説明

直流電圧変換装置及びその制御方法

【課題】MOSFETをスイッチング素子として使用する直流電圧変換装置において、サーマルシャットダウン時に生じるラッチアップを防止する。
【解決手段】直流電圧変換装置1は、ハイサイドMOSFETQ1と、ローサイドMOSFETQ2と、直流電圧変換装置1の温度が閾値を超えたことを検出する検出部(12、14、15)と、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2をスイッチングする制御信号を生成する制御部10と、MOSFETQ1及びQ2をスイッチングする制御信号を停止することにより直流電圧変換装置1の出力を停止する場合のうち、直流電圧変換装置1の温度が閾値を超えたことに応答して直流電圧変換装置1の出力を停止する場合、ハイサイドMOSFETQ1をスイッチングする制御信号を停止した後の所定期間、ローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持する保持部(11、16)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じられる実施態様は、ハイサイドMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)とローサイドMOSFETを備える直流電圧変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、直流電圧変換装置の概略図である。直流電圧変換装置90は、電源Vdとグランドとの間に接続されたハイサイドMOSFETQ10及びローサイドMOSFETQ11を有するハーフブリッジ回路と、コイルLと、コンデンサCとを備える。
【0003】
コイルLの一方の端子は、ハイサイドMOSFETQ10とローサイドMOSFETQ11との接続点であるスイッチノード91に接続され、コイルLの他方の端子から出力電圧Voが出力される。コンデンサCは、コイルLの他方の端子とグランドの間に接続される。
【0004】
ハイサイドMOSFETQ10がオン状態になり、ローサイドMOSFETQ11がオフ状態になると、電源VdからハイサイドMOSFETQ10を経由してコイルL及びコンデンサCに電流が流れ込む。コンデンサCに電流が流れ込むと、コンデンサCが電荷を蓄えることによって出力電圧Voが上昇する。
【0005】
ハイサイドMOSFETQ10がオフ状態になり、ローサイドMOSFETQ11がオン状態になると、コンデンサCに蓄えられている電荷が放出されることにより出力電圧Voが下降する。直流電圧変換装置90は、ハイサイドMOSFETQ10とローサイドMOSFETQ11とを交互にオンにすることにより、出力電圧Voを一定にする。
【0006】
なお、DC/DCコンバータを停止させているときに、DC/DCコンバータを構成するハイサイドスイッチ、ローサイドスイッチのうちのローサイドスイッチを一定時間、ON、OFFさせるDC/DCコンバータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−113496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
直流電圧変換装置には、サーマルシャットダウン機能を有するものがある。サーマルシャットダウン機能とは、直流電圧変換装置の温度が閾値を超えたとき、スイッチング素子を制御する制御信号の出力を停止し、スイッチング素子をオフ状態にする機能である。
【0009】
ここで、スイッチング素子として図1に示すようにMOSFETQ10及びQ11を使用すると、MOSFETQ10及びQ11の直列接続により寄生サイリスタが構成される。サーマルシャットダウン機能によってMOSFETQ10及びQ11を同時にオフにすると、コイルLに残っているエネルギーとQ11のボディーダイオードとによってスイッチノード91に負サージが発生し、寄生サイリスタが動作してラッチアップする恐れがある。サーマルシャットダウン時は、装置が高温になるほど負荷へ多く通電しているため、コイルLに残っているエネルギーが高いためである。寄生サイリスタが動作してラッチアップすると、電源Vdとグランドが短絡され、Q10及びQ11に過電流が流れて直流電圧変換装置が破壊される恐れがある。
【0010】
実施態様に係る装置及び方法は、MOSFETをスイッチング素子として使用するブリッジ回路を有する直流電圧変換装置において、サーマルシャットダウン時にブリッジ回路に生じるラッチアップを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある実施形態による直流電圧変換装置は、ハイサイドMOSFETと、ローサイドMOSFETと、直流電圧変換装置の温度が閾値を超えたことを検出する検出部と、ハイサイドMOSFET及びローサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を生成する制御部と、ハイサイドMOSFET及びローサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止することにより直流電圧変換装置の出力を停止する場合のうち、直流電圧変換装置の温度が閾値を超えたことに応答して直流電圧変換装置の出力を停止する場合、ハイサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止した後の所定期間、ローサイドMOSFETをオン状態に保持する保持部を備える。
【0012】
他の実施形態によれば、ハイサイドMOSFETと、ローサイドMOSFETとを有する直流電圧変換装置の制御方法が提供される。制御方法は、直流電圧変換装置の温度が閾値を超えたことを検出し、ハイサイドMOSFET及びローサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止することにより直流電圧変換装置の出力を停止する場合のうち、直流電圧変換装置の温度が閾値を超えたことに応答して直流電圧変換装置の出力を停止する場合、ハイサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止した後の所定期間、ローサイドMOSFETをオン状態に保持する。
【発明の効果】
【0013】
本件開示の装置又は方法によれば、MOSFETをスイッチング素子として使用するブリッジ回路を有する直流電圧変換装置において、サーマルシャットダウン時にブリッジ回路の生じるラッチアップを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】直流電圧変換装置の概略図である。
【図2】直流電圧変換装置の第1例の構成図である。
【図3】(A)〜(C)は、図2に示す直流電圧変換装置の動作の説明図である。
【図4】直流電圧変換装置の第2例の構成図である。
【図5】(A)〜(C)は、図4に示す直流電圧変換装置の動作の説明図である。
【図6】直流電圧変換装置の第3例の構成図である。
【図7】(A)〜(C)は、図6に示す直流電圧変換装置の動作の説明図である。
【図8】直流電圧変換装置の第4例の構成図である。
【図9】(A)〜(D)は、図8に示す直流電圧変換装置の動作の説明図である。
【図10】直流電圧変換装置の第5例の構成図である。
【図11】(A)〜(D)は、図10に示す直流電圧変換装置の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について説明する。図2は、直流電圧変換装置の第1例の構成図である。図示の通り直流電圧変換装置1は、コンバータ2と、コイルLと、コンデンサCを備える。なお、直流電圧変換装置1は、コンバータ2、コイルL、コンデンサCを複数備えていてもよい。他の実施例においても同様である。
【0016】
また、コンバータ2は、電源Vdとグランドとの間に接続されたハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2を有するハーフブリッジ回路と、制御部10と、スイッチ駆動部11と、検出部12と、保持部13を備える。なお、コンバータ2は、本実施例又は他の実施例においてコンバータ2の構成要素として記載される要素の一部又は全てを複数個備えていてもよい。
【0017】
ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2は、それぞれpチャネルMOSFET及びnチャネルMOSFETである。コイルLの一方の端子は、MOSFETQ1及びQ2の接続点であるスイッチノード3に接続され、コイルLの他方の端子から出力電圧Voが出力される。コンデンサCは、コイルLの他方の端子とグランドの間に接続される。
【0018】
制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2のオン/オフを制御するスイッチング制御信号を生成する。言い換えると、スイッチング制御信号は、FETQ1及びQ2をスイッチング制御する制御信号である。スイッチ駆動部11は、スイッチング制御信号に基づいて、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2の各ゲート端子に印加する駆動電圧をオン又はオフすることによって、各FETQ1及びQ2をオン状態又はオフ状態にする。
【0019】
例えば、制御部10は、出力電圧Voを示すフィードバック信号に基づいてFETQ1及びQ2を交互にオン状態にし、出力電圧Voを一定に制御してよい。直流電圧変換装置1は、例えばコンデンサCの両端電圧を分圧してフィードバック信号を生成する分圧抵抗を備えてもよい。また、制御部10は、所定のデューティ比でFETQ1及びQ2を交互にオン状態にしてもよい。
【0020】
検出部12は、直流電圧変換装置1の温度が閾値Ttを超えたことを検出する。例えば、コンバータ2は集積回路チップで形成されてよく、この場合、検出部12は、チップ内部の温度を検出して、検出された温度が閾値Ttを超えるか否かを検出してよい。以下の説明において、検出部12において検出される温度を「装置温度Tm」と表記することがある。
【0021】
コンバータ2は、装置温度Tmが閾値Ttを超えた場合に、制御部10からのスイッチング制御信号の出力を停止して、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2をオフ状態にするサーマルシャットダウン処理を実行する。サーマルシャットダウン処理によって直流電圧変換装置1は、出力電圧Voの出力を停止する。
【0022】
制御部10は、装置温度Tmが閾値Ttを超えた場合に、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止することにより、ハイサイドMOSFETQ1をオフ状態にする。
【0023】
保持部13は、サーマルシャットダウン処理が行われる場合にのみ、装置温度Tmが閾値Ttを超えたことに応答してハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力が停止した後のある期間、ローサイドMOSFETQ2をオン状態にする。
【0024】
例えば、保持部13は、ローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持させることを指示する保持指示信号を制御部10へ出力することによって、ローサイドMOSFETQ2をオン状態にするスイッチング制御信号の出力を保持する。
【0025】
一方で、サーマルシャットダウン以外の理由で制御部10がスイッチング制御信号の出力を停止する場合には、保持部13は、ローサイドMOSFETをオン状態にする上記処理は実施しない。以下の他の実施例においても同様である。
【0026】
この場合、制御部10は予め定められたシーケンスに従ってスイッチング制御信号の出力を停止する。予め定められたシーケンスの例としては、制御部10は両サイドのMOSFETを同時にオフする。スイッチング制御信号の出力を停止するその他の場合の例としては、例えば、直流電圧変換装置1の通常の動作停止時が挙げられる。
【0027】
続いて、保持部13によるMOSFETQ2のオン状態の保持動作について説明する。図3の(A)〜図3の(C)は、図2に示す直流電圧変換装置1の動作の説明図である。図3の(A)は装置温度Tmの時間変化を示し、図3の(B)はハイサイドMOSFETQ1のオン/オフ状態を示し、図3の(C)はローサイドMOSFETQ2のオン/オフ状態を示す。
【0028】
時刻t1に至るまで、制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2を交互にオンにするスイッチング制御を行っている。時刻t1になったとき、検出部12は、装置温度Tmが閾値Ttを超えたことを検出する。
【0029】
時刻t1において制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止することにより、ハイサイドMOSFETQ1をオフ状態にする。
【0030】
時刻t1において保持部13は、ローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持させる。例えば、保持部13は、ローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持させる保持指示信号を制御部10へ出力する。制御部10は、期間ΔTに亘ってローサイドMOSFETQ2をオン状態にするスイッチング制御信号を出力する。その結果、ローサイドMOSFETQ2は、ハイサイドMOSFETQ1がオン状態からオフ状態へ変わった後、期間ΔTに亘ってオン状態を保持する。
【0031】
期間ΔTの経過後、制御部10は、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止することによりローサイドMOSFETQ2をオフ状態にする。例えば、期間ΔTの経過後に保持部13が保持指示信号の出力を停止し、その結果、制御部10は、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止してよい。
【0032】
本実施例によれば、サーマルシャットダウン処理によってハイサイドMOSFETQ1がオフ状態になった場合に、それ以降期間ΔTに亘ってローサイドMOSFETQ2がオン状態になる。このため、装置が高温になるほど負荷へ多く通電したためコイルLに残っているエネルギーが高いサーマルシャットダウン時には、コイルLに残ったエネルギーが、ローサイドMOSFETQ2を経由して、すなわちローサイドMOSFETQ2のボディーダイオードを経由せずに流れる電流によって放出されるので、FETQ1及びQ2からなる寄生サイリスタのラッチアップを防止することができる。
【0033】
ローサイドMOSFETQ2のオン期間ΔTの設計値は、期間ΔT内にコイルLが保持するエネルギーが十分に小さくなるように定められていることが望ましい。例えば、オン期間ΔTの設計値は、期間ΔT内にコイルLの保持エネルギーが殆ど全て放出されるように定められていてよい。
【0034】
本実施例によれば、保持部13は、サーマルシャットダウン処理が行われる場合にのみ、ローサイドMOSFETQ2のオン状態を保持する処理を実施する。このため、通常の電源停止時などの場合に、無用にローサイドMOSFETQ2がオン状態を保持されることが防止される。すなわち、必ずしもコイルLに残っているエネルギーが高くない通常の停止時には、両サイドのMOSFETを例えば同時にオフするため、直流電圧発生装置は制御の応答性を高く保つことができる。
【0035】
ローサイドMOSFETがオン状態のときに、何らかの理由で直流電圧変換装置1の出力端子に過電圧が印加されると、ローサイドMOSFETQ2に過電流が流れ、FETQ2が破損する恐れがある。保持部13が無用にローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持しないことによって、かかる過電圧によってローサイドMOSFETQ2が破損される機会を低減することができる。
【0036】
さらに本実施例によれば、サーマルシャットダウン以外の直流電圧変換装置1の出力停止時には、保持部13が無用にローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持しないので、早期に直流電圧変換装置1の出力を再開することができる。
【0037】
次に、直流電圧変換装置1の他の構成例を説明する。図4は、直流電圧変換装置の第2例の構成図である。図2に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照符号を付する。同一の参照符号が付された構成要素の動作は、特に説明しない限り同じである。
【0038】
コンバータ2は、第1検出部14と第2検出部15を備える。第1検出部14は、装置温度Tmが第1閾値Tt1を超えたことを検出する。第2検出部15は、装置温度Tmが第2閾値Tt2を超えたことを検出する。ここで第2閾値Tt2は、第1閾値Tt1よりも高い温度に予め定められている。例えば、第1閾値Tt1と第2閾値Tt2との温度差は、摂氏1〜10度の範囲内のいずれかの値であってよい。
【0039】
装置温度Tmが第1閾値Tt1を超えたことを第1検出部14が検出した場合、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号が停止する。例えば、保持部13は、装置温度Tmが第1閾値Tt1を超えた場合、制御部10に、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止させる停止指示信号を出力してよい。または、制御部10が第1検出部14の検出信号を受信して、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止させてもよい。
【0040】
また、装置温度Tmが第1閾値Tt1を超えたことを第1検出部14が検出した場合、保持部13は、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力が停止した後に、ローサイドMOSFETをオン状態に保持する。例えば、保持部13は、上記保持指示信号を制御部10へ出力することによって、ローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持する。
【0041】
その後、装置温度Tmが第2閾値Tt2を超えたことを第2検出部15が検出した場合、保持部13は、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力保持を解除する。例えば、保持部13は保持指示信号の出力を停止する。その結果、制御部10は、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止し、ローサイドMOSFETQ2はオフ状態になる。
【0042】
このようにしてローサイドMOSFETQ2は、装置温度Tmが第1閾値Tt1を超えることによりハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力が停止してから装置温度Tmが第2閾値Tt2を超えるまでのある期間の間、オン状態に保持される。
【0043】
続いて、保持部13によるMOSFETQ2のオン状態の保持動作について説明する。図5の(A)〜図5の(C)は、図4に示す直流電圧変換装置1の動作の説明図である。図5の(A)は装置温度Tmの時間変化を示し、図5の(B)はハイサイドMOSFETQ1のオン/オフ状態を示し、図5の(C)はローサイドMOSFETQ2のオン/オフ状態を示す。
【0044】
時刻t1に至るまで、制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2を交互にオンにするスイッチング制御を行っている。時刻t1になったとき、第1検出部14は、装置温度Tmが第1閾値Tt1を超えたことを検出する。
【0045】
時刻t1において制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止する。一方で、時刻t1において保持部13は、ローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持させる。その結果、ローサイドMOSFETQ2は、ハイサイドMOSFETQ1がオン状態からオフ状態へ変わった後に時刻t2に至るまでオン状態を保持する。
【0046】
時刻t2において第2検出部15は、装置温度Tmが第2閾値Tt2を超えたことを検出する。時刻t2において制御部10は、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止することによりローサイドMOSFETQ2をオフ状態にする。
【0047】
本実施例によれば、装置温度Tmを検出する第1検出部14及び第2検出部15によって、サーマルシャットダウン開始後のある期間の経過後に、ローサイドMOSFETQ2をオフ状態にするトリガを生成することができる。このため、ローサイドMOSFETQ2をオフ状態にする時期を判定するための計時回路を省くことができる。
【0048】
次に、直流電圧変換装置1の他の構成例を説明する。図6は、直流電圧変換装置1の第3例の構成図である。図2に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照符号を付する。同一の参照符号が付された構成要素の動作は、特に説明しない限り同じである。
【0049】
コンバータ2は、遅延部16を備える。遅延部16は、サーマルシャットダウン処理が行われる場合にのみ、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力が停止した後の一定期間Tの間、ローサイドMOSFETQ2をオンにする駆動電圧を出力する。遅延部16は保持部の一例である。
【0050】
したがって、装置温度Tmが閾値Ttを超えた場合に、制御部10が、ローサイドMOSFETQ2の両方のスイッチング制御信号の出力を停止しても、ハイサイドMOSFETQ1がオフになった後の一定期間Tの間、ローサイドMOSFETQ2はオン状態に保持される。一定期間Tが経過した後は、遅延部16は、スイッチ駆動部11から出力電圧をそのままローサイドMOSFETQ2へ印加する。制御部10が、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止していた場合、ローサイドMOSFETQ2はオフになる。
【0051】
遅延部16は、サーマルシャットダウン以外の理由で制御部10がスイッチング制御信号の出力を停止する場合には、スイッチ駆動部11から出力電圧をそのままローサイドMOSFETQ2へ印加する。
【0052】
続いて、遅延部16によるMOSFETQ2のオン状態の保持動作について説明する。図7の(A)〜図7の(C)は、図6に示す直流電圧変換装置1の動作の説明図である。図7の(A)は装置温度Tmの時間変化を示し、図7の(B)はハイサイドMOSFETQ1のオン/オフ状態を示し、図7の(C)はローサイドMOSFETQ2のオン/オフ状態を示す。
【0053】
時刻t1に至るまで、制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2を交互にオンにするスイッチング制御を行っている。時刻t1になったとき、検出部12は、装置温度Tmが閾値Ttを超えたことを検出する。
【0054】
時刻t1において制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止する。遅延部16は、時刻t1からローサイドMOSFETQ2をオン状態にする駆動電力を出力する。また、遅延部16は、期間Tの計時を開始する。
【0055】
期間Tが経過した時刻t2において遅延部16は、スイッチ駆動部11から出力電圧をそのままローサイドMOSFETQ2へ印加する。この時点では、制御部10が、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止しており、ローサイドMOSFETQ2はオフになる。
【0056】
本実施例によれば、サーマルシャットダウン開始後にローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持する期間長を正確に設定することが可能となる。したがって、例えばコイルLに保持されたエネルギーが十分に低くなる前に両MOSFETQ1及びQ2が同時にオフになってしまい、ラッチアップ状態になる恐れを回避することができる。
【0057】
なお、上記説明において遅延部16は、ローサイドMOSFETQ2をオンにする駆動電力を出力する。他の実施例において遅延部16は、上記期間Tの間スイッチ駆動部11に、ローサイドMOSFETQ2をオンにする駆動電力を出力させる指示信号を出力してもよい。
【0058】
また、他の実施例において遅延部16は、期間Tの間、制御部10に代わって、スイッチ駆動部11に、ローサイドMOSFETQ2をオンにするスイッチング制御信号を与えてもよい。また、他の実施例において遅延部16は、期間Tの間、制御部10にローサイドMOSFETQ2をオンにするスイッチング制御信号を出力させる指示信号を出力してもよい。以下の実施例においても同様である。
【0059】
次に、直流電圧変換装置1の他の構成例を説明する。図8は、直流電圧変換装置1の第4例の構成図である。図6に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照符号を付する。同一の参照符号が付された構成要素の動作は、特に説明しない限り同じである。
【0060】
コンバータ2は、内部クロックを発生させるクロック発生部17を備える。遅延部16は、同期部18を備える。同期部18は、内部クロックを所定数n回カウントすることによって、ローサイドMOSFETQ2をオンに保持する一定期間Tが経過したか否かを判定する。
【0061】
したがって、クロック周期をTcとすると一定期間Tの長さは、n×Tcによって与えられる。コンバータ2にクロック発生部17を設けることに代えて、同期部18は、コンバータ2の外部から入力される外部クロックをカウントしてもよい。
【0062】
遅延部16は、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力が停止した後の上記期間Tの間、スイッチ駆動部11に、ローサイドMOSFETQ2をオンにする駆動電力を出力させる指示信号を出力する。このとき、同期部18は内部クロックのカウントを開始する。
【0063】
同期部18が内部クロックを所定数n回カウントすると、遅延部16は、スイッチ駆動部11への上記指示信号の出力を停止する。この時点で、制御部10が、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止していた場合、ローサイドMOSFETQ2はオフになる。
【0064】
続いて、遅延部16によるMOSFETQ2のオン状態の保持動作について説明する。図9の(A)〜図9の(D)は、図8に示す直流電圧変換装置1の動作の説明図である。図9の(A)は装置温度Tmの時間変化を示し、図9の(B)はハイサイドMOSFETQ1のオン/オフ状態を示し、図9の(C)はローサイドMOSFETQ2のオン/オフ状態を示し、図9の(D)は内部クロックのタイムチャートを示す。
【0065】
時刻t1に至るまで、制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2を交互にオンにするスイッチング制御を行っている。時刻t1になったとき、検出部12は、装置温度Tmが閾値Ttを超えたことを検出する。
【0066】
時刻t1において制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止する。遅延部16は、時刻t1からローサイドMOSFETQ2をオン状態にする。また、同期部18は内部クロックのカウントを開始する。
【0067】
時刻t2において同期部18は、所定数n個の内部クロックのカウントを完了する。遅延部16は、スイッチ駆動部11に対してローサイドMOSFETQ2をオンにさせる指示を停止する。この時点では、制御部10が、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止しており、ローサイドMOSFETQ2はオフになる。
【0068】
本実施例によれば、サーマルシャットダウン開始後にローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持する期間Tの経過を、クロック信号に基づいて測定することができる。従って、例えば時定数回路などを使用して測定する場合に比べて、期間Tを正確に測定することが可能となる。また時定数回路などに比べて期間Tの設定が容易である。
【0069】
次に、直流電圧変換装置1の他の構成例を説明する。図10は、直流電圧変換装置の第5例の構成図である。図2に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照符号を付する。同一の参照符号が付された構成要素の動作は、特に説明しない限り同じである。コンバータ2は、コイルLを流れるコイル電流を検出する電流検出部19を備える。
【0070】
装置温度Tmが閾値Ttを超えたことを検出部12が検出した場合、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号が停止する。例えば、保持部13は、装置温度Tmが閾値Ttを超えた場合、制御部10に、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止させる停止指示信号を出力してよい。または、制御部10が検出部12の検出信号を受信して、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止させてもよい。
【0071】
また、装置温度Tmが閾値Ttを超えたことを検出部12が検出した場合、保持部13は、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力が停止した後に、ローサイドMOSFETをオン状態に保持する。例えば、保持部13は、上記保持指示信号を制御部10へ出力することによって、ローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持する。
【0072】
保持部13は、電流検出部19により測定されたコイル電流が閾値Itを下回るか否かを判定する。コイル電流が閾値Itを下回った場合、保持部13は、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力保持を解除する。制御部10は、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止し、ローサイドMOSFETQ2はオフ状態になる。
【0073】
続いて、保持部13によるMOSFETQ2のオン状態の保持動作について説明する。図11の(A)〜図11の(D)は、図10に示す直流電圧変換装置1の動作の説明図である。図11の(A)は装置温度Tmの時間変化を示し、図11の(B)はハイサイドMOSFETQ1のオン/オフ状態を示し、図11の(C)はローサイドMOSFETQ2のオン/オフ状態を示し、図11の(D)はコイル電流の時間変化を示す。
【0074】
時刻t1〜t4の間、制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1及びローサイドMOSFETQ2を交互にオンにするスイッチング制御を行う。例えば、時刻t1及びt3においてハイサイドMOSFETQ1がオンになりローサイドMOSFETQ2がオフになることにより、コイル電流は増加する。
【0075】
また時刻t2においてハイサイドMOSFETQ1がオフになりローサイドMOSFETQ2がオンになることにより、コイル電流は低下する。時刻t4になったとき、検出部12は、装置温度Tmが閾値Ttを超えたことを検出する。
【0076】
時刻t4において制御部10は、ハイサイドMOSFETQ1のスイッチング制御信号の出力を停止する。一方で、時刻t4において保持部13は、ローサイドMOSFETQ2をオン状態に保持させる。その結果、ローサイドMOSFETQ2は、ハイサイドMOSFETQ1がオン状態からオフ状態へ変わった後に、時刻t5に至るまでオン状態を保持する。
【0077】
時刻t5において保持部13は、コイル電流が閾値Itを下回ったことを検出する。時刻t5において制御部10は、ローサイドMOSFETQ2のスイッチング制御信号の出力を停止することによりローサイドMOSFETQ2をオフ状態にする。
【0078】
本実施例によれば、コイル電流が十分に小さくなってから、すなわちコイルLに保持されたエネルギーが十分に小さくなってから、ローサイドMOSFETQ2をオフすることができる。したがって、コイルLに保持されたエネルギーが十分に低くなる前に両MOSFETQ1及びQ2が同時にオフになってしまうことにより、ラッチアップ状態になる恐れを回避することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 直流電圧変換装置
2 コンバータ
10 制御部
11 スイッチ駆動部
12 検出部
13 保持部
Q1 ハイサイドMOSFET
Q2 ローサイドMOSFET
Vd 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧変換装置であって、
ハイサイドMOSFETと、
ローサイドMOSFETと、
前記直流電圧変換装置の温度が閾値を超えたことを検出する検出部と、
前記ハイサイドMOSFET及び前記ローサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を生成する制御部と、
前記ハイサイドMOSFET及び前記ローサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止することにより前記直流電圧変換装置の出力を停止する場合のうち、
前記温度が閾値を超えたことに応答して前記直流電圧変換装置の出力を停止する場合、前記ハイサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止した後の所定期間、前記ローサイドMOSFETをオン状態に保持する保持部と、
を備える直流電圧変換装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記温度が第1閾値を超えたことを検出する第1検出部と、前記温度が第1閾値よりも高い第2閾値を超えたことを検出する第2検出部と、を備え、
前記保持部は、前記温度が前記第1閾値を超えたことに応答して前記ハイサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止させ、前記温度が前記第1閾値を超えてから前記温度が前記第2閾値を超えるまで前記ローサイドMOSFETをオン状態に保持することを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記ハイサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止した後の所定期間、前記ローサイドMOSFETをオン状態に保持することを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換装置。
【請求項4】
クロック信号を発生するクロック発生回路を備え、
前記保持部は、クロック信号をカウントすることにより前記所定期間を計時することを特徴とする請求項3に記載の直流電圧変換装置。
【請求項5】
前記ハイサイドMOSFETと前記ローサイドMOSFETとの接続点と負荷との間に接続されるコイルを流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記保持部は、前記コイルを流れる電流が所定値以下になるまで、前記ローサイドMOSFETをオン状態に保持することを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換装置。
【請求項6】
ハイサイドMOSFETと、ローサイドMOSFETとを有する直流電圧変換装置の制御方法であって、
前記直流電圧変換装置の温度が閾値を超えたことを検出し、
前記ハイサイドMOSFET及び前記ローサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止することにより前記直流電圧変換装置の出力を停止する場合のうち、前記温度が閾値を超えたことに応答して前記直流電圧変換装置の出力を停止する場合、前記ハイサイドMOSFETをスイッチングする制御信号を停止した後の所定期間、前記ローサイドMOSFETをオン状態に保持することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−170232(P2012−170232A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29333(P2011−29333)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】