説明

糖操作酵母ピチア・パストリスにおけるガラクトース同化経路の代謝操作

ガラクトースを炭素源として通常は利用し得ないが、ガラクトースを唯一の炭素源として利用するように本発明における方法に従い遺伝的に操作されている下等真核細胞、例えばピチア・パストリス(Pichia pastoris)を記載する。該細胞は、ルロアール経路を構成する酵素の幾つかを発現するように遺伝的に操作される。特に、該細胞は、ガラクトキナーゼ、UDP−ガラクトース−C4−エピメラーゼおよびガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼおよび場合によってはガラクトースパーミアーゼを発現するように遺伝的に操作される。また、ガラクトース残基を有するN−グリカンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作されている、ルロアール経路を構成する酵素を通常は欠く細胞において、ガラクトース末端N−グリカンまたはガラクトース含有N−グリカンを有する糖タンパク質の収率を改善するための方法を提供する。該方法は、ガラクトキナーゼ、UDP−ガラクトース−C4−エピメラーゼおよびガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコードする1以上の核酸分子で該細胞を形質転換することを含む。記載されている方法および宿主細胞は、組換え細胞の製造のための選択方法として、ガラクトースを同化する能力の存在または欠如を可能にする。該方法および宿主細胞は、ガラクトース末端N−グリカンまたはガラクトース含有N−グリカンを有する免疫グロブリンなどを製造するのに特に有用であることが本明細書に示されている。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトキナーゼ活性、UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ活性、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性および場合によってはガラクトースパーミアーゼ活性を発現するように遺伝的に操作されており、唯一の炭素エネルギー源としてガラクトースを利用しうるピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞。
【請求項2】
該宿主細胞が、ガラクトース残基を含むハイブリッドまたは複合N−グリカンを有する組換え糖タンパク質を産生しうるように更に遺伝的に操作されている、請求項1記載の宿主細胞。
【請求項3】
該UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ活性が、ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒ドメインとUDP−ガラクトース−4−エピメラーゼの触媒ドメインとを含む融合タンパク質において得られる、請求項2記載の宿主細胞。
【請求項4】
該宿主細胞が、G0:G1/G2比が2:1未満である複合N−グリカンを有する糖タンパク質を産生しうる、請求項2記載の宿主細胞。
【請求項5】
該宿主細胞が、GalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるN−グリカンを主に有する糖タンパク質を産生する、請求項2記載の宿主細胞。
【請求項6】
該N−グリカンが、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAcおよびGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるガラクトース末端N−グリカンである、請求項2記載の宿主細胞。
【請求項7】
該N−グリカンがガラクトース末端ハイブリッドN−グリカンである、請求項2記載の宿主細胞。
【請求項8】
該N−グリカンが、NANAGalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるシアル酸化N−グリカンである、請求項2記載の宿主細胞。
【請求項9】
該組換え糖タンパク質が、エリスロポエチン(EPO);サイトカイン、例えばインターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγおよびインターフェロンω;ならびに顆粒球−コロニー刺激因子(GCSF);GM−CSF;凝固因子、例えば因子VIII、因子IXおよびヒトプロテインC;アンチトロンビンIII;トロンビン;可溶性IgE受容体α鎖;免疫グロブリン、例えばIgG、IgGフラグメント、IgG融合体およびIgM;免疫接着物質および他のFc融合タンパク質、例えば可溶性TNF受容体−Fc融合タンパク質;RAGE−Fc融合タンパク質;インターロイキン;ウロキナーゼ;キマーゼ;および尿素トリプシンインヒビター;IGF結合性タンパク質;上皮増殖因子;成長ホルモン放出因子;アネキシンV融合タンパク質;アンジオスタチン;血管内皮増殖因子−2;骨髄前駆体抑制因子−1;オステオプロテジェリン;α−1−アンチトリプシン;α−フェトプロテイン;DNアーゼII;ヒトプラスミノーゲンのクリングル3;グルコセレブロシダーゼ;TNF結合タンパク質1;濾胞刺激ホルモン;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4−Ig;膜貫通アクチベーターおよびカルシウムモジュレーターおよびシクロフィリンリガンド;グルカゴン様タンパク質1;ならびにIL−2受容体アゴニストからなる群から選択される、請求項2記載の宿主細胞。
【請求項10】
a)(i)ガラクトース残基を含むハイブリッドまたは複合N−グリカンを有する組換え糖タンパク質を宿主細胞が産生することを可能にするグリコシル化経路、
(ii)ガラクトキナーゼ活性、UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ活性、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性および場合によってはガラクトースパーミアーゼ活性、ならびに
(iii)組換え糖タンパク質
を発現するように遺伝的に操作されている組換え宿主細胞を準備し、
b)ガラクトースを含有する培地内で該宿主細胞を培養して、ガラクトース残基を有する1以上のN−グリカンを有する組換え糖タンパク質を産生させることを含む、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主における、ガラクトース残基を有するN−グリカンを有する組換え糖タンパク質の製造方法。
【請求項11】
該UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ活性が、ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒ドメインとUDP−ガラクトース−4−エピメラーゼの触媒ドメインとを含む融合タンパク質において得られる、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
該N−グリカンのG0:G1/G2比が2:1未満である、請求項10記載の製造方法。
【請求項13】
該組換え糖タンパク質が、GalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるN−グリカンを主に有する、請求項10記載の製造方法。
【請求項14】
該N−グリカンが、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAcおよびGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるガラクトース末端N−グリカンである、請求項10記載の製造方法。
【請求項15】
該N−グリカンがガラクトース末端ハイブリッドN−グリカンである、請求項10記載の製造方法。
【請求項16】
該N−グリカンが、NANAGalGlcNAcManGlcNAc、NANAGalGlcNAcManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるシアル酸化N−グリカンである、請求項10記載の製造方法。
【請求項17】
該組換え糖タンパク質が、エリスロポエチン(EPO);サイトカイン、例えばインターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγおよびインターフェロンω;ならびに顆粒球−コロニー刺激因子(GCSF);GM−CSF;凝固因子、例えば因子VIII、因子IXおよびヒトプロテインC;アンチトロンビンIII;トロンビン;可溶性IgE受容体α鎖;免疫グロブリン、例えばIgG、IgGフラグメント、IgG融合体およびIgM;免疫接着物質および他のFc融合タンパク質、例えば可溶性TNF受容体−Fc融合タンパク質;RAGE−Fc融合タンパク質;インターロイキン;ウロキナーゼ;キマーゼ;および尿素トリプシンインヒビター;IGF結合性タンパク質;上皮増殖因子;成長ホルモン放出因子;アネキシンV融合タンパク質;アンジオスタチン;血管内皮増殖因子−2;骨髄前駆体抑制因子−1;オステオプロテジェリン;α−1−アンチトリプシン;α−フェトプロテイン;DNアーゼII;ヒトプラスミノーゲンのクリングル3;グルコセレブロシダーゼ;TNF結合タンパク質1;濾胞刺激ホルモン;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4−Ig;膜貫通アクチベーターおよびカルシウムモジュレーターおよびシクロフィリンリガンド;グルカゴン様タンパク質1;ならびにIL−2受容体アゴニストからなる群から選択される、請求項10記載の製造方法。
【請求項18】
異種タンパク質を発現する組換えピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞の製造方法であって、
(a)ガラクトキナーゼ活性、UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ活性およびガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性からなる群から選択される1つ又は2つの酵素活性を発現するように遺伝的に操作されている宿主細胞を準備し、
(b)該異種タンパク質、および工程(a)の宿主細胞において発現されない、工程(a)における群からの酵素をコードする1以上の核酸分子で該宿主細胞を形質転換し、
(c)ガラクトースを唯一の炭素源として含有する培地内で該宿主細胞を培養して、異種タンパク質を発現する組換えピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞を得ることを含む、製造方法。
【請求項19】
該宿主細胞を、ガラクトースパーミアーゼを発現するように更に遺伝的に操作する、請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
該宿主細胞を、ガラクトースを含む1以上のN−グリカンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に修飾する、請求項18記載の製造方法。
【請求項21】
a)ピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞を準備し、
b)ガラクトキナーゼ活性、UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ活性、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性および場合によってはガラクトースパーミアーゼ活性をコードする1以上の核酸分子で該宿主細胞を形質転換し、
c)ガラクトースを唯一の炭素源として含有する培地上で該形質転換宿主細胞を培養し、
d)ガラクトースを唯一の炭素源として含有する培地上で増殖しうる宿主細胞を選択することを含む、ガラクトースを唯一の炭素源として利用しうるピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞を製造し選択する方法。
【請求項22】
G0:G1/G2グリコフォームの比が2:1未満である組換え糖タンパク質を医薬上許容される担体中に含む組成物。
【請求項23】
該糖タンパク質が、抗Her2抗体、抗RSV(呼吸器合胞体ウイルス)抗体、抗TNFα抗体、抗VEGF抗体、抗CD3受容体抗体、抗CD41 7E3抗体、抗CD25抗体、抗CD52抗体、抗CD33抗体、抗IgE抗体、抗CD11a抗体、抗EGF受容体抗体および抗CD20抗体ならびにそれらの変異体からなる群から選択される抗体である、請求項22記載の糖タンパク質組成物。
【請求項24】
該糖タンパク質がFc融合タンパク質である、請求項22記載の糖タンパク質組成物。
【請求項25】
該Fc融合タンパク質がエタネルセプト(etanercept)である、請求項24記載の糖タンパク質組成物。
【請求項26】
組換えピチア・パストリス(Pichia pastoris)株YDX477の遺伝子型と同じ遺伝子型を有する組換えピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図13−4】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−518419(P2012−518419A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551308(P2011−551308)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025163
【国際公開番号】WO2010/099153
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】