説明

給湯機

【課題】浴室内の入浴者の有無を精度良く検出し、その検出結果に基づいて浴槽への給湯や加熱を適切に行う省エネルギー性と利便性に優れた給湯機を提供すること。
【解決手段】浴槽への湯張りや加熱などの運転操作機能と浴室内における人の存室の有無を検出する赤外線人感センサ8とを有する浴室リモコン9とを備え、前記赤外線人感センサ8は、人体から放射される赤外線を検出するセンシング部15と、前記センシング部15を覆い赤外線透過性材料で形成したレンズ部16とを有し、前記浴室リモコン9の筐体9aを前記レンズ部16とは異なる材料で形成したことを特徴とするもので、入浴者の有無を簡単な構成で精度よく検出でき、製品の低コスト化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽への湯張りや浴槽内の水を加熱する機能を有し、浴室における人の在室の有無を検出する人感センサを浴室リモコン内に備えた給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽への人の入浴を検知して、浴槽への給湯や加熱運転を制御する給湯機としては過去より多くの文献がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1では、人の入浴に伴う浴槽水位の上昇を水位センサで検出し、入浴初期の浴槽温度はややぬる目の40℃から徐々に高温(例えば43℃)まで加熱するという制御を行うことで、入浴者の快適性や給湯機の省エネ性を向上している。
【0004】
また、浴槽への人の入浴の検知手段が浴室リモコンに搭載された給湯機としては、例えば図5に示すようなものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
図5に示すように、安全性を高める目的で、浴室リモコンに焦電型赤外線素子とレンズからなる赤外線人感センサを搭載し、この赤外線人感センサで入浴者の異常を検出し、自動的に外部に通報する機能を備えている。
【特許文献1】特開昭63−306352号公報
【特許文献2】特開2001−133040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成には入浴者を検出するための赤外線人感センサを浴室リモコンに設けたということは記述されているものの、浴室という環境において人の検出精度を確保するための赤外線人感センサの構造はもとより、浴室リモコンへの搭載仕様や材質についての配慮は十分に記述されていない。
【0007】
特に赤外線人感センサを使用する場合、入浴者が浴室内のどこにいる場合でも検出できるために配慮すべきこととして、赤外線人感センサの視野角を大きくとり、かつ人体から放射された赤外線がセンサの検出部に届くまでの途中で遮断や減衰されないような構成及び材料選定をする必要がある。
【0008】
このように、浴室リモコンに実装する人感センサは、浴室内という空間と入浴者の行動の特性を考慮し、死角が少なくかつ誤検知を防止する必要があるという構造上の課題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、浴室内における人の在室の有無を精度よく検出し、それに基づいて浴槽への給湯や浴槽内の水の加熱を適切に行う省エネルギー性、快適性に優れた給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯機は、浴槽と、前記浴槽内の湯水を加熱する浴槽加熱手段と、前記浴槽への湯張りや加熱などの運転操作機能と浴室内における人の存室の有無を検出する赤外線人感センサとを有する浴室リモコンとを備え、前記赤外線人感センサは、人体から放射される赤外線を検出するセンシング部と、前記センシング部を覆い赤外線透過性材料で形成したレンズ部とを有し、前記浴室リモコンの筐体を前記
レンズ部とは異なる材料で形成したことを特徴とするもので、入浴者の有無を簡単な構成で精度よく検出でき、製品の低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浴室内における人の在室の有無を精度よく検出し、それに基づいて浴槽への給湯や浴槽内の水の加熱を適切に行う省エネルギー性、快適性に優れた給湯機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、浴槽と、前記浴槽内の湯水を加熱する浴槽加熱手段と、前記浴槽への湯張りや加熱などの運転操作機能と浴室内における人の存室の有無を検出する赤外線人感センサとを有する浴室リモコンとを備え、前記赤外線人感センサは、人体から放射される赤外線を検出するセンシング部と、前記センシング部を覆い赤外線透過性材料で形成したレンズ部とを有し、前記浴室リモコンの筐体を前記レンズ部とは異なる材料で形成したことを特徴とする給湯機で、入浴者の有無を簡単な構成で精度よく検出でき、製品の低コスト化を図ることができる。
【0013】
更に、赤外線人感センサによる入浴者の有無に応じて、入浴者が浴室に入室したときだけ浴槽内の水の温度を設定値まで速やかに加熱上昇させるなど、必要最小限の浴槽加熱運転が可能になり、省エネと快適性の向上を図ることができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明の給湯機に、貯湯槽と、前記貯湯槽の湯水を加熱する貯湯槽加熱手段とを備え、浴槽加熱手段は、前記貯湯槽内の湯と前記浴槽内の湯水との熱交換する熱交換であることを特徴とするもので、湯を給湯用として利用するとともに、その熱を浴槽の加熱に有効利用することが可能となって利便性が向上する。
【0015】
第3の発明は、特に、第2の発明の貯湯槽加熱手段として、ヒートポンプサイクルを用いたことを特徴とするもので、省エネルギー性に優れた給湯機を提供できる。
【0016】
第4の発明は、特に、第3の発明のヒートポンプサイクルは、運転時、超臨界圧力に昇圧される超臨界冷媒回路であることを特徴とするもので、沸き上げ温度を高温にできるので、利用できる熱量の増大と湯切れ防止性を向上することができる。
【0017】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明のヒートポンプサイクルの冷媒が二酸化炭素であることを特徴とするもので、比較的安価でかつ安定な二酸化炭素を冷媒に使用することで製品コストを抑えるとともに、信頼性を向上させることができる。
【0018】
また、二酸化炭素はオゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数も代替冷媒HFC−407Cの約1700分の1と非常に小さいため、地球環境に優しい製品を提供できる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における給湯機の構成を示す図である。
【0021】
図1において、貯湯槽加熱手段としてのヒートポンプユニット2は、貯湯槽1底部の水を高効率ヒートポンプサイクルで加熱した後に貯湯槽1上部に戻すことにより、貯湯槽1に湯を蓄える。浴槽3への湯張りやカラン・シャワーなどの給湯端末13からの給湯手段は、貯湯槽3上部の湯と水道水とを混合弁11で混合する方法を採用しており、混合弁1
1、給湯温度を検出する給湯サーミスタ12などの部品で構成されている。給湯温度の制御は給湯制御手段14が行っており、給湯サーミスタ12の検出温度が設定温度になるように混合弁11の混合比率を変化させている。
【0022】
また、浴槽3の水を加熱する浴槽加熱手段は、貯湯槽1の湯と浴槽3の湯水を熱交換器4で熱交換する方法を採用しており、貯湯槽3上部の湯を熱交換器4に搬送した後に貯湯槽1底部に戻す第一循環ポンプ5、浴槽3の水を熱交換器4に搬送した後に浴槽3に戻す第二循環ポンプ6、浴槽3の水温を検出する風呂サーミスタ7などの部品で構成されている。
【0023】
図2は、浴室リモコン9の正面外観図である。図3は、赤外線人感センサ8の構成図である。浴槽3への湯張りや、給湯端末13からの給湯温度の設定、浴槽3の加熱や温度の設定などの運転操作は、浴室内に設置された浴室リモコン9の操作ボタンにより行う。また、浴室リモコン9内部には、浴室における人の在室の有無を検出する赤外線人感センサ8が搭載されている。
【0024】
ここで、赤外線人感センサ8の一般的な構成を説明する。図3に示すように、赤外線人感センサ8は、入浴者から発せられる赤外線を検出するセンシング部15と、前記センシング部15を覆い赤外線を集光するレンズ部16とを有している。レンズ部16は、高密度ポリエチレン樹脂などの赤外線を透過し易い材質(以下、赤外線透過性材料と称する)で構成される。
【0025】
赤外線人感センサ8は、浴室リモコン9内部の基板等の赤外線センサ設置基準面17に設置されている。浴室リモコン筐体9aは、低コストで加工性が良いABS樹脂などの材質で構成されるのが一般的である。ABS樹脂は、通常、人体が発するような微弱な赤外線は吸収してしまう。
【0026】
図3に示すように、本実施の形態では、赤外線人感センサ8の前面が浴室リモコン筐体9aの前面よりも外側に突出するように設置されているため、赤外線人感センサ8の水平視野角Aを大きくとることができる。従って、入浴者の有無を簡単な構成で精度よく検出することが可能となる。
【0027】
また、赤外線人感センサ8の一部を浴室リモコン9の外側に突出させることで、赤外線人感センサ8を浴室リモコン9に収納するスペースが少なくて済み、浴室リモコン9を小型・薄型化することもできる。
【0028】
また、レンズ部16を赤外線透過性材料で構成し、浴室リモコン筐体9aを、レンズ部16とは異なる安価なABS樹脂で構成することにより、入浴者の有無を簡単な構成で精度よく検出できるとともに、製品の低コスト化を図ることができる。
【0029】
以上のように構成された給湯機について、以下その動作、作用を説明する。
【0030】
従来の浴槽3の自動保温運転では一定時間毎に浴槽3の加熱運転を繰り返していたが、赤外線人感センサ8を利用することで効率的な浴槽3の加熱運転が可能となる。
【0031】
まず、浴室に人が入ってきたことを赤外線人感センサ8が検出すると、浴槽加熱制御手段10により浴槽3の加熱運転を開始する。具体的には、第一循環ポンプ5で貯湯槽1上部の高温の湯を熱交換器4を経由して貯湯槽1の底部に搬送すると同時に、第二循環ポンプ6で浴槽3の水を熱交換器4に搬送した後に浴槽3に戻すという動作を行う。
【0032】
この際、熱交換器4において熱交換が行われて浴槽3内の水が加熱される。なお、浴槽3の加熱運転は、風呂サーミスタ7で検出した水温が風呂設定温度(例えば42℃)以上になった場合に停止され、浴室に人が不在の間は無駄な浴槽3の加熱運転をなくすことができる。
【0033】
また、赤外線人感センサ8の一部を浴室リモコン筐体9aの外側に突出させずに内部に収納した構成を図4に示す。
【0034】
赤外線人感センサ8を浴室リモコン筐体9aの内部に収納する場合、浴室内の人体から発生した赤外線をレンズ部16に導入するための開口部として受光窓9bを設けている。この場合、図4には図示していないが、受光窓9bとレンズ部16との隙間から蒸気や水分が浴室リモコン9内部に侵入しないようシール構造を設ける必要がある。また、受光窓9bを開口部とせずに、レンズ部16と同じ赤外線透過性材料で構成することも可能である。
【0035】
赤外線人感センサ8を浴室リモコン9の内部に収納することにより、浴室リモコン9の前面に突起がなくなり、入浴者が赤外線人感センサ8を他の操作ボタンと間違えて押すことによる故障などを防止することができる。
【0036】
また、浴室リモコン筐体9aは従来通りABS樹脂成型品を用いて、赤外線人感センサ8のレンズ部16に受光窓9bを設けると共に、レンズ部16は赤外線透過性材料で構成することにより、比較的低コストで赤外線人感センサ8を浴室リモコン9に搭載することができる。
【0037】
以上のように、赤外線人感センサ8の前面を浴室リモコン9の前面よりも外側に突出させて設置した場合でも、赤外線人感センサ8を浴室リモコン9の内部に収納した場合でも、レンズ部16を赤外線透過性材料で構成し、浴室リモコン筐体9aを、レンズ部16とは異なる安価なABS樹脂で構成することにより、入浴者の有無を簡単な構成で精度よく検出でき、製品の低コスト化を図ることができる。また、赤外線人感センサ8の出力に応じて浴槽3の加熱運転を制御することで、省エネと快適性・利便性の向上を図ることができる。
【0038】
なお、ヒートポンプユニット2の冷凍サイクルは冷媒として二酸化炭素を用い、臨界圧を越える圧力で運転することが好ましい。二酸化炭素を冷媒として用いることで沸き上げ温度を高温にできるので、利用できる熱量の増大と湯切れ防止性を向上することができる。
【0039】
比較的安価でかつ安定な二酸化炭素を冷媒に使用することで製品コストを抑えるとともに、信頼性を向上させることができる。また、二酸化炭素はオゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数も代替冷媒HFC−407Cの約1700分の1と非常に小さいため、地球環境に優しい製品を提供できる。
【0040】
また、浴槽3や給湯端末13への給湯手段や浴槽3の加熱手段としては、ヒーポンプサイクルの変わりにガスや石油の燃焼式熱源を利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかる給湯機は、高い省エネと快適性・利便性を図ることができるので、前記したようなヒートポンプ式給湯機に適用できるほか、ガス・石油などの燃焼式や電気ヒータ式給湯器などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態における給湯機の構成図
【図2】同実施の形態における浴室リモコンの正面外観図
【図3】同実施の形態における赤外線人感センサの構成図
【図4】同他の赤外線人感センサの構成図
【図5】従来の給湯機の構成図
【符号の説明】
【0043】
1 貯湯槽
2 ヒートポンプユニット
3 浴槽
4 熱交換器
8 赤外線人感センサ
9 浴室リモコン
9a 浴室リモコン筐体
9b 受光窓
10 浴槽加熱制御手段
15 センシング部
16 レンズ部
17 赤外線人感センサ設置基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、前記浴槽内の湯水を加熱する浴槽加熱手段と、前記浴槽への湯張りや加熱などの運転操作機能と浴室内における人の存室の有無を検出する赤外線人感センサとを有する浴室リモコンとを備え、前記赤外線人感センサは、人体から放射される赤外線を検出するセンシング部と、前記センシング部を覆い赤外線透過性材料で形成したレンズ部とを有し、前記浴室リモコンの筐体を前記レンズ部とは異なる材料で形成したことを特徴とする給湯機。
【請求項2】
貯湯槽と、前記貯湯槽の湯水を加熱する貯湯槽加熱手段とを備え、浴槽加熱手段は、前記貯湯槽内の湯と前記浴槽内の湯水との熱交換する熱交換であることを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
貯湯槽加熱手段として、ヒートポンプサイクルを用いたことを特徴とする請求項2に記載の給湯機。
【請求項4】
ヒートポンプサイクルは、運転時、超臨界圧力に昇圧される超臨界冷媒回路であることを特徴とする請求項3に記載の給湯機。
【請求項5】
ヒートポンプサイクルの冷媒が二酸化炭素であることを特徴とする請求項3または4に記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−216788(P2010−216788A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67435(P2009−67435)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】