移植機
【課題】制御部による線引きマーカの制御モードに、前記植付作業機の昇降動作毎に左右の線引きマーカの内何れの線引きマーカを振り出すかを交互に切り換える自動モードを有した移植機において、同方向の線引きマーカを振り出したい植付行程が連続する際に、各行程間の移植機の操作の煩雑さを軽減する。
【解決手段】制御部34による線引きマーカ16の制御モードに植付作業機11の昇降動作毎に左右の線引きマーカ16の内何れの線引きマーカ16を振り出すかを交互に切り換える自動モードを有した移植機において、制御部34に、自動モードと、植付作業機11の下降に伴って左右の線引きマーカ16の内任意の一方の線引きマーカ16のみを振り出す片落ちモードと、に切換えるマーカモード設定手段34cを備える。
自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカ16の振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段34dを備える。
【解決手段】制御部34による線引きマーカ16の制御モードに植付作業機11の昇降動作毎に左右の線引きマーカ16の内何れの線引きマーカ16を振り出すかを交互に切り換える自動モードを有した移植機において、制御部34に、自動モードと、植付作業機11の下降に伴って左右の線引きマーカ16の内任意の一方の線引きマーカ16のみを振り出す片落ちモードと、に切換えるマーカモード設定手段34cを備える。
自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカ16の振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段34dを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付作業機の植付クラッチ昇降に基き線引きマーカの振出し方向を自動的に切り換えるオートマーカ機能を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植付作業機の下降に伴って選択的に振り出される左右の線引きマーカの格納及び振り出しを制御する制御部を備え、該制御部の制御モードに、前記植付作業機の昇降動作毎に左右の線引きマーカの内、何れの線引きマーカを振り出すかを交互に切り換える自動モード(オートマーカモード)を有した移植機は知られている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4073807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の移植機は、一行程の植付走行の後、植付作業機を上昇させて旋回し、再び植付作業機を下降させると自動的に前行程とは逆方向の線引きマーカが振り出され、植付走行を行うことによって、次行程の植付走行の基準指標が圃場に形成される。また、オートマーカ機能によって切り換えられた方向とは逆方向のマーカを振り出したい場合には、植付作業機が上昇位置にあるときに手元操作レバーに操作によって振り出し方向を変更することが可能となっているが、作業条件によっては、同方向の線引きマーカを連続して振り出さなければならない状況があり、植付作業機を上昇させる度に手元操作レバーを操作して、オートマーカ機能によって切り換えられた振り出し方向を再度切り換えねばならず操作性の点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、走行機体の後部に植付作業機を昇降可能に連結し、前記植付作業機の上昇に伴って格納され、植付作業機の下降に伴って選択的に振り出される左右の線引きマーカと、該左右の線引きマーカの格納及び振り出しを制御する制御部を備え、該制御部による線引きマーカの制御モードに、前記植付作業機の昇降動作毎に左右の線引きマーカの内何れの線引きマーカを振り出すかを交互に切り換える自動モードを有した移植機において、前記制御部に、前記自動モードと、前記植付作業機の下降に伴って左右の線引きマーカの内任意の一方の線引きマーカのみを振り出す片落ちモードと、に切換えるマーカモード設定手段を備えたことを特徴とする。
また、前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカの振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、線引きマーカの制御モードに、前記植付作業機の下降に伴って左右の線引きマーカの内任意の一方の線引きマーカのみを振り出す片落ちモードを備えたので、同方向の線引きマーカを振り出したい植付走行行程が連続する際には、予め線引きマーカの制御モードを片落ちモードに設定しておけば、植付走行の一行程毎に線引きマーカの振り出し方向を切り換える操作を行うことなく、連続して同方向の線引きマーカを自動的に振り出すことが可能となり、各行程間の移植機の操作の煩雑さを軽減することができる。
【0007】
また、前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカの振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段を備えたので、作業条件にあわせた線引きマーカの振り出し方向切り換えがより幅広くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の移植機の全体側面図である。
【図2】(a)同上操作部の背面図である。(b)マーカモードの切換りパターンを示す説明図である。
【図3】作業機操作レバーの操作パーターンを示す斜視図である。
【図4】作業機操作部の側面図である。
【図5】線引きマーカの昇降状態を示す要部正面図である。
【図6】マーカ操作部材の(a)マーカ格納時の状態を示す拡大正面図、(b)マーカ振り出し時の状態を示す拡大正面図である。
【図7】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図8】作業機、及びマーカ制御のメインフローチャートである。
【図9】作業機の昇降及びクラッチ制御のフローチャートである。
【図10】振出モード制御のフローチャートである。
【図11】マーカ出力制御のフローチャートである。
【図12】移植機の植付行程の一例を示した行程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明をする。図1に示すように、移植機としての乗用田植機1は、前輪2及び後輪3に支持された走行機体4を有しており、該走行機体4の前方には、センターマスコット5が設けられていると共に、ボンネット6に覆われたエンジンが搭載されている。ボンネット6の後方には、ステアリングハンドル7や、作業者が着座する運転座席8などが配設された運転操作部9が設けられていると共に、該運転座席8の後方側では、植付作業機11が昇降リンク機構10を介して昇降自在に走行機体4に連結されている。
【0010】
前記植付作業機11は、マット苗を載置する苗載せ台12と、該苗載せ台12から苗を掻きとって圃場に植付ける植付装置13とを有しており、該植付装置13のプランタケース14の下方には、圃場を均すための複数のフロート15が設けられている。そして、これら複数のフロート15の内、1つは作業時に圃場面の状況に応じて植付作業機11を昇降制御し、植付け深さを調節するための感知フロートとなっている。
【0011】
また、植付作業機11の左右両側方には、圃場の未植付け側に振出すことで、植付け次工程における走行指標を圃場に線引きする線引きマーカ16が設けられており、該線引きマーカ16は、マーカアーム17の先端に回転自在に支持されたマーカホイール18と、該マーカアーム17の振出及び収納を行うマーカモータユニット19を有している。
【0012】
尚、該線引きマーカ16によって形成された走行指標に前記センターマスコット5を合わせて走行することで、乗用田植機1を直進させることが容易になる。
【0013】
一方、図2、及び図3に示すように、前記ステアリングハンドル7の下方側には、上下方向及び前後方向に傾倒操作可能で、且つ中立位置に復帰付勢された作業機操作レバー20が設けられており、該作業機操作レバー20を上下に操作することによって、植付作業機11の昇降操作、及びエンジンから植付作業機11への動力伝達を断接する植付クラッチの入切が可能になっている。
【0014】
詳述すると、植付クラッチが接続(植付入)されている状態から作業機操作レバー20を上方に操作すると、植付クラッチが切断(植付切)され、この植付クラッチが切断されている状態から更に作業機操作レバー20を上方に操作すると、植付作業機11が上昇する。
【0015】
また、この植付クラッチが切断され、かつ植付作業機11が上昇位置で固定されている状態から作業機操作レバー20を下方に傾倒操作すると、植付作業機11が下降し、更にもう一度作業機レバー20を下方に傾倒操作すると、植付クラッチが接続する。
【0016】
更に、植付作業機11が昇降作動中に、その昇降方向とは反対側に作業機操作レバー20を操作することで植付作業機11の昇降を停止させることもできる。
【0017】
一方、作業機操作レバー20は、前後方向に操作することによって、左右の線引きマーカ16を、起立した状態で機体側に収納された収納姿勢(図5実線位置)と、機体外側に振出された作業姿勢(図5二点鎖線位置)とに切換えることができるように構成されている。
【0018】
ついで、植付作業機11の昇降機構について説明をする。植付作業機11を昇降させる昇降リンク機構10の昇降シリンダ10a(図1参照)の伸縮は、図4に示すコントロールバルブ21によって制御され、該コントロールバルブ21は、方形の作動アーム22を有している。該作動アーム22の近傍には、前述した植付クラッチを断接するクラッチアーム23が設けられており、該クラッチアーム23及び前記コントロールバルブ21を作動させる作動アーム22は、作業機操作カム24によって連動して操作されるように構成されている。作業機操作カム24は、作業機操作カムモータ25によって回転駆動すると共に、その回動位置を作業機操作カムポテンショ26によって検出している。
【0019】
即ち、前記作業機操作レバー20の上下方向への傾倒操作に応じて、作業機操作カム24を、コントロールバルブ21が上昇位置となり植付作業機11が上昇する「上昇」ポジションと、コントロールバルブ21が停止位置となり、植付作業機11の昇降が停止状態となる「固定」ポジションと、前記感知フロートの姿勢変化に応じてコントロールバルブ21の開度が変化する状態となり、植付作業機11が自動昇降状態となる「自動昇降」ポジションと、植付作業機が当該自動昇降状態を維持しながら植付クラッチが接続される「植付」ポジションと、の何れかの位置に作業機操作カムモータ25によって設定することによって、前記植付作業機11の昇降及び植付クラッチの断接が操作される。
【0020】
ついで、左右の線引きマーカ16の構成について説明をする。線引きマーカ16は、前述したマーカモータユニット19によって、収納姿勢と作業姿勢とに切換えられており、該マーカモータユニット19は、図6に示すように、マーカモータ27R(27L)と、該マーカモータ27R(27L)の出力ギヤ27aと噛合するラック28と、ラック28の取付軸29に取付けられたマーカ保持部材30とから構成されている。
【0021】
前記マーカアーム17の基端部17aは、前記取付軸29に回転自在に取付けられ、且つスプリング31によって作業姿勢側に付勢されており、取付軸29に一体に設けられたマーカ保持部材30と当接することにより位置決めされている。
【0022】
この構成により、マーカアーム17は、マーカモータ27の回転がラック28を介して取付軸29に伝達され、マーカ保持部材30が該取付軸29と一体となって回転することによって、その位置を切換え可能になっている。
【0023】
また、図6に示すように、ラック28の上方側には、線引きマーカ16の収納姿勢を検出するマーカ収納検出スイッチ32R(32L)が設けられていると共に、ラック28の下方側には、線引きマーカ16の振出姿勢を検出するマーカ振出検出スイッチ33R(33L)が設けられており、マーカアーム17が上方に起立して収納された場合には、図6(a)に示すようにラック28の上方カム部28aがマーカ収納検出スイッチ32R(32L)と当接して、線引きマーカ16の収納姿勢が検出され、マーカアーム22が振出されている場合には、図6(b)に示すようにラック28の下方カム部28bがマーカ振出検出スイッチ33R(33L)に当接して、線引きマーカ16の振出姿勢が検出される。
【0024】
次に、移植機1の制御部34について説明をする。図7は、移植機1の制御ブロック図であり、制御部34の入力側には、前述した作業機操作レバー20の上方側への傾倒操作を検出する作業機操作スイッチ(上側)35a、作業機操作レバー20の下方側への傾倒操作を検出する作業機操作スイッチ(下側)35b、作業機操作レバー20の前方側への傾倒操作を検出するマーカ操作スイッチ(前側)36a、作業機操作レバー20の後方側への傾倒操作を検出するマーカ操作スイッチ(後側)36b、左右の線引きマーカ16それぞれについて設けられた、マーカ収納検出スイッチ32L,32R、マーカ振出検出スイッチ33L,33R及び作業機操作カムポテンショ26が接続されていると共に、植付作業機11への動力を断接する植付クラッチの入切操作、及び植付作業に必要な各種警報等を可能とする作業機準備スイッチ36、線引きマーカ16の制御モードを、振出しを実行しない停止モードと、振出方向を植付作業機11の昇降の度に切り換えて振り出す自動モードと、植付作業機11の昇降に関わらす同一方向を連続して振り出す片落ちモードとの切り換えを行うマーカ自動スイッチ37、植付作業機11の高さ位置を検知するリフト角ポテンショ38などが接続されている。尚、作業機準備スイッチ36、及びマーカ自動スイッチ37は図2(a)に示すように、ステアリンハンドル7の下方の操作パネルに設けられている。一方、制御部34の出力側には、前述した作業機操作カムモータ25、左右のマーカモータ27L,27Rが接続されている。
【0025】
該制御部34は、作業機操作レバー20の前後操作に基いて各線引きマーカ16を作業姿勢にするか、収納姿勢にするか設定する振出モード設定手段34a、該振出モード設定手段34aの設定に基づいて左右の線引きマーカ16を駆動させるマーカ出力手段34bとを有している。
また、振出モード設定手段34aはマーカモード設定手段34cを有しており、前記マーカ自動スイッチ37を押し操作する度に、図2(b)に示すように、前記停止モード、自動モード、及び片落ちモードに順番に切換えることができる。
【0026】
ついで、植付作業機11、及び前記線引きマーカ16の制御について、図8乃至図12に基いて説明をする。図8は、線引きマーカ16の振出しに関するメインフローであり、前記制御部34は、作業中において、植付作業機11の昇降、植付クラッチ操作、及び線引きマーカ16の振出しを行うにあたり、作業機操作制御(S1)、振出モード制御(S2)、マーカ出力制御(S3)の各制御をこの順番で繰り返し実行している。
【0027】
[作業機操作制御]
前記作業機操作制御は、作業機操作レバー20による植付作業機11の昇降に関する制御であり、図9に示すように、まず作業機操作レバー20が上方側又は下方側へ傾倒操作されたかを判断する(S10、S11)。そして、作業機操作レバー20が上方側へと操作された場合(S11)、植付作業機11が、下降位置にあり、且つ植付けクラッチが接続されている植付状態であると(S12,S13,S14)、制御部34は、作業機操作カムモータ25を作動させて作業機操作カム24を「自動昇降」ポジションとし、植付クラッチを切断する(S15)。
【0028】
また、植付作業機11が下降動作中の場合には(S16)、その下降動作を停止して植付作業機11の位置を固定し(S17)、植付作業機11が植付けクラッチが切断された状態で自動昇降状態にある場合、又は、固定されている場合には(S13,S14,S16)、植付作業機11を上昇させる(S18)。尚、植付作業機11が上昇動作中の場合には、作業機操作カム24は上昇ポジションを維持し、植付作業機11はそのまま上昇を続ける。
【0029】
一方、作業機操作レバー20が下方側に操作された場合、まず、作業準備スイッチ36のオン・オフが判断され(S10,S19)、植付作業機11を植付状態にしても良いかどうかが判断される。そして、作業準備スイッチ36がオンされている場合に、作業機操作カム24が「自動昇降」ポジションにあり植付作業機11が自動昇降状態(下降状態)にあると(S20,S21)、制御部34は、作業機操作カムモータ25を作動させて作業機操作カム24を「植付」ポジションとし、植付クラッチを接続する(S22,S25)。
【0030】
また、植付作業機11が下降動作中の場合には、植付クラッチ入待ち状態とし(S24,S27)、この植付作業機11の下降動作が停止してから(S28,S29)、植付クラッチを接続し、植付クラッチフラグをONにする(S30,S31)。
【0031】
更に、作業機準備スイッチ36のオン・オフに係らず、植付作業機11が上昇動作中には(S20,S32)、植付作業機11は、その上昇動作を停止してその位置で固定される(S3)。
【0032】
また、作業機準備スイッチ36がオフの場合には、植付クラッチを接続せず植付作業機11を植付状態にできないようにしている(S34)。
【0033】
[振出モード制御]
ついで、線引きマーカ16の振出し、収納を制御する振出モード制御について説明をする。図10に示すように、振出モード制御では、まず作業準備スイッチ36のオン・オフによって、植付作業が可能な状態か否かが判断される(S40)。
【0034】
振出モード設定手段34aは、作業機準備スイッチ36がオンされ、且つ、前記マーカモード設定手段34cにより、マーカモードが自動モードに設定されていると、リフト角ポテンショ38に基いて植付作業機11が所定の切換え基準位置よりも低い下方位置(下降位置及び基準位置よりも下方における下降動作中)から、所定の切換え基準位置よりも高い上方位置(上昇位置及び植付作業機の上昇動作中)になったことを検知した際に(即ち、植付作業機11の昇降を検知すると)、植付けクラッチが接続されている場合、その度、線引きマーカ16の振出し方向を自動的に切換える(S41〜S45)。
【0035】
さらに、振出モード設定手段34aは、振出方向選択手段34dを有しており、前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、作業機操作レバー20を前後に傾倒操作することにより、線引きマーカ16の振出方向を人為的に切換え可能としている。
【0036】
例えば、前記作業機操作レバー20を後方側に操作したときに振出モードが左振出である場合、即ち機体左側の線引きマーカ16の振出しが設定されていると(S46,S48)、振出モードに左収納をセットし(S46,S48,S49)、振出モードが左振出以外(S48)で、且つマーカモードが停止以外のとき、即ち自動モード、または片落ちモードのとき(S52)には振出モードに左振出をセットする(S53)。
【0037】
また、前記作業機操作レバー20を前方側に操作したときに振出モードが右振出のとき、即ち機体右側の線引きマーカ16の振出しが設定されていると、振出モードに右収納をセットし(S47,S50,S51)、振出モードが右振出以外(S50)で、且つマーカモードが停止以外のとき、即ち自動モード、または片落ちモードのとき(S54)には振出モードに左振出をセットする(S55)。
【0038】
これにより、マーカモードが自動モード、または片落ちモードのときに作業機操作レバー20を後方側に操作する度に左側の線引きマーカ16の振出モードを振出と収納に交互に切り換えることを可能にし、作業機操作レバー20を前方側に操作する度に右側の線引きマーカ16の振出モードを振出と収納に交互に切り換えることを可能にしており、自動モード、または片落ちモードでの作業中、線引きマーカ16の振出方向を変更したい場合には作業機操作レバー20の操作で現在振出設定されている側の線引きマーカ16の振出モードを収納に切換え、収納設定されている他方の線引きマーカ16の振出モードを振出に切換えることで線引きマーカ16の振出方向を左右逆に切換えることができる。
【0039】
また、振出設定されている側の線引きマーカ16の収納設定を行わず、他方のマーカを振出設定することで左右の線引きマーカ16を振り出した、両落ち状態を現出することも可能としている。
【0040】
尚、マーカモードが停止モードのときには、何れの線引きマーカ16も振出モードを振出に設定することはできず、収納のみの設定を可能としている。
【0041】
一方、マーカ自動スイッチ37を操作すると、前記マーカモード設定手段34cにより、マーカモードが自動モードであったときにはマーカモードを片落ちモードに設定し(S56,S57,S58)、また、マーカモードが片落ちモードであったときには、振出モード(左右何れの線引きマーカ16が振出モードとなっているか)を記憶し、マーカモードを停止に設定し、左右の線引きマーカ16の振出モードを収納に設定する(S59〜S62)。そして、マーカモードが自動モードでも片落ちモードでもないとき、即ち停止モードであったときにはマーカモードを自動モードに設定し、記憶していた振出モードを読込み、振出モードにセットする(S59,S63,S64)。
【0042】
[マーカ出力制御]
ついで、振出モード設定手段34aよる振出モード制御によって設定された線引きマーカ16の振出モードに基き、線引きマーカ16の振出しを実行するマーカ出力制御について説明をする。図11に示すように、マーカ出力制御は、まず、植付作業機11の高さがマーカ振出し高さ以下かどうか、即ち、植付作業機11が前述した下方位置にいるかどうかを判別する(S70)。
【0043】
そして、マーカ出力手段34bは、植付作業機11が下方位置にいる場合には、振出モード設定手段34aに設定された線引きマーカ16の振出し設定に基いて、左右のマーカモータ27L,27Rに電気信号を出力する。
【0044】
具体的には、振出モード設定手段34aによって機体右側の線引きマーカ16の振出しが設定されると、機体右側のマーカ振出し検出スイッチ33Rがオンされるまで、マーカモータ(右)27Rを駆動させて機体右側の線引きマーカ16を作業姿勢にする(S71〜S74)。
【0045】
また、振出モード設定手段34aによって機体右側の線引きマーカ16の収納が設定されると、機体右側のマーカ収納検出スイッチ32Rがオンされるまで、マーカモータ(右)27Rを駆動させて機体右側の線引きマーカ16を収納姿勢にする(S75〜S78)。
【0046】
一方、機体左側の線引きマーカ16についても同様に、振出モード設定手段34aによって機体左側の線引きマーカ16の振出しが設定されると、機体左側のマーカ振出し検出スイッチ33Lがオンされるまで、マーカモータ(左)27Lを駆動させて機体左側の線引きマーカ16を作業姿勢にする(S79〜S82)。
【0047】
また、振出モード設定手段34aによって機体左側の線引きマーカ16の収納が設定されると、機体左側のマーカ収納検出スイッチ32Lがオンされるまで、マーカモータ(左)35Lを駆動させて機体左側の線引きマーカ16を収納姿勢にする(S83〜S86)。
【0048】
また、植付作業機12が振出し高さよりも高い場合、即ち上方位置にある場合には、マーカ出力手段34bは、左右のマーカ収納検出スイッチ32L,32Rがオンされているかどうかを検出し、マーカ収納検出スイッチ32L,32Rがオンされていない場合には、オンされていない側のマーカモータ27L,27Rを駆動させて、線引きマーカ16を収納姿勢とする(S70,S87〜S92)。言い換えると、マーカ出力手段34bは、植付作業機11が上方位置にある際には、左右の線引きマーカ16を収納姿勢とした両上げ状態にする。
【0049】
ついで、図12に基き、実際の圃場での植付行程の一例について説明をする。
【0050】
作業者は、植付作業を開始するにあたって走行機体5に乗り込んでエンジンをスタートさせると、圃場の入口Eから入り、入口Eとは対角位置から植付け作業を開始する。
【0051】
作業者は、植付け作業を開始するにあたって、二行程分だけ圃場際から離れた位置を作業開始位置Aに設定すると共に、植付作業機11上昇させて、線引きマーカ16の振出し設定を行う。この振出し設定を行う際に、作業者は、まず、マーカ自動スイッチ37にてマーカモードを自動モードに設定して一方の線引きマーカ16を振出し、作業機操作レバー20を前後方向の対応する側に傾倒操作して、他方の線引きマーカ16を振出し設定して両落ち状態を設定する。
【0052】
そして、この線引きマーカ16の設定が終わると、作業機操作レバー20を下方側に操作して、植付作業機11を下降させると共に、走行機体5の両側に左右の線引きマーカ16で走行指標を形成しながら、植付け作業を行う。
【0053】
そして、反対側の圃場端Bまで来ると旋回し、植付作業機11の上昇に伴い、左右の線引きマーカ16が一旦、自動的に収納される。旋回が終わり、作業者が作業機操作レバー20を下方側に操作して植付作業機11を下降させると、前回後に振出し設定された線引きマーカ16が振出される。この場合、左の線引きマーカ16を振出す必要があるが、右の線引きマーカ16が振出設定されている場合には、作業機操作レバー20を後方に操作して左の線引きマーカ16を振出設定すると共に、前方に操作して右の線引きマーカ16を収納設定する。その後、旋回の度に自動的に左右の線引きマーカ16の振出し方向は植付クラッチの入を伴った植付作業機11の昇降の度(枕地での旋回の度)に自動的に切換わり、圃場の未植付け側に走行指標を形成しながら、往復植付行程P1の植付作業を進行する。
【0054】
植付作業が進行して、図12の地点Cのように、二周分の廻り植え行程分を残して往復植え行程P1を終了した後、前記往復植え行程P1で植付けた苗の外周に内側の廻り植え行程P2〜P5に移行する。この場合、本作業例では外側の廻り植え行程P6〜P9(図中では機体の左側)の走行指標を形成しながら、植付作業を進行するが、作業者は、マーカ自動スイッチ37を押操作してマーカモードを片落ちモードに設定する。
【0055】
尚、このとき、作業者の意に反した側の線引きマーカ16が振出設定されている場合には前述と同様、作業機操作レバー20を前後方向に操作して振出方向の設定を切換える。
【0056】
そして、作業機操作レバー20の操作で植付作業機11を下降させると、圃場外方側の線引きマーカ16が振り出される。そして、前行程に沿って植付作業を行い反対側の圃場端まで来ると植付クラッチを切り、植付作業機11を上昇させて90°方向転換を行った後、再度植付作業機11を下降接地させる。このとき、マーカモードは片落ちモードに設定されており、方向転換前の振出方向が維持されるので、前回と同じ圃場外方側の線引きマーカ16が振り出される。
【0057】
以降、内側の廻り植え行程の方向転換の度に圃場外方側の線引きマーカ16の振出しが繰り返される。
【0058】
よって、従来のように、オートマーカ機能(自動モード)によって変更された線引きマーカ16の振出方向を再度変更するようなこともなく、走行機体1の走行操作、及び植付作業機11の操作に専念して内側の廻り植え行程P2〜P5の植付作業を行うことができる。
【0059】
次に、内側の廻り植え行程P2〜P5が終了すると、最終行程である外側の廻り植え行程P6〜P9に移行する。
【0060】
この場合は、次行程の走行指標を形成する必要がないので、マーカモードを停止にし、前回の内側の廻り植え行程P2〜P5で形成した走行指標を目安として植付けを行いながら走行する。
【0061】
そして、圃場の最外周部を一周して植付け、圃場の入口Eから圃場外へと出る。
【0062】
前述の内側の廻り植え行程P2〜P5の時のように、同方向の線引きマーカ16を振り出したい植付走行行程が連続する際には、予め線引きマーカ16の制御モードを片落ちモードに設定しておけば、植付走行の一行程毎に線引きマーカ16の振り出し方向を切り換える操作を行うことなく、連続して同方向の線引きマーカ16を自動的に振り出すことが可能となり、各行程間の移植機の操作の煩雑さを軽減することができる。
【0063】
また、前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカ16の振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段を備えたので、より多様な作業条件にあわせ線引きマーカ16の振り出し方向の切り換えを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 乗用型田植機
11 植付作業機
16 線引きマーカ
20 作業機操作レバー
34 制御部
34a 振出モード設定手段
34b マーカ出力手段
34c マーカモード設定手段
34d 振出方向選択手段
37 マーカ自動スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付作業機の植付クラッチ昇降に基き線引きマーカの振出し方向を自動的に切り換えるオートマーカ機能を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植付作業機の下降に伴って選択的に振り出される左右の線引きマーカの格納及び振り出しを制御する制御部を備え、該制御部の制御モードに、前記植付作業機の昇降動作毎に左右の線引きマーカの内、何れの線引きマーカを振り出すかを交互に切り換える自動モード(オートマーカモード)を有した移植機は知られている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4073807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の移植機は、一行程の植付走行の後、植付作業機を上昇させて旋回し、再び植付作業機を下降させると自動的に前行程とは逆方向の線引きマーカが振り出され、植付走行を行うことによって、次行程の植付走行の基準指標が圃場に形成される。また、オートマーカ機能によって切り換えられた方向とは逆方向のマーカを振り出したい場合には、植付作業機が上昇位置にあるときに手元操作レバーに操作によって振り出し方向を変更することが可能となっているが、作業条件によっては、同方向の線引きマーカを連続して振り出さなければならない状況があり、植付作業機を上昇させる度に手元操作レバーを操作して、オートマーカ機能によって切り換えられた振り出し方向を再度切り換えねばならず操作性の点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、走行機体の後部に植付作業機を昇降可能に連結し、前記植付作業機の上昇に伴って格納され、植付作業機の下降に伴って選択的に振り出される左右の線引きマーカと、該左右の線引きマーカの格納及び振り出しを制御する制御部を備え、該制御部による線引きマーカの制御モードに、前記植付作業機の昇降動作毎に左右の線引きマーカの内何れの線引きマーカを振り出すかを交互に切り換える自動モードを有した移植機において、前記制御部に、前記自動モードと、前記植付作業機の下降に伴って左右の線引きマーカの内任意の一方の線引きマーカのみを振り出す片落ちモードと、に切換えるマーカモード設定手段を備えたことを特徴とする。
また、前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカの振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、線引きマーカの制御モードに、前記植付作業機の下降に伴って左右の線引きマーカの内任意の一方の線引きマーカのみを振り出す片落ちモードを備えたので、同方向の線引きマーカを振り出したい植付走行行程が連続する際には、予め線引きマーカの制御モードを片落ちモードに設定しておけば、植付走行の一行程毎に線引きマーカの振り出し方向を切り換える操作を行うことなく、連続して同方向の線引きマーカを自動的に振り出すことが可能となり、各行程間の移植機の操作の煩雑さを軽減することができる。
【0007】
また、前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカの振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段を備えたので、作業条件にあわせた線引きマーカの振り出し方向切り換えがより幅広くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の移植機の全体側面図である。
【図2】(a)同上操作部の背面図である。(b)マーカモードの切換りパターンを示す説明図である。
【図3】作業機操作レバーの操作パーターンを示す斜視図である。
【図4】作業機操作部の側面図である。
【図5】線引きマーカの昇降状態を示す要部正面図である。
【図6】マーカ操作部材の(a)マーカ格納時の状態を示す拡大正面図、(b)マーカ振り出し時の状態を示す拡大正面図である。
【図7】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図8】作業機、及びマーカ制御のメインフローチャートである。
【図9】作業機の昇降及びクラッチ制御のフローチャートである。
【図10】振出モード制御のフローチャートである。
【図11】マーカ出力制御のフローチャートである。
【図12】移植機の植付行程の一例を示した行程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明をする。図1に示すように、移植機としての乗用田植機1は、前輪2及び後輪3に支持された走行機体4を有しており、該走行機体4の前方には、センターマスコット5が設けられていると共に、ボンネット6に覆われたエンジンが搭載されている。ボンネット6の後方には、ステアリングハンドル7や、作業者が着座する運転座席8などが配設された運転操作部9が設けられていると共に、該運転座席8の後方側では、植付作業機11が昇降リンク機構10を介して昇降自在に走行機体4に連結されている。
【0010】
前記植付作業機11は、マット苗を載置する苗載せ台12と、該苗載せ台12から苗を掻きとって圃場に植付ける植付装置13とを有しており、該植付装置13のプランタケース14の下方には、圃場を均すための複数のフロート15が設けられている。そして、これら複数のフロート15の内、1つは作業時に圃場面の状況に応じて植付作業機11を昇降制御し、植付け深さを調節するための感知フロートとなっている。
【0011】
また、植付作業機11の左右両側方には、圃場の未植付け側に振出すことで、植付け次工程における走行指標を圃場に線引きする線引きマーカ16が設けられており、該線引きマーカ16は、マーカアーム17の先端に回転自在に支持されたマーカホイール18と、該マーカアーム17の振出及び収納を行うマーカモータユニット19を有している。
【0012】
尚、該線引きマーカ16によって形成された走行指標に前記センターマスコット5を合わせて走行することで、乗用田植機1を直進させることが容易になる。
【0013】
一方、図2、及び図3に示すように、前記ステアリングハンドル7の下方側には、上下方向及び前後方向に傾倒操作可能で、且つ中立位置に復帰付勢された作業機操作レバー20が設けられており、該作業機操作レバー20を上下に操作することによって、植付作業機11の昇降操作、及びエンジンから植付作業機11への動力伝達を断接する植付クラッチの入切が可能になっている。
【0014】
詳述すると、植付クラッチが接続(植付入)されている状態から作業機操作レバー20を上方に操作すると、植付クラッチが切断(植付切)され、この植付クラッチが切断されている状態から更に作業機操作レバー20を上方に操作すると、植付作業機11が上昇する。
【0015】
また、この植付クラッチが切断され、かつ植付作業機11が上昇位置で固定されている状態から作業機操作レバー20を下方に傾倒操作すると、植付作業機11が下降し、更にもう一度作業機レバー20を下方に傾倒操作すると、植付クラッチが接続する。
【0016】
更に、植付作業機11が昇降作動中に、その昇降方向とは反対側に作業機操作レバー20を操作することで植付作業機11の昇降を停止させることもできる。
【0017】
一方、作業機操作レバー20は、前後方向に操作することによって、左右の線引きマーカ16を、起立した状態で機体側に収納された収納姿勢(図5実線位置)と、機体外側に振出された作業姿勢(図5二点鎖線位置)とに切換えることができるように構成されている。
【0018】
ついで、植付作業機11の昇降機構について説明をする。植付作業機11を昇降させる昇降リンク機構10の昇降シリンダ10a(図1参照)の伸縮は、図4に示すコントロールバルブ21によって制御され、該コントロールバルブ21は、方形の作動アーム22を有している。該作動アーム22の近傍には、前述した植付クラッチを断接するクラッチアーム23が設けられており、該クラッチアーム23及び前記コントロールバルブ21を作動させる作動アーム22は、作業機操作カム24によって連動して操作されるように構成されている。作業機操作カム24は、作業機操作カムモータ25によって回転駆動すると共に、その回動位置を作業機操作カムポテンショ26によって検出している。
【0019】
即ち、前記作業機操作レバー20の上下方向への傾倒操作に応じて、作業機操作カム24を、コントロールバルブ21が上昇位置となり植付作業機11が上昇する「上昇」ポジションと、コントロールバルブ21が停止位置となり、植付作業機11の昇降が停止状態となる「固定」ポジションと、前記感知フロートの姿勢変化に応じてコントロールバルブ21の開度が変化する状態となり、植付作業機11が自動昇降状態となる「自動昇降」ポジションと、植付作業機が当該自動昇降状態を維持しながら植付クラッチが接続される「植付」ポジションと、の何れかの位置に作業機操作カムモータ25によって設定することによって、前記植付作業機11の昇降及び植付クラッチの断接が操作される。
【0020】
ついで、左右の線引きマーカ16の構成について説明をする。線引きマーカ16は、前述したマーカモータユニット19によって、収納姿勢と作業姿勢とに切換えられており、該マーカモータユニット19は、図6に示すように、マーカモータ27R(27L)と、該マーカモータ27R(27L)の出力ギヤ27aと噛合するラック28と、ラック28の取付軸29に取付けられたマーカ保持部材30とから構成されている。
【0021】
前記マーカアーム17の基端部17aは、前記取付軸29に回転自在に取付けられ、且つスプリング31によって作業姿勢側に付勢されており、取付軸29に一体に設けられたマーカ保持部材30と当接することにより位置決めされている。
【0022】
この構成により、マーカアーム17は、マーカモータ27の回転がラック28を介して取付軸29に伝達され、マーカ保持部材30が該取付軸29と一体となって回転することによって、その位置を切換え可能になっている。
【0023】
また、図6に示すように、ラック28の上方側には、線引きマーカ16の収納姿勢を検出するマーカ収納検出スイッチ32R(32L)が設けられていると共に、ラック28の下方側には、線引きマーカ16の振出姿勢を検出するマーカ振出検出スイッチ33R(33L)が設けられており、マーカアーム17が上方に起立して収納された場合には、図6(a)に示すようにラック28の上方カム部28aがマーカ収納検出スイッチ32R(32L)と当接して、線引きマーカ16の収納姿勢が検出され、マーカアーム22が振出されている場合には、図6(b)に示すようにラック28の下方カム部28bがマーカ振出検出スイッチ33R(33L)に当接して、線引きマーカ16の振出姿勢が検出される。
【0024】
次に、移植機1の制御部34について説明をする。図7は、移植機1の制御ブロック図であり、制御部34の入力側には、前述した作業機操作レバー20の上方側への傾倒操作を検出する作業機操作スイッチ(上側)35a、作業機操作レバー20の下方側への傾倒操作を検出する作業機操作スイッチ(下側)35b、作業機操作レバー20の前方側への傾倒操作を検出するマーカ操作スイッチ(前側)36a、作業機操作レバー20の後方側への傾倒操作を検出するマーカ操作スイッチ(後側)36b、左右の線引きマーカ16それぞれについて設けられた、マーカ収納検出スイッチ32L,32R、マーカ振出検出スイッチ33L,33R及び作業機操作カムポテンショ26が接続されていると共に、植付作業機11への動力を断接する植付クラッチの入切操作、及び植付作業に必要な各種警報等を可能とする作業機準備スイッチ36、線引きマーカ16の制御モードを、振出しを実行しない停止モードと、振出方向を植付作業機11の昇降の度に切り換えて振り出す自動モードと、植付作業機11の昇降に関わらす同一方向を連続して振り出す片落ちモードとの切り換えを行うマーカ自動スイッチ37、植付作業機11の高さ位置を検知するリフト角ポテンショ38などが接続されている。尚、作業機準備スイッチ36、及びマーカ自動スイッチ37は図2(a)に示すように、ステアリンハンドル7の下方の操作パネルに設けられている。一方、制御部34の出力側には、前述した作業機操作カムモータ25、左右のマーカモータ27L,27Rが接続されている。
【0025】
該制御部34は、作業機操作レバー20の前後操作に基いて各線引きマーカ16を作業姿勢にするか、収納姿勢にするか設定する振出モード設定手段34a、該振出モード設定手段34aの設定に基づいて左右の線引きマーカ16を駆動させるマーカ出力手段34bとを有している。
また、振出モード設定手段34aはマーカモード設定手段34cを有しており、前記マーカ自動スイッチ37を押し操作する度に、図2(b)に示すように、前記停止モード、自動モード、及び片落ちモードに順番に切換えることができる。
【0026】
ついで、植付作業機11、及び前記線引きマーカ16の制御について、図8乃至図12に基いて説明をする。図8は、線引きマーカ16の振出しに関するメインフローであり、前記制御部34は、作業中において、植付作業機11の昇降、植付クラッチ操作、及び線引きマーカ16の振出しを行うにあたり、作業機操作制御(S1)、振出モード制御(S2)、マーカ出力制御(S3)の各制御をこの順番で繰り返し実行している。
【0027】
[作業機操作制御]
前記作業機操作制御は、作業機操作レバー20による植付作業機11の昇降に関する制御であり、図9に示すように、まず作業機操作レバー20が上方側又は下方側へ傾倒操作されたかを判断する(S10、S11)。そして、作業機操作レバー20が上方側へと操作された場合(S11)、植付作業機11が、下降位置にあり、且つ植付けクラッチが接続されている植付状態であると(S12,S13,S14)、制御部34は、作業機操作カムモータ25を作動させて作業機操作カム24を「自動昇降」ポジションとし、植付クラッチを切断する(S15)。
【0028】
また、植付作業機11が下降動作中の場合には(S16)、その下降動作を停止して植付作業機11の位置を固定し(S17)、植付作業機11が植付けクラッチが切断された状態で自動昇降状態にある場合、又は、固定されている場合には(S13,S14,S16)、植付作業機11を上昇させる(S18)。尚、植付作業機11が上昇動作中の場合には、作業機操作カム24は上昇ポジションを維持し、植付作業機11はそのまま上昇を続ける。
【0029】
一方、作業機操作レバー20が下方側に操作された場合、まず、作業準備スイッチ36のオン・オフが判断され(S10,S19)、植付作業機11を植付状態にしても良いかどうかが判断される。そして、作業準備スイッチ36がオンされている場合に、作業機操作カム24が「自動昇降」ポジションにあり植付作業機11が自動昇降状態(下降状態)にあると(S20,S21)、制御部34は、作業機操作カムモータ25を作動させて作業機操作カム24を「植付」ポジションとし、植付クラッチを接続する(S22,S25)。
【0030】
また、植付作業機11が下降動作中の場合には、植付クラッチ入待ち状態とし(S24,S27)、この植付作業機11の下降動作が停止してから(S28,S29)、植付クラッチを接続し、植付クラッチフラグをONにする(S30,S31)。
【0031】
更に、作業機準備スイッチ36のオン・オフに係らず、植付作業機11が上昇動作中には(S20,S32)、植付作業機11は、その上昇動作を停止してその位置で固定される(S3)。
【0032】
また、作業機準備スイッチ36がオフの場合には、植付クラッチを接続せず植付作業機11を植付状態にできないようにしている(S34)。
【0033】
[振出モード制御]
ついで、線引きマーカ16の振出し、収納を制御する振出モード制御について説明をする。図10に示すように、振出モード制御では、まず作業準備スイッチ36のオン・オフによって、植付作業が可能な状態か否かが判断される(S40)。
【0034】
振出モード設定手段34aは、作業機準備スイッチ36がオンされ、且つ、前記マーカモード設定手段34cにより、マーカモードが自動モードに設定されていると、リフト角ポテンショ38に基いて植付作業機11が所定の切換え基準位置よりも低い下方位置(下降位置及び基準位置よりも下方における下降動作中)から、所定の切換え基準位置よりも高い上方位置(上昇位置及び植付作業機の上昇動作中)になったことを検知した際に(即ち、植付作業機11の昇降を検知すると)、植付けクラッチが接続されている場合、その度、線引きマーカ16の振出し方向を自動的に切換える(S41〜S45)。
【0035】
さらに、振出モード設定手段34aは、振出方向選択手段34dを有しており、前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、作業機操作レバー20を前後に傾倒操作することにより、線引きマーカ16の振出方向を人為的に切換え可能としている。
【0036】
例えば、前記作業機操作レバー20を後方側に操作したときに振出モードが左振出である場合、即ち機体左側の線引きマーカ16の振出しが設定されていると(S46,S48)、振出モードに左収納をセットし(S46,S48,S49)、振出モードが左振出以外(S48)で、且つマーカモードが停止以外のとき、即ち自動モード、または片落ちモードのとき(S52)には振出モードに左振出をセットする(S53)。
【0037】
また、前記作業機操作レバー20を前方側に操作したときに振出モードが右振出のとき、即ち機体右側の線引きマーカ16の振出しが設定されていると、振出モードに右収納をセットし(S47,S50,S51)、振出モードが右振出以外(S50)で、且つマーカモードが停止以外のとき、即ち自動モード、または片落ちモードのとき(S54)には振出モードに左振出をセットする(S55)。
【0038】
これにより、マーカモードが自動モード、または片落ちモードのときに作業機操作レバー20を後方側に操作する度に左側の線引きマーカ16の振出モードを振出と収納に交互に切り換えることを可能にし、作業機操作レバー20を前方側に操作する度に右側の線引きマーカ16の振出モードを振出と収納に交互に切り換えることを可能にしており、自動モード、または片落ちモードでの作業中、線引きマーカ16の振出方向を変更したい場合には作業機操作レバー20の操作で現在振出設定されている側の線引きマーカ16の振出モードを収納に切換え、収納設定されている他方の線引きマーカ16の振出モードを振出に切換えることで線引きマーカ16の振出方向を左右逆に切換えることができる。
【0039】
また、振出設定されている側の線引きマーカ16の収納設定を行わず、他方のマーカを振出設定することで左右の線引きマーカ16を振り出した、両落ち状態を現出することも可能としている。
【0040】
尚、マーカモードが停止モードのときには、何れの線引きマーカ16も振出モードを振出に設定することはできず、収納のみの設定を可能としている。
【0041】
一方、マーカ自動スイッチ37を操作すると、前記マーカモード設定手段34cにより、マーカモードが自動モードであったときにはマーカモードを片落ちモードに設定し(S56,S57,S58)、また、マーカモードが片落ちモードであったときには、振出モード(左右何れの線引きマーカ16が振出モードとなっているか)を記憶し、マーカモードを停止に設定し、左右の線引きマーカ16の振出モードを収納に設定する(S59〜S62)。そして、マーカモードが自動モードでも片落ちモードでもないとき、即ち停止モードであったときにはマーカモードを自動モードに設定し、記憶していた振出モードを読込み、振出モードにセットする(S59,S63,S64)。
【0042】
[マーカ出力制御]
ついで、振出モード設定手段34aよる振出モード制御によって設定された線引きマーカ16の振出モードに基き、線引きマーカ16の振出しを実行するマーカ出力制御について説明をする。図11に示すように、マーカ出力制御は、まず、植付作業機11の高さがマーカ振出し高さ以下かどうか、即ち、植付作業機11が前述した下方位置にいるかどうかを判別する(S70)。
【0043】
そして、マーカ出力手段34bは、植付作業機11が下方位置にいる場合には、振出モード設定手段34aに設定された線引きマーカ16の振出し設定に基いて、左右のマーカモータ27L,27Rに電気信号を出力する。
【0044】
具体的には、振出モード設定手段34aによって機体右側の線引きマーカ16の振出しが設定されると、機体右側のマーカ振出し検出スイッチ33Rがオンされるまで、マーカモータ(右)27Rを駆動させて機体右側の線引きマーカ16を作業姿勢にする(S71〜S74)。
【0045】
また、振出モード設定手段34aによって機体右側の線引きマーカ16の収納が設定されると、機体右側のマーカ収納検出スイッチ32Rがオンされるまで、マーカモータ(右)27Rを駆動させて機体右側の線引きマーカ16を収納姿勢にする(S75〜S78)。
【0046】
一方、機体左側の線引きマーカ16についても同様に、振出モード設定手段34aによって機体左側の線引きマーカ16の振出しが設定されると、機体左側のマーカ振出し検出スイッチ33Lがオンされるまで、マーカモータ(左)27Lを駆動させて機体左側の線引きマーカ16を作業姿勢にする(S79〜S82)。
【0047】
また、振出モード設定手段34aによって機体左側の線引きマーカ16の収納が設定されると、機体左側のマーカ収納検出スイッチ32Lがオンされるまで、マーカモータ(左)35Lを駆動させて機体左側の線引きマーカ16を収納姿勢にする(S83〜S86)。
【0048】
また、植付作業機12が振出し高さよりも高い場合、即ち上方位置にある場合には、マーカ出力手段34bは、左右のマーカ収納検出スイッチ32L,32Rがオンされているかどうかを検出し、マーカ収納検出スイッチ32L,32Rがオンされていない場合には、オンされていない側のマーカモータ27L,27Rを駆動させて、線引きマーカ16を収納姿勢とする(S70,S87〜S92)。言い換えると、マーカ出力手段34bは、植付作業機11が上方位置にある際には、左右の線引きマーカ16を収納姿勢とした両上げ状態にする。
【0049】
ついで、図12に基き、実際の圃場での植付行程の一例について説明をする。
【0050】
作業者は、植付作業を開始するにあたって走行機体5に乗り込んでエンジンをスタートさせると、圃場の入口Eから入り、入口Eとは対角位置から植付け作業を開始する。
【0051】
作業者は、植付け作業を開始するにあたって、二行程分だけ圃場際から離れた位置を作業開始位置Aに設定すると共に、植付作業機11上昇させて、線引きマーカ16の振出し設定を行う。この振出し設定を行う際に、作業者は、まず、マーカ自動スイッチ37にてマーカモードを自動モードに設定して一方の線引きマーカ16を振出し、作業機操作レバー20を前後方向の対応する側に傾倒操作して、他方の線引きマーカ16を振出し設定して両落ち状態を設定する。
【0052】
そして、この線引きマーカ16の設定が終わると、作業機操作レバー20を下方側に操作して、植付作業機11を下降させると共に、走行機体5の両側に左右の線引きマーカ16で走行指標を形成しながら、植付け作業を行う。
【0053】
そして、反対側の圃場端Bまで来ると旋回し、植付作業機11の上昇に伴い、左右の線引きマーカ16が一旦、自動的に収納される。旋回が終わり、作業者が作業機操作レバー20を下方側に操作して植付作業機11を下降させると、前回後に振出し設定された線引きマーカ16が振出される。この場合、左の線引きマーカ16を振出す必要があるが、右の線引きマーカ16が振出設定されている場合には、作業機操作レバー20を後方に操作して左の線引きマーカ16を振出設定すると共に、前方に操作して右の線引きマーカ16を収納設定する。その後、旋回の度に自動的に左右の線引きマーカ16の振出し方向は植付クラッチの入を伴った植付作業機11の昇降の度(枕地での旋回の度)に自動的に切換わり、圃場の未植付け側に走行指標を形成しながら、往復植付行程P1の植付作業を進行する。
【0054】
植付作業が進行して、図12の地点Cのように、二周分の廻り植え行程分を残して往復植え行程P1を終了した後、前記往復植え行程P1で植付けた苗の外周に内側の廻り植え行程P2〜P5に移行する。この場合、本作業例では外側の廻り植え行程P6〜P9(図中では機体の左側)の走行指標を形成しながら、植付作業を進行するが、作業者は、マーカ自動スイッチ37を押操作してマーカモードを片落ちモードに設定する。
【0055】
尚、このとき、作業者の意に反した側の線引きマーカ16が振出設定されている場合には前述と同様、作業機操作レバー20を前後方向に操作して振出方向の設定を切換える。
【0056】
そして、作業機操作レバー20の操作で植付作業機11を下降させると、圃場外方側の線引きマーカ16が振り出される。そして、前行程に沿って植付作業を行い反対側の圃場端まで来ると植付クラッチを切り、植付作業機11を上昇させて90°方向転換を行った後、再度植付作業機11を下降接地させる。このとき、マーカモードは片落ちモードに設定されており、方向転換前の振出方向が維持されるので、前回と同じ圃場外方側の線引きマーカ16が振り出される。
【0057】
以降、内側の廻り植え行程の方向転換の度に圃場外方側の線引きマーカ16の振出しが繰り返される。
【0058】
よって、従来のように、オートマーカ機能(自動モード)によって変更された線引きマーカ16の振出方向を再度変更するようなこともなく、走行機体1の走行操作、及び植付作業機11の操作に専念して内側の廻り植え行程P2〜P5の植付作業を行うことができる。
【0059】
次に、内側の廻り植え行程P2〜P5が終了すると、最終行程である外側の廻り植え行程P6〜P9に移行する。
【0060】
この場合は、次行程の走行指標を形成する必要がないので、マーカモードを停止にし、前回の内側の廻り植え行程P2〜P5で形成した走行指標を目安として植付けを行いながら走行する。
【0061】
そして、圃場の最外周部を一周して植付け、圃場の入口Eから圃場外へと出る。
【0062】
前述の内側の廻り植え行程P2〜P5の時のように、同方向の線引きマーカ16を振り出したい植付走行行程が連続する際には、予め線引きマーカ16の制御モードを片落ちモードに設定しておけば、植付走行の一行程毎に線引きマーカ16の振り出し方向を切り換える操作を行うことなく、連続して同方向の線引きマーカ16を自動的に振り出すことが可能となり、各行程間の移植機の操作の煩雑さを軽減することができる。
【0063】
また、前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカ16の振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段を備えたので、より多様な作業条件にあわせ線引きマーカ16の振り出し方向の切り換えを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 乗用型田植機
11 植付作業機
16 線引きマーカ
20 作業機操作レバー
34 制御部
34a 振出モード設定手段
34b マーカ出力手段
34c マーカモード設定手段
34d 振出方向選択手段
37 マーカ自動スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(4)の後部に植付作業機(11)を昇降可能に連結し、前記植付作業機(11)の上昇に伴って格納され、植付作業機(11)の下降に伴って選択的に振り出される左右の線引きマーカ(16)と、該左右の線引きマーカ(16)の格納及び振り出しを制御する制御部(34)を備え、該制御部(34)による線引きマーカの制御モードに、前記植付作業機(11)の昇降動作毎に左右の線引きマーカ(16)の内何れの線引きマーカ(16)を振り出すかを交互に切り換える自動モードを有した移植機において、前記制御部(34)に、前記自動モードと、前記植付作業機の下降に伴って左右の線引きマーカ(16)の内任意の一方の線引きマーカ(16)のみを振り出す片落ちモードと、に切換えるマーカモード設定手段(34c)を備えたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカ(16)の振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段(34d)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項1】
走行機体(4)の後部に植付作業機(11)を昇降可能に連結し、前記植付作業機(11)の上昇に伴って格納され、植付作業機(11)の下降に伴って選択的に振り出される左右の線引きマーカ(16)と、該左右の線引きマーカ(16)の格納及び振り出しを制御する制御部(34)を備え、該制御部(34)による線引きマーカの制御モードに、前記植付作業機(11)の昇降動作毎に左右の線引きマーカ(16)の内何れの線引きマーカ(16)を振り出すかを交互に切り換える自動モードを有した移植機において、前記制御部(34)に、前記自動モードと、前記植付作業機の下降に伴って左右の線引きマーカ(16)の内任意の一方の線引きマーカ(16)のみを振り出す片落ちモードと、に切換えるマーカモード設定手段(34c)を備えたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記自動モード、及び片落ちモードにおいて、線引きマーカ(16)の振出方向を人為的に選択切換え可能な振出方向選択手段(34d)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−75411(P2012−75411A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225288(P2010−225288)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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