説明

系統連系装置

【課題】
スイッチ素子のON抵抗を利用して、ブリッジ回路の入力側に接続されるコンデンサの電荷を放電する際に、スイッチ素子に係る負担を軽減することができる系統連系装置を提供する。
【解決手段】
インバータ回路10から交流電力の出力が遮断され、かつ直流電源1から出力される直流電力が所定値以下の際に、ブリッジ回路5から出力される交流電力を、帰還回路を介してコンデンサ3a、3bに戻すことを特徴とする系統連係装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、燃料電池、或いは蓄電池等の直流電源から出力される直流電力を交流電力に変換して、この交流電力を商用電力系統へ重畳する系統連系装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽電池、燃料電池、或いは蓄電池等の直流電力を交流電力に変換し、系統連系用リレーを介して商用電力系統へ連系する系統連系装置が提供されている。
【0003】
系統連系装置は、直流電源の出力する直流電圧を昇圧する昇圧回路、昇圧回路の出力電力を交流電力に変換するインバータ回路、フィルタ回路と商用系統との間に接続された系統連系用リレー、マイクロコンピュータからなり昇圧回路やインバータ回路の各スイッチ素子及び系統連系用リレーに開閉信号を与える制御回路で構成される。
【0004】
インバータ回路は、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とを直列に接続したアーム回路を2列並列に直流電源間に接続したブリッジ回路と、ブリッジ回路の入力側に接続されかつ直流電源間に接続されるコンデンサと、ブリッジ回路から出力される交流電力が通過するフィルタ回路と、を有している。
【0005】
インバータ回路の有するコンデンサには、大容量(3000〜5000μF程度)の電解コンデンサ等が用いられることになるため、系統連系装置が連系動作を行った後に、インバータ回路から交流電力の出力が遮断されると、このコンデンサに多くの電荷が残ることになる。このコンデンサに残った電荷をすべて自然放電するには半日程度かかるため、系統連系装置のメンテナンスを安全に行うためには長時間待つ必要があった。
【0006】
このため、従来より、系統連系装置が連系動作を行った後に、インバータ回路から交流電力の出力が遮断された後に、このコンデンサを放電するための技術が提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の系統連系装置は、ブリッジ回路を構成するスイッチ素子を解列時(系統連系用リレーをOFF後に)に全て閉じることにより、コンデンサの電荷をスイッチ素子のON抵抗により消費している(コンデンサを放電する)。
【特許文献1】特開平7−20956
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の系統連系装置においては、インバータ回路を構成するスイッチ素子を全て閉じるため、コンデンサの両端がショートし、スイッチ素子に大きな直流電流が流れ続けることになり、スイッチ素子に負担がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は上述の問題に鑑みて成された発明であり、スイッチ素子のON抵抗を利用してブリッジ回路の入力側に接続されるコンデンサを放電する際に、スイッチ素子にかかる負担を軽減することができる系統連系装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とを直列に接続したアーム回路を少なくとも2列並列に直流電源間に接続したブリッジ回路の夫々のスイッチング素子を周期的に開閉して直前記流電源から出力された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路において、前記インバータ回路は前記ブリッジ回路の入力側に接続されかつ前記直流電源間に接続されるコンデンサと、前記ブリッジ回路から出力される交流電力が通過するフィルタ回路と、当該フィルタ回路から前記交流電力の一部を前記コンデンサへ帰還可能に構成する帰還回路とを備え、前記インバータ回路から前記交流電力の出力が遮断されかつ前記直流電源から出力される直流電圧が所定値以下の際に前記ブリッジ回路から出力される交流電力を前記帰還回路を介して前記コンデンサに戻すことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、インバータ回路から交流電力の出力が遮断されかつ直流電源から出力される直流電力が所定値以下の際にブリッジ回路から出力される交流電力を、帰還回路を介してコンデンサに戻している。これにより、コンデンサの電荷が帰還回路を介してコンデンサに戻る際に、ブリッジ回路、フィルタ回路を通して消費される。このため、スイッチ素子だけの閉ループの場合に比べて、フィルタ回路の分インピーダンスが増えるため、スイッチ素子に流れる電流が減り、スイッチ素子にかかる負担を軽減することができる。また、各アームのスイッチ素子の内一方を導通態に、他方を遮断状態に周期的に開閉することにより、スイッチ素子に流れる電流は交流電流になる。このため、大きな電流が流れ続けることがなくなり、スイッチ素子にかかる負担を軽減することができる。
【0011】
また、上述の発明において、前記コンデンサの電圧を検出する第1電圧センサを備え、前記第1電圧センサにより検出される電圧が所定値よりも小さくなった場合、前記夫々のスイッチング素子をすべて遮断状態にすることを特徴とする。
【0012】
また、上述の発明において、前記直流電源と前記コンデンサとの間に、前記直流電から供給される直流電力を昇圧する昇圧回路を設け、前記昇圧回路の入力電圧を検出する第2電圧センサを備え、前記直流電源から出力される直流電圧は第2電圧センサの検出する電圧であることを特徴とする。
【0013】
また、上述の発明において、前記夫々のスイッチング素子を動作するに必要な電力を前記商用電力系統から供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スイッチ素子のON抵抗を利用してブリッジ回路の入力側に接続されるコンデンサを放電する際に、スイッチ素子に係る負担を軽減することができる系統連系装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る太陽光発電システム100を示す構成図である。
【図2】本実施形態におけるスイッチ素子51、52のスイッチングパターン別の帰還回路11を示す図である。
【図3】コンデンサの放電を行う際の系統連系装置2の動作フローを示す図である。
【図4】変形例1におけるコンデンサ3a、3bの放電を行う際の制御回路8の機能ブロック図を示す図である。
【図5】変形例2におけるスイッチ素子51、52のスイッチングパターン別の帰還回路11を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。図1は本実施形態に係る太陽光発電システム100を示す構成図である。この図に示すように太陽光発電システム100は、太陽電池1(直流電源)、系統連系装置2を備える。
【0017】
系統連系装置2は、昇圧回路4、インバータ回路10、系統連系用リレー7、制御回路8、電源回路9、電流センサCTi、CT1、CT2、及び電圧センサVSi、VS1、VS2、VSuv、VSwvを備える。系統連系装置2は、系統連系用リレー7を介してインバータ回路10の出力する交流電力を商用電力系統30へ重畳する。
【0018】
昇圧回路4は、太陽電池1から出力された直流電圧を昇圧する。そして、昇圧回路4は、この昇圧した直流電圧をインバータ回路10へ出力する。昇圧回路4には、図1に示すように、リアクトル41、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のようなスイッチ素子42、及びダイオード43を有して構成される。昇圧回路4の入力側には、太陽電池1が接続され、太陽電池1の正極と直列にリアクトル41とダイオード43とが接続される。スイッチ素子42は、リアクトル41及びダイオード43の接続点と太陽電池1の負極との間に接続され、その間を開閉する。
【0019】
昇圧回路4は、制御回路8によって動作が制御される。具体的には、制御回路8がONデューティ比を決定し、そのデューティ比を有するパルス信号をスイッチ素子42のゲートに周期的に与える。すると、スイッチ素子42は、周期的に開閉し、昇圧回路4は、デューティ比に応じた(例えば、比例した)所定の昇圧比を得る。
【0020】
インバータ回路10は、第1スイッチ素子51と第2スイッチ素子52とを直列に接続したアーム回路53を少なくとも2列並列に直流電源間(昇圧回路の出力端子間)に接続したブリッジ回路5を有している。インバータ回路は、このブリッジ回路5の夫々のスイッチング素子51、52を周期的に開閉して太陽電池1から出力された直流電力を交流電力に変換する。
【0021】
また、インバータ回路10は、ブリッジ回路5の入力側に接続されかつ直流電源間に接続されるコンデンサ3a、3bと、ブリッジ回路5から出力される交流電力が通過するフィルタ回路6と、このフィルタ回路6から交流電力の一部をコンデンサ3a、3bへ帰還可能に構成する帰還回路とを有している。
【0022】
コンデンサ3aと3bには、容量の大きい(3000〜5000μF程度)電解コンデンサが用いられる。コンデンサ3aと3bは、直列に接続され、直列に接続されたコンデンサ3a、3bは、ダイオード43と太陽電池1の負極とに接続される。
【0023】
ブリッジ回路5のスイッチ素子51、52には、IGBTのようなスイッチ素子を用いると良い。ブリッジ回路5は、制御回路8によってその動作が制御される。そして、ブリッジ回路5は、制御回路8のPWM(Pulse Width Modulation)制御にしたがって各スイッチ素子51、52を周期的に開閉し、入力される直流電力を三相交流電力に変換する。三相交流電力は、第1スイッチ素子53bと第2スイッチ素子54bとの接続点から延びるU相出力線u、コンデンサ3aとコンデンサ3bとの接続点から延びるV相出力線v、第1スイッチ素子51aと第2スイッチ素子52aとの接続点から延びるW相出力線wに供給される。
【0024】
フィルタ回路6は、リアクトル61、62、及びコンデンサ63a、63b、63cからなる。また、フィルタ回路6は、第1スイッチ素子51a及び第2スイッチ素子52aの接続点と、第1スイッチ素子51b及び第2スイッチ素子52bの接続点と、コンデンサ3a及びコンデンサ3bの接続点とに接続される(ブリッジ回路5の出力側に設けられる)。具体的には、U相出力線uにリアクトル61が介在し、W相出力線wにリアクトル62が介在している。そして、各コンデンサ63a、63b、63cをデルタ結線した結線点に、夫々、U相出力線u、V相出力線v、W相出力線wが接続されている。フィルタ回路6は、ブリッジ回路5の各スイッチ素子51、52が開閉するときに生ずる三相交流電流のリプル成分(高調波成分)を除去する。
【0025】
帰還回路は、ブリッジ回路5とフィルタ回路6によって構成され、スイッチ素子51、52のスイッチングパターンにより、コンデンサ3a、3bへ帰還する電流経路が変わる。図2にスイッチ素子51、52のスイッチングパターン別の帰還回路11について示す。
【0026】
図2(a)に示す帰還回路11aは、スイッチングパターンが、第1スイッチ素子51aが導通状態、第2スイッチ素子52aが遮断状態、第1イッチ素子51bが遮断状態、第2スイッチ素子52bが導通状態の場合の帰還回路である。この帰還回路11aでは、点線L1により示す経路で電流が流れ、フィルタ回路6から交流電力の一部がコンデンサ3a、3bへ帰還する。
【0027】
図2(b)に示す帰還回路11bは、スイッチングパターンが、第1スイッチ素子51aが遮断状態、第2スイッチ素子52aが導通状態、第1イッチ素子51bが導通状態、第2スイッチ素子52bが遮断状態の場合の帰還回路である。この帰還回路11aでは、点線L2により示す経路で電流が流れ、フィルタ回路6から交流電力の一部がコンデンサ3a、3bへ帰還する。
【0028】
図2(c)に示す帰還回路11cは、スイッチングパターンが、第1スイッチ素子51aが導通状態、第2スイッチ素子52aが遮断状態、第1イッチ素子51bが導通状態、第2スイッチ素子52bが遮断状態の場合の帰還回路である。この帰還回路11cでは、点線L3により示す経路で電流が流れ、フィルタ回路6から交流電力の一部がコンデンサ3a、3bへ帰還する。
【0029】
図2(d)に示す帰還回路11dは、スイッチングパターンが、第1スイッチ素子51aが遮断状態、第2スイッチ素子52aが導通状態、第1イッチ素子51bが遮断状態、第2スイッチ素子52bが導通状態の場合の帰還回路である。この帰還回路11dでは、点線L4により示す経路で電流が流れ、フィルタ回路6から交流電力の一部がコンデンサ3a、3bへ帰還する。
【0030】
系統連系用リレー7は、商用電力系統30に接続される出力線u、v、wに介在し、出力線u、v、wの開閉を行う。また、系統連系用リレー7は、制御回路8からの制御信号によって閉状態と開状態が制御され、系統連系装置2(太陽電池1)と商用系統30とを連系または解列するものである。
【0031】
電源回路9は、商用電力系統30に接続され、昇圧回路4、インバータ回路5、制御回路8、系統連系用リレー7、及び各種センサCTi、CT1、CT2、VSi、VS1、VS2、VSuv、VSwvを動作するに必要な電力を商用電力系統30から供給する。
【0032】
各電流センサCTi、CT1、CT2には、カレントトランスが用いられる。電流センサCTiは、太陽電池1の正極とリアクトル41との間に設けられ、昇圧回路4に入力する電流Iinを検出する。電流センサCT1は、コンデンサ63a及びコンデンサ63cの結線点とリアクトル61との間に設けられ、ブリッジ回路5の出力するU相電流Iuを検出する。電流センサCT2は、コンデンサ63b及びコンデンサ63cの結線点とリアクトル62との間に設けられ、ブリッジ回路5の出力するW相電流Iwを検出する。
【0033】
次に、電圧センサVSi、VS1、VS2、VSuv、VSwuについて述べる。電圧センサVSiは、昇圧回路4の入力側に設けられ、昇圧回路4の入力電圧Vinを検出する。電圧センサVS1は、昇圧回路4の出力側に設けられ、昇圧回路4の出力電圧Vc(直列に接続されたコンデンサ3a及びコンデンサ3bの両端電圧)を検出する。電圧センサVS2は、コンデンサ3bと並列に接続され、コンデンサ3bの両端電圧Vcbを検出する。電圧センサVSuvは、U相出力線uとV相出力線vに接続され、U相出力線uとV相出力線vの線間電圧Vuvを検出する。電圧センサVSwvは、W相出力線wとV相出力線vに接続され、W相出力線wとV相出力線vの線間電圧Vwvを検出する。
【0034】
制御回路8は、上述の各種センサCTi、CT1、CT2、VSi、VS1、VS2、VSuv、VSwvを用いて、昇圧回路4、インバータ回路10、及び系統連系用リレー7の動作を制御する。
【0035】
(コンデンサ3a、3bの放電動作)
コンデンサ3a、3bの放電(電荷の消費)は、主に、(1)メンテナンスを行う作業員が作業を開始する前、(2)系統連系装置2が停止する場合、に行われる。(1)、(2)どちらの場合であっても、系統連系装置2の停止した(系統連系用リレー7を開状態、昇圧回路のスイッチ素子を遮断状態、ブリッジ回路5のスイッチ素子51、52すべてが遮断状態)後に図3に示す動作フローを制御回路8により実行することで、コンデンサ3a、3bの放電を行うことができる。
【0036】
図3に、コンデンサ3a、3bの放電を行う際の系統連系装置2の動作フローを示す。以下に示すこの動作フローにおいては、制御回路8が主体となり系統連系装置2の制御を行う。このため、制御回路8を主に主語に用いるが、系統連系装置2の動作になるため、主語の制御回路8を系統連系装置2と読みかえることもできる。
【0037】
図3における動作フローを開始すると、制御回路8は、昇圧回路4の入力電圧Vinを検出(ステップS11)し、入力電圧Vinが所定値Vithより小さい否かを判断する(ステップS12)。制御回路8は、入力電圧Vinが所定値Vithより小さくない場合、ステップS11へ戻り、入力電圧Vinが所定値Vithより小さい場合、ステップS13へ移行し、各スイッチ素子51、52の駆動制御を開始する。
【0038】
制御回路8は、ステップS13に移行すると、相電流Iu、Iwを電流センサCT1、CT2を用いて検出する。相電流Iu、Iwを検出すると、制御回路8は、検出された相電流Iu、Iwを用いて相電流Iu、Iwの実効値Iue、Iweを算出する(ステップS14)。また、ステップS14において、制御回路8は、各相の実効値Iue、Iweの平均値Iaveを算出し、ステップS15において、平均値Iaveとブリッジ回路5の出力電流の目標値Itとの差が電流閾値Ithよりも小さいか否かを判断する。尚、この目標値Itは、図3に示す動作フローを開始する際にはゼロに設定されている。
【0039】
ステップS15において、制御回路8は、平均値Iaveとブリッジ回路5の出力電流の目標値Itの差が電流閾値Ithよりも小さくないと判断した場合、ブリッジ回路5の出力電流の目標値Itを変更せずステップS18へ移行する。ステップS15において、制御回路8は、平均値Iaveとブリッジ回路5の出力電流の目標値Itの差が電流閾値Ithよりも小さいと判断した場合、目標値Itが目標値Itの最大値Itmaxよりも小さいか否かを判断する(ステップS16)。
【0040】
目標値Itの最大値Itmaxは、スイッチ素子51、52に流しても負担にならない程度の値に設定する。
【0041】
ステップS16において、制御回路8は、目標値Itが目標値Itの最大値Itmaxよりも小さくないと判断した場合は、ブリッジ回路5の出力電流の目標値Itを変更せずステップS18へ移行する。また、ステップS16において、制御回路8は、目標値Itが目標値Itの最大値Itmaxよりも小さいと判断した場合は、ステップS17において、ブリッジ回路5の出力電流の目標値Itに所定の量Iαを加えた値を、新たなブリッジ回路5の出力電流の目標値ItとしてステップS18へ移行する。
【0042】
ステップS18では、制御回路8は、ブリッジ回路5の出力電流の目標値Itと相電流Iu、Iwの実効値Iue、Iweの平均値Iaveとの差がゼロになるようにブリッジ回路5の線間電圧の実効値Vuve、Vvweの平均値の目標値Vtを決定し、ブリッジ回路5の線間電圧の実効値Vuve、Vvweの平均値Vaveと電圧の目標値Vtとの差がゼロになるようにブリッジ回路5のスイッチング素子をPWMの信号で制御する。これにより、交流電力がブリッジ回路5から出力され、帰還回路によりコンデンサ3a、3bへ戻り、コンデンサ3a、3bが放電される。ステップS18の動作が完了すると制御回路8はステップS19へ移行する。ステップS19では、制御回路8は、電圧センサVa、Vbを用いてコンデンサ3aの電圧Vca、及びコンデンサ3bの電圧Vcbを検出する。
【0043】
尚、コンデンサ3aの電圧Vcaは、直列接続されるコンデンサ3a及びコンデンサ3bの両端電圧Vcを電圧センサVaにより検出し、Vca=Vc−Vcbにより検出することができる。
【0044】
制御回路8は、電圧Vca及び電圧Vcbを検出すると、電圧Vca及び電圧Vcbが共に所定値Vcthよりも小さいか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20にて、制御回路8は、電圧Vca及び電圧Vcbが共に所定値Vcthよりも小さくないと判定した場合、コンデンサ3a、3bの放電が完了していないとしてステップS13へ戻る。ステップS20にて、制御回路8は、電圧Vca及び電圧Vcbが共に所定値Vcthよりも小さいと判定した場合、コンデンサ3aの放電が完了したとして、各スイッチ素子51、52を開いてコンデンサ3a、3bの放電を終了する。
【0045】
本発明によれば、インバータ回路5から交流電力の出力が遮断され(系統連系用リレー7が開状態)かつ太陽電池1から出力される直流電力が所定値以下の際(電圧Vin<電圧閾値Vith)にブリッジ回路の出力を、帰還回路を介してコンデンサ3a、3bに戻している。これにより、コンデンサの放電電荷が帰還回路を介してコンデンサに戻る際に、ブリッジ回路、フィルタ回路を通して消費される。このため、スイッチ素子51、52だけの閉ループの場合に比べてフィルタ回路6の分インピーダンスが増えるため、スイッチ素子51〜54に流れる電流が減り、スイッチ素子51〜54に係る負担を軽減することができる。また、各アームのスイッチ素子51、52の内一方を導通状態に、他方を遮断状態に周期的に開閉することにより、スイッチ素子51、52に流れる電流は交流電流になる。このため、大きな電流が流れ続けることがなくなり、スイッチ素子51、52に係る負担を軽減することができる。また、スイッチ素子51〜52を周期的に開閉するため、スイッチングロスによってもコンデンサ3a、3bの電荷を消費することができる。このため、速やかにコンデンサ3a、3bの電荷を消費することができる。
【0046】
また、本発明によれば、コンデンサ3a、3bの電荷を消費し、コンデンサの電圧Vca、Vcbが所定値Vcthよりも小さくなったことを検出してブリッジ回路5を停止する(ブリッジ回路5のスイッチ素子をすべて遮断する)。このため、コンデンサ3a、3bの放電後速やかにインバータ回路10を停止でき、スイッチ回路51、52にかかる負担を軽減することができる。
【0047】
また、本発明によれば、昇圧回路への入力電圧Vinが所定値Vithよりも小さいことを確認した上で、コンデンサ3a、3bの電荷の消費を開始する。このため、メンテナンスを行う作業員が作業を行う場合、太陽電池1と系統連系装置2との間にある開閉器を開いた時点から自動的にコンデンサ3a、3bの放電を開始することができる。これにより、系統連系装置2本体にコンデンサ3a、3bを放電するためのスイッチ等を特別に設ける必要も無くなり、スイッチの押し忘れという人為的なミスを無くすことができる。
【0048】
また、本発明によれば、昇圧回路への入力電圧Vinが所定値Vithよりも小さくならなければコンデンサ3a、3bの電荷の消費を開始しない。このため、系統連系装置2が停止する場合でも、その後自立運転を行いたい場合(例えば、昼間に商用電力系統2が停電した場合など)に、コンデンサ3a、3bを放電することが無いので、コンデンサ3a、3bを充電することなく速やかに自立運転を開始することができる。また、コンデンサ3a、3bを放電しないので、放電しなかった分の電力を利用することができる。
【0049】
また、本発明によれば、最初に目標値Itをゼロに設定し、目標値にIαを加えていき、電流センサの検出する電流が徐々に大きくなるようスイッチ素子51、52の開閉を行う。これにより、フィルタ回路6へ流れる電流を徐々に大きくすることができるため、フィルタ回路6のコンデンサ63a〜63cに流れる突入電流を小さくすることができる。
【0050】
また、本発明によれば、コンデンサ3a、3bの電荷を消費している間、昇圧回路4のスイッチ素子42を開いた状態にしている。これにより、昇圧回路4のスイッチ素子42がスイッチングを行わないので、スイッチングによる負担を軽減することができる。
【0051】
また、本発明によれば、コンデンサ3a、3bを放電する際にインバータ回路5のスイッチ素子51、52を動作するに必要な電力を、電源回路9を介して商用電力系統30から供給している。これにより、コンデンサ3a、3bの放電を最後まで安定して行うことができる。また、商用電力系統30からではなく、コンデンサ3a、3bの両端からこの電力を賄うようにすると、コンデンサ3a、3bの電荷を速やかに消費することができる。
【0052】
(変形例1)
本実施形態において、制御回路8は、ブリッジ回路5の出力する三相電流iu、iwに基づいて制御を行ったが、三相電流iu、iwに対して三相二相変換を行い、電流ベクトルId、Iqを利用して制御するようにしても良い。
【0053】
図4に、変形例1におけるコンデンサ3a、3bを行う制御回路8の機能ブロック図を示す。このブロック図において、制御回路8は、dq変換器101、減算器102、103、PI制御器104、逆dq変換器105、PWM変調器106を有する。
【0054】
dq変換器101は、電流センサCT1、CT2が検出したu相電流Iu、w相電流Iw、位相θを入力し、u相電流Iu、w相電流Iwを三相二相変換し、d−q座標系上のd軸電流値Id、及びq軸電流値Iqを演算する。そして、dq変換器101は、演算した、電流値Id、Iqを減算器102、103へ出力する。
【0055】
減算器102は、d軸電流目標値Idtとd軸電流Idとを入力し、d軸電流Idからd軸電流目標値Idtを減算した値(Id−Idt)をPI制御器104へ出力する。
【0056】
減算器103は、q軸電流目標値Iqtとq軸電流Iqとを入力し、q軸電流Iqからq軸電流目標値Iqtを減算した値(Iq−Iqt)をPI制御器104へ出力する。
【0057】
PI制御器104は、減算値(Id−Idt)、(Iq−Iqt)を入力し、この値がゼロになるようにd軸電圧目標値Vdt、及びq軸電圧目標値Vqtを算出し、逆dq変換器へ出力する。
【0058】
逆dq変換器105は、d軸電圧目標値Vdt、q軸電圧目標値Vqt、及び位相θを入力し、二相三相変換を行い、U相出力線u及びV相出力線vの線間電圧の目標値Vuvtと、W相出力線w及びV相出力線vの線間電圧の目標値Vwvtとを演算する。そして、逆dq変換器105は、演算した目標値Vuvt、VwvtをPWM変調器106へ出力する。
【0059】
PWM変調器106は、この目標値Vwvt、Vuvtを受けて、PWM波形を出力し、スイッチ素子51、52を周期的に開閉する。
【0060】
この際に、制御回路8は、d軸電流目標値Idt及びq軸電流目標値Iqtをゼロ付近から徐々に大きくすることで、電流センサCT1、CT2の検出する電流が徐々に大きくなるようにスイッチ素子51〜54の開閉を行うことができる。
【0061】
(変形例2)
【0062】
本実施形態において三相交流電力を出力するインバータ回路10を用いていたが、単相の交流電力を出力するインバータ回路10にも応用することができる。図5に、変形例2におけるスイッチ素子51、52のスイッチングパターン別の帰還回路11を示す。図5に示すように、単相の交流電力を出力するインバータ回路5の場合、コンデンサ3a、3bの変わりに1つのコンデンサ3を用いる。また、フィルタ回路6は、3個のコンデンサ63a〜63cをデルタ結線したものを用いたが、ひとつのコンデンサ63を用いる。
【0063】
単相の交流電力を出力するPWM制御を適用した場合、スイッチ素子51、52のスイッチングパターン別の帰還回路11は、図5(a)、図5(b)に示すようになる。
【0064】
図5(a)に示す帰還回路11eは、スイッチングパターンが、第1スイッチ素子51aが導通状態、第2スイッチ素子52aが遮断状態、第1イッチ素子51bが遮断状態、第2スイッチ素子52bが導通状態の場合の帰還回路である。この帰還回路11eでは、点線L5により示す経路で電流が流れ、フィルタ回路6から交流電力の一部がコンデンサ3へ帰還する。
図5(b)に示す帰還回路11fは、スイッチングパターンが、第1スイッチ素子51aが遮断状態、第2スイッチ素子52aが導通状態、第1イッチ素子51bが導通状態、第2スイッチ素子52bが遮断状態の場合の帰還回路である。この帰還回路11eでは、点線L6により示す経路で電流が流れ、フィルタ回路6から交流電力の一部がコンデンサ3へ帰還する。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、以上の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0066】
例えば、制御回路8は、ブリッジ回路5の出力する三相電流iu、iwの実効値iue、iweを用いてブリッジ回路5の動作を制御したが、相電流の振幅や平均値を用いるようにしても良い。
【0067】
また、例えば、本実施形態において、太陽光発電システム100の例を挙げたが、太陽電池1の代わりに、蓄電池や燃料電池などの直流電源を使用することができる。
【0068】
また、例えば、電解コンデンサの両端にLEDを接続し、コンデンサに電荷が蓄えられていることをユーザに表示しても良い。このようにすると、ユーザはこのLEDを見て安全に作業できるか否かの判断を行うことができる。
【0069】
また、例えば、系統連系用リレー7が溶着状態である場合にコンデンサ3a、3bの放電を禁止するようにしても良い。このようにすることで、コンデンサ3a、3bの放電時にスイッチ素子51、52を動作させた場合に、意図せず商用電力系統へ電力が供給されることを防止することができる。
【0070】
また、例えば、本実施形態において、アームが2並列の三相ハーフブリッジ型のインバータ回路10を用いたが、アームが3並列の三相フルブリッジ型のインバータ回路を用いることもできる。


【符号の説明】
【0071】
1 太陽電池
2 系統連系装置
3 電解コンデンサ
4 昇圧回路
5 ブリッジ回路
6 フィルタ回路
7 系統連系用リレー
8 制御回路
9 電源回路
10 インバータ回路
11 帰還回路
30 商用電力系統
45 電圧センサ
91 負荷用リレー
92 交流負荷
CTi 電流センサ
CT1 電流センサ
CT2 電流センサ
VSi 電圧センサ
VS1 電圧センサ
VS2 電圧センサ
VSuv電圧センサ
VSwv電圧センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とを直列に接続したアーム回路を少なくとも2列並列に直流電源間に接続したブリッジ回路の夫々のスイッチング素子を周期的に開閉して前記直流電源から出力された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路において、
前記インバータ回路は前記ブリッジ回路の入力側に接続されかつ前記直流電源間に接続されるコンデンサと、前記ブリッジ回路から出力される交流電力が通過するフィルタ回路と、当該フィルタ回路から前記交流電力の一部を前記コンデンサへ帰還可能に構成する帰還回路とを備え、
前記インバータ回路から前記交流電力の出力が遮断されかつ前記直流電源から出力される直流電圧が所定値以下の際に前記ブリッジ回路から出力される交流電力を前記帰還回路を介して前記コンデンサに戻すことを特徴とするインバータ回路。
【請求項2】
前記コンデンサの電圧を検出する第1電圧センサを備え、
前記第1電圧センサにより検出される電圧が所定値よりも小さくなった場合、前記夫々のスイッチング素子をすべて遮断状態にすることを特徴とする請求項1に記載の系統連系装置。
【請求項3】
前記直流電源と前記コンデンサとの間に、前記直流電源から供給される直流電力を昇圧する昇圧回路を設け、前記昇圧回路の入力電圧を検出する第2電圧センサを備え、
前記直流電源から出力される直流電圧は第2電圧センサの検出する電圧であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の系統連系装置。
【請求項4】
前記夫々のスイッチング素子を動作するに必要な電力を前記商用電力系統から供給することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の系統連系装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−235588(P2012−235588A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101532(P2011−101532)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】