る。従って、略自然降伏状態は、半導体デバイスにおいて、当該デバイスに対して(大きさが)略ゼロから「非自然降伏」電圧までの自然降伏電圧で完全に空乏化した領域を作り出すように設計されることができる。
【0016】
略自然降伏状態は、従来のまたは新たな半導体デバイス構造に対して実現され得る。一実施形態では、実現ステップは、(1)自然降伏電圧Vfbrを選択するステップと、(2)ゼロバイアスで略自然降伏状態を作り出すようにデバイス内の半導体領域及びドーピング濃度を選択するステップと、(3)そのドーピング濃度を用いて、式N、式P、または当業者に既知の他の公式を用いて、半導体領域の幅を計算するステップとであり得る。(幅を決定するために、シミュレーションも用いられることができる。)これらのステップは、非自然降伏電圧を有する半導体デバイスに対しても同じように用いられ得る。自然降伏電圧Vfbr(上記ステップ(1)に従って決定される)及び非自然降伏電圧は、デバイス降伏が非自然降伏状態下であるか自然降伏状態下であるかを決定する。通常の意図された動作中に非自然降伏状態下で降伏しないデバイスの場合、そのような領域(すなわち自然降伏領域)の幅は、そのような領域で略自然降伏状態が尚も起こるための最大幅まで選択され得る。従って、最大自然降伏電圧は、ドーピング濃度及び領域の幅から計算されることができる。用途に対する適切な自然降伏バイアス電圧を選択した後、デバイスの幅は、式P、式N、または当業者に既知の他の公式を解くことによって、選択された自然降伏バイアス電圧及び半導体ドーピング濃度から計算され得る。非自然降伏が起こるデバイスの場合、最大自然降伏電圧は非自然降伏電圧である。
【0017】
略自然降伏状態は、より広範囲の降伏電圧、低電圧高速スイッチング、電圧保護または調整、スイッチングをデバイスに与え、望ましくない降伏を防ぎ、電流を与え、他の降伏効果と自然降伏を結び付けるように実現され得る。
【0018】
本発明の一実施形態に従って、非自然降伏を有するpn接合ダイオードは、Vbrの非自然降伏電圧が外部からかけられるときに同等の寸法及び同等のドーパント濃度の従来の階段pn接合の空乏幅x以下の幅wを有する半導体領域(例えばp型領域)を含む。電圧Vbrは、従来の階段pn接合ダイオードの領域が例えばトンネル現象(すなわちツェナー効果)または衝撃イオン化(すなわち雪崩効果)に起因して非自然降伏状態に入る前にpn接合両端にかけられることができる最大のバイアス電圧である。すなわち、
【数4】

である。ここで、εはシリコンの誘電率、qは電子の電荷、φはpn接合の「内蔵」電位、N及びNはそれぞれp領域101及びn領域102のドーピング濃度である。w=x(n型領域の場合はw=x)のとき、その領域は非強制略自然降伏領域と呼ばれ、w<x(n型領域の場合はw<x)のとき、その領域は「強制略自然降伏」領域と呼ばれる。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態に従ってNNBD300の略図である。図3に示すように、NNBD300はp領域301及びn領域302を含み、p領域301は空乏幅305、p領域幅306(w)を有し、wは、Vbrの外部非自然バイアス降伏電圧がかけられるとき、同等の寸法及びドーパント濃度の従来のpn接合のp領域における対応する空乏幅のx以下である。非自然降伏電圧でのp領域301の空乏幅xは、参考のために図3中に長さ307で示されている。(外部からかけられるVbrの非自然降伏電圧がかけられるときに従来のpn接合における対応する半導体領域に対する空乏幅より小さい空乏幅を有する半導体領域は、本明細書中では「強制降伏」幅を有すると見なされる。外部からかけられるVbrの非自然降伏電圧がかけられるときに従来のpn接合における対応する半導体領域に対する空乏幅に等しい空乏幅を有する半導体領域は、本明細書中では「非強制略自然降伏」幅を有すると見なされる。)その一方、n領域302の幅は、外部からかけられるVbrの逆非自然降伏電圧がかけられるとき、同等のドーピング濃度及び寸法の従来のpn接合ダイオードのn領域に対する空乏領域xより小さくても、大きくても、あるいは等しくてもよい。非自然降伏電圧でのn領域302の空乏幅xは、参考のために図3中に長さ317で示されている。
【0020】
p領域301上及びxより大きい幅を有するn領域302上での強制略自然降伏状態は、本発明の一実施形態である。NNBD300を電子回路に接続させることができるコンタクト領域303及び304も示されている。p領域301及びn領域302内のドーピング濃度は、コンタクト303及び304がオーミック接触(オーミックコンタクト)であるように、十分に高い。コンタクト領域303及び304は、例えば従来の化学蒸着法技術を用いて従来の相互接続導体(例えばアルミニウムや銅)を蒸着することによって、あるいは当業者に既知の他の手段によって接続され得る。p領域301及びn領域302は、イオン注入または当業者に既知の他の手段を用いて従来のシリコン基板内に形成され得る。
【0021】
NNBD300のp領域幅wは、ドーピング濃度、空乏幅、自然降伏電圧及び非自然降伏電圧に基づいて計算され得る。NNBD300のための適切な幅wは、次のステップを用いて計算され得る。
【0022】
(1)先ず、従来のpn接合ダイオードのp領域及びn領域に対するドーピング濃度を選択するが、このとき、ゼロ印加バイアス電圧下で、p領域が空乏幅Z(図3の幅305によって示されている)を有し、n領域が空乏幅Z(図3の幅315によって示されている)を有するようにドーピング濃度の選択を行う。(適切なドーピング濃度を選択するためにp領域及びn領域の空乏幅が用いられることがある。)これらの寸法は、従来のpn接合ダイオードにおいて、pn接合の両端に外部電圧がかけられていないときに、内蔵電圧Vbuilt−inを作り出す。また、従来のpn接合ダイオードが、非自然降伏電圧Vbrに等しい逆バイアス電圧を外部からかけられるとき、p領域は空乏幅xを有し、n領域は空乏幅xを有する。非自然降伏状態の空乏幅xは、xの最大幅である。幅wは、Zより大きい。強制NNBDにおいては、自然降伏電圧Vfbrの大きさはVbrの大きさより小さい。非強制NNBDにおいては、バイアス自然降伏電圧VfbrはVbrに等しい。
【0023】
(2)NNBDに対する所望の自然降伏電圧Vfbrをゼロバイアスとデバイスの非自然降伏電圧Vbrの間で選択する。印加されたバイアス電圧がゼロとVfbrの間であるときには、漏れ電流のみがNNBDを流れることになる。しかし、印加されたバイアス電圧がVfbrより大きい大きさを有するときには、より大きな多数キャリア逆電流がNNBDを流れることになる。NNBDが被選択自然降伏電圧Vfbrにバイアスされるとき、自然降伏状態が発生する。
【0024】
(3)p領域301に対する空乏幅wを計算するが、このとき、コンタクト303とコンタクト304の間に電圧Vfbrがかけられるときにp領域301全体が完全に空乏化するように幅wの計算を行う。階段接合近似を仮定すると、幅wは次式Pを用いて計算され得る。
【数5】

【0025】
当業者に既知であるように、wを計算する他の方法がある。w=xのとき、VfbrはVbrに等しい。ドーピング濃度は、キャリアの数によって表され得る。NNBD300に対する幅wは、他のステップ、例えば、(1)所望の自然降伏電圧Vfbrを選択するステップと、(2)ドーピング濃度及び空乏幅Zを選択するステップと、(3)上記した式P(または当業者に既知の他の公式)を用いて幅wを計算するステップとによっても計算され得る。半導体領域内で非自然降伏状態にならない半導体デバイスが完全に空乏化されるとき、wの最大幅は半導体領域幅であり、幅wはZより大きい。
【0026】
幅wは階段接合近似を用いて上記のように計算されることに留意されたい。他の適切な方法を用いてもよい。幅wは、用途に応じて、異なる接合近似を用いて計算され得る。上記で説明したように、本発明の一実施形態に従って、状態w<xは「強制略自然降伏状態」と呼ばれ、そのような状態下で、p領域301は「強制略自然降伏領域」と呼ばれる。p領域301が強制略自然降伏状態にあるとき、Vfbrの値はVbrより小さい。本発明の別の実施形態に従って、状態w=xは「非強制略自然降伏状態」と呼ばれ、そのような状態下で、p領域301は「非強制略自然降伏領域」と呼ばれる。NNBDが「非強制略自然降伏領域」を有するときには、自然降伏及び非自然降伏が起こりかつかなりの電流を生成することになる。
【0027】
ひとたびwが決まったら、NNBD300がVfbrでバイアスされるときにp領域301がコンタクト領域303とn領域302の間で完全に空乏化されることになるように、任意の適切な幅のn領域302を備えたNNBDが作り出され得る。w(幅316によって示される)は、NNBD300がVfbrに逆バイアスされるときのNNBD300上のn領域302の空乏領域幅である。n領域302の幅は、p領域301が完全に空乏化する前にn領域302が完全に空乏化しない限り、wからx以上にまで及び得る。コンタクト303と304の間に印加される外部電圧がVfbrであるとき、NNBD300のp領域301は完全に空乏化される。本発明の一実施形態は、xより小さいwを持つp領域301に強制略自然降伏状態を与え、n領域302の幅は、wからx以上までの間の値である。本発明の一実施形態は、p領域301がxに等しい幅wを有するような非強制略自然降伏状態であり、n領域302の幅は、wからx以上にまで及び得る。
【0028】
図6(a)に示されている本発明の別の実施形態では、NNBD600のn領域602は、p領域601における略自然降伏状態なしに、強制略自然降伏状態下に置かれ得る。NNBDは、2つ以上の降伏領域を有し得る。この実施形態では、p領域601の幅は、n領域602が完全に空乏化するときにp領域601が完全に空乏化しない限り、wからx以上にまで及び得る。図6(a)では、自然降伏でのp領域601の空乏幅w及び空乏幅wが図6(a)にそれぞれ幅606及び616として示されている。本発明の一実施形態は、非強制略自然降伏のn領域602(すなわちwがxに等しい)及びp領域601(wからx以上までの間の幅を有する)を与える。本発明の別の実施形態は、xより小さいwで作られたn領域602に強制略自然降伏状態を与え、p領域601の幅は、wからx以上までの間の幅を有する。この実施形態では、p領域601の幅は、n領域602が完全に空乏化するときにp領域601が完全に空乏化しない限り、wからx以上にまで及び得る。そのような構造を有するNNBDには、強制略自然降伏ダイオードが含まれる。これらのNNBD領域は、強制略自然降伏領域または非強制略自然降伏領域のいずれかである場合がある。
【0029】
一般に、NNBDは、Vfbrの逆バイアス下で完全に空乏化したp領域またはn領域のうちの一方を有する。ひとたびNNBDが完全に空乏化した領域を有すると、電界によって、電子、正孔、または両方が、完全に空乏化した領域を越えさせられることになり、それゆえ電流が作り出される。例えば、図3のNNBD300は、強制略自然降伏状態にあるp領域301と、幅がxより大きいn領域302とを有する。NNBD300が、外部からかけられるVfbrの逆バイアス電圧を有するとき、p領域301は完全に空乏化する(すなわちp領域301内の空乏領域の末端とコンタクト303間の距離がゼロになる)。こうした条件下で、p領域301内での電界の極性によって、コンタクト領域303からp領域301に入る電子は、p領域301を越えてn領域302内へ直接に引き寄せられる。同様に、n領域302から空乏領域に入る正孔は、p領域301を越えてコンタクト領域303内へ引き寄せられる。
【0030】
ひとたびNNBD300の両端に外部からかけられる逆バイアス電圧がVfbrに達したら、p領域301及びn領域302に関連する空乏領域は、電圧がさらに増加しても同じ幅のままである。これは、n領域302から電子を激減させるために利用できるさらなる正孔がp領域301内にないためである。結果として、外部印加逆バイアス電圧の大きさがVfbrを超えるので、n領域302の中性領域における電圧降下として追加電圧が現れる。この誘導電圧は、電子電流(すなわち逆電流)をコンタクト領域303からn型領域302内へ流れさせる。
【0031】
NNBD300の両端にゼロと閾値電圧の間の順バイアス電圧(すなわち0<VIN<Vth)がかけられると、p領域301及びn領域302の両方で空乏幅が減少する。空乏領域両端の電圧降下も少なくなる。この状況では、外部印加電圧に比例する小さな順方向の漏れ電流がNNBD300内を流れる。外部印加電圧が閾値電圧Vthに近付くにつれて、NNBD300における空乏幅は、かなりの電流が流れるように著しく小さくなる。ひとたび外部からかけられる電圧が閾値電圧を超えると(すなわちVIN≧Vth)、NNBD300は順バイアス電流を伝導する。
【0032】
逆バイアスされると、NNBD300は、順バイアスされるときの少数キャリアデバイスとは対照的に、多数キャリアデバイス(n領域内に注入されている電子)として動作する。多数キャリアデバイスのスイッチング時間は、典型的には、少数キャリアデバイスのスイッチング時間より速い。
【0033】
図4は、NNBD300の電流対電圧(IV)特性のプロットである。NNBD300は、外部からかけられる電圧がVfbrより大きさが大きい逆バイアス電圧より大きいときにはかなりの逆電流を伝導し、外部からかけられる電圧がVthより大きいときには順電流を伝導する。バイアス電圧がVfbrとVthの間にあるときには、NNBD300は極僅かな漏れ電流を伝導する。
【0034】
要約すると、本発明のNNBDは、Vfbrより大きいバイアス電圧が印加されるときに伝導電流が流れるようにする。Vfbrでは、NNBDの半導体領域は、自然降伏状態を有する。デバイス上で略自然降伏状態を用いることは、例えばツェナー効果及び雪崩効果など非自然降伏状態を用いて達成可能であるより広くかつより柔軟な電圧範囲の伝導を可能にする。NNBDは、バイアスされると、多数キャリアデバイスとして動作する。印加されるバイアス電圧が閾値電圧Vfbrを超えていれば、NNBDは伝導電流を供給する。本NNBD発明を従来のpn接合ダイオードに適用すると、新たな能動バイアス電圧範囲、すなわち、Vbrより大きさが小さいバイアス電圧が作り出された。この新たな能動範囲は、NNBDに改変されたpn接合ダイオードが、発振回路及び高速スイッチを含む種々の用途に用いられることができる2つの能動領域を有することを可能にする。
【0035】
本発明の別の実施形態に従って、上記したように、図6(a)は、x(すなわち、外部逆非自然降伏電圧Vbrがかけられたときの従来のpn接合ダイオードの空乏幅)より小さい幅wを有するn型領域602を備えたNNBD600を示している。階段接合近似を仮定すると、幅wは、次式Nを用いて計算することができる。
【数6】

【0036】
NNBD600に対する幅w(幅616によって示される)も同様に決められる。NNBD600に逆バイアス電圧Vfbrが外部からかけられるとき、n領域602は完全に空乏化する(すなわちn領域602内のコンタクト領域604と空乏領域の末端との間の距離がゼロになる)。こうした条件下で、コンタクト領域604からn領域602に入る正孔は、n領域602を越えてp領域601内へ直接に引き寄せられる。同様に、p領域601から空乏領域に入る電子は、n領域602を越えて引き寄せられ、コンタクト領域604に入る。
【0037】
ひとたびNNBD600にVfbrの逆バイアス電圧が外部からかけられたら、n領域602及びp領域601に関連する空乏領域は幅が増大しない。これは、p領域601から正孔を激減させるために利用できる電子がn領域602にないからである。従って、外部印加逆バイアス電圧の大きさがVfbrより大きく増大するにつれて、p領域601の中性領域内で電圧が誘導されることになる。この誘導電圧は、前述の空乏領域の電界の引き寄せ(スイープ)効果によりコンタクト604からp領域601内に逆電流を流すことになる。
【0038】
NNBD600にゼロと閾値電圧の間の順バイアス電圧(すなわち0<VIN<Vth)が外部からかけられると、p領域601及びn領域602の両方で空乏幅が減少する。空乏領域両端の電圧降下も少なくなる。この状況では、外部印加電圧に比例する小さな順方向の漏れ電流がNNBD600内を流れる。外部印加電圧がVthにかなり近くなるにつれて、NNBD600における空乏幅は著しく小さくなって、かなりの電流が流れるようになる。ひとたび外部からかけられる電圧が閾値電圧を超えると(すなわちVIN≧Vth)、NNBD600は電流を伝導する。
【0039】
図6(b)は、NNBD600の電流対電圧特性のプロットである。本発明に従う別の実施形態は、w=x(すなわち非強制略自然降伏空乏状態)を与える。非強制NNBD600は、非強制NNBD300と同じ性質を有する。
【0040】
NNBD300または600の両端に外部電圧Vfbrがかけられるとき、空乏領域両端の電圧は、Vfbrに内蔵電位Vbuilt−inを加えた値に等しい。従って、空乏領域を越えるキャリアは、外部からかけられる電圧よりも電圧Vbuilt−inだけ電位が高い。この電圧差を補償するために、Vbuilt−inを全NNBD抵抗で除した値に等しい増加電流がNNBD300または600を流れる。この電流の増加は、NNBD300のp領域301またはNNBD600のn領域602が完全に空乏化される限り生じる。ターンオン電圧での電流増加は、オフからオンへ及びオンからオフへのスイッチング時間を減少させるのに役立ち得る。
【0041】
当技術分野では真のp型オーミック接触を作り出すコンタクト材料がないことが知られている。その代わりとして、p型オーミック接触は、十分に薄い空乏領域とのp型ショットキー接触を用いて模倣されることがある。薄い空乏領域は、高濃度にドープされたp型材料を用いて作り出されるので、トンネル現象を許容する。高濃度にドープされたp型材料を用いることは、望ましくないことがあり、あるいは、十分に低い抵抗を与えないことがある。コンタクト/半導体接合での抵抗は、接合の空乏領域幅に比例する。NNBD300及びNNBD600が逆バイアスされるとき、ショットキー接触を用いる模倣されたオーミック接触は順バイアス下にある。ショットキー接触を順バイアスすることは、コンタクト空乏幅を減少させ、それによってコンタクトトンネリング能力を増加させる。トンネリング能力の増加は、オーミック接触抵抗を低下させる。
【0042】
本発明の別の実施形態に従って、図7(a)は、空乏領域704を有するゼロ印加バイアス電圧で、そして完全に空乏化したn領域702を有するVfbrの逆バイアス電圧での、n領域702と、NNBD700を電子回路に接続するために設けられたコンタクトである導体701及び703とを備えた、NNBD700を示している。電圧Vfbrは、NNBD700と同等の材料を用いる従来のnショットキーダイオードの降伏電圧Vbrより大きさが小さい。n領域702内のドーピング濃度は十分に高いので、導体703とn領域702の間の接合はオーミック接触であり、導体701はn領域702へのショットキー障壁を形成する。NNBD700において、ゼロ印加バイアス電圧で、n領域702は空乏幅704を有する。NNBD700がVfbrに逆バイアスされると、n領域702は空乏幅705を有して完全に空乏化される。ひとたびn領域702がNNBD700両端の逆バイアスされた電圧Vfbrによって完全に完全に空乏化すると、NNBD700内の空乏領域に関連する電界により、コンタクト701からコンタクト703へ電子が引き寄せられ、それによって、NNBD700を通過する逆電流が生じる。n領域702は、Vfbr以上の大きさの逆バイアスされた電圧が外部からNNBD700の両端にかけられる限り、完全に空乏化したままであることになる。順バイアス下のNNBD700は、順バイアスされた状態下の同等の材料及び寸法の従来のn型ショットキーダイオードと実質的に同じように働く。
【0043】
本発明の別の実施形態に従って、図7(b)は、空乏領域714を有するゼロバイアス電圧で、そして完全に空乏化したp領域712を有する逆バイアス電圧Vfbrでの、p領域712及び導体711及び713とを備えたNNBD710を示しており、導体711及び713は、NNBD710を電子回路に接続するために設けられたコンタクトである。電圧Vfbrは、NNBD710と同等の材料及び寸法の従来のpショットキーダイオードの非自然降伏電圧Vbrより大きさが小さい。p領域712内のドーピング濃度は、導体713とp領域712の間の接合がオーミック接触でありかつ導体711がp領域712へのショットキー障壁を形成するように十分高い。ゼロ印加バイアス電圧でのNNBD710において、p領域712は、空乏幅714を有する。NNBD710がVfbrに逆バイアスされると、p領域712は空乏幅715を有して完全に空乏化される。ひとたびp領域712が完全に空乏化すると、VfbrでNNBD710が逆バイアスされるとき、NNBD710の空乏領域に関連する電界により、コンタクト713からコンタクト711へ電子が引き寄せられ、それによって、NNBD710を通過する逆電流が生じる。p領域712は、Vfbr以上の大きさの逆バイアスされた電圧が外部からNNBD710にかけられる限り、完全に空乏化される。順バイアス下のNNBD710は、順バイアスされた状態下の同等の寸法及び材料の従来のp型ショットキーダイオードと実質的に同じように働く。
【0044】
次のステップは、NNBD700に対する強制略自然降伏幅を決定する。すなわち、(1)n領域ドーピング濃度を用いて従来のショットキーダイオードの非自然降伏電圧Vbrと、バイアス電圧Vbrでの空乏幅xと、ゼロバイアスでの空乏幅Zとを求めるステップと、(2)ショットキーダイオード700と共に用いられることができるゼロとVbrの間の(またはVbrに等しい)逆バイアス自然降伏電圧Vfbrを探すステップと、(3)NNBD700の両端に逆自然降伏バイアス電圧Vfbrが印加されるとき、n領域702が完全に空乏化するように、n領域702の空乏幅wを計算するステップである。空乏幅wは、Zとxの間である。同様のステップを用いてNNBD710に対する強制略自然降伏幅を決定することができる。領域702及び712は、それぞれ、異なるドーピング濃度の複数のn型及びp型セクションを含む。NNBD700または710は、同様の方法または他の方法で作り出され得る。
【0045】
NNBD700または710の両端に外部電圧Vfbrがかけられるとき、空乏領域の両端の電圧は、Vfbrに内蔵電位Vbuilt−inを加えた値に等しい。従って、空乏バンド領域を越えるキャリアは、外部からかけられる電圧よりも電圧Vbuilt−inだけ電位が高い。この電圧差を補償するために、全NNBD抵抗に等しい増加電流がVbuilt−in/NNBDを流れる。この電流の増加は、NNBD700のn領域702またはNNBD710のp領域712が完全に空乏化されるされる限り生じる。また、NNBD700及び710は、Vfbr以上の電圧が外部からかけられるときには、中性領域を有しない。Vfbrで電流が増加しかつ中性領域を有しないことは、オフからオンへ及びオンからオフへのスイッチング時間を減少させるのに役立ち得る。
【0046】
この技術の適用は、従来のショットキーダイオードに略自然降伏状態を与え、新たな能動バイアス電圧範囲、すなわち、ゼロとVbrの間の逆バイアス電圧範囲を作り出す。この新たな能動領域によって、2つの能動領域を有するように略自然降伏状態に改変されたショットキーダイオードは、発振回路及び高速スイッチを含む用途に利用されることができる。
【0047】
本発明の別の実施形態に従って、NNBDは3つ以上の半導体領域を用いて形成されることがあり、そのうちの1つ若しくは複数はコンタクトに隣接し、自然降伏電圧で外部からバイアスされると完全に空乏化する。半導体領域には、同じ極性型の複数のセクションが含まれることがある。図5(a)は、自然降伏電圧Vfbr NPNで自然降伏領域にあるコレクタ半導体領域501を有するNPNバイポーラトランジスタであるNNBD500を示している。Vfbr NPNに等しい電圧VCBがNNBD500のコレクタ領域501及びベース領域503の両端にかけられると、コレクタ半導体領域501はコレクタコンタクト502の下で完全に空乏化する(すなわちコレクタ領域501は自然降伏状態にある)。図5(b)は、中性領域504を有するベース半導体領域503と共にコレクタ半導体領域501が自然降伏状態下にあるときのNNBD500の拡大図を示している。図5(c)は、自然降伏電圧Vfbr PNPで自然降伏領域にあるコレクタ半導体領域511を有するPNPバイポーラトランジスタであるNNBD510を示している。Vfbr PNPに等しい電圧VCBがNNBD510のコレクタ領域511及びベース領域513の両端にかけられると、コレクタ半導体領域511は、コレクタコンタクト512の下で完全に空乏化する(すなわちコレクタ領域511は自然降伏状態にある)。図5(d)は、中性領域幅514を有するベース半導体領域513と共にコレクタ半導体領域511が自然降伏状態下にあるときのNNBD510の拡大図を示している。
【0048】
fbr NPN以上の電圧VCBがNNBD500のコレクタ領域501及びベース領域504の両端にかけられるとき、コレクタ半導体領域501は自然降伏状態にあるので、NNBD500のコレクタベース接合での空乏領域幅は変わらない。従って、NNBD500のベース領域503における中性領域504の幅は、電圧VCBがVfbr NPN以上の値を超えたときに変化しない。ベース領域503におけるVCBに影響されないベース中性領域504の幅を有することは、コレクタ領域501及びベース領域504の両端に内部電圧差を生じさせる。2つの現象がこの内部電圧差を補償する。先ず、コレクタ電流の増加が内部電圧降下を小さくする。さらに、NNBD500のベース領域504内の中性領域503に電界が作り出される。順方向能動モードで動作する(すなわち、ベース−エミッタ接合は順バイアスされ、ベース−コレクタ接合は逆バイアスされる)従来のバイポーラトランジスタにおいて見られるように、コレクタ電流は、VBE電圧及びベース電流に基づき、VCB電圧と無関係に、エミッタ領域からベース領域内へのキャリアの注入によって制御される。従って、NNBD500において、ベース中性領域内に生成される電界は支配的効果である。同様の効果がNNBD510に生じるので、NNBD510のベース513の中性領域にも電界が作り出される。
【0049】
順方向能動モードで動作する従来のバイポーラトランジスタは、電圧の増加につれてベース中性領域における幅の縮小に起因してコレクタ電流の増加をもたらすアーリー効果など、様々な非理想効果及び降伏状態を有する。アーリー効果は、バイポーラトランジスタに対するコレクタ電流I対VCE IV曲線を示す図5(e)から分かる。図5(e)において、実線(すなわち541)は、従来のバイポーラトランジスタに対するアーリー効果に起因するコレクタ電流の増加を示す。上記したように、NNBD500のベース領域503における中性領域504の幅は、電圧VCBが増加しても減少しない。従って、NNBD500はアーリー効果のコレクタ電流変化を示さない。図5(e)に示されている破線(すなわち542)は、コレクタ半導体領域が略自然降伏領域にあるバイポーラトランジスタ(例えばNNBD500)に対するコレクタ電流を表す。また、従来のバイポーラトランジスタは、ベース−コレクタ空乏領域はベース−エミッタ空乏領域に達するまで増加するので、ベース領域が完全に空乏化するときに生じるパンチスルー降伏状態を有する。NNBD500は、パンチスルー降伏状態にならない。同じように、NNBD510は、パンチスルー降伏状態にならない。
【0050】
コレクタ半導体領域501が自然降伏状態にあり、NNBD500がカットオフモードで動作する(すなわちベース−エミッタ接合及びベース−コレクタ接合の両方が逆バイアスされる)とき、コレクタコンタクト502からのコレクタ電流は、ベース領域503の中性領域504に入る。しかし、ベース−エミッタ空乏領域における電界の極性は、ベース中性領域504に入る電流がベース−エミッタ接合を越えることを妨げる。結果として、NNBD500内のコレクタ電流は、実質的にベースコンタクトから流れ出る。NNBD510は、NNBD500と同じようにカットオフモードで動作する。
【0051】
NNBDは、自然降伏電圧で外部からバイアスされると完全に空乏化するエミッタ半導体領域を備えたバイポーラトランジスタによっても形成され得る。図5(f)は、自然降伏電圧Vfbrが印加される前に略自然降伏状態にあるエミッタ半導体領域を有するNPNバイポーラトランジスタであるNNBD520の略図である。図5(g)は、中性領域を有するベース半導体領域を備えた、自然降伏状態下でエミッタ半導体領域が完全に空乏化されたときのNNBD520の拡大図を示している。図5(j)は、自然降伏電圧Vfbrが印加される前に略自然降伏状態にあるエミッタ半導体領域を有するPNPバイポーラトランジスタであるNNBD540の略図を示している。図5(k)は、中性領域を有するベース半導体領域を備えた、自然降伏状態下でエミッタ半導体領域が完全に空乏化されたときのNNBD540の拡大図を示している。エミッタ半導体領域が完全に空乏化されたときにNNBD520またはNNBD540がカットオフモードで動作するとき、エミッタ電流は、上記したように実質的にベースコンタクトから流れ出る。
【0052】
NNBDはまた、自然降伏電圧で外部からバイアスされると完全に空乏化するコレクタ及びエミッタの両半導体領域を備えたバイポーラトランジスタによって形成され得る。図5(h)は、自然降伏電圧が印加される前に略自然降伏状態にあるコレクタ及びエミッタ半導体領域を有するNPNトランジスタであるNNBD530の略図を示している。図5(i)は、中性領域を有するベース半導体領域を備えた、自然降伏状態下でコレクタ及びエミッタの両半導体領域が完全に空乏化されたときのNNBD530の拡大図を示している。図5(l)は、自然降伏電圧が印加される前に略自然降伏状態にあるコレクタ及びエミッタの両半導体領域を有するPNPトランジスタであるNNBD550と、自然降伏状態下でコレクタ及びエミッタの両半導体領域が完全に空乏化されたときの拡大図を示している。NNBD530及びNNBD550は、上記したように、略自然降伏状態にあるコレクタ領域を有するバイポーラトランジスタと略自然降伏状態にあるエミッタ半導体領域を有するバイポーラトランジスタとの複合効果を示すことになる。
【0053】
図8(a)及び図8(c)は、それぞれNNBDデバイス800及び820を示し、各々は3つ以上の半導体領域を有し、そのうちの1つがコンタクトに隣接しており、その半導体領域は自然降伏電圧が外部から印加されると完全に空乏化する。図8(b)及び図8(d)は、それぞれNNBDデバイス810及び830を示し、各々は3つ以上の半導体領域を有し、そのうちの2つがコンタクトに隣接しており、これらの半導体領域の各々は、自然降伏電圧が外部から印加されると完全に空乏化する。
【0054】
次のステップは、あるデバイスから略自然降伏デバイス(NNBD)を作り出す一般的な方法を与える。
【0055】
1)デバイス内のコンタクトに隣接する半導体領域を選び、デバイスのドーピング濃度を用いてデバイスがバイアスされていないときの領域における空乏領域の幅(Z)を計算するステップ。空乏領域幅Zのデバイスの半導体領域上で実現される略自然状態に対して、領域の幅(W)はZより大きい必要がある。
【0056】
2)領域の電流幅及び非自然降伏電圧Vbrを用いて自然降伏電圧Vfbrの最大の大きさを計算またはシミュレートし、空乏幅Zを用いて電圧Vfbrの最小値を計算するステップ。Vfbrバイアス電圧では、領域は自然降伏効果により完全に空乏化される。Vfbrの大きさが、領域内で発生する非自然降伏状態の降伏電圧に等しいとき、降伏効果の組合せが生じることがある。電圧Vfbrの大きさが、領域内で発生することになる非自然降伏状態の降伏電圧より小さいときは、自然降伏現象のみが現れる。また、Vfbrの極性は、半導体領域内で1つの空乏領域の幅を増大させる方向にある。
【0057】
3)Vfbrを選択し、NNBDに対する領域の新たな幅(WNNBC)を計算するステップ。
【0058】
上記の一般的な方法の変形形態は、上記と同じステップ1)と、次のステップ2)及び3)を用いる。
【0059】
2)略自然降伏状態を有するために適切な略自然降伏領域の最大及び最小幅を決定するステップ。最大幅は、計算またはシミュレートされることができる非自然降伏電圧Vbrで、領域の電流幅と領域両端の空乏幅の間で(大きさが)より小さい値である。領域の最小値は、空乏幅Zより大きい。領域の幅(WNNBC)を最大幅と最小幅の間で選ぶ。
【0060】
3)選択された領域の幅WNNBCを用いてVfbrを計算するステップ。Vfbrバイアス電圧では、領域は、自然降伏効果により完全に空乏化される。
【0061】
略自然降伏状態を作り出すために用いられる半導体領域のドーピング濃度及び幅は、降伏電圧が決定された時点で決定され得る。ドーピング濃度は、半導体領域のある幅を選択することによって決定されることができる。ドーピング濃度を決定する際の限定要因は、ドーピング濃度が、決定された自然降伏電圧Vfbrより小さい大きさの電圧で非自然降伏状態(すなわちトンネル現象)を作り出してはならないことである。また、半導体領域の幅は、あるドーピング濃度を選択することによって決定されることができる。幅の選択は、選択された自然降伏電圧より小さい大きさの電圧で非自然降伏状態(例えば雪崩)を作り出すようなものであってはならない。
【0062】
非ゼロ印加電圧でデバイスにおけるコンタクトに隣接する完全に空乏化した領域は、以下のことを成し遂げる。(1)空乏領域によって電界が作り出される結果として、コンタクト/半導体接合での電子が、完全に空乏化したp領域からn領域へ移動する(コンタクト/半導体接合での正キャリア(正孔)が、完全に空乏化したn領域からp領域へ移動する)。この場合、コンタクト/半導体接合での外部電子と完全に空乏化したp領域との間の距離(コンタクト/半導体接合での外部の正キャリア(正孔)と完全に空乏化したn領域との間の距離)はゼロである。結果として、逆バイアス伝導電流が達成される。(2)完全に空乏化したp領域がコンタクト/半導体接合で外部電子を有する(完全に空乏化したn領域がコンタクト/半導体接合で外部の正キャリア(正孔)を有する)ならば、逆バイアス伝導性(reverse bias conductivity)が生じる。(2)完全に空乏化したp領域がコンタクト/半導体接合で外部電子を有する(完全に空乏化したn領域がコンタクト/半導体接合で外部の正キャリア(正孔)を有する)ならば、閾値電圧で逆バイアス伝導性が生じる。(3)コンタクト/半導体接合での電子が、空乏領域によって作り出される電界の方向と逆の方向へ移動する(コンタクト/半導体接合での外部の正キャリア(正孔)が電界の方向と同じ方向に移動する)。例えば、NNBDダイオードが、従来のダイオードの場合の雪崩降伏電圧の代わりに、略自然降伏電圧を伝導する。
【0063】
図9は、本発明に従って、バイアス電圧下でのNNBD構造及び特性の表を示している。表の左側の1列目は、構造があたかも直線的に配置されたかのようなNNBDの構造である。構造を示すために用いられる語は、次のとおりである。
「Sch」Contact−半導体ショットキー障壁
「Ohm」Contact−半導体オーミック障壁
「N non-F」−非強制略自然降伏 n型領域
「P non-F」−非強制略自然降伏 p型領域
「N Forced」−強制略自然降伏 n型領域
「P Forced」−強制略自然降伏 p型領域
「N」−降伏状態下にないn型領域
「P」−降伏状態下にないp型領域
【0064】
2列目は、構造が構造の左側で正にバイアスされるかまたは構造の右側で負にバイアスされるときに構造が強制自然降伏状態を有する(「Yes」)か否(「No」)かを示している。2列目が「Yes」を示していれば、3列目は、どちらの接合が強制自然降伏状態を有するかを示す。4列目は、構造が構造の左側で負にバイアスされるかまたは構造の右側で正にバイアスされるときに構造が強制自然降伏状態を有する(「Yes」)か否(「No」)かを示している。4列目が「Yes」を示していれば、5列目はどちらの接合が強制自然降伏状態を有するかを示す。
【0065】
図9におけるNNBD構造は、領域を付加しかつ/または異なる材料を利用することによって、略自然降伏状態特性を示す他のNNBD構造を得るために用いられ得る。他のNNBD構造を得る方法には、例えば、電界が接合を越えることを妨げないような変更または非均質材料を用いて、接合間に真性材料を追加するステップが含まれることがある。一例として、構造「Ohm|P Forced|N|Ohm」を有するNNBD構造29は、「Ohm|P Forced|Intrinstic|N|N+|Ohm」に変更され得る。
【0066】
NNBDが、非自然降伏電圧Vbrに等しいVfbr電圧を有するとき、自然降伏効果及び非自然降伏の組合せが発生する。効果の組合せは、降伏状態中に多数キャリアを利用し、それによってデバイスキャパシタンスを低下させる。デバイスキャパシタンスを低下させることによって、NNBDは、1つの降伏効果、例えば雪崩降伏またはツェナー降伏を利用するデバイスよりも短いターンオフスイッチング時間を有することができる。
【0067】
fbrがゼロバイアスにかなり近い非常に小さな値に設定されるとき、NNBDの降伏状態は、略ゼロ順閾値電圧を有すると考えることができる。例えば、NNBD300は、略ゼロ逆バイアス電圧によってバイアスされる(完全に空乏化される)とき、電流を伝導する。内蔵電圧及びVfbrは共に、NNBD300に対して電流を作り出すために用いられる。電流はかなり大きいので、デバイス上の抵抗を気にする必要はない。図10(a)及び図10(b)は、p領域301上に自然降伏状態を作り出すためにVfbrがその最も小さいバイアス電圧(略ゼロ)にあるときのNNBD300のIV曲線を示している。図10(a)は、順電流及び順バイアス電圧でのNNBD300のIV曲線を示している。図10(b)は、逆電流及び逆バイアス電圧でのNNBD300のIV曲線を表している。図10(b)は、NNBD300が順閾値電圧及び略ゼロ順閾値電圧で逆降伏状態を有することを示している。自然降伏電圧Vfbrがゼロにかなり近い小さな値に設定されるとき、NNBDは、略ゼロ閾値電圧で電流を伝導し、理想的な半導体デバイスのように機能する。例えば、NNBD300は、順バイアス電圧(Vth)より小さい外部印加電圧を有するとき、理想ダイオード特性を有する。図10(a)及び図10(b)は、ゼロからVth未満までの順バイアス領域及び全部の逆バイアス領域を含む理想ダイオードIV曲線を示している。
【0068】
NNBDダイオードの用途には、クリッピング、クランピング、電圧調整が含まれ、あるいは所定電圧レベルを必要とする用途に適用される。複数のNNBDダイオードを並列に接続すると、回路を流れる電流の総量を増加させることになる。複数のNNBDダイオードを直列に接続すると、自然降伏状態を作り出すために必要な電圧の大きさを増大させることになる。
【0069】
NNBDダイオードは、降伏状態でデバイス内に中性領域がないように、Vfbr電圧でp領域及びn領域の両方の全域全体に空乏領域を延在させるように形成され得る。自然降伏状態中に中性領域を有すると、非導電(オフ)から導電(オン)状態へのスイッチング速度を増加させ得る。これは、キャリアが中性領域を越えるために必要な遷移時間がゼロであるためである。また、キャリアが空乏領域を越えるための遷移時間は、単位長さ当たりで、キャリアが中性領域を越えるための遷移時間より速い。
【0070】
fbr電圧は、自然降伏領域内のイオンの数に基づく。半導体領域内でのこれらのイオンの分布は、自然降伏電圧Vfbrを変化させない。Vfbr降伏電圧を作り出すために必要なイオンの数は、均質材料及び階段pn接合近似を用いて計算され得る。必要なイオンの数が計算された時点で、所望の用途に最も良く合うようにイオンの分布が選択され得る。NNBDに対する自然降伏領域内のイオンの分布は、ツェナー効果を用いることを含めてトンネル現象を用いて降伏を作り出す他のデバイスよりも柔軟性があり得る。これは、トンネル現象が、自然降伏領域と違って特定のドーピング濃度を必要とするからである。一例として、隣接するコンタクトの近くでイオン濃度をより高くしてコンタクト/半導体接合抵抗を低下させることが挙げられる。半導体領域内のイオンの数を制御するためにイオン注入が用いられることがある。
【0071】
トンネル現象(すなわちツェナー効果)に起因する降伏は、特定のドーピング濃度を有する必要がある。雪崩効果に起因する降伏は、用いられる半導体材料に基づく固有の電界強度を必要とする。自然降伏状態によって生じる降伏は、完全に空乏化した半導体領域内のキャリアの数にのみ依存し、必要なデバイスパラメータを実現するのに必要なキャリアを分布させる自由度が増す。
【0072】
本発明のNNBD内の略自然降伏領域をバイアスするとき、略自然降伏領域の空乏領域幅の増加は、次の規則に従う。
− 強制略自然降伏領域が完全に空乏化していなければ、強制略自然降伏領域はデバイスを通る発生電流に寄与せず、
− 強制略自然降伏領域が完全に空乏化し、コンタクトに隣接していれば、隣接するコンタクトから完全に空乏化した強制略自然降伏領域を越えて、または完全に空乏化した強制略自然降伏領域から隣接するコンタクト内へのいずれかに電子電流が流れる。電子電流の方向は、強制略自然降伏領域内の電界の極性によって決まる。
【0073】
略自然降伏状態は、コンタクトまたは半導体領域(p型またはn型)に隣接する真性材料を用いて作り出され得る。略自然降伏領域は、真性材料に隣接するp型またはn型材料を用いて作り出され得る。本発明の別の実施形態では、NNBDは、少なくとも1つの真性半導体領域に隣接するp型またはn型半導体領域によって作り出される強制略自然降伏領域を用いる。本発明の別の実施形態では、NNBDは、少なくとも1つの真性半導体領域に隣接するp型またはn型半導体領域によって作り出される非強制略自然降伏領域を用いる。
【0074】
真性材料を利用して既存のデバイスを用いて作り出されるNNBDの一例は、1つか2つの強制略自然降伏領域を有するNNBD PINダイオード(すなわちp型/真性/n型ダイオード構造)である。図11(a)は、P型略自然降伏領域1101を有するNNBD PINダイオードであるNNBD1100の略図を示している。図11(b)は、N型略自然降伏領域1112を有するNNBD PINダイオードであるNNBD1110の略図を示している。図11(c)は、P型略自然降伏領域1121及びN型略自然降伏領域1122を有するNNBD PINダイオードであるNNBD1120の略図を示している。略降伏状態にある1若しくは複数の半導体領域を有するNNBD PINダイオードは、中性領域の量が減少しているので、従来のPINダイオードより速い遷移時間を有すると期待される。
【0075】
本発明は、ソースまたはドレインコンタクトに隣接する半導体領域が略自然降伏領域によって与えられ得るようなMOSFETトランジスタを作り出すために適用され得る。図13は、ドレインコンタクト1302に隣接する略自然降伏領域1301を有するエンハンスメントモードNNBD MOSFETトランジスタ(nチャネルまたはpチャネルのいずれか)であるNNBD1300の略図を示している。略自然降伏状態にあるドレインコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有することは、空乏領域の電界に起因して遷移時間を短縮することが期待される。図12は、ソースコンタクト1202に隣接する略自然降伏領域1201を有するエンハンスメントモードNNBD MOSFETトランジスタ(nチャネルまたはpチャネルのいずれか)であるNNBD1200の略図を示している。略自然降伏状態にあるソースコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有することで、結果的に、ソース空乏領域の電界によってNNBD MOSFETデバイスにチャネル電流が流れないようにされる。そのようなNNBD MOSFETデバイスは、回路保護のために用いられ得る。
【0076】
本発明はまた、ソース、ドレインまたはゲートコンタクトに隣接する半導体領域が略自然降伏領域として与えられ得るようなJFETトランジスタに適用され得る。図14は、ドレインコンタクト1402に隣接する略自然降伏領域1401を有するNNBD JFETトランジスタ(nチャネルまたはpチャネルのいずれか)であるNNBD1400の略図を示している。略自然降伏状態にあるドレインコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有することは、空乏領域の電界に起因して遷移時間を短縮することが期待される。図15は、ソースコンタクト1502に隣接する略自然降伏領域1501を有するNNBD JFETトランジスタ(nチャネルまたはpチャネルのいずれか)であるNNBD1500の略図を示している。略自然降伏状態にあるソースコンタクトに隣接する略自然降伏領域を有することで、結果的に、ソース空乏領域の電界によってNNBD JFETデバイスに電流が流れないようにされる。そのようなNNBD JFETは、回路保護を作り出すために用いられ得る。
【0077】
図16は、ゲートコンタクト1602に隣接する略自然降伏領域1601を有するNNBD JFETトランジスタ(nチャネルまたはpチャネルのいずれか)であるNNBD1600の略図を示している。略自然降伏領域1601が略自然降伏状態にあるとき、チャネル1603内に形成される空乏幅は、略自然降伏効果のために、ゲート・ソース電圧の変化の結果として変化しない。また、電流がチャネル1603から略自然降伏領域1601を通って流れ、ゲートコンタクト1602から出て行く。略自然降伏領域1601が略自然降伏状態にある間はチャネル1603の幅は減少せず、それによって、NNBD1600は最小チャネル幅を達成することができる。そのようなNNBDデバイスは、回路保護を作り出すために用いられ得る。
【0078】
本発明は、光子(フォトン)を吸収するコンタクトに隣接する半導体領域が非強制略自然降伏領域であるような、雪崩フォトダイオードに適用され得る。別の実施形態では、NNBD雪崩フォトダイオードは、コンタクトに隣接する光子を吸収するP型領域を非強制略自然降伏領域にする。従って、略自然降伏電圧でNNBD雪崩フォトダイオードがバイアスされるとき、雪崩効果及び略自然降伏状態の両方が一緒に起こる。このことは、比較的一定のバックグラウンド電流を作り出す略自然降伏状態のおかげで、従来の雪崩フォトダイオードに関連するノイズ問題を改善し得る。NNBD雪崩フォトダイオードのバックグラウンド電流は、従来の雪崩フォトダイオードより高いことがあるが、生じる雪崩増倍は、ひとたび光子が吸収されると、バックグラウンド電流よりかなり大きい電流を生成することになる。
【0079】
本発明は、コレクタコンタクトに隣接する半導体領域が非強制略自然降伏領域であるような雪崩フォトトランジスタに適用され得る。別の実施形態では、NNBD雪崩フォトトランジスタは、コレクタコンタクトに隣接する非強制自然降伏領域を有する。NNBD雪崩フォトトランジスタは、上記した雪崩フォトダイオードに対する利点と同じ利点を有し得る。
【0080】
上記の詳細な説明は、上記の特定実施形態を説明するために与えられているものであり、限定することを意図するものではない。本発明の範囲内での数多くの改変及び変形が可能である。本発明は、以下の特許請求の範囲に規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスであって、
第1導電型の半導体材料から形成されている第1領域と、
前記第1領域に隣接する第2領域とを含み、
前記第1及び第2領域の両端に所定電圧が印加されるときに前記第1領域が完全に空乏化することを特徴とする半導体デバイス。
【請求項2】
前記第2領域が、前記第1導電型と極性が逆の第2導電型の半導体材料を含むことを特徴とする請求項1の半導体デバイス。
【請求項3】
前記第1及び第2領域の両端に前記所定電圧が印加されるときに前記第2領域が完全に空乏化することを特徴とする請求項2の半導体デバイス。
【請求項4】
前記第2領域が、前記第1領域へのショットキー障壁を形成する導電性材料を含むことを特徴とする請求項1の半導体デバイス。
【請求項5】
前記第2領域に隣接する第3領域をさらに含み、
前記第2領域が、前記第1導電型と極性が逆の第2導電型の半導体材料を含み、
前記第3領域が、前記第1導電型の半導体材料を含むことを特徴とする請求項1の半導体デバイス。
【請求項6】
前記第3領域が、前記第2領域とのオーミック接触をなすことを特徴とする請求項5の半導体デバイス。
【請求項7】
前記第1領域とのオーミック接触を形成する前記第1領域に隣接する第3領域をさらに含むことを特徴とする請求項1の半導体デバイス。
【請求項8】
前記第2領域とのオーミック接触を形成する前記第2領域に隣接する第3領域をさらに含むことを特徴とする請求項7の半導体デバイス。
【請求項9】
前記半導体デバイスが、(a)PINダイオード、(b)MOSFET、(c)JFET、(d)雪崩フォトダイオード、(e)雪崩フォトトランジスタからなる群から選択されるデバイスとして動作することを特徴とする請求項1の半導体デバイス。
【請求項10】
半導体デバイスを提供する方法であって、
第1導電型の半導体材料から第1領域を形成するステップと、
前記第1領域に隣接する第2領域を形成し、前記第1及び第2領域の両端に所定電圧が印加されるときに前記第1領域が完全に空乏化するようにするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第2領域が、前記第1導電型と極性が逆の第2導電型の半導体材料から形成されることを特徴とする請求項10の方法。
【請求項12】
前記第2領域が金属から形成され、前記第2領域が、それによって前記第1領域へのショットキー障壁を形成することを特徴とする請求項10の方法。
【請求項13】
前記第2領域に隣接する第3領域を形成するステップをさらに含み、
前記第2領域が、前記第1導電型と極性が逆の第2導電型の半導体材料を含み、
前記第3領域が、第1導電型の半導体を含むことを特徴とする請求項10の方法。
【請求項14】
前記第3領域が、前記第2領域とのオーミック接触をなすことを特徴とする請求項13の方法。
【請求項15】
前記第1領域に隣接する第3領域を形成するステップをさらに含み、
前記第3領域が、前記第1領域とのオーミック接触を形成することを特徴とする請求項10の方法。
【請求項16】
前記第2領域に隣接する第4領域を形成するステップをさらに含み、
前記第4領域が、前記第2領域とのオーミック接触を形成することを特徴とする請求項15の方法。
【請求項17】
(a)PINダイオード、(b)MOSFET、(c)JFET、(d)雪崩フォトダイオード、(e)雪崩フォトトランジスタからなる群から選択されるデバイスとして動作する半導体デバイスを形成することを特徴とする請求項10の方法。
【請求項18】
既存の半導体デバイス内に自然降伏状態を提供する方法であって、
前記既存の半導体デバイス内に第1ドーピング濃度を有する第1半導体領域を提供するステップと、
前記既存の半導体デバイス内に前記第1領域に隣接する第2領域を提供するステップと、
前記自然降伏状態を作り出すように所定電圧を与えるステップと、
前記第1半導体領域及び前記第2領域の両端に前記所定電圧が印加されるときに前記第1半導体領域が完全に空乏化するように、前記第1半導体領域に対する幅を形成するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
空乏バンドを用いて所定電圧で電流を伝導する方法であって、
第1ドーピング濃度を有する第1半導体領域を提供するステップと、
前記第1半導体領域に隣接する第2領域を提供し、前記第1半導体領域及び前記第2領域の両端に前記所定電圧が印加されるときに前記空乏バンドが前記第1半導体領域を完全に包含するようにするステップとを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図5(e)】
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【図5(f)】
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【図5(g)】
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【図5(h)】
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【図5(i)】
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【図5(j)】
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【図5(k)】
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【図5(l)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【図8(d)】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図11(c)】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−540542(P2009−540542A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513335(P2009−513335)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/013191
【国際公開番号】WO2007/143208
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508356250)
【氏名又は名称原語表記】SILVER, Guy
【住所又は居所原語表記】20900 HomesteadRoad, #A5, Cupertino, CA 95014, U. S. A
【出願人】(508356261)
【氏名又は名称原語表記】WU, Juinerong
【住所又は居所原語表記】20900 HomesteadRoad, #A5, Cupertino, CA 95014, U. S. A
【Fターム(参考)】