説明

移植機

【課題】左右一対の植付カップを垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜させると共に、苗が植付カップに入るタイミングが多少遅れても、スムーズかつ確実に苗を植付カップ内に送出できるようにする。
【解決手段】上下運動して上側で苗を受け取り下側で苗を植え付ける左右一対の植付カップ19の上方に設けられた左右一対の苗挟持ローラ59a、59bにより、苗を横向き姿勢から根部が下向きとなる縦向き姿勢に姿勢変更させながら苗の茎葉部を挟持して、植付カップ内に苗を送出するようにした移植機において、前記左右一対の植付カップが、上方側に移動したとき互いに離間し下方側に移動したとき互いに接近するように、垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜され、前記一対の苗挟持ローラが、植付カップの傾斜に対応して、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
苗搬送ベルトにより横向き姿勢で搬送した野菜等の苗を、根部が下向きとなる縦向き姿勢に姿勢変更して植え付けるようにした移植機には、上下運動して上側で苗を受け取り下側で苗を植え付ける植付カップが設けられ、一対の苗挟持ローラが、苗搬送ベルトの終端下方であって、植付カップの上方に設けられ、苗搬送ベルトにより横向き姿勢で搬送した苗を、一対の苗挟持ローラによって、横向き姿勢から根部が下向きとなる縦向き姿勢に姿勢変更させながら苗の茎葉部を挟持して、植付カップ内に苗を送出するようにしたものがある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−194553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の従来の移植機では、例えば2条植用のものにあっては、植付カップを上下運動させる植付カップ駆動機構を左右一対設けると共に、植付カップを左右一対設け、左右一対の植付カップに対応して、一対の苗挟持ローラを、左右に設けるようにするが、この種の移植機では、左右一対の植付カップが、上方側に移動したとき互いに離間し下方側に移動したとき互いに接近するように、左右一対の植付カップ駆動機構と共に左右一対の植付カップを、垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜させ、これにより、条間を小さく設置する場合でも、上方移動した植付カップに対して、苗搬送ベルトによる苗の十分な搬送距離を確保して、左右一対の植付カップに苗をスムーズかつ良好に供給することができるようにすることが考えられている。
【0004】
しかし、このように、左右一対の植付カップを垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜した場合、一対の挟持ローラから送り出される苗の方向(垂直方向)が、左右一対の植付カップの傾斜方向に対して大きくずれてしまう。このため、苗が植付カップに入るタイミングが多少遅れたりすると、苗が植付カップから外れてしまい確実に苗を植付カップ内に送出できなくなるという問題が生じた。
本発明は、上記問題点に鑑み、左右一対の植付カップを垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜させると共に、左右一対の植付カップに対して、苗が植付カップに入るタイミングが多少遅れたりしても、苗が植付カップから外れることなく、スムーズかつ確実に苗を植付カップ内に送出できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、上下運動して上側で苗を受け取り下側で苗を植え付ける左右一対の植付カップが設けられ、一対の苗挟持ローラが、各植付カップの上方に左右一対の植付カップに対応して左右に設けられ、これら一対の苗挟持ローラにより、苗を横向き姿勢から根部が下向きとなる縦向き姿勢に姿勢変更させながら苗の茎葉部を挟持して、植付カップ内に苗を送出するようにした移植機において、
前記左右一対の植付カップが、上方側に移動したとき互いに離間し下方側に移動したとき互いに接近するように、垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜され、前記一対の苗挟持ローラが、植付カップの傾斜に対応して、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜されている点にある。
【0006】
また、本発明の他の技術的手段は、前記一対の苗挟持ローラは、左右に対をなすように配置され、左右方向内方側の苗挟持ローラが左右方向外方側の苗挟持ローラよりも上方に配置されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記一対の苗挟持ローラの下方に、一対の苗挟持ローラ間から落下する苗を、通過させて下方の植付カップに導く案内筒が機体側に固定して設けられ、案内筒は、植付カップの傾斜に対応して、左右方向内方に向けて傾斜されている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、前記案内筒の下部に、植付カップが上昇したときに、植付カップと嵌合する嵌合案内部が設けられている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記案内筒に、苗の根部が案内筒の壁部に衝当のするのを回避すべく切欠部が設けられている点にある。
【発明の効果】
【0008】
左右一対の植付カップが、上方側に移動したとき互いに離間し下方側に移動したとき互いに接近するように、垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜されているので、条間を小さく設置する場合でも、上方移動した植付カップに対して、苗搬送ベルトによる苗の十分な搬送距離を確保して、左右一対の植付カップに苗をスムーズかつ良好に供給することができるようになる。しかも、一対の苗挟持ローラが、植付カップの傾斜に対応して、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜されているので、一対の挟持ローラから送り出される苗の方向を、左右一対の植付カップの傾斜方向に対して近づけことができ、このため、苗が植付カップに入るタイミングが多少遅れたりしても、苗が植付カップから外れることが少なくなり、よりスムーズかつ確実に苗を植付カップ内に送出できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、1は玉葱等の野菜の苗Nを圃場に植え付ける移植機であり、本実施の形態では、前部に走行体2を、後部に移植装置3及びハンドル4を備えた歩行型の移植機1を例示している。なお、本実施の形態では苗Nとしてポット苗を使用しているが、苗Nはポット苗に限定されない。
走行体2は、エンジン(動力源)6、ミッションケース7、左右一対の前輪(車輪)8及び左右一対の後輪(車輪、駆動輪)9を備えており、エンジン6の回転動力がミッションケース7内の走行系動力伝達機構を介して後輪9に伝達され、該後輪9が回転駆動されることにより走行体2が走行可能とされている。
【0010】
この走行体2の機体は、エンジン6、ミッションケース7及び架台10等から構成され、架台10はミッションケース7の前後方向中途部下部から前方突出状に設けられ、この架台7上にエンジン6が搭載され、エンジン6の後部にミッションケース7の前端側が連結されている。
架台10の前部には、左右方向の前輪支軸11が左右方向の軸心廻りに回動自在に支持され、この前輪支軸11の左右両側に、それぞれ前輪支持アーム13が前輪支軸11と一体回転自在で且つ前輪支軸11に対して左右方向位置調整自在に取り付けられており、左右各前輪支持アーム13の下端側にそれぞれ前輪8が回転自在に取り付けられており、前輪支持アーム13が前輪支軸11と一体回動することにより前輪8が走行体2の機体に対して相対的に昇降自在とされている。
【0011】
ミッションケース7の左右両側には、走行伝動ケース15の上部側が左右方向の軸心廻りに回動自在に取り付けられていて走行伝動ケース15が上下に揺動自在とされ、左右各走行伝動ケース15の下部にそれぞれ後輪9が回転自在で且つ左右方向位置調整自在に取り付けられており、走行伝動ケース15が上下に揺動することにより後輪9が走行体2の機体に対して相対的に昇降自在とされている。
また、前輪支軸11と左右の走行伝動ケース15とは連動部材16を介して連動連結されていて、左右一対の前後輪8,9が、4輪同時に昇降自在とされている。
【0012】
また、架台10には、油圧シリンダ等からなる昇降シリンダ17が設けられ、この昇降シリンダ17のピストンロッドは前輪支軸11に連動連結されていて、昇降シリンダ17のピストンロッドを出退させることにより、前輪支軸11が軸心廻りに回動して走行体2の機体に対して相対的に前後輪8,9が昇降し、前後輪8,9が昇降することにより走行体2の機体及び移植装置3が地面に対して昇降自在とされている。
次に移植装置3について説明する。移植装置3は、苗Nを圃場に植え付ける植付カップ(植付カップ)19を備えた植付装置20と、前記植付カップ19に苗Nを供給する苗供給装置21と、植付装置20及び苗供給装置21への動力伝達を一旦停止させると共に該停止時間を調整することにより株間を変更する株間変更装置22と、圃場に植え付けられ
た苗Nの左右両側の土を押圧する覆土輪23を備えた覆土装置24等とを備えている。
【0013】
以下、移植装置3の各装置を詳細に説明する。
まず、植付装置20について説明する。
図4に示すように、植付装置20は、苗供給装置21から供給される苗Nを畝に所定間隔で植付けるべく畝に対して突き刺し運動される植付カップ19と、この植付カップ19を上下運動させる植付カップ駆動機構27とを備える。植付装置20は、2条植用であって、植付カップ19及び植付カップ駆動機構27はそれぞれ左右一対設けられている。
各植付カップ駆動機構27は、後述する苗搬送装置37の下側に配置されていて、移植装置3のフレーム側に回転自在に支持された第1回転ケース(第1回転体)29と、第1回転ケース29の遊端側に、回転自在に支持された第2回転ケース(第2回転体)30とを備え、第2回転ケース30側に支持部材等を介して植付カップ19が支持され、第1回転ケース29の回転に連動して、第2回転ケース30を第1回転ケース29とは逆方向に回転させて、植付カップ19を、下降時に前側に変位する共に上昇時に後側に変位した前後に膨らみのある上下運動をさせるようになっている。左右一対の植付カップ19は、後述するように、上下運動して上側で苗Nを受け取り下側で苗Nを植え付ける。
【0014】
また、左右一対の植付カップ19は、植付カップ駆動機構27(第1回転ケース29、第2回転ケース30)と共に、垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜され、左右一対の植付カップ19が、上方側に移動したとき互いに離間し下方側に移動したとき互いに接近するようになっている。
次に苗供給装置21について説明する。
図2〜図5に示すように、苗供給装置21は、移植機1の後部上側に配置されていてフレーム等に取り付けられた苗載台33と、この苗載台33に搭載された苗箱(苗トレイ)35から苗Nを取り出す苗取出し装置36と、この苗取出し装置36で取り出された苗Nを植付カップ19上方に搬送する苗搬送装置37と、この苗搬送装置37で植付カップ19上方に送られた横向きの苗Nを縦向きに姿勢変更して植付カップ19に供給する苗姿勢変更装置39とを有し、各装置は植付伝動ケース40から出力される動力によって駆動される。
【0015】
苗箱35は樹脂製で可撓性を有していて弾性的に湾曲自在であり、多数のポット苗室P(ポット部)が縦横に基盤目状に形成されており、このポット苗室Pに充填された床土に播種して、野菜(玉葱)の苗Nが育苗されている。
また、苗箱35は、ポット苗室Pの開口が前方を向くように(苗Nの茎葉部Nbが前方を向くように)苗載台33に上方からセットされる。
苗取出し装置36は、苗搬送装置37の上方に配置され、ポット苗室Pから苗Nを押し出す押出杆43と、この押出杆43で押し出された苗Nを受持すると共に苗搬送装置37へと渡す苗受渡し機構44とを有する。
【0016】
押出杆43は、苗箱35の横一列の苗Nに対応する数設けられ、苗載台33の後方側に前後方向移動自在に備えられ、前方移動してポット苗室P内にその底部(後方)から挿入されて横一列の苗Nを前方に押し出し、その後、後退する。
なお、苗Nが押し出された後、苗箱35は苗Nの横一列分下方に縦送りされ、押出杆43は、搬送ベルト45上の苗Nがなくなるまで(または、大部分がなくなるまで)待機する。
また、苗箱35は苗載台33の下部側で湾曲されて、後方側に取り出される。
【0017】
ポット苗室Pから押し出された横一列の苗Nは、その根部(根鉢、床土)Naが苗受渡し機構44の苗受けアーム47の苗受け溝47a内に押し込まれる。
苗受けアーム47は、植付伝動ケース40内の動力伝達機構によって回転駆動されるクランク49に連動部材50を介して連動連結されており、クランク49の回転によって、図2に実線で示す苗受取り位置と、仮想線で示す苗渡し位置とに位置変更自在とされていて、苗受取り位置でポット苗室Pから押し出された苗Nを受持し、その後、苗Nを逆方向に反転させながら下方に回動し、苗渡し位置に至る際に、苗受け溝47aが苗Nの根部Naを先にして跳ね出し部材51の位置を通過し、これにより苗Nが苗受け溝47aから押
し出され、跳ね出し部材51は苗Nが苗受け溝47aから抜け切ると同時に、下方(矢印a1方向)に回動し、苗Nを、その茎葉部Nbが後方を向いた横向き姿勢で下方の苗搬送装置37上に落下させるように構成されている。
【0018】
苗搬送装置37は、苗載台33の前方で且つ下方側に配置され、左右の植付カップ19に対応して左右一対設けられ、且つ移植装置3の左右方向のセンターCLを境に左右に振り分け配置されており、フレーム53に取付支持されている。
各苗搬送装置37は、左右一対のプーリ55と、この左右プーリ55に掛装されたエンドレスの搬送ベルト45とを有し、一方のプーリ55は、植付伝動ケース40内の動力伝達機構から伝達される動力によって回転駆動する回転軸56によって駆動され、搬送ベルト45は、プーリ55の回転駆動によって、その上部側が、移植装置3の左右方向中央側から左右方向外方側に向けて移動されるように構成されており、搬送ベルト45上の苗Nを左右方向外方に移送し、それぞれの左右方向外端部(終端部)において下方側に位置する植付カップ19に落下させる。
【0019】
また、搬送ベルト45の表面の前端部側(苗Nの根部Na側)には、ベルト幅方向に複数の位置決め用突起57が搬送方向に等間隔をおいて設けられ、搬送方向に隣り合う位置決め用突起57間に苗Nが1つずつ位置決めされるようになっている。
図3〜図9において、姿勢変更装置39は、植付カップ19に対応して左右一対設けられており、搬送ベルト45の終端(外側端)下方で且つ植付カップ19の上方に設けられた左右一対の苗挟持ローラ59a,59bと、この一対の苗挟持ローラ59a,59bの上方に配置されたシャッター60と、苗Nの根部Nbを押し下げる押下げ手段62とを備えている。而して、左右一対の植付カップ19に対応して、左右一対の苗挟持ローラ59a,59b、シャッター60、押下げ手段62等は、左右一対(2組)ずつ設けられている。
【0020】
一対の苗挟持ローラ59a,59bは、左右に対をなすように配置されており、一方の苗挟持ローラ59aが左右方向内方側に設けられ、他方の苗挟持ローラ59bが左右方向外方側に設けられている。一対の苗挟持ローラ59a,59bは、搬送ベルト45終端の苗Nの茎葉部Nbに対応して配置され、苗Nを横向き姿勢(横向き姿勢)から根部Naが下向きとなる縦向き姿勢(縦向き姿勢)に姿勢変更させながら苗Nの茎葉部Nbを挟持する。
また、一方の苗挟持ローラ59aは、植付伝動ケース40から後方に突出する回転軸63によって前後軸廻りに回転駆動されると共に、他方の苗挟持ローラ59bは、前記回転軸63からギヤ伝動機構64によって動力伝達されて回転する回転軸65によって前後軸廻りに回転駆動されていて、左右の苗挟持ローラ59a,59bは、対向内側で下側に向けて回転するように互いに逆向きに回転駆動され、苗Nの茎葉部Nbを挟持した一対の挟持ローラ59a,59bの回転に伴って苗Nを根部Naが下向きとなる縦向き姿勢で下方移動させるように構成されている。
【0021】
一対の苗挟持ローラ59a,59bは、植付カップ19の傾斜に対応して、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜されている。この実施の形態では、一対の苗挟持ローラ59a,59bは、左右に対をなすように配置されているため、左右方向内方側の苗挟持ローラ59aが左右方向外方側の苗挟持ローラ59bよりも上方に配置され、これにより、一対の苗挟持ローラ59a,59bが、植付カップ19の傾斜に対応して、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜されている。
【0022】
シャッター60は、下部側が搬送ベルト45に向けて接離移動するように、前後方向の軸心を有する横軸61廻りに揺動自在に支持されており、この横軸60にはバネ58が巻回され、このバネ58は、シャッター60の下部側を搬送ベルト45側に向けて付勢している。
また、シャッター60の後側にはシャッターストッパー66が設けられ、このシャッターストッパー66は、シャッター60が下方に行くに従って搬送ベルト45側に移行する傾斜状態で、シャッター60の搬送ベルト45側への揺動を規制し、図7に示す如くシャッター60はこの傾斜した位置で、搬送ベルト45終端との間で苗Nを落下しないように1つずつ保持する。
【0023】
搬送ベルト45の終端に、苗Nが一対の苗挟持ローラ59a,59bに達する前に、苗Nの茎葉部Nb先端側を受ける板状の受け部材67が設けられている。この受け部材67は、搬送ベルト45の終端の外方(外側方)であって、一対の苗挟持ローラ59a,59bよりやや上方に配置されると共に、一対の苗挟持ローラ59a,59bに対し、後部側(苗Nの茎葉部Nb先端側)に向けてずれた位置に配置されている。また、受け部材67は、搬送ベルト45の上面と略同一高さ位置に配置されており、受け部材67は、苗Nが一対の苗挟持ローラ59a,59bに達する前に、苗Nの茎葉部Nb先端側を受けるようになっている。
【0024】
前記受け部材67に、苗Nの根部Na側に向かうに従って徐々に大きく下降する傾斜ガイド部68が設けられ、この傾斜ガイド部68により、苗Nの茎葉部Nbを、根部Na側に向かうに従って徐々に大きく下降する傾斜状態で受けるようになっている。受け部材67の傾斜ガイド部68の下降側の先端が、一対の苗挟持ローラ59a,59bの軸方向の中央部に近接するように配置されている。
図7及び図8に示すように、受け部材67に、弾性を有する合成樹脂等により構成した閉塞シート71が突設されている。この閉塞シート71は、一端部が受け部材67の下面に接着等により固定され、閉塞シート71の他端側が上側に弾性変形されて、その弾性変形の復元力によって、苗搬送ベルト45の終端側の上面に押圧接当され、閉塞シート71は、受け部材67と搬送ベルト45の終端部との間を塞いでいる。閉塞シート71は、受け部材67の後部側(水平部分)と前部側(傾斜ガイド部68側)とに2個設けられていて、これら閉塞シート71は、受け部材67の前後方向の略全長に亘っている。
【0025】
前記一対の苗挟持ローラ59a,59bの下方に、案内筒73が設けられている。この案内筒73は、一対の苗挟持ローラ59a,59bと植付カップ19との間に配置され、一対の苗挟持ローラ59a,59b間から落下する苗Nを、案内筒73内を通過させて下方の植付カップ19に導くようになっている。
図6〜図12に示すように、案内筒73は、上部側の受け部81を備えると共に、案内筒73の下部に、植付カップ19が上昇したときに植付カップ19と嵌合する嵌合案内部82が設けられている。案内筒73の受け部81は上側に向けて次第に大きく広がった角筒状に形成され、嵌合案内部82は下方側が徐々に細くなった先窄まり状で、前側が開口したコの字状に形成されている。受け部81と嵌合案内部82とは別体に構成され、受け部81の下端部に嵌合案内部82の上端部が外嵌されて、締結環84等で締め付け固定されている。なお、案内筒73の受け部81と嵌合案内部82とを一体に構成するようにしてもよい。
【0026】
案内筒73は、移植機1の機体側のフレーム等にボルト等の固定具85により固定され、案内筒73は、植付カップ19の傾斜に対応して、左右方向内方に向けて傾斜されている。案内筒73の嵌合案内部82は、植付カップ19の上部よりも小さく形成されていて、植付カップ19が上昇したときに、植付カップ19の上部側が嵌合案内部82に外嵌するようになっている。案内筒73の前壁部側に、苗Nの根部Naが案内筒73の前壁部に衝当のするのを回避すべく切欠部83が設けられている。この切欠部83は、受け部81の下側を円弧状に切り欠いた切欠凹部83aと、嵌合案内部82の前側開口部83bとから構成されている。なお、切欠部83を、受け部81の切欠凹部83aのみで構成し、嵌合案内部82を、前側開口部83bのない角筒状に形成してもよいし、また、逆に、切欠部83を、嵌合案内部82の前側開口部83bのみで構成し、受け部81を、切欠凹部83aのない筒状に形成してもよい。
【0027】
なお、苗挟持ローラ59a,59bから落下した苗Nが、案内筒73内を通して、植付カップ19に受け渡されるタイミング(位置)が、植付カップ19が上下動の上死点を越えて下降動作するとき(位置)に設定され、このとき、植付カップ19の上部側が嵌合案内部82に外嵌した状態になっている。
図3、図6、図7に示すように、押下げ手段62は、植付伝動ケース40の側方に設けられており、シャッター60の前端部(苗Nの根部Na側)に対応して配置された根部押し棒75と、根部押し棒75を取り付ける支持アーム76とを備え、根部押し棒75は支持アーム76の後端側に取り付けられている。
【0028】
支持アーム76は、その前端側が移植装置3のフレームに左右方向の支軸77廻りに回動自在に支持されていて上下揺動自在とされており、また、前後方向中途部がリンク78の一端側に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されており、このリンク78の他端側は、植付伝動ケース40の前部側の側面上部に設けられた左右方向の出力軸79によって回転駆動される回転体80の回転中心から外れた位置に左右方向のピン81を介して枢支連結されており、回転体80の回転により、支持アーム76が上下に揺動して、根押し棒75が上下動する(根部押し棒75が、上下方向に間欠的に往復移動する)ように構成されている。
【0029】
根部押し棒75は、下方移動によって、シャッター60と搬送ベルト45の終端側との間に保持された苗Nの根部Naを、下方に押圧してシャッター60を開きながら一対の苗挟持ローラ59a,59bよりも下方に移動させる。
前記実施の形態によれば、搬送ベルト45によって、苗Nが終端側に向けて順次間欠的に搬送されて、搬送ベルト45に向けて前下がりに傾斜したシャッター60と、搬送ベルト45終端との間で、苗Nが順次1つずつ保持される。このとき、図9に鎖線Aで示すように、苗Nの茎葉部Nbの先端側が受け部材67上に載り、苗Nは、根部Na側が下降する傾斜状態で保持される。
【0030】
シャッター60と搬送ベルト45との間に保持された苗Nの根部Naは、根部押し棒75により下方に押圧されて一対の苗挟持ローラ59a,59bよりも下方に移動し、このとき、シャッター60が開くことにより、苗Nがシャッター60から落下して、図9に鎖線Bで示すように、苗Nの茎葉部Naの先端側が受け部材67の傾斜ガイド部68上に傾斜状態で載ると共に、茎葉部Nbの基端側が、一対の苗挟持ローラ59a,59b間に入り込んで、一対の苗挟持ローラ59a,59b間に挟持され、苗Nは、横向き姿勢から根部Naが下向きとなる縦向き姿勢に姿勢変更しながら苗Nの茎葉部Nbが挟持され、一対の苗挟持ローラ59a,59bの回転に伴って苗Nを根部Naが下向きとなる縦向き姿勢で下方移動させ、その結果、苗Nが案内筒73を通って、上方移動している植付カップ19内に落下し、これにより、植付カップ19は、その移動域の上側で一対の苗挟持ローラ59a,59bから苗Nを受け取る。
【0031】
苗Nを受け取った植付カップ19は下降動作して畝に差し込まれると共に、その移動域の下側で開き苗Nを落下放出する、これにより、圃場に植え穴を開けながら、移動域の上側で受け取った苗Nを移動域の下側で圃場に植え付ける。
その後、植付カップ19が上昇動作し、この上昇動作に連動して植付カップ19が閉じる。
この間に、次の苗Nが、シャッター60と搬送ベルト45との間に保持されて、苗Nは、横向き姿勢から根部Naが下向きとなる縦向き姿勢に姿勢変更しがら苗Nの茎葉部Nbが挟持され、一対の苗挟持ローラ59a,59bの回転に伴って苗Nを根部Naが下向きとなる縦向き姿勢で下方移動させて、上方移動した植付カップ19内に再び落下させ、植付カップ19は、上側で一対の苗挟持ローラ59a,59bから苗Nを受け取る。
【0032】
以後、同様の動作を間欠的に繰り返す。
従って、前記構成の苗供給装置21にあっては、搬送ベルト45から植付カップ19に苗Nを受け渡す際に、根部押し棒75により苗Nの根部Naを強制的に押して、一対の苗挟持ローラ59a,59b間に苗Nの茎葉部Nbを食い込ませることができて、苗Nをミスなく植付カップ19に供給できると共に、根部Naを崩すことがないように、横向き姿勢から根部Naが下向きとなる縦向き姿勢にスムーズに姿勢変更しながら植付カップ19に苗Nを受け渡すことができる。
【0033】
また、閉塞シート71によって、搬送ベルト45と受け部材67との間を略全長亘って塞いでいるため、搬送ベルト45と受け部材67との間に、苗Nの枯葉を挟み込むのを防ぐことができ、枯葉等の挟み込みによる植付カップ19への苗Nの受け渡しミスを未然に防止することができる。
また、苗Nが細くて茎葉部Nbが曲がり易い場合には、横向き姿勢から縦向き姿勢に姿勢変更する際に、茎葉部Nbが大きく屈曲してスムーズな姿勢変更ができなくなるおそれがあるが、苗Nが一対の苗挟持ローラ59a,59bに達する前に、受け部材67の傾斜ガイド部68で苗Nの茎葉部Nb先端側を受けるため、苗Nが細くてその茎葉部Nbが曲がり易い場合でも、傾斜ガイド部68により、苗Nの茎葉部Nbを、根部Na側に向かうに従って徐々に大きく下降する傾斜状態で安定に受けることができるし、また、シャッター60と搬送ベルト45の終端側との間に保持された待機状態のときにも、根部Na側に向かうに従って徐々に大きく下降する傾斜状態で待機させることもでき、横向き姿勢で搬送した苗Nを、根部Naが下向きとなる縦向き姿勢にスムーズに姿勢変更することができ、苗Nの植付カップ19への受け渡し精度の向上を図ることができる。しかも、受け部材67の傾斜ガイド部68の下降側の先端が、一対の苗挟持ローラ59a,59bの軸方向の中央部に近接するように配置されているため、苗Nが苗挟持ローラ59a,59bに対して前後方向に相当大きくずれていても、苗Nの茎葉部Nbを苗挟持ローラ59a,59b間に確実に挟持させて、苗Nを、縦向き姿勢に姿勢変更させて、スムーズに植付カップ19側に受け渡すことができる。
【0034】
また、一対の苗挟持ローラ59a,59bを高速回転することにより、植え付け速度を十分に高速になし得、搬送ベルト45により横向き姿勢で搬送した苗Nを、根部Naが下向きとなる縦向き姿勢にスムーズに姿勢変更して良好な植え付けを高速でなすことができる。
また、仮に、案内筒73を植付カップ19と一体に上下運動させるようにすると、案内筒73が上昇する際に苗挟持ローラ59a,59bから案内筒73に向けて苗Nが落下し、苗Nの根部Naが案内筒73の内壁面(例えば前側内面)に衝当し、これによって、タイミング遅れが生じて植付カップ19の先端部(下端開口部)に苗Nを確実に保持することができずに、苗Nが少し遅れて植付カップ19の先端に供給されるようになるという問題を生じる。しかし、本実施の形態の場合、案内筒73を移植機1の機体側のフレーム等に固定しているため、案内筒73を一対の苗挟持ローラ59a,59bの下方に正確に対応させることができるし、落下する苗Nが案内筒73の内面に強く衝当することもなくなり、苗Nをスムーズに植付カップ19に供給でき、苗Nの高速植え付けに適応させることができるようになる。
【0035】
しかも、上下動する植付カップ19を使用して苗Nを植え付けるため、畝にマルチフィルムを敷設する場合でも、マルチフィルムを切断するようなことがなく、マルチ栽培にも適合したものとなる。
そして、左右一対の植付カップ19は、植付カップ駆動機構27と共に、垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜され、左右一対の植付カップ19が、上方側に移動したとき互いに離間し下方側に移動したとき互いに接近するようになっているので、条間を小さく設置する場合でも、上方移動した植付カップ19に対して、苗搬送ベルト45による苗Nの十分な搬送距離を確保して、左右一対の植付カップ19に苗Nをスムーズかつ良好に供給することができる。
【0036】
しかも、一対の苗挟持ローラ59a,59bが、植付カップ19の傾斜に対応して、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜されているので、左右一対の植付カップ19が垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜しているにも拘わらず、一対の挟持ローラ59a,59bから送り出される苗Nの方向を、左右一対の植付カップ19の傾斜方向に対して近づけることができ、このため、苗Nが植付カップ19に入るタイミングが多少遅れたりしても、苗Nが植付カップ19から外れることが少なくなり、よりスムーズかつ確実に苗を植付カップ19内に送出できるようになる。
【0037】
また、案内筒73は、植付カップ19の傾斜に対応して、左右方向内方に向けて傾斜されているので、一対の苗挟持ローラ59a,59bから送り出される苗Nの方向に、案内筒73の傾斜方向を一致又は近づけることができ、このため、一対の苗挟持ローラ59a,59bから送り出される苗Nが案内筒73から外れるのを防いで、より確実に苗Nを案内筒73に送出できるようになる。さらに、植付カップ19が上昇したときに、植付カップ19の上部側が案内筒73の嵌合案内部82に外嵌するので、苗Nを案内筒73から上昇した植付カップ19内に確実に送出できる。
【0038】
また、苗Nが横向き姿勢から縦向き姿勢に姿勢変更する際に、例えば図9に鎖線Cで示すように縦向き姿勢への姿勢変更が不十分なままで、根部Naが前側に位置するように前下がり傾斜した状態で苗挟持ローラ59a,59bから下方に送り出された場合でも、切欠部83により苗Nの根部Naが案内筒73の前壁部に衝当して、苗Nが跳ねとばされたり根部Na崩れたりするのが回避され、苗Nの根部Na側は切欠部83を通って下方の植付カップ19内にスムーズに入り、案内筒73で確実に下方の植付カップ19に導くことができる。
【0039】
なお、前記実施の形態では、苗Nを植え付けるようにしているが、植え付ける苗は、苗Nに限定されず、根洗い苗その他の苗であってもよい。
また、前記実施の形態では、一対の苗挟持ローラ59a,59bは、左右に対をなすように配置されており、左右方向内方側の苗挟持ローラ59aが左右方向外方側の苗挟持ローラ59bよりも上方に配置され、これにより、一対の苗挟持ローラ59a,59bが、植付カップ19の傾斜に対応して、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜されているが、これに代え、一対の苗挟持ローラ59a,59bを、左右に対をなすように配置してもよく、この場合には、各苗挟持ローラ59a,59bを、回転軸63,65と共に、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜させればよい。
【0040】
また、前記実施の形態では、案内筒73の前壁部側に切欠部83が設けられ、苗Nの根部Naが案内筒73の前壁部に衝当のするのを回避するようにしているが、切欠部83を設ける位置は案内筒73の前壁部側に限定されず、苗Nが横向き姿勢から縦向き姿勢に姿勢変更する際の苗Nの回転方向や根部Naの向きに応じて、案内筒73の後壁部側、左側壁部又は左側壁部に、切欠部83を設け、苗Nの根部Naが案内筒73の後壁部側、左側壁部又は左側壁部に衝当するのを回避するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、玉葱等の野菜の苗を植え付けるための移植機に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態を示す移植機の側面図である。
【図2】同苗供給装置の側面図である。
【図3】同苗供給装置の側面図である。
【図4】同苗搬送ベルトと植付装置との関係を示す背面図である。
【図5】同姿勢変更装置等の平面図である。
【図6】同搬送ベルト及び植付装置部分の斜視図である。
【図7】同搬送ベルト及び植付装置部分の背面図である。
【図8】同搬送ベルト及び植付装置部分の斜視図である。
【図9】同苗姿勢変更装置部分の側面断面図である。
【図10】同苗挟持ローラ及び案内筒部分の背面図である。
【図11】同苗挟持ローラ及び案内筒部分の側面図である。
【図12】同案内筒の平面図である。
【符号の説明】
【0043】
19 植付カップ
45 搬送ベルト
59a 苗挟持ローラ
59b 苗挟持ローラ
67 受け部材
68 傾斜ガイド部
71 閉塞シート
73 案内筒
82 嵌合案内部
83 切欠部
N 苗
Na 根部
Nb 茎葉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下運動して上側で苗(N)を受け取り下側で苗(N)を植え付ける左右一対の植付カップ(19)が設けられ、一対の苗挟持ローラ(59a,59b)が、各植付カップ(19)の上方に左右一対の植付カップ(19)に対応して左右に設けられ、これら一対の苗挟持ローラ(59a、59b)により、苗(N)を横向き姿勢から根部(Na)が下向きとなる縦向き姿勢に姿勢変更させながら苗(N)の茎葉部(Nb)を挟持して、植付カップ(19)内に苗(N)を送出するようにした移植機において、
前記左右一対の植付カップ(19)が、上方側に移動したとき互いに離間し下方側に移動したとき互いに接近するように、垂直方向に対して左右方向内方に向けて傾斜され、前記一対の苗挟持ローラ(59a,59b)が、植付カップ(19)の傾斜に対応して、水平方向に対して左右方向内方側が外方側よりも上がるように傾斜されていることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記一対の苗挟持ローラ(59a,59b)は、左右に対をなすように配置され、左右方向内方側の苗挟持ローラ(59a)が左右方向外方側の苗挟持ローラ(59b)よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記一対の苗挟持ローラ(59a,59b)の下方に、一対の苗挟持ローラ(59a,59b)間から落下する苗(N)を、通過させて下方の植付カップ(19)に導く案内筒(73)が機体側に固定して設けられ、案内筒(73)は、植付カップ(19)の傾斜に対応して、左右方向内方に向けて傾斜されていることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項4】
前記案内筒(73)の下部に、植付カップ(19)が上昇したときに、植付カップ(19)と嵌合する嵌合案内部(82)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の移植機。
【請求項5】
前記案内筒(73)に、苗(N)の根部(Na)が案内筒(73)の壁部に衝当のするのを回避すべく切欠部(83)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−141363(P2006−141363A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339640(P2004−339640)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】