説明

研磨液及びそれを用いる研磨方法

【課題】 高研磨速度で、ウェハ面内における均一な研磨を達成し、均一性の高いLSIの作製に有用な金属用研磨液、及び、そのような金属用研磨液を用いた研磨速度と研磨の均一性に優れた化学的機械的研磨方法を提供する。
【解決手段】 半導体デバイス製造の化学的機械的平坦化に使用する金属用研磨液であって、研磨液1L中に0.0001ないし0.01molの複素環化合物を含有し、〔(研磨温度40℃における研磨速度)/(研磨温度25℃における研磨速度)〕が1.05ないし1.5であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造に関するものであり、特に半導体デバイスの配線工程における金属用研磨液およびそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(以下LSIと記す)で代表される半導体デバイスの開発においては、小型化・高速化のため、近年配線の微細化と積層化による高密度化・高集積化が求められている。このための技術として化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下CMPと記す)等の種々の技術が用いられてきている。
CMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を研磨液で浸して、パッドに基盤(ウェハ)の表面を押しつけ、その裏面から所定の圧力(研磨圧力)を加えた状態で、研磨定盤及び基盤の双方を回転させ、発生する機械的摩擦により基盤の表面を平坦化するものである。
CMPに用いる金属用研磨溶液は、一般には砥粒(例えばアルミナ、シリカ)と酸化剤(例えば過酸化水素、過硫酸)とを含むものであって、酸化剤によって金属表面を酸化し、その酸化皮膜を砥粒で除去することで研磨していると考えられている。
【0003】
しかしながら、このような固体砥粒を含む金属用研磨液を用いてCMPを行うと、研磨傷(スクラッチ)、研磨面全体が必要以上に研磨される現象(シニング)、研磨金属面が平面状ではなく、中央のみがより深く研磨されて皿状のくぼみを生ずる現象(ディッシング)、金属配線間の絶縁体が必要以上に研磨されたうえ、複数の配線金属面表面が皿状の凹部を形成する現象(エロージョン)などが発生することがある。
このような従来の固体砥粒における問題点を解決するために、砥粒を含まなず、過酸化水素/リンゴ酸/ベンゾトリアゾール/ポリアクリル酸アンモニウムおよび水からなる金属用研磨液が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、半導体基体の凸部の金属膜が選択的にCMPされ、凹部に金属膜が残されて所望の導体パターンが得られるものの、従来の固体砥粒を含むよりもはるかに機械的に柔らかい研磨パッドとの摩擦によってCMPが進むため、十分な研磨速度が得難いという問題点を有している。
また、研磨パッドの劣化を抑える有機化合物を含有する化学機械研磨用水系分散体が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この研磨液によっても、配線部金属が過剰に研磨されて皿上に窪むディッシング現象に対する懸念がのこる。
【0004】
近年、生産性向上のため、LSI製造時のウェハ径が大型化しており、現在は直径200mm以上が汎用されており、300mm以上の大きさでの製造も開始され始めた。このようなウェハの大型化に伴い、ウェハ中心部と周辺部とでの研磨速度の差異が生じ易くなり、研磨の均一性を達成することが重要になってきている。
特に、金属配線形成工程のCMPでは、研磨が進行すると研磨ウェハ表面と研磨パッド表面の接触部の温度が上昇することが知られており、一般に研磨ウェハ表面と研磨パッド表面の摩擦を高めて高速に研磨するほど発熱が大きくなる。上記の如くウェハ径が大きくなるに従い、特に200mm以上においては、ウェハ中心部の熱が外部に逃げにくいため、ウェハ面内で温度分布を生じ、この温度差がさらなる研磨の不均一性につながることが懸念される。これに対し、研磨圧力を下げることにより研磨ウェハ表面と研磨パッド表面の摩擦力を下げると温度差による研磨の不均一性は緩和されるものの、研磨速度が低下するという問題が生じる。
これに対して、研磨時の系の温度を低下させてディッシング抑制を行う方法が記載されているが(例えば、特許文献3参照。)、プロセスコストが高く、汎用性に欠ける技術であった。このように、研磨速度と研磨の均一性を両立するのは困難であった。
【特許文献1】特開2001−127019号公報
【特許文献2】特開2001−279231公報
【特許文献3】特開平8−83780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高研磨速度で、ウェハ面内における均一な研磨を達成し、均一性の高いLSIの作製に有用な金属用研磨液、及び、そのような金属用研磨液を用いた研磨速度と研磨の均一性に優れた化学的機械的研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、研磨液中に0.0001ないし0.01mol/lの複素環化合物を含み、常温と40℃における研磨速度比を特定の範囲ないとすることで上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記の通りである。
【0007】
(1) 半導体デバイス製造の化学的機械的平坦化に使用する研磨液であって、研磨液1L中に0.0001ないし0.01molの複素環化合物を含有し、〔(研磨温度40℃における研磨速度)/(研磨温度25℃における研磨速度)〕が1.05ないし1.5であることを特徴とする金属用研磨液。
(2) 〔(研磨温度40℃における研磨速度)/(研磨温度25℃における研磨速度)〕が、1.05ないし1.3であることを特徴とする(1)に記載の金属用研磨液。
(3) 前記複素環化合物のウェハ研磨面への吸着量が、〔(温度40℃におけるウェハ研磨面への吸着量)/(温度25℃におけるウェハ研磨面への吸着量)〕≧0.9を満たすことを特徴とする(1)又は(2)に記載の金属用研磨液。
【0008】
(4) 前記金属用研磨液が2級または3級の窒素原子を含む有機酸を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の金属用研磨液。
(5) 前記金属用研磨液のpHが5ないし8であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の金属用研磨液。
(6) 前記金属用研磨液が1L中に0.1ないし5gのコロイダルシリカを含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の金属用研磨液。
(7) (1)〜(6)のいずれか1項に記載の金属用研磨液を、研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させ、被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨することを特徴とする化学的機械的研磨方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金属用研磨液及びそれを用いた研磨方法により、高い研磨速度とウェハ面内んにおける研磨の高い均一性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的態様について説明する。
本発明の好ましい態様の一つは、半導体デバイスの製造における化学的機械的研磨に用いる研磨液であって、研磨液中に0.0001ないし0.01mol/lの複素環化合物を含み、且つ、以下の式を満たす研磨速度比を達成する金属用研磨液である。
式:1.05≦〔(40℃における研磨速度)/(研磨温度25℃における研磨速度)〕≦1.5
さらに好ましい態様としては、該複素環化合物のウェハ研磨面への吸着量が(温度40℃におけるウェハ研磨面への吸着量/温度25℃におけるウェハ研磨面への吸着量)≧0.9を満たし、2級または3級の窒素原子を含む有機酸を含有し、研磨液のpHが5ないし8であって、研磨中に0.1ないし5g/lのコロイダルシリカを含むという特徴を有する金属用研磨液が挙げられる。
また、本発明の化学的機械的研磨方法は、このような金属用研磨液を、研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させ、被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨することを特徴とする。
【0011】
〔金属用研磨液〕
本発明の金属用研磨液は、構成成分として少なくとも特定量の複素環化合物を含有することを要し、さらに、有機酸、酸化剤及び砥粒を含有することが好ましく、通常は、各成分を溶解してなる水溶液に砥粒を分散させてなるスラリーの形態をとる。
本発明の金属用研磨液は、さらに他の成分を含有してもよく、好ましい成分として、界面活性剤、水溶性ポリマー、及び、その他の添加剤を挙げることができる。
金属用研磨液が含有する各成分については、以下に詳述するが、それぞれの成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
本発明において「金属用研磨液」とは、研磨に使用する組成(濃度)の研磨液のみならず、金属用研磨液の濃縮液をも包含するものとする。即ち、実際に使用される組成よりも溶媒、分散媒に対してより高濃度の成分を含み、使用時に必要により希釈して用いる研磨濃縮液も本発明では特に断りのない限り、研磨液と称する。
ここで、濃縮液または濃縮研磨液とは、研磨に使用する際の研磨液よりも、溶質の濃度が高く調製された研磨液を意味し、研磨に使用する際に、水または水溶液などで希釈して、研磨に使用されるものである。希釈倍率は、一般的には1〜20体積倍である。
本明細書において「濃縮液」とは、使用状態よりも溶媒、分散媒に対してより多くの有効成分を含む「濃厚な液」を意味する慣用表現にしたがって用いており、「蒸発などの物理的な濃縮操作の結果得られる液」の意味とは異なる用法で用いている。
【0013】
なお、金属用研磨液の濃縮液作製時に添加する成分のうち、室温での水に対する溶解度が5%未満のものの配合量は、成分の温度や経時による析出抑制の観点から、室温での水に対する溶解度の2倍以内とすることが好ましく、1.5倍以内とすることがより好ましい。
【0014】
(研磨速度)
まず、本発明の研磨液を用いた場合の研磨速度について説明する。
本発明の研磨液は、(研磨温度40℃における研磨速度)と(研磨温度25℃における研磨速度)との比が1.05ないし1.5であり、1.05ないし1.3であることがより好ましい。即ち、40℃における研磨速度は、25℃における研磨速度よりも所定量高いものである。
本発明の研磨速度は以下の条件で研磨を行い、算出する。
研磨装置:LGP−612 (LapmaSter SFT社)
ウェハ:基板上に厚み1μmの金属膜を形成した直径200mmのブランケットウェハ
研磨パッド:IC1400XY−K Groove (ロデール社)
研磨条件: 研磨圧力240g/cm2
研磨液供給速度200ml/l
研磨パッド/ウェハの回転数100/100rpm
ここで、研磨温度は、研磨液、研磨定盤、研磨ヘッドやウェハの温度調整によって25℃または40℃に制御する。
【0015】
本発明において、研磨温度とは研磨中にウェハ研磨面と接触する研磨パッド表面の温度のことを指し、研磨中に放射温度計を用いて測定した研磨パッド表面の平均温度を採用している。
研磨速度の算出:ブランケットウェハを60秒間研磨し、ウェハ面上の均等間隔の49箇所に対し、研磨前後での金属膜厚を電気抵抗値から換算して求め、それらを研磨時間で割って求めた値の平均値を研磨速度とする。
電気抵抗値の測定は、例えば、国際電気アルファ製のVR−120S等を用いることができる。
この研磨速度比は、後述する研磨液の組成物、なかでも、複素環化合物の配合量により容易に制御することができる。
【0016】
次に、本発明の研磨液の成分について説明する。
(複素環化合物)
本発明の金属用研磨液には、研磨対象の金属表面に不動態膜を形成する化合物として少なくとも1種の複素環化合物を0.0001ないし0.01mol含有することを要し、好ましくは0.0005ないし0.0005mol含有する。複素環化合物の含有量を上記範囲に制御することで本発明の優れた効果を得ることができる。
【0017】
「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。
ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子であり、さらに好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及びセレン原子であり、特に好ましくは、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子であり、最も好ましくは窒素原子、及び硫黄原子である。
【0018】
また、母核となる複素環について述べれば、複素環化合物の複素環の環員数は特に限定されず、単環化合物あっても縮合環を有する多環化合物であってもよい。単環の場合の員数は、好ましくは5〜7であり、特に好ましくは5である。縮合環を有する場合の環数は、好ましくは2または3である。
【0019】
これらの複素環として具体的に、以下のものが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
ピロール環、チオフェン環、フラン環、ピラン環、チオピラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、クロマン環、チオクロマン環、イソクロマン環、イソチオクロマン環、インドリン環、イソインドリン環、ピリンジン環、インドリジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリジン環、イソキノリン環、キノリン環、ナフチリジン環、フタラジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、ペリミジン環、フェナントロリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、アンチリジン環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアジン環、トリアゾール環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズチアジアゾール環、ベンズフロキサン環、ナフトイミダゾール環、ベンズトリアゾール環、テトラアザインデン環等が挙げられ、より好ましくはトリアゾール環、テトラゾール環が挙げられる。
【0020】
次に、上記複素環が有しうる置換基について述べる。
本発明で用いる複素環化合物に導入しうる置換基としては、例えば以下のものが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0021】
複素環が有しうる置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、ビシクロアルキル基のように多環アルキル基であっても、活性メチン基を含んでもよい)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、ヘテロ環基が挙げられる。
さらに、複数の置換基のうち2以上が互いに結合して環を形成してもよく、例えば、芳香環、脂肪族炭化水素環、複素環などを形成し、これらがさらに組み合わされて多環縮合環を形成することもでき、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環などが挙げられる。
【0022】
本発明で特に好ましく用いることができる複素環化合物の具体例としては、これらに限定されるものではないが以下のものが挙げられる。
すなわち、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールである。
【0023】
本発明で用いる複素環化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、本発明で用いる複素環化合物は、常法に従って合成できるほか、市販品を使用してもよい。
【0024】
(複素環化合物のウェハ表面への吸着量)
本発明では、前記複素環化合物のウェハ表面への吸着量が、〔(温度40℃におけるウェハ研磨面への吸着量)/(温度25℃におけるウェハ研磨面への吸着量)〕≧0.9を満たすことが好ましい。即ち、複素環化合物の吸着により研磨対象の金属表面に不動態膜が形成され、これが研磨速度比に影響を与えることに起因しており、複素環化合物の温度40℃における吸着量と20℃における吸着量が同等であるか、或いは、40℃における吸着量が10%程度少ないことが好ましい。
複素環化合物のウェハ研磨面への吸着量を上記範囲とすることが、前記した本発明の要件に係る研磨速度に影響するため、該化合物の吸着量の温度依存性を制御することは、〔(40℃における研磨速度)/(25℃における研磨速度)〕が1.05〜1.5である本発明の研磨液を得るために有効である。
【0025】
本発明では、複素環化合物のウェハ研磨面への吸着量の測定は以下の方法で行う。
温度25℃または40℃に保った複素環化合物を含む研磨液(事前に砥粒は取り除いておく)200mlに片の長さ4cm2の正方形ウェハ(事前に表面を塩酸で洗浄しておく)を60秒間浸漬して引き上げ、その後の研磨液中に存在する複素環化合物の濃度をICP−MSで定量し、ウェハを浸漬する前に求めておいた複素環化合物の初期濃度からその濃度を引くことでウェハ表面への吸着量を求める。
40℃、25℃における吸着量の比を上記範囲に制御するには、複素環化合物の濃度を上記範囲とすることに加え、複素環化合物自体も、吸着量の温度依存性を考慮してその構造を選択することが好ましく、前記の様にヘテロ原子の種類や数、母核の種類及び置換基の種類と数を適切に選べば良い。
【0026】
(酸化剤)
本発明の金属用研磨液は、研磨対象の金属を酸化できる化合物(酸化剤)を含有する。
具体的には、過酸化水素、過酸化物、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン水および銀(II)塩、鉄(III)塩が挙げられるが、過酸化水素がより好ましく用いられる。
酸化剤の添加量は、研磨に使用する際の金属用研磨液の1L中、0.003mol〜8molとすることが好ましく、0.03mol〜6molとすることがより好ましく、0.1mol〜4molとすることが特に好ましい。即ち、酸化剤の添加量は、金属の酸化が十分で高いCMP速度を確保する点で0.003mol以上が好ましく、研磨面の荒れ防止の点から8mol以下が好ましい。
【0027】
(有機酸)
本発明の金属用研磨液は、上記酸化剤とは別に有機酸を含有することが好ましい。ここでいう有機酸は、金属を酸化するための酸化剤とは構造が異なる化合物であり、前述の酸化剤として機能する酸を包含するものではない。
有機酸としては、水溶性のものが望ましく、具体的には、例えば、グリシン、L−アラニン、β−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−イソロイシン、L−アロイソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロシン、3,5−ジヨード−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、L−チロキシン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−L−システィン、4−アミノ酪酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、アザセリン、L−アルギニン、L−カナバニン、L−シトルリン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、クレアチン、L−キヌレニン、L−ヒスチジン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、エルゴチオネイン、L−トリプトファン、アクチノマイシンC1、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等のアミノ酸が好ましい。
【0028】
また、アミノ酸以外の好ましい有機酸の例としては、例えば以下の群から選ばれたものを挙げることができる。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸が挙げられ、これらは、アンモニウム塩やアルカリ金属塩等の塩の形態を持つものであってもよい。
【0029】
中でも特に、本発明では2級または3級の窒素原子を含む有機酸を少なくとも1種含むことが好ましい。
2級または3級の窒素原子を含む有機酸として、好ましくは下記一般式(A)または(B)で表される化合物が挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
一般式(A)および(B)において、Ra、Rb、Rcは炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数2〜7)のアルキル基であり、置換基を有していても無置換であってもよく、直鎖、分岐または環状のいずれでも良い。
【0032】
具体的な好ましい有機酸である、2級または3級の窒素原子を含む有機酸の例としては、以下示すような化合物〔例示化合物(I−1)〜(I−21)〕が挙げられる。但し、本発明における好ましい有機酸はこれらの例示化合物に限定されない。
【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
上記有機酸のなかでも、より好ましくは化合物I−3、I−5、I−7、I−10、I−21等が挙げられる。
本発明の研磨液に上記有機酸は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらの有機酸は、常法に従って合成できるほか、市販品を使用してもよい。
【0036】
上記有機酸の添加量は、研磨に使用する際の金属用研磨液の1L中、0.0005〜0.5molとすることが好ましく、0.005mol〜0.3molとすることがより好ましく、0.01mol〜0.1molとすることが特に好ましい。
【0037】
(砥粒)
本発明の金属用研磨液は砥粒を含有することが好ましい。好ましい砥粒としては、例えば、シリカ(沈降シリカ、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、合成シリカ)、セリア、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、酸化マンガン、炭化ケイ素、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリテレフタレートなどが挙げられるが、コロイダルシリカを用いることがより好ましい。
砥粒の添加量としては、使用する際の金属用研磨液1L中に0.05〜10gの砥粒を含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜5gの砥粒を含む。
また、砥粒は平均粒径5〜200nmが好ましく、特には10〜100nmが好ましい。
【0038】
(キレート剤)
本発明の金属用研磨液は、混入する多価金属イオンなどの悪影響を低減させるために、必要に応じてキレート剤(すなわち硬水軟化剤)を含有していてもよい。
キレート剤としては、カルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤である汎用の硬水軟化剤やその類縁化合物を用いることができ、必要に応じてこれらを2種以上併用しても良い。
キレート剤の添加量は混入する多価金属イオンなどの金属イオンを封鎖するのに充分な量であれば良く、例えば、研磨に使用する際の金属用研磨液の1L中、0.0003mol〜0.07molになるように添加する。
【0039】
(界面活性剤/親水性ポリマー)
本発明の研磨液は、界面活性剤や親水性ポリマーから選択される化合物を1種以上含有することが好ましい。
界面活性剤と親水性ポリマーは、いずれも被研磨面の接触角を低下させる作用を有して、均一な研磨を促す作用を有する。用いられる界面活性剤や親水性ポリマーとしては、以下の群から選ばれたものが好適である。
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩が挙げられ、両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができ、非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、また、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
さらに、親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール等のポリグリコール類、ポリビニルアルコール、ポロビニルピロリドン、アルギン酸等の多糖類、ポリメタクリル酸等のカルボン酸含有ポリマー等が挙げられる。
【0040】
なお、本発明の方法を適用する対象が、半導体集積回路用シリコン基板などの場合はアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、酸もしくはそのアンモニウム塩が望ましい。基体がガラス基板等である場合はその限りではない。上記例示化合物の中でもシクロヘキサノール、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリビニルアルコール、コハク酸アミド、ポロビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーがより好ましい。
【0041】
これらの界面活性剤や親水性ポリマーの重量平均分子量としては、500〜100000が好ましく、特には2000〜50000が好ましい。
界面活性剤や親水性ポリマーの添加量は、総量として、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
【0042】
界面活性剤及び/又は親水性ポリマーの添加量は、総量として、研磨に使用する際の金属用研磨液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。即ち、界面活性剤及び/又は親水性ポリマーの添加量は、充分な効果を得る上で、0.001g以上が好ましく、CMP速度の低下防止の点から10g以下が好ましい。また、これらの界面活性剤及び/又は親水性ポリマーの重量平均分子量としては、500〜100000が好ましく、特には2000〜50000が好ましい。
【0043】
(アルカリ剤/酸剤)
本発明の金属用研磨液はアルカリ剤及び/又は酸剤、さらには必用に応じて緩衝剤を含有することが好ましい。なお、アルカリ剤は緩衝剤としての機能を有する場合もある。
ここで、アルカリ剤及び/又は酸剤は、金属用研磨液のpHを後述するように所定のpHとすべく添加される。
【0044】
アルカリ剤(及び緩衝剤)としては、水酸化アンモニウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドなどの有機水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのようなアルカノールアミン類などの非金属アルカリ剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシル塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロキシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。
【0045】
アルカリ剤及び緩衝剤の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、四ホウ酸カリウム、o−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(サリチル酸ナトリウム)、o−ヒドロキシ安息香酸カリウム、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(5−スルホサリチル酸ナトリウム)、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸カリウム(5−スルホサリチル酸カリウム)、水酸化アンモニウムなどを挙げることができる。
特に好ましいアルカリ剤として水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドである。
酸剤としては、硝酸、硫酸、りん酸などの無機酸を好ましく挙げることができる。
【0046】
アルカリ剤及び/又は酸剤の添加量としては、pHが好ましい範囲に維持される量であればよく、研磨に使用する際の金属用研磨液の1L中、0.0001mol〜1.0molとすることが好ましく0.003mol〜0.5molとすることがより好ましい。
研磨に使用する際の金属用研磨液のpHは3〜12が好ましく、より好ましくは4〜9であり、特に5〜8が好ましい。この範囲において本発明の金属液は特に優れた効果を発揮する。上記アルカリ剤(緩衝剤)、酸剤によって研磨液のpHを上記好ましい範囲に調整するものである。
【0047】
(配線金属原材料)
本発明においては、研磨する対象である半導体が、銅金属及び/又は銅合金からなる配線を持つLSIであることが好ましく、特に銅合金が好ましい。更には、銅合金の中でも銀を含有する銅合金が好ましい。銅合金に含有される銀含量は、40質量%以下が好ましく、特には10質量%以下、さらには1質量%以下が好ましく、0.00001〜0.1質量%の範囲である銅合金において最も優れた効果を発揮する。
【0048】
(配線の太さ)
本発明においては、研磨する対象である半導体が、例えばDRAMデバイス系ではハーフピッチで0.15μm以下で特には0.10μm以下、更には0.08μm以下、一方、MPUデバイス系では0.12μm以下で特には0.09μm以下、更には0.07μm以下の配線を持つLSIであることが好ましい。これらのLSIに対して、本発明の研磨液は特に優れた効果を発揮する。
【0049】
(バリア金属)
本発明においては、半導体が銅金属及び/または銅合金からなる配線と層間絶縁膜との間に、銅の拡散を防ぐ為のバリア層を設けることが好ましい。バリア層としては低抵抗のメタル材料がよく、特にはTiN、TiW、Ta、TaN、W、WNが好ましく、中でもTa、TaNが特に好ましい。
【0050】
(研磨方法)
金属用研磨液は、濃縮液であって使用する際に水を加えて希釈して使用液とする場合、または、各成分が次項に述べる水溶液の形態でこれらを混合し、必要により水を加え希釈して使用液とする場合、あるいは使用液として調製されている場合がある。本発明の金属用研磨液を用いた研磨方法は、いずれの場合にも適用でき、研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨する研磨方法である。
研磨する装置としては、被研磨面を有する半導体基板等を保持するホルダーと研磨パッドを貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)研磨定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。研磨条件には制限はないが、研磨定盤の回転速度は基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨面(被研磨膜)を有する半導体基板の研磨パッドへの押しつけ圧力は、5〜500g/cm2であることが好ましく、研磨速度のウェハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、12〜240g/cm2であることがより好ましい。
【0051】
(研磨液供給方法)
本発明では対象金属を研磨する間、研磨定盤上の研磨パッドに金属用研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。
【0052】
本発明では濃縮された金属用研磨液に水または水溶液を加え希釈して用いることもできる。希釈方法としては、例えば、濃縮された金属用研磨液を供給する配管と水または水溶液を供給する配管を途中で合流させて混合し、希釈された金属用研磨液を研磨パッドに供給する方法などを挙げることができる。その場合の混合は、圧力を付した状態で狭い通路を通して液同士を衝突混合する方法、配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法、配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など通常に行われている方法を用いることができる。
【0053】
また、他の希釈方法としては、金属用研磨液を供給する配管と水または水溶液を供給する配管を独立に設け、それぞれから所定量の液を研磨パッドに供給し、研磨パッドと被研磨面の相対運動により混合する方法する方法も本発明に用いることが出来る。
さらに、1つの容器に所定量の濃縮された金属用研磨液と水または水溶液を入れて混合し、所定の濃度に希釈した後に、その混合液を研磨パッドに供給する方法も本発明に適用することが出来る。
【0054】
これらの方法以外に、金属用研磨液が含有すべき成分を少なくとも2つの構成成分に分けて、それらを使用する際に、水または水溶液を加え希釈して研磨パッドに供給する方法も本発明に用いることが出来る。この場合、酸化剤を含む成分と酸を含有する成分とに分割して供給する事が好ましい。
例えば、酸化剤を1つの構成成分(A)とし、酸、添加剤、界面活性剤及び水を1つの構成成分(B)とし、それらを使用する際に水または水溶液で構成成分(A)と構成成分(B)を希釈して使用する。この場合、構成成分(A)と構成成分(B)と水または水溶液をそれぞれ供給する3つの配管が必要であり、3つの配管を研磨パッドに供給する1つの配管に結合し、その配管内で混合してもよく、2つの配管を結合してから他の1つの配管を結合して混合してもよい。例えば、溶解しにくい添加剤を含む構成成分と他の構成成分を混合し、混合経路を長くして溶解時間を確保してから、さらに水または水溶液の配管を結合することで研磨液を供給することも可能である。
また、上記の3つの配管をそれぞれ研磨パッドに導き研磨パッドと被研磨面の相対運動により混合して供給してもよいし、1つの容器に3つの構成成分を混合した後に、その混合液を研磨パッドに供給してもよい。さらに、金属用研磨液を濃縮液とし、希釈水を別にして研磨面に供給してもよい。
【0055】
〔パッド〕
本発明の金属用研磨液を用いて化学的機械的研磨方法を実施する際に用いる研磨用のパッドには特に制限はなく、無発泡構造パッドでも発泡構造パッドでもよい。前者はプラスチック板のように硬質の合成樹脂バルク材をパッドに用いるものである。また、後者は更に独立発泡体(乾式発泡系)、連続発泡体(湿式発泡系)、2層複合体(積層系)の3つがあり、特には2層複合体(積層系)が好ましい。発泡は、均一でも不均一でもよい。
更に研磨に用いる砥粒(例えば、セリア、シリカ、アルミナ、樹脂など)を含有したものでもよい。また、それぞれに硬さは軟質のものと硬質のものがあり、どちらでもよく、積層系ではそれぞれの層に異なる硬さのものを用いることが好ましい。材質としては不織布、人工皮革、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート等が好ましい。また、研磨面と接触する面には、格子溝/穴/同心溝/らせん状溝などの加工を施してもよい。
【0056】
〔ウェハ〕
本発明の研磨液でCMPを行なう対象ウェハには特に制限はなく、いずれのウェハにも適用しうるが、なかでも径が200mm以上のウェハに適用することが好ましく、特に300mm以上が好ましい。即ち、研磨面積が大きく、温度勾配が生じやすいために研磨の均一性が達成し難い300mm以上のウェハに適用される場合、顕著に本発明の効果を発揮するといえる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<実施例1>
下記表1に示す研磨液101から109を調製し、研磨試験及び評価を行った。
(研磨液の調製)
複素環化合物 (化合物種と添加量は表1に示す)
有機酸(化合物I−7) 0.0635mol/L
過酸化水素(酸化剤) 9g/L
コロイダルシリカ(平均粒子径40nm) 2g/L
純水を加えて全量 1000mL
pH(アンモニア水と硫酸で調整) 6.5
【0058】
(研磨試験)
以下の条件で研磨を行って研磨速度及びウェハ面内の研磨の均一性を算出した。
研磨装置:LGP−612(LapmaSter SFT社)
ウェハ:基板上に厚み1μmの銅膜を形成した直径200mmのブランケットウェハ
研磨パッド:IC1400XY−K Groove(ロデール社)
研磨条件:研磨圧力240g/cm2
研磨液供給速度200ml/l
研磨パッド/ウェハの回転数100/100rpm
研磨温度:研磨液、研磨定盤、研磨ヘッド及びウェハ温度を調整して、研磨中のウェハ研磨パッド表面の平均温度を25℃及び40℃に合わせた。研磨パッド表面の温度は、研磨中に放射温度計を用いて測定した。
【0059】
(評価方法)
研磨速度の算出:ブランケットウェハを60秒間研磨し、ウェハ面上の均等間隔の49箇所に対し、研磨前後での金属膜厚を電気抵抗値から換算して求め、それらを研磨時間で割って求めた値の平均値を研磨速度とした。
電気抵抗値は国際電気アルファ製のVR−120Sで測定した。
【0060】
(ウェハ面内の研磨の均一性)
上記方法でウェハ面上の均等間隔の49箇所それぞれに対して求めた研磨速度から平均研磨速度、最大研磨速度及び最小研磨速度を求め、
以下の式によりウェハ面内の研磨の均一性を見積もった。
ウェハ面内の研磨の均一性(%)
=[(最大研磨速度−最小研磨速度)/(平均研磨速度)×2]×100
結果を「研磨の均一性」として下記表に示す。
【0061】
(複素環化合物のウェハ表面への吸着量)
複素環化合物のウェハ研磨面への吸着量の測定は以下の方法で行った。
すなわち、温度25℃または40℃に保った複素環化合物を含む研磨液(事前に砥粒は取り除いておく)200mlに片の長さ4cm2の正方形ウェハ(事前に表面を塩酸で洗浄しておく)を60秒間浸漬して引き上げ、その後の研磨液中に存在する複素環化合物の濃度をICP−MSで定量し、ウェハを浸漬する前に求めておいた複素環化合物の初期濃度からその濃度を引くことで温度25℃または40℃でのウェハ表面への吸着量を求めた。
【0062】
表1に、研磨温度25℃及び40℃における研磨速度、(研磨温度40℃における研磨速度/研磨温度25℃における研磨速度)(以下、表中に「研磨速度比」と記載する)、(温度40℃におけるウェハ研磨面への吸着量/温度25℃におけるウェハ研磨面への吸着量)(以下、表中に「吸着量比」と記載する)及びウェハ面内の研磨の均一性についての評価結果を下記表1に示した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から明らかなように、研磨液1L中に0.0001ないし0.01molの複素環
化合物を含有し、(研磨温度40℃における研磨速度/研磨温度25℃における研磨速度)が1.05ないし1.5である研磨液、特に(研磨温度40℃における研磨速度/研磨温度25℃における研磨速度)が1.05ないし1.3である研磨液、さらに該複素環化合物のウェハ研磨面への吸着量が、(温度40℃におけるウェハ研磨面への吸着量/温度25℃におけるウェハ研磨面への吸着量)≧0.9を満たすことを特徴とする本発明の研磨液を用いた化学的機械的研磨方法において、高研磨速度、具体的には、研磨温度40℃における研磨速度が350nm/min以上の研磨とウェハ面内の研磨の均一性が高いことの両立という本発明の効果が顕著に認められた。
【0065】
<実施例2>
実施例1の研磨液105において有機酸をI−7からI−3、I−5、I−21に等モルで置き換えたもの、及び、2又は3級の窒素原子を含まない有機酸である下記例示化合物I−22に等モルで置き換えたものとした以外は実施例1の研磨液105と同様にして研磨液を調製し、実施例1と同様にそれぞれ研磨試験を行い、研磨速度とウェハ面内の研磨の均一性について評価を行った。
【0066】
【化4】

【0067】
表2に研磨速度とウェハ面内の研磨の均一性の結果を示した。
【0068】
【表2】

【0069】
表2から明らかなように、本発明の研磨液が2級または3級の窒素原子を含む有機酸を含有する時に、高研磨速度とウェハ面内の研磨の均一性が高いことの両立という本発明の効果が最も顕著に認められた。
【0070】
<実施例3>
実施例1の研磨液105において研磨液のPHを6.5から4、5、8あるいは9に代える以外は実施例1の研磨液105と同様にして研磨液を調製し、実施例1と同様にそれぞれ研磨試験を行い、研磨速度とウェハ面内の研磨の均一性について評価を行った。
表3に研磨速度とウェハ面内の研磨の均一性の結果を示した。
【0071】
【表3】

【0072】
表3から明らかなように、本発明の研磨液は、研磨液pHが5ないし8の時に、高研磨速度とウェハ面内の研磨の均一性が高いことの両立という本発明の効果が最も顕著に認められた。
【0073】
<実施例4>
実施例1の研磨液105において砥粒をコロイダルシリカからヒュームドシリカあるいはアルミナに等重量で置き換える以外は実施例1の研磨液105と同様にして研磨液を調製し、実施例1と同様にそれぞれ研磨試験を行い、研磨速度とディッシングについて評価を行った。
表4に研磨速度とウェハ面内の研磨の均一性の結果を示した。
【0074】
【表4】

【0075】
表4から明らかなように、本発明の研磨液は、砥粒がコロイダルシリカの時に、高研磨速度とウェハ面内の研磨の均一性が高いことの両立という本発明の効果が最も顕著に認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス製造の化学的機械的平坦化に使用する研磨液であって、研磨液1L中に0.0001ないし0.01molの複素環化合物を含有し、〔(研磨温度40℃における研磨速度)/(研磨温度25℃における研磨速度)〕が1.05ないし1.5であることを特徴とする金属用研磨液。
【請求項2】
〔(研磨温度40℃における研磨速度)/(研磨温度25℃における研磨速度)〕が、1.05ないし1.3であることを特徴とする請求項1に記載の金属用研磨液。
【請求項3】
前記複素環化合物のウェハ研磨面への吸着量が、〔(温度40℃におけるウェハ研磨面への吸着量)/(温度25℃におけるウェハ研磨面への吸着量)〕≧0.9を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属用研磨液。
【請求項4】
前記金属用研磨液が2級または3級の窒素原子を含む有機酸を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金属用研磨液。
【請求項5】
前記金属用研磨液のpHが5ないし8であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金属用研磨液。
【請求項6】
前記金属用研磨液が1L中に0.1ないし5gのコロイダルシリカを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の金属用研磨液。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の金属用研磨液を、研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させ、被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨することを特徴とする化学的機械的研磨方法。

【公開番号】特開2007−66990(P2007−66990A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247982(P2005−247982)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】