説明

空気注入装置、空気注入システム、及び地盤への空気注入方法

【課題】地盤の飽和度を低下させて液状化を防止すると共に、空気を供給する地盤の特定領域を変更することができる空気注入装置を得る。
【解決手段】空気注入装置20は、空気供給管32と、空気供給管32に空気を供給する空気供給装置34と、空気供給管32よりも上方に吊下げられ拡径して有孔管28を塞ぐ上部パッカー36と、空気供給管32よりも下方に吊下げられ拡径して有孔管28を塞ぐ下部パッカー38と、を有する。ここで、空気供給管32から液状化対策層Sに空気が注入されことにより、軟弱地盤18Aの飽和度が低下し、液状化が防止される。さらに、上部パッカー36と下部パッカー38が空気供給管32と独立して吊下げられているので、これらを独立して移動させることで、空気を供給する軟弱地盤18Aの特定領域を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気注入装置、空気注入システム、及び地盤への空気注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の液状化は、砂地盤の水圧が地震による振動によって静水圧より高くなり(この水圧を過剰間隙水圧という)、過剰間隙水圧が各深度における上載圧に等しくなったときに、砂粒子同士の結合が外れて水中に浮かんだような状態となるために起こる。ここで、地盤の液状化防止方法の例として、地盤に気泡を注入して地盤の飽和度を低下させ、不飽和状態とする方法がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1の液状化防止方法では、地盤を掘削して形成した注入孔へ水溶液を注入し、発泡剤によって水溶液を発泡させることで、地盤中に気泡を注入している。また、特許文献2の液状化防止方法では、地盤を掘削して形成した注入用の孔に注入内管を配置し、注入内管に形成された注入口から微細気泡を分散させた注入水を注入している。
【0004】
特許文献1、2の方法では、いずれも、地震により地盤中の水圧が上昇して過剰間隙水圧が発生しようとしたとき、気泡により形成された空隙が圧縮することによって水圧の上昇を抑えて液状化を防止している。
【0005】
しかし、特許文献1の液状化防止方法では、地上から注入孔の底部までと対応する地盤全体が不飽和状態となるため、地盤の特定領域に気泡を注入することはできなかった。また、特許文献2の液状化防止方法では、注入内管に形成された注入口が一箇所のみであり、空気を供給する地盤の特定領域を拡大又は縮小することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−355228
【特許文献2】特開2008−2170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、地盤の飽和度を低下させて液状化を防止すると共に、空気を供給する地盤の特定領域を変更することができる空気注入装置、空気注入システム、及び地盤への空気注入方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る空気注入装置は、地盤に形成された孔部へ挿入された有孔管内に吊下げられ、供給された空気が放出される空気孔が形成された空気供給管と、前記空気供給管に空気を供給する空気供給手段と、前記空気供給管よりも上方に吊下げられ、拡径して前記有孔管を塞ぐ上部閉塞手段と、前記空気供給管よりも下方に吊下げられ、拡径して前記有孔管を塞ぐ下部閉塞手段と、を有する。
【0009】
上記構成によれば、空気供給管が、有孔管内に吊下げられ位置決めされている。そして、空気供給管の上方の有孔管は上部閉塞手段によって塞がれており、空気供給管の下方の有孔管は下部閉塞手段によって塞がれている。ここで、空気供給手段から空気供給管に空気が供給されて空気孔から空気が放出されると、放出された空気は、上部閉塞手段と下部閉塞手段とで密閉された領域に相当する領域の地盤に供給される。これにより、地盤の特定領域に空気を供給して地盤の飽和度を低下させ、液状化を防止することができる。
【0010】
さらに、上部閉塞手段と下部閉塞手段が空気供給管と独立して吊下げられているので、吊下げ長さを調整して上部閉塞手段と下部閉塞手段の間隔が変更可能となっている。これにより、空気を供給する地盤の特定領域を変更することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る空気注入装置は、前記上部閉塞手段及び前記下部閉塞手段は、空気が供給されると内外に膨張するチューブである。この構成によれば、空気供給によるチューブの膨張だけで有孔管が閉塞されるので、上部閉塞手段及び下部閉塞手段を簡易な構成とすることができる。
【0012】
本発明の請求項3に係る空気注入装置は、前記空気供給手段から前記空気供給管までの空気供給経路の途中には、前記空気供給管への空気の供給又は供給停止を行う切換手段が設けられている。この構成によれば、空気供給管への空気の供給を連続的又は断続的に行える。
【0013】
本発明の請求項4に係る空気注入装置は、前記上部閉塞手段と前記下部閉塞手段の間に浸水した水の圧力を計測する水圧計が設けられ、前記切換手段が、設定された圧力設定値と前記水圧計で測定された圧力測定値との差異に応じて空気の供給又は供給停止を行う。
【0014】
上記構成によれば、水圧計によって計測される水圧の変化が、空気供給管から供給される空気の供給量の変化と対応しているため、空気供給管から地盤へ所定の空気量が供給されているかどうかを検知することができる。また、空気供給経路の途中で空気漏れが発生しても、水圧計の水圧の変化で検知することができる。
【0015】
本発明の請求項5に係る空気注入装置は、地盤の前記孔部と異なる位置に掘削された測定用孔部に配置され、該測定用孔部にて地盤の導電率又は比抵抗を測定する電気特性測定手段が設けられ、前記切換手段が、前記電気特性測定手段で測定された地盤の導電率又は比抵抗に応じて、前記空気供給管への空気の供給又は供給停止を行う。
【0016】
空気は水(地下水)に較べて比抵抗が大きい。このため、地盤中の空気量が多くなると、比抵抗が大きくなり導電率が下がる。ここで、上記構成によれば、電気特性測定手段によって地盤の導電率又は比抵抗が測定され、この測定値に応じて地盤中の空気の過不足が判断される。これにより、地盤中の空気量を実測しなくても地盤中の空気の過不足状態を検知することができる。
【0017】
本発明の請求項6に係る空気注入装置は、前記切換手段の空気の供給又は空気の供給停止を設定された時間で切換えるタイマーが設けられている。この構成によれば、切換手段の空気の供給又は空気の供給停止がタイマーで切換えられるので、地盤への空気注入を自動化できる。
【0018】
本発明の請求項7に係る空気注入システムは、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の空気注入装置と、地盤の前記孔部と異なる位置に掘削された揚水用孔部から水を揚げる揚水手段と、前記揚水手段で揚げられた水を前記有孔管に注水する注水手段と、を有する。
【0019】
上記構成によれば、揚水手段で地盤から水が揚げられることにより、空気注入装置が設置された孔部周辺の地盤と、揚水用孔部周辺の地盤との間で地下水位面の勾配が形成される。ここで、地下水位面は、空気注入装置が設置された孔部周辺の方が高い位置にあるため、地下水は、空気注入装置が設置された孔部周辺から揚水用孔部周辺へ移動する。この地下水の移動に合わせて、空気注入装置から注入された空気が揚水用孔部周辺へ移動するため、地盤内に空気を供給することができ、地盤の不飽和状態を保持することができる。
【0020】
なお、揚水手段で揚げられた水は、注水手段によって孔部に注水すれば、地盤内の合計の地下水量はあまり変化しない。このため、地下水の減少による地盤沈下を防止することができる。
【0021】
本発明の請求項8に係る地盤への空気注入方法は、地盤に孔部を形成する孔部形成工程と、前記孔部へ有孔管を挿入する挿入工程と、前記有孔管に請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の空気注入装置を吊下げる吊下げ工程と、前記孔部と前記有孔管との隙間に、上下が粘土層で囲まれ前記空気注入装置で注入された空気が透過する砂利層を形成する砂利層形成工程と、を有する。
【0022】
上記構成によれば、空気注入装置から注入され有孔管から放出された空気は、粘土層を透過せず、砂利層のみを透過して地盤に注入される。これにより、地盤の特定領域のみに空気を注入することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記構成としたので、地盤の飽和度を低下させて液状化を防止すると共に、空気を供給する地盤の特定領域を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)本発明の第1実施形態に係る空気注入システムの構成図である。(b)本発明の第1実施形態に係る空気注入システムの平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る空気注入装置の構成図である。
【図3】(a)本発明の第1実施形態に係る空気注入装置の部分斜視図である。(b)本発明の第1実施形態に係る空気注入装置の上部閉塞手段の横断面図である。
【図4】(a)〜(c)本発明の第1実施形態に係る空気注入装置の設置工程を示す工程図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る空気注入装置を地盤の孔部に設置した状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る空気注入システムによる地盤への空気注入状態を示す模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る空気注入システムを用いて地盤へ空気注入したときの時間と地盤の飽和度の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る空気注入システムによる地盤への空気注入状態を示す模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る空気注入装置の電気特性測定手段の構成を示す模式図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る空気注入システムを用いて地盤へ空気注入したときの時間と地盤の飽和度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の空気注入装置、空気注入システム、及び地盤への空気注入方法の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1(a)、(b)には、地盤12に設置された空気注入システム10と、地盤12上に構築された構造物としての建物14が示されている。地盤12は、不透水層としての非液状化地盤16と、非液状化地盤16の上層にある軟弱地盤18とで構成されており、建物14は軟弱地盤18上に支持されている。
【0026】
建物14の周囲の軟弱地盤18には、建物14を取り囲んで、コンクリートやソイルセメントなどの連続壁からなる止水壁22が構築されており、止水壁22の下端部は非液状化地盤16に到達している。また、建物14の一組の側壁14A、14Bに隣接した軟弱地盤18の一部には、空気注入用の注入孔部24(24A、24B、24C、24D、24E)と、揚水用の揚水孔部26(26A、26B、26C、26D、26E)とが、掘削により形成されている。
【0027】
注入孔部24A〜24Eは、建物14を挟んで揚水孔部26A〜26Eとそれぞれ対向配置状態となっている。なお、注入孔部24A〜24Eはそれぞれ同様の掘削状態となっており、揚水孔部26A〜26Eもそれぞれ同様の掘削状態となっているため、以後の説明では注入孔部24、揚水孔部26としてA〜Eの符号を省略して説明する。
【0028】
注入孔部24内には、塩化ビニルからなる断面円形状の有孔管28が、開口を上側に向けて立設されている。有孔管28は、注入孔部24の深さと同程度の長さとなっており、空気注入を行う位置の側壁には後述する貫通孔29(図5参照)が形成されている。なお、以後の説明では、図5を除いて有孔管28の貫通孔の図示を省略する。
【0029】
また、有孔管28の外径は、注入孔部24の孔径よりも小さくなっており、有孔管28と注入孔部24の間には、予め設定された幅の隙間が形成されている。ここで、軟弱地盤18(18A)には、空気注入が必要とされる液状化対策層Sが設定され、この液状化対策層Sの深度に合わせて、有孔管28と注入孔部24の隙間に砂利層25が形成されている。砂利層25は、上下が粘土層27で挟まれており、砂利層25を通る空気が上方へ漏れることなく液状化対策層Sに注入されるようになっている。
【0030】
一方、空気注入システム10は、止水壁22で囲まれた軟弱地盤18Aに注入孔部24から空気を注入する空気注入装置20(20A〜20E)と、軟弱地盤18中の地下水を揚水孔部26から地上へ揚げる揚水装置30(30A〜30E)と、揚水装置30で地上に揚げられた地下水を注入孔部24の有孔管28に注入する注入配管40とで構成されている。なお、空気注入装置20A〜20Eはそれぞれ同様の構成となっており、揚水装置30A〜30Eもそれぞれ同様の構成となっているため、以後の説明では空気注入装置20、揚水装置30としてA〜Eの符号を省略して説明する。
【0031】
図2に示すように、空気注入装置20は、有孔管28内に吊下げられた空気供給管32と、空気供給管32に空気を供給する空気供給装置34と、空気供給管32よりも上方に吊下げられた上部パッカー36と、空気供給管32よりも下方に吊下げられた下部パッカー38と、を有している。空気供給管32は、下端のみ硬質材となっており、それ以外の部位はビニール製チューブで構成されている。
【0032】
空気供給装置34は、箱状の筐体34Aを有しており、筐体34Aの側壁には、空気供給管32の一端が連結された連結部42が設けられている。また、空気供給装置34には、連結部42に連結された空気供給管32に空気を供給するためのコンプレッサー44、供給配管46、バルブ48、制御部50、レギュレータ52、圧力計54、流量計56、電磁弁58、及びタイマー61が設けられている。さらに、空気供給装置34には、上部パッカー36及び下部パッカー38に配管(図示省略)を介して空気の注入を行い、又は上部パッカー36及び下部パッカー38から空気を排出するパッカー作動装置60が設けられている。
【0033】
空気供給装置34の筐体34A内では、連結部42とコンプレッサー44が供給配管46で接続されている。供給配管46には、コンプレッサー44側を上流側、連結部42側を下流側として、上流側にバルブ48が取付けられており、バルブ48から下流側に向けて順にレギュレータ52、圧力計54、流量計56、及び電磁弁58が取付けられている。
【0034】
コンプレッサー44は、図示しない電源から電源供給されることにより作動して、供給配管46へ空気を送出するようになっている。また、バルブ48は、コンプレッサー44の使用、未使用に合わせて供給配管46を開放又は遮断させる。さらに、レギュレータ52は、コンプレッサー44から送出された空気の圧力を予め設定した設定圧力まで減圧させる構成となっている。
【0035】
圧力計54は、供給配管46内に送り込まれた空気の圧力がレギュレータ52によって設定圧力まで減圧されているかどうかを確認するためのものであり、流量計56は、供給配管46を空気が流れていることを確認するためのものである。また、電磁弁58は、タイマー61が接続されており、タイマー61に設定された空気供給の時間に合わせて電気的にスイッチのON、OFFが行われ、供給配管46を開放又は遮断させる。
【0036】
制御部50は、コンプレッサー44、電磁弁58、及びパッカー作動装置60の動作スイッチのON、OFFを、予め設定された動作プログラムに基づき自動で行うようになっている。なお、タイマー61への時間設定は、制御部50を介して設定される。
【0037】
一方、有孔管28内にクレーン等の吊下手段(図示省略)を用いて吊下げられた空気供給管32は、空気供給装置34の連結部42に連結されている。有孔管28内の空気供給管32には、砂利層25の位置に合わせて複数の空気孔32Aが形成されている。
【0038】
図3(a)に示すように、空気供給管32の空気孔32Aよりも上側には、円筒状の上部パッカー36が外挿されており、空気供給管32の下側には、円筒状の下部パッカー38が設けられている。なお、上部パッカー36と下部パッカー38の間には、空気供給管32の空気孔32Aから空気が放出されていることを検知するための水圧計65(図2参照)が設けられているが、ここでは図示を省略している。
【0039】
上部パッカー36は、全体が円筒状となっており、上端部と下端部に環状の円板部36A、36Bが設けられている。円板部36A、36Bの間には、膨張又は収縮が可能なゴム等の弾性素材からなる環状(チューブ状)のパッカー袋36Cが設けられている。パッカー袋36Cには、円板部36Aを貫通して上部パッカー用配管(図示省略)が接続されており、上部パッカー用配管の端部は、前述のパッカー作動装置60(図2参照)に接続されている。
【0040】
また、円板部36Aの上面には、上部パッカー36を吊下げるための複数のワイヤー62Aの一端が取り付けられている。なお、ワイヤー62Aは円板部36Aの周方向で例えば4箇所に取り付けられるが、ここでは2本のワイヤー62Aのみを図示し、他のワイヤー62Aの図示を省略している。
【0041】
図3(b)には、図3(a)の上部パッカー36を破線Dで切ったときの断面図が示されている。パッカー袋36Cは環状であり、内部空間36Dに空気が注入されることにより2点鎖線A、Bで示すように内外へ膨張するようになっている。また、パッカー袋36Cの穴部36E内には、空気供給管32と、下部パッカー38に空気を注入するための下部パッカー用配管41と、水圧計65(図2参照)の配線65Aとが設けられている。
【0042】
一方、図3(a)に示すように、下部パッカー38は、全体が円柱状となっており、上端部と下端部に円形の円板部38A、38Bが設けられている。円板部38A、38Bの間には、膨張又は収縮が可能なゴム等の弾性素材からなる環状(チューブ状)のパッカー袋38Cが設けられている。パッカー袋38Cには、円板部38Aを貫通して下部パッカー用配管41(図3(b)参照)が接続されており、下部パッカー用配管41の端部は、前述のパッカー作動装置60(図2参照)に接続されている。なお、下部パッカー38に空気供給管32の下端は挿入されていないが、下部パッカー38を上部パッカー36と同じ構成として、空気供給管32の下端を挿入させるようにしてもよい。
【0043】
また、円板部38Aの上面には、下部パッカー38を吊下げるための複数の鎖63Aの一端が取り付けられている。なお、鎖63Aは円板部38Aの周方向で例えば4箇所に取り付けられるが、ここでは2本の鎖63Aのみを図示し、他の鎖63Aの図示を省略している。
【0044】
ここで、上部パッカー36及び下部パッカー38は、パッカー作動装置60(図2参照)から気体が送り込まれ圧力がかけられることでパッカー袋36C、38Cが膨張する。また、上部パッカー36及び下部パッカー38は、パッカー作動装置60によってパッカー袋36C、38Cから気体が抜かれることで圧力が下がり収縮する。なお、有孔管28へ上部パッカー36及び下部パッカー38を吊下げるときは、パッカー袋36C、38Cが収縮状態となっている。
【0045】
図2に示すように、上部パッカー36に一端が取り付けられたワイヤー62Aは、他端が軟弱地盤18上に設けられた巻取装置62で巻き取られるようになっており、これにより、上部パッカー36が有孔管28内に吊下げられている。一方、下部パッカー38に一端が取り付けられた鎖63Aは、他端が上部パッカー36の円板部36Bに取り付けられており、これにより、下部パッカー38が有孔管28内に吊下げられている。
【0046】
ここで、巻取装置62を動作させることで、有孔管28内での上部パッカー36の設置位置と、下部パッカー38の設置位置とが変更される。なお、上部パッカー36は、砂利層25の上側の粘土層27と対応する位置に設置され、下部パッカー38は、砂利層25の下側の粘土層27と対応する位置に設置される。
【0047】
水圧計65は、上部パッカー36と下部パッカー38の間で且つ砂利層25と対応する位置に配置されており、この位置での水圧の変化を計測する。なお、水圧計65は、上部パッカー36及び下部パッカー38が有孔管28内に配置された後、地下水が注入配管40(図1(b)参照)から有孔管28内に注入されることで、水圧が計測可能となる。
【0048】
また、水圧計65は、前述の制御部50と電気的に接続されている。制御部50は、予め設定された圧力設定値と水圧計65で測定された圧力測定値との差異に応じて、電磁弁58を開放又は遮断して空気の供給又は供給停止を行うようになっている。
【0049】
一方、図1に示すように、揚水孔部26内には、塩化ビニルからなる断面円形状の有孔管31が、開口を上側に向けて立設されている。有孔管31は、揚水孔部26の深さと同程度の長さとなっており、揚水を行う位置の側壁には複数の貫通孔(図示省略)が形成されている。また、有孔管28の外径は、注入孔部24の孔径よりも小さくなっており、有孔管28と注入孔部24の間には、予め設定された幅の隙間が形成されている。この隙間は、砂利層25及び粘土層27で埋められているが、一部土砂も用いられている。
【0050】
揚水孔部26の内側には、揚水孔部26内に流入した地下水を揚水する揚水ポンプ33が設けられている。揚水ポンプ33は、空気供給装置34の制御部50(図2参照)に電気的に接続されており、制御部50によってスイッチのON、OFFが行われる。また、揚水ポンプ33には、揚水孔部26内から地上へ向けて延設された揚水パイプ35の一端が接続されており、揚水パイプ35の他端は、地上に設けられた揚水タンク37に接続されている。
【0051】
揚水タンク37は、前述の注入配管40が接続されており、注入配管40の接続部位には、内部に貯留された水を所定の圧力で注入配管へ送出する送出ポンプ(図示省略)が設けられている。ここで、揚水ポンプ33、揚水パイプ35、及び揚水タンク37により揚水装置30が構成されている。
【0052】
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。まず、空気注入システム10の設置工程について説明する。
【0053】
図1(a)、(b)に示すように、建物14を囲むようにして軟弱地盤18から非液状化地盤16まで止水壁22を構築する。これにより、止水壁22の外側にある周辺地盤と、建物14の下側の軟弱地盤18Aとの水(地下水)の移動が遮断される。また、地盤12上には、空気供給装置34と揚水タンク37を設置する。なお、止水壁22で囲まれた軟弱地盤18Aについては、予めどの深度に液状化対策層Sを設けるかが決められている。
【0054】
続いて、図4(a)に示すように、オーガー等の掘削機(図示省略)により軟弱地盤18Aに複数の注入孔部24を形成する。そして、注入孔部24内に有孔管28を立設する。ここで、有孔管28と注入孔部24の間には隙間が形成されている。
【0055】
続いて、図4(b)に示すように、有孔管28と注入孔部24の隙間に粘土を充填して、粘土層27Aを形成する。なお、形成される粘土層27Aの上面の高さが、軟弱地盤18Aの液状化対策層Sの下面の高さとなるまで粘土の充填を行う。
【0056】
続いて、有孔管28と注入孔部24の隙間で粘土層27A上に砂利を充填して、砂利層25を形成する。なお、形成される砂利層25の上面の高さが、軟弱地盤18Aの液状化対策層Sの上面の高さとなるまで砂利の充填を行う。また、砂利層25は、空気の透過が十分可能となるように予め石及び砂が選定されているものとする。
【0057】
続いて、有孔管28と注入孔部24の隙間で砂利層25上に粘土を充填して、粘土層27Bを形成する。これにより、有孔管28が固定される。なお、粘土層27Bについては、粘土を地上まで充填して形成しなくともよく、空気が上方に抜けない程度の層厚となった後に、注入孔部24掘削時の土砂で埋めるようにしてもよい。
【0058】
続いて、図4(c)に示すように、有孔管28内に空気供給管32、下部パッカー38、及び上部パッカー36を一体で挿入する。下部パッカー38は、予め鎖63Aの長さが調整されることにより位置調整されており、上面が液状化対策層Sの下面となる位置で保持される。
【0059】
また、上部パッカー36は、巻取装置62でワイヤー62Aが引き出され又は巻き取られることにより位置調整され、下面が液状化対策層Sの上面となる位置で保持される。なお、上部パッカー36の位置は、巻取装置62において、ワイヤー62Aの巻取り量に基づいて検出される。
【0060】
挿入された空気供給管32は、接続されたチューブにスケールをつけておくことで位置検出が行われる。ここで、空気孔32Aが砂利層25と対向する位置まで挿入された状態で、空気供給管32の端部を空気供給装置34の連結部42に連結し、空気供給管32の高さ位置を固定する。
【0061】
続いて、パッカー作動装置60(図2参照)を作動して、上部パッカー36、下部パッカー38のパッカー袋36C、38C(図3(a)参照)にそれぞれ水または空気を注入する。空気が注入されたパッカー袋36C、38Cは、膨張して有孔管28内を密閉すると共に、有孔管28に圧着され位置が固定される。なお、前述の水圧計65(図2参照)は、上部パッカー36と下部パッカー38の間に配置されている。
【0062】
このように空気注入装置20の各部(空気供給管32、空気供給装置34、上部パッカー36、及び下部パッカー38)を軟弱地盤18Aに設置することで、図5に示すように、空気孔32Aから有孔管28の貫通孔29及び砂利層25を通して、液状化対策層Sへ空気Pが送り込み可能となる。また、注入した空気が、有孔管28内の上部パッカー36、下部パッカー38の上部や下部へ抜けないようにしている。
【0063】
一方、図1(a)、(b)に示すように、建物14を挟んで注入孔部24と反対側において、オーガー等の掘削機(図示省略)により軟弱地盤18Aに複数の揚水孔部26を形成する。そして、揚水孔部26内に有孔管31を立設する。ここで、有孔管31と揚水孔部26の隙間に土砂等を充填して有孔管31を固定する。
【0064】
続いて、クレーン(図示省略)等により揚水パイプ35及び揚水ポンプ33を吊下げると共に、有孔管31内に挿入する。そして、揚水ポンプ33が地下水面より十分深い位置まで挿入された状態で、揚水パイプ35の端部を揚水タンク37に接続し、揚水ポンプ33の高さ位置を固定する。なお、空気孔32Aと揚水ポンプ33は同じレベルでなくてもよい。揚水ポンプ33は空気孔32Aと同じかより深い位置がよい。
【0065】
続いて、各揚水タンク37を複数のパイプで連通させた状態で、注入配管40の一方の端部を揚水タンク37に接続する。ここで、注入配管40の他方の端部は、予め複数の注入孔部24に合わせて分岐されており、各注入孔部24に挿入することで、揚水タンク37から送出された水が有孔管28内に注入される。
【0066】
次に、軟弱地盤18Aへの空気の注入作用について説明する。
【0067】
図6に示すように、空気供給管32の上方の有孔管28は、上部パッカー36によって塞がれており、空気供給管32の下方の有孔管28は、下部パッカー38によって塞がれている。ここで、空気供給装置34において、バルブ48及び電磁弁58(図2参照)を開放した状態でコンプレッサー44(図2参照)が駆動されることにより、空気供給管32内に空気が供給される。
【0068】
図2、図5に示すように、空気注入装置20では、上部パッカー36と下部パッカー38の間が地下水(図示省略)で浸水されており、この地下水による水圧が水圧計65で計測される。そして、制御部50及び電磁弁58が、予め設定された圧力設定値と水圧計65で測定された圧力測定値との差異に応じて、空気供給管32への空気Pの供給又は供給停止を行う。
【0069】
ここで、水圧計65によって計測される水圧の変化が、空気供給管32から供給される空気Pの供給量の変化と対応しているため、空気供給管32から軟弱地盤18Aへ所定の空気量が供給されているかどうかを検知することができる。また、供給配管46及び空気供給管32の途中で空気漏れが発生することがあっても、水圧計65の水圧の変化で検知することができる。
【0070】
続いて、空気供給管32に供給された空気Pが空気孔32Aから放出されると、放出された空気Pは、有孔管28の貫通孔29及び砂利層25を通って、軟弱地盤18Aの液状化対策層Sに気泡となって注入される。空気Pが注入された軟弱地盤18Aの液状化対策層Sでは、地下水による間隙の飽和度が低下することになる。
【0071】
ここで、液状化対策層Sの間隙に空気P(気泡)が存在し、飽和度が低下した状態において地盤12に地震が発生すると、液状化対策層Sでは、空気Pの気泡が収縮することで間隙水圧の上昇が抑えられる。これにより、砂粒子同士が接触したままの状態が保持され、水中を砂粒子が自由に移動することが抑制されるので、軟弱地盤18Aの液状化を防止できる。
【0072】
図7には、軟弱地盤18Aへの空気Pの注入時間と軟弱地盤18Aの飽和度との関係がグラフで示されている。なお、軟弱地盤18Aの飽和度とは、軟弱地盤18A中の土砂の間隙を地下水がどの程度埋めているかを比率で表したものであり、土砂の間隙が全て地下水で埋まっている場合には、飽和度が100%となる。
【0073】
図7に示すように、軟弱地盤18Aへの空気Pの注入時間が0からt1、t2(t1<t2)と長くなると、軟弱地盤18Aの飽和度は100%からA%、B%(A>B)と減少している。これにより、軟弱地盤18Aに空気Pを注入することで、軟弱地盤18Aが不飽和状態となることが分かる。なお、不飽和状態は、土砂の間隙に空気Pの気泡が入り込み、地下水による土砂の間隙空間の占有率が低減することによる。
【0074】
また、図7において、時間t3では空気の注入が停止されることを示しており、時間t4では空気の注入が再開されることを示している。時間t3から時間t4までの間は、空気の注入が停止されているため、地盤の飽和度が上昇することになる。一方、時間t4以降は、空気の注入が再開されるため、地盤の飽和度が低下する。
【0075】
ここで、図6に示すように、揚水ポンプ33によって有孔管31周辺の軟弱地盤18Aの地下水が汲み上げられると、軟弱地盤18A内の地下水の水位面Lは、注入孔部24側が高く揚水孔部26側が低くなる。このように、注入孔部24から揚水孔部26に向けて地下水の水位面Lに勾配が生じるため、注入孔部24周辺の地下水は、揚水孔部26に向けて移動する。この地下水の流れによって、軟弱地盤18A中に注入された空気P(気泡)は、揚水孔部26に近い位置へ移動していく。これにより、液状化対策層Sの幅をより広く(より遠くまで設定)することができ、空気Pを軟弱地盤18A内に保持できる。
【0076】
揚水ポンプ33で揚げられた水は、注入配管40によって注入孔部24の有孔管28内に注水されるため、軟弱地盤18A内の合計の地下水量はあまり変化しない。このため、空気注入システム10では、揚水孔部26周辺の地下水の減少による地盤沈下を防止することができる。このように、空気孔32Aから注入される空気を遠くまで到達させるには揚水量を多くする必要があるので、注入側へ水を戻しているが、この動作は必ず行われるものではない。例えば、注入孔部24と揚水孔部26が近ければ揚水量は少なくて済むので、揚水した水を注入側へ戻さないこともある。
【0077】
なお、空気注入装置20では、上部パッカー36に対して鎖63Aで下部パッカー38が吊下げられているので、鎖63Aの吊下げ長さを調整して上部パッカー36と下部パッカー38の間隔が変更可能となっている。これにより、液状化対策層Sの設定領域が変更されることがあっても、液状化対策層Sに空気を注入することができる。
【0078】
また、空気注入装置20では、上部パッカー36、下部パッカー38が、空気Pが供給されると内外に膨張するパッカー袋36C、38Cを有しており、空気供給によるパッカー袋36C、38Cの膨張だけで有孔管28が閉塞されるので、上部パッカー36及び下部パッカー38を簡易な構成とすることができる。
【0079】
さらに、空気注入装置20では、電磁弁58(図2参照)がタイマー61(図2参照)で設定された時間に合わせて供給配管46の開放又は遮断を行うことが可能となっているため、空気供給管32への空気Pの供給を連続的又は断続的に行える。
【0080】
次に、本発明の空気注入装置、空気注入システム、及び地盤への空気注入方法の第2実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0081】
図8には、空気注入システム70が示されている。空気注入システム70は、第1実施形態の空気注入システム10(図1参照)に、さらに比抵抗測定装置80を設けた構成となっている。
【0082】
図8に示すように、建物14の下部の軟弱地盤18Aには、比抵抗測定装置80を設けるための測定用孔部72が掘削されている。測定用孔部72内には、図示しない複数の貫通孔が形成された有孔管74が挿入され固定されている。また、有孔管74内には、比抵抗測定装置80の一部である電極ユニット76が、図示しないケーブル及び巻取装置によって吊下げられている。電極ユニット76には配線73、75の一端が電気的に接続されており、配線73、75の他端は、空気供給装置34内の制御部50に接続されている。
【0083】
図9には、比抵抗測定装置80の構成が示されている。比抵抗測定装置80は、第1電極77及び第3電極78を有する電極ユニット76と、軟弱地盤18Aの上面に固定された第2電極79と、軟弱地盤18Aの上面で第2電極79と異なる位置に固定された第4電極81と、第1電極77と第2電極79の間に電流を流す電流供給源82と、第4電極81を基準として第3電極78の電位を測定する電位計84とを有している。なお、電極ユニット76では、第1電極77の鉛直上方に第3電極78が取り付けられている。
【0084】
第1電極77と第2電極79は、配線83により電気的に接続されており、配線83の経路途中に電流供給源82が設けられている。電流供給源82には、配線73の一端が接続されており、配線73の他端は制御部50(図8参照)に接続されている。これにより、第1電極77と第2電極79の間に流した電流(I)が、制御部50で記録されるようになっている。
【0085】
一方、第3電極78と第4電極81は、配線85により電気的に接続されており、配線85の経路途中に電位計84が設けられている。電位計84には、配線75の一端が接続されており、配線75の他端は制御部50(図8参照)に接続されている。これにより、第3電極78を基準とした第4電極81の電位(V)が、制御部50で記録されるようになっている。
【0086】
軟弱地盤18Aが等方均質媒体であるとすると、第1電極77の周りの等電位面Mは球面となる。この等電位面Mの電位は、第3電極78を基準とした第4電極81の電位(V)として測定される。ここで、等電位面Mの電位Vは、軟弱地盤18Aの比抵抗ρtに比例し、(1)式で求めることができる。(1)式において、Dは第1電極77と第3電極78の間隔、Vは第4電極81の電位、Iは電流供給源82で流された電流である。
【0087】
【数1】


次に、軟弱地盤18Aの比抵抗測定方法について説明する。アーチー(Archie)の法則によれば、岩石、土が水で飽和している場合、(2)式に示す関係式が成立する。
【0088】
【数2】


(2)式において、ρtは軟弱地盤18A(岩石、土)の比抵抗、ρwは軟弱地盤18Aの岩石や土の間隙に存在する地下水(間隙水)の比抵抗であり、F(=ρt/ρw)は地層比抵抗係数(フォーメーションファクタ)と呼ばれている。また、aとbは実験により求められる定数であり、Nは軟弱地盤18Aの岩石や土の間隙率である。
【0089】
ここで、定数a、定数b、及び間隙水の比抵抗ρwが予め実験により得られており、軟弱地盤18Aの比抵抗ρtの測定中に間隙水の比抵抗ρwが変化しないとすると、(1)式を用いて比抵抗測定装置80により測定された軟弱地盤18Aの比抵抗ρtを(2)式に代入することで、軟弱地盤18Aの間隙率Nが求められる。
【0090】
制御部50(図8参照)では、軟弱地盤18Aに空気(気泡)が必要量注入されたときの基準間隙率N1が予め設定されており、測定により得られた間隙率Nと基準間隙率N1との差分がゼロに近づくように、空気供給装置34(図8参照)を作動させるようになっている。
【0091】
なお、本実施形態では比抵抗に着目して軟弱地盤18Aの間隙率Nを求めているが、比抵抗ρと導電率(σとする)は逆数の関係(ρ=1/σ)にあるため、導電率計により軟弱地盤18Aの導電率σを測定し、比抵抗ρに変換して、(1)式、(2)式を用いて間隙率Nを求めるようにしてもよい。
【0092】
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
【0093】
図8、図9に示すように、第1実施形態と同様の工程により、止水壁22で囲まれた軟弱地盤18Aに空気注入装置20及び揚水装置30を設置する。続いて、空気供給装置34が作動し、空気供給管32に供給された空気Pが空気孔32Aから放出されると、放出された空気Pは、有孔管28の貫通孔29及び砂利層25を通って、軟弱地盤18Aの液状化対策層Sに気泡となって注入される。空気Pが注入された軟弱地盤18Aの液状化対策層Sでは、地下水による間隙の飽和度が低下することになる。
【0094】
ここで、液状化対策層Sの間隙に空気P(気泡)が存在し、飽和度が低下した状態において地震が発生すると、液状化対策層Sでは、空気Pの気泡が収縮することで間隙水圧の上昇が抑えられる。これにより、砂粒子同士が接触したままの状態が保持され、水中を砂粒子が自由に移動することが抑制されるので、軟弱地盤18Aの液状化を防止できる。
【0095】
また、比抵抗測定装置80では、電流供給源82の電流Iと、電位計84の電位Vと、第1電極77と第3電極78の間隔Dと、(1)式とにより、軟弱地盤18Aの比抵抗ρtが測定される。さらに、比抵抗測定装置80では、得られた比抵抗ρtと(2)式とにより、軟弱地盤18Aの間隙率Nが求められる。
【0096】
ここで、空気供給装置34の制御部50では、求められた間隙率Nと予め設定されている基準間隙率N1との差に応じて、軟弱地盤18A中の空気Pの注入量の過不足が判断される。空気Pの注入量が不足と判断された場合は、引き続き空気Pの注入が行われる。また、空気Pの注入量が必要十分と判断された場合は、電磁弁58(図2参照)が遮断され、空気Pの注入が停止される。これにより、軟弱地盤18A中の空気量を実測しなくても、軟弱地盤18A中の空気の過不足状態を検知して、必要な空気Pを注入することができる。
【0097】
図10には、空気の注入停止(時間t3、t5)又は注入再開(時間t4)したときの時間と地盤の飽和度の関係が示されている。飽和度C%は、構造物の使用に有害とならない飽和度の下限値であり、飽和度D%は、液状化防止に必要な飽和度の上限値である。空気の注入を停止すると、地盤中の空気が減少する(上方へ抜ける、溶ける)ため飽和度が上昇する。また、空気注入を再開すれば、再び飽和度が低下する。
【0098】
ここで、空気を注入して、比抵抗測定装置80で得られる飽和度の値がC%に達したら、空気注入・揚水を自動停止させる。一方、比抵抗測定装置80で得られる飽和度の値がD%を上回ったら、空気注入・揚水を再開する。このように、比抵抗測定装置80を利用することにより、地盤の飽和度を所定の範囲に保つことができる。
【0099】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0100】
注入孔部24及び揚水孔部26の数は、5だけでなく、1つ又は2つ以上の複数から自由に選択することができる。また、空気供給管32の空気孔32Aの数も、1つ又は2つ以上の複数から自由に選択することができる。
【0101】
上部パッカー36、下部パッカー38におけるパッカー袋36C、38Cの膨張又は収縮は、空気だけでなく液体を用いて行ってもよい。
【符号の説明】
【0102】
10 空気注入システム
18A 軟弱地盤(地盤)
20 空気注入装置
24 注入孔部(孔部)
25 砂利層
26 揚水孔部(揚水用孔部)
27 粘土層
28 有孔管
30 揚水装置(揚水手段)
32 空気供給管
32A 空気孔
34 空気供給装置(空気供給手段)
36 上部パッカー(上部閉塞手段)
36C パッカー袋(チューブ)
37 揚水タンク(注水手段)
38 下部パッカー(下部閉塞手段)
38C パッカー袋(チューブ)
40 注入配管(注水手段)
50 制御部(切換手段)
58 電磁弁(切換手段)
61 タイマー
65 水圧計
72 測定用孔部
80 比抵抗測定装置(電気特性測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された孔部へ挿入された有孔管内に吊下げられ、供給された空気が放出される空気孔が形成された空気供給管と、
前記空気供給管に空気を供給する空気供給手段と、
前記空気供給管よりも上方に吊下げられ、拡径して前記有孔管を塞ぐ上部閉塞手段と、
前記空気供給管よりも下方に吊下げられ、拡径して前記有孔管を塞ぐ下部閉塞手段と、
を有する空気注入装置。
【請求項2】
前記上部閉塞手段及び前記下部閉塞手段は、空気が供給されると内外に膨張するチューブである請求項1に記載の空気注入装置。
【請求項3】
前記空気供給手段から前記空気供給管までの空気供給経路の途中には、前記空気供給管への空気の供給又は供給停止を行う切換手段が設けられている請求項1又は請求項2に記載の空気注入装置。
【請求項4】
前記上部閉塞手段と前記下部閉塞手段の間に浸水した水の圧力を計測する水圧計が設けられ、
前記切換手段が、設定された圧力設定値と前記水圧計で測定された圧力測定値との差異に応じて空気の供給又は供給停止を行う請求項3に記載の空気注入装置。
【請求項5】
地盤の前記孔部と異なる位置に掘削された測定用孔部に配置され、該測定用孔部にて地盤の導電率又は比抵抗を測定する電気特性測定手段が設けられ、
前記切換手段が、前記電気特性測定手段で測定された地盤の導電率又は比抵抗に応じて、前記空気供給管への空気の供給又は供給停止を行う請求項3又は請求項4に記載の空気注入装置。
【請求項6】
前記切換手段の空気の供給又は空気の供給停止を設定された時間で切換えるタイマーが設けられている請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の空気注入装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の空気注入装置と、
地盤の前記孔部と異なる位置に掘削された揚水用孔部から水を揚げる揚水手段と、
前記揚水手段で揚げられた水を前記有孔管に注水する注水手段と、
を有する空気注入システム。
【請求項8】
地盤に孔部を形成する孔部形成工程と、
前記孔部へ有孔管を挿入する挿入工程と、
前記有孔管に請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の空気注入装置を吊下げる吊下げ工程と、
前記孔部と前記有孔管との隙間に、上下が粘土層で囲まれ前記空気注入装置で注入された空気が透過する砂利層を形成する砂利層形成工程と、
を有する地盤への空気注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−189961(P2010−189961A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36600(P2009−36600)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】