移動ロボットの駆動装置
【課題】安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足し、よって効率的に電圧を供給するようにした移動ロボットの駆動装置を提供する。
【解決手段】関節を介して連結される複数本のリンク(大腿リンクなど)の関節に配置される電動モータ(1Yモータ42,2Yモータ46など)と、複数本のリンク以外の部位に配置される電源(バッテリ)28と、電源と電動モータを接続する電力線90を通じて電源から供給される電圧を通電指令に応じて電動モータに供給して駆動する駆動回路(モータドライバ92)とを備えた移動ロボットの駆動装置において、電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98を備えると共に、電動モータと昇圧器と駆動回路とを同一のリンク(大腿リンクなど)に配置する。
【解決手段】関節を介して連結される複数本のリンク(大腿リンクなど)の関節に配置される電動モータ(1Yモータ42,2Yモータ46など)と、複数本のリンク以外の部位に配置される電源(バッテリ)28と、電源と電動モータを接続する電力線90を通じて電源から供給される電圧を通電指令に応じて電動モータに供給して駆動する駆動回路(モータドライバ92)とを備えた移動ロボットの駆動装置において、電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98を備えると共に、電動モータと昇圧器と駆動回路とを同一のリンク(大腿リンクなど)に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は移動ロボットの駆動装置に関し、より詳しくは関節に配置された電動モータに駆動電圧を効率的に供給するようにした移動ロボットの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動ロボットは、通例、搭載するバッテリ(電源)から電動モータなどのアクチュエータに駆動電圧を供給されて動作する。その例として特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、基体に股関節を介して連結されると共に、膝関節を介して連結される2本の脚部リンクと、それらの関節に配置される電動モータと、基体に配置されるバッテリ(電源)と、電力線を通じてバッテリから供給される電圧を電動モータに供給して駆動する駆動回路とを備えた脚式移動ロボットの駆動装置において、バッテリの残容量が少なくなったとき、転倒しそうな状況にあると判断し、重心を下げるように動作させている。
【特許文献1】特開平11−48170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来技術にあっては、バッテリからの電力線が電動モータによっては関節を跨ぐため、電力線が関節部分で断線して漏電した場合などを考慮すると、電動モータを低電圧で駆動することが望ましい。しかしながら、高速で移動するには電動モータを高電圧で駆動して回転数を上げる必要があり、このように両者の要求は相反するものであった。
【0004】
従ってこの発明の目的は上記した従来技術の不都合を解消し、安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足し、よって効率的に電圧を供給するようにした移動ロボットの駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、関節を介して連結される複数本のリンクと、前記関節に配置される電動モータと、前記複数本のリンク以外の部位に配置される電源と、前記電源と前記電動モータを接続する電力線と、前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を通電指令に応じて前記電動モータに供給して駆動する駆動回路とを少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、前記電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、前記電動モータと前記昇圧器と前記駆動回路とを同一のリンクに配置する如く構成した。
【0006】
請求項2にあっては、基体と、前記基体に股関節を介して接続される大腿リンクと前記大腿リンクに膝関節を介して接続される下腿リンクとからなる複数本の脚部と、前記股関節に配置されると共に、前記大腿リンクを進行方向に駆動する第1の電動モータと、前記膝関節に配置されると共に、前記下腿リンクを前記進行方向に駆動する第2の電動モータと、前記大腿リンクと下腿リンク以外の部位に配置される電源と、前記電源と前記第1、第2の電動モータを接続する電力線と、通電指令に応じて前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を前記第1、第2の電動モータに供給して駆動する駆動回路とを少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、前記第1、第2の電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、前記第1、第2の電動モータと前記昇圧器と前記第1、第2の電動モータを駆動する駆動回路とを同一のリンクに配置する如く構成した。
【0007】
請求項3に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、前記昇圧器を前記電力線に介挿すると共に、前記電力線に前記昇圧器をバイパスするバイパス路を設ける如く構成した。
【0008】
請求項4に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、移動状況に応じて前記昇圧器の昇圧動作を制御する昇圧制御手段を備える如く構成した。
【0009】
請求項5に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、前記昇圧制御手段は、前記移動状況に応じて予め設定されたテーブル値を検索して前記昇圧器の昇圧動作を制御する如く構成した。
【0010】
請求項6に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、前記昇圧制御手段は、前記昇圧器の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、前記昇圧動作を中止する如く構成した。
【0011】
請求項7に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、前記昇圧器と駆動回路の少なくともいずれかに配置される温度センサを備えると共に、前記昇圧制御手段は、前記温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、前記昇圧動作を中止する如く構成した。
【0012】
請求項8に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段を備えると共に、前記フィードバック制御手段は前記昇圧制御手段の昇圧動作に応じて前記フィードバック制御のゲインを変更する如く構成した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にあっては、関節を介して連結される複数本のリンクの関節に配置される電動モータに、電力線を通じて電源から供給される電圧を通電指令に応じて供給して駆動する駆動回路を少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、電動モータと昇圧器と駆動回路とを同一のリンクに配置する如く構成したので、安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。
【0014】
即ち、駆動回路と同一のリンクに昇圧器を備えることで電力線の送電電圧を低く抑えることができ、電源と電動モータを接続する電力線が関節を跨ぐとき、関節部分で断線して漏電したとしても、不都合が生じることがない。他方、高電圧が必要なときは昇圧器で昇圧して供給することで、高速移動にも対応することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。
【0015】
請求項2にあっては、基体に股関節を介して接続される大腿リンクと大腿リンクに膝関節を介して接続される下腿リンクとからなる複数本の脚部を備えると共に、大腿リンクなどを進行方向に駆動する第1、第2の電動モータに電力線を通じて電源から供給される電圧を通電指令に応じて供給して駆動する駆動回路を少なくとも備えた脚式移動ロボットの駆動装置において、第1、第2の電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、第1、第2の電動機と昇圧器と駆動回路とを同一のリンクに配置する如く構成したので、請求項1と同様、安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。
【0016】
さらに、昇圧器の配置を、電動モータのうち、大腿リンクなどを進行方向に駆動する、換言すれば高電圧が要求されるものに限定して配置すると共に、それらを同一リンクに配置するように構成したので、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0017】
請求項3に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、昇圧器を電力線に介挿すると共に、電力線に昇圧器をバイパスするバイパス路を設ける如く構成したので、上記した効果に加え、バイパス路に逆流防止ダイオードなどを必要とする不都合がある反面、昇圧器を介する場合に比して電力損失を低減することができる。
【0018】
請求項4に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、移動状況に応じて昇圧器の昇圧動作を制御する昇圧制御手段を備える如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給することができ、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0019】
請求項5に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、昇圧制御手段は、移動状況に応じて予め設定されたテーブル値を検索して昇圧器の昇圧動作を制御する如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給するのが容易となり、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0020】
請求項6に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、昇圧制御手段は、昇圧器の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、昇圧動作を中止する如く構成したので、上記した効果に加え、単に昇圧器の出力を監視するだけでフェールを検出することができ、移動を停止するなど、必要な対策を講じることができる。
【0021】
請求項7に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、昇圧器と駆動回路の少なくともいずれかに配置される温度センサを備えると共に、昇圧制御手段は、温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、昇圧動作を中止する如く構成したので、上記した効果に加え、温度を通じてフェールを検出することができ、移動を停止するなど、必要な対策を講じることができる。
【0022】
請求項8に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段を備えると共に、フィードバック制御手段は昇圧制御手段の昇圧動作に応じてフィードバック制御のゲインを変更する如く構成したので、上記した効果に加え、電動モータを必要な回転数で確実に駆動することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に即してこの発明に係る移動ロボットの駆動装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、この発明の第1実施例に係る移動ロボットの駆動装置が対象とする移動ロボットの正面図であり、図2は図1に示すロボットの側面図である。尚、移動ロボットとしては2足の脚式移動ロボットを例にとる。
【0025】
図1に示すように、脚式移動ロボット(以下単に「ロボット」という)10は、複数本、即ち、左右2本の脚部12L,12R(左側をL、右側をRとする。以下同じ)を備える。脚部12L,12Rは、基体(上体)14の下部に連結される。基体14の上部には頭部16が連結されると共に、側方には複数本、即ち、左右2本の腕部20L,20Rが連結される。左右の腕部20L,20Rの先端には、それぞれハンド(エンドエフェクタ)22L,22Rが連結される。
【0026】
図2に示すように、基体14の背部には格納部14aが設けられ、その内部には中央制御器24、電源制御器26が収容されると共に、基体14の内部にはバッテリ(電源)28などが収容される。
【0027】
図3は、図1に示すロボット10をスケルトンで表す説明図である。以下、同図を参照し、ロボット10の内部構造について関節を中心に説明する。尚、図示のロボット10は左右対称であるので、以降L,Rの付記を省略する。
【0028】
左右の脚部12は、それぞれ大腿リンク30と下腿リンク32と足部34とを備える。大腿リンク30は、股関節を介して基体14に連結される。図3では基体14を基体リンク36として簡略的に示す。股関節には、Z軸(ヨー軸)回りの回転軸を有する電動モータ(「1Zモータ」という)40と、Y軸(ピッチ軸。具体的には、ロボット10の左右方向)回りの回転軸を有する電動モータ(「1Yモータ」という)42と、X軸(ロール軸。具体的には、ロボット10の前後方向)回りの回転軸を有する電動モータ(「1Xモータ」という)44が配置され、3自由度を備える。
【0029】
膝関節にはY軸回りの回転軸を有する電動モータ(「2Yモータ」という)46が配置され、1自由度を備える。足関節にはY軸回りの回転軸を有する電動モータ(「3Yモータ」という)48とX軸回りの回転軸を有する電動モータ(「3Xモータ」という)50が配置され、2自由度を備える。大腿リンク30と下腿リンク32は膝関節を介して連結されると共に、下腿リンク32と足部34は足関節を介して連結される。脚部12は、基体14と脚部12の適宜位置に配置された12個の電動モータによって12個の回転軸が個別に駆動される。
【0030】
左右の腕部20は、それぞれ上腕リンク52と下腕リンク54を備える。上腕リンク52は肩関節を介して基体14に連結される。上腕リンク52と下腕リンク54は肘関節を介して連結されると共に、下腕リンク54とハンド22は手首関節を介して連結される。
【0031】
肩関節にはY軸回りの回転軸を有する電動モータ56とX軸回りの回転軸を有する電動モータ58とZ軸回りの回転軸を有する電動モータ60が配置され、3自由度を備える。肘関節にはY軸回りの回転軸を有する電動モータ62が配置され、1自由度を備える。手首関節にはZ軸回りの回転軸を有する電動モータ64とY軸回りの回転軸を有する電動モータ66とX軸回りの回転軸を有する電動モータ68が配置され、3自由度を備える。腕部20も、脚部12と同様、基体14と腕部20の適宜位置に配置された14個の電動モータによって14個の回転軸が個別に駆動される。
【0032】
頭部16は首関節を介して基体14に連結され、2自由度を備える。首関節には、Z軸回りの回転軸を有する電動モータ72とY軸回りの回転軸を有する電動モータ74が配置され、2自由度を備える。頭部16も2個の電動モータによって個別に駆動される。
【0033】
左右の脚部12には、それぞれ6軸力センサ76が取り付けられ、床面から脚部12に作用する床反力の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzを示す信号を出力すると共に、左右の腕部20にも同種の6軸力センサ78がハンド22と手首関節の間で取り付けられ、腕部20に作用する外力の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzを示す信号を出力する。
【0034】
基体14には、X,Y,Z軸方向の加速度を示す出力を生じる3個の加速度センサとX,Y,Z軸回りの角速度を示す出力を生じる3個の振動ジャイロからなる傾斜計80が配置される。
【0035】
頭部16には、2個のCCDカメラ82が設置され、ロボット10の周囲環境をステレオ視で撮影して得た画像を出力すると共に、マイクロフォン84aとスピーカ84bからなる音声入出力装置84が設けられる。
【0036】
尚、上記した脚部12と腕部20を構成する電動モータ40,42などのそれぞれにはロータリエンコーダ(図示せず)が配置され、回転角度、即ち、関節角度に応じた信号を出力する。尚、電動モータ40,42などは例えばDCブラシレスモータからなる。
【0037】
上記したセンサなどの出力は中央制御器24に入力される。中央制御器24はCPUユニットからなり、脚部12の1Zモータ40などの電動モータの動作を制御して脚部12を駆動することでロボット10を移動させると共に、腕部20の電動モータ56などの動作を制御して腕部20を駆動し、さらに頭部16の電動モータ72などの動作を制御して頭部16の向きを調整する。
【0038】
図4は、上記したバッテリ28から1Zモータ(電動モータ)40などの電動モータへの駆動電圧の供給を示すブロック図である。尚、同図では腕部20の構成の図示を省略すると共に、脚部12も片方のみ示す。
【0039】
図示の如く、バッテリ28と1Zモータ40などの6個の電動モータは、電力線90によって電源制御器26と3個のモータドライバ(駆動回路)92、より具体的には92a,92b,92cを介して接続される。中央制御器24は信号線94によって電源制御器26に双方向から通信自在に接続されると共に、信号線96によって3個のモータドライバ92に双方向から通信自在に接続される。3個のモータドライバ92も内部にCPUを備え、接続される2個の電動モータの動作を制御する。
【0040】
3個のモータドライバ92のうち、92b,92cに接続される電力線90にはそれぞれ昇圧器98、より具体的には98a,98bが介挿される。昇圧器98aとモータドライバ92b、および昇圧器98bとモータドライバ92cは信号線100を介して双方向通信自在に接続される。
【0041】
バッテリ28からは比較的低い所定電圧Vm[V]が出力される。バッテリ28から出力される所定電圧Vmは電源制御器26を介して電力線90に送出され、電力線90によってモータドライバ92(および後述する温度センサなど)には制御電源として、また1Zモータ40などの電動モータには駆動電源として供給される。より正確には、電力線90は中途で分岐し、その分岐線90aを介して制御電源が3個のモータドライバ92などに動作電源として送られる。
【0042】
図示の構成により、モータドライバ92aを介して1Zモータ40,1Xモータ44には所定電圧Vmがそのまま駆動電圧として供給される一方、モータドライバ92b,92cを介して1Yモータ42,2Yモータ46、3Yモータ48、3Xモータ50には所定電圧Vm、あるいは所定電圧Vmを昇圧器98で最大4倍(4Vm)まで昇圧してなる電圧が駆動電圧として供給される。
【0043】
信号線96はARCNET(RS485ベースの通信)やイーサネット(登録商標)からなり、体内ネットワークを形成する。6軸力センサ76の出力は、信号線96を通じて中央制御器24に送られる。また、3個のモータドライバ92と2個の昇圧器98の内部には温度センサ102がそれぞれ配置され、配置部位の温度を示す出力を生じる。温度センサ102の出力も信号線96を介して(図示せず)中央制御器24およびモータドライバ92に送られる。図示は省略するが、1Zモータ40などに配置されるロータリエンコーダの出力も信号線96を介して中央制御器24およびモータドライバ92に送られる。
【0044】
先に述べた如く、中央制御器24は脚部12の1Zモータ40などの動作を制御して脚部12を駆動する。即ち、中央制御器24は予め設定された歩容から決定される動作(歩行)モードに基づき、それぞれの電動モータについて位置/速度/電流(トルク)制御指令をモータドライバ92に送る一方、その指令に対する実動作値がモータドライバ92から中央制御器24に送られる。その他にも、温度、異常、モータドライバ92の固有の設定値などの情報が中央制御器24とモータドライバ92の間で送受される。
【0045】
同様に、中央制御器24と電源制御器26の間においても、信号線94を介して電力制御指令、電圧/電流などの情報と温度/異常/設定値などの各種情報が送受され、頭部16、腕部20、脚部12への電力の分配を含む電力制御が実行される。
【0046】
図5は、図4に示すモータドライバ92などのロボット10における配置を具体的に示す、図2と同様なロボット10の側面図である。
【0047】
図示の如く、中央制御器24と電源制御器26は格納部14aに収納され、バッテリ28は基体14の内部に配置されることから、電力線90や信号線(体内ネットワーク)96は、股関節や膝関節を跨いて大腿リンク30や下腿リンク32に張り巡らされる。電力線90は、関節部分では関節の動きを考慮して緩やかに配線される。
【0048】
モータドライバ92aは基体14に配置される一方、1Zモータ40と1Xモータ44は大腿リンク30に配置され、従って両者は同一のリンクに配置されない。他方、モータドライバ92bと1Yモータ42,2Yモータ46と昇圧器98aとは同一のリンク(大腿リンク30)に配置される。また、モータドライバ92cと3Yモータ48,3Xモータ50と昇圧器98bとも同一のリンク(下腿リンク32)に配置される。
【0049】
より具体的には、大腿リンク30を進行方向に駆動する1Yモータ42と、下腿リンク32を進行方向に駆動する2Yモータ46と、それらのモータドライバ92bとその昇圧器98aは、同一のリンク(大腿リンク30)に配置される。さらに、足部34を進行方向に駆動する3Yモータ48と進行方向に直交する左右方向に駆動する3Xモータ50と、それらのモータドライバ92cとその昇圧器98bも、同一のリンク(下腿リンク32)に配置される。
【0050】
ここで、本願の課題について説明すると、図17は特許文献1記載技術などで使用される、バッテリ28から1Zモータ40などへの駆動電圧の供給を示す、図4と同様のブロック図である。
【0051】
図17に示す構成の場合、バッテリ28から電力線90を通じて所定電圧Vmを数倍してなる高電圧が1Zモータ40などの電動モータに供給されるため、ロボット10が転倒したときに関節部分で電力線90が断線して露出する恐れがある。従って、安全性を考慮すると、低い電圧でモータに電力を供給することが望ましい。ロボット10が直立状態もしくはそれほど高速動作をしない場合、ある程度低電圧(例えば所定電圧を2倍した程度の値(2Vm))でも動作することは可能である。
【0052】
しかしながら、ロボット10が高速歩行するためには電動モータの回転数を上げる必要があるため、電動モータの大きさや効率の面からも必然的に電圧は高くする必要があり、ロボット10の電源電圧を低くすることは困難であった。つまり安全を考慮した低電圧化と高速歩行のための高電圧化は設計上相反していた。尚、この明細書で「高速歩行」は歩行動作のみならず、走行動作も含む意味で使用する。
【0053】
図4および図5に示す構成はそれを解決するものであり、図17に示す構成に加え、モータドライバ92b,92cの前段に昇圧器98a,98bを介挿すると共に、昇圧器98aとモータドライバ92bおよび1Yモータ42などは同じリンク内に配置し、それらを接続する電力線90が関節を跨がないようにした。ただし、1Zモータ40と1Xモータ44は、特に高速回転を必要とするものではなく、モータドライバ92aとの間の電力線90が股関節を跨ぐため、モータドライバ92aには昇圧器98を配置しないことした。
【0054】
モータドライバ92b,92cは、直立や低速歩行時はこの昇圧器98a,98bをオフしておく。他方、高速歩行動作の時には中央制御器24からモータドライバ92b,92cに信号線(体内ネットワーク)96を介して高速歩行(動作)モードの情報を送り、これを受けたモータドライバ92b,92cは信号線100を介して駆動電圧コントロール信号を送り、昇圧器98a,98bをオンする。
【0055】
これにより、オンされた昇圧器98a,98bの後段のモータドライバ92b,92cには高圧の駆動電力が供給され、モータドライバ92a,92bは信号線96を介して中央制御器24から受信した動作モードに対応した電流フィードバックゲインに設定を変更することで所望のモータ回転数を得る。
【0056】
高速歩行はロボット10が約1.8km/hを超える速度で歩行する動作モード、低速歩行はそれ未満で歩行する動作モードを意味する。低速歩行では遊脚期間であってもいずれの電動モータの回転数も低いが、高速歩行では遊脚期間中に1Yモータ42と2Yモータ46に高速回転が要求される。従って、図5に関して説明した如く、少なくともそれらの電動モータについては昇圧器98を設けると共に、モータドライバ92も含めて同一のリンクに配置するようにした。
【0057】
次に駆動電圧が変わったときのモータドライバ92の制御について説明すると、モータドライバ92は高速/低速の動作モードに対応した電流フィードバックゲインに設定を変更することで、電動モータに要求される回転速度を実現する。図6にモータ制御のフィードバックループを示す。
【0058】
1Zモータ40などのDCブラシレスモータは、一般に、図6に示されるように、位置と速度と電流についてフィードバック制御される。電流フィードバックゲインKi、より具体的には比例ゲインKipおよび積分ゲインKiiは、位置フィードバックループと速度フィードバックループの内側で電動モータに流れる電流を制御するループのフィードバック量の大きさを表す。
【0059】
電動モータのエネルギーはトルク×回転数であり、トルクは電流に比例し、回転数は電圧に比例する。同じエネルギーであれば電圧と電流は反比例の関係にあるので、電圧の増加率だけ電流を抑えるようにする。つまり、以下の式の通りに駆動電圧の切り替えを電流フィードバックゲインに反映することで電動モータに流す電流を変え、電圧を変えても所期の動作を実現させることができる。
Ki=C/V (Ki:電流フィードバックゲイン,V:駆動電圧,C:定数)
【0060】
このように電圧変動に対して電動モータの動作特性を維持するには、電流フィードバックゲインを調整するのが最も簡単で理にかなった手法となる。また、フィードバックゲインは電流ゲインでなければならず、位置ゲインや速度ゲインでは実現はできない。
【0061】
図7はこの実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは中央制御器24によって実行される。
【0062】
図8は図7の処理で設定される駆動電圧などの特性を示す説明図である。図8に示す値は2Yモータ46についての値であるが、1Yモータ42についても同様である。図8に示す如く、図7に示す処理において駆動電圧は歩行時以外では所定電圧Vmのままとするが、歩行を開始した後は歩行速度に応じてその2倍(2Vm)あるいは4倍(4Vm)昇圧する。
【0063】
電流フィードバックゲインは駆動電圧に応じて設定する。即ち、比例ゲインKipと積分ゲインKiiは、駆動電圧が最大となるときの値をそれぞれa,bとすると、駆動電圧が減少するにつれて2倍(2a,2b)あるいは4倍(4a,4b)となるように設定する。
【0064】
尚、この実施例に係るロボット10は、1Yモータ42と2Yモータ46が所定電圧Vmで駆動されるときは直立するのみで歩行できず、2Vmで駆動される場合には低速歩行は可能であるが、高速歩行はできず、4Vmで駆動されて初めて高速歩行も可能となるものとする。また、図7には1Yモータ42と2Yモータ46についての処理のみを示すが、その他の電動モータも昇圧されない点を除くと、図7に示す処理に類似した処理で制御される。
【0065】
以下説明すると、S10でパワーオンを実行する。図4を参照してこの処理を説明すると、中央制御器24は電源制御器26に対し、バッテリ28からモータドライバ92bに所定電圧Vmを供給するように指令する。モータドライバ92bは電源制御器26から指令された所定電圧Vmが供給されたとき、パワーオンが完了した旨の信号を中央制御器24に送る。
【0066】
次いでS12に進み、サーボオンを実行する。即ち、中央制御器24はモータドライバ92bに対し、1Yモータ42などを制御原点位置まで回転した後、その位置で停止させるように指令する。モータドライバ92bはその指令に応じた動作を実行し、それが終了したとき、サーボオンが完了(サーボ機構の有効化動作が完了)した旨の信号を中央制御器24に送る。
【0067】
次いでS14に進み、ロボット10を直立姿勢となるように制御する。具体的には、サーボオンが完了した後、ロボット10をリフタ(図示せず)から降ろし、6軸力センサ76と傾斜計80の出力に基づいて直立状態を保つように制御する。
【0068】
次いでS16に進み、歩行開始指令(高速/低速歩行の動作モード信号からなる)をモータドライバ92a,92b,92cに出力する。即ち、中央制御器24からモータドライバ92bに動作モード信号を送ることで高速歩行動作の開始前に駆動電圧を上げさせる一方、モータドライバ92の電流フィードバックゲインを下げさせることにより、1Yモータ42などの高速回転に対応させる。
【0069】
次いでS18に進み、温度センサ102で検出された昇圧器98あるいはモータドライバ92の温度が所定値を超える温度異常が生じているか否か判断し、否定されるときはS20に進み、モータドライバ92においてS16で出力された歩行開始指令の動作モードに応じて電流フィードバックゲインの設定を変更させ、S22に進み、昇圧器98をオンさせて動作モードに応じて2Vmあるいは4Vmに昇圧させる。尚、この時点まで駆動電圧は所定電圧Vmのままとする。
【0070】
次いでS24に進み、昇圧器98の昇圧動作が正常か否か判断する。これは昇圧器98の出力電圧をモータドライバ92b,92cのA/Dコンバータ(図示せず)でモニタさせ、所定の電圧範囲に昇圧されているか判断することで行う。
【0071】
S24で肯定されるときはS26に進み、ロボット10の歩行を開始し、S28に進んで歩行終了となるまで継続する。次いでS30に進み、モータへの供給電圧を定常状態のVmに降圧させ、S32に進み、Vmに対応した電流フィードバックゲインに設定を変更させる。次いでS34に進み、直立姿勢に再び制御し、S36に進んでサーボオフ(電動モータの停止)し、S38に進み、パワーオフ(バッテリ28からの電圧供給停止)する。
【0072】
尚、S18で肯定される場合、あるいはS24で否定される場合、即ち、温度異常が生じたか、あるいは所定の電圧範囲に昇圧されない場合、昇圧動作を実行しないか、実行しているときは中止する。
【0073】
図9は、図7の処理を示すタイム・チャートである。
【0074】
図示の如く、歩行動作開始直前の直立時に電流フィードバックゲインの設定値を変更し、続いて昇圧器98で昇圧し、歩行が終了した直後に逆の手順で降圧して電流フィードバックゲインの設定値を変更する。即ち、電流フィードバックゲインの設定値は昇圧器98の電圧を上げる前に変更し、電圧を下げた後に変更する。図では左脚の昇圧器とモータドライバの制御期間を表記していないが、右脚と同様の処理が行われる。このように、昇圧する前に電流フィードバックゲインを下げ、逆に降圧した後に電流フィードバックゲインを上げるようにしている。この順序が逆の場合はモータが発振する場合があるので、安全を考えてこのように設定する。
【0075】
尚、昇圧が完了する前に電流フィードバックゲインが下げられる事態も生じ得るが、その場合にはモータのトルクが不足することも考えられる。しかしながら、切り替えのタイミングは直立時であるため、トルク不足が若干であれば、それによる影響は少ないと思われる。これは、第2実施例で切り替えのタイミングを遊脚とするときも同様である。いずれにしても、この切り替えのタイミングのずれは、少なければ少ないほど望ましい。
【0076】
上記した如く、第1実施例にあっては、関節、即ち、股関節、膝関節、足関節を介して連結される複数本(2本)のリンク(大腿リンク30、下腿リンク32)の関節に配置される1Yモータ42などの電動モータに、電力線90を通じてバッテリ(電源)28から供給される電圧を通電指令に応じて供給して駆動するモータドライバ(駆動回路)92a,92b,92cを少なくとも備えた移動ロボット10の駆動装置において、1Yモータ42などの電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98a,98bを備えると共に、1Yモータ42などと昇圧器98a、98bと駆動回路92b,92cとを同一のリンク(大腿リンク30、下腿リンク32)に配置する如く構成した。
【0077】
より具体的には、基体14に股関節を介して接続される大腿リンク30と大腿リンク30に膝関節を介して接続される下腿リンク32とからなる複数本(2本)の脚部12を備えると共に、少なくとも大腿リンク30などを進行方向に駆動する1Yモータ(第1の電動モータ)42と2Yモータ(第2の電動モータ)46に電力線90を通じてバッテリ(電源)28から供給される電圧を通電指令に応じて供給して駆動するモータドライバ(駆動回路)92b,92cを少なくとも備えた脚式移動ロボット10の駆動装置において、少なくとも1Yモータ42と2Yモータ46に供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98aを備えると共に、少なくとも1Yモータ42などと昇圧器98aとモータドライバ92bとを同一のリンク(大腿リンク)32に配置する如く構成した。
【0078】
これにより、安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。即ち、モータドライバ92b,92cと同一のリンクに昇圧器98a,98bを備えることで電力線90の電圧を低く抑えることができ、バッテリ28と1Yモータ42などの電動モータを接続する電力線90が関節を跨ぐとき、関節部分で断線するなどして漏電したとしても、それほど不都合は生じない。他方、高電圧が必要なときは昇圧器98a,98bで昇圧して供給することで、高速移動にも対応することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。
【0079】
さらに、昇圧器98a,98bの配置を、電動モータのうちの高電圧が要求されるもの、即ち、大腿リンク30などを進行方向に駆動する1Yモータ42,2Yモータ46,3Yモータ48などに限定して配置すると、それらを大腿リンク30などの同一のリンクに配置するように構成したので、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0080】
さらに、1Yモータ42などで駆動電圧は全て昇圧器98を介した出力とするため、バッテリ28の電圧が変動しても駆動電圧を一定に保つことができ、モータ動作を安定にすることができる。また、駆動電圧と制御電圧を同じ値(Vm)とすることで、図17に示した従来技術で使用される電源制御器26内の降圧器が不要となり、電源制御器26からモータドライバ92への電力線90も1本のケーブルになるため、軽量かつ低コストにすることができる。ただし、電圧が低くなる分電流を多く流す必要があるため、電力線90はより太くなることも予想されるが、それを超えるメリットがある。
【0081】
また、移動状況に応じて昇圧器98の昇圧動作を制御する昇圧制御手段(S16からS22)を備える、より具体的には歩行開始指令(動作モード信号)を送り、高速歩行動作開始前に駆動電圧を上げさせる一方、モータドライバ92を介して電流フィードバックゲインを下げさせることにより電動モータの高速回転に対応させる如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給することができ、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0082】
また、昇圧制御手段は、昇圧器98の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、昇圧動作を中止する(S24,S30)如く構成したので、上記した効果に加え、単に昇圧器98の出力を監視するだけでフェールを検出することができ、移動を停止するなど、必要な対策を講じることができる。
【0083】
また、昇圧器98とモータドライバ92の少なくともいずれかに配置される温度センサ102を備えると共に、昇圧制御手段は、温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、昇圧動作を中止する(S18,S30)如く構成したので、上記した効果に加え、温度を通じてフェールを検出することができ、移動を停止するなど、必要な対策を講じることができる。
【0084】
また、駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段(中央制御器24,モータドライバ92)を備えると共に、昇圧制御手段の昇圧動作に応じて電流フィードバック制御のゲインを変更する(S20)如く構成したので、上記した効果に加え、2Yモータ46などを必要な回転数で確実に駆動することができる。
【実施例2】
【0085】
図10はこの発明の第2実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。図示のプログラムも、中央制御器24によって実行される。
【0086】
図11は、図10の処理で設定される駆動電圧などの特性を示す、図8と同様の説明図である。第2実施例においては図11に示すように駆動電圧を第1実施例と同様に歩行時以外と歩行時で相違させると共に、低速歩行時と高速歩行時の支持脚時では2Vmとする一方、高速回転が要求される高速歩行時の遊脚時では4Vmとした。電流フィードバックゲインの設定値の変更は、第1実施例と同様である。
【0087】
また、図11に示す値は2Yモータ46についての値であるが、1Yモータ42についても同様であることも第1実施例と異ならない。また、1Yモータ42と2Yモータ46についての処理のみを示すが、その他の電動モータも類似した処理で制御されることも第1実施例と同様である。
【0088】
以下説明すると、S100からS104まで第1実施例と同様の処理を行った後、S106に進み、歩行時直前に歩行開始信号をモータドライバ92に出力し、S108に進み、歩行を開始させる。
【0089】
S110においてモータドライバ92bにおいて歩行開始信号に応じて直立スタート時の設定電圧である2Vmに昇圧させるために電流フィードバックゲインの設定値を変更させ、S112において昇圧器98aをオンさせて2Vmに昇圧させる。次いでS114に進み、昇圧されたか否か判断し、肯定されるときはS116に進み、温度異常が生じたか否か判断する。
【0090】
S116で否定されるときはS118に進み、動作モードの更新、即ち、図11に示す動作モードをモータドライバ92b,92cに逐次出力し、S112に進み、モータドライバ92bにおいて図11に示す特性に基づいて高速駆動が要求されるか否か判断させる。S120で肯定されるときはS122に進み、モータドライバ92b,92cを介して図11の特性に基づいて電流フィードバックゲインを高速駆動時の設定値に変更させ、S124に進み、昇圧器98の出力を4Vmに昇圧させる。次いでS126に進み、昇圧されたか否か再び判断する。
【0091】
他方、S120で否定されるときはS128に進み、低速駆動で足りるので、図11の特性に基づいてモータドライバ92bを介して2Vmに降圧させ、次いでS130に進み、2Vmに対応する電流フィードバックゲインに設定値に変更させる。
【0092】
次いでS132に進み、歩行終了か否か判断し、否定される限り、上記した処理を繰り返す一方、肯定されるときはS134に進んで定常状態のVmに降圧させ、S136に進み、電流フィードバックゲインの設定値を対応する値に変更し、第1実施例と同様、S138からS142の処理を経て終了する。尚、S114で否定される、あるいはS116で肯定される、あるいはS126で否定されるときはS134に進む。
【0093】
図12は図10の処理を示すタイム・チャートである。
【0094】
ロボット10が直立状態から歩き始めたときに最初に出す脚が遊脚となり、反対の脚は支持脚となる。高速回転が必要になるのは、高速歩行時に遊脚である右足を大きく前に出すときで、この期間を黒色で示す。
【0095】
通常、高速回転が必要になるのは遊脚時である。換言すれば遊脚であり、しかも高速回転する瞬間だけ電圧が高ければ足りるので、第2実施例においては、4Vmへの昇圧あるいは4Vmからの降圧のタイミングを遊脚時とし、その瞬間のみ高圧となるに制御するようにした。
【0096】
上記の如く、第2実施例に係る移動ロボットの駆動装置においても移動状況に応じて予め設定されたテーブル値、即ち、図11に示す特性を検索して遊脚時に高速駆動が可能となるように昇圧器98の昇圧動作を制御する如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給するのが容易となり、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0097】
さらに、4Vmへの昇圧あるいは4Vmからの降圧のタイミングを転倒の危険性が少ない遊脚時としたことで、駆動電圧と電流フィードバックゲインの設定のずれにより、万一1Yモータ42などが発振したとしても、転倒の可能性を低減することができる。
【0098】
尚、残余の構成および効果は、第1実施例と異ならない。
【実施例3】
【0099】
図13はこの発明の第3実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。図示のプログラムも、中央制御器24によって実行される。
【0100】
図14は第3実施例の電圧変更特性を2Yモータ46について示す、図8あるいは図11と同様の説明図である。第3実施例においては、図14に示す如く、ロボット10の動作から推定される必要関節角速度、即ち、膝関節の角速度ω[rad/second]から、それに対応した電圧レベルと電流フィードバックゲインの設定値を予めテーブル値として用意し、細やかな制御を可能とした。
【0101】
第1、第2実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、S200からS210まで第1、第2実施例と同様の処理を行った後、S212に進み、関節角速度ωを更新する。即ち、中央制御器24は歩行開始後、図14に示す特性に従って膝関節の角速度ωをω1からω4の間でモータドライバ92bに逐次出力する。尚、図14に示す値は2Yモータ46についての値であるが、1Yモータ42についても同様である。
【0102】
次いでS214において関節角速度ωの変更があると判断されるとき、S216においてモータドライバ92bを介して電流フィードバックゲインの設定を変更し、S218において設定電圧、即ち、昇圧器98aの出力電圧を変更させ、S220で電圧が変更されたか否か判断し、上記した処理をS222で歩行終了と判断されるまで繰り返す。尚、残余の処理は第1、第2実施例のそれと同様である。1Yモータ42と2Yモータ46についての処理のみを図示したが、その他の電動モータも類似した処理で制御されることも第1、第2実施例と同様である。
【0103】
図15は図13の処理を示すタイム・チャートである。
【0104】
上記の如く、第3実施例に係る移動ロボットの駆動装置においても、移動状況に応じて予め設定されたテーブル値、即ち、図14に示すようにロボット10の動作から推定される膝関節の角速度に基づき、それに対応した電圧レベルと電流フィードバックゲインを検索して昇圧器98aの昇圧動作を制御する如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給するのが容易となり、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0105】
尚、残余の構成および効果は、第1実施例と異ならない。
【実施例4】
【0106】
図16は、この発明に係る移動ロボットの駆動装置の第4の実施例を示す、図4と同様の駆動装置のブロック図である。
【0107】
第4実施例においては、昇圧器98a,98bを電力線90に介挿すると共に、電力線90に昇圧器98a,98bをバイパスするバイパス路90aを設ける如く構成した。バイパス路90aには逆流防止ダイオード104が設置される。
【0108】
また、バッテリ28の出力電圧を2Vmとし、電源制御器26の降圧器26aでVmに降圧するようにした。即ち、電力線90に加え、第2の電力線106を設け、電力線90を介して駆動電圧2Vmを供給すると共に、第2の電力線106を介して降圧された制御電圧Vmを供給するようにした。
【0109】
第4実施例は上記の如く構成したので、バイパス路に逆流防止ダイオード104を必要とする不都合がある反面、昇圧器98を介する場合に比して電力損失を低減することができる。尚、ダイオード104はFETに置き換えることも可能である。
【0110】
第1から第4実施例は上記の如く、関節を介して連結される複数本のリンク(大腿リンク30、下腿リンク32)と、前記関節に配置される電動モータ(1Yモータ42,2Yモータ46など)と、前記複数本のリンク以外の部位に配置される電源(バッテリ)28と、前記電源と前記電動モータを接続する電力線90と、前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を通電指令に応じて前記電動モータに供給して駆動する駆動回路(モータドライバ92)とを少なくとも備えた移動ロボット10の駆動装置において、前記電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98を備えると共に、前記電動モータと前記昇圧器と前記駆動回路とを同一のリンク(大腿リンク30あるいは下腿リンク32)に配置する如く構成した。
【0111】
また、基体14と、前記基体に股関節を介して接続される大腿リンク30と前記大腿リンクに膝関節を介して接続される下腿リンク32とからなる複数本の脚部12と、前記股関節に配置されると共に、前記大腿リンクを進行方向に駆動する第1の電動モータ(1Yモータ42)と、前記膝関節に配置されると共に、前記下腿リンクを前記進行方向に駆動する第2の電動モータ(2Yモータ46)と、前記大腿リンクと下腿リンク以外の部位に配置される電源(バッテリ)28と、前記電源と前記第1、第2の電動モータを接続する電力線90と、通電指令に応じて前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を前記第1、第2の電動モータに供給して駆動する駆動回路(モータドライバ92b)とを少なくとも備えた移動ロボット10の駆動装置において、前記第1、第2の電動モータ(1Yモータ42,2Yモータ46)に供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98aを備えると共に、前記第1、第2の電動モータ(1Yモータ42,2Yモータ46)と前記昇圧器98aと前記第1、第2の電動モータを駆動する駆動回路(モータドライバ92b)とを同一のリンク(大腿リンク30)に配置する如く構成した。
【0112】
また、第4実施例に示す如く、前記昇圧器98を前記電力線90に介挿すると共に、前記電力線90に前記昇圧器98をバイパスするバイパス路90aを設ける如く構成した。
【0113】
また、移動状況に応じて前記昇圧器の昇圧動作を制御する昇圧制御手段(S16からS22;S106からS130;S206からS218)を備える如く構成した。
【0114】
また、前記昇圧制御手段は、前記移動状況に応じて予め設定されたテーブル値を検索して前記昇圧器98の昇圧動作を制御する(S16からS22;S106からS130;S206からS220)如く構成した。
【0115】
また、前記昇圧制御手段は、前記昇圧器98の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、前記昇圧動作を中止する(S24,S30;S114,S134;S220,S224)如く構成した。
【0116】
また、前記昇圧器98と駆動回路(モータドライバ92)の少なくともいずれかに配置される温度センサを備えると共に、前記昇圧制御手段は、前記温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、前記昇圧動作を中止する(S18,S30;S116,S134;S210,S224)如く構成した。
【0117】
また、駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段(S20;S122,S130;S216,S226)を備えると共に、前記フィードバック制御手段は前記昇圧制御手段の昇圧動作に応じて前記フィードバック制御のゲイン(電流フィードバックゲイン)を変更する(S20;S122,S130;S216,S226)如く構成した。
【0118】
尚、上記において、脚部12についてのみ示したが、腕部20についても同様であり、関節を跨ぐモータドライバについて昇圧器を設けると共に、それらを同一のリンクに配置するようにしても良い。
【0119】
また、1個のモータドライバ92で2個の電動モータを制御するようにしたが、モータドライバ92で制御する電動モータの数はそれに限られるものではなく、モータドライバ92のCPUの処理能力や重量、大きさ、配線の複雑さなどさまざまな要因を考慮した上で決定される。例えば、モータドライバ92が非常に軽量で小型であれば、電動モータ1個に対して1個のモータドライバで制御することも可能である。またCPUの処理能が十分高ければ、1個のモータドライバで4個の電動モータを制御することもできる。
【0120】
また、1Yモータ42と2Yモータ46を制御するモータドライバ92bと3Yモータ48と3Xモータ50を制御するモータドライバ92cの双方に昇圧器98を配置したが、1Yモータ42と2Yモータ46を制御するモータドライバ92bのみに昇圧器98を配置するようにしても良い。
【0121】
また、電流フィードバックゲインを駆動電圧から算出したが、モータ回転数と駆動電圧は比例関係にあるので、以下の様にモータ回転数から算出しても良い。
Ki=C/N (N:モータ回転数、C:定数)
【0122】
また、図8、図11および図14において動作モードの数を3あるいは4としたが、それに限られるものではない。このように、数パターン程度までが現実的ではないかと考えられる。
【0123】
また、中央制御器24の出力に応じて駆動電圧を変更するようにしたが、6軸力センサ76の出力から着床や離床を判断して行っても良い。
【0124】
また、移動体の例として移動ロボット、特に脚式移動ロボットを示したが、この発明はそれに限られるものではなく、関節を介して連結される複数本のリンクを備えると共に、その関節に配置された電動モータに関節以外の部位に配置された電源から電圧を供給する移動ロボットであれば、どのようなものにも妥当する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】この発明の第1実施例に係る移動ロボットの駆動装置が対象とする移動ロボットの正面図である。
【図2】図1に示すロボットの側面図である。
【図3】図1に示すロボットをスケルトンで示す説明図である。
【図4】図2に示すバッテリから電動モータへの駆動電圧の供給を示すブロック図である。
【図5】図4に示すモータドライバなどのロボットおける配置を具体的に示す、図2と同様なロボットの側面図である。
【図6】図4などに示す電動モータ制御のフィードバックループを示すブロック図である。
【図7】この発明の第1実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図8】図7に示す処理で設定される駆動電圧と電流フィードバックゲインの特性を示す説明図である。
【図9】図7に示す処理を示すタイム・チャートである。
【図10】この発明の第2実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。
【図11】図10に示す処理で設定される駆動電圧と電流フィードバックゲインの特性を示す説明図である。
【図12】図10に示す処理を示すタイム・チャートである。
【図13】この発明の第3実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。
【図14】図13に示す処理で設定される駆動電圧と電流フィードバックゲインの特性を示す説明図である。
【図15】図13に示す処理を示すタイム・チャートである。
【図16】この発明に係る移動ロボットの駆動装置の第4の実施例を示す、図4と同様の駆動装置のブロック図である。
【図17】従来技術に係る移動ロボットの駆動装置を示す、図4と同様の駆動装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0126】
10 脚式移動ロボット(移動ロボット)、12 脚部、14 基体、20 腕部、24 中央制御器、26 電源制御器、28 バッテリ(電源)、30 大腿リンク、32 下腿リンク、40 1Zモータ(電動モータ)、42 1Yモータ(電動モータ)、44 1Xモータ(電動モータ)、46 2Yモータ(電動モータ)、48 3Yモータ(電動モータ)、50 3Xモータ(電動モータ)、90 電力線、92 モータドライバ(駆動回路)、96 信号線、98 昇圧器、102 温度センサ、104 逆流防止ダイオード、106 第2の電力線
【技術分野】
【0001】
この発明は移動ロボットの駆動装置に関し、より詳しくは関節に配置された電動モータに駆動電圧を効率的に供給するようにした移動ロボットの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動ロボットは、通例、搭載するバッテリ(電源)から電動モータなどのアクチュエータに駆動電圧を供給されて動作する。その例として特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、基体に股関節を介して連結されると共に、膝関節を介して連結される2本の脚部リンクと、それらの関節に配置される電動モータと、基体に配置されるバッテリ(電源)と、電力線を通じてバッテリから供給される電圧を電動モータに供給して駆動する駆動回路とを備えた脚式移動ロボットの駆動装置において、バッテリの残容量が少なくなったとき、転倒しそうな状況にあると判断し、重心を下げるように動作させている。
【特許文献1】特開平11−48170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来技術にあっては、バッテリからの電力線が電動モータによっては関節を跨ぐため、電力線が関節部分で断線して漏電した場合などを考慮すると、電動モータを低電圧で駆動することが望ましい。しかしながら、高速で移動するには電動モータを高電圧で駆動して回転数を上げる必要があり、このように両者の要求は相反するものであった。
【0004】
従ってこの発明の目的は上記した従来技術の不都合を解消し、安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足し、よって効率的に電圧を供給するようにした移動ロボットの駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、関節を介して連結される複数本のリンクと、前記関節に配置される電動モータと、前記複数本のリンク以外の部位に配置される電源と、前記電源と前記電動モータを接続する電力線と、前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を通電指令に応じて前記電動モータに供給して駆動する駆動回路とを少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、前記電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、前記電動モータと前記昇圧器と前記駆動回路とを同一のリンクに配置する如く構成した。
【0006】
請求項2にあっては、基体と、前記基体に股関節を介して接続される大腿リンクと前記大腿リンクに膝関節を介して接続される下腿リンクとからなる複数本の脚部と、前記股関節に配置されると共に、前記大腿リンクを進行方向に駆動する第1の電動モータと、前記膝関節に配置されると共に、前記下腿リンクを前記進行方向に駆動する第2の電動モータと、前記大腿リンクと下腿リンク以外の部位に配置される電源と、前記電源と前記第1、第2の電動モータを接続する電力線と、通電指令に応じて前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を前記第1、第2の電動モータに供給して駆動する駆動回路とを少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、前記第1、第2の電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、前記第1、第2の電動モータと前記昇圧器と前記第1、第2の電動モータを駆動する駆動回路とを同一のリンクに配置する如く構成した。
【0007】
請求項3に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、前記昇圧器を前記電力線に介挿すると共に、前記電力線に前記昇圧器をバイパスするバイパス路を設ける如く構成した。
【0008】
請求項4に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、移動状況に応じて前記昇圧器の昇圧動作を制御する昇圧制御手段を備える如く構成した。
【0009】
請求項5に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、前記昇圧制御手段は、前記移動状況に応じて予め設定されたテーブル値を検索して前記昇圧器の昇圧動作を制御する如く構成した。
【0010】
請求項6に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、前記昇圧制御手段は、前記昇圧器の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、前記昇圧動作を中止する如く構成した。
【0011】
請求項7に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、前記昇圧器と駆動回路の少なくともいずれかに配置される温度センサを備えると共に、前記昇圧制御手段は、前記温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、前記昇圧動作を中止する如く構成した。
【0012】
請求項8に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段を備えると共に、前記フィードバック制御手段は前記昇圧制御手段の昇圧動作に応じて前記フィードバック制御のゲインを変更する如く構成した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にあっては、関節を介して連結される複数本のリンクの関節に配置される電動モータに、電力線を通じて電源から供給される電圧を通電指令に応じて供給して駆動する駆動回路を少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、電動モータと昇圧器と駆動回路とを同一のリンクに配置する如く構成したので、安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。
【0014】
即ち、駆動回路と同一のリンクに昇圧器を備えることで電力線の送電電圧を低く抑えることができ、電源と電動モータを接続する電力線が関節を跨ぐとき、関節部分で断線して漏電したとしても、不都合が生じることがない。他方、高電圧が必要なときは昇圧器で昇圧して供給することで、高速移動にも対応することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。
【0015】
請求項2にあっては、基体に股関節を介して接続される大腿リンクと大腿リンクに膝関節を介して接続される下腿リンクとからなる複数本の脚部を備えると共に、大腿リンクなどを進行方向に駆動する第1、第2の電動モータに電力線を通じて電源から供給される電圧を通電指令に応じて供給して駆動する駆動回路を少なくとも備えた脚式移動ロボットの駆動装置において、第1、第2の電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、第1、第2の電動機と昇圧器と駆動回路とを同一のリンクに配置する如く構成したので、請求項1と同様、安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。
【0016】
さらに、昇圧器の配置を、電動モータのうち、大腿リンクなどを進行方向に駆動する、換言すれば高電圧が要求されるものに限定して配置すると共に、それらを同一リンクに配置するように構成したので、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0017】
請求項3に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、昇圧器を電力線に介挿すると共に、電力線に昇圧器をバイパスするバイパス路を設ける如く構成したので、上記した効果に加え、バイパス路に逆流防止ダイオードなどを必要とする不都合がある反面、昇圧器を介する場合に比して電力損失を低減することができる。
【0018】
請求項4に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、移動状況に応じて昇圧器の昇圧動作を制御する昇圧制御手段を備える如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給することができ、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0019】
請求項5に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、昇圧制御手段は、移動状況に応じて予め設定されたテーブル値を検索して昇圧器の昇圧動作を制御する如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給するのが容易となり、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0020】
請求項6に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、昇圧制御手段は、昇圧器の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、昇圧動作を中止する如く構成したので、上記した効果に加え、単に昇圧器の出力を監視するだけでフェールを検出することができ、移動を停止するなど、必要な対策を講じることができる。
【0021】
請求項7に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、昇圧器と駆動回路の少なくともいずれかに配置される温度センサを備えると共に、昇圧制御手段は、温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、昇圧動作を中止する如く構成したので、上記した効果に加え、温度を通じてフェールを検出することができ、移動を停止するなど、必要な対策を講じることができる。
【0022】
請求項8に係る移動ロボットの駆動装置にあっては、駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段を備えると共に、フィードバック制御手段は昇圧制御手段の昇圧動作に応じてフィードバック制御のゲインを変更する如く構成したので、上記した効果に加え、電動モータを必要な回転数で確実に駆動することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に即してこの発明に係る移動ロボットの駆動装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、この発明の第1実施例に係る移動ロボットの駆動装置が対象とする移動ロボットの正面図であり、図2は図1に示すロボットの側面図である。尚、移動ロボットとしては2足の脚式移動ロボットを例にとる。
【0025】
図1に示すように、脚式移動ロボット(以下単に「ロボット」という)10は、複数本、即ち、左右2本の脚部12L,12R(左側をL、右側をRとする。以下同じ)を備える。脚部12L,12Rは、基体(上体)14の下部に連結される。基体14の上部には頭部16が連結されると共に、側方には複数本、即ち、左右2本の腕部20L,20Rが連結される。左右の腕部20L,20Rの先端には、それぞれハンド(エンドエフェクタ)22L,22Rが連結される。
【0026】
図2に示すように、基体14の背部には格納部14aが設けられ、その内部には中央制御器24、電源制御器26が収容されると共に、基体14の内部にはバッテリ(電源)28などが収容される。
【0027】
図3は、図1に示すロボット10をスケルトンで表す説明図である。以下、同図を参照し、ロボット10の内部構造について関節を中心に説明する。尚、図示のロボット10は左右対称であるので、以降L,Rの付記を省略する。
【0028】
左右の脚部12は、それぞれ大腿リンク30と下腿リンク32と足部34とを備える。大腿リンク30は、股関節を介して基体14に連結される。図3では基体14を基体リンク36として簡略的に示す。股関節には、Z軸(ヨー軸)回りの回転軸を有する電動モータ(「1Zモータ」という)40と、Y軸(ピッチ軸。具体的には、ロボット10の左右方向)回りの回転軸を有する電動モータ(「1Yモータ」という)42と、X軸(ロール軸。具体的には、ロボット10の前後方向)回りの回転軸を有する電動モータ(「1Xモータ」という)44が配置され、3自由度を備える。
【0029】
膝関節にはY軸回りの回転軸を有する電動モータ(「2Yモータ」という)46が配置され、1自由度を備える。足関節にはY軸回りの回転軸を有する電動モータ(「3Yモータ」という)48とX軸回りの回転軸を有する電動モータ(「3Xモータ」という)50が配置され、2自由度を備える。大腿リンク30と下腿リンク32は膝関節を介して連結されると共に、下腿リンク32と足部34は足関節を介して連結される。脚部12は、基体14と脚部12の適宜位置に配置された12個の電動モータによって12個の回転軸が個別に駆動される。
【0030】
左右の腕部20は、それぞれ上腕リンク52と下腕リンク54を備える。上腕リンク52は肩関節を介して基体14に連結される。上腕リンク52と下腕リンク54は肘関節を介して連結されると共に、下腕リンク54とハンド22は手首関節を介して連結される。
【0031】
肩関節にはY軸回りの回転軸を有する電動モータ56とX軸回りの回転軸を有する電動モータ58とZ軸回りの回転軸を有する電動モータ60が配置され、3自由度を備える。肘関節にはY軸回りの回転軸を有する電動モータ62が配置され、1自由度を備える。手首関節にはZ軸回りの回転軸を有する電動モータ64とY軸回りの回転軸を有する電動モータ66とX軸回りの回転軸を有する電動モータ68が配置され、3自由度を備える。腕部20も、脚部12と同様、基体14と腕部20の適宜位置に配置された14個の電動モータによって14個の回転軸が個別に駆動される。
【0032】
頭部16は首関節を介して基体14に連結され、2自由度を備える。首関節には、Z軸回りの回転軸を有する電動モータ72とY軸回りの回転軸を有する電動モータ74が配置され、2自由度を備える。頭部16も2個の電動モータによって個別に駆動される。
【0033】
左右の脚部12には、それぞれ6軸力センサ76が取り付けられ、床面から脚部12に作用する床反力の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzを示す信号を出力すると共に、左右の腕部20にも同種の6軸力センサ78がハンド22と手首関節の間で取り付けられ、腕部20に作用する外力の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzを示す信号を出力する。
【0034】
基体14には、X,Y,Z軸方向の加速度を示す出力を生じる3個の加速度センサとX,Y,Z軸回りの角速度を示す出力を生じる3個の振動ジャイロからなる傾斜計80が配置される。
【0035】
頭部16には、2個のCCDカメラ82が設置され、ロボット10の周囲環境をステレオ視で撮影して得た画像を出力すると共に、マイクロフォン84aとスピーカ84bからなる音声入出力装置84が設けられる。
【0036】
尚、上記した脚部12と腕部20を構成する電動モータ40,42などのそれぞれにはロータリエンコーダ(図示せず)が配置され、回転角度、即ち、関節角度に応じた信号を出力する。尚、電動モータ40,42などは例えばDCブラシレスモータからなる。
【0037】
上記したセンサなどの出力は中央制御器24に入力される。中央制御器24はCPUユニットからなり、脚部12の1Zモータ40などの電動モータの動作を制御して脚部12を駆動することでロボット10を移動させると共に、腕部20の電動モータ56などの動作を制御して腕部20を駆動し、さらに頭部16の電動モータ72などの動作を制御して頭部16の向きを調整する。
【0038】
図4は、上記したバッテリ28から1Zモータ(電動モータ)40などの電動モータへの駆動電圧の供給を示すブロック図である。尚、同図では腕部20の構成の図示を省略すると共に、脚部12も片方のみ示す。
【0039】
図示の如く、バッテリ28と1Zモータ40などの6個の電動モータは、電力線90によって電源制御器26と3個のモータドライバ(駆動回路)92、より具体的には92a,92b,92cを介して接続される。中央制御器24は信号線94によって電源制御器26に双方向から通信自在に接続されると共に、信号線96によって3個のモータドライバ92に双方向から通信自在に接続される。3個のモータドライバ92も内部にCPUを備え、接続される2個の電動モータの動作を制御する。
【0040】
3個のモータドライバ92のうち、92b,92cに接続される電力線90にはそれぞれ昇圧器98、より具体的には98a,98bが介挿される。昇圧器98aとモータドライバ92b、および昇圧器98bとモータドライバ92cは信号線100を介して双方向通信自在に接続される。
【0041】
バッテリ28からは比較的低い所定電圧Vm[V]が出力される。バッテリ28から出力される所定電圧Vmは電源制御器26を介して電力線90に送出され、電力線90によってモータドライバ92(および後述する温度センサなど)には制御電源として、また1Zモータ40などの電動モータには駆動電源として供給される。より正確には、電力線90は中途で分岐し、その分岐線90aを介して制御電源が3個のモータドライバ92などに動作電源として送られる。
【0042】
図示の構成により、モータドライバ92aを介して1Zモータ40,1Xモータ44には所定電圧Vmがそのまま駆動電圧として供給される一方、モータドライバ92b,92cを介して1Yモータ42,2Yモータ46、3Yモータ48、3Xモータ50には所定電圧Vm、あるいは所定電圧Vmを昇圧器98で最大4倍(4Vm)まで昇圧してなる電圧が駆動電圧として供給される。
【0043】
信号線96はARCNET(RS485ベースの通信)やイーサネット(登録商標)からなり、体内ネットワークを形成する。6軸力センサ76の出力は、信号線96を通じて中央制御器24に送られる。また、3個のモータドライバ92と2個の昇圧器98の内部には温度センサ102がそれぞれ配置され、配置部位の温度を示す出力を生じる。温度センサ102の出力も信号線96を介して(図示せず)中央制御器24およびモータドライバ92に送られる。図示は省略するが、1Zモータ40などに配置されるロータリエンコーダの出力も信号線96を介して中央制御器24およびモータドライバ92に送られる。
【0044】
先に述べた如く、中央制御器24は脚部12の1Zモータ40などの動作を制御して脚部12を駆動する。即ち、中央制御器24は予め設定された歩容から決定される動作(歩行)モードに基づき、それぞれの電動モータについて位置/速度/電流(トルク)制御指令をモータドライバ92に送る一方、その指令に対する実動作値がモータドライバ92から中央制御器24に送られる。その他にも、温度、異常、モータドライバ92の固有の設定値などの情報が中央制御器24とモータドライバ92の間で送受される。
【0045】
同様に、中央制御器24と電源制御器26の間においても、信号線94を介して電力制御指令、電圧/電流などの情報と温度/異常/設定値などの各種情報が送受され、頭部16、腕部20、脚部12への電力の分配を含む電力制御が実行される。
【0046】
図5は、図4に示すモータドライバ92などのロボット10における配置を具体的に示す、図2と同様なロボット10の側面図である。
【0047】
図示の如く、中央制御器24と電源制御器26は格納部14aに収納され、バッテリ28は基体14の内部に配置されることから、電力線90や信号線(体内ネットワーク)96は、股関節や膝関節を跨いて大腿リンク30や下腿リンク32に張り巡らされる。電力線90は、関節部分では関節の動きを考慮して緩やかに配線される。
【0048】
モータドライバ92aは基体14に配置される一方、1Zモータ40と1Xモータ44は大腿リンク30に配置され、従って両者は同一のリンクに配置されない。他方、モータドライバ92bと1Yモータ42,2Yモータ46と昇圧器98aとは同一のリンク(大腿リンク30)に配置される。また、モータドライバ92cと3Yモータ48,3Xモータ50と昇圧器98bとも同一のリンク(下腿リンク32)に配置される。
【0049】
より具体的には、大腿リンク30を進行方向に駆動する1Yモータ42と、下腿リンク32を進行方向に駆動する2Yモータ46と、それらのモータドライバ92bとその昇圧器98aは、同一のリンク(大腿リンク30)に配置される。さらに、足部34を進行方向に駆動する3Yモータ48と進行方向に直交する左右方向に駆動する3Xモータ50と、それらのモータドライバ92cとその昇圧器98bも、同一のリンク(下腿リンク32)に配置される。
【0050】
ここで、本願の課題について説明すると、図17は特許文献1記載技術などで使用される、バッテリ28から1Zモータ40などへの駆動電圧の供給を示す、図4と同様のブロック図である。
【0051】
図17に示す構成の場合、バッテリ28から電力線90を通じて所定電圧Vmを数倍してなる高電圧が1Zモータ40などの電動モータに供給されるため、ロボット10が転倒したときに関節部分で電力線90が断線して露出する恐れがある。従って、安全性を考慮すると、低い電圧でモータに電力を供給することが望ましい。ロボット10が直立状態もしくはそれほど高速動作をしない場合、ある程度低電圧(例えば所定電圧を2倍した程度の値(2Vm))でも動作することは可能である。
【0052】
しかしながら、ロボット10が高速歩行するためには電動モータの回転数を上げる必要があるため、電動モータの大きさや効率の面からも必然的に電圧は高くする必要があり、ロボット10の電源電圧を低くすることは困難であった。つまり安全を考慮した低電圧化と高速歩行のための高電圧化は設計上相反していた。尚、この明細書で「高速歩行」は歩行動作のみならず、走行動作も含む意味で使用する。
【0053】
図4および図5に示す構成はそれを解決するものであり、図17に示す構成に加え、モータドライバ92b,92cの前段に昇圧器98a,98bを介挿すると共に、昇圧器98aとモータドライバ92bおよび1Yモータ42などは同じリンク内に配置し、それらを接続する電力線90が関節を跨がないようにした。ただし、1Zモータ40と1Xモータ44は、特に高速回転を必要とするものではなく、モータドライバ92aとの間の電力線90が股関節を跨ぐため、モータドライバ92aには昇圧器98を配置しないことした。
【0054】
モータドライバ92b,92cは、直立や低速歩行時はこの昇圧器98a,98bをオフしておく。他方、高速歩行動作の時には中央制御器24からモータドライバ92b,92cに信号線(体内ネットワーク)96を介して高速歩行(動作)モードの情報を送り、これを受けたモータドライバ92b,92cは信号線100を介して駆動電圧コントロール信号を送り、昇圧器98a,98bをオンする。
【0055】
これにより、オンされた昇圧器98a,98bの後段のモータドライバ92b,92cには高圧の駆動電力が供給され、モータドライバ92a,92bは信号線96を介して中央制御器24から受信した動作モードに対応した電流フィードバックゲインに設定を変更することで所望のモータ回転数を得る。
【0056】
高速歩行はロボット10が約1.8km/hを超える速度で歩行する動作モード、低速歩行はそれ未満で歩行する動作モードを意味する。低速歩行では遊脚期間であってもいずれの電動モータの回転数も低いが、高速歩行では遊脚期間中に1Yモータ42と2Yモータ46に高速回転が要求される。従って、図5に関して説明した如く、少なくともそれらの電動モータについては昇圧器98を設けると共に、モータドライバ92も含めて同一のリンクに配置するようにした。
【0057】
次に駆動電圧が変わったときのモータドライバ92の制御について説明すると、モータドライバ92は高速/低速の動作モードに対応した電流フィードバックゲインに設定を変更することで、電動モータに要求される回転速度を実現する。図6にモータ制御のフィードバックループを示す。
【0058】
1Zモータ40などのDCブラシレスモータは、一般に、図6に示されるように、位置と速度と電流についてフィードバック制御される。電流フィードバックゲインKi、より具体的には比例ゲインKipおよび積分ゲインKiiは、位置フィードバックループと速度フィードバックループの内側で電動モータに流れる電流を制御するループのフィードバック量の大きさを表す。
【0059】
電動モータのエネルギーはトルク×回転数であり、トルクは電流に比例し、回転数は電圧に比例する。同じエネルギーであれば電圧と電流は反比例の関係にあるので、電圧の増加率だけ電流を抑えるようにする。つまり、以下の式の通りに駆動電圧の切り替えを電流フィードバックゲインに反映することで電動モータに流す電流を変え、電圧を変えても所期の動作を実現させることができる。
Ki=C/V (Ki:電流フィードバックゲイン,V:駆動電圧,C:定数)
【0060】
このように電圧変動に対して電動モータの動作特性を維持するには、電流フィードバックゲインを調整するのが最も簡単で理にかなった手法となる。また、フィードバックゲインは電流ゲインでなければならず、位置ゲインや速度ゲインでは実現はできない。
【0061】
図7はこの実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは中央制御器24によって実行される。
【0062】
図8は図7の処理で設定される駆動電圧などの特性を示す説明図である。図8に示す値は2Yモータ46についての値であるが、1Yモータ42についても同様である。図8に示す如く、図7に示す処理において駆動電圧は歩行時以外では所定電圧Vmのままとするが、歩行を開始した後は歩行速度に応じてその2倍(2Vm)あるいは4倍(4Vm)昇圧する。
【0063】
電流フィードバックゲインは駆動電圧に応じて設定する。即ち、比例ゲインKipと積分ゲインKiiは、駆動電圧が最大となるときの値をそれぞれa,bとすると、駆動電圧が減少するにつれて2倍(2a,2b)あるいは4倍(4a,4b)となるように設定する。
【0064】
尚、この実施例に係るロボット10は、1Yモータ42と2Yモータ46が所定電圧Vmで駆動されるときは直立するのみで歩行できず、2Vmで駆動される場合には低速歩行は可能であるが、高速歩行はできず、4Vmで駆動されて初めて高速歩行も可能となるものとする。また、図7には1Yモータ42と2Yモータ46についての処理のみを示すが、その他の電動モータも昇圧されない点を除くと、図7に示す処理に類似した処理で制御される。
【0065】
以下説明すると、S10でパワーオンを実行する。図4を参照してこの処理を説明すると、中央制御器24は電源制御器26に対し、バッテリ28からモータドライバ92bに所定電圧Vmを供給するように指令する。モータドライバ92bは電源制御器26から指令された所定電圧Vmが供給されたとき、パワーオンが完了した旨の信号を中央制御器24に送る。
【0066】
次いでS12に進み、サーボオンを実行する。即ち、中央制御器24はモータドライバ92bに対し、1Yモータ42などを制御原点位置まで回転した後、その位置で停止させるように指令する。モータドライバ92bはその指令に応じた動作を実行し、それが終了したとき、サーボオンが完了(サーボ機構の有効化動作が完了)した旨の信号を中央制御器24に送る。
【0067】
次いでS14に進み、ロボット10を直立姿勢となるように制御する。具体的には、サーボオンが完了した後、ロボット10をリフタ(図示せず)から降ろし、6軸力センサ76と傾斜計80の出力に基づいて直立状態を保つように制御する。
【0068】
次いでS16に進み、歩行開始指令(高速/低速歩行の動作モード信号からなる)をモータドライバ92a,92b,92cに出力する。即ち、中央制御器24からモータドライバ92bに動作モード信号を送ることで高速歩行動作の開始前に駆動電圧を上げさせる一方、モータドライバ92の電流フィードバックゲインを下げさせることにより、1Yモータ42などの高速回転に対応させる。
【0069】
次いでS18に進み、温度センサ102で検出された昇圧器98あるいはモータドライバ92の温度が所定値を超える温度異常が生じているか否か判断し、否定されるときはS20に進み、モータドライバ92においてS16で出力された歩行開始指令の動作モードに応じて電流フィードバックゲインの設定を変更させ、S22に進み、昇圧器98をオンさせて動作モードに応じて2Vmあるいは4Vmに昇圧させる。尚、この時点まで駆動電圧は所定電圧Vmのままとする。
【0070】
次いでS24に進み、昇圧器98の昇圧動作が正常か否か判断する。これは昇圧器98の出力電圧をモータドライバ92b,92cのA/Dコンバータ(図示せず)でモニタさせ、所定の電圧範囲に昇圧されているか判断することで行う。
【0071】
S24で肯定されるときはS26に進み、ロボット10の歩行を開始し、S28に進んで歩行終了となるまで継続する。次いでS30に進み、モータへの供給電圧を定常状態のVmに降圧させ、S32に進み、Vmに対応した電流フィードバックゲインに設定を変更させる。次いでS34に進み、直立姿勢に再び制御し、S36に進んでサーボオフ(電動モータの停止)し、S38に進み、パワーオフ(バッテリ28からの電圧供給停止)する。
【0072】
尚、S18で肯定される場合、あるいはS24で否定される場合、即ち、温度異常が生じたか、あるいは所定の電圧範囲に昇圧されない場合、昇圧動作を実行しないか、実行しているときは中止する。
【0073】
図9は、図7の処理を示すタイム・チャートである。
【0074】
図示の如く、歩行動作開始直前の直立時に電流フィードバックゲインの設定値を変更し、続いて昇圧器98で昇圧し、歩行が終了した直後に逆の手順で降圧して電流フィードバックゲインの設定値を変更する。即ち、電流フィードバックゲインの設定値は昇圧器98の電圧を上げる前に変更し、電圧を下げた後に変更する。図では左脚の昇圧器とモータドライバの制御期間を表記していないが、右脚と同様の処理が行われる。このように、昇圧する前に電流フィードバックゲインを下げ、逆に降圧した後に電流フィードバックゲインを上げるようにしている。この順序が逆の場合はモータが発振する場合があるので、安全を考えてこのように設定する。
【0075】
尚、昇圧が完了する前に電流フィードバックゲインが下げられる事態も生じ得るが、その場合にはモータのトルクが不足することも考えられる。しかしながら、切り替えのタイミングは直立時であるため、トルク不足が若干であれば、それによる影響は少ないと思われる。これは、第2実施例で切り替えのタイミングを遊脚とするときも同様である。いずれにしても、この切り替えのタイミングのずれは、少なければ少ないほど望ましい。
【0076】
上記した如く、第1実施例にあっては、関節、即ち、股関節、膝関節、足関節を介して連結される複数本(2本)のリンク(大腿リンク30、下腿リンク32)の関節に配置される1Yモータ42などの電動モータに、電力線90を通じてバッテリ(電源)28から供給される電圧を通電指令に応じて供給して駆動するモータドライバ(駆動回路)92a,92b,92cを少なくとも備えた移動ロボット10の駆動装置において、1Yモータ42などの電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98a,98bを備えると共に、1Yモータ42などと昇圧器98a、98bと駆動回路92b,92cとを同一のリンク(大腿リンク30、下腿リンク32)に配置する如く構成した。
【0077】
より具体的には、基体14に股関節を介して接続される大腿リンク30と大腿リンク30に膝関節を介して接続される下腿リンク32とからなる複数本(2本)の脚部12を備えると共に、少なくとも大腿リンク30などを進行方向に駆動する1Yモータ(第1の電動モータ)42と2Yモータ(第2の電動モータ)46に電力線90を通じてバッテリ(電源)28から供給される電圧を通電指令に応じて供給して駆動するモータドライバ(駆動回路)92b,92cを少なくとも備えた脚式移動ロボット10の駆動装置において、少なくとも1Yモータ42と2Yモータ46に供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98aを備えると共に、少なくとも1Yモータ42などと昇圧器98aとモータドライバ92bとを同一のリンク(大腿リンク)32に配置する如く構成した。
【0078】
これにより、安全性を考慮した低電圧要求と高速移動のための高電圧要求とを共に満足することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。即ち、モータドライバ92b,92cと同一のリンクに昇圧器98a,98bを備えることで電力線90の電圧を低く抑えることができ、バッテリ28と1Yモータ42などの電動モータを接続する電力線90が関節を跨ぐとき、関節部分で断線するなどして漏電したとしても、それほど不都合は生じない。他方、高電圧が必要なときは昇圧器98a,98bで昇圧して供給することで、高速移動にも対応することができ、よって効率的に電圧を供給することができる。
【0079】
さらに、昇圧器98a,98bの配置を、電動モータのうちの高電圧が要求されるもの、即ち、大腿リンク30などを進行方向に駆動する1Yモータ42,2Yモータ46,3Yモータ48などに限定して配置すると、それらを大腿リンク30などの同一のリンクに配置するように構成したので、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0080】
さらに、1Yモータ42などで駆動電圧は全て昇圧器98を介した出力とするため、バッテリ28の電圧が変動しても駆動電圧を一定に保つことができ、モータ動作を安定にすることができる。また、駆動電圧と制御電圧を同じ値(Vm)とすることで、図17に示した従来技術で使用される電源制御器26内の降圧器が不要となり、電源制御器26からモータドライバ92への電力線90も1本のケーブルになるため、軽量かつ低コストにすることができる。ただし、電圧が低くなる分電流を多く流す必要があるため、電力線90はより太くなることも予想されるが、それを超えるメリットがある。
【0081】
また、移動状況に応じて昇圧器98の昇圧動作を制御する昇圧制御手段(S16からS22)を備える、より具体的には歩行開始指令(動作モード信号)を送り、高速歩行動作開始前に駆動電圧を上げさせる一方、モータドライバ92を介して電流フィードバックゲインを下げさせることにより電動モータの高速回転に対応させる如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給することができ、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0082】
また、昇圧制御手段は、昇圧器98の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、昇圧動作を中止する(S24,S30)如く構成したので、上記した効果に加え、単に昇圧器98の出力を監視するだけでフェールを検出することができ、移動を停止するなど、必要な対策を講じることができる。
【0083】
また、昇圧器98とモータドライバ92の少なくともいずれかに配置される温度センサ102を備えると共に、昇圧制御手段は、温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、昇圧動作を中止する(S18,S30)如く構成したので、上記した効果に加え、温度を通じてフェールを検出することができ、移動を停止するなど、必要な対策を講じることができる。
【0084】
また、駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段(中央制御器24,モータドライバ92)を備えると共に、昇圧制御手段の昇圧動作に応じて電流フィードバック制御のゲインを変更する(S20)如く構成したので、上記した効果に加え、2Yモータ46などを必要な回転数で確実に駆動することができる。
【実施例2】
【0085】
図10はこの発明の第2実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。図示のプログラムも、中央制御器24によって実行される。
【0086】
図11は、図10の処理で設定される駆動電圧などの特性を示す、図8と同様の説明図である。第2実施例においては図11に示すように駆動電圧を第1実施例と同様に歩行時以外と歩行時で相違させると共に、低速歩行時と高速歩行時の支持脚時では2Vmとする一方、高速回転が要求される高速歩行時の遊脚時では4Vmとした。電流フィードバックゲインの設定値の変更は、第1実施例と同様である。
【0087】
また、図11に示す値は2Yモータ46についての値であるが、1Yモータ42についても同様であることも第1実施例と異ならない。また、1Yモータ42と2Yモータ46についての処理のみを示すが、その他の電動モータも類似した処理で制御されることも第1実施例と同様である。
【0088】
以下説明すると、S100からS104まで第1実施例と同様の処理を行った後、S106に進み、歩行時直前に歩行開始信号をモータドライバ92に出力し、S108に進み、歩行を開始させる。
【0089】
S110においてモータドライバ92bにおいて歩行開始信号に応じて直立スタート時の設定電圧である2Vmに昇圧させるために電流フィードバックゲインの設定値を変更させ、S112において昇圧器98aをオンさせて2Vmに昇圧させる。次いでS114に進み、昇圧されたか否か判断し、肯定されるときはS116に進み、温度異常が生じたか否か判断する。
【0090】
S116で否定されるときはS118に進み、動作モードの更新、即ち、図11に示す動作モードをモータドライバ92b,92cに逐次出力し、S112に進み、モータドライバ92bにおいて図11に示す特性に基づいて高速駆動が要求されるか否か判断させる。S120で肯定されるときはS122に進み、モータドライバ92b,92cを介して図11の特性に基づいて電流フィードバックゲインを高速駆動時の設定値に変更させ、S124に進み、昇圧器98の出力を4Vmに昇圧させる。次いでS126に進み、昇圧されたか否か再び判断する。
【0091】
他方、S120で否定されるときはS128に進み、低速駆動で足りるので、図11の特性に基づいてモータドライバ92bを介して2Vmに降圧させ、次いでS130に進み、2Vmに対応する電流フィードバックゲインに設定値に変更させる。
【0092】
次いでS132に進み、歩行終了か否か判断し、否定される限り、上記した処理を繰り返す一方、肯定されるときはS134に進んで定常状態のVmに降圧させ、S136に進み、電流フィードバックゲインの設定値を対応する値に変更し、第1実施例と同様、S138からS142の処理を経て終了する。尚、S114で否定される、あるいはS116で肯定される、あるいはS126で否定されるときはS134に進む。
【0093】
図12は図10の処理を示すタイム・チャートである。
【0094】
ロボット10が直立状態から歩き始めたときに最初に出す脚が遊脚となり、反対の脚は支持脚となる。高速回転が必要になるのは、高速歩行時に遊脚である右足を大きく前に出すときで、この期間を黒色で示す。
【0095】
通常、高速回転が必要になるのは遊脚時である。換言すれば遊脚であり、しかも高速回転する瞬間だけ電圧が高ければ足りるので、第2実施例においては、4Vmへの昇圧あるいは4Vmからの降圧のタイミングを遊脚時とし、その瞬間のみ高圧となるに制御するようにした。
【0096】
上記の如く、第2実施例に係る移動ロボットの駆動装置においても移動状況に応じて予め設定されたテーブル値、即ち、図11に示す特性を検索して遊脚時に高速駆動が可能となるように昇圧器98の昇圧動作を制御する如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給するのが容易となり、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0097】
さらに、4Vmへの昇圧あるいは4Vmからの降圧のタイミングを転倒の危険性が少ない遊脚時としたことで、駆動電圧と電流フィードバックゲインの設定のずれにより、万一1Yモータ42などが発振したとしても、転倒の可能性を低減することができる。
【0098】
尚、残余の構成および効果は、第1実施例と異ならない。
【実施例3】
【0099】
図13はこの発明の第3実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。図示のプログラムも、中央制御器24によって実行される。
【0100】
図14は第3実施例の電圧変更特性を2Yモータ46について示す、図8あるいは図11と同様の説明図である。第3実施例においては、図14に示す如く、ロボット10の動作から推定される必要関節角速度、即ち、膝関節の角速度ω[rad/second]から、それに対応した電圧レベルと電流フィードバックゲインの設定値を予めテーブル値として用意し、細やかな制御を可能とした。
【0101】
第1、第2実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、S200からS210まで第1、第2実施例と同様の処理を行った後、S212に進み、関節角速度ωを更新する。即ち、中央制御器24は歩行開始後、図14に示す特性に従って膝関節の角速度ωをω1からω4の間でモータドライバ92bに逐次出力する。尚、図14に示す値は2Yモータ46についての値であるが、1Yモータ42についても同様である。
【0102】
次いでS214において関節角速度ωの変更があると判断されるとき、S216においてモータドライバ92bを介して電流フィードバックゲインの設定を変更し、S218において設定電圧、即ち、昇圧器98aの出力電圧を変更させ、S220で電圧が変更されたか否か判断し、上記した処理をS222で歩行終了と判断されるまで繰り返す。尚、残余の処理は第1、第2実施例のそれと同様である。1Yモータ42と2Yモータ46についての処理のみを図示したが、その他の電動モータも類似した処理で制御されることも第1、第2実施例と同様である。
【0103】
図15は図13の処理を示すタイム・チャートである。
【0104】
上記の如く、第3実施例に係る移動ロボットの駆動装置においても、移動状況に応じて予め設定されたテーブル値、即ち、図14に示すようにロボット10の動作から推定される膝関節の角速度に基づき、それに対応した電圧レベルと電流フィードバックゲインを検索して昇圧器98aの昇圧動作を制御する如く構成したので、上記した効果に加え、必要な電圧を過不足なく供給するのが容易となり、一層効率的に電圧を供給することができる。
【0105】
尚、残余の構成および効果は、第1実施例と異ならない。
【実施例4】
【0106】
図16は、この発明に係る移動ロボットの駆動装置の第4の実施例を示す、図4と同様の駆動装置のブロック図である。
【0107】
第4実施例においては、昇圧器98a,98bを電力線90に介挿すると共に、電力線90に昇圧器98a,98bをバイパスするバイパス路90aを設ける如く構成した。バイパス路90aには逆流防止ダイオード104が設置される。
【0108】
また、バッテリ28の出力電圧を2Vmとし、電源制御器26の降圧器26aでVmに降圧するようにした。即ち、電力線90に加え、第2の電力線106を設け、電力線90を介して駆動電圧2Vmを供給すると共に、第2の電力線106を介して降圧された制御電圧Vmを供給するようにした。
【0109】
第4実施例は上記の如く構成したので、バイパス路に逆流防止ダイオード104を必要とする不都合がある反面、昇圧器98を介する場合に比して電力損失を低減することができる。尚、ダイオード104はFETに置き換えることも可能である。
【0110】
第1から第4実施例は上記の如く、関節を介して連結される複数本のリンク(大腿リンク30、下腿リンク32)と、前記関節に配置される電動モータ(1Yモータ42,2Yモータ46など)と、前記複数本のリンク以外の部位に配置される電源(バッテリ)28と、前記電源と前記電動モータを接続する電力線90と、前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を通電指令に応じて前記電動モータに供給して駆動する駆動回路(モータドライバ92)とを少なくとも備えた移動ロボット10の駆動装置において、前記電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98を備えると共に、前記電動モータと前記昇圧器と前記駆動回路とを同一のリンク(大腿リンク30あるいは下腿リンク32)に配置する如く構成した。
【0111】
また、基体14と、前記基体に股関節を介して接続される大腿リンク30と前記大腿リンクに膝関節を介して接続される下腿リンク32とからなる複数本の脚部12と、前記股関節に配置されると共に、前記大腿リンクを進行方向に駆動する第1の電動モータ(1Yモータ42)と、前記膝関節に配置されると共に、前記下腿リンクを前記進行方向に駆動する第2の電動モータ(2Yモータ46)と、前記大腿リンクと下腿リンク以外の部位に配置される電源(バッテリ)28と、前記電源と前記第1、第2の電動モータを接続する電力線90と、通電指令に応じて前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を前記第1、第2の電動モータに供給して駆動する駆動回路(モータドライバ92b)とを少なくとも備えた移動ロボット10の駆動装置において、前記第1、第2の電動モータ(1Yモータ42,2Yモータ46)に供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器98aを備えると共に、前記第1、第2の電動モータ(1Yモータ42,2Yモータ46)と前記昇圧器98aと前記第1、第2の電動モータを駆動する駆動回路(モータドライバ92b)とを同一のリンク(大腿リンク30)に配置する如く構成した。
【0112】
また、第4実施例に示す如く、前記昇圧器98を前記電力線90に介挿すると共に、前記電力線90に前記昇圧器98をバイパスするバイパス路90aを設ける如く構成した。
【0113】
また、移動状況に応じて前記昇圧器の昇圧動作を制御する昇圧制御手段(S16からS22;S106からS130;S206からS218)を備える如く構成した。
【0114】
また、前記昇圧制御手段は、前記移動状況に応じて予め設定されたテーブル値を検索して前記昇圧器98の昇圧動作を制御する(S16からS22;S106からS130;S206からS220)如く構成した。
【0115】
また、前記昇圧制御手段は、前記昇圧器98の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、前記昇圧動作を中止する(S24,S30;S114,S134;S220,S224)如く構成した。
【0116】
また、前記昇圧器98と駆動回路(モータドライバ92)の少なくともいずれかに配置される温度センサを備えると共に、前記昇圧制御手段は、前記温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、前記昇圧動作を中止する(S18,S30;S116,S134;S210,S224)如く構成した。
【0117】
また、駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段(S20;S122,S130;S216,S226)を備えると共に、前記フィードバック制御手段は前記昇圧制御手段の昇圧動作に応じて前記フィードバック制御のゲイン(電流フィードバックゲイン)を変更する(S20;S122,S130;S216,S226)如く構成した。
【0118】
尚、上記において、脚部12についてのみ示したが、腕部20についても同様であり、関節を跨ぐモータドライバについて昇圧器を設けると共に、それらを同一のリンクに配置するようにしても良い。
【0119】
また、1個のモータドライバ92で2個の電動モータを制御するようにしたが、モータドライバ92で制御する電動モータの数はそれに限られるものではなく、モータドライバ92のCPUの処理能力や重量、大きさ、配線の複雑さなどさまざまな要因を考慮した上で決定される。例えば、モータドライバ92が非常に軽量で小型であれば、電動モータ1個に対して1個のモータドライバで制御することも可能である。またCPUの処理能が十分高ければ、1個のモータドライバで4個の電動モータを制御することもできる。
【0120】
また、1Yモータ42と2Yモータ46を制御するモータドライバ92bと3Yモータ48と3Xモータ50を制御するモータドライバ92cの双方に昇圧器98を配置したが、1Yモータ42と2Yモータ46を制御するモータドライバ92bのみに昇圧器98を配置するようにしても良い。
【0121】
また、電流フィードバックゲインを駆動電圧から算出したが、モータ回転数と駆動電圧は比例関係にあるので、以下の様にモータ回転数から算出しても良い。
Ki=C/N (N:モータ回転数、C:定数)
【0122】
また、図8、図11および図14において動作モードの数を3あるいは4としたが、それに限られるものではない。このように、数パターン程度までが現実的ではないかと考えられる。
【0123】
また、中央制御器24の出力に応じて駆動電圧を変更するようにしたが、6軸力センサ76の出力から着床や離床を判断して行っても良い。
【0124】
また、移動体の例として移動ロボット、特に脚式移動ロボットを示したが、この発明はそれに限られるものではなく、関節を介して連結される複数本のリンクを備えると共に、その関節に配置された電動モータに関節以外の部位に配置された電源から電圧を供給する移動ロボットであれば、どのようなものにも妥当する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】この発明の第1実施例に係る移動ロボットの駆動装置が対象とする移動ロボットの正面図である。
【図2】図1に示すロボットの側面図である。
【図3】図1に示すロボットをスケルトンで示す説明図である。
【図4】図2に示すバッテリから電動モータへの駆動電圧の供給を示すブロック図である。
【図5】図4に示すモータドライバなどのロボットおける配置を具体的に示す、図2と同様なロボットの側面図である。
【図6】図4などに示す電動モータ制御のフィードバックループを示すブロック図である。
【図7】この発明の第1実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図8】図7に示す処理で設定される駆動電圧と電流フィードバックゲインの特性を示す説明図である。
【図9】図7に示す処理を示すタイム・チャートである。
【図10】この発明の第2実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。
【図11】図10に示す処理で設定される駆動電圧と電流フィードバックゲインの特性を示す説明図である。
【図12】図10に示す処理を示すタイム・チャートである。
【図13】この発明の第3実施例に係る移動ロボットの駆動装置の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。
【図14】図13に示す処理で設定される駆動電圧と電流フィードバックゲインの特性を示す説明図である。
【図15】図13に示す処理を示すタイム・チャートである。
【図16】この発明に係る移動ロボットの駆動装置の第4の実施例を示す、図4と同様の駆動装置のブロック図である。
【図17】従来技術に係る移動ロボットの駆動装置を示す、図4と同様の駆動装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0126】
10 脚式移動ロボット(移動ロボット)、12 脚部、14 基体、20 腕部、24 中央制御器、26 電源制御器、28 バッテリ(電源)、30 大腿リンク、32 下腿リンク、40 1Zモータ(電動モータ)、42 1Yモータ(電動モータ)、44 1Xモータ(電動モータ)、46 2Yモータ(電動モータ)、48 3Yモータ(電動モータ)、50 3Xモータ(電動モータ)、90 電力線、92 モータドライバ(駆動回路)、96 信号線、98 昇圧器、102 温度センサ、104 逆流防止ダイオード、106 第2の電力線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を介して連結される複数本のリンクと、前記関節に配置される電動モータと、前記複数本のリンク以外の部位に配置される電源と、前記電源と前記電動モータを接続する電力線と、前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を通電指令に応じて前記電動モータに供給して駆動する駆動回路とを少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、前記電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、前記電動モータと昇圧器と前記駆動回路とを同一のリンクに配置したことを特徴とする移動ロボットの駆動装置。
【請求項2】
基体と、前記基体に股関節を介して接続される大腿リンクと前記大腿リンクに膝関節を介して接続される下腿リンクとからなる複数本の脚部と、前記股関節に配置されると共に、前記大腿リンクを進行方向に駆動する第1の電動モータと、前記膝関節に配置されると共に、前記下腿リンクを前記進行方向に駆動する第2の電動モータと、前記大腿リンクと下腿リンク以外の部位に配置される電源と、前記電源と前記第1、第2の電動モータを接続する電力線と、通電指令に応じて前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を前記第1、第2の電動モータに供給して駆動する駆動回路とを少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、前記第1、第2の電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、前記第1、第2の電動モータと前記昇圧器と前記第1、第2の電動モータを駆動する駆動回路とを同一のリンクに配置したことを特徴とする移動ロボットの駆動装置。
【請求項3】
前記昇圧器を前記電力線に介挿すると共に、前記電力線に前記昇圧器をバイパスするバイパス路を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項4】
移動状況に応じて前記昇圧器の昇圧動作を制御する昇圧制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項5】
前記昇圧制御手段は、前記移動状況に応じて予め設定されたテーブル値を検索して前記昇圧器の昇圧動作を制御することを特徴とする請求項4記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項6】
前記昇圧制御手段は、前記昇圧器の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、前記昇圧動作を中止することを特徴とする請求項4または5記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項7】
前記昇圧器と駆動回路の少なくともいずれかに配置される温度センサを備えると共に、前記昇圧制御手段は、前記温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、前記昇圧動作を中止することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項8】
駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段を備えると共に、前記フィードバック制御手段は前記昇圧制御手段の昇圧動作に応じて前記フィードバック制御のゲインを変更することを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項1】
関節を介して連結される複数本のリンクと、前記関節に配置される電動モータと、前記複数本のリンク以外の部位に配置される電源と、前記電源と前記電動モータを接続する電力線と、前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を通電指令に応じて前記電動モータに供給して駆動する駆動回路とを少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、前記電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、前記電動モータと昇圧器と前記駆動回路とを同一のリンクに配置したことを特徴とする移動ロボットの駆動装置。
【請求項2】
基体と、前記基体に股関節を介して接続される大腿リンクと前記大腿リンクに膝関節を介して接続される下腿リンクとからなる複数本の脚部と、前記股関節に配置されると共に、前記大腿リンクを進行方向に駆動する第1の電動モータと、前記膝関節に配置されると共に、前記下腿リンクを前記進行方向に駆動する第2の電動モータと、前記大腿リンクと下腿リンク以外の部位に配置される電源と、前記電源と前記第1、第2の電動モータを接続する電力線と、通電指令に応じて前記電力線を通じて前記電源から供給される電圧を前記第1、第2の電動モータに供給して駆動する駆動回路とを少なくとも備えた移動ロボットの駆動装置において、前記第1、第2の電動モータに供給される駆動電圧を昇圧する昇圧器を備えると共に、前記第1、第2の電動モータと前記昇圧器と前記第1、第2の電動モータを駆動する駆動回路とを同一のリンクに配置したことを特徴とする移動ロボットの駆動装置。
【請求項3】
前記昇圧器を前記電力線に介挿すると共に、前記電力線に前記昇圧器をバイパスするバイパス路を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項4】
移動状況に応じて前記昇圧器の昇圧動作を制御する昇圧制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項5】
前記昇圧制御手段は、前記移動状況に応じて予め設定されたテーブル値を検索して前記昇圧器の昇圧動作を制御することを特徴とする請求項4記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項6】
前記昇圧制御手段は、前記昇圧器の出力電圧を監視し、所定の電圧に昇圧されないとき、前記昇圧動作を中止することを特徴とする請求項4または5記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項7】
前記昇圧器と駆動回路の少なくともいずれかに配置される温度センサを備えると共に、前記昇圧制御手段は、前記温度センサを介して検出される温度が所定温度以上であるとき、前記昇圧動作を中止することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の移動ロボットの駆動装置。
【請求項8】
駆動電流を目標値にフィードバック制御するフィードバック制御手段を備えると共に、前記フィードバック制御手段は前記昇圧制御手段の昇圧動作に応じて前記フィードバック制御のゲインを変更することを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の移動ロボットの駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−307668(P2008−307668A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160037(P2007−160037)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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