説明

磁石を使用したバックル

【課題】磁石を使用したバックルでありながら、ベルトの長さ調節を行うことができるものを提供する。また、磁石の強固な取り付け方法も併せて提供する。
【解決手段】接合及び離脱が可能な第1部材3及び第2部材4からなるバックルである。前記第1部材は、非磁性又は低磁性の素材からなる第1基板31と、ベルト挿通用孔32,33と、ベルト側の穴に選択的に挿入してベルトの長さ調節をするための突起38と、接合用第1磁石35と、位置決め及び接合補強用の係合手段とを有する。前記第2部材は、非磁性又は低磁性の素材からなる第2基板41と、ベルト挿通用孔と、接合用第2磁石45と、位置決め及び接合補強用の第2係合手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石を使用したバックルに関する。このバックルは、たとえば被服・カバン・履物などのベルトやストラップ(以下、「ベルト」と総称する)に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
バックルを使用したベルトで周知のものは、ベルト側に一定間隔で複数の穴をあけ、バックル側の突起をその穴に選択的に挿入することにより、ベルトの両端を長さ調節が可能なように接合するものである。
【0003】
このようなバックルは手や指の複雑な動きを必要とするので、幼児や手に障害を負った人には使用しづらい。また、靴やサンダル等、履物用のバックルとして使用した場合、かがんだ状態で体をひねりながら、無理な体勢でベルトを締めるのは一般の人でも大変な作業である。
【0004】
そこで、一対の磁石をバックルに設けることにより、磁石の吸着力によりベルトの二端を接合するタイプの発明が提案されている(たとえば特開2002−191410参照)。このバックルでは、磁石によって2部材を吸着させると共に、これら2部材を即物的にも係合させる手段である凹凸部が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術には次の点で改良が望まれた。
【0006】
(1)バックル両末端にはベルトが取り付けられるが、バックル本体部にはベルトは取り付けられていない。そのため、ベルトの長さ調節を行うことができない。
【0007】
(2)磁石は単に接着剤で取り付けられているだけであり、時間の経過と共にはがれ落ちる可能性がある。
【0008】
(3)磁石と共に用いられる2部材を係合させる手段である凹凸部は1個所であるため、ひねりに対して係合力が弱いものとなっている。
【0009】
(4)靴やサンダルのバックルとして使用する場合、足の甲側から強い力が加わるが、この従来技術では、力点から支点への距離が長く、足の甲側からの力に耐えられないおそれがある。
【0010】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消させることに行われたもので、磁石を使用したバックルでありながら、ベルトの長さ調節を行うことができるものを提供する。また、磁石の強固な取り付け方法も併せて提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、接合及び離脱が可能な第1部材及び第2部材からなるバックルであって、前記第1部材は、非磁性又は低磁性の素材からなる第1基板と、ベルト挿通用孔と、ベルト側の穴に選択的に挿入してベルトの長さ調節をするための突起と、接合用第1磁石と、位置決め及び接合補強用の係合手段とを有し、前記第2部材は、非磁性又は低磁性の素材からなる第2基板と、ベルト挿通用孔と、前記接合用第1磁石と吸着可能な接合用第2磁石と、前記第1手段と係合可能な、位置決め及び接合補強用の第2係合手段とを有することを特徴とする(請求項1)。
【0012】
好ましくは、前記第1及び/又は第2磁石は、方形の薄板であり、接着面側に向かって裾広がりの貫通孔を有し、前記第1及び/又は第2基板はピンを有し、このピンを前記第1及び/又は第2磁石の前記貫通孔に挿入し加圧変形させて、かしめ止めすることである(請求項2)。
【0013】
また、好ましくは、前記第1及び/又は第2磁石は、BH max(最大エネルギー積)が300〜500であるネオジウム磁石である(請求項3)。
【0014】
また、好ましくは、前記第1及び/又は第2基板の位置決め及び接合補強用の係合手段は、一方の突起と他方の貫通孔である。それぞれ2個ずつ設けることが好ましい(請求項4)。
【0015】
本発明のバックルは、被服・カバン・履物用として幅広く使用可能であるが、特に履物(靴やサンダル)用として好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0016】
本発明請求項1のバックルによると、第1及び第2部材は、共に磁石を有し、これらの吸着により接合が可能であるので、幼児や手に障害のある人でも容易に脱着することができる。また、前記第1及び/又は第2基板は、位置決め及び接合補強用の係合手段を有するので、ベルトの長さ方向には強い係合力を有する。さらに、第1部材は、ベルト側の穴に選択的に挿入してベルトの長さ調節をするための突起を有するので、ベルトの長さ調節が可能である。
【0017】
本発明請求項2のバックルによると、前記第1及び/又は第2磁石は、非磁性又は低磁性の素材からなる基板中に強固にかしめ止めされている同一形状の方形部材であるので、第1及び第2部材は、互いに方形の磁石の作用によりバックルの回転が抑制され、安定的に正しい位置に誘導され、接合される。
【0018】
本発明請求項3のバックルによると、現時点で最も使用条件のよいと考えられる磁石を使用したバックルが提供される。
【0019】
本発明請求項4のバックルによると、磁石と共に用いられる2部材を係合させる手段である凹凸部はそれぞれ2個所であるため、ひねりに対して安定的なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のバックルを使用した靴用のベルトの斜視図であり、(a)は接合状態、(b)は離脱状態を示している。
【図2】第1及び第2部材の接合状態における本発明のバックルを表し、(a)正面図、(b)背面が、(c)平面図、(d)底面図、(e)図(a)のe−e断面図、(f)左側面図、(g)右側面図、(h)図(f)のh−h断面図である。
【図3】接合状態における雌雄バックルの長手方向断面図である。
【図4】本発明のバックルの第1部材を表し、(a)正面図、(b)背面が、(c)平面図、(d)底面図、(e)図(a)のe−e断面図、(f)左側面図、(g)右側面図、(h)図(f)のh−h断面図である。
【図5】本発明のバックルの第2部材を表し、(a)正面図、(b)背面が、(c)平面図、(d)底面図、(e)図(a)のe−e断面図、(f)左側面図、(g)右側面図、(h)図(f)のh−h断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面に基づき、本発明の1実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1に示すように、このバックルBは、足の甲を支える靴1のストラップベルト2用として使用可能である。(a)に示すように、このベルト2は、外観は従来のものと変わりはないが、(b)に示すように、バックルBの2部材(上側を「第1部材3」、下側を「第2部材4」と呼ぶ)は磁石により吸着可能であり、上下方向に指で引っ張ることにより離脱も容易である。
【0023】
図2は第1部材3と第2部材4の接合状態の詳細を示している。それぞれの部材を図4及び図5に基づいて説明する。
【0024】
<第1部材>
第1部材3は、図4に示すように、全体の輪郭が長円形の第1基板31である。基板31としては、亜鉛ダイカスト、アルミニウム、メッキ可能な合成樹脂(ABS等)など、非磁性又は低磁性の素材が好ましい。
【0025】
第1部材3の左端及び右端の付近において、それぞれ長円状のベルト挿通孔32,33が設けられている。
【0026】
図4(b)に示すように、第1部材3の中央部には矩形の窪み34が設けられており、この中に第1磁石35が固着されている。この第1磁石35は方形の薄板であり、その中央部に接着面側に向かって裾広がりの貫通孔36を有する。
【0027】
第1磁石35と第1基板31の接合は、第1基板31の窪み36に予めピン37を設けておき、そのピン37を第1磁石35の貫通孔36に挿入し加圧変形させて、かしめ止めすることによる。この接合は非常に強固であり、従来の接着剤などによる接合とは較べものにならない。
【0028】
第1磁石35は、方形であると共にネオジウム磁石であることが好ましい。第1磁石35が同一形状の方形であること及び第1基板自体が非磁性又は低磁性の素材であることは、第2部材側の第2磁石(後述)との接合が位置的に歪まず安定化するので好ましい。ネオジウム磁石であることは強固な磁力を発生させる上で好ましく、特にBH max(最大エネルギー積)が300〜500のものが好ましい。
【0029】
第1部材3の中央部で左側のベルト挿通孔32付近には突起38が設けられている。この突起38は、ベルト側の穴に選択的に挿入するためのものである。先端は茸状とすることもできる。
【0030】
第1部材3の中央部で右側のベルト挿通孔付近には2個所の貫通孔39が設けられている。この貫通孔39は、第2部材4との接合補助のためのものである。
【0031】
第1部材3をベルト2に取り付けるには、図1及び図3に示すように、ベルト2の複数の孔から1つを選択し、突起38に刺し通すと共に、ベルトをベルト挿通孔32,33に通過させることによる。
【0032】
<第2部材>
第2部材4は、図5に示すように、全体の輪郭が長方形の第2基板41である。基板41としては、亜鉛ダイカスト、アルミニウム、メッキ可能な合成樹脂(ABS等)など、非磁性又は低磁性の素材が好ましい。
【0033】
第2部材4の右端の付近において、長方形のベルト挿通孔42が設けられており、左端において、長方形の切り欠き43が設けられている。
【0034】
第2部材4の中央部には矩形の窪み44が設けられており、この中に第2磁石45が固着されている。この第2磁石45は、前記第1磁石35と全く同じものであり、部品を共通化させることができる。
【0035】
第2磁石45と第2基板41の接合も、第1部材3のときと同じである。
【0036】
第2部材4の中央部でベルト挿通孔42付近には2個所の突起46が設けられている。この突起は、第1部材3の前記貫通孔39と嵌合可能であり、嵌合したとき、位置決めされると共に磁石同士がベルトの長手方向に移動するのを防止する。
【0037】
第2部材4をベルトに取り付けるには、図1及び図3に示すように、ベルト2末端をベルト挿通孔42に通過させることによる。ベルト2は、ベルト挿通孔42に隣接する保持棒48により保持される。
【0038】
<第1部材及び第2部材の接合>
第1部材3及び第2部材4の接合状態においては、図3に示すように、第1磁石35及び第2磁石45同士が強固に接合すると共に、第2部材の2個所の突起46が第1部材の2個所の貫通孔39に刺し通されて、安定的に位置決めされる。この位置決め状態では、前記したように、磁石35,45同士がベルト2の長手方向に移動するのは防止されるが、磁石同士を上下方向に離脱させるのは磁石の力に抗して指で持ち上げるだけでよく、容易である。
【0039】
このバックルBにおいて、ベルト2の長さ調節をするのは、前記したように、ベルト2の複数の孔から1つを選択し、突起に刺し通すことであり、これは従来技術と変わらないが、長さは一度決めておけば、頻繁に変更する必要はない。日常的には磁石同士の接合で十分であって、その脱着はワンタッチであり、きわめて容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2002−191410
【符号の説明】
【0041】
B バックル
1 靴
2 ベルト
3 第1部材
31 基板
32 ベルト挿通孔
33 ベルト挿通孔
35 磁石
36 貫通孔
37 ピン
38 突起
39 貫通孔
4 第2部材
41 基板
42 ベルト挿通孔
45 磁石
46 突起
48 保持棒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合及び離脱が可能な第1部材(3)及び第2部材(4)からなるバックル(B)であって、
前記第1部材(3)は、非磁性又は低磁性の素材からなる第1基板(31)と、ベルト挿通用孔(32,33)と、ベルト側の穴に選択的に挿入してベルトの長さ調節をするための突起(38)と、接合用第1磁石(35)と、位置決め及び接合補強用の第1係合手段(39)とを有し、
前記第2部材(4)は、非磁性又は低磁性の素材からなる第2基板(41)と、ベルト挿通用孔(42)と、前記接合用第1磁石(35)と吸着可能な接合用第2磁石(45)と、前記第1手段(39)と係合可能な、位置決め及び接合補強用の第2係合手段(46)とを有することを特徴とする、
磁石を使用したバックル。
【請求項2】
前記第1及び/又は第2磁石(35,45)が、同一形状の方形薄板であり、接着面側に向かって裾広がりの貫通孔(36,44)を有し、前記第1及び/又は第2基板(3,4)はピン(37,47)を有し、このピンを前記第1及び/又は第2磁石の前記貫通孔(36,44)に挿入し加圧変形させて、かしめ止めした請求項1記載のバックル。
【請求項3】
前記第1及び/又は第2磁石(35,45)が、BH max(最大エネルギー積)が300〜500であるネオジウム磁石である請求項1又は2記載のバックル。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2基板の位置決め及び接合補強用の第1及び/又は第2係合手段(39,46)は、一方の2個所の突起(46)とこれに対応する他方の2個所の貫通孔(39)である請求項1ないし3のいずれかに記載のバックル。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のバックルを使用した履物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−147980(P2012−147980A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9410(P2011−9410)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】