説明

組電池モジュール

【課題】複数の円筒形電池の全体を偏りなく冷却することができる組電池モジュールを提供すること。
【解決手段】組電池モジュール1は、ハウジング2と、ハウジング2内において、軸方向を互いに平行にして配置された複数の円筒形電池3と、ハウジング2内において、複数の円筒形電池3を保持する樹脂製の電池保持スペーサ4とを備えている。電池保持スペーサ4は、複数の円筒形電池3に亘って、複数の円筒形電池3の両端面よりも中心側の位置である軸方向の複数箇所に配置される複数のプレート部5と、複数のプレート部5を互いに平行な状態で連結する複数の支柱部56とを備えている。複数のプレート部5は、複数の円筒形電池3がそれぞれ嵌入された複数の保持穴51と、複数の保持穴51同士の間に形成された複数の冷却穴52とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の円筒形電池が、電池保持スペーサによってハウジング内に保持された組電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の円筒形電池を整列した状態で保持し、両端の電極部をバスバー等によって接続した組電池モジュールが使用されている。
組電池モジュールとしては、例えば、特許文献1、2に開示された組電池がある。特許文献1の組電池は、一端が正極、他端が負極の円筒形の単電池を複数保持する枠体を備えており、この枠体によって複数の単電池の両端部を支持している。特許文献2の組電池は、円筒形電池を収納するホルダー本体の両端にエンドプレートが連結され、ホルダー本体に形成された貫通孔に冷媒を強制送風するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−119284号公報
【特許文献2】特開2009−205979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の円筒形電池を配列した組電池モジュールにおいては、複数の円筒形電池の発熱により、組電池モジュール全体の中心部分の温度が高くなりやすく、また、各円筒形電池の両端部付近の温度が高くなりやすい。特許文献1の組電池においては、単電池の両端部の外周に枠体が存在するため、単電池による発熱が枠体に伝わってしまい、単電池を効果的に冷却することはできない。また、特許文献2においても、円筒形電池の両端部の外周にエンドプレートが存在し、円筒形電池を効果的に冷却することはできない。そのため、特許文献1、2の組電池においては、複数の円筒形電池(又は単電池)の全体を偏りなく冷却することが困難である。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、複数の円筒形電池の全体を偏りなく冷却することができる組電池モジュールを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハウジング内において、軸方向を互いに平行にして配置された複数の円筒形電池と、
上記ハウジング内において、上記複数の円筒形電池を保持する樹脂製の電池保持スペーサとを備えており、
該電池保持スペーサは、上記複数の円筒形電池に亘って、該複数の円筒形電池の両端面よりも中心側の位置である軸方向の複数箇所に配置される複数のプレート部と、
該複数のプレート部を互いに平行な状態で連結する複数の支柱部とを備えており、
上記複数のプレート部は、上記複数の円筒形電池がそれぞれ嵌入された複数の保持穴と、該複数の保持穴の外縁部又は該複数の保持穴同士の間に形成された複数の冷却穴とを有していることを特徴とする組電池モジュールにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
上記組電池モジュールにおいては、複数の円筒形電池を保持する電池保持スペーサの構造に工夫をしている。
具体的には、電池保持スペーサは、複数のプレート部を複数の支柱部によって連結して構成されており、複数のプレート部は、複数の円筒形電池に亘って、複数の円筒形電池の両端面よりも中心側の位置である軸方向の複数箇所に配置されている。
これにより、複数の円筒形電池の両端部の外周を開放し、この両端部が冷却されやすい状態を形成することができる。
【0008】
また、複数のプレート部においては、複数の円筒形電池がそれぞれ保持された複数の保持穴以外に、複数の冷却穴が形成されている。この複数の冷却穴は、複数の保持穴の外縁部又は複数の保持穴同士の間に形成されている。
そして、組電池モジュール内に冷却風が流れるときには、この冷却風は、複数の円筒形電池を横切って流れるとともに、複数の冷却穴を通って、複数の円筒形電池の軸方向へも流れることができる。また、複数の円筒形電池の両端部の外周が開放されていることにより、冷却風が、この両端部の外周に効果的に流れることができる。
これにより、各円筒形電池の軸方向の中央部及び両端部の全体、並びにハウジング内における複数の円筒形電池の全体を偏りなく冷却することができ、ハウジング内に生じる温度分布のばらつきを極力小さくすることができる。
それ故、上記組電池モジュールによれば、複数の円筒形電池の全体を偏りなく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1にかかる、複数の円筒形電池を電池保持スペーサによって保持した組電池モジュールを、複数の円筒形電池の軸方向から見た状態で示す平面図。
【図2】実施例1にかかる、組電池モジュールの側面を、図1のA−A矢視によって示す説明図。
【図3】実施例1にかかる、組電池モジュールの断面を、図1のB−B断面矢視によって示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、組立用ユニットを、内側位置のプレート部を省略した状態で示す斜視図。
【図5】実施例1にかかる、互いに隣接する組立用ユニット同士を組み合わせた状態を、外側位置のプレート部の部位で示す平面図。
【図6】実施例1にかかる、互いに隣接する組立用ユニットを組み合わせる前の状態を、外側位置のプレート部の部位で示す平面図。
【図7】実施例1にかかる、互いに隣接する組立用ユニット同士を組み合わせた状態を、内側位置のプレート部の部位で示す平面図。
【図8】実施例2にかかる、互いに隣接する組立用ユニット同士を組み合わせた状態を示す平面図。
【図9】実施例2にかかる、複数の保持穴を、横方向と縦方向とに等間隔で格子状に並べて形成した場合を示す平面図。
【図10】実施例2にかかる、複数の保持穴を、横方向と縦方向とに等間隔で格子状に並べて形成した他の場合を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した組電池モジュールにおける好ましい実施の形態につき説明する。
上記組電池モジュールにおいては、上記複数の保持穴は、第1方向に並ぶ第1保持穴列と、該第1保持穴列に隣接して、該第1保持穴列における上記保持穴と位置がずれて上記第1方向に並ぶ第2保持穴列とを、上記第1方向に直交する第2方向に交互に配置して形成されており、上記複数の冷却穴は、上記第1保持穴列における上記保持穴同士の間、及び上記第2保持穴列における上記保持穴同士の間に形成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、千鳥状に配置された複数の円筒形電池を、複数の冷却穴の形成によって効果的に冷却することができる。各冷却穴は、その一部が保持穴同士の間に存在すれば、保持穴と保持穴との間の中心位置、又は保持穴と保持穴の間の中心位置からいずれか一方へずれた位置等の種々の位置に形成することができる。
【0011】
また、上記複数の保持穴は、第1方向と該第1方向に直交する第2方向とに格子状に並んで形成されており、上記冷却穴は、上記保持穴同士の間に形成されていてもよい(請求項3)。
この場合には、格子状に配置された複数の円筒形電池を、複数の冷却穴の形成によって効果的に冷却することができる。各冷却穴は、その一部が保持穴同士の間に存在すれば、保持穴と保持穴との間の中心位置、又は保持穴と保持穴の間の中心位置からいずれか一方へずれた位置等の種々の位置に形成することができる。
【0012】
また、上記ハウジングには、上記第1方向又は上記第2方向のいずれかにおける一方側端部と他方側端部とにおいて、当該ハウジングの内部へ冷却風を流入させるための冷却風入口と、当該ハウジングの外部へ冷却風を流出させるための冷却風出口とが形成されており、上記複数のプレート部における上記複数の冷却穴を通過して、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向へ冷却風が流通するよう構成されていてもよい(請求項4)。
この場合には、冷却風が、冷却風入口から冷却風出口へと流れる際に、複数のプレート部における複数の冷却穴を通過して、複数の円筒形電池の軸方向に沿った第3方向にも流れることができる。これにより、複数の円筒形電池の全体を、より効果的に冷却することができる。
【0013】
また、上記電池保持スペーサは、上記複数のプレート部を貫通して上記ハウジングの両側に固定された複数の連結部材によって、上記ハウジング内に位置決めされていてもよい(請求項5)。
この場合には、電池保持スペーサは、ハウジングの両側の内壁面から離れた状態で、複数の連結部材によってハウジング内に位置決めすることができる。
【0014】
また、上記複数の連結部材は、上記複数の冷却穴におけるいずれか複数の冷却穴に嵌入されていてもよい(請求項6)。
この場合には、複数の冷却穴を利用して、複数の連結部材によって電池保持スペーサをハウジング内に位置決めすることができる。
【0015】
また、上記複数のプレート部は、上記第1方向に並ぶ複数の上記円筒形電池を上記第2方向の両側から挟持するよう、複数のプレート分割部に分割されており、該複数のプレート分割部は、それぞれ上記複数の支柱部によって連結されて、組立用ユニットを構成しており、複数の該組立用ユニットを組み合わせて、上記複数の円筒形電池を保持するよう構成されていてもよい(請求項7)。
この場合には、複数の組立用ユニットを組み合わせる際に、複数の円筒形電池を間に挟み込むことができる。これにより、複数の円筒形電池の保持を容易に行うことができる。
【0016】
また、上記各組立用ユニットの上記プレート分割部は、上記保持穴の一部を構成する半保持穴部と、上記冷却穴の一部を構成する半冷却穴部と、該半冷却穴部と上記半保持穴部との境界部分に存在する小片部とを有しており、該小片部は、隣接する上記組立用ユニットにおける上記小片部と係合されて、上記円筒形電池を保持するよう構成されていてもよい(請求項8)。
この場合には、円筒形電池を、一方の組立用ユニットにおける小片部に配置し、この小片部を他方の組立用ユニットにおける小片部と係合させることにより、円筒形電池の保持を一層容易に行うことができる。
【実施例】
【0017】
以下に、上記組電池モジュールにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1は、複数の円筒形電池3を電池保持スペーサ4によって保持した組電池モジュール1を、複数の円筒形電池3の軸方向Dから見た状態で示す。図2は、組電池モジュールの側面を、図1のA−A矢視によって示し、図3は、組電池モジュールを、図1のB−B断面矢視によって示す。
各図に示すごとく、本例の組電池モジュール1は、ハウジング2と、ハウジング2内において、軸方向Xを互いに平行にして配置された複数の円筒形電池3と、ハウジング2内において、複数の円筒形電池3を保持する樹脂製の電池保持スペーサ4とを備えている。電池保持スペーサ4は、複数の円筒形電池3に亘って、複数の円筒形電池3の両端面32よりも中心側の位置である軸方向Xの複数箇所に配置される複数のプレート部5と、複数のプレート部5を互いに平行な状態で連結する複数の支柱部56とを備えている。複数のプレート部5は、複数の円筒形電池3がそれぞれ嵌入された複数の保持穴51と、複数の保持穴51同士の間に形成された複数の冷却穴52とを有している。
【0018】
以下に、本例の組電池モジュール1につき、図1〜図7を参照して詳説する。
本例の組電池モジュール1は、家庭、施設等への設置用の蓄電池、ハイブリッド自動車、電気自動車等への移動用の蓄電池として用いることができる。
本例の円筒形電池3は、充放電可能な二次電池であって、リチウムイオン電池である。円筒形電池3は、これ以外にも、二次電池としてのニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル水素電池等とすることもできる。また、円筒形電池3は、充放電できない使い捨ての一次電池とすることも可能である。
【0019】
本例の電池保持スペーサ4は、複数の円筒形電池3を、振動を抑制してハウジング2内に位置決め保持するために用いる。
電池保持スペーサ4は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂から構成することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアセタール(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等がある。また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂等がある。なお、本例の電池保持スペーサ4は、剛性、耐熱性、成形性等に優れるPBTから構成した。
【0020】
ハウジング2は、樹脂、セラミックス、金属等の種々の材料から構成することができる。本例のハウジング2は、金属材料としてのアルミニウム材料から構成されている。
図2に示すごとく、本例の電池保持スペーサ4は、複数の円筒形電池3を保持する状態で、連結部材22によってハウジング2に位置決めされている。本例の連結部材22は、冷却風から熱伝達によって伝わる熱をハウジング2へ逃がしやすくするために、金属製のパイプとして構成されている。本例の連結部材22は、伝熱性に優れるアルミニウム材料から構成した。
【0021】
図1に示すごとく、本例の複数の円筒形電池3は、電池保持スペーサ4によって、ハウジング2内において、軸方向Xを互いに平行にして、第1方向としての横方向Wと、第1方向に直交する第2方向としての縦方向Lとに整列して配置されている。
図4は、組立用ユニット40を、内側位置のプレート部5Bを省略した状態で示す。図5は、互いに隣接する組立用ユニット40同士を組み合わせた状態を、外側位置のプレート部5Aの部位で示す。図6は、互いに隣接する組立用ユニット40を組み合わせる前の状態を、外側位置のプレート部5Aの部位で示す。図7は、互いに隣接する組立用ユニット40同士を組み合わせた状態を、内側位置のプレート部5Bの部位で示す。
【0022】
図4に示すごとく、本例の複数のプレート部5は、横方向Wに並ぶ複数の円筒形電池3を縦方向Lの両側から挟持するよう、複数のプレート分割部55に分割されている。複数のプレート分割部55は、それぞれ複数の支柱部56によって連結されて、組立用ユニット40を構成している。
図2、図3に示すごとく、本例の複数のプレート部5は、複数の支柱部56の両端である外側位置と、この各外側位置から所定距離、支柱部56の中心側にずれた内側位置とにおいて、計4つが設けられている。つまり、4つのプレート部5は、第1方向及び第2方向に直交する第3方向としての奥行方向Dに、4つ並ぶ状態で形成されている。
また、外側位置のプレート部5Aと内側位置のプレート部5Bとの間の間隔D1は、内側位置の一対のプレート部5同士の間の間隔D2よりも狭くなっている。
【0023】
図5、図6に示すごとく、外側位置のプレート部5Aから突出する、複数の円筒形電池3の突出端部31は、円筒形電池3の全体の長さの1〜3割の長さで突出している。
横方向Wに並ぶ複数の円筒形電池3は、縦方向Lに組み合わされる一対の組立用ユニット40の間に挟まれて保持される。各組立用ユニット40においては、縦方向Lの中心部において、複数の支柱部56が横方向Wに並んで複数(本例では4つ)のプレート部5を連結している。
【0024】
図1に示すごとく、本例の電池保持スペーサ4において、複数の保持穴51は、隣接する保持穴51に対して横方向W及び縦方向Lに位置がずれて、千鳥状に配置されている。複数の保持穴51は、横方向Wに等間隔に並ぶ第1保持穴列A1と、第1保持穴列A1に隣接して、第1保持穴列A1における保持穴51と半ピッチ分ずれて横方向Wに等間隔に並ぶ第2保持穴列A2とを、縦方向Lに交互に配置して形成されている。
複数の冷却穴52は、第1保持穴列A1における保持穴51同士の間、及び第2保持穴列A2における保持穴51同士の間に形成されている。各冷却穴52は、縦方向Lに長い長穴として形成されている。
各プレート部5においては、複数の保持穴51及び複数の冷却穴52を形成することにより、保持穴51と冷却穴52との間に存在する部分が、強度を確保した上で、できるだけ細い幅で形成されている。そして、電池保持スペーサ4は、複数のプレート部5を複数の支柱部56によって連結して、かご型形状に形成されている。
【0025】
図6に示すごとく、各組立用ユニット40において、プレート部5を形成するためのプレート分割部55は、保持穴51の一部を構成する半保持穴部511と、冷却穴52の一部を構成する半冷却穴部521と、半冷却穴部521と半保持穴部511との境界部分に存在する小片部53とを、それぞれ複数有している。
各組立用ユニット40は、4つのプレート分割部55が、横方向Wに並ぶ複数の支柱部56によって連結されている。複数のプレート部5の縦方向Lの一方側には、4つの半保持穴部511と半保持穴部511同士の間に位置する3つの半冷却穴部521とが形成されており、複数のプレート部5の縦方向Lの他方側には、4つの半冷却穴部521と半冷却穴部521同士の間に位置する3つの半保持穴部511とが形成されている。また、各小片部53は、各半保持穴部511の横方向Wの両側に形成されている。
【0026】
各組立用ユニット40における小片部53は、隣接する組立用ユニット40における小片部53と係合されて、円筒形電池3を保持するよう構成されている。
本例においては、第1保持穴列A1においては、保持穴51が横方向Wに4つ並んで形成されており、第2保持穴列A2においては、保持穴51が横方向Wに3つ並んで形成されている。保持穴51の横方向Wへの形成数が奇数個である第2保持穴列A2においては、冷却穴52は、保持穴51同士の間と、横方向Wの外側端部に位置する保持穴51のさらに外側とに形成されている。
【0027】
図5、図6に示すごとく、奥行方向Dの外側位置に配置される一対のプレート部5Aにおいて、各半保持穴部511の横方向Wの両側に形成された一対の小片部53においては、一方の第1小片部53Aが長く、他方の第2小片部53Bが第1小片部53Aよりも短く形成されている。第1小片部53Aは、円筒形電池3に接触する内周側部分531Aを有しており、この内周側部分531Aは、保持穴51の中心位置よりも縦方向Lの外方へ突出して形成されている。第2小片部53Bは、対向する他の組立用ユニット40における内周側部分531Aの外周側に重なる外周側部分531Bを有している。
【0028】
そして、一対の組立用ユニット40を互いに組み立てる際には、一方の組立用ユニット40におけるプレート分割部55の第1小片部53Aの内周側部分531Aの外周側に、他方の組立用ユニット40におけるプレート分割部55の第2小片部53Bの外周側部分531Bが重なる。また、他方の組立用ユニット40におけるプレート分割部55の第1小片部53Aの内周側部分531Aの外周側に、一方の組立用ユニット40におけるプレート分割部55の第2小片部53Bの外周側部分531Bが重なる。
これにより、一対の半保持穴部511が組み合わさって形成される各保持穴51においては、内周側部分531Aと外周側部分531Bとの間に押付力が作用することによって、各円筒形電池3を安定して保持することができる。
【0029】
第1小片部53Aの内周側部分531Aにおいて円筒形電池3に接触する内周面の曲率半径は、円筒形電池3の外周半径よりも小さく設定しておくことができる。この場合には、円筒形電池3を保持する際に外周側に弾性変形する第1小片部53Aの内周側部分531Aを、第2小片部53Bの外周側部分531Bによって受け止めることにより、上記押付力を作用させることができる。
また、第2小片部53Bの外周側部分531Bを、第1小片部53Aの外周に重なったときの状態よりも小さな半径で形成しておくこともできる。この場合には、円筒形電池3を保持する際に、第2小片部53Bの外周側部分531Bが、外周側に弾性変形しながら第1小片部53Aの内周側部分531Aを内周側に押さえ付けることにより、上記押付力を作用させることができる。
【0030】
図4に示すごとく、奥行方向Dの外側位置に配置される一対のプレート部5Aのうち、一方のプレート部5A1においては、各保持穴51の横方向Wの一方側に位置する小片部53が、内周側部分531Aを有する第1小片部53Aとして形成されているとともに、横方向Wの他方側に位置する小片部53が、外周側部分531Bを有する第2小片部53Bとして形成されている。奥行方向Dの外側位置に配置される一対のプレート部5Aのうち、他方のプレート部5A2においては、各保持穴51の横方向Wの他方側に位置する小片部53が、内周側部分531Aを有する第1小片部53Aとして形成されているとともに、横方向Wの一方側に位置する小片部53が、外周側部分531Bを有する第2小片部53Bとして形成されている。
【0031】
そして、一方の外側位置のプレート部5A1における第1小片部53Aの内周側部分531Aと、他方の外側位置のプレート部5A2における第1小片部53Aの内周側部分531Aとによって、円筒形電池3の外周における半周を超える範囲を支えることができる。これにより、第1小片部53Aによって、円筒形電池3の軸方向Xの一方側端部と軸方向Xの他方側端部とを支えて、組み合わせる前の単体状態の組立用ユニット40の各半保持穴部511に円筒形電池3を保持させることができる。そのため、複数の円筒形電池3を保持した一方の組立用ユニット40と、円筒形電池3を保持していない他方の組立用ユニット40とを組み付けることが容易である。
【0032】
なお、組立用ユニット40は、一対(2つ)のプレート分割部55を複数の支柱部56によって連結して形成することもできる。この場合には、第1小片部53A及び第2小片部53Bは、上記4つのプレート部5を有する場合と同様に、一方のプレート分割部55における第1小片部53Aの内周側部分531Aによって、円筒形電池3の軸方向Xの一方側端部を横方向Wの一方側から支え、他方のプレート分割部55における第1小片部53Aの内周側部分531Aによって、円筒形電池3の軸方向Xの他方側端部を横方向Wの他方側から支えることができる。
【0033】
図1、図2に示すごとく、本例の電池保持スペーサ4は、複数のプレート部5を貫通してハウジング2の両側に固定された複数の連結部材22によって、ハウジング2内に位置決めされている。
ハウジング2は、電池保持スペーサ4及び複数の円筒形電池3を囲む形状であれば、どのような形状に形成することもできる。本例のハウジング2は、各円筒形電池3の軸方向Xの両側に対向する(奥行方向Dの両側に位置する)一対のハウジング板部21を用いている。ハウジング2は、一対のハウジング板部21を、横方向W及び縦方向Lの両側にそれぞれ配置する他のハウジング板部と連結して、電池保持スペーサ4及び複数の円筒形電池3を囲む形状にすることができる。
【0034】
図2に示すごとく、電池保持スペーサ4に嵌入した複数の連結部材22は、その両端が一対のハウジング板部21に固定されている。各連結部材22のハウジング板部21への固定は、ねじ23の締付によって行われている。
本例の複数の連結部材22は、複数の冷却穴52におけるいずれか複数の冷却穴52に嵌入されている。本例の各冷却穴52は、縦方向Lに長い長穴の両端部に、連結部材22を嵌入するための部分を有している。そして、複数の冷却穴52を利用して、複数の連結部材22によって電池保持スペーサ4をハウジング2内に位置決めすることができる。なお、連結部材22は、冷却穴52を利用せずに、電池保持スペーサ4の複数のプレート部5に設けた貫通穴に嵌入して、ハウジング2に固定することもできる。
また、組電池モジュール1は、複数の円筒形電池3を保持する電池保持スペーサ4を複数段配置して構成することができる。この場合、横方向Wに一対のハウジング板部21を連結して、複数段の電池保持スペーサ4の全体をハウジング2によって囲むことができる。
【0035】
図3に示すごとく、本例の複数の円筒形電池3は、その軸方向Xの端面に形成された電極が、各軸方向Xの端面において別々に電極用バスバー61によって接続されている。複数の円筒形電池3の接続は、種々の形で行うことができる。例えば、複数の円筒形電池3は、プラス側の電極部を奥行方向Dの一方側に向けるとともに、マイナス側の電極部を奥行方向Dの他方側に向けて電池保持スペーサ4に保持し、プラス側の電極部同士及びマイナス側の電極部同士を接続して、並列接続とすることができる。また、例えば、複数の円筒形電池3は、プラス側の電極部とマイナス側の電極部とを奥行方向Dの一方側と他方側とに交互に向けて電池保持スペーサ4に保持し、プラス側の電極部とマイナス側の電極部とを接続して、直列接続とすることもできる。また、並列接続と直列接続とを混在させることもできる。
また、電極用バスバー61とハウジング板部21との間には、円筒形電池3の軸方向Xの端面を受ける緩衝材62が配置されている。緩衝材62は、絶縁性及び熱伝導性の良い種々の樹脂又はゴム、種々の樹脂又はゴムの発泡体等から構成することができる。
【0036】
図1に示すごとく、本例の組電池モジュール1においては、縦方向Lの一方側端部に位置するハウジング板部21の付近に、ハウジング2の内部へ冷却風を流入させるための冷却風入口24が形成され、縦方向Lの他方側端部に位置するハウジング板部21の付近に、ハウジング2の外部へ冷却風を流出させるための冷却風出口25が形成されている。冷却風出口25に繋がる配管には、空気を吸引する吸引ファンが設けられており、冷却風入口24に繋がる配管は大気に開放されている。
【0037】
図2、図3に示すごとく、本例の電池保持スペーサ4においては、上記のごとく、外側位置のプレート部5Aと内側位置のプレート部5Bとの間の間隔D1が、内側位置の一対のプレート部5同士の間の間隔D2よりも狭くなっている。
冷却風の流れは、冷却風出口25を、外側位置のプレート部5Aと内側位置のプレート部5Bとの間の一対の外側スペースS1に設けるか、内側位置の一対のプレート部5同士の間の内側スペースS2に設けるかによって異なる。
【0038】
冷却風出口25を一対の外側スペースS1に設ける場合には、冷却風出口25からの吸引によって、冷却風入口24から冷却風出口25へ流れる冷却風は、一対の外側スペースS1を速く流れ、内側スペースS2をそれよりも遅く流れる。そして、一対の外側スペースS1の圧力が周囲よりも低くなり、周囲から一対の外側スペースS1へ冷却風が流れようとする。
これにより、冷却風は、内側スペースS2から、各内側位置のプレート部5Bにおける複数の冷却穴52を通って一対の外側スペースS1へ流れ、また、各外側位置のプレート部5Aにおける複数の冷却穴52を通って、外側位置のプレート部5Aとハウジング板部21との間の一対の端部スペースS3へ流れる。こうして、冷却風は、複数の冷却穴52を奥行方向D(複数の円筒形電池3の軸方向X)へ通過して流れることができ、複数の円筒形電池3の軸方向Xの中央部及び両側の突出端部31を効果的に冷却することができる。
【0039】
一方、冷却風出口25を一対の内側スペースS2に設ける場合には、冷却風出口25からの吸引によって、冷却風入口24から冷却風出口25へ流れる冷却風は、内側スペースS2を速く流れ、一対の外側スペースS1をそれよりも遅く流れる。そして、内側スペースS2の圧力が周囲よりも低くなり、周囲から内側スペースS2へ冷却風が流れようとする。
これにより、冷却風は、一対の外側スペースS1から、各内側位置のプレート部5Bにおける複数の冷却穴52を通って内側スペースS2へ流れ、また、一対の端部スペースS3から、各外側位置のプレート部5Aにおける複数の冷却穴52を通って一対の外側スペースS1へ流れる。こうして、冷却風は、複数の冷却穴52を奥行方向D(複数の円筒形電池3の軸方向X)へ通過して流れることができ、複数の円筒形電池3の軸方向Xの中央部及び両側の突出端部31を効果的に冷却することができる。
【0040】
本例の組電池モジュール1においては、複数の円筒形電池3を保持する電池保持スペーサ4の構造に工夫をしている。
上記のごとく、複数の円筒形電池3は、その突出端部31が外側位置のプレート部5Aよりも軸方向Xの外側に突出している。これにより、複数の円筒形電池3の両突出端部31の外周を開放し、この両突出端部31が冷却されやすい状態を形成することができる。
【0041】
また、複数のプレート部5においては、上記のごとく、複数の円筒形電池3がそれぞれ保持された複数の保持穴51以外に、複数の冷却穴52が形成されている。
そして、組電池モジュール1内に冷却風が流れるときには、この冷却風は、複数の円筒形電池3を横切って流れるとともに、複数の冷却穴52を通って、複数の円筒形電池3の軸方向Xへも流れることができる。また、複数の円筒形電池3の両突出端部31の外周が開放されていることにより、冷却風が、この両突出端部31の外周に効果的に流れることができる。
さらに、電池保持スペーサ4において、冷却風が各プレート部5の各冷却穴52を奥行方向Dへ通過するときには、冷却風の渦流が発生する。この渦流の発生により、冷却風が円筒形電池3に対して衝突して、円筒形電池3をより効果的に冷却することができる。
【0042】
上記組電池モジュール1の構成により、各円筒形電池3の軸方向Xの中央部及び両突出端部31の全体、並びにハウジング2内における複数の円筒形電池3の全体を偏りなく冷却することができ、ハウジング2内に生じる温度分布のばらつきを極力小さくすることができる。
それ故、本例の組電池モジュール1によれば、複数の円筒形電池3の全体を偏りなく冷却することができる。
【0043】
(実施例2)
本例は、電池保持スペーサ4における保持穴51、冷却穴52等の形成位置が上記実施例1とは異なる他の態様を示す例である。
図8に示すごとく、複数のプレート部5において、複数の冷却穴52は、複数の保持穴51の外縁部において、この外縁部の一部を切り欠いた切欠部522によって形成することもできる。切欠部522は、各組立用ユニット40において、各半保持穴部511の外縁部における周方向の複数箇所に形成することができる。切欠部522は、円筒形電池3の外周に接触する、保持穴51における内壁面の面積を適切に残して、種々の大きさ及び形状に形成することができる。この場合、保持穴51の横方向Wの両側には、一方側に突起部53Cを形成し、他方側に突起部53Cが嵌入する凹部53Dを形成することができる。
また、各冷却穴52は、上記実施例1に示した保持穴51とは独立して形成したものと、保持穴51の外縁部に形成したものとを組み合わせて構成することもできる。
【0044】
また、図9に示すごとく、複数のプレート部5において、複数の保持穴51は、横方向Wと縦方向Lとに等間隔で格子状に並べて形成することもできる。この場合、冷却穴52は、保持穴51同士の間の位置、外側の端部に位置する保持穴51のさらに外側の位置等に形成することができる。特に、複数の冷却穴52は、強度を確保した上で、プレート部5に保持穴51が形成された後に存在する樹脂の部分ができるだけ少なくなるように形成することができる。各冷却穴52は、例えば、4つの保持穴51の中心部分に支柱部56が存在しない部位においては、4つの保持穴51の中心部分に長穴状に形成するとともにその両側に三角状に形成し、4つの保持穴51の中心部分に支柱部56が存在する部位においては、4つの保持穴51の中心部分に長穴状に形成するとともにその両側に三角状に形成することができる。
また、各プレート部5において、保持穴51の外縁部における横方向Wの両側に形成される小片部53は、半保持穴部511を保持穴51の中心を境界にして縦方向Lに分割して形成することもできる。
【0045】
図10に示すごとく、保持穴51の外縁部における横方向Wの両側に形成される小片部53は、一方の組立用ユニット40のプレート部5における保持穴51同士の間に存在する部分を凸状部532として突出させ、他方の組立用ユニット40のプレート部5における保持穴51同士の間に存在する部分を、凸状部532を嵌入する凹状部533として窪ませて形成することもできる。その他、小片部53は、種々の構成とすることができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
図示は省略するが、組電池モジュール1においては、冷却風による冷却と併用して、冷却風の熱伝達を行う種々の冷却パイプ、冷却棒等をハウジング2内に設けることができる。冷却パイプ内には、空気、水、オイル、クーラント等の冷却媒体を流通させることができる。冷却パイプ又は冷却棒は、電池保持スペーサ4を貫通して設けることができ、冷却穴52に嵌入して設けることもできる。
また、連結部材22を冷却パイプとして用い、連結部材22の内部に形成された中空穴に冷却液体を流通させることもできる。冷却パイプ又は冷却棒は、ハウジング2における一対のハウジング板部21に固定することができ、電池保持スペーサ4に固定することもできる。また、冷却パイプ又は冷却棒は、ハウジング板部21を貫通して設けることができ、ハウジング板部21を貫通せずにU形状に設けることもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 組電池モジュール
2 ハウジング
22 連結部材
3 円筒形電池
31 突出端部
4 電池保持スペーサ
40 組立用ユニット
5 プレート部
51 保持穴
511 半保持穴部
52 冷却穴
521 半冷却穴部
53 小片部
55 プレート分割部
56 支柱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内において、軸方向を互いに平行にして配置された複数の円筒形電池と、
上記ハウジング内において、上記複数の円筒形電池を保持する樹脂製の電池保持スペーサとを備えており、
該電池保持スペーサは、上記複数の円筒形電池に亘って、該複数の円筒形電池の両端面よりも中心側の位置である軸方向の複数箇所に配置される複数のプレート部と、
該複数のプレート部を互いに平行な状態で連結する複数の支柱部とを備えており、
上記複数のプレート部は、上記複数の円筒形電池がそれぞれ嵌入された複数の保持穴と、該複数の保持穴の外縁部又は該複数の保持穴同士の間に形成された複数の冷却穴とを有していることを特徴とする組電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池モジュールにおいて、上記複数の保持穴は、第1方向に並ぶ第1保持穴列と、該第1保持穴列に隣接して、該第1保持穴列における上記保持穴と位置がずれて上記第1方向に並ぶ第2保持穴列とを、上記第1方向に直交する第2方向に交互に配置して形成されており、
上記複数の冷却穴は、上記第1保持穴列における上記保持穴同士の間、及び上記第2保持穴列における上記保持穴同士の間に形成されていることを特徴とする組電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の組電池モジュールにおいて、上記複数の保持穴は、第1方向と該第1方向に直交する第2方向とに格子状に並んで形成されており、
上記冷却穴は、上記保持穴同士の間に形成されていることを特徴とする組電池モジュール。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の組電池モジュールにおいて、上記ハウジングには、上記第1方向又は上記第2方向のいずれかにおける一方側端部と他方側端部とにおいて、当該ハウジングの内部へ冷却風を流入させるための冷却風入口と、当該ハウジングの外部へ冷却風を流出させるための冷却風出口とが形成されており、
上記複数のプレート部における上記複数の冷却穴を通過して、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向へ冷却風が流通するよう構成されていることを特徴とする組電池モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の組電池モジュールにおいて、上記電池保持スペーサは、上記複数のプレート部を貫通して上記ハウジングの両側に固定された複数の連結部材によって、上記ハウジング内に位置決めされていることを特徴とする組電池モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の組電池モジュールにおいて、上記複数の連結部材は、上記複数の冷却穴におけるいずれか複数の冷却穴に嵌入されていることを特徴とする組電池モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組電池モジュールにおいて、上記複数のプレート部は、上記第1方向に並ぶ複数の上記円筒形電池を上記第2方向の両側から挟持するよう、複数のプレート分割部に分割されており、
該複数のプレート分割部は、それぞれ上記複数の支柱部によって連結されて、組立用ユニットを構成しており、
複数の該組立用ユニットを組み合わせて、上記複数の円筒形電池を保持するよう構成されていることを特徴とする組電池モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の組電池モジュールにおいて、上記各組立用ユニットの上記プレート分割部は、上記保持穴の一部を構成する半保持穴部と、上記冷却穴の一部を構成する半冷却穴部と、該半冷却穴部と上記半保持穴部との境界部分に存在する小片部とを有しており、
該小片部は、隣接する上記組立用ユニットにおける上記小片部と係合されて、上記円筒形電池を保持するよう構成されていることを特徴とする組電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−110080(P2013−110080A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256492(P2011−256492)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(509193533)株式会社キャプテックス (3)
【Fターム(参考)】