説明

空気ばねアクチュエータ及び除振装置

【課題】空気ばねアクチュエータ、アクティブ除振装置やパッシブ除振装置の構成を簡単にするとともに、省スペースで十分な制振制御を可能にする。
【解決手段】搭載台2及び基礎300の間に介在して設けられており、気体源4に接続されて制御バルブ31aにより圧力制御される気体室31bを有する2つ以上の空気ばね部31と、搭載台2における目標位置からの相対変位に基づいて制御バルブ31aを制御することにより、搭載台2を目標位置に移動させる制御機器6とを有し、各空気ばね部31が鉛直軸Zに対して傾斜した方向に駆動力を作用するように配置されるとともに、隣接する2つの空気ばね部31が鉛直軸Zに対して対称となるように対をなして配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気ばねを用いて搭載機器の位置決めを行う空気ばねアクチュエータ及び空気ばねを用いた除振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程に用いられる半導体製造装置や電子描画装置等の嫌振機器を除振するものとして、例えば特許文献1や特許文献2に示すようなアクティブ除振装置がある。
【0003】
このアクティブ除振装置は、嫌振機器が搭載される搭載台を、複数の空気ばねアクチュエータによって鉛直方向及び水平方向に支持することによって構成されている。具体的にこのアクティブ除振装置は、搭載台を鉛直方向に駆動して鉛直方向の荷重を支持するとともに振動を除振するようにサーボバルブを制御してなる、鉛直方向の空気ばねアクチュエータと、搭載台を水平方向に駆動して水平方向の振動を除振する、水平方向の空気ばねアクチュエータとを備えている。また、アクチュエータの近傍において、水平方向の振動及び位置を検出する水平方向振動検出器及び鉛直方向の振動を検出する鉛直方向振動検出器が設けられている。そして、前記水平方向振動検出器及び鉛直方向振動検出器からの検出信号を用いて、コントローラにより前記アクチュエータが駆動される。
【0004】
しかしながら、水平方向のアクチュエータは荷重の支持には作用しないため、内圧とバランスさせるための工夫を必要とし、水平の位置制御を必要とない場合にも位置センサを必要としたり、対向する空気ばねを別に用いたりする等の対向が行われている。また、水平の制振力を十分に取るためには荷重を支えないにもかかわらず大きな有効面積を有した空気ばねを用いることが必要となり、スペース面でもコスト面でも問題がある。さらに、スペースの制約から水平方向のアクチュエータの大きさが制約されてしまい、制振力が不足する等の問題もある。
【0005】
また、従来広く用いられているパッシブ除振装置においては、機械式のバルブを用いたサーボ機構が用いられて、搭載機器の支持高さの自動制御が行われている。この除振装置は通常3点の機械式バルブで搭載機器の支持平面を規定できるように、そのバルブのプランジャーピンを操作できるバルブ制御部を構成して、空気ばねの内圧を制御している。このことによって搭載機器のステージ等が移動して、重心位置が変動したとしても、支持平面に復元する制御力が作用し、搭載機器は一定の位置にとどまることができる。
【0006】
しかしながら、近年大きなステージが高速移動するようになり、水平側に復元機能を有さない機械式バルブの制御では、十分な復元速度が得られず、搭載機器の性能が上がらないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−177435号公報
【特許文献2】特開平8−135730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点を一挙に解決するためになされたものであり、空気ばねアクチュエータ、アクティブ除振装置やパッシブ除振装置の構成を簡単にするとともに、省スペースで十分な制振制御を可能にすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る空気ばねアクチュエータは、機器が搭載される搭載台及び基礎の間に介在して設けられており、気体源に接続されて制御バルブにより圧力制御される気体室を有する2つ以上の空気ばね部からなる複数の空気ばねユニットと、前記搭載台における目標位置からの相対変位に基づいて前記制御バルブを制御することにより、前記搭載台を目標位置に移動させる制御機器と有し、前記空気ばねユニットにおいて、各空気ばね部が鉛直軸に対して傾斜した方向に駆動力を作用するように配置されるとともに、それら空気ばね部が鉛直軸に対して対称となるように配置されていることを特徴とする。ここで2つの空気ばね部が鉛直軸に対して対称となるように配置する態様としては、2つ以上の空気ばね部の駆動軸が内側を向いて対向するように配置されること、2つ以上の空気ばね部の駆動軸が外側を向いて配置されることが考えられる。
【0010】
このようなものであれば、傾斜した空気ばね部すべてが、搭載機器の荷重を支えることに寄与して、全ての空気ばね部の気体室の内圧は、搭載機器の荷重とバランスしている。したがって、従来の除振装置のように、水平の空気ばね部の気体室の内圧を保持するためにトルクを付加する機構や対向してバランスする余分な空気ばねを必要とせず、装置構成を簡単にすることができる。また、空気ばね部を鉛直軸に対して斜めに配置することにより、同じ有効面積を有する空気ばね部を独立に駆動することで、鉛直方向のみならず、水平方向の制御を実現することができる。
【0011】
なお、制御バルブとしては、機械式のものではセンタークローズ型の三方弁や四方弁が利用可能であり、電動式のものではフラッパー弁やスプール弁が利用可能であり、このフラッパー弁やスプール弁を用いたものでは高速動作可能である。また、制御機器としては、制御バルブが機械式バルブの場合、弁体を駆動するプランジャーピンやレバー、調整ヘッドを含み、これらの部分を調整してゲイン比やニュートラル位置を調整できる。また、電動式バルブの場合には、駆動アンプやPID制御部(位置決めアンプ)を含む。
【0012】
簡単な構成によって搭載機器を6軸(X軸、Y軸、Z軸、X軸回り(ロール)、Y軸回り(ピッチ)、Z軸回り(ヨー))において除振するためには、前記空気ばねユニットを3組有しており、各組が、中心に対して周方向に略等間隔となるように配置されるとともに、周方向において隣り合う組の駆動力の作用ベクトルの水平方向成分が、互いに120度の差を有するように配置されていることが望ましい。従来方式では少なくとも9個の空気ばね部を必要としたものが、本発明によれば、空気ばね部6点、すなわち2次元構成の空気ばねユニット3つという最小構成で、パッシブ構成でもアクティブ構成でも搭載機器の剛体6自由度制御が可能になる。またそれぞれの方向に2つの空気ばね部が作用するために、1.4倍の有効面積で作用することになるため、空気ばね部の直径を小さくして小型にするか、使用圧力を下げて省エネルギーにするかを選択できる。空気ばね部を小型にすることは動作速度を速めて制振に寄与することにもつながる。
【0013】
このとき搭載機器の位置制御(振動制御ではない)のため浮上の目標位置からの相対変位として検知する変位センサ(パッシブ構成の場合は検知レバーが相当)は、それぞれの空気ばねユニットに1点あれば搭載機器の浮上の位置(高さ)を決めることができる。また空気ばねユニット4つで搭載機器を支持する場合は、変位センサが3点あれば、支持平面を決めることができるから1つの変位センサは冗長となる。そのため従来の手法のように、いずれか1つの変位センサを共通の変位センサとして2つのユニットで共有してもよいし、1つの空気ばねユニットを静的には一定圧のユニットとしてもよい。また成立するためには条件があるが、4点の変位センサ全てを用いて冗長制御を行ってもよい。
【0014】
このように搭載機器の水平の位置を制御する必要がない場合には、空気ばねユニット内の位置の検知を1点として、振動制御能力を損なうことなく、空気ばねユニットを浮上かつ振動制御することが可能である。従来方式の場合は水平の位置制御を必ず必要としており、本発明の場合にはシステムはさらに簡素化できる。
【0015】
前記各空気ばねユニットにおいて、各空気ばね部の駆動軸に沿った方向に前記搭載台の目標位置が設定されており、前記制御機器が、前記駆動軸に沿った方向に設定された目標位置との相対変位に基づいて前記制御バルブを制御することが望ましい。これにより、それぞれの空気ばね部が独立して目標位置への駆動力を発生するように設定することができる。このときの制御バルブはパッシブ除振装置に用いられる機械式のものでよく、搭載機器の動きによって空気ばね部が圧縮されれば、制御バルブのプランジャを操作するバルブ駆動部の機構が作動して、制御バルブから気体が供給されて空気ばね部は伸縮する側に復元力が働く。一方、空気ばね部が伸張側に動けば気体室の気体が排気されて、空気ばね部は収縮する側に復元する。このことが空気ばねユニットの2つの空気ばね部で実施されれば、搭載機器の水平側の動きに対しても駆動力を発生することになる。
【0016】
機械式の制御バルブで位置制御を行う従来のパッシブ方式では、3点以上の冗長な数のバルブを用いると中立点の遊びの範囲に初期位置を調整する必要があったが、本発明では水平方向の自由度を使うことができるため、6点であれば冗長にならない。従来方式でも、鉛直方向と水平方向に分け、鉛直方向の位置制御と直交するように機械式の制御バルブを設定すれば、冗長にならず6点で剛体6自由度の位置制御が可能になる。しかしこの場合は通常は用いない水平方向の空気ばねとその空気ばねに負荷を与える対向ばねを必要とする。本発明では空気ばねの駆動軸方向のすべてが荷重を支持しながら6自由度の位置決め及び姿勢制御が可能となるため、機械式3位置クローズドセンター型の三方弁を用いて水平方向を含むローリング振動を制振することができるという格別な効果が得られる。もちろん3次元のユニットであっても同様の効果を得ることができる。
【0017】
水平位置制御における実施の態様としては、前記空気ばねユニットが2つの空気ばね部から構成されており、前記制御機器が、前記搭載台における目標位置からの相対変位を鉛直成分及び水平成分に分解し、前記鉛直成分を前記2つの空気ばね部に均等分配して前記制御バルブを制御し、前記水平成分を前記2つの空気ばね部の向きに応じて分配して前記2つの空気ばねの気体室の給排気が互いに逆となるように前記制御バルブを制御するものであることが望ましい。
【0018】
より具体的には、各空気ばねユニットの2つの空気ばね部の気体室には、鉛直方向の制御バルブと、水平方向の制御バルブが接続されている。そして、水平方向の制御バルブを3位置クローズドセンター型の四方弁とすると、水平方向の位置がニュートラルにあるときには、双方の気体室に接続された水平方向のバルブは双方が閉じた状態にあり、空気ばねは鉛直方向の制御バルブに委ねられることになる。水平方向の変位が加わると、スプールの向きよって2つの気体室は、一方が給気であれば一方は排気のように逆相で駆動されることになる。
【0019】
空気ばねユニットの配置は、この場合も最小3ユニットを剛体制御可能に配置すればよい。空気ばねユニットの配置は、搭載機器の重心に設定した鉛直をZとする3次元座標XYZにおいてXY平面に描いた円周に駆動力の作用方向が接するように等分割に配置すればよい。3ユニット構成に比較して、4ユニット構成は駆動力のバランスが取りやすく、搭載機器の動きや機構の複雑さ(偏重など)に対応しやすくなる。
【0020】
本発明の空気ばねユニットを、これまで通常採用されてきた4ユニット配置で用いることを考えると、冗長となる1つの空気ばねユニットを一定圧とし、それに水平方向の制御バルブの位置制御を加算することになる。このとき水平の位置検出は4点となり冗長であるから、四方弁のニュートラル位置を調節可能に取り付けることが必要となる。また隣接する2つの空気ばね部の向き合う方向(対向方向)に水平の駆動力を発生できるから、従来の水平方向のアクチュエータの配置と同様に、対向方向がX方向に沿ったユニットを第1象限に置けば、第2象限はY方向に沿ったユニット、第3象限はX方向に沿ったユニット、第4象限はY方向に沿ったユニットのようにタスキ掛けに配置することも可能である。
【0021】
本発明では、ローカル制御を基礎として利便性を高めている。そのため空気ばねユニット単独では制御の誤差を解消することが難しい。空気ばねユニット内の2つの空気ばね部の作用点の距離はきわめて近いが、その二点間では座標誤差がトルクとなって作用する。このため、前記空気ばねユニットが2つの空気ばね部から構成されるとともに、その2つの空気ばね部の駆動軸が対向するように配置されており、前記2つの空気ばね部の駆動軸の交点にヒンジを設けて、当該ヒンジによって前記2つの空気ばね部が前記搭載台に連結されていることが望ましい。これにより、駆動軸の交点に各空気ばね部の駆動力を集中させることができ、空気ばねユニット内で生じるトルクを解消することができる。
【0022】
空気ばね部の出力は、その気体室の容積と制御バルブからの供給流量や供給圧力、空気ばね部の有効面積で基本的に決定される。供給流量や供給圧力は基本的な制約があり、従来は空気ばね部の有効面積を大きくすることで駆動力を確保することが行われてきた。しかし、スペースの問題やコストの問題が大きく、設計上の大きな制約になっている。本発明によれば、空気ばね部を傾斜して配置することで多く問題を解決できるが、空気ばね部の構成として駆動力を高めるためには気体室の容積を小さくするということが必要である。そのためには空気ばねのストロークを小さくしなければならず、設計上の制約となる。特に、傾斜して配置するために、従来の鉛直・水平のストロークが小さく制約されることもあって、解決策が求められる。そこでこの問題を解決するために、前記気体室内における駆動軸方向の隙間に弾性体が配置されており、当該弾性体が、前記気体室が圧縮されるに従って対向面との接触面積が増加する駆動軸方向への突起を有することが望ましい。これにより、気体室の容積を概略半分にすることができる。さらに気体室の容積を小さくするために弾性体を上下に反転して突起をずらして重ねることも効果的である。また、圧縮されるに従って突起と対向面との接触面積が増加することから、空気ばね部の支持剛性を高めることができ、振幅制約の効果を持ち、制振能力を向上させることができる。さらに弾性体の形状によってばね要素としての非線形性を強めることも可能であるため、ストロークの制約効果を強くすることもできるなど、優れた実用性を有する。なお、気体アクチュエータとしての本来の振動遮断能力は減少するため、劣化を制御で補うなどトレードオフの回避が必要である。
【0023】
また、空気ばねのピストン断面形状を長方形にして、有効面積を保持しながら作用点距離を小さくすることも有効である。このような空気ばね形状を採用することによって、空気ばねユニットの高さも小さくすることができる。
【0024】
前記複数の空気ばねユニットの空気ばね部が長尺状をなすものであり、それら空気ばねユニットが互いに平行に配置されて構成されており、各空気ばねユニットの一方の空気ばね部の気体室が接続されてそれら気体室を連動する第1の制御バルブと、各空気ばねユニットの他方の空気ばね部の気体室が接続されてそれら気体室を連動する第2の制御バルブとを有することが望ましい。このようなものであれば、構造が簡単で非常に薄い空気ばねアクチュエータを構成することができる。また、浮上体及び支持体との間に空気ばねを形成しても良いし、膜構造を挿入しても良いし、浮上体及び支持体を弾性シールで実質的に気密に封止しても良い。ここで浮上ストロークが1mm程度のものであれば弾性シールにより気体室を形成することができ、空気ばねユニット全体をゴム成型することができ、製造コストを安価にできる。また、水平駆動した場合の連成トルクを小さくすることもできる。この空気ばねアクチュエータを重ねることによって、ストロークを大きくすることができ、またXYZの位置制御用アクチュエータとして用いることもできる。
【0025】
上記の空気ばねアクチュエータを用いたアクティブ除振装置において、前記制御機器が、前記空気ばねユニットの各空気ばね部の駆動軸方向の振動を検出して前記制御バルブを制御するものであり、各振動検出信号に対応する空気ばね部に接続された制御バルブにその振動検出信号を直接フィードバックする直達制御器と、前記振動検出信号を直交座標に変換して得られる制御信号を前記バルブ制御部に出力する直交座標制御器とを有し、前記直達制御器からの制御信号及び前記直交座標制御器からの制御信号が加算されて前記制御バルブがフィードバック制御されるものであることが望ましい。これならば、直達制御器によって、空気ばね部の傾斜に合わせて空気ばね部の近傍に配置された振動センサを用いてコロケート制御することができ、制御のフィードバックゲインの向上はもちろん、装置のローリング制御などに特に効果的である。また、直交座標制御器によって振動検出信号が直交座標に変換されて制御されることから、グローバルなモードに近い制御を加算することができる。
【0026】
前記直交座標制御器が、入力ポート及び出力ポートを有しており、前記直交座標が外部座標系とのデータの受け渡しを行うための座標系であることが望ましい。これならば、直交座標系制御器の直交座標系と外部直交座標系を平行配置することができ、データの受け渡しを簡便にすることができる。入力ポートに入力された信号は、直交座標信号として制御器に加算される。また出力ポートからは変位信号や加速度信号が直交座標の信号として取り出される。それぞれの空気ばねユニットは、グローバル座標の中で搭載機器に応じた幾何学的な配置が選択されるために、それぞれに異なる座標変換を行って、グローバル座標系の制御と接続される。直交座標系をグローバル座標系と関係つけることで変換は比較的簡単に定義することができ、空気ばねユニットを最も効果的な状態で使用することができる。また、このような空気ばねユニット毎のローカル制御器はアナログで構成することも可能であり、制御遅れの排除やコスト削減にも有効である。
【発明の効果】
【0027】
このように構成した本発明によれば、空気ばねアクチュエータ、アクティブ除振装置やパッシブ除振装置の構成を簡単にするとともに、省スペースで十分な制振制御を可能にすることができる。また、同じ有効面積の空気ばね部を45℃傾斜させて対向させるとすると、荷重の支持に使える有効面積は従来の約1.4倍になる。またこれを同じ面積でよいとすると約0.837倍の空気ばね径で良い。いずれにしてもエネルギーの効率が上がり、低圧・省エネルギー制御を行うか、高速・高性能制御を行うかが選択可能となる。さらに、このように構成した本発明によれば、パッシブ型(機械式バルブのサーボ型)で、水平、特にローリング振動に制振力を有した除振装置を簡便に提供することができる。しかも6バルブ6空気ばね部の最小構成で6自由度サーボが実現できる。その上、従来は6自由度空気圧アクティブ制御を行おうとすると、水平の位置決め制御(内圧保持のための位置決め)がバランスのために必要であったが、本発明では、水平方向の位置センサや制御なしに鉛直3体の位置センサで浮上して、水平の振動制御も含む6自由度の振動制御を実現することができる。このことは、従来行ってきた水平のアクチュエータの立ち上げとセッティングというプロセスが全く必要ないということであり、シンプルな動作でスタンバイ状態を作ることができる。空気ばね部にセンサを配置してフィードバックする、いわゆるコロケート制御をアナログ制御で実現できるなど、簡便に高いフィードバック性能を得ることができる。また水平と鉛直の制御力の配分を空気ばねの傾斜角を変更することで簡単に実現できることから、共通の部品でいろいろな要求に応えることができるなどの効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るアクティブ除振装置の構成を示す模式図。
【図2】同実施形態の空気ばねユニットを示す模式図。
【図3】同実施形態の空気ばね部を示す模式図。
【図4】同実施形態の空気ばねユニットの配置図。
【図5】空気ばねユニットの配置の変形例を示す配置図。
【図6】3つの空気ばね部からなる空気ばねユニットの配置及び駆動力を示す模式図。
【図7】同実施形態のアクティブ制御の構成を示すブロック図。
【図8】変形実施形態に係る空気ばねユニットを示す模式図。
【図9】変形実施形態に係る空気ばねユニットを示す模式図。
【図10】変形実施形態に係る空気ばね部を示す模式図。
【図11】変形実施形態に係る空気ばねユニットを示す模式図。
【図12】変形実施形態に係る空気ばねユニットを示す模式図。
【図13】空気ばねアクチュエータを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明に係るアクティブ除振装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
本実施形態に係るアクティブ除振装置100は、半導体製造装置や電子線描画装置、その他の精密機器等の振動を嫌う嫌振機器200が搭載されるとともに、当該嫌振機器200の除振を行うものである。
【0031】
具体的にこのものは、図1及び図2に示すように、嫌振機器200が搭載される搭載台2と、この搭載台2及び基礎300の間に介在して設けられた3つの空気ばねユニット3とを有する。このアクティブ除振装置100は、空圧(気体)を用いたサーボ機構で駆動されるものであり、気体源4及びその圧力の定圧化のためのレギュレータ5を介して空気ばねユニット3の制御バルブ31aに気体が供給される構成である。
【0032】
各空気ばねユニット3は、図2に示すように、2つの空気ばね部31と、これら2つの空気ばね部31を支持する共通の1つの支持体32と、2つの空気ばね部31により浮上動作する支持される共通の1つの浮上体33を有する。各空気ばね部31は、図3に示すように、気体源4に接続された制御バルブ31a(本実施形態ではフラッパー弁)と、当該制御バルブ31aにより内圧が制御される気体室31bと、当該気体室31bの内圧により浮上動作するピストン31cとを有している。制御バルブ31aの制御ポートは、気体室31bに接続されており、制御バルブ31aの制御によって気体室31b内の気体を吸排気することでピストン31cの動作を可能にしている。なお、フラッパー弁の弁体の共振点は1kHz付近と振動制御には十分な高速動作が可能となる。
【0033】
また、各空気ばねユニット3は、図2に示すように、同じ有効面積を有する2つの空気ばね部31を用いて、鉛直軸Zに対して傾斜した方向に駆動力を作用するように配置されるとともに、2つの空気ばね部31が鉛直軸Zに対して対称となるように対をなして配置されている。具体的には、2つの空気ばね部31は、鉛直軸Zに対する傾斜角度θ(鉛直軸Zと空気ばね部31の駆動力の作用軸とのなす角度)が軸周りに180度反転して配置されることになる。このような配置により、2つの空気ばね部31の駆動力の鉛直方向成分は加算されて浮上力となり、水平方向成分は、相殺されて内力としてバランスすることになる。このとき、傾斜角度θは30度から45度が実用的である。
【0034】
ここで浮上体33の下面には、2つの空気ばね部31の作用面(先端面)が取り付けられる空気ばね取付面33aが設けられおり、この空気ばね取付面33aは、各空気ばね部31の傾斜角度θに対応して形成されている。また、隣接する2つの空気ばね部31(空気ばねユニット3)は、単一の支持体32上に設けられた固定部材321に固定されている。この固定部材321の空気ばね搭載面321aは、空気ばね部31の傾斜角度θに対応して形成されている。
【0035】
そして、3つの空気ばねユニット3は、図4に示すように、中心に対して周方向に略等間隔となるように配置されるとともに、周方向において隣り合う組の駆動力の作用ベクトルの水平方向成分が、互いに120度の差を有するように配置されている。具体的には、各空気ばねユニット3の駆動力の作用ベクトルの水平方向成分が接線方向に沿うように配置されている。ここで、搭載機器200を剛体として考えると6つの運動自由度を持つ。空気ばねユニット3は2次元の自由度を持っているから、上記のように重複しないように合計3つの空気ばねユニット3を配置すれば、6自由度の運動制御が可能になる。
【0036】
さらに、搭載機器200の位置制御は、浮上体33の鉛直方向の位置(浮上位置)を検出する変位センサ34を配置して、その変位センサ34により得られる検出位置及び予め定められた目標位置の偏差を制御機器6を用いてPI制御することによって、目標位置に保持することが可能となる。変位センサ34は、図2に示すように、支持体32及び浮上体33の間に設けられており、支持体32に対する浮上体33の位置を検出するものである。この浮上位置制御に用いる変位センサ34は、それぞれのユニットに1点あれば良く、水平の位置を制御する必要が無い場合には、空気ばねユニット3を1点の変位センサ34で浮上制御することが可能であり、システムを簡素化することができる。
【0037】
また、搭載機器200の振動制御は、浮上体33の振動を検出する振動センサ35を配置して、その振動センサ35により得られる検出振動をそのまま制御機器6を用いてフィードバック制御することによって除振する。ここで振動センサ35は、図3に示すように、空気ばね部31の駆動軸上となるように搭載機器200側に設置されている。具体的には、ピストン31cの先端面に設置されている。このように振動センサ35を配置することによって、コロケート配置を利用したDVFB制御が可能となり、安定性の高い制御が可能となる。なお、剛体6自由度の振動制御を対象としてアクティブ制御するためには、6自由度の動きが観測可能になるように最低6点の振動センサ35が配置されている必要があり、従来のように直交座標に振動センサを配置して、空気ばね部のローカル座標に変換してフィードバック制御することも考えられる。
【0038】
なお、空気ばねユニット3を4つ配置した場合には、1つの空気ばねユニット3が冗長であるが、同様に円周を4分割して(図5(A)参照)、接線方向に大きな制御力を得る。しかし、搭載機器200の制御座標系に合わせることが通常に行われていており、この場合はX方向とY方向に二体ずつを配分してタスキ掛けに配置する(図5(B)参照)。具体的には、空気ばねユニット3の2つの空気ばね部31の向き合う方向(対向方向)がX方向に沿ったユニットを第1象限に置いた場合に、第2象限はY方向に沿ったユニット、第3象限はX方向に沿ったユニット、第4象限はY方向に沿ったユニットのように配置する。このように空気ばねユニット3を4つ配置した場合、1点を共通の変位センサとして、2つのユニットで共有しても良いし、1つの空気ばねユニットは静的には一定圧のユニットとしても良い。
【0039】
また、空気ばねユニット3を3つの空気ばね部31を有するユニットとすることもできる。この場合には、図6に示すように、3つの空気ばね部31を鉛直軸Z周りに120度で分割して空気ばね角(傾斜角度)θで対向配置すると、各空気ばね部31の駆動力の鉛直方向成分は加算されて浮上力となり、水平方向成分は、ローカル座標のXY平面内で相殺されて内力としてバランスすることになる。
【0040】
次に、本実施形態のアクティブ除振装置100の制御態様について図7のブロック図を参照して説明する。
【0041】
制御機器6は、空気ばねユニット3の駆動軸方向の振動を検出して制御バルブ31aを制御するものであり、振動検出信号を取得した空気ばね部31に対応する制御バルブ31aにその振動検出信号を直接フィードバックする直達制御器61と、振動検出信号をユニット直交座標に変換して得られる制御信号を制御バルブ31aに出力する直交座標制御器62とを有する。そして、制御機器6は、直達制御器61からの制御信号及び直交座標制御器62からの制御信号を加算してバルブ制御部63によって制御バルブ31aをフィードバック制御する。この制御は、機械的なダイナミクスの誤差が少ない領域で制御を行うことから、特に優れた効果を発揮する。これならば、直達制御器61によって、空気ばね部31の傾斜に合わせて空気ばね部31の近傍に配置された振動センサ35を用いてコロケート制御することができ、制御のフィードバックゲインの向上はもちろん、装置のローリング制御などに特に効果的である。また、直交座標制御器62によって振動検出信号がユニット直交座標に変換されて制御されることから、グローバルなモードに近い制御を加算することができる。また、シンプルな制御器で実現できるため、自動調節などを組み込むことも容易であり、立ち上げ調整不要の除振装置の提供に向く。
【0042】
具体的にこの制御機器6の各空気ばねユニット3の制御は、2個の振動センサ35から得られる振動検出信号を用いて、それぞれの制御バルブ31aへのフィードバック信号を直達制御器(直達アンプ)61で生成して振動制御(ローカル振動フィードバック制御)を行うことが基本となる。そして、制御機器6は、空気ばねユニット3に設けられた変位センサ34からの検出位置及び目標位置の偏差に該当する電圧にPID演算を施して位置制御信号を生成し、この位置制御信号を前記振動制御信号に加算して制御バルブ31aに出力する。なお、本実施形態では、空気ばねユニット3の変位は、1つの変位センサ34で検出するだけであり、位置制御に関しては、基本的に2つの制御バルブ31aは同じバイアス電圧で駆動される。
【0043】
なお、2次元空気ばねユニットのユニット直交座標については、ユニット鉛直軸をZ軸として、たとえばXZ平面に空気ばね部31の駆動軸が存在するように座標を配置する。また、3次元空気ばねユニットのユニット座標変換については、ユニット鉛直軸をZ軸として、例えば1つの空気ばね部31の駆動軸の水平方向成分がY軸上に存在するような座標を配置する。このように定義すると空気ばね部31のローカル座標からユニット直交座標への変換行列が簡単に定義できる。
【0044】
さらに、直交座標制御器62が、入力ポート及び出力ポートを有しており、ユニット直交座標が外部座標系とのデータの受け渡しを行うための座標系とされている。このように構成することにより、上位制御機器との接続が容易になり、基礎300側に設けられた鉛直又は水平振動センサ7(図1参照)からフィードフォワード制御部(不図示)を介して得た鉛直方向又は水平方向のフィードフォワード制御信号や搭載機器に設けられた鉛直又は水平振動センサ8(図1参照)からフィードフォワード制御部を介して得た鉛直方向又は水平方向のフィードフォワード制御信号等の外部信号を取得することができる。そして、入力ポートから得られたフィードフォワード制御信号は直交座標制御器62において前記振動制御信号に加算される。
【0045】
なお、空気ばねユニット3のローカル座標がグローバル座標と平行になるように4ユニットでタスキ掛け配置であれば、空気ばね部31の駆動信号を反転加算してゲインを与えればよい。
【0046】
このように構成した本実施形態に係るアクティブ除振装置100によれば、傾斜した空気ばね部31すべてが、搭載機器200の荷重を支えることに寄与して、全ての空気ばね部31の気体室31bの内圧は搭載機器200の荷重とバランスしている。したがって、従来の除振装置のように、水平の空気ばね部の気体室の内圧を保持するためにトルクを付加する機構や対向してバランスする余分な空気ばねを必要とせず、装置構成を簡単にすることができる。また、空気ばね部31を鉛直軸Zに対して斜めに配置することにより、同じ有効面積を有する空気ばね部31を独立に駆動することで、鉛直方向のみならず、水平方向の制御を実現することができる。さらに空気ばねユニット3により2つの空気ばね部31をユニット化しているので、各空気ばね部31の作用点を可及的に近づけることができ、浮上体33及びその上に載置された搭載機器200に生じるトルク連成を小さくすることができる。またこれにより直交座標系への変換を簡単に行うことができる。さらにユニット化することにより変位センサ34等のセンサをユニットに1つ設けて2つの空気ばね部31で共通化することができ装置構成の簡単化、部品点数の削減及びコストダウン等の効果もある。
【0047】
次にパッシブ除振装置に好適に用いられる空気ばねユニット3について説明する。
本実施形態の空気ばね部ユニット3は、図8に示すように、各空気ばね部31の駆動軸に沿った方向、具体的には駆動軸と同軸上に浮上の目標位置を設定して、その目標位置との軸上の相対距離を検知する変位検知部36と、当該変位検出部36により得られた検出量に基づいて、制御機器であるバルブ制御部63が操作されることによって、それぞれの空気ばね部31の気体室31bに接続された制御バルブ31aが制御されるものである。
【0048】
この実施形態の制御バルブ31aは機械式バルブであり、変位検知部36は、バルブ制御部63に設けられた検知レバーである。この検知レバー36が搭載機器200(つまり浮上体33)の動きに連動して、その変位を検出し、この検出量に基づいてプランジャが動作して制御バルブ31aの弁体が作動する。具体的に本実施形態の機械式バルブは、3ポート3位置センタークローズ型の三方弁を用いている。
【0049】
空気ばね部31が圧縮側に動作すると、三方弁31aから気体が気体室31bに供給されて空気ばね部31に伸張する側に復元力が働く。一方、空気ばね部31が伸張側に動作すると、三方弁31aを介して気体室31bの気体が排気されて空気ばね部31は圧縮する側に復元する。このことが対向する2つの空気ばね部31で行われると、搭載機器200のローリング振動には軸力がそのまま制振力になり、水平側の動きに対しても鉛直成分は相殺されて、水平成分が加算されて復元力を発生することになる。ただし、このときの鉛直成分の相殺では、作用点の差に基づくモーメントが発生して連成振動が残留する。装置のスケールからすれば小さな値であるが、作用点距離をできるだけ小さくすることが望ましい。
【0050】
なお、前記実施形態の変位センサ34を、三方弁31aの変位検知部36に替えて配置して、各空気ばね部31の軸方向の相対変位を検出してサーボバルブを駆動するようにしてもよい。
【0051】
次に、変形実施形態に係る空気ばねユニット3について説明する。
本実施形態の空気ばねユニット3においては、制御機器6が、搭載台2(具体的には浮上体33)における目標位置からの相対変位を、2つの空気ばね部31の鉛直成分及び水平成分に分解し、前記鉛直成分を2つの空気ばね部31に均等分配して制御バルブ31aを制御し、水平成分を2つの空気ばね部31の向きに応じて分配して2つの空気ばね部31の気体室31bの給排気が互いに逆となるように制御バルブ31aを制御する。
【0052】
より具体的には、図9に示すように、2つの空気ばね部31の気体室31bには、鉛直方向の制御バルブ31a1と、水平方向の制御バルブ31a2が接続されている。そして、水平方向の制御バルブ31a2が3位置クローズドセンター型の四方弁であり、水平方向の位置がニュートラルにあるときには、双方の気体室31bに接続された水平方向のバルブ31a2は双方が閉じた状態にあり、空気ばね部31は鉛直方向の制御バルブ31a1に委ねられることになる。水平方向の変位が加わると、スプールの向きよって2つの気体室31bは、一方が給気であれば一方は排気のように逆相で駆動されることになる。
【0053】
次に空気ばね部31の変形実施形態について説明する。
空気ばね部31の気体剛性は、気体室31bの容積が大きくなるほど小さくできるが、図10のように付加気体室31dを設けることによって除振系の固有振動数を小さくすることができる。このとき制御バルブ31aをメインの気体室31bに近く接続することによってバルブ−空気ばねの制御ゲインをさほど下げることなく、つまり制振性能を保持しながら、除振性能を上げることができる。
【0054】
また、空気ばね部31の構成として駆動力を高めるためには気体室31bの容積を小さくするということが必要である。このため、有効面積を確保しながら容積を減らす方法が求められ、図10に示すように、気体室31b内における駆動軸方向の隙間に弾性体シート31eを配置することが考えられる。この弾性体シート31eは、気体室31bが圧縮されるに従って対向面(具体的にはピストン31cの裏面)との接触面積が増加する駆動軸方向への突起を有する。この突起は、複数並列に配置されており、各突起は、断面概略三角形状をなすものである。このように弾性体シート31eを配置することで、気体室31bの容積を概略半分にすることができる。さらに容積を小さくするために弾性体シート31eを上下反転させてピストン裏面に設けて、各弾性体シート31eの突起をずらして重ねるように設けることも効果的である。
【0055】
従来の鉛直と水平にそれぞれのアクチュエータを配置した除振機構においても直交軸の連成問題は存在したが、本発明も対向する空気ばね部31間の連成の除去が問題となる。そこで、前記空気ばね部31と浮上体33との間において、空気ばね部31の軸方向の力は伝達するが、せん断方向には力を伝達しないように、例えばベアリング31f1を用いたスラスト機構31fを設けても良い。このスラスト機構31fは、ピストン31cの先端面に設けられたベアリング31f1と、当該ベアリング31f1により支持されて浮上体33に接合される接合体31f2とを有する。ベアリング31f1を3点以上としてピストン31cと接合体31f2の間に挿入すると浮上体33の空気ばね取付面33aと接合体31f2とは平行面を形成して、軸力は伝達してせん断力は作用しない接合機構を構成できる。さらにベアリング31f1と並列に弾性部材31gを挿入してピストン31cと接合体31f2をつなげば、センター位置に復元可能なスラスト機構31fを得ることができる。他にも積層ゴム、転動偏芯ベアリング、ジンバルピストンなどを用いることができる。
【0056】
次に空気ばねユニット3の変形実施形態を図11に示す。
図2等に見られるように2つの空気ばね部31の作用点に距離があると、ローカル制御やユニット制御にはアクチュエータの小さな作用点の違いを補正することができず、そのために座標変換においてトルク誤差が残ることになる。これを消去するには図11に示すように、空気ばね部31間の作用点の距離をできるだけ小さくする、あるいは作用点にトルクが残存しないように回転ヒンジ37で空気ばね部31のピストン31cを連結することが望ましい。図11では、空気ばねユニット3内で鉛直軸Z周りに対向する少なくとも2つの空気ばね部31の駆動軸の交点にヒンジ37を設けて、当該ヒンジ37によって隣接する2つの空気ばね部31を浮上体33に連結している。これにより、駆動軸の交点に各空気ばね部31の駆動力を集中させることができ、2次元空気ばねユニット3内で生じるトルクを解消することができる。
【0057】
また、前記空気ばね部31が、力を作用させるその両端部の接合面(固定部材321と空気ばね部31の接合面及び浮上体33及び空気ばね部31の接合面)が搭載台の変位に応じて、その角度が変更可能となるように構成することも考えられる。具体的には、図12に示すように、空気ばね部31をリンク機構38aを介して固定部材321に固定して、当該空気ばね部31を固定部材321に対して回動可能に設けるとともに、空気ばね部31のピストン31cをリンク機構38bを介して浮上体33に固定して、当該空気ばね部31を浮上体33に対して回動可能も設けることも考えられる。なお、浮上体33におけるリンク機構38bとの連結部にはリンク機構38bの軸がスライド可能なように長孔が形成されている。このようなものであれば、浮上体33の角度を変更することができる。
【0058】
さらに対向する空気ばね部31の傾斜角度θを変えることは鉛直と水平の駆動力の配分を変えることに相当し、搭載機器200の特性によって大きな水平駆動力を必要とする場合には、初期の傾斜角度設定を大きくすることによって、水平に大きな制御力を配分することができる。
【0059】
その上、空気ばね部31は、気体室31bの内圧が保持できること、及び振動伝達経路にならず軸方向のストロークをなめらかに確保できることが必要である。嫌振機器のような精密装置を対象とする場合には、それほど大きなストロークは必要とないので、ベロフラムのようなゴム膜も大きな折り返しは不要である。傾斜に強い平ゴムの使用も好ましい。OリングやXリングのようなものも利用可能である。空気ばね自身の固有振動数が高い場合にはストロークも小さく使いやすい。
【0060】
加えて、図13に示すように、前記複数の空気ばねユニット3の空気ばね部31が長尺状をなすものであり、それら空気ばねユニット3が互いに平行に配置されて構成されており、各空気ばねユニット3の一方の空気ばね部31xの気体室31bが接続されてそれら気体室31bを連動する第1の制御バルブV1と、各空気ばねユニット3の他方の空気ばね部31yの気体室31bが接続されてそれら気体室31bを連動する第2の制御バルブV2とを有することが望ましい。このようなものであれば、構造が簡単で非常に薄い空気ばねアクチュエータ3を構成することができる。また、浮上体33及び支持体32との間に空気ばねを配置して空気ばね部31を形成しても良いし、膜構造を挿入しても良いし、浮上体33及び支持体32を弾性シールで実質的に気密に封止しても良い。ここで浮上ストロークが1mm程度のものであれば弾性シールにより気体室を形成することができ、空気ばねユニット全体をゴム成型することができ、製造コストを安価にできる。また、水平駆動した場合の連成トルクを小さくすることもできる。この空気ばねアクチュエータ3を重ねることによって、ストロークを大きくすることができ、またXYZの位置制御用アクチュエータとして用いることもできる。その他、浮上体33又は支持体32の少なくとも一方に付加チャンバを設けることで固有振動数を下げることができ、除振に好適に用いることができる。
【0061】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
100・・・アクティブ除振装置
200・・・機器
300・・・基礎
2 ・・・搭載台
3 ・・・空気ばねユニット
4 ・・・気体源
31 ・・・空気ばね部
31a・・・制御バルブ
31b・・・気体室
32 ・・・支持体
33 ・・・浮上体
6 ・・・制御機器
Z ・・・鉛直軸
31e・・・弾性体
V1 ・・・第1の制御バルブ
V2 ・・・第2の制御バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器が搭載される搭載台及び基礎の間に介在して設けられており、気体源に接続されて制御バルブにより圧力制御される気体室を有する2つ以上の空気ばね部からなる複数の空気ばねユニットと、
前記搭載台における目標位置からの相対変位に基づいて前記制御バルブを制御することにより、前記搭載台を目標位置に移動させる制御機器とを有し、
前記空気ばねユニットにおいて、各空気ばね部が鉛直軸に対して傾斜した方向に駆動力を作用するように配置されるとともに、それら空気ばね部が鉛直軸に対して対称となるように配置されていることを特徴とする空気ばねアクチュエータ。
【請求項2】
前記空気ばねユニットを3組有しており、
各組が、中心に対して周方向に略等間隔となるように配置されるとともに、周方向において隣り合う組の駆動力の作用ベクトルの水平方向成分が、互いに120度の差を有するように配置されている請求項1記載の空気ばねアクチュエータ。
【請求項3】
前記各空気ばねユニットにおいて、各空気ばね部の駆動軸に沿った方向に前記搭載台の目標位置が設定されており、
前記制御機器が、前記駆動軸に沿った方向に設定された目標位置との相対変位に基づいて前記制御バルブを制御する請求項1又は2記載の空気ばねアクチュエータ。
【請求項4】
前記空気ばねユニットが2つの空気ばね部から構成されており、
前記制御機器が、前記搭載台における目標位置からの相対変位を鉛直成分及び水平成分に分解し、前記鉛直成分を前記2つの空気ばね部に均等分配して前記制御バルブを制御し、前記水平成分を前記2つの空気ばね部の向きに応じて分配して前記2つの空気ばねの気体室の給排気が互いに逆となるように前記制御バルブを制御するものである請求項1又は2記載の空気ばねアクチュエータ。
【請求項5】
前記空気ばねユニットが2つの空気ばね部から構成されるとともに、その2つの空気ばね部の駆動軸が対向するように配置されており、
前記2つの空気ばね部の駆動軸の交点にヒンジを設けて、当該ヒンジによって前記2つの空気ばね部が前記搭載台に連結されている請求項1乃至4のいずれかに記載の空気ばねアクチュエータ。
【請求項6】
前記気体室内における駆動軸方向の隙間に弾性体が配置されており、当該弾性体が、前記気体室が圧縮されるに従って対向面との接触面積が増加する駆動軸方向への突起を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の空気ばねアクチュエータ。
【請求項7】
前記複数の空気ばねユニットの空気ばね部が長尺状をなすものであり、それら空気ばねユニットが互いに平行に配置されて構成されており、
各空気ばねユニットの一方の空気ばね部の気体室が接続されてそれら気体室を連動する第1の制御バルブと、各空気ばねユニットの他方の空気ばね部の気体室が接続されてそれら気体室を連動する第2の制御バルブとを有する請求項1乃至6のいずれかに記載の空気ばねアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1記載の空気ばねアクチュエータを用いたアクティブ除振装置であって、
前記制御機器が、前記空気ばねユニットの各空気ばね部の駆動軸方向の振動を検出して前記制御バルブを制御するものであり、各振動検出信号に対応する空気ばね部に接続された制御バルブにその振動検出信号を直接フィードバックする直達制御器と、前記振動検出信号を直交座標に変換して得られる制御信号を前記バルブ制御部に出力する直交座標制御器とを有し、
前記直達制御器からの制御信号及び前記直交座標制御器からの制御信号が加算されて前記制御バルブがフィードバック制御されるものであるアクティブ除振装置。
【請求項9】
前記直交座標制御器が、入力ポート及び出力ポートを有しており、前記直交座標が、外部座標系とのデータの受け渡しを行うための座標系である請求項8記載のアクティブ除振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−197804(P2012−197804A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60576(P2011−60576)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(511071647)
【Fターム(参考)】