説明

移植機

【課題】整地装置において、未整地部分を減らすと共に、入力ケースの下方に大量の水流が流れ込むことを防止する。
【解決手段】走行機体1と、該走行機体1の後部に連結される植付作業機3と、該植付作業機3の前方で圃場面を整地する整地装置13とを備える乗用型田植機において、整地装置13は、整地用の動力を入力する入力ケース15と、該入力ケース15の左右両側に並設され、入力ケース15から出力される動力で回転する複数の整地ロータ17A〜17Dとを備えて構成され、整地ロータ17A〜17Dのうち、入力ケース15の左右両側に隣接する整地ロータ17Aは、外側ほど回転半径が小さくなる円錐台形ロータからなり、該円錐台形ロータの回転中心を傾けることによって、円錐台形ロータの接地部分を圃場面に対して平行にすると共に、円錐台形ロータの接地部分内端側を入力ケース15の下方に入り込ませた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機などの移植機に関し、特に、植付作業機の前方で圃場面を整地する整地装置が備えられた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
植付作業機の前方で圃場面を整地する整地装置が備えられた移植機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような移植機では、植付けと同時に整地ができるので、植付精度や作業効率の向上を図ることができ、特に、機体旋回によって圃場面が荒れやすい枕地では、整地装置による整地効果が顕著であり、植付精度を大幅に改善することができる。
【特許文献1】特開2006−61099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された整地装置は、整地用の動力を入力する入力ケースと、該入力ケースの左右両側に並設され、入力ケースから出力される動力で回転する複数の整地ロータとを備えて構成されている。しかしながら、入力ケースの左右両側に隣接する整地ロータは、入力ケースの幅寸法よりも大きな間隔を存して並設されているため、入力ケースの下方全域が未整地状態となってしまうだけでなく、整地ロータで押された水が入力ケースの下方に大量に流れ込むという問題ががある。特に、入力ケースが感知フロートの前方に位置する場合、入力ケースの下方に流れ込む大量の水流や、未整地状態の圃場面によって感知フロートがばたつき、感知フロートの感知精度が低下する惧れがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、走行機体と、該走行機体の後部に連結される植付作業機と、該植付作業機の前方で圃場面を整地する整地装置とを備える移植機において、前記整地装置は、整地用の動力を入力する入力ケースと、該入力ケースの左右両側に並設され、入力ケースから出力される動力で回転する複数の整地ロータとを備えて構成され、前記整地ロータのうち、入力ケースの左右両側に隣接する整地ロータは、外側ほど回転半径が小さくなる円錐台形ロータからなり、該円錐台形ロータの回転中心を傾けることによって、円錐台形ロータの接地部分を圃場面に対して平行にすると共に、円錐台形ロータの接地部分内端側を入力ケースの下方に入り込ませたことを特徴とする。このようにすると、入力ケースの左右両側に隣接する整地ロータの間隔を適正にすることができるので、未整地部分を減らすことができるだけでなく、入力ケースの下方に大量の水流が流れ込むことを防止できる。
また、前記植付作業機の下部に感知フロートを備え、該感知フロート及び前記入力ケースが植付作業機の左右中央に位置し、前記円錐台形ロータが感知フロートの前方を整地することを特徴とする。このようにすると、入力ケースの下方に流れ込む水流や、未整地状態の圃場面による感知フロートのばたつきが抑えられるので、感知フロートの感知精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は乗用型田植機(移植機)の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が昇降自在に連結されている。走行機体1と昇降リンク機構2との間には、植付作業機昇降用油圧シリンダ4が介設されており、該油圧シリンダ4の油圧伸縮作動に応じて植付作業機3が昇降されるようになっている。
【0006】
植付作業機3は、昇降リンク機構2の後端部に連結される作業機フレーム5、その上方に傾斜姿勢で設けられる苗載台6、作業機フレーム5から後方に延出する複数の植付伝動ケース7、各植付伝動ケース7の後端部に設けられる植付機構8、植付作業機3の下部左右中央位置に上下揺動自在に設けられる感知フロート9、植付作業機3の下部左右側方位置に上下揺動自在に設けられるサイドフロート10などを備えて構成されており、走行機体1側から供給される植付動力によって、苗載台6の横送り作動や植付機構8の苗植付作動が行われるようになっている。
【0007】
乗用型田植機では、通常、感知フロート9の姿勢変化に応じて植付作業機3を自動的に昇降制御することにより、植付深さの変動を抑制している。つまり、感知フロート9は、田面に対する植付作業機3の上下位置変動に応じて上下揺動するので、感知フロート9の上下変位量を感知リンク機構11を介して植付作業機昇降用油圧シリンダ4のコントロールバルブ12に入力することにより、植付作業機3を自動的に昇降させ、植付作業機3の田面に対する高さを略一定に保つことが可能になる。
【0008】
乗用型田植機が苗を植付ける圃場は、予め代掻き作業が行われており、平坦化された田面に対して植付機構7が苗を植付けるが、植付作業機3は、走行機体1の後方で植付作業を行う関係上、車輪跡などによる田面の荒れによって植付精度が低下する可能性がある。特に、機体旋回が行われる枕地は、車輪跡による田面の荒れが顕著であり、植付精度が低下しやすい箇所である。そこで、このような問題に対処するために、植付作業機3の前部には、整地装置13が設けられている。この整地装置13は、植付作業機3の前方で整地作業を行うことにより、車輪跡による田面の荒れなどを改善させるので、植付精度を高めることができ、特に、枕地において改善効果が顕著である。
【0009】
整地装置13は、走行機体1のリヤアクスルケース14から整地用の動力を入力する入力ケース15と、該入力ケース15から左右両側方に延出するロータ軸16と、該ロータ軸16に沿って並設される複数の整地ロータ17(A〜D)と、該整地ロータ17の上方を覆うロータカバー18と、ロータ軸16の左右両端側を回転自在に支持するロータフレーム19とを備えて構成されており、入力ケース15から出力される動力で整地ロータ17を所定方向に回転させることにより、圃場面の整地を行うようになっている。
【0010】
入力ケース15は、リヤアクスルケース14から整地用の動力を入力する入力軸20と、入力した動力をロータ軸16に伝動するベベルギヤ機構21とを備えて構成されている。入力ケース15の左右両側に隣接する整地ロータ17A以外の整地ロータ17B〜17Dは、回転半径が均等な円筒形ロータからなり、ロータ軸16を中心として回転するように、所定の間隔を存してロータ軸16に一体的に取付けられている。
【0011】
円筒形ロータは、ロータ軸16に外嵌するハブ22と、該ハブ22から延出するアーム23と、該アーム23の先端部に設けられ、周方向に所定の間隔を存して並列する複数の整地板24とを備えて構成される。本実施形態の整地板24は、それぞれ、円筒形ロータの全幅にわたって連続する一枚の板材で構成されているが、幅方向に所定の間隔(切欠き)を存して並ぶ複数の整地片に分割してもよい。整地板をこのような分割型にすると、整地板の切欠き部分から円筒形ロータ内に水が入り込むので、円筒形ロータの回転に伴う田面の水押し量を減らすことができる。なお、周方向に並列するすべての整地板を分割型にすると、円筒形ロータの整地性能が低下する惧れがあるので、一部の整地板を分割型にすることが好ましい。特に、一枚状の整地板24と分割型の整地板を、周方向において交互に配置すると、整地性能の低下を抑えつつ、水押し量を効果的に減らすことができる。
【0012】
入力ケース15の左右両側に隣接する整地ロータ17Aは、外側ほど回転半径が小さくなる円錐台形ロータからなり、該円錐台形ロータの回転中心を水平に対して所定角度θだけ傾けることによって、円錐台形ロータの接地部分を圃場面に対して平行にすると共に、円錐台形ロータの接地部分内端側を入力ケース15の下方に入り込ませるようになっている。このようにすると、入力ケース15の左右両側に隣接する整地ロータ17Aの間隔を狭くできるので、未整地部分を減らすことができるだけでなく、入力ケース15の下方に大量の水流が流れ込むことを防止できる。特に、本実施形態のように、植付作業機3の下部に感知フロート9を備え、該感知フロート9及び入力ケース15が植付作業機3の左右中央に位置し、円錐台形ロータが感知フロート9の前方を整地するという配置構成の場合、入力ケース15の下方に流れ込む水流や、未整地状態の圃場面による感知フロート9のばたつきが抑えられるので、感知フロート9の感知精度を高めることができる。
【0013】
具体的に説明すると、整地ロータ17Aを構成する円錐台形ロータは、軸受25を介して、入力ケース15の筒部15aで回転自在に支持されるハブ26と、該ハブ26から延出するアーム27と、該アーム27の先端部に傾斜状に設けられ、周方向に所定の間隔を存して並列する複数の整地板28とを備えて構成されている。入力ケース15の筒部15aは、回転中心が水平に対して所定角度θだけ傾くようにハブ26を回転自在に支持している。これにより、円錐台形ロータの接地部分を圃場面に対して平行にすると共に、円錐台形ロータの接地部分内端側を入力ケース15の下方に入り込ませることが可能になる。また、ハブ26の内周部先端側には、内歯ギヤ26aが形成されており、該内歯ギヤ26aには、ロータ軸16に設けられた外歯ギヤ29が噛合している。これにより、ロータ軸16の回転動力を円錐台形ロータに伝動し、他の円筒形ロータと同方向に回転させることができる。
【0014】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1と、該走行機体1の後部に連結される植付作業機3と、該植付作業機3の前方で圃場面を整地する整地装置13とを備える乗用型田植機において、整地装置13は、整地用の動力を入力する入力ケース15と、該入力ケース15の左右両側に並設され、入力ケース15から出力される動力で回転する複数の整地ロータ17A〜17Dとを備えて構成され、整地ロータ17A〜17Dのうち、入力ケース15の左右両側に隣接する整地ロータ17Aは、外側ほど回転半径が小さくなる円錐台形ロータからなり、該円錐台形ロータの回転中心を傾けることによって、円錐台形ロータの接地部分を圃場面に対して平行にすると共に、円錐台形ロータの接地部分内端側を入力ケース15の下方に入り込ませたので、入力ケース15の左右両側に隣接する整地ロータ17Aの間隔を適正にすることができ、その結果、未整地部分を減らすことができるだけでなく、入力ケース15の下方に大量の水流が流れ込むことを防止できる。
【0015】
しかも、本実施形態の乗用型田植機では、植付作業機3の下部に感知フロート9を備え、該感知フロート9及び入力ケース15が植付作業機3の左右中央に位置し、円錐台形ロータが感知フロート9の前方を整地するので、入力ケース15の下方に流れ込む水流や、未整地状態の圃場面による感知フロート9のばたつきが抑え、感知フロート9の感知精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】感知フロートの連繋構造を示す乗用型田植機の要部側面図である。
【図3】整地装置とフロートの位置関係を示す乗用型田植機の要部展開平面図である。
【図4】整地装置の要部正面断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 走行機体
3 植付作業機
9 感知フロート
13 整地装置
15 入力ケース
16 ロータ軸
17 整地ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、該走行機体の後部に連結される植付作業機と、該植付作業機の前方で圃場面を整地する整地装置とを備える移植機において、
前記整地装置は、整地用の動力を入力する入力ケースと、該入力ケースの左右両側に並設され、入力ケースから出力される動力で回転する複数の整地ロータとを備えて構成され、
前記整地ロータのうち、入力ケースの左右両側に隣接する整地ロータは、外側ほど回転半径が小さくなる円錐台形ロータからなり、該円錐台形ロータの回転中心を傾けることによって、円錐台形ロータの接地部分を圃場面に対して平行にすると共に、円錐台形ロータの接地部分内端側を入力ケースの下方に入り込ませたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記植付作業機の下部に感知フロートを備え、該感知フロート及び前記入力ケースが植付作業機の左右中央に位置し、前記円錐台形ロータが感知フロートの前方を整地することを特徴とする請求項1記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−165382(P2009−165382A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5527(P2008−5527)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】