説明

紫外光源装置

【課題】 小型高効率で構成が単純な紫外光源装置を提供することである。
【解決手段】 励起光源と、希土類を添加した光導波路(希土類添加光導波路)と、該励起光源からの励起光を該光導波路に光学的に結合する手段と、該希土類添加光導波路から発生する光を放射する放射部を備えた光源であって、該励起光源の発光波長が340nm〜500nmの波長範囲から選ばれるいずれかの波長であり、かつ、該希土類添加光導波路のコア部にNd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tmから選ばれる少なくとも一種類の希土類元素を含有し、かつ、該希土類添加光導波路から放射される光の波長が、405nm以下かつ励起光波長よりも短波長であることを特徴とする、紫外光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成で紫外光を発生する紫外光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光源としては高圧水銀ランプやハロゲン系ランプなどのランプ光源、エキシマレーザに代表されるガスレーザ、固体レーザの波長変換によるレーザなどが知られている。特に近年ではファイバレーザを用いた波長変換による紫外光発生が盛んに研究されている。また、フッ化物結晶にNdを添加して77Kまで冷却し、赤外または590nmの黄色レーザで励起して紫外レーザ光を得た例がある(非特許文献1)。また、Ndを添加したフッ化物ファイバを590nmの黄色レーザで励起し、室温で紫外レーザ光を得た例(非特許文献2)および紫色レーザ光を得た例(非特許文献3)がある。しかしながら、Nd添加フッ化物結晶からの紫外発光または紫外レーザ発振は、低温冷却が必要であり、実用的でない。また、Nd添加フッ化物ファイバおよびNd添加フッ化物結晶の励起には、波長590nmの黄色レーザが使用されるが、このレーザは特殊なレーザであって簡易な構成では実現できない。具体的には、波長590nmの励起光源として、Arイオンレーザ励起の色素リングレーザを用いており、大型で調整も煩雑である。
【0003】
紫外光を発生するランプ光源の特徴は、高電圧の電源によって発生する高エネルギーの放電内で、特定の分子や原子が乖離と再結合あるいは励起と脱励起を繰り返すことで、物質固有の多数の輝線を同時に得ることができる点である。このため、比較的広い波長範囲にわたって輝線を発生させることができる。一方、放電には一定の物理的な体積が必要であるため、広い範囲を照射するには適しているが、微小範囲の照射には不向きである。また、発光効率が低く発熱が非常に多い事から、空冷の場合は冷却ファンの音や振動や熱風、水冷の場合は装置が大型化するなどの問題がある。
【0004】
エキシマレーザは、高出力紫外光を得ることができる上に、大面積のレーザ光を得られるので、半導体製造分野で広く用いられている。しかし、エキシマレーザは発振媒質にハロゲン系のガスを使用しており、危険であるだけでなく、装置が大型であり整備も煩雑である。また、レーザ発振はパルス発振に限られるため、分光用途や検査用途では使用できない。これ以外のガスレーザとしてArイオンレーザが知られているが、レーザ発振効率は極めて低い。このため冷却装置など付帯設備が必要である。
【0005】
固体レーザの波長変換は近年著しく進歩している。従来は固体レーザの波長変換に、LiNbO(LN)やβ−BaB(β−BBO)などの強誘電性光学結晶がバルク形状で使用されているが、変換効率が極めて低い。最近は高効率波長変換材料としてこれらの強誘電性光学結晶の導波路を周期分極反転したデバイスが使用されつつあり、従来のバルク型を遙かに上回る高効率が達成されている。しかし、周期分極反転素子として加工しなければならない分極周期は出力波長と関係があり、500nm以下の短波長では加工周期が短くなり作製が非常に困難である。また、最適な波長変換効率を維持するためには温度制御が必須であり、装置が複雑化する。
【非特許文献1】R.M.Macfarlane, F.Tong, A.J.Silversmith, and W.Lenth,”Violet cw neodymium upconversion laser “, Applied Physics Letter, vol.52, pp.1300−1302.
【非特許文献2】D.S.Funk, J.W.Carlson, and J.G.Eden,“Ultraviolet (381nm),room temperature laser in neodymium−doped fluorozirconate fibre”, Electronics Letterd, vol.30, pp.1859−1860
【非特許文献3】D.S.Funk, J.W.Carlson, and J.G.Eden,“Room−temperature fluorozirnae glass fiber laser in the violet (412nm)”,Optics Letters, vol.20pp.1474−1476.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、小型高効率で構成が単純な紫外光源装置は実現していない。
【0007】
本発明は、このような問題を解決し、小型高効率で構成が単純な紫外光源装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、励起光源と、希土類を添加した光導波路(希土類添加光導波路)と、該励起光源からの励起光を該光導波路に光学的に結合する手段と、該希土類添加光導波路から発生する光を放射する放射部を備えた光源であって、該励起光源の発光波長が340nm〜500nmの波長範囲から選ばれるいずれかの波長であり、かつ、該希土類添加光導波路のコア部にNd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tmから選ばれる少なくとも一種類の希土類元素を含有し、かつ、該希土類添加光導波路から放射される光の波長が、405nm以下かつ励起光波長よりも短波長を有することを特徴とする紫外光源装置を提供するものである。
【0009】
さらには、該希土類添加光導波路の少なくともコア部がフッ化物ガラス、フッ素酸化物ガラス、フツリン酸塩ガラスのいずれかからなることを特徴とする上記記載の紫外光源装置を提供するものである。
【0010】
また、該希土類添加光導波路で発生する自然放出光のうち、波長405nm以下の光を反射するミラーが、該希土類添加光導波路の該放射部と反対側の端面に配置され、かつ、該放射部より放射される光が自然放出光または増幅された自然放出光であることを特徴とする紫外光源装置を提供するものである。
【0011】
また、該希土類添加光導波路で発生する自然放出光のうち、波長が405nm以下の光を反射するミラーが、該希土類添加光導波路の両端に配置され、かつ、該放射部より放射される光がレーザ光であることを特徴とする紫外光源装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、希土類添加光導波路から直接紫外光を得ることができるため、構造が簡単で小型化が可能である。また、光導波路から紫外光が放射されるため、コアを小さくすることによって点光源の紫外光源を簡単な構成で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の形態の例を、図1、2を用いて説明する。
【0014】
まず、図1は、励起光源からの励起光を希土類添加光導波路の端面のコア部に結合する例を示す。図1の例は、励起光源1、励起光を集光するための集光レンズ2、ダイクロイックミラー3、希土類添加光導波路4、コリメートレンズ5、パワーモニタ用ミラー6、励起光カットフィルタ7、光パワーを電気信号に変換するフォトダイオード8、励起光源1の出力を制御する制御回路9、出射ウィンドウ10、および電源プラグ11を備えている。
【0015】
波長340nmから500nmの範囲から選ばれるいずれかの波長の光を放出する励起光源1からの励起光は、集光レンズ2によって集光され、さらにダイクロイックミラー3を通して希土類添加光導波路4の端面に集光され、希土類添加光導波路4のコアに光学的に結合される。結合された励起光は希土類添加光導波路4のコアで吸収され、励起光を吸収したコアは波長405nm以下かつ励起光波長よりも短波長で発光する。発光した光のうち、希土類添加光導波路4中をダイクロイックミラー3がある方向に進行するものは該ダイクロイックミラー3で全反射して折り返される。このとき、希土類添加光導波路4より外部へ放出された光を再度、希土類添加光導波路4の中へ結合するミラーはダイクロイックミラー3だけであるため、レーザ共振器は構成されていない。すなわち、出射ウィンドウ10を通して外部へ出力される光は、自然放出光または増幅された自然放出光である。また、出射ウィンドウ10側の希土類添加光導波路4の端面に波長405nm以下の光を反射するミラーを配置してレーザ共振器を構成することにより、出射ウィンドウ10を通してレーザ光を外部に出力できる。希土類添加光導波路4に対し、励起光が集光される側と反対側にコリメートレンズ5が設置されており、該希土類添加光導波路4から出射される光は該コリメートレンズ5でコリメートされ、その先のパワーモニタ用ミラー6で反射光と透過光に分岐される。コリメートレンズ5でコリメートされた光のうち、パワーモニタ用ミラー6を透過する光は、さらに出射ウィンドウ10を透過し紫外光発生装置12から出射される。また、該パワーモニタ用ミラー6で反射され光は、励起光カットフィルタ7で励起光を除去した後フォトダイオード8に入射され、光パワーに対応した電気信号に変換される。この電気信号は制御回路9に入力され、該制御回路9は、紫外光発生装置12の出力が一定となるように演算することにより励起光源1の出力を制御する。駆動に必要な電気は、電源プラグ11から得る。
【0016】
次に、図2は、励起光源からの励起光が希土類添加光導波路の側面(クラッド部)を透過してコア部に結合する例を示す。図2の例は、励起光源に平面発光体のような面状の広がりがある光源または点光源を多数アレイ状に配列した光源を用いた場合で、面状またはアレイ状の励起光源20、透明サポート板21、希土類添加光導波路22、折り返し全反射ミラー23、コリメートレンズ24、励起光カットフィルタ25、制御基板、励起光源の電源、および筐体を備えている。但し、図2では制御基板、励起光源の電源、筐体などを省略して表示を簡略化している。
【0017】
波長340nmから500nmの範囲から選ばれるいずれかの波長で発光する面状またはアレイ状の励起光源20からの励起光は、励起光波長で透明な透明サポート板21に固定されている希土類添加光導波路22の側面(クラッド部)に照射される。希土類添加光導波路のコア部は、クラッド部を透過した励起光を吸収し波長405nm以下かつ励起光波長よりも短波長で発光する。発生した光は光導波路のコア中を伝搬する。希土類添加光導波路22の片側の端面に波長405nm以下の光を反射する反射ミラー23が設置されており、該希土類添加光導波路22のコア部で発生した光のうち反射ミラー23が設置されている側の端面に到達したものは、反射ミラー23で反射されて折り返される。この結果、希土類添加光導波路22のコア部で発生した光は全て、反射ミラー23が設置されている端面と反対側の端面から出射され、その先のコリメートレンズ24でコリメートされ、さらに励起光カットフィルタ25で励起光を除去した後、紫外光源装置の出射光として出射される。このとき、希土類添加光導波路22より外部へ放出された光を再度、希土類添加光導波路22の中へ結合するミラーは反射ミラー23だけであるため、レーザ共振器は構成されていない。すなわち、紫外光源装置の出射光は、自然放出光または増幅された自然放出光である。また、コリメートレンズ24側の希土類添加光導波路22の端面に波長405nm以下の光を反射するミラーを配置してレーザ共振器を構成することにより、紫外光源装置の出射光はレーザ光として外部に出力できる。
【0018】
本発明の励起光源は、波長340nmから500nmの範囲の波長で、励起に十分な光パワーを発生すれば特に限定されない。このような光源としては、GaN系半導体レーザ、GaN系LED、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、半導体レーザの出力を波長変換して得た二倍波、電子線励起蛍光体からの蛍光などが挙げられる。中でもGaN系半導体レーザは高出力であり、しかも集光スポット径が小さいので、コア径が小さい希土類添加光導波路であっても光学的な結合効率が高く、輝度の高い紫外光源を実現できる。
【0019】
一方、LDアレイ、LEDアレイ、有機EL、無機ELなど二次元または三次元的に配置可能な光源は、希土類添加光導波路への光学的な結合効率は低くなるものの、空間的に拡張が容易であり構造も簡単である。このため単位面積あたりの光密度は低いが、全光パワーとしては大きなパワーを放射可能であり、低い光学的な結合効率を補うことができる。このため、大きさの制約が厳しくない場合には、簡素な構造で紫外光を得られるので好ましい。
【0020】
希土類添加光導波路は、平面光導波路でもよいしファイバでも良い。希土類添加光導波路のコア部には、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tmから選ばれる少なくとも一種類の希土類元素を添加する必要がある。希土類の添加濃度は、励起光の波長、励起光の出力、光導波路の損失、光学構成、導波路のコア直径、開口数など様々な要因で変化するため、一概には規定できないが、100ppmから50000ppmの範囲であることが好ましい。100ppm未満では励起光の吸収係数が低くなり単位長さあたりの発光量が低下し、光導波路の損失を上回ることが困難となることから好ましくない。一方、50000ppmを超えるとガラス中への均一溶解が困難なだけでなく、希土類同士のエネルギー移譲による脱励起(濃度消光と呼ばれる)が生じ、発光効率が低下する。一般的には、GaN系半導体レーザ励起の場合1000ppmから10000ppmの範囲が、LEDアレイなど面状の励起光源を用いる場合は200ppmから5000ppmの範囲が適当である。
【0021】
希土類添加光導波路の少なくともコア部は、波長405nm以下の紫外波長域でも透明である必要があり、かつ短波長発光効率が高い低フォノン材料である必要がある。このようなガラスとしては、フッ化物ガラス、フッ素酸化物ガラス、フツリン酸塩ガラスが適している。中でもフッ化物ガラスは、作製の容易さと光学性能の点から、最も好ましい。フッ化物ガラス組成としては、Al系ガラス、Al−Zr系ガラス、Zr系ガラスが安定であり、好ましい。
【0022】
希土類添加光導波路中で発生した波長405nm以下の光は、希土類添加光導波路内に閉じこめる割合を適切に制御することで、自然放出光または増幅された自然放出光(ASE)またはレーザ光として取り出すことができる。
【0023】
自然放出光またはASEの場合、広帯域光が得られるため、干渉計測では可干渉長が短く、分解能が向上する。また、形状計測では裏面反射の影響を受けにくく、レンズ形状などの高精度計測が可能である。また、生物用途では特定波長にエネルギーが集中しないため、同じ光パワーを照射しても生体サンプルが受けるダメージがレーザよりも少なく、照明用途や蛍光色素/蛍光タンパクの励起に好適である。
【0024】
レーザ光の場合、狭帯域で干渉長が長いコヒーレント光が得られるだけでなく、自然放出光やASEよりも高出力な紫外光が得られる。このため、高出力が必要な加工用途として、表面微細加工、樹脂やガラスの微細加工、生体サンプルの部分的な破壊や細胞質の部分的な破壊、遺伝子の加工、リソグラフィーやエッチングなどの半導体プロセスへの適用などが可能である。また、可干渉長が長いので精密距離計測に適している。さらに、波長変換素子を組み合わせることで、波長200nm以下の光を得ることも可能である。この場合、200nm以下の紫外域でも透明性の高い非線形光学結晶を使用する必要があり、CsLiB10(CLBO)や、BaMgF、BaZnF、SrAlF、NaMgAlF、NaZnAlFなどの強誘電性フッ化物結晶が適している。
【0025】
発光波長と励起波長の関係は、励起条件、希土類濃度、ガラス組成、レーザ共振器条件などで変化するため一概に規定できないが、例えばZr系フッ化物ガラスファイバにNdを添加し、波長430nmのGaN系半導体レーザで励起した場合、波長380nm帯で発光し、レーザ発振させることもできる。また、例えばZr系フッ化物ガラスファイバにTbを添加し、波長488nmのGaN系半導体レーザで励起した場合、波長380nm帯で発光し、レーザ発振させることもできる。また、例えばZr系フッ化物ガラスファイバにDyを添加し、波長400nmのGaN系半導体レーザで励起した場合、波長365nm帯で発光し、レーザ発振させることもできる。また、例えばZr系フッ化物ガラスファイバにHoを添加し、波長476nmのGaN系半導体レーザで励起した場合、波長385nm帯で発光し、レーザ発振させることもできる。また、例えばAl系フッ化物ガラスファイバにErを添加し、波長405nmのGaN系半導体レーザで励起した場合、波長318nm帯および400nm帯で発光し、これらの波長でレーザ発振させることもできる。また、例えばAl系フッ化物ガラスファイバにErを添加し、波長440nmのGaN系半導体レーザで励起した場合、318nm帯と400nm帯で発光し、レーザ発振させることもできる。また、例えばAl系フッ化物ガラスファイバにTmを添加し、波長358nmのGaN系半導体レーザで励起した場合、波長283nm帯と344nm帯で発光し、これらの波長でレーザ発振させることもできる。また、例えばAl系フッ化物ガラスファイバにErとGdを共に添加し、波長407nmまたは440nmのGaN系半導体レーザで励起した場合、310nm帯で発光し、レーザ発振させることもできる。
【0026】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
各種の希土類からの紫外発光を調べるために、希土類を0.3mol%(約3000ppm)添加されている希土類添加ファイバにおいて添加されている希土類がNd、GdとEr、Tb、Dy、Ho、Er、Tmそれぞれの場合について、励起した時の発光波長を調べた。
【0028】
本実施例の構成を図3に示す。オプティカルパラメトリック発振器30、集光レンズ31と35、ダイクロイックミラー32、希土類添加ファイバ33、出射端34、励起光カットフィルタ36、測定用ファイバ端37、光スペクトラムアナライザ38から構成されている。チタンサファイアレーザを波長変換し、波長340nmから500nmまで調整可能で、繰り返し100MHzのパルス光を出力するオプティカルパラメトリック発振器30の励起光源から放出される励起光は、集光レンズ31で希土類添加フッ化物光ファイバ33の端面に集光され光学的に結合される。励起光が結合される側の希土類添加フッ化物光ファイバ33の端面は平面に光学研磨されている。励起光入射端面には、励起光波長帯域を透過し紫外光波長帯域を反射するダイクロイックミラー32が突き当てられている。したがって、該ダイクロイックミラー32は、励起光と出力光の波長に合わせて、添加されている希土類の種類毎に交換する。励起光の結合により希土類添加ファイバ33内で発生した光のうち、ダイクロイックミラー32側へ伝搬する光は該ダイクロイックミラー32で折り返されて、出射端34から放射される。また、ダイクロイックミラー32と反対側へ伝搬する光は、そのまま出射端34から放射される。この出射端34は8°斜めクリーブされており、反射減衰量は60dB以上である。放射された光は、集光レンズ35で集光され、その先の励起光カットフィルタ36で励起光を除去した後、測定用ファイバ端37に結合される。結合された光は光スペクトラムアナライザ38に導かれ、希土類添加光ファイバの発光スペクトルが測定される。
【0029】
使用する希土類添加フッ化物光ファイバにはAl系フッ化物ファイバを用い、そのガラス組成は、コア部が32.8AlF−15YF−4.7LaF−9.4MgF−7.4CaF−5.4SrF−20BaF−5BaCl−0.3REFで表され、クラッドが32.8AlF−15YF−5LaF−9.4MgF−8.4CaF−7.4SrF−17BaF−5BaClで表される。組成の数字は全てモル%である。また、コア組成中のREFは、添加する希土類の三フッ化物を表している。コアの直径は3μm、ファイバの直径は125μmである。このファイバの開口数は0.1であった。また、ファイバ長は25cmである。
【0030】
添加した希土類種がErにおいて、波長407nmで励起した場合の発光スペクトルを図4に、波長440nmで励起した場合の発光スペクトルを図5に示す。いずれの場合も、発光中心波長が400nmおよび318nmの放射光を確認できた。同様にその他の希土類種が添加されている場合の発光スペクトルを測定して発光中心波長を求め、励起波長とともに表1に示す。表1から判るとおり、測定した全ての希土類において、励起光波長より短波長の紫外光の発光が認められた。
【0031】
【表1】

【実施例2】
【0032】
本実施例は紫外レーザ発振の例である。本実施例の構成を図6に示す。GaN系半導体レーザ40、集光レンズ41と46、ダイクロイックミラー42、Er添加フッ化物ファイバ44、出射端45、測定用ファイバの入射端47、光スペクトラムアナライザ48から構成されている。使用したEr添加フッ化物ファイバ44は実施例1で使用したErが3000ppm添加されているフッ化物ファイバである。励起光源である波長447nmのGaN系半導体レーザ40の出射光は、集光レンズ41で集光された後、ダイクロイックミラー42を透過して、該Er添加フッ化物ファイバ44の励起側端43でファイバのコアに結合される。ダイクロイックミラーの設計反射波長は400nmであり、420nm以上の波長は透過する特性となっている。GaN系半導体レーザ40の出射光によって励起されて発生する、Er添加フッ化物ファイバ44のコア内の光のうち、出射端45側に伝搬する光は、該出射端45から放射されて集光レンズ46で集光され、ダイクロイックミラー42で反射光と透過光に分岐される。該ダイクロイックミラー42からの反射光は、再び励起側端43のEr添加フッ化物ファイバのコアに光学的に結合される。また、該ダイクロイックミラー42からの透過光は、測定用ファイバの入射端47に光学的に結合され、光スペクトラムアナライザ48に導かれる。該光スペクトラムアナライザ48では、レーザ発振スペクトルを測定した。
【0033】
測定されたレーザ発振スペクトルを、図7に示す。波長401nmでレーザ発振が得られていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の紫外光源装置は、波長405nm以下の紫外光を、自然放出光、増幅された自然放出光(ASE)、レーザの状態で放射することができることから、計測、加工、バイオ、ライフサイエンス、医療などの分野で利用できる。例えば、高精度な距離計測や表面形状などの特殊計測、干渉計測、表面改質、金属,セラミックス,ガラス,結晶,ポリマーなどの加工やマーキング、光学部品検査、半導体エッチングプロセス、半導体製造装置や光学系の検査、バイオ用蛍光色素または蛍光タンパク励起、有機化合物の分解や合成、選択的分子切断や選択的分子結合、化学薬品や中間体を含む医薬合成への応用、細胞や染色体加工、DNAなど特定分子の改変、表面洗浄、内視鏡治療、内視鏡診断、角膜治療などに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の形態の例を示す図である。
【図2】本発明の形態の例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の発光スペクトル例を示す図である。
【図5】本発明の実施例1の発光スペクトル例を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施例2のレーザ発振スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 励起レーザ
2 集光レンズ
3 ダイクロイックミラー
4 希土類添加光導波路
5 コリメートレンズ
6 パワーモニタ用ミラー
7 励起光カットフィルタ
8 フォトダイオード
9 制御回路
10 出射ウィンドウ
11 電源プラグ
20 面状またはアレイ状の励起光源
21 透明サポート板
22 希土類添加光導波路
23 折り返し全反射ミラー
24 コリメートレンズ
25 励起光カットフィルタ
30 オプティカルパラメトリック発振器
31 集光レンズ
32 ダイクロイックミラー
33 希土類添加フッ化物ファイバ
34 出射端
35 集光レンズ
36 励起光カットフィルタ
37 測定用ファイバ端
38 光スペクトラムアナライザ
40 GaN系半導体レーザ
41 集光レンズ
42 ダイクロイックミラー
43 励起側端
44 Er添加フッ化物ファイバ
45 出射端
46 集光レンズ
47 測定用ファイバの入射端
48 光スペクトラムアナライザ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源と、希土類を添加した光導波路(希土類添加光導波路)と、該励起光源からの励起光を該光導波路に光学的に結合する手段と、該希土類添加光導波路から発生する光を放射する放射部を備えた光源であって、
該励起光源の発光波長が340nm〜500nmの波長範囲から選ばれるいずれかの波長であり、かつ、該希土類添加光導波路のコア部にNd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tmから選ばれる少なくとも一種類の希土類元素を含有し、
かつ、該希土類添加光導波路から放射される光の波長が、405nm以下かつ励起光波長よりも短波長を有することを特徴とする、紫外光源装置。
【請求項2】
該希土類添加光導波路の少なくともコア部が、フッ化物ガラス、フッ素酸化物ガラス、フツリン酸塩ガラスのいずれかからなることを特徴とする、請求項1記載の紫外光源装置。
【請求項3】
該希土類添加光導波路で発生する自然放出光のうち、波長405nm以下の光を反射するミラーが、該希土類添加光導波路の該放射部と反対側の端面に配置され、かつ、該放射部より放射される光が自然放出光または増幅された自然放出光であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の紫外光源装置。
【請求項4】
該希土類添加光導波路で発生する自然放出光のうち、波長405nm以下の光を反射するミラーが、該希土類添加光導波路の両端に配置され、かつ、該放射部より放射される光がレーザ光であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の紫外光源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−108956(P2010−108956A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276285(P2008−276285)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】