籾摺選別装置
【課題】脱ぷロールの初期制御を確実、かつ正確に行うことができる、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供する。
【解決手段】還元部7は、この還元部7を個別に駆動可能とする駆動モータM2を備えるとともに、駆動モータM2と、脱ぷロール間隙制御手段とを連係する。そして、脱ぷロール間隙制御手段は、脱ぷロール11cの初期制御開始時に、還元部7の駆動を停止するとともに、脱ぷロール11cの初期制御終了時に、還元部7を駆動させ、還元昇降機7aは、この還元昇降機7aの穀粒入口7h近傍に中間穀粒の貯留スペースsを備える。
【解決手段】還元部7は、この還元部7を個別に駆動可能とする駆動モータM2を備えるとともに、駆動モータM2と、脱ぷロール間隙制御手段とを連係する。そして、脱ぷロール間隙制御手段は、脱ぷロール11cの初期制御開始時に、還元部7の駆動を停止するとともに、脱ぷロール11cの初期制御終了時に、還元部7を駆動させ、還元昇降機7aは、この還元昇降機7aの穀粒入口7h近傍に中間穀粒の貯留スペースsを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾摺選別装置に関し、より詳細には、還元部は、この還元部を個別に駆動可能とする駆動モータを備えるとともに、駆動モータと、脱ぷロール間隙制御手段とを連係する籾摺選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の籾摺選別装置は、ホッパの籾吐出口下方に連通させる籾摺ケース内に一対の脱ぷロールを有し、この脱ぷロールを駆動させる籾摺モータの負荷電流を検出する電流センサを備え、装置の運転開始時や、装置稼動中の一定時間ごとに前記電流センサにより検出した電流値に基づいて、コントローラが脱ぷ率モータを駆動させて脱ぷロールを接離調節し、脱ぷロールの間隙を制御して、装置の脱ぷ率を維持させるものがある(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−59357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した脱ぷロールの間隙制御は、作業により脱ぷロールが磨耗すると、脱ぷロールにかかる負荷が減り、脱ぷロールを駆動させる電流値が低くなる。そこで、この電流値を元の値になるように脱ぷ率モータなどの制御モータで、脱ぷロールの隙間を詰めることにより、脱ぷ率を一定に保つものである。しかし、このような従来の籾摺選別装置では、特に装置の運転開始時に脱ぷロールの初期制御を行うため、装置の電源が投入されたことで、連動する還元部も駆動するため、前の運転時にこの還元部に残留した、脱ぷロールで脱ぷ後、風選により得られた粃などの中間穀粒や、揺動選別部からの粃などの返り穀粒が、脱ぷロール上に還元されることにより、脱ぷロール上面に中間穀粒が介在するため、前記電流値が安定せず、脱ぷロールの間隙調整が不安定になるという問題があった。
そこで、この発明の目的は、脱ぷロールの初期制御を確実、かつ正確に行うことができる、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、原料穀粒を脱ぷロールで脱ぷする脱ぷ部と、前記脱ぷ部から得た混合穀粒を風選して中間穀粒および選別穀粒にし、前記中間穀粒を搬送体により前記脱ぷ部に還元する還元部と、前記選別穀粒をさらに選別する揺動選別部と、を備えるとともに、前記脱ぷ部は、前記脱ぷロールを駆動する駆動モータの負荷電流を検出する検出器を備え、運転開始に伴う前記脱ぷロールの初期制御時に、前記検出器による前記脱ぷロールの電流値から、前記脱ぷロールの摺動手段により、前記脱ぷロールの間隙を設定する脱ぷロール間隙制御手段を備える籾摺選別装置において、前記還元部は、該還元部を個別に駆動可能とする駆動モータを備えるとともに、前記駆動モータと、前記脱ぷロール間隙制御手段とを連係することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の籾摺選別装置において、前記脱ぷロール間隙制御手段は、前記脱ぷロールの初期制御開始時に、前記還元部の駆動を停止するとともに、前記脱ぷロールの初期制御終了時に、前記還元部を駆動させることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の籾摺選別装置において、前記搬送体は、該搬送体の穀粒入口近傍に前記中間穀粒の貯留スペースを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、原料穀粒を脱ぷロールで脱ぷする脱ぷ部と、脱ぷ部から得た混合穀粒を風選して中間穀粒および選別穀粒にし、中間穀粒を搬送体により脱ぷ部に還元する還元部と、選別穀粒をさらに選別する揺動選別部と、を備えるとともに、脱ぷ部は、脱ぷロールを駆動する駆動モータの負荷電流を検出する検出器を備え、運転開始に伴う脱ぷロールの初期制御時に、検出器による脱ぷロールの電流値から、脱ぷロールの摺動手段により、脱ぷロールの間隙を設定する脱ぷロール間隙制御手段を備える籾摺選別装置において、還元部は、この還元部を個別に駆動可能とする駆動モータを備えるとともに、駆動モータと、脱ぷロール間隙制御手段とを連係するので、装置の電源投入に伴い装置各部が駆動する場合において、脱ぷロールの初期制御の間、還元昇降機の駆動を停止することができ、脱ぷロールの初期制御を円滑、かつ正確に行うことができる。従って、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、脱ぷロール間隙制御手段は、前記脱ぷロールの初期制御開始時に、前記還元部の駆動を停止するとともに、前記脱ぷロールの初期制御終了時に、前記還元部を駆動させるので、脱ぷロールの初期制御の間、還元昇降機からの中間穀粒などが脱ぷロール上に還元されることなく、検出器が脱ぷロールの間隙を正確に検出し、脱ぷロールの初期制御を円滑、かつ確実に行うことができる。従って、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、搬送体は、この搬送体の穀粒入口近傍に中間穀粒の貯留スペースを備えるので、駆動が停止している還元昇降機の穀粒入口まで移送されきた中間穀粒が、この穀粒入口で詰まることなく、脱ぷロールの初期制御終了に伴い、円滑に装置の運転開始をすることができる。従って、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例としての籾摺選別装置の左側面図、図2は籾摺選別装置を左前方からみた斜視図、図3は籾摺選別装置の平面図、図4は籾摺選別装置内部の左側面模式図である。
【0012】
この例の籾摺選別装置1は、図1〜図3に示すように、機体上部中央にホッパ2と、このホッパ2の側面視背面には、混合米揚穀機3と混合米タンク4が連設される。さらに機体前端には、籾殻排出筒5および機体後端に玄米揚穀機6が備えられ、玄米揚穀機6の上部後端に仕上米出口9が設けられている。また、機体中央の左側部には、搬送体としての還元昇降機7aが設けられる。
【0013】
そして、図4に示すように、主軸ロール11aと副軸ロール11bとからなる脱ぷロール11cを有する脱ぷ部11の下方には、脱ぷロール11cで籾摺され、得られた粃や玄米などの混合米(混合穀粒)が通過する風選路12aを有する風選部12が配設される。この脱ぷロール11c下方であって、風選路12a終端下部の機体前部(側面視左端)には、混合米に吸引作用する吸引ファン13、この吸引ファン13の後部(側面視右隣)であって、脱ぷロール11cの下方には、風選路12aから混合米中の小米を含む粃などの中間穀粒が落下する粃排出樋14、さらに粃排出樋14の後方には、混合米中の籾や玄米などの選別穀粒が落下する混合米受樋15などが列設される。
【0014】
混合米受樋15に落下した籾や玄米を搬送する図示しない螺旋の搬送終端側は、側面視機体背面側に立設され、複数のバケット3aを備える混合米揚穀機3に連通し、この混合米揚穀機3の揚穀終端側は混合米タンク4に連通されている。
【0015】
さらに、混合米タンク4の下方には、混合米を搬送する均分樋17を有し、この均分樋17の下方には揺動選別部18が備えられる。なお、図1〜2では、機体内部に備える揺動選別板18bが見えるように、機体左側部のカバー24が開蓋されている。この揺動選別部18は、均分樋17の搬送終端側に複数の流路からなる分配ケース18aと、分配ケース18aの側方に有し、多段からなる揺動選別板18bと、揺動選別板18bの前部および中央部にそれぞれ配設される籾仕切板18c、玄米仕切板18dなどから構成される。
【0016】
揺動選別部18の下方には、選別部18の前部から順に籾用流路19、混合米用流路20、玄米用流路21がそれぞれ配設される。そして、籾用流路19の終端に有する返り籾入口部16aが、返り籾出口部16bを介して側面視手前に備えられる図4に示す複数のバケット7bを備える、還元部7の搬送体としての還元昇降機7aに連通され、この還元昇降機7aの上部は、ホッパ2に連通される。また、混合米用流路20と玄米用流路21の間には玄米の機内循環と機外排出とを切り替える切替弁22が設けられる。そして、機体後端には玄米用流路21が下部に連設され、複数のバケット6aを備える玄米揚穀機6が立設される。なお、各ベルトに取付けられたバケット3a,6aなどは、それぞれ図示しない駆動モータにより回転するプーリで上下方向に循環される。
【0017】
また、符号23は、籾摺選別装置1を運転操作する操作盤で、装置各部を駆動制御する、後述のコントローラCを内臓することができる。
【0018】
ここで、籾摺選別装置1を使用して籾摺作業を行うときは、ホッパ2に原料穀粒として籾を供給し、操作盤23の図示しない電源を投入することにより機体各部を駆動させ、ホッパ2底部に有する不図示のシャッタ板を開いて、脱ぷロール11cに供給された籾が籾摺された後、落下した混合米は風選路12aで風選され、最も軽い籾殻は吸引ファン13により吸引され、籾殻排出筒5を介して機外に排出される。なお、前記シャッタ板は後述するコントローラCに接続された電磁式などにより自動開閉できるとともに、手動でも開閉可能とされる。
【0019】
そして、風選路12aで風選された比較的軽い小米を含む粃は、粃排出樋14から排出される。一方、重量の重い玄米と籾摺を損ねた籾との混合米は受樋15に落下し、混合米昇降機3のバケット3aで揚穀されて混合米タンク4に供給された後、均分樋17および分配ケース18aを介して揺動選別板18bに供給される。なお、粃排出樋14から排出された粃を、図示しないベルトコンベア式などの粃還元装置を介して還元昇降機7a内に移送し、バケット7bによりホッパ2に還元することができる。
【0020】
次いで、混合米は、揺動選別板18bでの揺動により、小さく比重の重い玄米は揺上側に、また玄米よりも大きく比重の軽い籾は揺下側に、さらに中間部分には分離されない籾と玄米とがそれぞれ偏流分布しながら選別される。
【0021】
揺動選別板18bで選別された玄米などの穀粒は、籾仕切板18cと玄米仕切板18dで仕切られ、揺動選別板18bより排出される。このとき、切替弁22は揺動選別板18b上での穀粒の偏流分布が不安定な際、混合米用流路20と玄米用流路21との間を連通させて、混合米と玄米を再度受樋15に流入させるようにするが、揺動選別板18b上での穀粒の偏流分布が安定すると、混合米用流路20と玄米用流路21との間を遮断させるように切り替えられる。
【0022】
その結果、混合米が混合米用流路20に落下し、受樋15を介して再度選別部18に搬送され、玄米は玄米用流路21から玄米揚穀機6を介して仕上米出口9から機外に取り出される。また、返り穀粒である返り籾は、籾用流路19から流入した返り籾入口部16aを介して返り籾出口部16bから還元昇降機7aによりホッパ2に還元され、再度籾摺される。
【0023】
次に、本願発明の特徴である、脱ぷロール間隙制御手段について、その具体的構成を説明する。図5は還元部の内部構造を示した左側面模式図、図6は還元部の下部を拡大して示した左側面の断面図、図7は脱ぷ部の内部構造を示した左側面模式図、図8は脱ぷ部の正面模式図、図9は脱ぷロールの間隙調節を説明する上方から見た脱ぷ部内部の斜視図、図10は脱ぷ部と還元部との連係を示すブロック図、図11は脱ぷロールの初期制御のフローチャートである。
【0024】
上述した還元部7としての一例を示す搬送体としての還元昇降機7aを詳述すると、図5にも示すように、還元昇降機7aは、前後板7cおよび左右側板7dにより形成され、内部の上部と下部には、左右方向に配設されたそれぞれの軸心にプーリ7e,7fが設けられ、このプーリ7e,7fに無端状のベルト7gが巻装される。また、このベルト7gには適宜間隔を開けて、上開き側面視略U字型など複数のバケット7bが取り付けられる。なお、搬送体は、上述したバケット式の還元昇降機に限定されず、スロワーなどを用いてもよい。
【0025】
そして、還元昇降機7aの上部に設けられた、還元昇降機7aの駆動のみに用いられる駆動モータM2により、プーリ7eと同軸に設けられた不図示のプーリが回転され、還元昇降機7aの下部に備えられた中間穀粒の穀粒入口7hから還元昇降機7aの上部に備えられた穀粒出口7iの上下間をベルト7gに沿ってバケット7bが周回される。また、図示しないが、この駆動モータM2と、プーリ7eとの間は、周知技術であるテンションプーリを備えるベルトクラッチを用いて、駆動モータM2の駆動からプーリ7eの駆動を入切することができる。そして、駆動モータM2の、例えば前記したテンションプーリは、図9に示すように、コントローラCに接続される。なお、駆動モータM2からプーリ7eへの動力伝達の入切は、上記ベルトクラッチなどのほか、直接駆動モータM2の駆動を入切させるなど、その方法は限定されない。
【0026】
また、この還元昇降機7aの穀粒入口7hには、例えば、機体下方に膨出させた貯留スペースsが設けられる。
【0027】
次に、上述した脱ぷ部11を詳述すると、図7〜8に示すように、脱ぷ部11は、ゴムロール11abを軸装し、固定側の主軸11aaからなる主軸ロール11aと,ゴムロール11bbを軸装し、移動側の副軸11baからなる副軸ロール11bとから構成され、主軸11aaは、駆動プーリ11acに巻回された駆動モータM1の駆動ベルトB1によって高速回転(副軸11baの回転に比べて)される。一方、主軸11aaの駆動プーリ11acに巻回され、プーリP1,P2を介して、副軸11baの駆動プーリ11bcに主軸11aaとは反対向きに巻回されてなる一連の六角ベルトB2により、副軸11baは、モータM1の駆動力を主軸11aaの回転駆動力で低下させた低速回転(主軸11aaの回転に比べて)にするとともに、主軸11aaとは対向回転にし、籾などの原料穀粒を脱ぷロール11のゴムロール11ab,11bb上に落下させて、これらゴムロール11ab,11bbの周面速度の差による摺動作用で籾が脱ぷされる。
【0028】
この際、図9に示すように、一方のロール(例えば主軸ロール11a)の主軸11aaに連結した不図示の間隙調節リンクの上端部が、間隙調節シャフト31の一側部に、軸受部材32などを介して連結されるとともに、この間隙調節シャフト31の他側部が、脱ぷ部ケースcの前端部に取付けられた間隙調節モータM3に不図示のギアなどを介して連結され、間隙調節モータM3の正逆回転により、間隙調節シャフト31および前記間隙調節リンクなどを介して主軸ロール11aを機体前後方向に回動させ、相対する主軸11aaのゴムロール11abと、副軸11baのゴムロール11bbとの間隙を遠近させてロール圧を変化させることができ、所望する調製条件による籾摺作業が可能となる。また、間隙調節シャフト31の間隙調節モータM3側近傍には、ハンドル33が設けられており、このハンドル33の回動操作により、主軸11aaのゴムロール11abと、副軸11baのゴムロール11bbとの間隙を手動でも調節可能としている。そして、間隙調節モータM3は、図9に示すように、コントローラCに接続される。なお、図9は、主軸ロール11aおよび副軸ロール11bの回転駆動させる駆動モータM1などの駆動機構の記載を省略して記したものである。また、上述した主軸11aaのゴムロール11abと、副軸11baのゴムロール11bbとの間隙調節は、例えば、特開昭63−59357などに記すような周知技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0029】
また、脱ぷ部11内における脱ぷロール11cを駆動させる図示しない電気回路内などの適宜位置には、脱ぷロール11cの負荷電流を検出する変流器などの電流検出器25が設けられる。そして、この電流検出器25は、図10に示すように、コントローラCに接続される。
【0030】
ここで、籾摺選別装置1を駆動させるために、操作盤23の前記電源を投入すると、機体各部が駆動を始めるとともに、自動的に脱ぷロール11cの初期制御が開始される。そこで、図11を用いて脱ぷロール間隙制御手段を説明する。
【0031】
まず、コントローラCは、ステップs1において、前記電源が投入されたことにより、開状態であれば前記シャッタ板を閉じるとともに、還元部7における駆動モータM2の前記テンションプーリなどを摺動させてプーリ7eへの駆動モータM2の駆動力伝達を遮断して、還元部7の還元昇降機7aを駆動させないようにする。
【0032】
次いで、コントローラCは、電流検出器25が検出した脱ぷロール11cの、サンプリングした負荷電流の電流値に基づいて、ステップs2において、脱ぷロール11cの主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触していなければ、間隙調節モータM3を作動させて主軸ロール11aを摺動し、主軸ロール11aと副軸ロール11bとを接触させる。
【0033】
なお、コントローラCは、ステップs2において、主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触していれば、間隙調節モータM3を作動させて主軸ロール11aを摺動し、主軸ロール11aと副軸ロール11bとの間隔を開け、再度電流検出器25により脱ぷロール11cにおける負荷電流の電流値を確認する。
【0034】
次いで、コントローラCは、ステップs3において、主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触しているか否かを、電流値により判断し、例えば、無負荷電流値の110%の電流値が得られているならば、主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触したとして、主軸ロール11aと副軸ロール11bとの間隔を、所定の例えば1.0mm前後の適宜長さになるように、間隙調節モータM3を作動させて主軸ロール11aを摺動する。なお、主軸ロール11aと副軸ロール11bとの間隔は、上述の長さに限定されない。
【0035】
なお、コントローラCは、ステップs3において、上述した電流値が、例えば、無負荷電流値の110%よりも小さければ、主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触していないと判断して、間隙調節モータM3を作動させて主軸ロール11aを摺動し、主軸ロール11aと副軸ロール11bとを接触させ、再度電流検出器25により主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触しているか否かを、電流値により判断する。この主軸ロール11aと副軸ロール11bとの接触判断は、上述の電流値に限定されない。
【0036】
また、上述してきた脱ぷロール11cの初期制御の際、前のロッドで脱ぷロール11c上に残っていた穀粒が、この初期制御中に脱ぷされ、風選路12aで選別された粃などの中間穀粒は、粃出口14から排出され、前記粃還元装置を介して還元昇降機7aの穀粒入口7hまで移送される。このとき、還元昇降機7aの駆動は停止しているため、前記のように移送されてきた粃は、穀粒入口7hの貯留スペースs内に一時的に貯留される。
【0037】
このため、駆動が停止している還元昇降機7aの穀粒入口7hまで粃が移送されてきても、穀粒入口7hで中間穀粒が詰まることなく、脱ぷロール11cの初期制御終了に伴い、円滑に運転開始をすることができる。なお、穀粒入口7hの貯留スペースsの容積は、脱ぷロール11c上に残る穀粒が十分に入る程度とすることが好ましい。
【0038】
次いで、上述のように脱ぷロール11cの初期制御が終了すると、コントローラCは、前記シャッタ板を開くとともに、還元部7における駆動モータM2の前記テンションプーリなどを摺動させて駆動モータM2の駆動力をプーリ7eへ伝達して、還元部7の還元昇降機7aを駆動させ、籾摺選別装置1の運転を開始する。
【0039】
以上のような構成にすることで、籾摺選別装置1の電源を投入し、機体各部が駆動を始めるとともに、自動的に脱ぷロール11cの初期制御を行う際、還元部7における還元昇降機7aの駆動を停止させるため、開いている場合の前記シャッタ板が閉じられるまでの間、還元昇降機7aに残留する前のロッドの粃や返り籾が還元昇降機7aから脱ぷロール11c上に還元されることを防ぐことができる。その結果、脱ぷロール11cの初期制御時に、これら粃や返り籾が脱ぷロール11c上に還元されて介在することがなく、主軸ロール11aと副軸ロール11bとの間隙を電流検出器25により正確に検出することができる。
【0040】
また、還元昇降機7aの穀粒入口7hに、貯留スペースsを設けるため、前のロッドで脱ぷロール11c上に残っていた穀粒が、この初期制御中に脱ぷされ、風選路12aで選別された粃が、駆動を停止している還元昇降機7aの穀粒入口7hまで移送されてきても、この貯留スペースs内に一時的に貯留されることにより、穀粒入口7hで粃が詰まることなく、脱ぷロール11cの初期制御終了に伴い、円滑に運転開始をすることができる。
【0041】
なお、脱ぷロール11cの初期制御時に、上述した制御に加えて、揺動選別板18bの駆動も初期制御に連動させることができる。この場合、コントローラCは、上述した、前記電源が投入されたことにより、開状態であれば前記シャッタ板を閉じ、還元部7における駆動モータM2の前記テンションプーリなどを摺動させてプーリ7eへの駆動モータM2の駆動力伝達を遮断して、還元昇降機7aを駆動させないようにするとともに、揺動揺動選別板18bを駆動する不図示のモータ駆動を停止して、揺動選別板18bの作動を停止する。
【0042】
また、脱ぷロール11cの初期制御が終了すると、コントローラCは、前記シャッタ板を開け、還元昇降機7aを駆動させるとともに、揺動揺動選別板18bを駆動する前記モータを駆動して、揺動選別板18bを作動させる。
【0043】
このような構成にすることで、例えば、揺動選別板18b上に残留した前のロッドの穀粒が、脱ぷロール11cの初期制御中に揺動選別されず、返り籾が還元昇降機7aの返り籾入口部16aに移送されることがなく、この返り籾入口部16aで返り籾が詰まることなく、脱ぷロール11cの初期制御終了に伴い、円滑に運転開始をすることができる。併せて、脱ぷロール11cの初期制御が終了すると、揺動選別板18bが作動するため、揺動選別板18bの自動運転が可能となる。
【0044】
なお、脱ぷロール11cの初期制御は、主軸ロール11aの摺動に限定されず、副軸ロール11bのみ、もしくは両者を摺動させてもよく、また摺動手段も間隙調節モータM3に限定されず、脱ぷ圧シリンダなど適宜方法を用いることができる。
【0045】
以上詳述したように、この例の籾摺選別装置1は、原料穀粒を脱ぷロール11cで脱ぷする脱ぷ部11と、脱ぷ部11から得た混合穀粒を風選して中間穀粒および選別穀粒にし、中間穀粒を還元昇降機7a(搬送体)により脱ぷ部11に還元する還元部7と、選別穀粒をさらに選別する揺動選別部18と、を備えるとともに、脱ぷ部11は、脱ぷロール11cを駆動する駆動モータM1の負荷電流を検出する検出器25を備え、運転開始に伴う脱ぷロール11cの初期制御時に、検出器25による脱ぷロール11cの電流値から、脱ぷロール11cの間隙調節モータM3(摺動手段)により、脱ぷロール11cの間隙を設定する脱ぷロール間隙制御手段を備え、還元部7は、この還元部7を個別に駆動可能とする駆動モータM2を備えるとともに、駆動モータM2と、脱ぷロール間隙制御手段とを連係するものである。加えて、脱ぷロール間隙制御手段は、脱ぷロール11cの初期制御開始時に、還元部7の駆動を停止するとともに、脱ぷロール11cの初期制御終了時に、還元部7を駆動させ、還元昇降機7aは、この還元昇降機7aの穀粒入口7h近傍に中間穀粒の貯留スペースsを備える。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の籾摺選別装置の一例を示す左側面図である。
【図2】籾摺選別装置を左前方からみた斜視図である。
【図3】籾摺選別装置の平面図である。
【図4】籾摺選別装置内部の左側面模式図である。
【図5】還元部の内部構造を示した左側面模式図である。
【図6】還元部の下部を拡大して示した左側面の断面図である。
【図7】脱ぷ部の内部構造を示した左側面模式図である。
【図8】脱ぷ部の正面模式図である。
【図9】脱ぷロールの間隙調節を説明する上方から見た脱ぷ部内部の斜視図である。
【図10】脱ぷ部と還元部との連係を示すブロック図である。
【図11】脱ぷロールの初期制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
7 還元部
7a 還元昇降機
7b バケット
7h 穀粒入口
11 脱ぷ部
11a 主軸ロール
11b 副軸ロール
11c 脱ぷロール
25 検出器
C コントローラ
M1,M2 駆動モータ
M3 間隙調節モータ
s 貯留スペース
s1〜s3 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾摺選別装置に関し、より詳細には、還元部は、この還元部を個別に駆動可能とする駆動モータを備えるとともに、駆動モータと、脱ぷロール間隙制御手段とを連係する籾摺選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の籾摺選別装置は、ホッパの籾吐出口下方に連通させる籾摺ケース内に一対の脱ぷロールを有し、この脱ぷロールを駆動させる籾摺モータの負荷電流を検出する電流センサを備え、装置の運転開始時や、装置稼動中の一定時間ごとに前記電流センサにより検出した電流値に基づいて、コントローラが脱ぷ率モータを駆動させて脱ぷロールを接離調節し、脱ぷロールの間隙を制御して、装置の脱ぷ率を維持させるものがある(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−59357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した脱ぷロールの間隙制御は、作業により脱ぷロールが磨耗すると、脱ぷロールにかかる負荷が減り、脱ぷロールを駆動させる電流値が低くなる。そこで、この電流値を元の値になるように脱ぷ率モータなどの制御モータで、脱ぷロールの隙間を詰めることにより、脱ぷ率を一定に保つものである。しかし、このような従来の籾摺選別装置では、特に装置の運転開始時に脱ぷロールの初期制御を行うため、装置の電源が投入されたことで、連動する還元部も駆動するため、前の運転時にこの還元部に残留した、脱ぷロールで脱ぷ後、風選により得られた粃などの中間穀粒や、揺動選別部からの粃などの返り穀粒が、脱ぷロール上に還元されることにより、脱ぷロール上面に中間穀粒が介在するため、前記電流値が安定せず、脱ぷロールの間隙調整が不安定になるという問題があった。
そこで、この発明の目的は、脱ぷロールの初期制御を確実、かつ正確に行うことができる、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、原料穀粒を脱ぷロールで脱ぷする脱ぷ部と、前記脱ぷ部から得た混合穀粒を風選して中間穀粒および選別穀粒にし、前記中間穀粒を搬送体により前記脱ぷ部に還元する還元部と、前記選別穀粒をさらに選別する揺動選別部と、を備えるとともに、前記脱ぷ部は、前記脱ぷロールを駆動する駆動モータの負荷電流を検出する検出器を備え、運転開始に伴う前記脱ぷロールの初期制御時に、前記検出器による前記脱ぷロールの電流値から、前記脱ぷロールの摺動手段により、前記脱ぷロールの間隙を設定する脱ぷロール間隙制御手段を備える籾摺選別装置において、前記還元部は、該還元部を個別に駆動可能とする駆動モータを備えるとともに、前記駆動モータと、前記脱ぷロール間隙制御手段とを連係することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の籾摺選別装置において、前記脱ぷロール間隙制御手段は、前記脱ぷロールの初期制御開始時に、前記還元部の駆動を停止するとともに、前記脱ぷロールの初期制御終了時に、前記還元部を駆動させることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の籾摺選別装置において、前記搬送体は、該搬送体の穀粒入口近傍に前記中間穀粒の貯留スペースを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、原料穀粒を脱ぷロールで脱ぷする脱ぷ部と、脱ぷ部から得た混合穀粒を風選して中間穀粒および選別穀粒にし、中間穀粒を搬送体により脱ぷ部に還元する還元部と、選別穀粒をさらに選別する揺動選別部と、を備えるとともに、脱ぷ部は、脱ぷロールを駆動する駆動モータの負荷電流を検出する検出器を備え、運転開始に伴う脱ぷロールの初期制御時に、検出器による脱ぷロールの電流値から、脱ぷロールの摺動手段により、脱ぷロールの間隙を設定する脱ぷロール間隙制御手段を備える籾摺選別装置において、還元部は、この還元部を個別に駆動可能とする駆動モータを備えるとともに、駆動モータと、脱ぷロール間隙制御手段とを連係するので、装置の電源投入に伴い装置各部が駆動する場合において、脱ぷロールの初期制御の間、還元昇降機の駆動を停止することができ、脱ぷロールの初期制御を円滑、かつ正確に行うことができる。従って、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、脱ぷロール間隙制御手段は、前記脱ぷロールの初期制御開始時に、前記還元部の駆動を停止するとともに、前記脱ぷロールの初期制御終了時に、前記還元部を駆動させるので、脱ぷロールの初期制御の間、還元昇降機からの中間穀粒などが脱ぷロール上に還元されることなく、検出器が脱ぷロールの間隙を正確に検出し、脱ぷロールの初期制御を円滑、かつ確実に行うことができる。従って、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、搬送体は、この搬送体の穀粒入口近傍に中間穀粒の貯留スペースを備えるので、駆動が停止している還元昇降機の穀粒入口まで移送されきた中間穀粒が、この穀粒入口で詰まることなく、脱ぷロールの初期制御終了に伴い、円滑に装置の運転開始をすることができる。従って、作業性を向上させた籾摺選別装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例としての籾摺選別装置の左側面図、図2は籾摺選別装置を左前方からみた斜視図、図3は籾摺選別装置の平面図、図4は籾摺選別装置内部の左側面模式図である。
【0012】
この例の籾摺選別装置1は、図1〜図3に示すように、機体上部中央にホッパ2と、このホッパ2の側面視背面には、混合米揚穀機3と混合米タンク4が連設される。さらに機体前端には、籾殻排出筒5および機体後端に玄米揚穀機6が備えられ、玄米揚穀機6の上部後端に仕上米出口9が設けられている。また、機体中央の左側部には、搬送体としての還元昇降機7aが設けられる。
【0013】
そして、図4に示すように、主軸ロール11aと副軸ロール11bとからなる脱ぷロール11cを有する脱ぷ部11の下方には、脱ぷロール11cで籾摺され、得られた粃や玄米などの混合米(混合穀粒)が通過する風選路12aを有する風選部12が配設される。この脱ぷロール11c下方であって、風選路12a終端下部の機体前部(側面視左端)には、混合米に吸引作用する吸引ファン13、この吸引ファン13の後部(側面視右隣)であって、脱ぷロール11cの下方には、風選路12aから混合米中の小米を含む粃などの中間穀粒が落下する粃排出樋14、さらに粃排出樋14の後方には、混合米中の籾や玄米などの選別穀粒が落下する混合米受樋15などが列設される。
【0014】
混合米受樋15に落下した籾や玄米を搬送する図示しない螺旋の搬送終端側は、側面視機体背面側に立設され、複数のバケット3aを備える混合米揚穀機3に連通し、この混合米揚穀機3の揚穀終端側は混合米タンク4に連通されている。
【0015】
さらに、混合米タンク4の下方には、混合米を搬送する均分樋17を有し、この均分樋17の下方には揺動選別部18が備えられる。なお、図1〜2では、機体内部に備える揺動選別板18bが見えるように、機体左側部のカバー24が開蓋されている。この揺動選別部18は、均分樋17の搬送終端側に複数の流路からなる分配ケース18aと、分配ケース18aの側方に有し、多段からなる揺動選別板18bと、揺動選別板18bの前部および中央部にそれぞれ配設される籾仕切板18c、玄米仕切板18dなどから構成される。
【0016】
揺動選別部18の下方には、選別部18の前部から順に籾用流路19、混合米用流路20、玄米用流路21がそれぞれ配設される。そして、籾用流路19の終端に有する返り籾入口部16aが、返り籾出口部16bを介して側面視手前に備えられる図4に示す複数のバケット7bを備える、還元部7の搬送体としての還元昇降機7aに連通され、この還元昇降機7aの上部は、ホッパ2に連通される。また、混合米用流路20と玄米用流路21の間には玄米の機内循環と機外排出とを切り替える切替弁22が設けられる。そして、機体後端には玄米用流路21が下部に連設され、複数のバケット6aを備える玄米揚穀機6が立設される。なお、各ベルトに取付けられたバケット3a,6aなどは、それぞれ図示しない駆動モータにより回転するプーリで上下方向に循環される。
【0017】
また、符号23は、籾摺選別装置1を運転操作する操作盤で、装置各部を駆動制御する、後述のコントローラCを内臓することができる。
【0018】
ここで、籾摺選別装置1を使用して籾摺作業を行うときは、ホッパ2に原料穀粒として籾を供給し、操作盤23の図示しない電源を投入することにより機体各部を駆動させ、ホッパ2底部に有する不図示のシャッタ板を開いて、脱ぷロール11cに供給された籾が籾摺された後、落下した混合米は風選路12aで風選され、最も軽い籾殻は吸引ファン13により吸引され、籾殻排出筒5を介して機外に排出される。なお、前記シャッタ板は後述するコントローラCに接続された電磁式などにより自動開閉できるとともに、手動でも開閉可能とされる。
【0019】
そして、風選路12aで風選された比較的軽い小米を含む粃は、粃排出樋14から排出される。一方、重量の重い玄米と籾摺を損ねた籾との混合米は受樋15に落下し、混合米昇降機3のバケット3aで揚穀されて混合米タンク4に供給された後、均分樋17および分配ケース18aを介して揺動選別板18bに供給される。なお、粃排出樋14から排出された粃を、図示しないベルトコンベア式などの粃還元装置を介して還元昇降機7a内に移送し、バケット7bによりホッパ2に還元することができる。
【0020】
次いで、混合米は、揺動選別板18bでの揺動により、小さく比重の重い玄米は揺上側に、また玄米よりも大きく比重の軽い籾は揺下側に、さらに中間部分には分離されない籾と玄米とがそれぞれ偏流分布しながら選別される。
【0021】
揺動選別板18bで選別された玄米などの穀粒は、籾仕切板18cと玄米仕切板18dで仕切られ、揺動選別板18bより排出される。このとき、切替弁22は揺動選別板18b上での穀粒の偏流分布が不安定な際、混合米用流路20と玄米用流路21との間を連通させて、混合米と玄米を再度受樋15に流入させるようにするが、揺動選別板18b上での穀粒の偏流分布が安定すると、混合米用流路20と玄米用流路21との間を遮断させるように切り替えられる。
【0022】
その結果、混合米が混合米用流路20に落下し、受樋15を介して再度選別部18に搬送され、玄米は玄米用流路21から玄米揚穀機6を介して仕上米出口9から機外に取り出される。また、返り穀粒である返り籾は、籾用流路19から流入した返り籾入口部16aを介して返り籾出口部16bから還元昇降機7aによりホッパ2に還元され、再度籾摺される。
【0023】
次に、本願発明の特徴である、脱ぷロール間隙制御手段について、その具体的構成を説明する。図5は還元部の内部構造を示した左側面模式図、図6は還元部の下部を拡大して示した左側面の断面図、図7は脱ぷ部の内部構造を示した左側面模式図、図8は脱ぷ部の正面模式図、図9は脱ぷロールの間隙調節を説明する上方から見た脱ぷ部内部の斜視図、図10は脱ぷ部と還元部との連係を示すブロック図、図11は脱ぷロールの初期制御のフローチャートである。
【0024】
上述した還元部7としての一例を示す搬送体としての還元昇降機7aを詳述すると、図5にも示すように、還元昇降機7aは、前後板7cおよび左右側板7dにより形成され、内部の上部と下部には、左右方向に配設されたそれぞれの軸心にプーリ7e,7fが設けられ、このプーリ7e,7fに無端状のベルト7gが巻装される。また、このベルト7gには適宜間隔を開けて、上開き側面視略U字型など複数のバケット7bが取り付けられる。なお、搬送体は、上述したバケット式の還元昇降機に限定されず、スロワーなどを用いてもよい。
【0025】
そして、還元昇降機7aの上部に設けられた、還元昇降機7aの駆動のみに用いられる駆動モータM2により、プーリ7eと同軸に設けられた不図示のプーリが回転され、還元昇降機7aの下部に備えられた中間穀粒の穀粒入口7hから還元昇降機7aの上部に備えられた穀粒出口7iの上下間をベルト7gに沿ってバケット7bが周回される。また、図示しないが、この駆動モータM2と、プーリ7eとの間は、周知技術であるテンションプーリを備えるベルトクラッチを用いて、駆動モータM2の駆動からプーリ7eの駆動を入切することができる。そして、駆動モータM2の、例えば前記したテンションプーリは、図9に示すように、コントローラCに接続される。なお、駆動モータM2からプーリ7eへの動力伝達の入切は、上記ベルトクラッチなどのほか、直接駆動モータM2の駆動を入切させるなど、その方法は限定されない。
【0026】
また、この還元昇降機7aの穀粒入口7hには、例えば、機体下方に膨出させた貯留スペースsが設けられる。
【0027】
次に、上述した脱ぷ部11を詳述すると、図7〜8に示すように、脱ぷ部11は、ゴムロール11abを軸装し、固定側の主軸11aaからなる主軸ロール11aと,ゴムロール11bbを軸装し、移動側の副軸11baからなる副軸ロール11bとから構成され、主軸11aaは、駆動プーリ11acに巻回された駆動モータM1の駆動ベルトB1によって高速回転(副軸11baの回転に比べて)される。一方、主軸11aaの駆動プーリ11acに巻回され、プーリP1,P2を介して、副軸11baの駆動プーリ11bcに主軸11aaとは反対向きに巻回されてなる一連の六角ベルトB2により、副軸11baは、モータM1の駆動力を主軸11aaの回転駆動力で低下させた低速回転(主軸11aaの回転に比べて)にするとともに、主軸11aaとは対向回転にし、籾などの原料穀粒を脱ぷロール11のゴムロール11ab,11bb上に落下させて、これらゴムロール11ab,11bbの周面速度の差による摺動作用で籾が脱ぷされる。
【0028】
この際、図9に示すように、一方のロール(例えば主軸ロール11a)の主軸11aaに連結した不図示の間隙調節リンクの上端部が、間隙調節シャフト31の一側部に、軸受部材32などを介して連結されるとともに、この間隙調節シャフト31の他側部が、脱ぷ部ケースcの前端部に取付けられた間隙調節モータM3に不図示のギアなどを介して連結され、間隙調節モータM3の正逆回転により、間隙調節シャフト31および前記間隙調節リンクなどを介して主軸ロール11aを機体前後方向に回動させ、相対する主軸11aaのゴムロール11abと、副軸11baのゴムロール11bbとの間隙を遠近させてロール圧を変化させることができ、所望する調製条件による籾摺作業が可能となる。また、間隙調節シャフト31の間隙調節モータM3側近傍には、ハンドル33が設けられており、このハンドル33の回動操作により、主軸11aaのゴムロール11abと、副軸11baのゴムロール11bbとの間隙を手動でも調節可能としている。そして、間隙調節モータM3は、図9に示すように、コントローラCに接続される。なお、図9は、主軸ロール11aおよび副軸ロール11bの回転駆動させる駆動モータM1などの駆動機構の記載を省略して記したものである。また、上述した主軸11aaのゴムロール11abと、副軸11baのゴムロール11bbとの間隙調節は、例えば、特開昭63−59357などに記すような周知技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0029】
また、脱ぷ部11内における脱ぷロール11cを駆動させる図示しない電気回路内などの適宜位置には、脱ぷロール11cの負荷電流を検出する変流器などの電流検出器25が設けられる。そして、この電流検出器25は、図10に示すように、コントローラCに接続される。
【0030】
ここで、籾摺選別装置1を駆動させるために、操作盤23の前記電源を投入すると、機体各部が駆動を始めるとともに、自動的に脱ぷロール11cの初期制御が開始される。そこで、図11を用いて脱ぷロール間隙制御手段を説明する。
【0031】
まず、コントローラCは、ステップs1において、前記電源が投入されたことにより、開状態であれば前記シャッタ板を閉じるとともに、還元部7における駆動モータM2の前記テンションプーリなどを摺動させてプーリ7eへの駆動モータM2の駆動力伝達を遮断して、還元部7の還元昇降機7aを駆動させないようにする。
【0032】
次いで、コントローラCは、電流検出器25が検出した脱ぷロール11cの、サンプリングした負荷電流の電流値に基づいて、ステップs2において、脱ぷロール11cの主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触していなければ、間隙調節モータM3を作動させて主軸ロール11aを摺動し、主軸ロール11aと副軸ロール11bとを接触させる。
【0033】
なお、コントローラCは、ステップs2において、主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触していれば、間隙調節モータM3を作動させて主軸ロール11aを摺動し、主軸ロール11aと副軸ロール11bとの間隔を開け、再度電流検出器25により脱ぷロール11cにおける負荷電流の電流値を確認する。
【0034】
次いで、コントローラCは、ステップs3において、主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触しているか否かを、電流値により判断し、例えば、無負荷電流値の110%の電流値が得られているならば、主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触したとして、主軸ロール11aと副軸ロール11bとの間隔を、所定の例えば1.0mm前後の適宜長さになるように、間隙調節モータM3を作動させて主軸ロール11aを摺動する。なお、主軸ロール11aと副軸ロール11bとの間隔は、上述の長さに限定されない。
【0035】
なお、コントローラCは、ステップs3において、上述した電流値が、例えば、無負荷電流値の110%よりも小さければ、主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触していないと判断して、間隙調節モータM3を作動させて主軸ロール11aを摺動し、主軸ロール11aと副軸ロール11bとを接触させ、再度電流検出器25により主軸ロール11aと副軸ロール11bとが接触しているか否かを、電流値により判断する。この主軸ロール11aと副軸ロール11bとの接触判断は、上述の電流値に限定されない。
【0036】
また、上述してきた脱ぷロール11cの初期制御の際、前のロッドで脱ぷロール11c上に残っていた穀粒が、この初期制御中に脱ぷされ、風選路12aで選別された粃などの中間穀粒は、粃出口14から排出され、前記粃還元装置を介して還元昇降機7aの穀粒入口7hまで移送される。このとき、還元昇降機7aの駆動は停止しているため、前記のように移送されてきた粃は、穀粒入口7hの貯留スペースs内に一時的に貯留される。
【0037】
このため、駆動が停止している還元昇降機7aの穀粒入口7hまで粃が移送されてきても、穀粒入口7hで中間穀粒が詰まることなく、脱ぷロール11cの初期制御終了に伴い、円滑に運転開始をすることができる。なお、穀粒入口7hの貯留スペースsの容積は、脱ぷロール11c上に残る穀粒が十分に入る程度とすることが好ましい。
【0038】
次いで、上述のように脱ぷロール11cの初期制御が終了すると、コントローラCは、前記シャッタ板を開くとともに、還元部7における駆動モータM2の前記テンションプーリなどを摺動させて駆動モータM2の駆動力をプーリ7eへ伝達して、還元部7の還元昇降機7aを駆動させ、籾摺選別装置1の運転を開始する。
【0039】
以上のような構成にすることで、籾摺選別装置1の電源を投入し、機体各部が駆動を始めるとともに、自動的に脱ぷロール11cの初期制御を行う際、還元部7における還元昇降機7aの駆動を停止させるため、開いている場合の前記シャッタ板が閉じられるまでの間、還元昇降機7aに残留する前のロッドの粃や返り籾が還元昇降機7aから脱ぷロール11c上に還元されることを防ぐことができる。その結果、脱ぷロール11cの初期制御時に、これら粃や返り籾が脱ぷロール11c上に還元されて介在することがなく、主軸ロール11aと副軸ロール11bとの間隙を電流検出器25により正確に検出することができる。
【0040】
また、還元昇降機7aの穀粒入口7hに、貯留スペースsを設けるため、前のロッドで脱ぷロール11c上に残っていた穀粒が、この初期制御中に脱ぷされ、風選路12aで選別された粃が、駆動を停止している還元昇降機7aの穀粒入口7hまで移送されてきても、この貯留スペースs内に一時的に貯留されることにより、穀粒入口7hで粃が詰まることなく、脱ぷロール11cの初期制御終了に伴い、円滑に運転開始をすることができる。
【0041】
なお、脱ぷロール11cの初期制御時に、上述した制御に加えて、揺動選別板18bの駆動も初期制御に連動させることができる。この場合、コントローラCは、上述した、前記電源が投入されたことにより、開状態であれば前記シャッタ板を閉じ、還元部7における駆動モータM2の前記テンションプーリなどを摺動させてプーリ7eへの駆動モータM2の駆動力伝達を遮断して、還元昇降機7aを駆動させないようにするとともに、揺動揺動選別板18bを駆動する不図示のモータ駆動を停止して、揺動選別板18bの作動を停止する。
【0042】
また、脱ぷロール11cの初期制御が終了すると、コントローラCは、前記シャッタ板を開け、還元昇降機7aを駆動させるとともに、揺動揺動選別板18bを駆動する前記モータを駆動して、揺動選別板18bを作動させる。
【0043】
このような構成にすることで、例えば、揺動選別板18b上に残留した前のロッドの穀粒が、脱ぷロール11cの初期制御中に揺動選別されず、返り籾が還元昇降機7aの返り籾入口部16aに移送されることがなく、この返り籾入口部16aで返り籾が詰まることなく、脱ぷロール11cの初期制御終了に伴い、円滑に運転開始をすることができる。併せて、脱ぷロール11cの初期制御が終了すると、揺動選別板18bが作動するため、揺動選別板18bの自動運転が可能となる。
【0044】
なお、脱ぷロール11cの初期制御は、主軸ロール11aの摺動に限定されず、副軸ロール11bのみ、もしくは両者を摺動させてもよく、また摺動手段も間隙調節モータM3に限定されず、脱ぷ圧シリンダなど適宜方法を用いることができる。
【0045】
以上詳述したように、この例の籾摺選別装置1は、原料穀粒を脱ぷロール11cで脱ぷする脱ぷ部11と、脱ぷ部11から得た混合穀粒を風選して中間穀粒および選別穀粒にし、中間穀粒を還元昇降機7a(搬送体)により脱ぷ部11に還元する還元部7と、選別穀粒をさらに選別する揺動選別部18と、を備えるとともに、脱ぷ部11は、脱ぷロール11cを駆動する駆動モータM1の負荷電流を検出する検出器25を備え、運転開始に伴う脱ぷロール11cの初期制御時に、検出器25による脱ぷロール11cの電流値から、脱ぷロール11cの間隙調節モータM3(摺動手段)により、脱ぷロール11cの間隙を設定する脱ぷロール間隙制御手段を備え、還元部7は、この還元部7を個別に駆動可能とする駆動モータM2を備えるとともに、駆動モータM2と、脱ぷロール間隙制御手段とを連係するものである。加えて、脱ぷロール間隙制御手段は、脱ぷロール11cの初期制御開始時に、還元部7の駆動を停止するとともに、脱ぷロール11cの初期制御終了時に、還元部7を駆動させ、還元昇降機7aは、この還元昇降機7aの穀粒入口7h近傍に中間穀粒の貯留スペースsを備える。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の籾摺選別装置の一例を示す左側面図である。
【図2】籾摺選別装置を左前方からみた斜視図である。
【図3】籾摺選別装置の平面図である。
【図4】籾摺選別装置内部の左側面模式図である。
【図5】還元部の内部構造を示した左側面模式図である。
【図6】還元部の下部を拡大して示した左側面の断面図である。
【図7】脱ぷ部の内部構造を示した左側面模式図である。
【図8】脱ぷ部の正面模式図である。
【図9】脱ぷロールの間隙調節を説明する上方から見た脱ぷ部内部の斜視図である。
【図10】脱ぷ部と還元部との連係を示すブロック図である。
【図11】脱ぷロールの初期制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
7 還元部
7a 還元昇降機
7b バケット
7h 穀粒入口
11 脱ぷ部
11a 主軸ロール
11b 副軸ロール
11c 脱ぷロール
25 検出器
C コントローラ
M1,M2 駆動モータ
M3 間隙調節モータ
s 貯留スペース
s1〜s3 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料穀粒を脱ぷロールで脱ぷする脱ぷ部と、前記脱ぷ部から得た混合穀粒を風選して中間穀粒および選別穀粒にし、前記中間穀粒を搬送体により前記脱ぷ部に還元する還元部と、前記選別穀粒をさらに選別する揺動選別部と、を備えるとともに、前記脱ぷ部は、前記脱ぷロールを駆動する駆動モータの負荷電流を検出する検出器を備え、運転開始に伴う前記脱ぷロールの初期制御時に、前記検出器による前記脱ぷロールの電流値から、前記脱ぷロールの摺動手段により、前記脱ぷロールの間隙を設定する脱ぷロール間隙制御手段を備える籾摺選別装置において、
前記還元部は、該還元部を個別に駆動可能とする駆動モータを備えるとともに、前記駆動モータと、前記脱ぷロール間隙制御手段とを連係することを特徴とする籾摺選別装置。
【請求項2】
前記脱ぷロール間隙制御手段は、前記脱ぷロールの初期制御開始時に、前記還元部の駆動を停止するとともに、前記脱ぷロールの初期制御終了時に、前記還元部を駆動させることを特徴とする、請求項1に記載の籾摺選別装置。
【請求項3】
前記搬送体は、該搬送体の穀粒入口近傍に、前記中間穀粒の貯留スペースを備えることを特徴とする、請求項1に記載の籾摺選別装置。
【請求項1】
原料穀粒を脱ぷロールで脱ぷする脱ぷ部と、前記脱ぷ部から得た混合穀粒を風選して中間穀粒および選別穀粒にし、前記中間穀粒を搬送体により前記脱ぷ部に還元する還元部と、前記選別穀粒をさらに選別する揺動選別部と、を備えるとともに、前記脱ぷ部は、前記脱ぷロールを駆動する駆動モータの負荷電流を検出する検出器を備え、運転開始に伴う前記脱ぷロールの初期制御時に、前記検出器による前記脱ぷロールの電流値から、前記脱ぷロールの摺動手段により、前記脱ぷロールの間隙を設定する脱ぷロール間隙制御手段を備える籾摺選別装置において、
前記還元部は、該還元部を個別に駆動可能とする駆動モータを備えるとともに、前記駆動モータと、前記脱ぷロール間隙制御手段とを連係することを特徴とする籾摺選別装置。
【請求項2】
前記脱ぷロール間隙制御手段は、前記脱ぷロールの初期制御開始時に、前記還元部の駆動を停止するとともに、前記脱ぷロールの初期制御終了時に、前記還元部を駆動させることを特徴とする、請求項1に記載の籾摺選別装置。
【請求項3】
前記搬送体は、該搬送体の穀粒入口近傍に、前記中間穀粒の貯留スペースを備えることを特徴とする、請求項1に記載の籾摺選別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−274052(P2009−274052A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130748(P2008−130748)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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